(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るゴルフボールの一実施の形態について説明するが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。なお、添付図面は、本発明の理解を優先しており、縮尺通りには描かれていない。
【0018】
図1に示すように、この実施の形態のゴルフボール1は、ボールの中心に位置するコア10と、コアの外側を包囲するカバー30と、カバーの外側を包囲する塗装層40とを主に備える。カバー30の表面には、複数のディンプル32が形成されている。塗装層40は、このディンプル32の窪みに沿ってカバー30の表面を実質的に均一の厚さで覆っている。
【0019】
また、ゴルフボール1は、
図1に示すように、任意に中間層20をコア10とカバー30との間に備えることもできるが、本発明はこれに限定されず、中間層を設けずにカバー30がコア10に直接的に接するように構成してもよい。
【0020】
コア10は、主に基材ゴムにより形成することができる。基材ゴムとしては、広くゴム(熱硬化性エラストマー)を用いることができ、例えば、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリウレタンゴム(PU)、ブチルゴム(IIR)、ビニルポリブタジエンゴム(VBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ニトリルゴム(NBR)、シリコーンゴムを用いることができるが、これらに限定されない。ポリブタジエンゴム(BR)としては、例えば、1,2−ポリブタジエンやシス1,4−ポリブタジエン等を用いることができる。
【0021】
コア10には、主成分となる基材ゴムの他、任意に、例えば、共架橋材、架橋剤、充填材、老化防止剤、異性化剤、素練り促進剤、硫黄、及び有機硫黄化合物を添加することができる。また、主成分として、基材ゴムに代えて、熱可塑性エラストマー、アイオノマー樹脂、またはこれらの混合物を用いることもできる。
【0022】
共架橋材としては、これに限定されないが、例えば、α、β−不飽和カルボン酸またはその金属塩を用いることが好ましい。α、β−不飽和カルボン酸またはその金属塩としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、およびこれらの亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などがある。共架橋材の配合は、これに限定されないが、例えば、基材ゴムを100重量部として、5重量部以上が好ましく、10重量部以上がより好ましい。また、共架橋材の配合は、70重量部以下が好ましく、50重量部以下がより好ましい。
【0023】
架橋剤としては、これに限定されないが、有機過酸化物を用いることが好ましい。開始剤の配合は、これに限定されないが、例えば、基材ゴムを100重量部として、0.10重量部以上が好ましく、0.15重量部以上がより好ましく、0.30重量部以上が更に好ましい。また、開始剤の配合は、8重量部以下が好ましく、6重量部以下がより好ましい。
【0024】
充填材としては、例えば、銀、金、コバルト、クロム、銅、鉄、ゲルマニウム、マンガン、モリブデン、ニッケル、鉛、白金、スズ、チタン、タングステン、亜鉛、ジルコニウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マンガンなどを用いることができるが、これらに限定されない。充填材は、粉末形状が好ましい。充填材の配合は、これに限定されないが、例えば、基材ゴムを100重量部として、1重量部以上が好ましく、2重量部以上がより好ましく、3重量部以上が更に好ましい。また、充填材の配合は、100重量部以下が好ましく、80重量部以下がより好ましく、70重量部以下が更に好ましい。
【0025】
コア10は、実質的に球状の形状を有している。コア10の外径は、42mm以下が好ましく、41mm以下がより好ましく、40mm以下がさらに好ましい。コア10の外径の下限は、小さ過ぎるとゴルフボールの反発が低下してしまうことから、5mm以上が好ましく、15mm以上がより好ましく、25mm以上が最も好ましい。コア10は、
図1では中実のコアを示したが、これに限定されず、中空のコアであってもよい。また、コア10は、
図1では一層として示したが、これに限定されず、例えば、センターコアとその包囲層などの複数の層からなるコアとしてもよい。
【0026】
