【文献】
新津洋司郎ら,肝星細胞を標的とした肝硬変の治療戦略,実験医学,2011年 8月,Vol.29, No.13,p.2114-2122
【文献】
新津洋司郎,臓器線維症治療の新展開,日本呼吸器学会雑誌,2009年,Vol.47 (suppl.1),p.67, EL-3
【文献】
KIDD,M. et al,CTGF, intestinal stellate cells and carcinoid fibrogenesis,World J Gastroenterol,,2007年,Vol.13, No.39,p.5208-16
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
腸管における細胞外マトリックス産生細胞の活性または増殖を制御する薬物が、細胞外マトリックス成分の産生・分泌を阻害する物質、細胞増殖抑制物質、アポトーシス誘導物質、TIMP阻害物質およびα1アンチトリプシン阻害物質からなる群から選択される、請求項4または5に記載の医薬組成物。
レチノイドを腸管における細胞外マトリックス産生細胞への標的化剤として、腸管における細胞外マトリックス産生細胞の活性または増殖を制御する薬物を有効成分としてそれぞれ配合する工程を含む、請求項4または5に記載の医薬組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の1つの側面は、レチノイドを、腸管における細胞外マトリックス産生細胞への標的化剤として含む、腸管における細胞外マトリックス産生細胞への物質送達用担体に関する。本発明の担体の一態様は、腸管における細胞外マトリックス産生細胞に対する標的化のための有効量のレチノイドを含む。また、本発明の担体の一態様は、レチノイドによって腸管における細胞外マトリックス産生細胞に標的化された担体に関する。
【0015】
本発明において、腸管における細胞外マトリックス産生細胞は、腸管に存在する細胞外マトリックス産生能を有する細胞であれば特に限定されずに、例えば、腸管に存在する星細胞様細胞、線維芽細胞、周皮細胞、フィブロサイトおよび筋線維芽細胞を含む。腸管に存在するマトリックス産生細胞は、腸管に存在する細胞に由来するものばかりでなく、循環血液中のフィブロサイトに由来するものや、内皮間葉分化転換により上皮細胞や内皮細胞から転換されたものをも含み得る(非特許文献1)。
【0016】
星細胞様細胞としては、例えば、下記実施例で同定した、ビメンチン陽性、αSMA(α平滑筋アクチン)陰性かつGFAP(グリア線維性酸性タンパク質)陰性の表現型を有する細胞が挙げられる。かかる細胞は、検出可能に標識された抗ビメンチン抗体、抗αSMA抗体および抗GFAP抗体を用いた免疫染色などによって同定されるものである。同細胞は、VA(ビタミンA)貯蔵関連遺伝子、例えば、ADRP(脂肪分化関連タンパク質)、LRAT(レシチンレチノールアシルトランスフェラーゼ)および/またはLXRβ(肝X受容体β)等を発現していてもよい。肝星細胞は、in vitroで培養すると活性化し、αSMA陽性かつGFAP陽性となるが、上記星細胞様細胞は、in vitroで培養してもαSMAおよびGFAPは陽性とならない。筋線維芽細胞はビメンチンおよびαSMAの発現を特徴としており、線維芽細胞は間葉系細胞に特徴的なビメンチンを発現するが、αSMAを発現していないため、ビメンチンとαSMAとの二重染色などにより同定することができる。腸管における細胞外マトリックス産生細胞はまた、腸管組織から得た細胞の中から、ビメンチン陽性、αSMA陰性かつGFAP陰性の表現型を有するものを選択することにより得ることができる。
【0017】
本発明におけるレチノイドは、腸管における細胞外マトリックス産生細胞への標的化剤(ターゲティング剤)として機能し、かかる細胞への特異的な物質送達を促進するものである。レチノイドによる物質送達促進の機構は未だ完全には解明されていないが、例えば、RBP(retinol binding protein)と特異的に結合したレチノイドが、腸管における細胞外マトリックス産生細胞の細胞表面上に位置するある種のレセプターを介して同細胞に取り込まれることが考えられる。
【0018】
レチノイドは、4個のイソプレノイド単位がヘッド−トゥー−テイル式に連結した骨格を持つ化合物の群の1員であり(G. P. Moss, “Biochemical Nomenclature and Related Documents,” 2nd Ed. Portland Press, pp. 247-251 (1992)を参照)、ビタミンAは、レチノールの生物学的活性を定性的に示すレチノイドの一般的な記述子である。本発明において用いることができるレチノイドとしては、特に限定されず、例えばレチノール(オールトランスレチノールを含む)、レチナール、レチノイン酸(トレチノインを含む)、レチノールと脂肪酸とのエステル、脂肪族アルコールとレチノイン酸とのエステル、エトレチナート、イソトレチノイン、アダパレン、アシトレチン、タザロテン、パルミチン酸レチノールなどのレチノイド誘導体、およびフェンレチニド(4−HPR)、ベキサロテンなどのビタミンAアナログを挙げることができる。
【0019】
これらのうち、レチノール、レチナール、レチノイン酸、レチノールと脂肪酸とのエステル(例えばレチニルアセテート、レチニルパルミテート、レチニルステアレート、およびレチニルラウレートなど)および脂肪族アルコールとレチノイン酸とのエステル(例えばエチルレチノエートなど)は、腸管における細胞外マトリックス産生細胞への特異的な物質の送達の効率の点で好ましい。
レチノイドのシス−トランスを含む異性体全ては、本発明の範囲内に入る。レチノイドはまた、1または2以上の置換基で置換されることもある。本発明におけるレチノイドは、単離された状態のものはもちろんのこと、これを溶解または保持することができる媒体に溶解または混合した状態のレチノイドをも含む。
【0020】
本発明におけるレチノイドはさらに、レチノイドをその一部として含む化合物(レチノイド部分含有化合物)をも含む。かかる化合物は、レチノイド部分を1個または2個以上、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、または10個より多く含んでいてもよい。かかる化合物において、レチノイドは、RBP結合部位(例えば、レチノールの場合はシクロヘキセン環部分)がRBPに結合できる状態で存在していてもよい。かかる化合物としては、限定されずに、1個または2個以上レチノイドと、PEGもしくはその誘導体とが結合したものなどが挙げられる。かかるレチノイド−PEG結合体において、レチノイドのRBP非結合部位(例えば、レチノールの場合はシクロヘキセン環部分以外の部分、例えば、OH基など)がPEGまたはその誘導体に共有結合していてもよい。PEGもしくはその誘導体は、1〜50個の繰返し単位(CH
2CH
2O)を有していてもよい。PEGもしくはその誘導体の分子量は、200〜4000g/molであってもよい。PEGもしくはその誘導体は、線状または分枝状であってもよい。PEG誘導体は、その末端に、レチノイドとの結合に好適な基、例えば、アミノ基などを有していてもよい。PEG誘導体は、鎖中にアミド基を1個または2個以上、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、または10個より多く有していてもよい。
