特許第5873399号(P5873399)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873399
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】冷却水循環装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20160216BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20160216BHJP
   F01P 3/12 20060101ALI20160216BHJP
   F01P 11/00 20060101ALI20160216BHJP
   F01P 11/04 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   F01N3/08 BZAB
   F01N3/24 L
   F01P3/12
   F01P11/00 Z
   F01P11/04 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-142625(P2012-142625)
(22)【出願日】2012年6月26日
(65)【公開番号】特開2014-5786(P2014-5786A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2015年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小和田 稔
【審査官】 今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−44483(JP,A)
【文献】 特開2003−328755(JP,A)
【文献】 特開2009−270485(JP,A)
【文献】 特開2012−7511(JP,A)
【文献】 特開2010−90788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/02−3/38
F01P 3/12
F01P 11/00
F01P 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿素インジェクタがエンジンより高く配置されたNOx低減システムに用いられる冷却水循環装置であって、エンジンから導いた冷却水を尿素インジェクタを経由させてから前記エンジンに戻す系路の最も高い位置に第一の三方分岐部を設けて上向きの第一エア抜き口を増設し、該第一エア抜き口を前記尿素インジェクタより高所に配置されている冷却水の注水タンクに対しエア抜き連絡管を介して接続したことを特徴とする冷却水循環装置。
【請求項2】
エンジンから導いた冷却水を冷却水遮断弁を介し尿素水ポンプと尿素水タンクを経由させてから前記エンジンに戻す系路を備え、該系路におけるエンジンから尿素水タンクに向かう往路の冷却水遮断弁の入側を前記往路における最も高い位置とし且つ該位置に第二の三方分岐部を設けて上向きの第二エア抜き口を増設すると共に、前記尿素水タンクから前記エンジンに戻る復路の途中を前記復路における最も高い位置とし且つ該位置に第三の三方分岐部を設けて上向きの第三エア抜き口を増設し、前記第二エア抜き口から導いた冷却水を前記尿素インジェクタを経由させて前記第三エア抜き口に戻すように構成したことを特徴とする請求項1に記載の冷却水循環装置。
【請求項3】
尿素インジェクタに対する冷却水の出入口に高低差を付けることで冷却水を低い側から導入して高い側から抜き出すように構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の冷却水循環装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NOx低減システムの冷却水循環装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ディーゼルエンジンにおいては、排気ガスが流通する排気管の途中に、酸素共存下でも選択的にNOx(窒素酸化物)をアンモニアと反応させる性質を備えた選択還元型触媒を装備し、該選択還元型触媒の上流側に必要量の尿素水を添加して該尿素水を次式によりアンモニアと炭酸ガスに熱分解させ、このうちのアンモニアを還元剤として選択還元型触媒上で排気ガス中のNOxと還元反応させ、これによりNOxの排出濃度を低減し得るようにしたものがある。
[化1]
(NH22CO+H2O→2NH3+CO2
【0003】