コア10の成形法は、ゴルフボールのコアの公知の成形法を採用することができる。例えば、これに限定されないが、基材ゴムを含む材料を混練機で混練した後、この混練物を丸型金型で加圧加硫成形して得ることができる。また、複数の層を有するコアの成形法は、多層構造のソリッドコアの公知の成形法を採用することができる。例えば、センターコアを、材料を混練機で混練し、この混練物を丸型金型で加圧加硫成形して得た後、包囲層として、材料を混練機で混練し、この混練物をシート状に成形し、このシートでセンターコアを覆ったものを丸型金型で加圧加硫成形することで、複数層のコアを得ることができる。
【0027】
カバー30は、その材料として、これらに限定されないが、アイオノマー樹脂、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、熱硬化性ポリウレタン、またはこれらの混合物を使用して形成することができる。また、カバー30には、上記のアイオノマー樹脂、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、熱硬化性ポリウレタンの主成分の他に、他の熱可塑性エラストマーや、ポリイソシアネート化合物、脂肪酸又はその誘導体、塩基性無機金属化合物、充填材などを添加することができる。
【0028】
アイオノマー樹脂としては、これに限定されないが、以下の(a)成分及び/又は(b)成分をベース樹脂とするものを用いることができる。また、このベース樹脂には、任意に、以下の(c)成分を添加することができる。(a)成分は、オレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体及び/又はその金属塩、(b)成分は、オレフィン−不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体及び/又はその金属塩、(c)成分は、ポリオレフィン結晶ブロック、ポリエチレン/ブチレンランダム共重合体を有する熱可塑性ブロックコポリマーである。
【0029】
カバー30の厚さは、これに限定されないが、0.2mm以上が好ましく、0.4mm以上がより好ましい。また、カバー30の厚さは、4mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましく、2mm以下が更に好ましい。カバー30の表面には、複数のディンプル32が形成されている。ディンプル30の大きさ、形状、数などは、ゴルフボール1の所望する空気力学的特性に応じて、適宜、設計することができる。
【0030】
カバー30の硬度は、これに限定されないが、ショアDにて、40以上が好ましく、50以上がより好ましく、55以上が更に好ましい。また、カバー30の硬度は、75以下が好ましく、70以下がより好ましく、65以下が更に好ましい。
【0031】
カバー30の形成法は、ゴルフボールのカバーの公知の成形法を採用することができる。例えば、特に限定されないが、カバー30は、金型内にカバー用の材料を射出成形することによって形成する。このカバー成型用の金型はカバーを成型するためのキャビティを有し、このキャビティの壁面にはディンプルを形成するための複数の凸部を有する。キャビティの中央にコア10を配置することで、コア10を覆うようにカバー30が形成される。
【0032】
塗装層40は、ゴム弾性を有する材料により形成される。ゴム弾性を有する材料としては、特に限定されるものではないが、ヤング率が0.1MPa以上となるものが好ましく、1MPa以上となるのもがより好ましく、3MPa以上となるものが更に好ましい。また、ヤング率が70MPa以下となるものが好ましく、65MPa以下となるものがより好ましく、60MPa以下となるものが更に好ましい。ゴム弾性を有する材料としては、同様に、これに限定されるものではないが、ポアソン比が0.45以上となるものが好ましく、0.46以上となるものがより好ましく、0.47以上となるものが更に好ましい。また、ポアソン比が0.60以下となるものが好ましく、0.55以下となるものがより好ましく、0.50以下となるものが更に好ましい。ヤング率やポアソン比が上記の範囲に入らない場合には、塗装層40が十分な柔軟性と摩擦力を得ることが出来なくなることがある。
【0033】
