特許第5873398号(P5873398)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5873398ゴム成形品の製造方法及び電気部品の製造方法
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  • 特許5873398-ゴム成形品の製造方法及び電気部品の製造方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873398
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】ゴム成形品の製造方法及び電気部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 25/14 20060101AFI20160216BHJP
【FI】
   B32B25/14
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-141910(P2012-141910)
(22)【出願日】2012年6月25日
(65)【公開番号】特開2014-4757(P2014-4757A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2014年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】中司 徹
【審査官】 斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特許第2580261(JP,B2)
【文献】 特公昭56−041417(JP,B2)
【文献】 特開平01−317761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00 − 65/82
B32B 1/00 − 43/00
H01B 1/00 − 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め架橋硬化した絶縁ゴム層上に、半導電ゴム用の未架橋の樹脂組成物を積層して架橋硬化することにより半導電ゴム層を形成する工程を含むゴム成形品の製造方法であって、
前記樹脂組成物中の樹脂100質量部に対するラジカル発生剤の含有量が3〜6質量部であり、
前記樹脂が、エチレン及びプロピレンを含む共重合体であることを特徴とするゴム成形品の製造方法。
【請求項2】
前記ラジカル発生剤が、化学構造中にペルオキシ基及び有機基を有する過酸化物であることを特徴とする請求項1に記載のゴム成形品の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂が、エチレン、プロピレン及び非共役ジエンモノマーからなる三元重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のゴム成形品の製造方法。
【請求項4】
前記絶縁ゴム層が、エチレン−プロピレン−ジエンゴムを含む層であることを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載のゴム成形品の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂組成物中に炭素材料を含有することを特徴する請求項1〜の何れか一項に記載のゴム成形品の製造方法。
【請求項6】
導体を有する基材上に、絶縁ゴム用の未架橋の樹脂組成物を被覆して架橋硬化することにより絶縁ゴム層を形成し、さらに前記絶縁ゴム層上に、半導電ゴム用の未架橋の樹脂組成物を被覆して架橋硬化することにより半導電ゴム層を形成することを含む電気部品の製造方法であって、
前記半導電ゴム用の未架橋の樹脂組成物中の樹脂100質量部に対するラジカル発生剤の含有量が3〜6質量部であり、