【0021】
本発明の担体は、これらのレチノイド自体で構成してもよいし、レチノイドを、これとは別の担体構成成分に結合または包含させることにより構成してもよい。したがって、本発明の担体は、レチノイド以外の担体構成成分を含んでいてもよい。かかる成分としては、特に限定されずに、医薬および薬学の分野で知られる任意のものを用いることができるが、レチノイドを包含し得るか、または、これと結合し得るものが好ましい。
このような成分としては、脂質、例えば、グリセロリン脂質などのリン脂質、スフィンゴミエリンなどのスフィンゴ脂質、コレステロールなどのステロール、大豆油、ケシ油などの植物油、鉱油、卵黄レシチンなどのレシチン類、ポリマー等が挙げられるが、これらに限定されない。このうち、リポソームを構成し得るもの、例えば、レシチンなどの天然リン脂質、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)などの半合成リン脂質、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)、コレステロールなどが好ましい。
【0022】
特に好ましい成分としては、細網内皮系による捕捉を回避し得る成分、例えば、N−(α−トリメチルアンモニオアセチル)−ジドデシル−D−グルタメートクロリド(TMAG)、N,N’,N’’,N’’’−テトラメチル−N,N’,N’’,N’’’−テトラパルミチルスペルミン(TMTPS)、2,3−ジオレイルオキシ−N−[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]−N,N−ジメチル−1−プロパンアミニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、ジドデシルアンモニウムブロミド(DDAB)、1,2−ジオレイルオキシ−3−トリメチルアンモニオプロパン(DOTAP)、3β−[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)、1,2−ジミリストイルオキシプロピル−3−ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム
ブロミド(DMRIE)、O,O’−ジテトラデカノイル−N−(α−トリメチルアンモニオアセチル)ジエタノールアミンクロリド(DC−6−14)などのカチオン性脂質が挙げられる。
本発明における担体は、特定の3次元構造を有してもよい。かかる構造としては、限定されずに、直鎖状または分枝状の線状構造、フィルム状構造、球状構造などが挙げられる。したがって、担体は、限定されずに、デンドリマー、デンドロン、ミセル、リポソーム、エマルジョン、微小球、ナノ小球などの任意の3次元形態を有してもよい。また、本発明における担体の一態様は、標的化剤(標的化分子、標的化部分などを包含する)によるアクティブターゲティングが可能な担体である。3次元形態を有する担体やアクティブターゲティングが可能な担体は当該技術分野においてよく知られている(例えば、Marcucci and Lefoulon, Drug Discov Today. 2004 Mar 1;9(5):219-28、Torchilin, Eur J Pharm Sci. 2000 Oct;11 Suppl 2:S81-91など参照)。
【0023】
本発明の担体へのレチノイドの結合または包含は、化学的および/または物理的な方法によってレチノイドを担体の他の構成成分に結合させるかまたは包含させることによっても可能となる。または、本発明の担体へのレチノイドの結合または包含は、該担体の作製時に、レチノイドと、それ以外の担体構成成分とを混合することによっても可能となる。本発明の担体におけるレチノイドの量は、例えば、0.01〜1000nmol/μl、好ましくは0.1〜100nmol/μlとすることが可能である。また、レチノイドとレチノイド以外の担体構成成分とを含む本発明の担体において、レチノイドとレチノイド以外の担体構成成分とのモル比は、限定されずに、例えば、8:1〜1:4、または4:1〜1:2であってもよい。担体へのレチノイドの結合または包含は、該担体に送達物を担持させる前に行ってもよいし、担体、レチノイドおよび送達物を同時に混合することなどによって行ってもよいし、または、送達物を既に担持した状態の担体と、レチノイドとを混合することなどによって行ってもよい。したがって、本発明はまた、既存の任意の薬物結合担体や薬物封入担体、例えば、DaunoXome
(R)、Doxil、Caelyx
(R)、Myocet
(R)などのリポソーム製剤にレチノイドを結合させる工程を含む、腸管における細胞外マトリックス産生細胞に特異的な製剤の製造方法にも関する。
【0024】
本発明の担体の形態は、所望の物質や物体を、標的とする腸管における細胞外マトリックス産生細胞に運搬できればいずれの形態でもよく、例えば、限定するものではないが、ポリマー、デンドリマー、デンドロン、高分子ミセル、リポソーム、エマルジョン、微小球、ナノ小球などのうちいずれの形態をとることもできる。本発明においては、送達効率の高さ、送達できる物質の選択肢の広さや製剤の容易性等の観点から、これらのうちリポソームの形態が好ましく、中でもカチオン性脂質を含むカチオン性リポソームが特に好ましい。担体がリポソームの形態である場合、レチノイドと、これ以外のリポソーム構成脂質とのモル比は、レチノイドの担体への結合または包含の効率性を考慮すると、好ましくは8:1〜1:4、より好ましくは4:1〜1:2である。
【0025】
本発明の担体は、これに含まれるレチノイドが、標的化剤として機能する態様で存在していれば、運搬物を内部に含んでも、運搬物の外部に付着して存在しても、また、運搬物と混合されていてもよい。ここで、標的化剤として機能するとは、レチノイドを含む担体が、これを含まない担体よりも迅速かつ/または大量に、標的細胞である腸管における細胞外マトリックス産生細胞に到達し、かつ/または取り込まれることを意味し、これは、例えば、標識を付した、または標識を含む担体を標的細胞の培養物に添加し、所定時間後に標識の存在部位を分析することにより容易に確認することができる。構造的には、例えば、レチノイドが、遅くとも標的細胞に到達するまでに、担体(例えば、担体が3次元構造を有する場合など)または担体を含む製剤の外部に少なくとも部分的に露出していれば、上記要件を充足し得る。ここで、「製剤」とは、後述の本発明の組成物を含み、さらに形態をも有する概念である。レチノイドが、製剤の外部に露出しているか否かは、製剤をレチノイドと特異的に結合する物質、例えば、レチノール結合タンパク質(RBP)などと接触させ、製剤への結合を調査することにより評価することができる。
【0026】
