(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記駆動面を構成する歯ゴムの中に心線が設けられ、前記帆布と前記心線の間に中間ゴム層が設けられることを特徴とする請求項1に記載のサクションフィーダー用タイミングベルト。
前記帆布の前記長手方向における伸び率が35%以上であり、前記帆布の前記幅方向における伸び率が10%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のサクションフィーダー用タイミングベルト。
前記帆布の前記長手方向における伸び率が80%以上であり、前記帆布の前記幅方向における伸び率が50%以上であることを特徴とする請求項4に記載のサクションフィーダー用タイミングベルト。
前記平坦面には、前記搬送面まで貫通する吸引孔が長手方向に沿って所定間隔毎に穿設されることを特徴とする請求項1または2に記載のサクションフィーダー用タイミングベルト。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態であるサクションフィーダー用タイミングベルトを、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、このタイミングベルトが使用される包装機の概略的な構成を示している。この包装機は、シート状のフィルムFを筒状に成形しつつ、その中に菓子等の内容物Aを供給するように構成されている。筒状に成形されたフィルムFの下端部Bはシールされており、この状態で、筒状フィルムFの中に内容物Aが供給される。内容物Aが供給された筒状フィルムの上端部Cは包装機の下部においてシールされるとともにカットされ、袋状包装フィルムDとして次の工程へ搬送される。
【0015】
包装機の中央には上下方向に延びる円筒状のガイド部材11が配設され、ガイド部材11の上端には、上方に広がる切頭円錐状のホッパ12が設けられている。ガイド部材11の両側には無端状のタイミングベルト13、14が設けられている。タイミングベルト13、14は、フィルムFが通過するのに十分な間隔をあけてガイド部材11に対向している。タイミングベルト13はプーリ15、16に掛け回され、またタイミングベルト14はプーリ17、18に掛け回されている。プーリ16、18はそれぞれ矢印P、Q方向に回転する。すなわちタイミングベルト13、14はガイド部材11側が図の下方に向かうように回動する。
【0016】
プーリ15、16の間にはサクションチャンバ21が設けられ、タイミングベルト13の内周面(駆動面)の平坦面に接している。同様に、プーリ17、18の間にはサクションチャンバ22が設けられ、タイミングベルト14の内周面に接している。サクションチャンバ21、22は負圧源(図示せず)に連結されている。タイミングベルト13、14には吸引孔(図示せず)が形成されており、サクションチャンバ21、22に生じた負圧は吸引孔を介してフィルムFに作用する。
【0017】
フィルムFはホッパ12より上方ではシート状であるが、図示しない成形機によってガイド部材11の外周面を覆う円筒形に変形され、ガイド部材11の軸方向に沿う縁部同士が接着されるとともに、下端部Bがシールされる。この工程において、フィルムFの円筒形はサクションチャンバ21、22による負圧によって保持される。筒状のフィルムFはタイミングベルト13、14によって下方に移送され、これと同時に、ホッパ12を介して供給される内容物Aが筒状のフィルムFの下方に溜まり、ガイド部材11よりも下側に移動すると、破線Eの位置において上端部Cがシールされるとともにカットされる。
【0018】
図2はタイミングベルト13、14の内周面すなわち駆動面30を示している。タイミングベルト13、14の幅方向の中央部には長手方向に沿って延びる平坦面31が形成され、中央部の両外側には、タイミングベルトの長手方向に沿って一定間隔毎にベルト歯32が形成されている。平坦面31には吸引孔33が設けられている。吸引孔33は、駆動面30とは反対側にある搬送面37まで貫通し、長手方向に沿って所定間隔毎に穿設されている。ベルト歯32の頂部32aは略平面であり、隣り合うベルト歯32の間に形成される歯底部34は頂部32aより若干大きい平面である。頂部32aと歯底部34の間にある歯側部32b、32cは傾斜している。一方、ベルト歯32の平坦面31側にある歯端部32dは平坦面31に対して垂直である(