前記樹脂が、エチレン及びプロピレンを含む共重合体であることを特徴とする電気部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム成形品の製造方法及び電気部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力ケーブルや電気部品等は導体部分とこの導体部分を被覆する絶縁部分とを備える。用途に応じて、この絶縁部分は種類の異なるゴムが積層された構成とされる。例えば、導体部分に接するように半導電ゴム層を形成し、その上に絶縁ゴム層を積層する構成が知られている。この例のように半導電ゴム層の上に絶縁ゴム層が積層された2層構造とされる場合が多いが、特許文献1の電力ケーブルのように、さらに半導電ゴム層が積層された3層構造とされることもある。つまり、電力ケーブルの芯である導体の上に、内部半導電ゴム層、絶縁ゴム層、外部半導電ゴム層が順に被覆された3層構造である。この積層ゴム構造を形成する方法として、特許文献1では、押し出し機を用いて未架橋の3種のゴム用の樹脂組成物を導体上に積層して被覆した後、3層を一括して架橋硬化させる方法が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−222324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
形状が簡単な電気部品であれば、上記電力ケーブルの例ように3層構造を一括して架橋硬化させることができるが、形状が複雑な電気部品の場合、一括して被覆、架橋硬化することは困難である。そのため、導体部分を被覆する絶縁部分を確実に形成するために、1層づつ被覆及び架橋硬化を行うことがある。例えば前記3層構造の場合、架橋硬化した2層目の絶縁ゴム層上に3層目の半導電ゴム層を被覆して架橋硬化する。
しかしながら、既に架橋硬化した絶縁ゴム層(2層目)上に半導電ゴム用の未架橋の樹脂組成物を被覆し、架橋硬化させて半導電ゴム層(3層目)とした積層構造では、その界面が剥離し易いという問題があった。一方、既に架橋硬化した半導電ゴム層(1層目)上に絶縁ゴム用の未架橋の樹脂組成物を被覆し、架橋硬化させて絶縁ゴム層(2層目)とした積層構造においては、前記問題は見られない。
前記問題が生じる原因を本発明者が検討したところ、加硫による架橋硬化を行った場合には前記問題は生じ難く、ラジカルを発生する有機過酸化物等の架橋剤(ラジカル発生剤)を用いた場合に前記問題が顕著となることを突き止めた。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、予め架橋硬化した絶縁ゴム層上に半導電ゴム用の未架橋の樹脂組成物を積層した後、該樹脂組成物を架橋硬化して得られる積層型のゴム成形品における層間の結合力を向上させたゴム成形品の製造方法、及び前記ゴム成形品の製造方法を利用した電気部品の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載のゴム成形品の製造方法は、予め架橋硬化した絶縁ゴム層上に、半導電ゴム用の未架橋の樹脂組成物を積層して架橋硬化することにより半導電ゴム層を形成する工程を含むゴム成形品の製造方法であって、前記樹脂組成物中の樹脂100質量部に対するラジカル発生剤の含有量が3〜6質量部であることを特徴とする。さらに、前記樹脂が、エチレン及びプロピレンを含む共重合体であることを特徴とする。
本発明の製造方法によれば、半導電ゴム用の樹脂組成物の架橋硬化時に当該樹脂組成物中のラジカル発生剤が充分な量のラジカルを供給するため、層内部の架橋硬化だけでなく、絶縁ゴム層と半導電ゴム層間の架橋も行われる。この結果、層間の結合力が充分に高められる。さらに、前記共重合体を用いることにより、層間の結合力をさらに高めることができる。
【0007】
本発明の請求項2に記載のゴム成形品の製造方法は、請求項1において、前記ラジカル発生剤が、化学構造中にペルオキシ基及び有機基を有する過酸化物であることを特徴とする。前記過酸化物を用いることにより、層間の架橋に寄与するラジカルを充分な量で容易に供給することができる。
本発明の請求項に記載のゴム成形品の製造方法は、請求項1又は2において、前記樹脂が、エチレン、プロピレン及び非共役ジエンモノマーからなる三元重合体であることを特徴とする。前記三元重合体を用いることにより、層間の結合力をさらに高めることができる。
