(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施の形態1]
本発明の実施の形態1による無停電電源装置1は、
図1に示すように、入力端子T1、バイパス端子T2、バッテリ端子T3、および出力端子T4を備える。なお、この無停電電源装置1は、三相交流電力を直流電力に変換し、その直流電力を三相交流電力に変換するものであるが、図面および説明の簡単化のため、
図1では、一相分の回路のみが代表的に示されている。
【0014】
入力端子T1およびバイパス端子T2は、ともに商用交流電源50から三相交流電力を受ける。バッテリ端子T3は、バッテリ51に接続される。バッテリ51は、直流電力を蓄える。出力端子T4は負荷52に接続される。負荷52は、無停電電源装置1からの三相交流電力によって駆動される。
【0015】
また、この無停電電源装置1は、コンタクタ(電磁接触器)2,7,13,15、ヒューズ3,6、リアクトル4、コンバータ5、コンデンサ8,12、インバータ9、変流器10、トランス11、サイリスタスイッチ14、および制御装置20を備える。
【0016】
制御装置20は、電圧検出回路21、正弦波発生回路22、減算器23,26、電圧制御回路24、電流検出回路25、電流制御回路27、インバータ制御回路28、コンバータ制御回路29、故障検出回路30、および切換制御回路31を含む。
【0017】
コンタクタ2、ヒューズ3、リアクトル4、コンバータ5、インバータ9、トランス11、およびコンタクタ13は、入力端子T1と出力端子T4との間に直列接続される。サイリスタスイッチ14およびコンタクタ15は、バイパス端子T2と出力端子T4との間に並列接続され、バイパス回路を構成する。
【0018】
コンタクタ2は、通常時はオンされ、たとえば無停電電源装置1のメンテナンス時にオフされる。ヒューズ3は、過電流が流れたときに溶断され、過電流からコンバータ5を保護する。リアクトル4は、商用交流電力を通過させ、コンバータ5で発生するスイッチング周波数の信号が商用交流電源50に伝搬するのを防止するために設けられている。
【0019】
コンバータ5は、コンバータ制御回路29によって制御され、商用交流電源50から三相交流電力が正常に供給されている通常時は、商用交流電源50からの三相交流電力を直流電力に変換する。商用交流電源50からの三相交流電力の供給が停止された停電時は、コンバータ5の運転は停止される。
【0020】
ヒューズ6およびコンタクタ7は、コンバータ5の出力端子とバッテリ端子T3との間に直列接続される。ヒューズ6は、過電流が流れた場合に溶断され、過電流からコンバータ5およびバッテリ51を保護する。コンタクタ7は、通常時はオンされ、たとえば無停電電源装置1およびバッテリ51のメンテナンス時にオフされる。コンデンサ8は、コンバータ5の出力端子に接続され、コンバータ5の出力電圧を平滑化する。コンバータ5で生成された直流電力は、バッテリ51およびインバータ9に供給される。バッテリ51は、通常時はコンバータ5で生成された直流電力を蓄え、停電時は直流電力をインバータ9に供給する。
【0021】
インバータ9は、インバータ制御回路28によってPWM制御され、通常時は、コンバータ5によって生成された直流電力を商用周波数の三相交流電力に変換し、停電時は、バッテリ51の直流電力を商用周波数の三相交流電力に変換する。変流器10は、インバータ9の出力電流Iの値に比例し、かつ出力電流の値よりも十分に小さな値の電流を電流検出回路25に与える。トランス11は、インバータ9の出力電圧を定格電圧に昇圧する。コンデンサ12は、トランス11の出力端子と基準電圧のラインとの間に接続され、インバータ9で発生したスイッチング周波数の信号を基準電圧のラインに流出させる。
【0022】
コンタクタ13は、切換制御回路31からの制御信号φAが「H」レベルにされている場合はオンし、制御信号φAが「L」レベルにされている場合はオフする。コンタクタ13は、制御信号φAに応答して、インバータ9によって生成された三相交流電力を負荷52に供給するインバータ給電時にオンし、商用交流電源50からの三相交流電力をサイリスタスイッチ14およびコンタクタ15を介して負荷52に供給するバイパス給電時にオフする。
【0023】