図6参照)。
【0019】
駆動面30の全ては帆布36によって被覆されている。すなわち帆布36は、駆動面30において、平坦面31と、歯底部34と、ベルト歯32の頂部32aと、歯側部32b、32cと、歯端部32dとを被覆する。換言すると、タイミングベルト13、14の外側面35と吸引孔33の円筒状内壁面33aは帆布36によって覆われておらず、ゴムが露出している。
【0020】
図3はタイミングベルト13、14を搬送面37側から見た平面図、
図4はタイミングベルト13、14の側面図、
図5はタイミングベルト13、14を駆動面側から見た底面図である。これらの図に示されるように、搬送面37は平面状であるが、吸引孔33の周囲には小判状の凹陥部38が形成され、搬送面37よりも少し凹んでいる。吸引孔33は円形を有し、凹陥部38の中央に位置している。
【0021】
図2、6を参照してタイミングベルト13、14の層構造を説明する。タイミングベルト13、14の駆動面30を構成する歯ゴム41はNBRゴムであり、硬さは例えば74JIS−Aである。搬送面37を構成する背ゴム42は軟らかいNBRゴムであり、硬さは例えば61JIS−Aである。しかし、アプリケーションによってはタイミングベルトを歯ゴムのみから成形して、歯ゴムの一方の面が駆動面、他方の面が搬送面となるように構成してもよい。帆布36はタイミングベルト13、14の長手方向および幅方向の両方に対して伸縮性を有する織布または編布である。歯ゴム41の中にはEガラスから成るガラス心線44が設けられ、帆布36とガラス心線44の間には中間ゴム層45が設けられる。
【0022】
帆布36が織布である場合、平織り、綾織り、朱子織り等の各種織布が使用可能である。織布を構成する経糸と緯糸に関し、経糸と緯糸は共に伸縮性を有する場合は、経糸と緯糸のいずれか一方がタイミングベルト13、14の幅方向に整列し、他方がタイミングベルト13、14の長手方向に整列するように、帆布36がタイミングベルト13、14の駆動面30に配置される。経糸と緯糸のいずか一方もしくは両方が伸縮性を有しない場合は、経糸と緯糸のいずれか一方がタイミングベルト13、14の幅方向に対してバイアス方向に整列し、他方がタイミングベルト13、14の長手方向に対してバイアス方向に整列するように、帆布36がタイミングベルト13、14の駆動面30に配置される。
【0023】
帆布36はタイミングベルト13、14の幅方向と長手方向で伸び率が異なる。サクションフィーダー用タイミングベルトとしては、XL、L、H等の台形歯形タイミングベルトが多く用いられる。帆布36に対して、タイミングベルト13、14の幅方向に1インチ幅当り4.0kgfの引張力を作用させたときの伸び率は10%以上であることが好ましく、より好ましくは50%以上である。一方、帆布36に対して、タイミングベルト13、14の長手方向に1インチ幅当り4.0kgfの引張力を作用させたときの伸び率は35%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上である。
【0024】
帆布36に対して、タイミングベルト13、14の幅方向に1インチ幅当り4.0kgfの引張力を作用させたときの伸び率が10%以上であり、かつ帆布36に対して、タイミングベルト13、14の長手方向に1インチ幅当り4.0kgfの引張力を作用させたときの伸び率が35%以上であれば、ベルト製造時にベルト歯32の成形に必要最低限の伸縮性が得られると共に平坦面31の平坦性が確保される。
【0025】
帆布に対して、タイミングベルト13、14の幅方向に1インチ幅当り4.0kgfの引張力を作用させたときの伸び率が50%以上であり、かつ帆布36に対してタイミングベルト13、14の長手方向に1インチ幅当り4.0kgfの引張力を作用させたときの伸び率が80%以上であれば、ベルト製造時にベルト歯32の成形に必要十分の伸縮性が得られると共に平坦面31の平坦性が更に向上し、サクションフィーダー用ベルトの走行寿命が延長する。また、このような伸び率を有するタイミングベルトは、XH、XXH等のより大きな台形歯形タイミングベルトとして使用することも可能である。