本発明の請求項に記載のゴム成形品の製造方法は、請求項1〜の何れか一項において、前記絶縁ゴム層が、エチレン−プロピレン−ジエンゴムを含む層であることを特徴とする。前記絶縁ゴムとしてEPDMを用いることにより、層間の結合力をさらに高めることができる。
本発明の請求項に記載のゴム成形品の製造方法は、請求項1〜の何れか一項において、前記樹脂組成物中に炭素材料を含有することを特徴する。前記炭素材料を当該組成物中に含有させることにより、半導電ゴム層に導電性を付与するとともに、層間の結合力をさらに高めることができる。
【0008】
本発明の請求項に記載の電気部品の製造方法は、導体を有する基材上に、絶縁ゴム用の未架橋の樹脂組成物を被覆して架橋硬化することにより絶縁ゴム層を形成し、さらに前記絶縁ゴム層上に、半導電ゴム用の未架橋の樹脂組成物を被覆して架橋硬化することにより半導電ゴム層を形成することを含む電気部品の製造方法であって、前記半導電ゴム用の未架橋の樹脂組成物中の樹脂100質量部に対するラジカル発生剤の含有量が3〜6質量部であることを特徴とする。さらに、前記樹脂が、エチレン及びプロピレンを含む共重合体であることを特徴とする。
本発明の電気部品の製造方法によれば、前記基材が複雑な形状である場合にも、前記絶縁ゴム層と前記半導電ゴム層とを個別に形成するため、前記基材を被覆する絶縁部分を確実に形成することができる。さらに、前記絶縁ゴム層と前記半導電ゴム層との結合力を向上させることができる。


【発明の効果】
【0009】
本発明のゴム成形品の製造方法によれば、予め架橋硬化した絶縁ゴム層上に半導電ゴム用の樹脂組成物を積層した後、該樹脂組成物を架橋硬化して得られる積層型のゴム成形品において、当該絶縁ゴム層と当該半導電ゴム層との層間の結合力を向上させることができる。
本発明の電気部品の製造方法によれば、導電体を有する基材上に、絶縁ゴム層及び半導電ゴム層をこの順で個別に形成することによって、当該基材を確実に被覆する絶縁部分を確実に形成することができる。さらに、当該絶縁ゴム層と当該半導電ゴム層間の結合力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例において作製したゴム成形品の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明は係る実施形態に限定されない。
<ゴム成形品の製造方法>
本発明に係るゴム成形品の製造方法は、予め架橋硬化した絶縁ゴム層上に、半導電ゴム用の未架橋の樹脂組成物を積層して架橋硬化することにより半導電ゴム層を形成する工程を含む。
前記ゴム成形品は、単独で機能するゴム製品であっても良いし、他の工業製品の一部を構成していても良い。後者の場合、前記工程は前記工業製品の製造工程に含まれていても良いし、他の工程とは独立していても良い。
【0012】
前記絶縁ゴム層は、基材の上に形成されていても良いし、単独で所定の形状を形成していても良い。つまり、前記絶縁ゴム層の厚さや形状は特に制限されない。
前記基材としては、電流が流れる導体又は該導体が他の部材によって被覆されたものであることが好ましい。前記他の部材は特に制限されず、例えば半導電ゴム層が挙げられる。この構成の例としては前述した3層構造を有する電力ケーブルが挙げられる。
前記導体としては、例えば一般の電気部品に用いられる導体が適用可能であり、具体的には電力ケーブル(電線)の芯を構成する金属部材や電子基板の表面配線等が挙げられる。
【0013】
[絶縁ゴム層]
前記予め架橋硬化した絶縁ゴム層を構成する樹脂としては、後で積層する半導電ゴム層を構成する樹脂と架橋可能なものが好ましい。前記架橋は酸素ラジカル等のラジカルによって生じることが好ましい。具体的には、前記樹脂は、エチレン、プロピレン、イソプレン、アクリロニトリル、クロロプレン、スチレン、非共役ジエンモノマー等のモノマーが重合した共重合体であることが好ましく、エチレン、プロピレン及び非共役ジエンからなる三元重合体であることがより好ましい。
また、前記樹脂が架橋して構成する前記絶縁ゴム層の主たるゴム成分としては、エチレン−プロピレンゴム(EP)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム又はウレタンゴムが好ましい。