このようなゴム弾性を有する材料として、例えば、JIS K6397の分類に従うと、Mグループ(ポリメチレン型の飽和主鎖をもつゴム)として、ACM(いわゆるアクリルゴムで、アクリル酸エチルまたは、他のアクリル酸エステル類と加硫を可能にする少量の単量体とのゴム状共重合体)、AEM(アクリル酸エチル又は他のアクリル酸エステル類とエチレンとのゴム状共重合体)、ANM(アクリル酸エチル又は他のアクリル酸エステル類とアクリロニトニルとのゴム状共重合体)、CM(塩素化ポリエチレン)、CSM(クロロスルフォン化ポリエチレン。商品名:ハイパロンなど)、EPDM(エチレンとプロピレンとジエンとのゴム状共重合体。EPTともいう)、EPM(エチレンとプロピレンとのゴム状共重合体。EPRともいう)、EVM(エチレンと酢酸ビニルとのゴム状共重合体)のポリマーを用いることができる。
【0034】
Oグループ(主鎖に炭素と酸素をもつゴム)としては、CO(エピクロロヒドリンゴムまたはポリクロロメチルオキシランともいう)、ECO(エチレンオキシドとエピクロロヒドリンとのゴム状共重合体)のポリマーを用いることができる。
【0035】
Rグループ(主鎖に不飽和炭素結合をもつゴム)としては、BR(ブタジエンゴム)、CR(クロロプレンゴム。商品名:ネオプレンなど)、IIR(いわゆるブチルゴムで、イソブテンとイソプレンとのゴム状共重合体)、IR(いわゆる合成天然ゴムで、イソプレンゴム)、NBR(いわゆるニトリルゴムで、アクリロニトリルとブタジエンとのゴム状共重合体)、NR(天然ゴム)、NOR(ノルボルネンゴム)、SBR(スチレンとブタジエンとのゴム状共重合体)、E−SBR(乳化重合で合成されたスチレンとブタジエンとのゴム状共重合体)、S−SBR(溶液重合で合成されたスチレンとブタジエンとのゴム状共重合体)、SIBR(スチレンとイソプレンとブタジエンとのゴム状共重合体)、XBR(カルボキシル化されたブタジエンゴム)、XCR(カルボキシル化されたクロロプレンゴム)、XNBR(カルボキシル化されたアクリロニトリルとブタジエンとのゴム状共重合体)、XSBR(カルボキシル化されたスチレンとブタジエンとのゴム状共重合体)、BIIR(いわゆる臭素化ブチルゴムで、臭素化されたイソブテンとイソプレンとのゴム状共重合体)、CIIR(いわゆる塩素化ブチルゴムで、塩素化されたイソブテンとイソプレンとのゴム状共重合体)のポリマーを用いることができる。
【0036】
塗装層40の厚さは、これに限定されないが、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。また、塗装層40の厚さは、100μm以下が好ましく、60μm以下がより好ましい。塗膜が薄すぎる場合には、十分な摩擦を得ることが出来ないばかりか、剥離しやすくなってしまうことがあり機能的にも耐久性的にも劣ってしまう場合がある。また、塗膜が厚すぎる場合には十分なドライバースピンが増加してしまうため十分な飛距離を得ることが出来ない場合がある。
【0037】
塗装層40に用いる材料としては、損失正接(tanδ)が大きい、すなわち、反発の悪い材料が好ましい。材料の変形量が大きくなり、その結果、摩擦力を大きくすることができる。tanδは、例えば、0.05以上が好ましく、0.10以上がより好ましく、0.15以上が更に好ましく、0.20以上が最も好ましい。また、tanδの上限は、特に限定されないが、0.30以下が好ましく、0.28以下がより好ましい。特に、ドライバースピンを低下させ、アプローチスピンを上げるため、カバー30のtanδを小さく、塗膜層40のtanδを大きくすることが好ましい。よって、塗装層40の材料はカバー30の材料よりもtanδが大きいものを用いることが好ましい。塗装層のtanδ−カバーのtanδ=Tdは、0.05以上が好ましく、0.07以上がより好ましく、0.10以上が更に好ましい。
【0038】
なお、損失正接(tanδ)とは、損失弾性率を貯蔵弾性率で割った値で示され、動的粘弾性率とも呼ばれるものである。この損失正接(tanδ)は、市販の測定装置、例えば、ティー・エイ・インスツルメント社製の動的粘弾性測定装置(DMA Q800)で測ることができる。測定条件として、試験片は、幅3mm×厚さ1mm×長さ20mm(この長さは、実際に測定する部分の長さであり、両端の挟持する部分を含まない)の寸法とする。初期歪みは0.1N、振幅は1%、周波数は15Hzとする。−100℃から80℃までの温度範囲にわたり3℃/分の昇温速度で測定を行い、−10℃での値を採用する。
【0039】
塗装層40の硬度は、これに限定されないが、JIS−C硬度にて、10以上が好ましく、20以上がより好ましく、30以上が更に好ましい。また、塗装層40の硬度は、70以下が好ましく、60以下がより好ましく、50以下が更に好ましい。特に、塗装層40は、コア10よりも硬度を低くすることが好ましい。コア中心から表面に向けて硬度が逐次高くなるように成形することにより、ドライバースピンを低減し飛距離を伸ばすことができる場合があり、最も軟らかい材料を、ゴルフボール表面付近に薄く配置することで、アプローチにおいて適切なスピンを得ることができる場合が多い。