サイリスタスイッチ14は、切換制御回路31からの制御信号φBが「H」レベルにされている場合はオンし、制御信号φBが「L」レベルにされている場合はオフする。サイリスタスイッチ14は、制御信号φBに応答して、インバータ給電状態からバイパス給電状態に移行するときに所定時間だけオンする。コンタクタ15は、切換制御回路31からの制御信号φCが「H」レベルにされている場合はオンし、信号φCが「L」レベルにされている場合はオフする。コンタクタ15は、信号φCに応答して、インバータ給電時はオフし、バイパス給電時はオンする。
【0024】
制御装置20は、インバータ9の出力電流およびトランス11の出力電圧に基づいて無停電電源装置1を制御する。すなわち、電圧検出回路21は、トランス11の出力電圧VOの瞬時値を検出し、検出値を示す信号を減算器23および故障検出回路30に与える。
【0025】
正弦波発生回路22は、商用交流電源50からの交流電圧に同期して、商用周波数で所定振幅の正弦波信号を生成する。減算器23は、電圧検出回路21の出力信号と正弦波発生回路22で生成された正弦波信号との偏差を求める。電圧制御回路24は、減算器23からの偏差がなくなるように電流指令値を生成する。
【0026】
電流検出回路25は、変流器10の出力電流の瞬時値を検出し、検出値を示す信号を減算器26に与える。減算器26は、電流検出回路25の出力信号と電圧制御回路24からの電流指令値との偏差を求める。電流制御回路27は、減算器26からの偏差がなくなるように電圧指令値を生成する。
【0027】
インバータ制御回路28は、電流制御回路27からの電圧指令値に基づいて、インバータ9をPWM制御する。このときインバータ制御回路28は、電圧検出回路21によって検出される三相交流電圧と商用交流電源50からの三相交流電圧とが同期するようにインバータ9を制御する。また、インバータ制御回路28は、故障検出回路30からの故障検出信号φDが活性化レベルの「H」レベルにされた場合はインバータ9の運転を停止させる。
【0028】
また、インバータ制御回路28は、停電検出回路(図示せず)によって停電が検出された場合は、バッテリ51の端子間電圧が所定電圧よりも高い期間はインバータ9の運転を継続させる。コンバータ制御回路29は、コンバータ5を制御し、停電検出回路(図示せず)によって停電が検出された場合はコンバータ5の運転を停止させる。
【0029】
故障検出回路30は、電圧検出回路21の出力信号に基づいて、トランス11が故障したか否かを判別し、判別結果を示す故障検出信号φDを出力する。トランス11が故障した場合は故障検出信号φDは活性化レベルの「H」レベルにされ、それらが故障していない場合は故障検出信号φDは非活性化レベルの「L」レベルにされる。
【0030】
ここで、トランス11の故障について説明する。トランス11は、リーケージトランス(磁気漏れ変圧器)であり、2次巻線に電流が流れると2次巻線の電圧が大きく低下し、2次巻線に大きな電流が流れるのを防止するものである。リーケージトランスでは、1次巻線と2次巻線の間にリーケージパスが設けられている。リーケージパスは、漏れ磁束の通路となるギャップ付鉄心である。2次巻線に電流が流れると、リーケージパスに磁束が漏れ、2次巻線の電圧が低下する。
【0031】
リーケージパスがトランス11の経年変化などにより1次巻線と2次巻線の間から欠落すると、2次巻線に電流が流れても2次巻線の電圧が低下しなくなる。ここでは、2次巻線に電流が流れても2次巻線の電圧が低下しない場合、トランス11が故障したと称する。トランス11が故障すると、トランス11の1次側の電圧V1と2次側の電圧V2の比V1/V2である変圧比は低下する。
【0032】
電流制御回路27の制御ゲインは、トランス11が正常に動作する場合に合わせて設定されている。したがって、トランス11が故障した場合は、電流制御回路27の制御ゲインが過大になり、インバータ9の制御が不安定になり、インバータ9の出力電流が高周波数で脈動する。この結果、
図2に示すように、トランス11の出力電圧VOに高周波数の脈動電圧が発生する。故障検出回路30は、電圧検出回路21の出力信号に基づいて、トランス11の出力電圧VOに重畳される脈動電圧の電圧値を検出し、その検出値が所定の電圧値を超えた場合に、故障検出信号φDを活性化レベルの「H」レベルにする。