前記絶縁ゴム層を構成する樹脂及びゴム成分は、1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合の樹脂又はゴム成分の組み合わせや配合比は、ゴム成形品の用途に応じて適宜選択される。
【0014】
EPDMは、主たるモノマーとしてエチレン及びプロピレンを使用し、さらに、重合性不飽和結合(二重結合)を有する非共役ジエンモノマーを少量使用して、これらモノマーを共重合させて得られたものである。各モノマーの配合率は求められるゴムの特性に応じて適宜調整される。
【0015】
前記非共役ジエンモノマーとしては、公知のものが使用でき、好ましいものとして5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、ビニルノルボルネン(VNB)、ジシクロペンタジエン(DCPD)、1,4−ヘキサジエン(1,4−HD)、1,3−ブタジエンが例示できる。前記非共役ジエンモノマーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0016】
前記絶縁ゴム層は、従来公知の方法で形成することができる。例えば、前記樹脂及び架橋剤を含む絶縁ゴム用の未架橋の樹脂組成物を調製し、該樹脂組成物を適当な基材上で架橋硬化させることにより形成することができる。前記樹脂組成物中の前記樹脂の含有量は、35〜95質量%であることが好ましく、40〜70質量%であることが好ましい。このような範囲とすることで、特性がより良好な絶縁ゴム層が得られる。当該樹脂組成物中の残部は、例えば希釈用の溶媒で構成することができる。
【0017】
前記絶縁ゴム用の未架橋の樹脂組成物に含まれる樹脂(重合体)同士を架橋させ、硬化したゴムを得る方法は特に制限されず、例えば加硫又はラジカルによる方法が適用できる。前記樹脂組成物中に架橋硬化のためのラジカルを発生させる方法としては、例えば、光照射又は加熱によってラジカルを発生するラジカル発生剤(架橋剤)を当該樹脂組成物中に含有させる方法が挙げられる。ラジカル発生剤の含有量、光照射及び加熱の条件は、使用するラジカル発生剤の種類や架橋させる樹脂の種類等に応じて適宜調整されるが、通常、樹脂100質量部に対して、1.5〜2.5質量部の範囲で設定すれば良い。
【0018】
前記絶縁ゴム層の硬度は特に制限されないが、例えば45〜70が好ましく、50〜70がより好ましく、55〜65がさらに好ましい。前記硬度の規格は、「JIS K 6253−2006」である。
上記範囲内の硬度であると、上に積層する半導電ゴム層との結合力又は密着性を高められる。
【0019】
前記絶縁ゴム層の表面の性状は特に制限されず、上に半導電ゴム組成物を積層できる状態であれば良い。前記表面は平滑な面であっても良いし、前記表面に凹凸を形成したり、サンドブラスター等を用いて前記表面を粗くしても良い。前記絶縁ゴム層の表面に対して非平滑化処理を行うことにより、上に積層する半導電ゴム層の密着性を向上させられる場合がある。
【0020】
[半導電ゴム層の形成方法]
前記半導電ゴム層は、予め架橋硬化した前記絶縁ゴム層の上に、前記半導電ゴム用の未架橋の樹脂組成物を積層し、その積層した半導電ゴム用の樹脂組成物を架橋硬化させることにより形成される。これにより、絶縁ゴム層の上に半導電ゴム層が積層された積層型のゴム成形品が形成される。前記半導電ゴム層の厚さ及び前記ゴム成形品の形状は、特に限定されず、用途に応じて適宜選択すれば良い。
【0021】
前記積層の方法は特に限定されず、従来公知の押し出し機を用いた方法や、スピンコート法、スクリーン印刷法などが適用可能である。積層後、加熱処理又は光照射処理等を行い、ラジカルを発生させて架橋硬化させる。
また、積層と架橋硬化を連続的に行う方法も適用できる。具体的には、型を用いて成形するモールド加工が挙げられる。プレス板の上に前記絶縁ゴム層を配置し、該絶縁ゴム層上に前記半導電ゴム用の未架橋の樹脂組成物を塗工し、適当な厚さのスペーサーを用いて、別のプレス板を載せる。その後、加熱及び加圧するモールド加工を行うことにより、前記型の形状に沿った形状のゴム成形品が得られる。