【0026】
これに対して、帆布36のタイミングベルト13、14の幅方向の伸び率が10%未満の場合、ベルト製造時に、ベルト歯32の歯端部32dと、歯端部32dの近傍の頂部32aとを覆う帆布36の一部を金型形状に十分沿わせることができない。また帆布36のタイミングベルト13、14の長手方向の伸び率が35%未満の場合、ベルト製造時に、ベルト歯32の歯側部32d、32cと、歯側部32b、32cの近傍の頂部32aとを覆う帆布36の一部を金型形状に十分沿わせることができない。いずれもベルト歯32の成形不良、または歯ゴム41が帆布36を通過してベルト歯32の表面に浸み出す不良を引き起こす。また平坦面31や歯底部34を覆う帆布36がベルト製造時にベルト幅方向やベルト長手方向に引張られることにより、帆布36の歯ゴム41に対する密着性が低下して、ベルト使用時に帆布36が早期に剥がれたり、平坦面31の平坦性が悪化するおそれがある。
【0027】
織布の構成の1つの例として、経糸または緯糸の一方がナイロンのウーリー加工糸であり、他方がウレタンの芯糸の周囲にナイロン巻回して構成されるウレタン弾性糸である。他の例として、経糸、緯糸ともに、ナイロンのウーリー加工糸を用いてもよい。さらに経糸、緯糸ともに巻縮加工、タスラン加工、インタレース加工、カバーリング加工や、それらの組合せが用いられたテクスチャードヤーンを用いてもよい。また経糸または緯糸の一方にフィラメント糸を用いた織布の場合は、織布をバイアスカットすることにより、タイミングベルトの長手方向と幅方向に伸縮性を持たせることもできる。なお、織布はRFL処理液、ゴム糊等を含浸させて補強される。
【0028】
帆布36が編布である場合は、緯編布や経編布が使用される。緯編布としては、平編み、リブ編み、両面編みおよびパール編み等の各種変形組織の緯編布が使用できる。一方、経編布としては、トリコット、ラッセルおよびミラニーズ等の経編布が使用できる。これらの編布の伸縮性に関しては、上述した織布の場合と同様である。
【0029】
中間ゴム層45は帆布36に対してゴムシートを圧着して貼付することにより成形してもよく、あるいは帆布36にゴム層をコーティングして成形してもよい。他の例として、帆布36にゴムシートを巻きつけて構成することも可能である。いずれにしても、中間ゴム層45の厚さは0.2mm以上であることが好ましく、このような構成によれば、ベルト製造時に、金型に取り付けた帆布ジャケットに心線を巻き付ける際の帆布面への負荷(ワインディング張力)を中間ゴム層に吸収させることができ、これにより心線からの直接的な帆布への負荷を低減させることができ、平坦面の平坦性がより向上する。
【0030】
歯ゴム41と背ゴム42と中間ゴム層45は用途に応じて種々のゴムを用いることができ、相互に同種のゴムであってもよく、あるいは異種のゴムであってもよい。利用できるゴムの種類としては、NBRゴム、HNBRゴム、CRゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、天然ゴム、CSMゴム、EPDMゴム、EPMゴム、SBRゴム、BRゴム等がある。
【0031】
ガラス心線44はRFL/ゴム糊溶液でオーバーコート処理され、歯ゴム41に対する接着性が高められている。ガラス心線44は歯底部34および平坦面31のすぐ近くに位置し、これらの部分において帆布36により覆われている。吸引孔33が穿設されているため、心線44は吸引孔33の部分には存在しないが、隣り合う吸引孔33の間の平坦面31の部分は、帆布36によって補強されているので強度は十分に確保されている。なお、心線44はEガラスに限定されず、Uガラス等の種々のガラス繊維を用いることができる。また心線44はアラミド繊維から構成されてもよく、カーボンから構成されてもよい。
【0032】
本実施形態のタイミングベルトの作用を説明する。フィルムFの送出しにおいてフィルムFはタイミングベルト13、14によって円筒形を保持しつつ移送される。このときタイミングベルト13、14はプーリ15−18がベルト歯32に係合することによって移送され、平坦面31はサクションチャンバ21、22に摺接する。しかし駆動面30は全体的に帆布36によって覆われているので、平坦面31がサクションチャンバ21、22との摺接によって摩耗粉を発生することはない。また帆布36によって、平坦面31における摺動抵抗が小さく抑えられるので、タイミングベルト13、14の駆動源の負荷が小さくなり、消費電力が抑えられる。