レチノイドを、遅くとも標的細胞に到達するまでに、担体または製剤の外部に少なくとも部分的に露出させることは、例えば、レチノイドと、レチノイド以外の担体構成成分との配合比率を調節することなどにより達成することができる。また、担体がリポソームなどの脂質構造体の形態を有する場合には、例えば、レチノイド以外の担体構成成分とレチノイドとを複合体化する際に、最初にレチノイド以外の担体構成成分からなる脂質構造体を水性溶液中に希釈し、次いでこれを、レチノイドと接触、混合するなどの手法を用いることができる。この場合、レチノイドは、溶剤、例えば、DMSOなどの有機溶剤に溶解した状態であってもよい。ここで、脂質構造体とは、任意の3次元構造、例えば、線状、フィルム状、球状などの形状を有する、脂質を構成成分として含む構造体を意味し、限定されずに、リポソーム、ミセル、脂質微小球、脂質ナノ小球、脂質エマルジョンなどを包含する。リポソームを標的化したのと同じ標的化剤を他の薬物担体にも適用できることは、例えばZhao and Lee, Adv Drug Deliv Rev. 2004;56(8):1193-204、Temming et al., Drug Resist Updat. 2005;8(6):381-402などに記載されている。
【0027】
脂質構造体は、例えば、塩や、ショ糖、ブドウ糖、マルトース等の糖類、グリセリン、プロピレングリコールなどの多価アルコールなど、好ましくはショ糖やブドウ糖などの浸透圧調整剤を用いて浸透圧を調整することで、安定化させることができる。また、適度の塩や緩衝液などのpH調整剤を加える事によりpHを調整してもよい。したがって、脂質構造体の製造、保存などを、これらの物質を含む媒体中で行うことができる。この場合、浸透圧調整剤の濃度は、血液と等張になるように調整することが好ましい。例えば、ショ糖の場合、媒体中の濃度は、限定されずに、3〜15重量%、好ましくは5〜12重量%、より好ましくは8〜10重量%、特に9重量%であってもよく、ブドウ糖の場合は、媒体中の濃度は、限定されずに、1〜10重量%、好ましくは3〜8重量%、より好ましくは4〜6重量%、特に5重量%であってもよい。
【0028】
本発明はまた、レチノイドを腸管における細胞外マトリックス産生細胞への標的化剤として配合する工程を含む、腸管における細胞外マトリックス産生細胞への物質送達用担体の製造方法に関する。レチノイドの配合手法は、レチノイドが、配合された担体において腸管における細胞外マトリックス産生細胞への標的化剤として機能できれば特に限定されないが、例えば、本明細書に記載の種々の手法を用いることができる。したがって、レチノイドの配合は、化学的および/または物理的な方法によってレチノイドを担体の他の構成成分に結合させるかまたは包含させることや、担体の作製時に、レチノイドとそれ以外の担体構成成分とを混合することなどによって行うことができる。レチノイドの配合量等は、本発明の担体について既に述べたとおりである。
【0029】
本担体の送達物は特に制限されないが、投与部位から標的細胞が存在する病変部位へ、生物の体内を物理的に移動できるような大きさであることが好ましい。したがって、本発明の担体は、原子、分子、化合物、タンパク質、核酸等の物質はもとより、ベクター、ウイルス粒子、細胞、1以上の要素で構成された薬物放出システム、マイクロマシン等の物体をも運搬することができる。前記送達物は、好ましくは標的細胞に何らかの影響を与える性質を有し、例えば、標的細胞を標識するものや、標的細胞の活性または増殖を制御する(例えば、これを増強または抑制する)ものを含む。
【0030】
したがって、本発明の一態様において、担体の送達物は「腸管における細胞外マトリックス産生細胞の活性または増殖を制御する薬物」を含む。ここで、腸管における細胞外マトリックス産生細胞の活性とは、腸管における細胞外マトリックス産生細胞が示す分泌、取り込み、遊走等の種々の活性を指すが、本発明においては、典型的に、これらのうち特に腸管線維症の発症、進行および/または再発などに関与する活性を意味する。かかる活性としては、例えば、限定することなく、コラーゲン、プロテオグリカン、テネイシン、フィブロネクチン、トロンボスポンジン、オステオポンチン、オステオネクチン、エラスチン等の細胞外マトリックス成分などの産生・分泌、および、これらの細胞外マトリックス成分の分解活性の抑制などが挙げられる。
【0031】
したがって、本明細書において、腸管における細胞外マトリックス産生細胞の活性または増殖を制御する薬物とは、腸管線維症の発症、進行および/または再発に関係する同細胞の物理的、化学的および/または生理的な作用等を直接または間接に抑制する何れの薬物であってもよく、限定されずに、上記細胞外マトリックス成分などの産生・分泌を阻害する物質、細胞増殖抑制物質、アポトーシス誘導物質、TIMP(Tissue inhibitor of metalloproteinase)阻害物質、α1アンチトリプシン阻害物質等を包含する。
【0032】
細胞外マトリックス成分などの産生・分泌を阻害する物質としては、限定されずに、例えば、コラーゲン、プロテオグリカン、テネイシン、フィブロネクチン、トロンボスポンジン、オステオポンチン、オステオネクチン、エラスチン等の細胞外マトリックス成分の発現を抑制する、RNAi分子、リボザイム、アンチセンス核酸などの物質、もしくはドミナントネガティブ変異体等のドミナントネガティブ効果を有する物質、これらを発現するベクター、およびこれらで形質転換された細胞等が挙げられる。上記細胞外マトリックス成分のうち、コラーゲンの産生・分泌を阻害する薬物としてはさらに、限定することなく、例えば、様々なタイプのコラーゲンの合成過程で共通する細胞内輸送および分子成熟化に必須のコラーゲン特異的分子シャペロンであるHSP(Heat shock protein)47の阻害物質、例えば、HSP47に対するRNAi分子、リボザイム、アンチセンス核酸などのHSP47発現阻害物質、もしくはHSP47のドミナントネガティブ変異体等のドミナントネガティブ効果を有する物質、これらを発現するベクター、およびこれらで形質転換された細胞等などが挙げられる。
【0033】
細胞増殖抑制物質としては、限定されずに、例えば、イホスファミド、ニムスチン(例えば、塩酸ニムスチン)、シクロホスファミド、ダカルバジン、メルファラン、ラニムスチン等のアルキル化剤、ゲムシタビン(例えば、塩酸ゲムシタビン)、エノシタビン、シタラビン・オクホスファート、シタラビン製剤、テガフール・ウラシル、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(例えば、TS−1)、ドキシフルリジン、ヒドロキシカルバミド、フルオロウラシル、メトトレキサート、メルカプトプリン等の代謝拮抗剤、イダルビシン(例えば、塩酸イダルビシン)、エピルビシン(例えば、塩酸エピルビシン)、ダウノルビシン(例えば、塩酸ダウノルビシン、クエン酸ダウノルビシン)、ドキソルビシン(例えば、塩酸ドキソルビシン)、ピラルビシン(例えば、塩酸ピラルビシン)、ブレオマイシン(例えば、塩酸ブレオマイシン)、ペプロマイシン(例えば、硫酸ペプロマイシン)、ミトキサントロン(例えば、塩酸ミトキサントロン)、マイトマイシンC等の抗腫瘍性抗生物質、エトポシド、イリノテカン(例えば、塩酸イリノテカン)、ビノレルビン(例えば、酒石酸ビノレルビン)、ドセタキセル(例えば、ドセタキセル水和物)、パクリタキセル、ビンクリスチン(例えば、硫酸ビンクリスチン)、ビンデシン(例えば、硫酸ビンデシン)、ビンブラスチン(例えば、硫酸ビンブラスチン)等のアルカロイド、アナストロゾール、タモキシフェン(例えば、クエン酸タモキシフェン)、トレミフェン(例えば、クエン酸トレミフェン)、ビカルタミド、フルタミド、エストラムスチン(例えば、リン酸エストラムスチン)等のホルモン療法剤、カルボプラチン、シスプラチン(CDDP)、ネダプラチン等の白金錯体、サリドマイド、ネオバスタット、ベバシズマブ等の血管新生阻害剤、L−アスパラギナーゼなどが挙げられる。