【0022】
前記加熱の温度としては、155〜220℃が好ましく、165〜200℃がより好ましく、170〜185℃がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、前記半導電ゴム層の層内における架橋硬化だけでなく、前記絶縁ゴム層との層間の架橋を充分に促進して、層間の結合力を充分に向上させることができる。上記範囲の上限値以下であると、架橋硬化の速度が過度に高まって、架橋硬化が不均一になることを抑制し、均一に架橋硬化させることができる。
【0023】
前記加圧の圧力としては、2.0〜10.0MPaが好ましく、3.0〜9.0MPaがより好ましく、5.0〜8.0MPaがさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、前記絶縁ゴム層との層間の架橋を充分に促進して、層間の結合力を充分に向上させることができる。上記範囲の上限値以下であると、形成されるゴム成形品の弾性を充分に確保することができる。
【0024】
[半導電ゴム用の樹脂組成物]
前記半導電ゴム層を構成する樹脂としては、前記絶縁ゴム層を構成する樹脂と架橋可能なものが好ましく、前記絶縁ゴム層を構成する樹脂と同じ樹脂であることがより好ましい。同じ樹脂を用いることにより、前記絶縁ゴム層と前記半導電ゴム層との架橋が起こる確率を高めて、層間の結合力をさらに向上させることができる。
前記層間の熱安定性を高める観点から、前記層間の架橋はラジカルによって形成されることが好ましい。
【0025】
前記半導電ゴム層を構成する樹脂は、前記絶縁ゴム層を構成する樹脂として例示したものが適用できる。これらの中でも、前記層間の結合力を高める観点から、エチレン及びプロピレンを含む共重合体が好ましく、エチレン、プロピレン及び非共役ジエンからなる三元重合体であることがより好ましいい。具体的には、前記半導電ゴム層を構成する主たるゴム成分としては、エチレン−プロピレンゴム(EP)及びエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム又はウレタンゴムが好ましく、EP又はEPDMがより好ましい。
【0026】
前記絶縁ゴム層及び前記半導電ゴム層が共にEP又はEPDMを含有することにより、当該層間の結合力を一層高めることができる。この理由は未解明であるが、各層の表面を構成するEP又はEPDMの分子運動が、層間の架橋を促進する程度に高いためであると推測される。
【0027】
前記半導電ゴム層を構成する樹脂及びゴム成分は、1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合の樹脂又はゴム成分の組み合わせや配合比は、ゴム成形品の用途に応じて適宜選択される。
【0028】
前記半導電ゴム層は、前記樹脂及びラジカル発生剤を含む半導電ゴム用の樹脂組成物を調製し、該半導電ゴム用の樹脂組成物を前記絶縁ゴム層に積層して、架橋硬化させることにより形成できる。
ただし、本発明に係る製造方法においては、前記半導電ゴム用の樹脂組成物中の前記樹脂100質量部に対するラジカル発生剤の含有量を3〜6質量部とする。この割合であることにより、半導電ゴム用の樹脂組成物の架橋硬化時に当該組成物中のラジカル発生剤が充分な量のラジカルを供給するため、層内部の架橋硬化だけでなく、絶縁ゴム層と半導電ゴム層間の架橋も行われる。この結果、層間の結合力が充分に高められる。一方、前記ラジカル発生剤の含有量が3質量部未満であると、当該層間の結合力を高める程には層間の架橋が促進されない。また、6質量部超であると、架橋硬化のタイミングや速度を制御することが困難になり、当該樹脂組成物の架橋硬化が意図しない時に開始されたり、層内で架橋の程度にムラが生じて所定の形状に成形することが困難になる等の問題が発生する。
前記半導電ゴム用の樹脂組成物中に前記割合でラジカル発生剤を含有させること以外は、従来公知の半導電ゴム層の形成方法を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適用することができる。
【0029】