【0033】
さらに本実施形態では、中間ゴム層45が設けられているので、平坦面31において心線44の形状による凹凸が発生することはなく、平坦面31の平坦性が確保される。したがって、サクションチャンバ21、22に対する平坦面31の密着性が向上し、サクションチャンバ21、22に接続された負圧源による負圧(吸引圧)が減少することなく、常に安定した負圧が発生してフィルムF(
図1)に伝達される。
【0034】
帆布36が被覆する駆動面30の形状は複雑であり、タイミングベルト13、14の長手方向にそって、中央部には平坦面31があり、両側にはベルト歯32が一定間隔毎に形成されている。上述したように帆布36は、タイミングベルト13、14の長手方向および幅方向の両方に対して伸縮性を有する。したがって、帆布36はベルト歯32の全ての面に密着し、頂部32aと歯側部32b、32cの間の角部、頂部32aと歯端部32dの間の角部、頂部32aと歯底部34の間の角部、および歯端部32dと平坦面31の間の角部において丸みが生じることはない。すなわち帆布の歯ゴムに対する密着性が向上し、帆布が早期に剥がれたり、成型不良を起こすことがない。
【0035】
背ゴム42はフィルムFを搬送するため、大きい摩擦係数を有することが好ましく、また耐摩耗性に優れた材質が好ましい。さらに背ゴム42の表面はフィルムFとの接触面積を確保しつつ大きい摩擦力を得るために、面粗度は低い方が望ましい。このため搬送面37は製造工程において、できるだけ鏡面に近くなるように研磨される。
【0036】
次に
図2、7、8を参照してタイミングベルトを製造するための金型の構成を説明する。
金型本体50は筒状を呈し、外周面には、軸方向に延びる多数の凹部51と、円周方向に延びる3つの環状周面52が形成されている。隣り合う2つの凹部51の間には、矩形状平面部53が形成されている。凹部51はベルト歯32に対応し、矩形状平面部53は歯底部34に対応する。環状周面52は平坦面31に対応する。環状周面52と矩形状平面部53は金型本体50の円筒状外周面に一致するが、凹部51は外周面よりもベルト歯32の高さ分だけ凹陥している。
【0037】
本実施形態において金型本体50は、
図8に示すように4つの部分に分解可能である。すなわち金型本体50は、一対の大湾曲部材61、62と一対の小湾曲部材63、64とに分解される。一方の大湾曲部材61の両端面61a、61bは小湾曲部材63、64の一方の端面63a、64aに密着し、他方の大湾曲部材62の両端面62a、62bは小湾曲部材63、64の他方の端面63b、64bに密着する。大湾曲部材61の両端面61a、61bは金型本体50の円筒の軸心に平行な平面に一致する。同様に、大湾曲部材62の両端面62a、62bも金型本体50の円筒の軸心に平行な平面に一致する。これらの平面は互いに平行である。すなわち金型本体50は、軸方向に延びる2つの平行な平面によって4つの部分に分解可能である。
【0038】
大湾曲部材61、62と小湾曲部材63、64が組み合わされた状態で、金型本体50の上端部は固定部材65によって、また下端部は固定部材66によって一体的に固定される。固定部材65は金型本体50と同じ径を有する環状の部材であり、ビス67によって金型本体50の上端部に取付けられる。同様に、固定部材66はビス68によって金型本体50の下端部に取付けられる。
【0039】
タイミングベルトの製造工程では、金型本体50が固定部材65、66によって組み立てられた状態において、金型本体50の外周面に袋状に成形された帆布が被せられる。その上にゴムシート(中間ゴム層)が巻き付けられる。このゴムシートの上に心線が螺旋状に巻き付けられ、さらに歯ゴムの材料が巻かれる。その上に中間帆布が巻かれ、さらに背ゴムの材料が巻かれた後、円筒状のバッグゴムが被せられる。この状態で金型本体50は加硫釜の中に入れられ、加熱加圧される。これによりゴムが加硫した後、金型本体50は加硫釜から取り出される。
【0040】