【0033】
図3は、故障検出回路30の構成を示す回路ブロック図である。
図3において、故障検出回路30は、高域通過フィルタ(High-pass filter:HPF)35、整流回路36、および比較器37を含む。高域通過フィルタ35は、電圧検出回路21の出力信号V21を受け、信号V21のうちの商用周波数よりも高い所定周波数よりも低い周波数成分を遮断し、所定周波数よりも高い周波数成分を通過させる。これにより、信号V21のうちの商用周波数の正弦波信号は高域通過フィルタ35で遮断され、信号V21のうちの脈動成分の信号のみが高域通過フィルタ35を通過する。
【0034】
整流回路36は、高域通過フィルタ35を通過した脈動信号を整流および平滑化して直流電圧V36に変換する。整流回路36の出力電圧V36は、信号V21の脈動成分が大きいほど高くなる。比較器37は、整流回路36の出力電圧V36としきい値電圧VT1との高低を比較し、比較結果を示す信号を故障検出信号φDとして出力する。V36<VT1の場合は故障検出信号φDは「L」レベルになり、V36>VT1の場合は故障検出信号φDは「H」レベルになる。
【0035】
図1に戻って、切換制御回路31は、インバータ給電時は、制御信号φAを「H」レベルにしてコンタクタ13をオンさせ、トランス11と負荷52を結合させる。また、切換制御回路31は、インバータ給電時において、故障検出信号φDが活性化レベルの「H」レベルにされた場合は、制御信号φBを「H」レベルにしてサイリスタスイッチ14をオンさせ、制御信号φAを「L」レベルにしてコンタクタ13をオフさせる。
【0036】
サイリスタスイッチ14の応答時間は極めて短く、制御信号φBを「H」レベルにするとサイリスタスイッチ14は瞬時にオンする。一方、コンタクタ13の応答時間はサイリスタスイッチ14の応答時間よりも長く、制御信号φAを「L」レベルにしてから所定の応答時間の経過後にコンタクタ13が実際にオフする。コンタクタ13がオフすると、トランス11と負荷52が切り離され、商用交流電源50からサイリスタスイッチ14を介して負荷52に三相交流電力が供給される。
【0037】
次に切換制御回路31は、制御信号φCを「H」レベルにしてコンタクタ15をオンさせる。制御信号φCを「H」レベルにしてから所定の応答時間の経過後にコンタクタ15が実際にオンする。次いで切換制御回路31は、制御信号φBを「L」レベルにしてサイリスタスイッチ14をオフさせる。これにより、商用交流電源50からコンタクタ15を介して負荷52に三相交流電力が供給される。
【0038】
次に、この無停電電源装置1の動作について説明する。今、商用交流電源50から三相交流電力が正常に供給されているものとする。この場合は、コンタクタ2,7,13がオンされ、サイリスタスイッチ14およびコンタクタ15がオフされている。商用交流電源50からの三相交流電力はコンバータ5で直流電力に変換される。この直流電力は、バッテリ51に蓄えられるとともに、インバータ9によって三相交流電力に変換され、トランス11およびコンタクタ13を介して負荷52に供給される。
【0039】
商用交流電源50からの三相交流電力の供給が停止した停電時は、コンバータ5の運転が停止され、バッテリ51の直流電力がインバータ9によって三相交流電力に変換され、トランス11およびコンタクタ13を介して負荷52に供給される。
【0040】
図4(a)〜(d)は、故障発生時における無停電電源装置1の動作を示すタイムチャートである。
図4(a)〜(d)において、通常時(時刻t0)は、故障検出信号φDが非活性化レベルの「L」レベルにされ、サイリスタスイッチ14およびコンタクタ15がオフされ、コンタクタ13がオンされて、インバータ9で生成された三相交流電力が負荷52に供給されている。
【0041】
ある時刻t1においてトランス11に故障が発生して故障検出信号φDが活性化レベルの「H」レベルに立ち上げられると、制御信号φBが「H」レベルに立ち上げられてサイリスタスイッチ14が瞬時にオンし、商用交流電源50からの三相交流電力がサイリスタスイッチ14を介して負荷52に供給される。また、故障検出信号φDが活性化レベルの「H」レベルに立ち上げられると、制御信号φAが「L」レベルに立ち下げられて所定の応答時間の経過後にコンタクタ13がオフする(時刻t2)。