前記半導電ゴム用の樹脂組成物中の前記樹脂100質量部に対するラジカル発生剤の含有量は、3〜6質量部が好ましく、4〜6質量部がより好ましく、5〜6質量部がさらに好ましい。上記範囲内であれば、ラジカル発生剤の含有量が高い程、層間の結合力を高めることができる。
【0030】
前記半導電ゴム用の樹脂組成物中に希釈溶媒等を過剰に添加した場合、樹脂を架橋硬化させるラジカル発生剤の実効濃度が低くなる虞がある。これを防ぐために、当該樹脂組成物中のラジカル発生剤の濃度は、1.70〜3.50質量%であることが好ましく、2.00〜3.40質量%であることが好ましく、2.50〜3.30質量%であることがさらに好ましい。
上記範囲内であれば、ラジカル発生剤の実効濃度を充分に高めて、樹脂組成物を充分に架橋硬化させることができると共に、層間の結合力を高めることができる。
【0031】
前記半導電ゴム用の樹脂組成物中の前記樹脂の含有量は、35〜95質量%であることが好ましく、40〜70質量%であることが好ましい。このような範囲とすることで、絶縁層との結合力を一層向上させることができる。当該樹脂組成物中の残部は、例えば希釈用の溶媒で構成することができる。
【0032】
前記ラジカル発生剤としては、光照射又は加熱によってラジカルを発生するものが好ましく、加熱によってラジカルを発生するものが好ましい。加熱することにより、ラジカルが発生するだけでなく、前記半導電ゴム用の樹脂組成物中の樹脂の分子運動を高めて、絶縁ゴム層との界面における層間を跨いだ架橋をさらに促進させることができる。前記加熱の温度としては、155〜220℃が好ましく、165〜200℃がより好ましく、170〜185℃がさらに好ましい。
【0033】
前記ラジカル発生剤は、化学構造中にペルオキシ基(−O−O−)及び有機基を有する過酸化物、すなわち有機過酸化物であることがより好ましい。前記有機基は炭素原子を有する基であれば特に制限されない。
【0034】
前記有機過酸化物としては、例えばジクミルパーオキサイド(DCP)、t−ブチルクミルパ−オキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキシン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン等が挙げられる。これらの中でも、層間の架橋を促進して、当該層間の結合力を充分に高められることから、DCPが好ましい。
前記ラジカル発生剤は、1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。2種以上を併用する場合であっても、前記半導電ゴム用の樹脂組成物中の樹脂100質量部に対するラジカル発生剤の総量は前記含有量である。
【0035】
前記半導電ゴム層は前記絶縁ゴム層に比べて格段に高い導電性を有する。前記導電性を付与するために、前記半導電ゴム層には導電性物質が含まれることが好ましい。
前記導電性物質としては、従来公知の半導電性ゴムに含有されるものが適用可能であり、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラフェン等の炭素材料が好適である。
【0036】
前記炭素材料の前記半導電ゴム用の樹脂組成物における含有量としては、樹脂100質量部に対して、20〜100質量部であることが好ましく、30〜100質量部であることがより好ましく、40〜80質量部であることがさらに好ましい。
前記炭素材料の含有量が20質量部未満であると、半導電層として必要な導電性を付与することが困難となる。前記炭素材料の含有量が100質量部を超えると、当該半導電ゴム層の機械的特性が低下したり、前記絶縁ゴム層との結合力が充分に高まらない場合がある。
【0037】
前記半導電ゴム用の樹脂組成物には、その他の材料として、充填剤、着色剤、油剤、滑剤、安定剤、酸化防止剤、架橋助剤等を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で含有させても構わない。
【0038】
前記架橋助剤として硫黄(S)を用いることができる。この場合、架橋助剤としての硫黄の含有量は、前記ラジカル発生剤の含有量とは独立したものである。