冷却後、固定部材65、66が金型本体50から外される。そして、小湾曲部材63、64が内周側に変位させて外され、大湾曲部材61、62が内側に移動せしめられ、歯型等が成形された筒状のベルトスラブが金型本体50から離型されて取出される。ベルトスラブは所定の間隔で切断され、無端状のタイミングベルトが得られる。
【0041】
なお
図7、8の例では、金型本体50は4つに分解されるが、金型本体50の分解構造はこれに限定されるものではない。すなわちベルトスラブを金型本体50から取出せる構造であれば、分解の個数は自由であり、例えば大湾曲部材を2つとし、小湾曲部材を1つとしてもよい。
【実施例】
【0042】
実施例および比較例として以下に示すサクションフィーダー用タイミングベルトを作成した。実施例1は
図9(a)に示されるように、背ゴム42の上に歯ゴム41が積層され、歯ゴム41には心線44が埋設されている。歯ゴム41において、横断面の中央には平坦面31が形成され、両側にはベルト歯32が形成されている。歯ゴム41の表面は、全体的に帆布36により被覆されている。帆布36は上述した実施形態と同様に、タイミングベルトの長手方向および幅方向に伸縮性を有する特殊帆布である。実施例1のタイミングベルトの各部の詳細は
図12に示される表1のとおりである。
【0043】
実施例2は
図9(b)に示されるように、歯ゴム41と帆布36の間に、厚さ0.2mmの中間ゴム層45が設けられている。中間ゴム層45を除いた構成は実施例1と同じである。すなわち実施例2では、中間ゴム層45が設けられているため、平坦面31の平坦性は高いが、実施例1の平坦面31には、
図9(a)に示されるように、心線44の存在による凹凸が見られる。なお、実施例2のタイミングベルトの各部の詳細は表1に示されたとおりである。
【0044】
比較例1は
図9(c)に示されるように、背ゴム71の上に歯ゴム72が積層され、歯ゴム72には心線73が埋設されている。背ゴム71と歯ゴム72はキャスタブルウレタンにより成形される。歯ゴム72において、横断面の中央には平坦面74が形成され、両側にはベルト歯75が形成されている。駆動面の表面には帆布は設けられておらず、歯ゴム72により形成されている。比較例1のタイミングベルトの各部の詳細は表1に示されたとおりである。
【0045】
比較例2は
図9(d)に示されるように、ベルト歯75の表面は帆布76により被覆されており、平坦面74には歯面研磨加工により歯ゴム72と心線73の一部分が露出している。表1に示されているように、背ゴム71と歯ゴム72は実施例1、2と同様にNBRゴムである。帆布76はタイミングベルトの長手方向には十分な伸縮性を有するが、幅方向には伸縮性をほとんど有しない通常帆布である。
【0046】
比較例3は概略的に実施例1の構成と同じであるが、帆布76の構成が異なる。すなわち比較例3において、帆布76は比較例2と同様に、タイミングベルトの長手方向には十分な伸縮性を有するが、幅方向には伸縮性をほとんど有しない通常帆布である。
図9(e)に示されるように、ベルト歯75は頂部75aと歯端部75dの間の角部および歯端部75dと平坦部74の間の角部において丸みが生じて成形不良となり、また平坦面74は、帆布の歯ゴムに対する密着性が低下し、心線73による凹凸が見られる。
【0047】
これらのタイミングベルトに対して、発塵・発熱試験および摺動抵抗比較試験を実施した。また、これらのタイミングベルトを試験機に装着して吸引試験を実施し、サクションチャンバに生じる負圧を測定した。
【0048】
図10は発塵・発熱試験に用いた試験機を示す。この試験機は2つのプーリ81、82の間に、サクションチャンバ83を配置したものである。実施例または比較例のタイミングベルトをプーリ81、82に掛け回し、サクションチャンバ83によりタイミングベルトの平坦面に対して負圧を作用させつつタイミングベルトを回動させた。
【0049】
タイミングベルトの周長は762mm、幅は38.1mmであるが、実施形態とは異なり、吸引孔33は加工しなかった。ベルト歯の歯型はタイプL、ピッチは9.525mm、歯高さは1.91mm、歯数は80であった。プーリ81、82はそれぞれ、歯数が24であり、回転数は500rpmであった。サクションチャンバ83の負圧源における吸引圧の設定値(ゲージ圧)は−60kPaであり、サクションチャンバ83の長さ(タイミングベルトの長手方向の寸法)は180mmであった。サクションチャンバ83のタイミングベルト側の表面の中央には、タイミングベルトの平坦面の幅15mmに対応させて、幅が13.5mmの吸引口84が成形された。