【0034】
アポトーシス誘導物質としては、限定することなく、例えば、compound 861、グリオトキシン、アトルバスタチンなどが挙げられる。
TIMP(例えば、TIMP1、TIMP2、TIMP3など)の阻害物質としては、限定することなく、例えば、TIMPに対する抗体などのTIMP活性阻害物質、TIMPに対するRNAi分子、リボザイム、アンチセンス核酸などのTIMP産生阻害物質、これらを発現するベクター、およびこれらで形質転換された細胞等が挙げられる。
α1アンチトリプシン阻害物質としては、限定することなく、例えば、α1アンチトリプシンに対する抗体などのα1アンチトリプシン活性阻害物質、α1アンチトリプシンに対するRNAi分子、リボザイム、アンチセンス核酸などのα1アンチトリプシン産生阻害物質、これらを発現するベクター、およびこれらで形質転換された細胞等が挙げられる。
【0035】
また、本発明における「腸管における細胞外マトリックス産生細胞の活性または増殖を制御する薬物」は、腸管線維症の発症、進行および/または再発の抑制に直接または間接に関係する腸管における細胞外マトリックス産生細胞の物理的、化学的および/または生理的な作用等を直接または間接に促進する何れの薬物であってもよい。
本発明の担体は、上記薬物の1種または2種以上を送達することができる。
【0036】
本発明におけるRNAi分子は、siRNA(small interfering RNA)、miRNA(micro RNA)、shRNA(short hairpin RNA)、piRNA(Piwi-interacting RNA)、rasiRNA(repeat associated siRNA)などの二重鎖RNAおよびこれらの改変体を含む。RNAi分子およびRNAi分子を発現するベクターは、例えば一般的なテキスト(例えば、実験医学別冊 改訂RNAi実験プロトコール 2004年 羊土社、RNAi実験なるほどQ&A 2006年 羊土社など)の教示に従って使用することができる。
RNAi分子の設計は、当業者であれば、標的とする遺伝子のメッセンジャーRNA配列および既知のRNAi分子の配列を参照することにより、一般的なテキスト(実験医学別冊 改訂RNAi実験プロトコール 2004年 羊土社、RNAi実験なるほどQ&A 2006年 羊土社)の教示に従って適宜行なうことができる。
また、本発明における核酸は、RNA、DNA、PNA、またはこれらの複合物を含む。
【0037】
本発明の担体の送達物としてはまた、限定されずに、腸管線維症の発症、進行および/または再発を抑制する上記以外の薬物、例えば、限定することなく、TGFβ1阻害剤(TGFβ1ワクチンを包含する)、ペントキシフィリンおよびその代謝物、ホスホジエステラーゼ4阻害剤、HMG−CoA還元酵素阻害剤、大建中湯、プラバスタチン、リポキシンA
4類似体、硫酸基転移酵素阻害剤、線維化促進因子(例えば、EGF、bFGF、FGF2、PDGF、IGF−I、IGF−II、CTGF、IL−1β、IL−4、IL−13、MCP−1、MIP−1α、MIP−1β、MIP−3α、NOD1リガンド、TLR2、4および5のリガンド、ガレクチン3、ヒアルロナン、ラミニン、コラーゲンなど)の阻害剤や、腸管線維症発症の原因となる炎症を抑制する薬物、例えば、スルファサラジン、メサラミン、アルサラジン、バルサラジドなどのアミノサリチル酸系薬剤、プレドニゾロン、ブ
デソニドなどのコルチコステロイド薬、アザチオプリン、メルカプトプリン、シクロスポリン、メトトレキサートなどの免疫抑制剤、インフリキシマブなどのTNFα阻害剤、さらには、メトロニダゾール、シプロキサンなどの抗生剤などを挙げることができる。これらの薬物はまた、後述の本発明の組成物と併用することもできる。ここで、「併用」とは、本発明の組成物と、上記薬物とを実質的に同時に投与すること、および、同じ処置期間内で時間的に間隔を空けて投与することを含む。前者の場合、本発明の組成物は上記薬物と混合して投与しても、混合せずに連続的に投与してもよい。後者の場合、本発明の組成物は上記薬物の前に投与しても後に投与してもよい。
本発明の一態様において、腸管における細胞外マトリックス産生細胞の活性または増殖を制御する薬物としては、HSP47の阻害剤、例えば、HSP47に対するsiRNAなどが挙げられる。
【0038】
本発明の担体が送達する物質や物体は、標識されていてもいなくてもよい。標識化により、標的細胞への送達の成否や、標的細胞の増減などをモニタリングすることが可能となり、特に試験・研究レベルのみならず、臨床レベルにおいても有用である。標識は、当業者に公知な任意のもの、例えば、任意の放射性同位体、磁性体、気体もしくは生理条件下で気体を発生する物質、核磁気共鳴する元素(例えば、水素、リン、ナトリウム、フッ素等)、核磁気共鳴する元素の緩和時間に影響を与える物質(例えば、金属原子もしくはこれを含む化合物)、標識化物質に結合する物質(例えば抗体など)、蛍光物質、フルオロフォア、化学発光物質、ビオチンもしくはその誘導体、アビジンもしくはその誘導体、酵素などから選択することができる。標識はまた、担体構成成分に付してもよいし、独立した送達物として担体に担持させてもよい。
【0039】
本発明において「腸管における細胞外マトリックス産生細胞用」または「腸管における細胞外マトリックス産生細胞送達用」とは、腸管における細胞外マトリックス産生細胞を標的細胞として使用するのに適することを意味し、これは例えば、同細胞に、他の細胞、例えば正常細胞よりも迅速、高効率かつ/または大量に物質を送達できることを含む。例えば、本発明の担体は、腸管における細胞外マトリックス産生細胞に、他の細胞に比べ、1.1倍以上、1.2倍以上、1.3倍以上、1.5倍以上、2倍以上、さらには3倍以上の速度および/または効率で物質を送達することができる。
【0040】
本発明はまた、前記担体と、前記腸管における細胞外マトリックス産生細胞の活性または増殖を制御する薬物とを含む、腸管における細胞外マトリックス産生細胞の活性または増殖を制御するための、腸管線維症を処置するための、または線維化腸管組織から正常腸管組織を再生するための組成物、ならびに、前記担体の、これらの組成物の製造への使用に関する。本発明の組成物の一態様は、腸管における細胞外マトリックス産生細胞に対する標的化のための有効量のレチノイドを含む。また、本発明の組成物の一態様は、レチノイドによって腸管における細胞外マトリックス産生細胞に標的化されている。
本発明における腸管線維症は、腸壁における瘢痕組織の過剰な蓄積を特徴とする病態を指し、慢性的な腸管の炎症、例えば、慢性化した炎症性腸疾患(薬剤性腸炎、感染性腸炎などの原因が特定される特異性炎症性腸疾患、および、クローン病、潰瘍性大腸炎などの原因不明の非特異性炎症性腸疾患を含む)や、放射線照射による組織損傷、手術や外傷に伴う腸管癒着などに続発するものを含む。