【0042】
また、故障検出信号φDが活性化レベルの「H」レベルに立ち上げられると、制御信号φCが所定タイミングで「H」レベルに立ち上げられ、所定の応答時間の経過後にコンタクタ15がオンする(時刻t3)。コンタクタ13がオフした後にコンタクタ15がオンするように、制御信号φCが生成される。
【0043】
コンタクタ15がオンした後に制御信号φBが「L」レベルにされてサイリスタスイッチ14がオフされる。これにより、商用交流電源からの三相交流電力はコンタクタ15を介して負荷52に供給され、インバータ給電状態からバイパス給電状態にスムーズに遷移される。
【0044】
この実施の形態1では、トランス11の出力電圧VOに基づいてトランス11が故障したか否かを判別し、トランス11が故障した場合はインバータ給電状態からバイパス給電状態に切換える。したがって、トランス11が故障した場合でもトランス11の焼損を防止することができ、負荷52の運転を継続することができる。
【0045】
[実施の形態2]
図5は、この発明の実施の形態2による無停電電源装置41の構成を示す回路ブロック図であって、
図1と対比される図である。
図5を参照して、この無停電電源装置41が
図1の無停電電源装置1と異なる点は、故障検出回路30が故障検出回路42で置換されている点である。故障検出回路42は、電流検出回路25の出力信号I25に基づいて、インバータ9の出力電流Iに重畳される脈動電流の電流値を検出し、その検出値が所定の電流値を超えた場合に、故障検出信号φDを活性化レベルの「H」レベルにする。
【0046】
図6は、故障検出回路42の構成を示す回路ブロック図である。
図6において、故障検出回路42は、
図3で示した故障検出回路30の前段に抵抗器43を追加したものである。抵抗器43は、電流検出回路25からの電流信号I25を電圧信号V43に変換する。高域通過フィルタ35は、抵抗器43の出力信号V43を受け、信号V43のうちの商用周波数よりも高い所定周波数よりも低い周波数成分を遮断し、所定周波数よりも高い周波数成分を通過させる。これにより、信号V43のうちの商用周波数の正弦波信号は高域通過フィルタ35で遮断され、信号V43のうちの脈動成分の信号のみが高域通過フィルタ35を通過する。
【0047】
整流回路36は、高域通過フィルタ35を通過した脈動信号を整流および平滑化して直流電圧V36に変換する。比較器37は、整流回路36の出力電圧V36としきい値電圧VT2との高低を比較し、比較結果を示す信号を故障検出信号φDとして出力する。他の構成および動作は、実施の形態1と同じであるので、その説明は繰り返さない。
【0048】
この実施の形態2では、インバータ9の出力電流Iに基づいてトランス11が故障したか否かを判別し、トランス11が故障した場合はインバータ給電状態からバイパス給電状態に切換える。したがって、トランス11が故障した場合でもトランス11の焼損を防止することができ、負荷52の運転を継続することができる。
【0049】
[実施の形態3]
図7は、この発明の実施の形態3による無停電電源装置45の構成を示す回路ブロック図であって、
図1と対比される図である。
図7を参照して、この無停電電源装置45が
図1の無停電電源装置1と異なる点は、故障検出回路30が故障検出回路46で置換されている点である。故障検出回路46は、電圧検出回路21の出力信号V21と電流検出回路25の出力信号I25とに基づいて、トランス11が故障したか否かを検出し、トランス11が故障した場合に、故障検出信号φDを活性化レベルの「H」レベルにする。
【0050】
図8は、故障検出回路46の構成を示す回路ブロック図である。
図8において、故障検出回路46は、
図3および
図6で示した故障検出回路30,42とORゲート47とを含む。ORゲート47は、故障検出回路30,42の出力信号φD1,φD2の論理和信号を故障検出信号φDとして出力する。信号φD1,φD2のうちの少なくともいずれか一方の信号が「H」レベルにされると、故障検出信号φDは「H」レベルにされる。この実施の形態3でも、実施の形態1,2と同じ効果が得られる。
【0051】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。