【0050】
サクションチャンバ83の吸引口84をタイミングベルトの平坦面に接触させて上記設定吸引圧でタイミングベルトを吸引させながらタイミングベルトを1時間連続走行させた後、サクションチャンバ83の温度を測定するとともに、48時間連続走行させた後、タイミングベルトおよびプーリの周辺の発塵状態を観測した。この試験結果については後述する。
【0051】
図11は摺動抵抗比較試験に用いた試験機を示す。プーリ81、82とサクションチャンバ83の構成は発塵・発熱試験と同様であるが、摺動抵抗比較試験では、タイミングベルトの平坦面の中央部に吸引孔を穿設した。吸引孔は、タイミングベルトの長手方向に沿って19.05mmのピッチで設け、吸引孔の直径は4mmであった。タイミングベルトの背面(実施形態における搬送面37)側にフィルム85を設け、フィルム85とタイミングベルトが一体となって動き出すときの力を測定した。その他の試験条件は発塵・発熱試験と同様である。
【0052】
図13に示される表2は、発塵・発熱試験と摺動抵抗比較試験の結果、吸引試験の結果、およびタイミングベルトの成形性を示している。
【0053】
発塵試験に関しては、実施例1、2共に、摩耗(発塵)は見られず、良好な結果が得られた。また発熱試験では、試験前の温度は26.7℃であったが、実施例1、2共に、1時間連続走行後の温度は41℃であり、良好な結果が得られた。一方、摺動抵抗比較試験に関し、実施例1、2共に摺動抵抗値は1000g(9.8N)であり、比較的小さい値を示した。
【0054】
実施例1、2のタイミングベルトは共に、ベルト歯の成形性は良好であった。実施例1のタイミングベルトは、製造工程において、心線の巻き付け時に心線から帆布に作用する負荷(ワインディング張力)のため、平坦面に心線のピッチと同じピッチの凹凸が存在する。これに対して実施例2のタイミングベルトは、中間ゴム層が設けられるため、平坦面には凹凸は存在しない。この凹凸の有無の違いにより、サクション吸引性に僅かな差が見られ、実施例1ではサクションチャンバに生じた負圧は−58kPaであり、測定値に小さいバラツキが見られたが、実施例2ではサクションチャンバに生じた負圧は−60kPaであり、測定値にバラツキは見られず、安定した極めて良好な結果が得られた。すなわち実施例2のタイミングベルトでは、サクションチャンバの負圧源の吸引圧が減少することなく、そのままタイミングベルトに伝達されていた。
【0055】
これに対して比較例1のタイミングベルトは、ベルト歯の成形性は良好で、平坦面の平坦性もよく、サクション吸引性は実施例2と同様な結果を示した。しかし、平坦面の摩擦係数の高いウレタンが直接サクションチャンバの吸引口に摺接するため、摩擦熱で発熱するとともに、摺動抵抗が大きくなった。すなわち、1時間連続走行後の温度は65℃であり、非常に高く、また摺動抵抗値は2550g(25.0N)であった。また摩耗(発塵)も見られ、実用的ではないことがわかった。
【0056】
比較例2のタイミングベルトは、ベルト歯の成形性は良好であったが、平坦面において、歯面の研磨加工により心線が一部露出するとともにバリが発生した。このため、サクションチャンバに生じた負圧は−58kPaであり、おおむね良好であるが、バラツキが大きく安定性に欠けていた。すなわち、1時間連続走行後の温度は50℃であったが、摺動抵抗値は1500g(14.7N)であり、やや大きく、また摩耗(発塵)も見られ、実用的ではないことがわかった。
【0057】
比較例3のタイミングベルトは、ベルト歯は丸みを帯びていて成形性は不良であり、また平坦面では心線のピッチと同じ大きさのピッチが存在し、凹凸が大きかった。このため、サクションチャンバに生じた負圧は−50kPaであり、またバラツキが大きく安定性に欠け、実用性は乏しかった。なお、1時間連続走行後の温度は41℃、また摺動抵抗値は1000g(9.8N)で、共に良好であり、摩耗(発塵)も見られなかった。