【0040】
さらに、塗装層40の下地となるカバー30は、硬い方がアプローチスピンが掛かるが、ゴルフボール製品1の硬度が硬くなった場合、硬すぎるカバー30では打撃時の変形量が小さくなり接触面積が足りなくなり、滑り現象が起きてアプローチスピンが減少してしまう。よって、ゴルフボール製品1の硬度が硬い場合には、滑りが起きない範囲でカバー30の硬度をできるだけ硬くすることが好ましい。例えば、ゴルフボール製品1のμ硬度とカバー30のショアD硬度との関係として、カバーのショアD硬度/ゴルフボール製品のμ硬度=Scが、25以下が好ましく、23以下がより好ましい。この硬度比Scの下限は、特に限定されないが、5以上が好ましく、10以上がより好ましく、14以上が更に好ましい。なお、μ硬度は、ゴルフボール製品1を、初期荷重98N(10kgf)から1275N(130kgf)まで荷重を負荷した時のたわみ(変形)量のことをいい、単位はmmである。
【0041】
また、このゴルフボール製品1の硬度とカバー30の硬度の関係の理由と同じく、ゴルフボール製品1の硬度が硬くなった場合、打撃時の変形量が小さくなり接触面積が足りなくなり、滑り現象が起きてアプローチスピンが減少してしまう。よって、ゴルフボール製品1の硬度が硬い場合には、滑りが起こらないように塗膜層40の摩擦力を大きく、すなわち、硬度を軟らかくすることが好ましい。例えば、ゴルフボール製品1のμ硬度と塗装層40のJIS−C硬度との関係として、塗装層のJIS−C硬度/ゴルフボール製品のμ硬度=Spが、15以下が好ましく、13以下がより好ましい。この硬度比Spの下限は、特に限定されないが、2以上が好ましく、5以上がより好ましく、7以上が更に好ましい。
【0042】
塗装層40の形成法は、ゴルフボールの塗装層の公知の成形法を採用することができる。例えば、特に限定されないが、塗装層40は、上記のゴム弾性を有する材料を溶媒で希釈することで液状の塗料を得ることができる。溶媒としては、特に限定されないが、n−ペンタン、ガソリン、n−ヘキサン、ジエチルエーテル、シクロヘキサン、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、メチルイソプロピルケトン、キシレン四塩化炭素、メチルプロピルケトン、エチルベンゼン、キシレン、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ベンゼン、クロロホルム、メチルエチルケトン、トリクロロエチレン、アセトン、n−ヘキサノール等を用いることができる。希釈率(塗装ポリマー濃度)は、特に限定されないが、5%〜100%とすることができる。
【0043】
そして、この塗料をカバー30表面に塗布した後、架橋することで、塗装層40を形成することができる。塗布法は、特に限定されないが、スプレー式、ディップ式、ロール式、スピン式などにより塗布することができる。また、架橋法は、特に限定されないが、上記の塗料に架橋種または硬化剤を添加し、塗料を塗布後、架橋または硬化を行うことが好ましい。架橋種または硬化剤としては、十分な反発弾性を有する塗装層40を得るために、例えば、過酸化物架橋、金属架橋、アミン架橋、オキシム架橋、樹脂架橋、硫黄架橋が好ましい。また、塗料には、架橋種または硬化剤の他、任意に、フィラーなどを添加することもできる。架橋させることが難しい材料であっても、分子鎖の長い材料を溶媒に分散させることによって塗装することが可能となり、架橋種を用いなくとも分子鎖が絡み合うことによりゴム弾性を有する塗料を作ることが可能である。
【0044】
塗装層40の上には、任意に、塗装層40を覆うトップコート(図示省略)を形成することができる。トップコートとしては、ゴルフボールのトップコートとして公知の材料を用いることができる。材料としては、ポリエステルポリオールやアクリルポリオールなどを硬化剤用いて定着させることができる。例えば、2液硬化型ウレタン塗料を挙げることができ、特に無黄変タイプの塗料を用いることが好ましい。トップコートの厚さは、例えば、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。また、トップコートの厚さは、100μm以下が好ましく、60μm以下がより好ましい。
【0045】