選択還元型触媒の上流側で排気ガス中に尿素水を添加するにあたっては、高温の排気ガスが流れる排気管に尿素インジェクタを配置し、該尿素インジェクタにより尿素水の添加が行われることになるが、高温環境下に晒される尿素インジェクタが焼付きを起こさないよう該尿素インジェクタを水冷する必要があり、図2に示すように、エンジン1を水冷している冷却水2の一部が尿素インジェクタ3を経由してから前記エンジン1に戻されるようになっている。
【0004】
ここで、エンジン1からの冷却水2は、前記尿素インジェクタ3の入側で三方分岐部4を介し分岐されて冷却水遮断弁5を介し尿素水ポンプ6と尿素水タンク7にも経由されるようになっていると共に、これら尿素水ポンプ6と尿素水タンク7を経由した冷却水2が三方分岐部8を介し前記尿素インジェクタ3を経た冷却水2と合流されてエンジン1に戻されるようになっており、厳冬期等に尿素水ポンプ6や尿素水タンク7で尿素水が凍結した際に、前記冷却水遮断弁5を開けて尿素水ポンプ6や尿素水タンク7に冷却水2を経由させることで尿素水を解凍できるようにしてある。また、図中9はエンジン1やラジエータ等を含む全ての水冷系統を満水とするべく最上位置で冷却水2を注水されるヘッダタンクを示す。
【0005】
尚、この種の冷却水循環装置に関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−7511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述の如き選択還元型触媒を用いたNOx低減システムは、車両だけでなく油圧ショベル等の建設機械にも適用することが検討されており、建設機械に適用した場合には、選択還元型触媒を収容させるためのマフラが、レイアウト上の制約からエンジン1後方の高所にしか設置できないため、尿素インジェクタ3の配置位置も自ずから高所となって該尿素インジェクタ3に冷却水2を経由させるための系路のエア抜き性が悪くなり、該系路内に生じたエア溜まりにより尿素インジェクタ3に対する水冷機能に悪影響を与える虞れがあった。
【0008】
即ち、トラック等の車両へのNOx低減システムの適用では、各構成要素をフレーム沿いに配置することができて高低差の小さいレイアウトを実現することができるため、これまで冷却水2の系路内のエア抜き性が問題になるようなことはなかったが、建設機械への搭載では、車両に適用する場合のような高低差の小さいレイアウトを実現することが難しく、尿素インジェクタ3がエンジン1より高く配置されることで高低差が大きくなって系路内にエア溜まりが生じ易くなることが懸念されている。
【0009】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、尿素インジェクタがエンジンより高く配置されていても、この尿素インジェクタにエンジンからの冷却水を経由させる系路のエア抜き性を良好に維持し得るようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、尿素インジェクタがエンジンより高く配置されたNOx低減システムに用いられる冷却水循環装置であって、エンジンから導いた冷却水を尿素インジェクタを経由させてから前記エンジンに戻す系路の最も高い位置に第一の三方分岐部を設けて上向きの第一エア抜き口を増設し、該第一エア抜き口を前記尿素インジェクタより高所に配置されている冷却水の注水タンクに対しエア抜き連絡管を介して接続したことを特徴とするものである。
【0011】
而して、このようにすれば、エンジンから導いた冷却水により尿素インジェクタを水冷するにあたり、この尿素インジェクタにエンジンからの冷却水を経由させる系路内のエアが第一の三方分岐部に集められて第一エア抜き口に抜き出され、ここからエア抜き連絡管を通して注水タンクに回収され、該注水タンクにて気水分離されてエア抜きされることになる。
【0012】
また、本発明においては、エンジンから導いた冷却水を冷却水遮断弁を介し尿素水ポンプと尿素水タンクを経由させてから前記エンジンに戻す系路を備え、該系路におけるエンジンから尿素水タンクに向かう往路の冷却水遮断弁の入側を前記往路における最も高い位置とし且つ該位置に第二の三方分岐部を設けて上向きの第二エア抜き口を増設すると共に、前記尿素水タンクから前記エンジンに戻る復路の途中を前記復路における最も高い位置とし且つ該位置に第三の三方分岐部を設けて上向きの第三エア抜き口を増設し、前記第二エア抜き口から導いた冷却水を前記尿素インジェクタを経由させて前記第三エア抜き口に戻すように構成することが好ましい。
【0013】
