(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記照度測定手段により測定された照度をI、判定基準照度をIsとしたとき、前記照度判定手段がI<Isと判定した場合に、前記補助駆動力調整手段が前記補助駆動力を制限する請求項1記載の電動アシスト自転車。
前記照度測定手段により測定された照度をI、判定基準照度をIsとしたとき、前記照度判定手段がI<Isと判定した場合に、前記補助駆動力の出力開始時を前記主駆動力の入力開始時に対して遅延させる遅延制御手段を有する請求項1または2記載の電動アシスト自転車。
【背景技術】
【0002】
一般に、電動アシスト自転車は、ペダルからの人の踏力による主駆動力をトルクセンサ等のトルク測定手段にて検出し、この主駆動力に応じた補助駆動力を電動モータ等の電動機により発生させ、主駆動力に補助駆動力を加えることで、楽に走行できるように構成されている。例えば、電動機から出力される補助駆動力は、車速が、0〜10km/hでは主駆動力1に対して補助駆動力を2以内、10km/h〜24km/h間では車速に応じて徐々に減少させ、24km/hにおいて補助駆動力が0となるよう制御されている。今日、このような電動アシスト自転車における乗り心地の改善や安全性の向上等について、さまざまな改良が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1〜3では、発進時判定手段を備えており、この発進時判定手段により自転車発進時であると判断された場合に、主駆動力に対する補助駆動力の割合(アシスト比)を大きくする、補助駆動力調整手段を備えた電動アシスト自転車が提案されている。また、特許文献4〜6では、発進時判定手段を備えており、この発進時判定手段により自転車発進時であると判断された場合に、電動機が出力する補助駆動力を主駆動力に対して遅延させる、遅延制御手段を備えた電動アシスト自転車が提案されている。このように、電動アシスト自転車発進時のアシスト比を大きくすることにより、発進時における労力を低減させたり、主駆動力に対して補助駆動力を遅延させることにより、発進時に急激にペダル反力が弱くなることを防止して、スムーズな発進を可能にしたりしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜6に記載の電動アシスト自転車によれば、発進時の乗り心地や安全性について改善することができるが、必ずしも十分なものとは言えなかった。すなわち、夜間は昼間と比べて視認性、被視認性が低下するため、夜間における電動アシスト自転車の発進は、昼間の場合と比べて、危険性が高いのである。しかしながら、従来の電動アシスト自転車においては、このような課題については検討がなされていなかった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、従来よりも夜間および暗所における走行時の安全性に優れた電動アシスト自転車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解消するために鋭意検討した結果、周囲の明るさに応じてアシスト比を変更することで、夜間における電動アシスト自転車の走行の安全性を向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の電動アシスト自転車は、人力による主駆動力と、電動機による補助駆動力と、によって駆動するように構成された電動アシスト自転車において、
前記主駆動力を検出する入力トルク測定手段と、前記入力トルク測定手段により検出された主駆動力に応じた補助駆動力を決定する補助駆動力決定手段と、周囲の明るさを測定する照度測定手段と、該照度測定手段により測定された照度を判定基準照度と比較して大小関係を判定する照度判定手段と、該照度判定手段により判定された結果に応じて前記補助駆動力を調整する補助駆動力調整手段と、該補助駆動力調整手段により調整された前記補助駆動力に応じて、バッテリから前記電動機へ供給される電流を制御する電流供給量制御手段と、を備えてなり、
前記補助駆動力調整手段により調整された前記補助駆動力が、前記補助駆動力決定手段により決定された前記補助駆動力の1/2よりも大きいことを特徴とするものである。
【0009】