コア10とカバー30との間に配置する中間層20は、必須ではなく、任意に設けることができる。コア的な機能を有する中間層を設けてもよいし、カバー的な機能を有する中間層を設けてもよい。また、複数の中間層を設けてもよく、例えば、コア的またはカバー的な機能を有する複数の中間層を設けてもよいし、コア的な機能を有する第1の中間層とカバー的な機能を有する第2の中間層を設けてもよい。
【0046】
中間層20の材料としては、これに限定されないが、以下の加熱混合物を主材として用いることが好ましい。この材料を中間層に用いることにより、打撃時に低スピン化することができ、大きな飛距離を得ることができる。
(a)オレフィン−不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体の金属イオン中和物と、
(b)オレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体の金属イオン中和物と
を重量比で100:0〜0:100になるように配合したベース樹脂と、
(e)このベース樹脂に対して重量比で100:0〜50:50になるように配合した非アイオノマー熱可塑性エラストマーと、
ベース樹脂と(e)成分を含む樹脂成分100重量部に対して、
(c)分子量が228〜1500の脂肪酸及び/又はその誘導体5〜150重量部と、
(d)ベース樹脂及び(c)成分中の未中和の酸基を中和できる塩基性無機金属化合物0.1〜17重量部。
【0047】
「主材」とは、中間層20の総重量に対して50重量%以上、好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上の材料を意味する。
【0048】
中間層20の厚さは、これに限定されないが、0.5mm以上が好ましく、1mm以上がより好ましい。また、中間層20の厚さは、10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、3mm以下が更に好ましい。なお、中間層20は、
図1では単層を示したが、これに限定されず、2層以上の複数層にすることもできる。
【実施例】
【0049】
表1に示す構成のゴルフボールをそれぞれ作製し、ゴルフボールのスピン性能を測定する試験を行った。各々の試験例について5つのボールを準備および評価した上で、その平均値を結果とした試験結果を表1に示す。表1に示すコアの材料の配合A〜Cについては表2(重量部)に、カバーの材料の配合E〜Gについては表3(重量部)に、塗装層およびトップコートの材料の配合H〜Kについては表4(重量部)に示す。なお、塗装層は、所定の配合の材料をトルエンで30〜50%希釈してスプレーにて塗装した。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
ポリブタジエンは、JSR社製のBR01を使用し、基材ゴムとして用いた。
アクリル酸亜鉛は、日本触媒社製のWN86。
過酸化物1は、ジクミルパーオキサイドで、日本油脂製の商品名パークミルD。
過酸化物2は、1,1ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサンとシリカの混合物であって、日本油脂社製の商品名パーヘキサC−40。開始剤として用いた。
老化防止剤は、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)で、大内新興化学工業社製の商品名ノクラックNS−6。
酸化亜鉛は、堺化学工業社製の商品名酸化亜鉛3種。
有機硫黄化合物は、ペンタクロロチオフェノール亜鉛塩を用いた。
【0053】
【表3】
【0054】
ハイミラン1557は、三井デュポンポリケミカル社製のZnイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂。
ハイミラン1605は、三井デュポンポリケミカル社製のNaイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂。
ハイミラン1706は、三井デュポンポリケミカル社製のZnイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂。
ハイミラン1601は、三井デュポンポリケミカル社製のNaイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂。
パンデックスT8260は、ディーアイシーバイエルポリマー株式会社製のMDI−PTMGタイプの熱可塑性ポリウレタン材料であって、デュロメータD型樹脂硬度が56、反発弾性率は45%。