前記架橋助剤としての硫黄の含有量は、前記樹脂100質量部に対して0.1〜0.5質量部が好ましく、0.15〜0.4質量部がより好ましく、0.2〜0.3質量部がさらに好ましい。
【0039】
前記絶縁ゴム用の樹脂組成物及び半導電ゴム用の樹脂組成物の調製は、各成分を配合して、さらに各種手段により充分に混合することにより行われることが好ましい。この際、各成分は、これらを順次添加しながら混合してもよいし、全成分を一度に混合してもよい。
前記各成分の混合方法は、特に限定されず、例えば、撹拌翼、ボールミル、超音波分散機、混錬機等を使用して、常温又は加熱条件下で所定時間混合する公知の方法を適用すればよい。
【0040】
調製した前記絶縁ゴム用の樹脂組成物及び半導電ゴム用の樹脂組成物のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、20〜100が好ましく、20〜80がより好ましく、30〜60がさらに好ましい。
ここで、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、「JIS K6300−1:(2001)」又は「国際規格ASTM D 1646」に準拠した方法で測定した値である。上記範囲であることにより、各樹脂組成物を容易に積層することができる。
【0041】
<ゴム成形品>
本発明の製造方法よって得られるゴム成形品は、前記絶縁ゴム層上に前記半導電ゴム層が積層された積層構造を有する。
前記ゴム成形品は、単独で機能するゴム製品であっても良いし、他の工業製品の一部を構成していても良い。前記成形品の用途としては、電気部品の絶縁部を構成する部材としての使用が好ましい。
前記ゴム成形品の形状は特に制限されず、ブロック状、板状、シート状、フィルム状、円筒状など、その用途に応じて適宜選択される。
【0042】
<電気部品の製造方法>
本発明に係る電気部品の製造方法は、前述したゴム成形品の製造方法を適用することができる。本発明の電気部品の製造方法は、主に二つの工程に分けて説明することができる。
【0043】
[第一工程]
第一工程は、導体を有する基材上に、絶縁ゴム用の未架橋の樹脂組成物を被覆して架橋硬化することにより絶縁ゴム層を形成する工程である。
前記基材上に前記絶縁ゴム用の樹脂組成物を被覆する方法としては、当該電気部品において要求される絶縁特性を満たすように被覆する方法が好ましい。このような方法として、従来公知の押し出し機を用いた方法や、スピンコート法、スクリーン印刷法、型を用いて成形するモールド加工などが適用可能である。当該絶縁ゴム層の厚さ及び形状は、特に限定されなず、前記基材の形状や用途に応じて適宜選択すれば良い。
【0044】
前記基材としては、電流が流れる導体又は該導体が他の部材によって被覆されるものであることが好ましい。前記他の部材は特に制限されず、例えば半導電ゴム層が挙げられる。この構成の例としては前述した3層構造を有する電力ケーブルが挙げられる。
前記基材が有する導体は、当該電気部品を構成する電線又は配線であることが好ましい。前記導体の具体例として、従来公知の電力ケーブル(電線)の芯を構成する金属部材や電子基板の表面配線等が挙げられる。
【0045】
前記絶縁ゴム用の樹脂組成物及び絶縁ゴム層の説明は、前述したゴム成形品の製造方法における説明と同じであるため、ここでは省略する。
【0046】
[第二工程]
第二工程は、前記絶縁ゴム層上に、半導電ゴム用の未架橋の樹脂組成物を被覆して架橋硬化することにより半導電ゴム層を形成する工程である。この際、前記半導電ゴム用の樹脂組成物中の樹脂100質量部に対するラジカル発生剤の含有量を3〜6質量部とする。
第一工程において形成した絶縁ゴム層は第二工程においては既に架橋硬化した状態にある。この絶縁ゴム層上に半導電ゴム層を被覆する方法の説明は、前述したゴム成形品の製造方法における説明と同じであるため、ここでは省略する。
【0047】
本発明の電気部品の製造方法によれば、前記基材が複雑な形状である場合にも、前記絶縁ゴム層と前記半導電ゴム層とを個別に形成するため、前記基材を被覆する絶縁部分を確実に形成することができる。さらに、前記絶縁ゴム層と前記半導電ゴム層との結合力を向上させることができる。