【0041】
本発明において、「線維化腸管組織から正常腸管組織を再生する」とは、線維化によって変質した腸管組織を、少なくとも線維化がより軽度であった状態に回復させることを意味する。すなわち、腸管線維化が進むにつれ、腸管組織は細胞外マトリックスを中心とした線維組織に置換されていくが、この流れを逆転させ、増生した線維組織を本来の正常組織に置換していくことが、本発明における線維化腸管組織からの正常腸管組織の再生である。したがって、本発明における線維化腸管組織からの正常腸管組織の再生は、線維化腸管組織を完全に元の状態に回復させることばかりでなく、線維化腸管組織を部分的に元の状態に回復させることも含む。正常腸管組織の再生の程度は、生検試料などの組織学的検査により、組織構造の正常化、線維組織が占める領域の縮小、正常組織が占める領域の拡大などに基づいて評価してもよいし、本組成物による処置の前に線維化に起因する生化学的指標等の異常が認められている場合には、当該指標等の改善などによって評価してもよい。
【0042】
本発明の組成物においては、担体に含まれるレチノイドが標的化剤として機能する態様で存在する限り、担体は、送達物をその内部に含んでも、送達物の外部に付着して存在しても、また、送達物と混合されていてもよい。したがって、投与経路や薬物放出様式などに応じて、上記組成物を、適切な材料、例えば、腸溶性のコーティングや、時限崩壊性の材料で被覆してもよく、また、適切な薬物放出システムに組み込んでもよい。さらに、本発明の組成物は、レチノイドが結合したリポソームと送達物との複合体、すなわちリポプレックスの形態をとってもよい。また、担体がレチノイドのみで構成される場合には、本発明の組成物は、腸管における細胞外マトリックス産生細胞の活性または増殖を制御する薬物とレチノイドとの複合体の形態をとってもよい。
【0043】
本発明の組成物は医薬として使用することができ(すなわち医薬組成物)、経口および非経口の両方を包含する種々の経路、例えば、限定することなく、経口、静脈内、筋肉内、皮下、局所、肺内、気道内、気管内、気管支内、経鼻、経胃、経腸、直腸内、動脈内、門脈内、心室内、骨髄内、リンパ節内、リンパ管内、脳内、髄液腔内、脳室内、経粘膜、経皮、鼻内、腹腔内および子宮内等の経路で投与してもよく、各投与経路に適した剤形に製剤してもよい。かかる剤形および製剤方法は任意の公知のものを適宜採用することができる(例えば、標準薬剤学、渡辺喜照ら編、南江堂、2003年などを参照)。
例えば、経口投与に適した剤形としては、限定することなく、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤、ゲル剤、シロップ剤などが挙げられ、また非経口投与に適した剤形としては、溶液性注射剤、懸濁性注射剤、乳濁性注射剤、用時調製型注射剤などの注射剤が挙げられる。非経口投与用製剤は、水性または非水性の等張性無菌溶液または懸濁液の形態であることができる。
【0044】
本発明はまた、レチノイドを腸管における細胞外マトリックス産生細胞への標的化剤として、腸管における細胞外マトリックス産生細胞の活性または増殖を制御する薬物を有効成分としてそれぞれ配合する工程を含む、腸管線維症処置用医薬組成物または線維化腸管組織から正常腸管組織を再生するための組成物の製造方法に関する。レチノイドの配合手法は、配合された組成物においてレチノイドが腸管における細胞外マトリックス産生細胞への標的化剤として機能できれば特に限定されないが、例えば、本明細書に記載の種々の手法を用いることができる。また、有効成分の配合手法も、有効成分が所定の効果を奏することができれば特に限定されず、任意の公知の手法を用いることができる。有効成分の配合は、レチノイドと同時に行ってもよいし、レチノイドを配合する前、または配合した後に行ってもよい。例えば、組成物がレチノイド以外の担体構成成分を含む場合、有効成分の配合は、レチノイドが標的化剤として既に配合された担体と有効成分とを混合することなどによって行ってもよいし、レチノイド、レチノイド以外の担体構成成分および有効成分を同時に混合することなどによって行ってもよいし、または、有効成分をレチノイド以外の担体構成成分に配合した後に、これとレチノイドとを混合することなどによって行ってもよい。
【0045】
レチノイドの配合量等は、本発明の担体について既に述べたとおりである。また、有効成分の配合量は、組成物として投与された場合に、腸管線維症の発症や再発を抑制し、病態を改善し、症状を軽減し、または進行を遅延もしくは停止し得る量、好ましくは、腸管線維症の発症および再発を予防し、またはこれを治癒し得る量、あるいは、線維化腸管組織から正常腸管組織を再生し得る量であってもよい。また、投与による利益を超える悪影響が生じない量が好ましい。かかる量は公知であるか、培養細胞などを用いたin vitro試験や、マウス、ラット、イヌまたはブタなどのモデル動物における試験により適宜決定することができ、このような試験法は当業者によく知られている。腸管線維症のモデル動物としては、例えば、Pizarro et al., Trends Mol Med. 2003 May;9(5):218-22に記載のもの(例えば、TNBS誘発モデル、DSS誘発モデル、オキサゾロン誘発モデル、CD4
+CD45RB
high SCID transferモデル、tgε26骨髄キメラマウス、IL-10 KOマウス、TNF
ΔAREモデル、C3H-HeJBirマウス、SAMP1/Yitマウス、SAMP1/YitFcマウスなど)が挙げられる。中でもSAMP1/Yitマウスは、ヒトのクローン病における腸管線維症のモデル動物として有用である。有効成分の配合量は、組成物の投薬態様によって変化し得る。例えば、1回の投与に複数の単位の組成物を用いる場合、組成物1単位に配合する有効成分の量は、1回の投与に必要な有効成分の量の複数分の1とすることができる。かかる配合量の調整は当業者が適宜行うことができる。
【0046】
本発明の担体または組成物は、いずれの形態で供給されてもよいが、保存安定性の観点から、好ましくは用時調製可能な形態、例えば、医療の現場あるいはその近傍において、医師および/または薬剤師、看護士、もしくはその他のパラメディカルなどによって調製され得る形態で提供することができる。この場合、本発明の担体または組成物は、これらに必須の構成要素の少なくとも1つを含む1個または2個以上の容器として提供され、使用の前、例えば、24時間前以内、好ましくは3時間前以内、そしてより好ましくは使用の直前に調製される。調製に際しては、調製する場所において通常入手可能な試薬、溶媒、調剤器具などを適宜使用することができる。
【0047】
したがって、本発明はまた、レチノイド、および/または送達物、および/またはレチノイド以外の担体構成物質を、単独でもしくは組み合わせて含む1個または2個以上の容器を含む前記担体もしくは前記組成物の調製キット、ならびに、そのようなキットの形で提供される前記担体または前記組成物の必要構成要素にも関する。本発明のキットは、上記のほか、本発明の担体および組成物の調製方法や投与方法などに関する指示、例えば説明書や、CD、DVD等の電子記録媒体などを含んでいてもよい。また、本発明のキットは、本発明の担体または組成物を完成するための構成要素の全てを含んでいてもよいが、必ずしも全ての構成要素を含んでいなくてもよい。したがって、本発明のキットは、医療現場や、実験施設などで通常入手可能な試薬や溶媒、例えば、無菌水や、生理食塩水、ブドウ糖溶液などを含んでいなくてもよい。