ポリイソシアネート化合物は、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート。
ハイトレル4001は、東レ・デュポン株式会社製の熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマー。
TiO
2は、石原産業社製のタイペークR550。
【0055】
【表4】
【0056】
油性プロトは、ハギテック社の商品名油性プロトであり、SBR系樹脂を主成分とする材料である。詳細な組成は、ガソリン(ナフサ)が33〜37%、ヘキサンが13〜16%、キシレンが15〜19%、アセトンが8〜10%、SBR系樹脂が24〜28%。
ポリエステルポリオールは、炭素数18の植物油脂肪酸のリシノールで変性されたポリエステルポリオールであり、全体の分子量は1500、ヒドロキシル価は135。
アクリル系ポリオールは、大日本インキ社製のアクリディック801(ヒドロキシル価は100)。
沈降性硫酸バリウムは、堺化学社製の商品名沈降性硫酸バリウム#100。
硬化剤は、ヘキサメチレンジイソシアネートを使用した。
【0057】
表1のスピン性能の測定試験は、ドライバー(ブリヂストンスポーツ社製のTourStage X−Drive Type455 9.5°)及びアプローチウェッジ(ブリヂストンスポーツ社製のTourStage X−WEDGE 58°)をスウィングロボット(ミヤマエ社製)に装着し、ドライバーはヘッドスピード45m/s、アプローチはヘッドスピード25m/sで打撃した時の打撃直後のボールを、高速カメラを使用してスピン量(rpm)を測定した。
【0058】
表1の耐擦過傷性能の測定試験は、実際の使用条件を想定してボールを23℃、13℃、0℃に各々保温するとともに、めっきを施していないピッチングウェッジのクラブを装着したスウィングロボットを用いて、ヘッドスピード33m/sで各ボールを打撃し、打撃傷を目視にて確認し、評価者10名のうち7名以上がまだ使用できると判断したものを「S」、6〜4名がまだ使用できると判断したものを「A」とし、まだ使用できると判断した者が3名以下のものを「B」とした。
【0059】
表4のヤング率の測定方法は、先ず、各配合の材料を、スプレーにより厚さ2mmのシート状に成形し、23±1℃の環境下で2週間保存した後、JIS K6251に準拠して、ダンベル状3号形試験片に加工し、株式会社A&D社製のテンシロン万能試験機RTG−1310型を用いて、試験速度500mm/minで、10%伸び時の引張強さ(MPa)を測定した。そして、この引張強さの測定値からヤング率の値を算出した。なお、各配合について3つの試験片を作成し、測定結果はそれらの平均値とした。
【0060】
表1に示すように、塗装層を設けなかった試験例15は、ゴルフボール表面の摩擦力がほとんど無いので、ドライバーのスピン量は一定の性能を有しているものの、アプローチのスピン量が非常に少なかった。硬い樹脂材料で塗装層を形成した試験例16は、ゴルフボール表面の摩擦力が小さく、よって、試験例15よりはアプローチのスピン量が増えているものの、所望の性能まで達しなかった。
【0061】
一方、試験例1〜試験例14は、ゴム弾性を有する材料で塗装層を形成したことから、ドライバーのスピン量が大幅に増加することなく、アプローチのスピン量が大幅に増加した。なお、試験例10のように、塗装層の厚さが厚過ぎると、摩擦力が大きく、アプローチのスピン量を大幅に増加させることができるものの、塗装層の軟らかさによる影響がドライバーでの打撃時に出てしまい、ドライバーのスピン量が増加してしまうことがある。
【0062】
コアの配合によってゴルフボール製品のμ硬度を高くし、これにより製品μ硬度に対する塗装層の硬度の比Spを高くした試験例11は、適切な摩擦および接触面積を得ることができないため、打撃時のボールとクラブの間で滑ることがあり、摩擦力をアプローチのスピンに活かすことができない傾向があった。また、カバーの厚さを厚くした試験例12は、カバー層が厚くなり、カバーの変形量が不足するため、クラブとボールの接触面積が減少し、その結果、十分な摩擦力を得ることができず、アプローチのスピンを十分に得ることができない傾向があった。塗装層とカバーのtanδの差Tdを小さくした試験例13は、エネルギーロスが生じることがあり、ドライバーのスピン量が増加してしまう傾向があった。
【0063】
トップコートを設けた試験例9は、スピン性能に大きな影響を与えることがなかったが、試験例14のように、トップコートの厚さが厚過ぎると、摩擦力が小さくなり、アプローチのスピン量が大きく低下してしまった。