このようにすれば、冷却水遮断弁を開けてエンジンから導いた冷却水により尿素水ポンプと尿素水タンクを解凍するにあたり、エンジンから尿素水タンクに向かう往路内のエアが第二の三方分岐部に集められて第二エア抜き口に抜き出され、ここから尿素インジェクタ、第一の三方分岐部、エア抜き連絡管を通して注水タンクに回収されると共に、尿素水タンクから前記エンジンに戻る復路内のエアが第三の三方分岐部に集められて第三エア抜き口に抜き出され、ここから第一の三方分岐部、エア抜き連絡管を通して注水タンクに回収されるので、前記往路及び復路の何れから回収されたエアも前記注水タンクにて気水分離されてエア抜きされることになる。
【0014】
更に、本発明においては、尿素インジェクタに対する冷却水の出入口に高低差を付けることで冷却水を低い側から導入して高い側から抜き出すように構成することが好ましく、このようにすれば、尿素インジェクタの冷却水路におけるエア抜き性が向上され、尿素インジェクタにおけるエア溜まりが生じ難くなる。
【発明の効果】
【0015】
上記した本発明の冷却水循環装置によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0016】
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、尿素インジェクタがエンジンより高く配置されていても、この尿素インジェクタにエンジンからの冷却水を経由させる系路内のエアを第一の三方分岐部に集めて第一エア抜き口から抜き出し、ここからエア抜き連絡管を通し注水タンクに回収してエア抜きすることができるので、尿素インジェクタに冷却水を経由させるための系路のエア抜き性を良好に維持することができ、該系路内に生じたエア溜まりにより尿素インジェクタに対する水冷機能に悪影響が及ぶ虞れを未然に回避することができる。
【0017】
(II)本発明の請求項2に記載の発明によれば、冷却水遮断弁を開けてエンジンから導いた冷却水により尿素水ポンプと尿素水タンクを解凍するにあたり、これら尿素水ポンプ及び尿素水タンクにエンジンからの冷却水を経由させる系路の往路及び復路の何れにおいても、第二の三方分岐部及び第三の三方分岐部に集めて第二エア抜き口及び第三エ1ア抜き口から抜き出し、ここからエア抜き連絡管を通し注水タンクに回収してエア抜きすることができるので、尿素水ポンプ及び尿素水タンクに冷却水を経由させるための系路のエア抜き性を良好に維持することができ、該系路内に生じたエア溜まりにより尿素水ポンプ及び尿素水タンクに対する解凍機能に悪影響が及ぶ虞れを未然に回避することができる。
【0018】
(III)本発明の請求項3に記載の発明によれば、尿素インジェクタの冷却水路におけるエア抜き性を向上し、尿素インジェクタにおけるエア溜まりを生じ難くすることができるので、該エア溜まりにより尿素インジェクタに対する水冷機能に悪影響が及ぶ虞れをより確実に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明を実施する形態の一例を示す概略図である。
図2】従来例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0021】
図1は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図2と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0022】
図1に示す如く、本形態例においては、図示しない排気管の途中に備えられた選択還元型触媒の上流側に還元剤として尿素水を添加するための尿素インジェクタ3がエンジン1より高く配置されたNOx低減システムを適用対象としており、先に説明した図2の従来例の場合と同様に、エンジン1を水冷している冷却水2の一部が尿素インジェクタ3を経由してから前記エンジン1に戻されるようになっていると共に、エンジン1からの冷却水2が冷却水遮断弁5を介し尿素水ポンプ6と尿素水タンク7にも経由されるようになっている。
【0023】
ただし、エンジン1から導いた冷却水2を尿素インジェクタ3を経由させてから前記エンジン1に戻す系路の最も高い位置には、三方分岐部10が設けられていて上向きのエア抜き口10aが増設されており、このエア抜き口10aは、前記尿素インジェクタ3より高所に配置されているヘッダタンク9に対しエア抜き連絡管11を介して接続されている。
【0024】
ここに図示している例では、ヘッダタンク9を注水タンクとしてエア抜き連絡管11でエア抜き口10aと接続した場合を例示しているが、尿素インジェクタ3より高い位置にラジエータのヘッダ(図示せず)が配置されている場合には、このラジエータのヘッダを注水タンクとしてエア抜き連絡管11でエア抜き口10aと接続するようにしても良い。
【0025】