【0048】
本発明はさらに、前記組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、腸管における細胞外マトリックス産生細胞の活性または増殖を制御するための、腸管線維症を処置するための、または線維化腸管組織から正常腸管組織を再生するための方法に関する。ここで、有効量とは、例えば、後者については、腸管線維症の発症や再発を抑制し、病態を改善し、症状を軽減し、または進行を遅延もしくは停止する量であり、好ましくは、腸管線維症の発症および再発を予防し、またはこれを治癒する量、あるいは、線維化腸管組織から正常腸管組織を再生し得る量であってもよい。また、投与による利益を超える悪影響が生じない量が好ましい。かかる量は、培養細胞などを用いたin vitro試験や、マウス、ラット、イヌまたはブタなどのモデル動物における試験により適宜決定することができ、このような試験法は当業者によく知られている。また、担体に含まれるレチノイド、および本発明の方法に用いる薬物の用量は当業者に公知であるか、または、上記の試験等により適宜決定することができる。腸管線維症のモデル動物については、上述のとおりである。
【0049】
本発明の方法において投与する組成物の具体的な用量は、処置を要する対象に関する種々の条件、例えば、症状の重篤度、対象の一般健康状態、年齢、体重、対象の性別、食事、投与経路、投与の時期および頻度、併用している医薬、治療への反応性、および治療に対するコンプライアンスなどを考慮して決定され得る。
投与経路としては、経口および非経口の両方を包含する種々の経路、例えば、経口、静脈内、筋肉内、皮下、局所、肺内、気道内、気管内、気管支内、経鼻、経胃、経腸、直腸内、動脈内、門脈内、心室内、骨髄内、リンパ節内、リンパ管内、脳内、髄液腔内、脳室内、経粘膜、経皮、鼻内、腹腔内および子宮内等の経路が含まれる。
投与頻度は、用いる組成物の性状や、上記のような対象の条件によって異なるが、例えば、1日多数回(すなわち1日2、3、4回または5回以上)、1日1回、数日毎(すなわち2、3、4、5、6、7日毎など)、1週間に数回(例えば、1週間に2、3、4回など)、1週間毎、数週間毎(すなわち2、3、4週間毎など)であってもよい。
【0050】
本発明の方法において、用語「対象」は、任意の生物個体を意味し、好ましくは動物、さらに好ましくは哺乳動物、さらに好ましくはヒトの個体である。本発明において、対象は健常であっても、何らかの疾患に罹患していてもよいものとするが、腸管線維症の処置が企図される場合には、典型的には腸管線維症に罹患しているか、罹患するリスクを有する対象を意味する。例えば、腸管線維症の予防が意図される場合は、限定することなく、炎症性腸疾患、手術や外傷などに伴う腸管癒着などの腸管線維症の原因となる疾患に罹患した対象が典型例となる。
また、用語「処置」は、疾患の治癒、一時的寛解または予防などを目的とする医学的に許容される全ての種類の予防的および/または治療的介入を包含するものとする。例えば、「処置」の用語は、腸管線維症の進行の遅延または停止、病変の退縮または消失、腸管線維症発症の予防または再発の防止などを含む、種々の目的の医学的に許容される介入を包含する。
【0051】
本発明はまた、上記担体を利用した、腸管における細胞外マトリックス産生細胞への物質送達方法に関する。この方法は、限定されずに、例えば、上記担体に送達物を担持させる工程と、送達物を担持した担体を腸管における細胞外マトリックス産生細胞を含む生物や媒体、例えば培養培地などに投与または添加する工程とを含む。これらの工程は、公知の任意の方法や、本明細書中に記載された方法などに従って適宜達成することができる。上記送達方法はまた、別の送達方法、例えば、腸管を標的とする他の送達方法などと組み合わせることもできる。また、上記方法は、in vitroでなされる態様も、体内の腸管における細胞外マトリックス産生細胞を標的とする態様も含む。本発明の担体によって輸送し得る物質については、上述のとおりである。
【0052】
本発明はまた、腸管線維症罹患対象から採取した線維化腸組織に由来する、ビメンチン陽性、αSMA陰性かつGFAP陰性の表現型を有する、腸管における細胞外マトリックス産生細胞株に関する。
腸管線維症罹患対象としては、限定されず、例えば、腸管線維症と診断された対象や、腸管線維症のモデル動物が挙げられる。腸管線維症の診断は、病歴、バリウム造影などによる腸管狭窄の確認、生検試料の病理組織検査などにより行われる。線維化腸組織の採取は、外科手術や、内視鏡などを用いた生検などの任意の可能な手法によって行うことができる。表現型は、限定されずに、例えば、抗ビメンチン抗体、抗αSMA抗体および抗GFAP抗体による免疫染色や、ビメンチン、αSMAおよびGFAP遺伝子の発現分析などにより確認することができる。上記各抗体は市販のものを使用してもよいし、動物を各タンパク質で免疫化するなどの既知の手法で新たに作製してもよい。上記細胞株は、HSP47またはそのホモログ(例えばgp46)、コラーゲン、VA貯蔵関連遺伝子、例えば、ADRP、LRATおよび/またはLXRβ等を発現していてもよい。また、上記細胞株は、in vitroで培養してもαSMAおよびGFAPは陽性とならない。上記細胞株はまた、不死化遺伝子(例えば、SV40T、テロメラーゼ遺伝子等)の導入などにより不死化されていてもよい。
上記細胞株は、間葉系細胞のための通常の培養条件で培養することができる。かかる条件としては、限定されず、例えば、10%FBS含有DMEMでの、5%CO
2、37℃における培養が挙げられる。
【0053】
本発明はまた、
(i)腸管線維症罹患対象から採取した線維化腸組織から細胞を得る工程、および
(ii)(i)で得た細胞から、ビメンチン陽性、αSMA陰性かつGFAP陰性の表現型を有する細胞を選択する工程、
を含む、腸管における細胞外マトリックス産生細胞を単離する方法に関する。
線維化腸組織からの細胞の取得は、限定されずに、例えば、任意に細切した組織を培養し、そこから遊走する細胞を取得してもよいし、組織をタンパク質分解酵素(例えば、コラゲナーゼ、プロテアーゼなど)で処理し、そこから解離した細胞を取得してもよい。
細胞の選択は、限定されずに、例えば、細胞を限界希釈法などで単細胞に分離し、各クローンの表現型を免疫染色や遺伝子発現解析などで確認することに
より行ってもよいし、抗ビメンチン抗体、抗αSMA抗体および/または抗GFAP抗体で標識した単細胞懸濁液を、セルソーターなどで処理することにより行ってもよい。
【0054】
本発明はまた、腸管における細胞外マトリックス産生細胞株を作製する方法であって、
(i)腸管線維症罹患対象から採取した線維化腸組織から細胞を得る工程、および
(ii)(i)で得た細胞から、ビメンチン陽性、αSMA陰性かつGFAP陰性の表現型を有する細胞を選択する工程、
を含み、かつ、工程(i)または(ii)の後に、細胞を不死化する工程を含む方法に関する。