本発明の電動アシスト自転車においては、前記照度測定手段により測定された照度をI、判定基準照度をIsとしたとき、前記照度判定手段がI<Isと判定した場合に、前記補助駆動力調整手段が前記補助駆動力を制限することが好ましい。また、本発明の電動アシスト自転車においては、前記照度測定手段により測定された照度をI、判定基準照度をIsとしたとき、前記照度判定手段がI<Isと判定した場合に、前記補助駆動力の出力開始時を前記主駆動力の入力開始時に対して遅延させる遅延制御手段を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来よりも夜間および暗所における走行時の安全性に優れた電動アシスト自転車を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の一好適な実施形態に係る電動アシスト自転車1の側面図である。車体フレーム2は、ヘッドチューブ3と、ヘッドチューブ3から後方斜め下向きに延びるダウンチューブ4と、ダウンチューブ4の後端から後方斜め上向きに延びるシートチューブ5と、シートチューブ5の下端付近から後方に延びる左右一対のチェーンステイ6と、両チェーンステイ6の後端部とシートチューブ5の上部とを結合する左右一対のシートステイ7と、を備えている。ヘッドチューブ3の下端には、前方斜め下向きに延びるフロントフォーク8を有し、このフロントフォーク8の下端部には、前輪9が回転自在に装着されている。また、ヘッドパイプ3の上端にはハンドル10が取り付けられており、シートチューブ5の上端にはサドル11が取り付けられている。さらに、チェーンステイ6の後端部には、後輪12が回転自在に装着されている。
【0013】
本発明の電動アシスト自転車1は、従来の電動アシスト自転車と同様、ペダル13を有し、運転者がペダル13を足で踏んで回転させることによってチェーン14に主駆動力(踏力によるトルク)が伝達され、その駆動力が後輪12に伝達されて、後輪12が駆動するように構成されている。図示する電動アシスト自転車1においては、電動機15はクランクシャフト16の近傍に装着されており、この電動機15に電力を供給するバッテリ17はシートチューブ5の後方に、取り外し自在に取り付けられている。なお、電動機15の内部には、後輪12に補助駆動力を供給する電動モータが備えられている。
【0014】
図2に、本発明の電動アシスト自転車1の電動機制御のフローチャートを示す。本発明の電動アシスト自転車1は、主駆動力を測定するトルクセンサのような入力トルク測定手段18が、例えば、クランクシャフト16に装着されており、この入力トルク測定手段18によって、クランクシャフト16に発生する主駆動力であるトルクを測定している。さらに、本発明の電動アシスト自転車1においては、入力トルク測定手段18によって測定されたトルクに応じた補助駆動力を決定する補助駆動力決定手段19を備えている。本発明の電動アシスト自転車1においては、入力トルク測定手段18によるトルクの測定、補助駆動力決定手段19による補助駆動力の決定については、従来の電動アシスト自転車にて採用されている手法を採用することができる。
【0015】
本発明の電動アシスト自転車1は、入力トルク測定手段18および補助駆動力決定手段19以外にも、周囲の明るさを測定する照度センサのような照度測定手段20、照度測定手段20により測定された照度を判定基準照度と比較して大小関係を判定する照度判定手段21、この照度判定手段21により判定された結果に応じて、補助駆動力決定手段19により決定された補助駆動力を調整する補助駆動力調整手段22、および補助駆動力調整手段22により調整された補助駆動力に応じて、バッテリから電動機15へ供給される電流量を制御する電流供給量制御手段23を備えている。
【0016】
まず、本発明の電動アシスト自転車の走行時に、運転者がペダルを踏んで主駆動力が発生すると、入力トルク測定手段18がこの主駆動力(トルク)を測定する。この時のトルクに応じた補助駆動力を補助駆動力決定手段19が決定し、次に、照度測定手段20によって、周囲の明るさ(照度I)が測定される。その結果を照度判定手段21が判定基準照度Isと比較して、照度Iが判定基準照度Isよりも暗いか否かが判定される。例えば、周囲の明るさ(照度I)が、所定の明るさ(判定基準照度Is)以上の場合(I≧Is)は、
図2中のNoと判定され、補助駆動力決定手段19が決定した補助駆動力に応じた電流が、電流供給量制御手段23によりバッテリから電動機15に供給され、これに応じた補助駆動力が電動機15から出力される。一方、周囲の明るさ(照度I)が、所定の明るさ(判定基準照度Is)より暗い場合(I<Is)は、
図2中のYesと判定され、補助駆動力調整手段22により補助駆動力が制限される。その後、補助駆動力調整手段22により調整された補助駆動力に応じた電流が、電流供給量制御手段23によりバッテリから電動機15に供給され、これにより電動機15から補助駆動力が出力される。
【0017】