更に、エンジン1から導いた冷却水2を冷却水遮断弁5を介し尿素水ポンプ6と尿素水タンク7を経由させてから前記エンジン1に戻す系路において、エンジン1から尿素水タンク7に向かう往路の冷却水遮断弁5の入側が最も高い位置となっていて、該位置に三方分岐部12が設けられて上向きのエア抜き口12aが増設されていると共に、前記尿素水タンク7から前記エンジン1に戻る復路の途中が前記復路における最も高い位置となっていて、該位置に三方分岐部13が設けられて上向きのエア抜き口13aが増設されており、前記エア抜き口12aから導いた冷却水2が前記尿素インジェクタ3を経由して前記エア抜き口13aに戻されるようになっている。
【0026】
しかも、既存の尿素インジェクタ3は、冷却水2の出入口が略水平に並んでいて、入口から導入した冷却水2を尿素インジェクタ3の冷却水2路を巡らせてから同じ高さ位置の出口に戻すようになっているが、本形態例では、尿素インジェクタ3に対する冷却水2の出入口に高低差を付けることで冷却水2を低い側から導入して高い側から抜き出すように構成してある。
【0027】
而して、このようにすれば、エンジン1から導いた冷却水2により尿素インジェクタ3を水冷するにあたり、この尿素インジェクタ3にエンジン1からの冷却水2を経由させる系路内のエアが三方分岐部10に集められてエア抜き口10aに抜き出され、ここからエア抜き連絡管11を通してヘッダタンク9に回収され、該ヘッダタンク9にて気水分離されてエア抜きされることになる。この際、尿素インジェクタ3は、冷却水2の出入口に高低差を付けることで冷却水2を低い側から導入して高い側から抜き出すように構成されているので、尿素インジェクタ3の冷却水2路におけるエア抜き性も向上されることになる。
【0028】
また、冷却水遮断弁5を開けてエンジン1から導いた冷却水2により尿素水ポンプ6と尿素水タンク7を解凍するにあたり、エンジン1から尿素水タンク7に向かう往路内のエアが三方分岐部12に集められてエア抜き口12aに抜き出され、ここから尿素インジェクタ3、三方分岐部10、エア抜き連絡管11を通してヘッダタンク9に回収されると共に、尿素水タンク7から前記エンジン1に戻る復路内のエアが三方分岐部13に集められてエア抜き口13aに抜き出され、ここから三方分岐部10、エア抜き連絡管11を通してヘッダタンク9に回収されるので、前記往路及び復路の何れから回収されたエアも前記ヘッダタンク9にて気水分離されてエア抜きされることになる。
【0029】
従って、上記形態例によれば、尿素インジェクタ3がエンジン1より高く配置されていても、この尿素インジェクタ3にエンジン1からの冷却水2を経由させる系路内のエアを三方分岐部10に集めてエア抜き口10aから抜き出し、ここからエア抜き連絡管11を通しヘッダタンク9に回収してエア抜きすることができるので、尿素インジェクタ3に冷却水2を経由させるための系路のエア抜き性を良好に維持することができ、該系路内に生じたエア溜まりにより尿素インジェクタ3に対する水冷機能に悪影響が及ぶ虞れを未然に回避することができる。
【0030】
特に本形態例においては、尿素インジェクタ3に対する冷却水2の出入口に高低差を付けることで冷却水2を低い側から導入して高い側から抜き出すように構成してあるので、尿素インジェクタ3の冷却水2路におけるエア抜き性を向上し、尿素インジェクタ3におけるエア溜まりを生じ難くすることができ、該エア溜まりにより尿素インジェクタ3に対する水冷機能に悪影響が及ぶ虞れをより確実に回避することができる。
【0031】
また、冷却水遮断弁5を開けてエンジン1から導いた冷却水2により尿素水ポンプ6と尿素水タンク7を解凍するにあたり、これら尿素水ポンプ6及び尿素水タンク7にエンジン1からの冷却水2を経由させる系路の往路及び復路の何れにおいても、三方分岐部12及び三方分岐部13に集めてエア抜き口12a及び第三エア抜き口13aから抜き出し、ここからエア抜き連絡管11を通しヘッダタンク9に回収してエア抜きすることができるので、尿素水ポンプ6及び尿素水タンク7に冷却水2を経由させるための系路のエア抜き性を良好に維持することができ、該系路内に生じたエア溜まりにより尿素水ポンプ6及び尿素水タンク7に対する解凍機能に悪影響が及ぶ虞れを未然に回避することができる。
【0032】
尚、本発明の冷却水循環装置は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、必ずしも建設機械への適用に限定されないこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0033】
1 エンジン
2 冷却水
3 尿素インジェクタ
5 冷却水遮断弁
6 尿素水ポンプ
7 尿素水タンク
9 ヘッダタンク(注水タンク)
10 三方分岐部(第一の三方分岐部)
10a エア抜き口(第一エア抜き口)
11 エア抜き連絡管
12 三方分岐部(第二の三方分岐部)
12a エア抜き口(第二エア抜き口)
13 三方分岐部(第三の三方分岐部)
13a エア抜き口(第三エア抜き口)
図1
図2