細胞の不死化は、不死化遺伝子(例えば、SV40T、テロメラーゼ遺伝子等)の導入などにより行うことができる。不死化は、所望の表現型の細胞を選択する前に行っても、選択した後に行ってもよい。細胞を不死化する工程以外の構成については、腸管における細胞外マトリックス産生細胞を単離する方法について上記したとおりである。
【0055】
本発明はまた、
(i)上記の腸管線維症罹患対象から採取した線維化腸組織に由来する、ビメンチン陽性、αSMA陰性かつGFAP陰性の表現型を有する、腸管における細胞外マトリックス産生細胞株と、被験因子とを共存させる工程、および
(ii)被験因子との共存による細胞株の変化を検出する工程
を含む、腸管線維症処置因子をスクリーニングする方法に関する。
本発明において、被験因子は、化合物などの物質のほか、熱、電磁波(例えば、電波、光線、X線、ガンマ線など)、圧力、pHなどの種々の因子を含む。細胞株と被験因子とを「共存させる」とは、細胞株と被験因子とを同一の媒体中に置くことを意味し、両者が互いに接触することを必ずしも要しない。細胞株と被験因子との共存は、例えば、限定されずに、細胞株と被験因子とを同一の容器に入れることなどを含む。細胞株と被験因子との共存はin vivoで行っても、in vitroで行ってもよい。
被験因子との共存による細胞株の変化としては、限定されずに、例えば、細胞株の活性の抑制または亢進(例えば、遺伝子発現や物質産生の抑制または亢進)、細胞株の増殖の抑制または増強などが挙げられる。したがって、例えば、被験因子との共存により細胞株の増殖が抑制されることや、細胞株の活性が抑制されることは、当該被験因子が腸管線維症処置因子であることを示す。
【0056】
本発明はまた、上記の腸管線維症罹患対象から採取した線維化腸組織に由来する、ビメンチン陽性、αSMA陰性かつGFAP陰性の表現型を有する、腸管における細胞外マトリックス産生細胞株を含む、腸管線維症処置因子をスクリーニングするためのキットに関する。本キットには、前記細胞株のほか、細胞株の変化を検出する試薬、本キットを用いて腸管線維症処置因子をスクリーニングする方法に関する指示、例えば説明書や、CD、DVD等の電子記録媒体などをさらに含んでもよい。
【実施例】
【0057】
本発明を以下の例でさらに詳細に説明するが、これらは例示に過ぎず、本発明を決して限定するものではない。
例1 クローン病モデルマウスSAMP1/Yitの腸管における星細胞様細胞の同定
クローン病の線維化に肝星細胞に相当する細胞が関与するのかを検討するために、クローン病モデルマウスであるSAMP1/Yitを使用した。SAMP1/YitマウスはAKR/Jマウスの同腹仔を24代交配して作出されたSAMP1マウスのうち、皮膚に潰瘍を持つマウスをさらに近親間で20代以上交配して得られた自然発症モデルマウスで、20週齢までに自発的に回腸炎を引き起こし(Matsumoto et. al., Gut. 1998 Jul;43(1):71-8)、病理組織的に、(i)クローン病と類似した炎症が回腸終末に好発する、(ii)病変が非連続かつ全層性にわたる、(iii)筋層の肥厚、陰窩の過形成、絨毛の萎縮、粘膜固有層および粘膜下層への炎症細胞浸潤、パネート細胞および杯細胞の過形成、肉芽腫、陰窩膿瘍が観察される、等の特徴を有する(Kosiewicz et al., J Clin Invest. 2001 Mar;107(6):695-702)。IBDモデルマウスのほとんどが大腸炎を生じるモデルであるところ、上記特徴を有するSAMP1/Yitマウスは、既存の疾患モデル動物の中で最もクローン病の病態に近いモデルマウスと考えられている(Pizarro et al., Trends Mol Med. 2003 May;9(5):218-22)。
【0058】
SAMP1/Yitマウスの腸管組織において星細胞様細胞の同定を行うために、回腸線維化部位を組織免疫染色法にて検討した。まず、SAMP1/Yitマウス(29週齢、ヤクルト中央研究所より供与)の回腸組織を採取した。組織を30%中性ホルマリンにて24時間固定後、パラフィン包埋し、薄切切片を作製し、サンプル切片とした。サンプル切片をアザン染色し線維化の状態を観察したところ、肥厚した筋層の細胞間にコラーゲン線維の蓄積が認められた(
図1(a))。さらに、連続切片に対し、肝星細胞マーカーに対する抗体を用いた免疫組織化学的解析を行った。抗体としては、抗ビメンチン抗体(Anti-Vimentin, Abcam, clone RV202, cat. No. ab8978、標識:Alexa Fluor 488)、抗αSMA抗体(
Anti-α-Smooth Muscle Actin, SIGMA, clone 1A4, cat. No. A2547、標識:Cy3)および抗GFAP抗体(
Anti-Glial Fibrillary Acidic Protein, Dako, Polyclonal Rabbit, Code No. Z0334、標識:DyLight 633)を使用した。定法どおり蛍光免疫染色を行った後、共焦点レーザー顕微鏡で観察したところ、回腸筋層の線維化病変部位において、蓄積したコラーゲン線維に沿って、ビメンチン(+)/αSMA(−)/GFAP(−)の表現型を有する細胞の局在が多く認められた(
図1(b)〜(d)、矢印参照)。一方、バックグラウンドマウスであるAKR/Jマウスの回腸筋層部位では、かかる細胞の存在は認められなかった。この結果は、静止型肝星細胞様のビメンチン(+)/αSMA(−)/GFAP(−)の表現型を有する細胞が線維化に関与していることを示唆するものである。
【0059】
例2 SAMP1/Yitマウスの線維化小腸組織からの星細胞様細胞株の樹立
例1で観察された細胞をin vitroで機能解析し、さらにはそれを利用して腸管線維症治療法などの検討を行うために、SAMP1/Yitマウスの線維化小腸組織からビメンチン(+)/αSMA(−)/GFAP(−)の表現型を有する星細胞様細胞を分離・培養し、星細胞様細胞株を樹立した。
まず、SAMP1/Yitマウス(21週齢)の回腸組織を採取し、ハサミで1mm長程度に細断した後、EDTA溶液(HBSS(pH7.5)中の4.5mM EDTA溶液、以下同じ)20mLに浸し、軽く震盪した。4℃で15分間静置後、上清を除去し、新鮮なEDTA溶液に再懸濁した。EDTA溶液を5回交換した後、回腸組織片を10%FBS含有DMEMに懸濁し、6ウェルカルチャーディッシュに播種し、5%CO
2中37℃で培養した。培養開始から5日目には間葉系細胞様形態をした細胞群がディッシュに付着し増殖を開始し始めた。この時に、レトロウィルスベクターpMFG-tsT-IRES-neo(Kawano et al., Blood. 2003 Jan 15;101(2):532-40)により不死化遺伝子SV40Tの導入を行い、IC10_F2細胞系を得た(
図2上段)。その後、IC10_F2細胞系を限界希釈法と、上記抗αSMA抗体、抗GFAP抗体および抗ビメンチン抗体による免疫染色法で、ビメンチン(+)/αSMA(−)/GFAP(−)の表現型を有する細胞のクローニングを試みた結果、かかる表現型を有する腸管由来星細胞様細胞株IC10_F2_E9を樹立することができた(
図2下段)。
【0060】