従来の電動アシスト自転車は、運転者がペダルを踏み込んで主駆動力を生じると、入力トルク測定手段が作動して主駆動力のトルクを測定し、このトルクに応じて、電動機から補助駆動力が出力されて、電動アシスト自転車を駆動させていた。しかしながら、従来の電動アシスト自転車においては、昼間であっても夜間であっても主駆動力に応じて出力される補助駆動力は同じであった。したがって、周囲が明るい昼間であれば問題のない程度の補助駆動力であっても、視認性、被視認性の悪い夜間や暗所等の走行においては過剰となり、運転手の他、周囲の歩行者や自転車等に対して危険が及ぶおそれがある。
【0018】
そこで、本発明の電動アシスト自転車1においては、夜間におけるアシスト比を、昼間と比較して小さくなるように、補助駆動力を調整する。アシスト比を小さくすることで車両の総駆動力が小さくなり、夜間における電動アシスト自転車の発進時の動き出しが緩やかになったり、走行スピードが低下したりし、周囲から見て電動アシスト自転車の動きを把握しやすくなる。また、電動アシスト自転車の動きが緩やかになることで、電動アシスト自転車の運転者が周囲に注意を払いやすくなり、走行中の安全性が向上する。さらに、走行速度が抑えられるので、運転者が危険回避動作を取りやすくなり、緊急停止が必要な場合にも速やかに対応することが可能となる。このような効果を得ることができるため、本発明の電動アシスト自転車1は、従来の電動アシスト自転車と比較して、夜間および暗所における走行時の安全性に優れている。
【0019】
図3は、本発明に係る昼間および夜間における駆動力を示したグラフの一例であり、(a)は発進時の場合、(b)は定速走行時の場合をそれぞれ示す。
図3(a)に示すように、電動アシスト自転車の発進時は、その加速に応じて徐々に補助駆動力が小さくなり、定速走行時には
図3(b)に示すように、主駆動力に対して一定の割合で補助駆動力が出力される。本発明の電動アシスト自転車においては、発進時と定速走行時においては、それぞれ個別にアシスト比を設定してもよい。なお、電動アシスト自転車の発進時とは、その使用目的に応じて適宜設定できるものであり、例えば、時速5km/h以下の場合を発進時としたり、動き出し開始時から5秒間を発進時としたり、走行中においてアシスト停止状態からアシストを再開した場合も発進時とみなしてもよい。また、
図3に示すような補助駆動力のピークの数や、補助駆動力の積分値を基準として発進時を定義してもよい。
【0020】
本発明の電動アシスト自転車1においては、補助駆動力調整手段22により調整された補助駆動力は、補助駆動力決定手段19により決定された補助駆動力の1/2よりも大きいことが好ましい。補助駆動力調整手段22により調整された補助駆動力の大きさが補助駆動力決定手段19により決定された補助駆動力の1/2以下であると、運転者が十分なアシスト力を得られていないと感じる場合があるからである。一方、補助駆動力調整手段22により調整された補助駆動力の上限は、補助駆動力決定手段19により決定された補助駆動力未満とすればよい。
【0021】
また、本発明の電動アシスト自転車1においては、照度測定手段20により測定された照度に応じて、補助駆動力の出力開始時を主駆動力の入力開始時に対して遅延させる遅延制御手段24が、補助駆動力調整手段22と併せて備えられていることも好ましい(
図2参照)。すなわち、周囲の明るさ(照度I)が、所定の明るさ(判定基準照度Is)より暗い(I<Is)と照度判定手段21が判定した場合に、補助駆動力の出力開始時を主駆動力の入力開始時に対して遅延させる遅延制御手段24を設けるのである。
図4は、本発明に係る遅延制御手段を設けた場合の昼間および夜間における駆動力を示したグラフの一例であり、(a)は発進時の場合、(b)は定速走行時の場合をそれぞれ示す。図示するように、遅延制御手段24を用いて夜間における補助駆動力の出力開始時を主駆動力の入力開始時に対して遅延させることで、車両の総駆動力が小さくなり、夜間の電動アシスト自転車発進時における動き出しをさらに緩やかにすることができる。その結果、夜間走行時における安全性をさらに向上させることができる。
【0022】
本発明の電動アシスト自転車においては、遅延制御手段24により補助駆動力の出力を遅延させる場合は、
図4に示すように、補助駆動力の出力開始時のみを遅らせ、主駆動力が0となった場合に補助駆動力の出力を0となるように設定してもよい。この場合、主駆動力がかからないとき(ペダリングの力を入れていないとき)に補助駆動力が発生しないので、補助駆動力の出力が普通の自転車に近く自然に感じられ、また、意図しない補助駆動力による走行上の危険を防止することができる。
【0023】
また、本発明の電動アシスト自転車においては、主駆動力が0となるタイミングと補助駆動力の出力が0となるタイミングをずらしてもよい。
図5は、本発明に係る遅延制御手段を設けた場合の昼間および夜間における発進時の駆動力を示したグラフの他の例であり、(a)は夜間における補助駆動力の出力開始時と終了時を、主駆動力の入力開始時と終了時よりも遅延させた場合、(b)は夜間における、補助駆動力の出力開始時を主駆動力の入力開始時よりも遅らせ、補助駆動力の出力終了時を主駆動力の入力終了時よりも早めた場合を示す。