【実施例】
【0048】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0049】
[実施例1〜4、比較例1〜2]
<絶縁ゴム用の樹脂組成物及び半導電ゴム用の樹脂組成物の調製>
表1に示す組成となるように、まず、ラジカル発生剤(架橋剤)及び硫黄(架橋助剤)を除く各成分を配合し、2本ロールを使用して120℃で10〜15分間ロール混錬した後、さらに、ラジカル発生剤及び硫黄を添加して、50℃で5〜10分間混錬して、未架橋の、絶縁ゴム用の樹脂組成物及び半導電ゴム用の樹脂組成物を調製した。
各樹脂組成物のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、それぞれ絶縁ゴム用樹脂組成物が38、半導電ゴム用樹脂組成物41〜42であった。
【0050】
【表1】
【0051】
ここで、表1中の略号はそれぞれ以下を意味する。
・「phr」:質量部を意味する。
・「三井EPT3045」:三井化学社製のエチレン、プロピレン及び5−エチリデン−2−ノルボルネンの三元共重合体(EPDM)である。
・「デキシークレー」:R.T.ヴァンダービルト社製の充填剤である。
・「カーボン旭♯35」:旭カーボン社製の着色用の炭素材料である。
・「アセチレンブラック」:電気化学工業社製の導電性付与のための炭素材料である。
・「コウモレックスH22」:日本石油社製(現JX日鉱日石エネルギー)の加工性を付与するための油剤である。
・「パラフィン」:日本石油社製(現JX日鉱日石エネルギー)の製品の金型からの剥離加工性を向上させるための滑剤である。
・「ステアリン酸亜鉛」:堺化学社製の加工性を向上させるための滑剤である。
・「ノクラック300R」:大内新興化学工業社製の製造時・使用時の熱劣化・酸化劣化防止のための酸化防止剤である。
・「亜鉛華(酸化亜鉛)」:堺化学社製の架橋を促進するための安定剤である。
・「いおう」:鶴見化学社製の架橋助剤である。
・「DCP」:日本油脂社製(現日油)のラジカル発生剤である。
【0052】
<ゴム成形品の作製>
調製した絶縁ゴム用の樹脂組成物を適当な基材上に塗布して、170℃で15分間加熱成形し、縦100mm×横25mm×厚さ2mmのシート状の絶縁ゴム層を得た。この上に、調製した半導電ゴム用の樹脂組成物を厚さ2mmで積層した。この際、縦方向の一端から40mmの部分(口出し部)にマイラーシートを挿入し、当該部分では絶縁ゴム層と半導電ゴム層とが接触しないようにした。この積層体を、3.8mm厚のスペーサを用いてプレス板に挟み、170℃で15分間加熱すると共に、圧力7.0MPaでプレスし、図1に示すゴム成形品10を作製した。
【0053】
<層間の結合力の評価>
作製したゴム成形品10を用いて、マイラーシート3を挿入することにより層間の結合を妨げた口出し部を、株式会社東洋精機製作所製の引張試験機(ストログラフR1)のチャックで摘まみ、絶縁ゴム層1を上方向へ、半導電ゴム層2を下方向へ引張り、層間結合した領域(口出し部以外の領域)を剥離させるように引張った。この引張り試験は、温度100℃のオーブン内で、200mm/分の引張り速度で行い、その剥離状況を評価した。
【0054】
剥離状況を観察して、界面(各層の表面)がそのまま現れている場合を「はく離」(×)、一方のゴムが他方のゴム層の表面に付着している(残っている)場合は「凝集破壊」(○)、層間の剥離が起こらず、チャックで摘んだ何れかのゴム層の口出し部が切れた場合は「伸び切れ」(◎)として評価した。この結果を表1に併記した。
・「はく離」 (×):絶縁ゴム層1と半導電ゴム層2の結合が不良である。
・「凝集破壊」(○):絶縁ゴム層1と半導電ゴム層2の結合が良好である。
・「伸び切れ」(◎):絶縁ゴム層1と半導電ゴム層2の結合が一層良好である。
【0055】
以上の結果から、本発明に係る実施例1〜4は、比較例1〜2と比べて、ゴム成形品における当該層間の結合力(接着力)が優れていることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、電力ケーブル等の電気部品の製造に利用可能である。
図1