樹立したIC10_F2_E9が、星細胞の特徴であるVA貯蔵関連遺伝子群を発現しているのかを、リアルタイムPCRにて検討した。まず、RNeasy Mini Kit(QIAGEN, 74104)を用いてIC10_F2細胞およびIC10_F2_E9細胞からそれぞれ全RNAを調製し、逆転写酵素(High Capacity RNA-to-cDNA Master Mix, Applied Biosystems, 4390713)を反応させcDNAを作製した。得られたcDNAを使用して、LightCycler
(R) 480システム(Roche Applied Science)でのリアルタイムPCRにてビタミンA貯蔵関連遺伝子群(ADRP、LRATおよびLXRβ)の発現量を測定した。PCR試薬は、LightCycler
(R) 480 Probes Master(Roche Applied Science, 4707494)を使用した。プローブは、Universal ProbeLibrary Probes(Roche Applied Science)に含まれるものを使用した(ビメンチン:Probe #79, 468902
0、αSMA:Probe #11, 4685105、ADRP:Probe #79, 4689020、LRAT:Probe #79, 4689020、LXRβ:Probe #106, 4692250)。
【0061】
また、用いたプライマーは以下のとおりである(以下、「F」はフォワードプライマー、「R」はリバースプライマーをそれぞれ意味する)。
ビメンチン:
F 5’TGCGCCAGCAGTATGAAA 3’(配列番号1)
R 5’GCCTCAGAGAGGTCAGCAAA 3’(配列番号2)
αSMA:
F 5’TCACCATTGGAAACGAACG 3’(配列番号3)
R 5’ATAGGTGGTTTCGTGGATGC 3’(配列番号4)
ADRP:
F 5’CCTCAGCTCTCCTGTTAGGC 3’(配列番号5)
R 5’CACTACTGCTGCTGCCATTT 3’(配列番号6)
LRAT:
F 5’GAAGGTGGTCTCCAACAAGC 3’(配列番号7)
R 5’TACTGTGTCCACACGGATGC 3’(配列番号8)
LXRβ:
F 5’GCTCTGCCTACATCGTGGTC 3’(配列番号9)
R 5’CTCATGGCCCAGCATCTT 3’(配列番号10)
【0062】
なお、ADRPは、脂肪滴膜上に局在し、脂肪滴の生合成や代謝に関わるPAT(ペリリピン・アディポフィリン・TIP47)タンパク質の一種であり(Lee et al., J Cell Physiol. 2010 Jun;223(3):648-57)、LRATはレチノールエステル化酵素で、肝星細胞では小胞体膜上に局在し、VAの貯蔵に関与していると考えられており(Nagatsuma et al., Liver Int. 2009 Jan;29(1):47-54)、LXRβは、脂質代謝や抗炎症に関わる核内受容体で、肝星細胞においてはmRNAレベルでの発現が認められている(Beaven SW. et al., Gastroenterology. 2011 Mar;140(3):1052-62)。その結果、親株であるIC10_F2と比較して、IC10_F2_E9は、ADRPについては2.4倍、LRATについては27倍、LXRβについては2.4倍の遺伝子発現を示した(
図3)。この結果は、IC10_F2_E9が星細胞の特徴を有することを示すものである。
【0063】
例3 siRNA含有VA結合リポソームの調製
(1)siRNA
コラーゲン(I〜IV型)の共通分子シャペロンであるHSP47(マウス、GenBank Accession No. X60676)の塩基配列を標的とするsiRNAは、以下のものを用いた。
A:GGACAGGCCUGUACAACUA(マウスHSP47の塩基配列上の第969塩基から始まるセンス鎖siRNA配列、配列番号11)
B:UAGUUGUACAGGCCUGUCC(アンチセンス鎖siRNA配列、配列番号12)
【0064】
対照としてのsiRNArandom(siRNAscrambleと称することもある(略号:scr))は、以下のものを用いた。
C:CCUCCAAACCAAUUGGAGG(センス鎖siRNA、配列番号13)
D:CCUCCAAUUGGUUUGGAGG(アンチセンス鎖siRNA、配列番号14)
【0065】
(2)VA−lip−siRNAの調製
カチオン性脂質として、O,O’−ジテトラデカノイル−N−(α−トリメチルアンモニオアセチル)ジエタノールアミンクロライド(DC−6−14)、コレステロールおよびジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)を4:3:3のモル比で含むカチオン性リポソーム(LipoTrust)を北海道システム・サイエンス(Sapporo, Japan)から購入した。リポソームは、使用前に、凍結乾燥した脂質混合物に攪拌条件下で再蒸留水(DDW)を添加することによって、1mM(DC−6−14)の濃度で調製した。VA結合リポソームを調製するため、DMSOに溶解した20nmolのビタミンA(レチノール、Sigma, USA)をリポソーム懸濁液(DC−6−14として20nmol)と、1.5mlチューブ中で攪拌しながら25℃で混合した。siRNA HSP47を担持するVA結合リポソーム(VA−lip−siRNA HSP47)を調製するため、siRNA HSP47溶液(DDW中に3nmol/ml)を、レチノール結合リポソーム溶液に攪拌しながら室温下で添加した。siRNAとDC−6−14とのモル比は1:400であった。in vitroでの使用に望ましい用量を得るため、VA−lip−siRNAをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で再構成した。
【0066】
例4 IC_F2_E9細胞へのsiRNAの導入とHSP47発現の抑制
10%FBS含有DMEM中にIC_F2_E9細胞を1×10
4個/ウェルで含む6ウェルマルチディッシュ(N140675, Nunc
TM)に例3で得たsiRNA含有VA結合リポソームを100μl添加し、37℃、CO
25%で1時間インキュベートした後、培地を交換し、37℃、CO
25%でさらに48時間インキュベートした。その後、細胞を回収し、例2と同様の手法で全RNAを調製した。得られた全RNAに逆転写酵素を反応させてcDNAを作製した後、リアルタイムPCRにて、HSP47の発現抑制を評価した。用いたプライマーは以下のとおりである。
F:5’GAAGGCTGTCGCCATCTC 3’(配列番号15)
R:5’CCCAGTCCTGCCAGATGT 3’(配列番号16)
【0067】
図4に示す結果から、IC10_F2_E9細胞においてHSP47遺伝子が発現していること、および、同遺伝子の発現がsiRNA含有VA結合リポソームのみによって抑制されたことが分かる。siRNAが細胞内で作用することに鑑みれば、この結果は、IC10_F2_E9細胞がコラーゲン産生能を有すること、そして、レチノイドが、腸管における細胞外マトリックス産生細胞としてのIC10_F2_E9細胞への物質の取込みを劇的に促進する標的化剤として作用することを示すものである。