【0024】
図5(a)に示すように、補助駆動力の出力終了時を、主駆動力の入力終了時よりも遅延させた場合は、主駆動力の入力終了時と一致させた場合と比較して、乗り心地がよくなる。一方、
図5(b)のように、補助駆動力の出力の開始時を主駆動力の入力開始時よりも遅らせ、補助駆動力の出力終了時を主駆動力の入力終了時よりも早めた場合は、1踏み当たりの総駆動力(図中の主駆動力と補助駆動力の山の和)を小さくすることができるため、全体としての駆動力を下げることができるので、夜間走行時における安全性が向上する。また、主駆動力の入力終了時における補助駆動力を確実に0にできるため、意図しない自転車の走行を防止し、夜間走行時における安全性を向上させることができる。
【0025】
なお、本発明の電動アシスト自転車においては、遅延制御手段22によって補助駆動力の出力開始時を遅らせる時間については、昼間における補助駆動力の出力開始時から主駆動力の最大値の出力時の範囲で設定すればよく、例えば、主駆動力に対して数ミリ秒〜数百ミリ秒遅らせればよい。
【0026】
さらに、本発明の電動アシスト自転車においては、補助駆動力調整手段22により補助駆動力を変更する基準となる明るさを複数の段階に分けて設定し(判定基準照度Isn:n=1、2、3・・・)、周囲が暗くなるにつれて段階的に補助駆動力の出力を低下させることが好ましい。例えば、夕方のように、徐々に周囲が暗くなっていくような場合、補助駆動力を変更する基準となる明るさが1点しかない場合、補助駆動力が小さくなるとペダル13が突然重くなるといった状況が生じ、乗り心地が悪いものとなる。これに対して、補助駆動力を変更する基準となる明るさを複数設定しておけば、周囲が暗くなるにつれ、段階的に補助駆動力が小さくなるため、急激な補助駆動力の変化を避けることができ、乗り心地を損なうような事態を回避することができる。
【0027】
さらにまた、本発明の電動アシスト自転車においては、補助駆動力調整手段22と同様に、遅延制御手段24により補助駆動力の出力開始時を主駆動力の入力開始時に対して遅延させる基準となる明るさを複数の段階に分けて設定して(判定基準照度Isn:n=1、2、3・・・)、周囲が暗くなるにつれて段階的に補助駆動力の出力開始時を遅らせることも好ましい。補助駆動力調整手段22と同様の理由により、補助駆動力の出力開始時を主駆動力の入力開始時に対して遅延させる基準となる明るさを複数設定しておけば、周囲が暗くなるにつれ、段階的に補助駆動力の出力開始時を遅延させることができるため、急激にペダルが重くなることを避けることができ、乗り心地を損なうような事態を回避することができる。
【0028】
本発明の電動アシスト自転車1においては、照度測定手段の取り付け位置については特に制限はない。例えば、従来の電動アシスト自転車では、ハンドル10に操作パネルが設けられているタイプのものがあるが、この操作パネルに照度測定手段20を取り付けてもよい。この場合、照度測定手段20が、対向車等の前照灯の光を直接検知しないように、路面に向けておくことが望ましい。
【0029】
本発明の電動アシスト自転車1においては、主駆動力を検出する入力トルク測定手段18と、入力トルク測定手段18により検出された主駆動力に応じた補助駆動力を決定する補助駆動力決定手段19と、周囲の明るさを測定する照度測定手段20と、照度測定手段20により測定された照度を判定基準照度と比較して大小関係を判定する照度判定手段21と、照度判定手段21により判定された結果に応じて補助駆動力を調整する補助駆動力調整手段22と、補助駆動力調整手段22により調整された補助駆動力に応じて、バッテリから電動機15へ供給する電流量を制御する電流供給量制御手段23と、を備えてなることのみが重要で、これら以外の構成については特に制限はない。
【0030】
本発明の電動アシスト自転車においては、入力トルク測定手段、補助駆動力決定手段および電流供給量制御手段については、特に制限はなく、従来の電動アシスト自転車に用いられているトルクセンサを用いることができ、例えば、特開平11−11375号公報、特開2001−88770号公報、特開平7−309283号公報等で用いられている装置を採用すればよい。また、照度測定手段についても公知の照度センサを用いることができ、補助駆動力調整手段についても、補助駆動力決定手段と同様のものを用いることができる。さらに、遅延制御手段についても特に制限はなく、従来の電動アシスト自転車に用いられているものを用いることができ、例えば、特開2002−264882号公報、特開平8−244672号公報、特開平8−295285号公報で用いられている装置を採用することができる。