特許第5873436号(P5873436)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873436
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】回転ドラム式ワーク洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/06 20060101AFI20160216BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20160216BHJP
   B08B 3/04 20060101ALI20160216BHJP
   B08B 3/10 20060101ALI20160216BHJP
   C23G 3/00 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   B08B3/06
   B08B3/02 B
   B08B3/04 A
   B08B3/10 Z
   B08B3/04 B
   C23G3/00 Z
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-541717(P2012-541717)
(86)(22)【出願日】2011年9月14日
(86)【国際出願番号】JP2011005187
(87)【国際公開番号】WO2012060047
(87)【国際公開日】20120510
【審査請求日】2014年7月31日
(31)【優先権主張番号】特願2010-248365(P2010-248365)
(32)【優先日】2010年11月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】392015365
【氏名又は名称】株式会社平出精密
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】武井 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】藤森 和孝
(72)【発明者】
【氏名】平出 正彦
【審査官】 栗山 卓也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−138285(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/032737(WO,A1)
【文献】 特開平11−290802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/06
B08B 3/02
B08B 3/04
B08B 3/10
C23G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横置き式の回転ドラムをその中心軸線回りに回転させ、前記回転ドラムの内周面に沿って螺旋状に形成されているワーク送りフィンによって前記回転ドラムに投入されたワークを、当該回転ドラムにおける下側に位置する内周面部分に沿って前記中心軸線の方向に送り出し、前記ワーク送りフィンによって送り出される前記ワークに向けて洗浄液を吹き付けて当該ワークを洗浄する回転ドラム式ワーク洗浄装置において、
前記回転ドラムの筒状胴部のうちの少なくとも一部は、前記回転ドラムが1回転する間に、前記ワークに対して浸漬洗浄、流水洗浄およびシャワー洗浄を行う第1筒状胴部であり、
当該第1筒状胴部は、その周方向における所定範囲の周面部分が前記洗浄液を通さない板材から形成された液不通過部分であり、その周方向における残りの周面部分が前記洗浄液を通過させる多孔質板材から形成された液通過部分であることを特徴とする回転ドラム式ワーク洗浄装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記回転ドラムを第1方向に繰り返し回転させると共に、各1回転の間に、1回転以内の所定の角度範囲で前記回転ドラムを前記第1方向および逆の第2方向に繰り返し回動させる揺動回転モードにより前記回転ドラムが回転駆動されることを特徴とする回転ドラム式ワーク洗浄装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記揺動回転モードでは、前記回転ドラムにおける前記浸漬洗浄が行われる回転角度範囲の状態において、前記回転ドラムを前記第1方向および前記第2方向に繰り返し回動させることを特徴とする回転ドラム式ワーク洗浄装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記ワーク送りフィンによって送られるワークを前記回転ドラムの内周面から一時的に跳ね上げるためのワーク跳ね上げ部材を有しており、
当該ワーク跳ね上げ部材は、前記ワーク送りフィンにおける前記中心軸線の方向に隣接している隣接送りフィン部分の間に架け渡されていることを特徴とする回転ドラム式ワーク洗浄装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記ワーク送りフィンにおける第1筒状胴部の内周面に沿って配置されている一巻き以上に亘る送りフィン部分は、他の送りフィン部分に比べて丈の高い仕切り用送りフィン部分であることを特徴とする回転ドラム式ワーク洗浄装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記回転ドラムの前記筒状胴部は、第2筒状胴部および第3筒状胴部のうちの少なくとも一方を備えており、
前記第2筒状胴部は液体を通さない板材から形成され、前記浸漬洗浄を行う部分であり、
前記第3筒状胴部は液体が通過する多孔質板材から形成され、前記シャワー洗浄を行う部分であることを特徴とする回転ドラム式ワーク洗浄装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記回転ドラムの前記筒状胴部は、前記第2筒状胴部および前記第3筒状胴部の双方を備えており、
前記回転ドラムの回転に伴う前記ワーク送りフィンによるワーク送り方向に沿って見た場合に、前記第3筒状胴部はその上流側に位置し、前記第1筒状胴部はその下流側に位置し、前記第2筒状胴部は前記第1、第3筒状胴部の間に位置することを特徴とする回転ドラム式ワーク洗浄装置。
【請求項8】
請求項1において、
前記回転ドラムの傾斜角度を変更可能なドラム傾斜機構と、
前記回転ドラムの回転、前記ドラム傾斜機構による前記回転ドラムの傾斜角度、および前記洗浄液の吹き付け動作を制御する制御部とを有し、
前記回転ドラムの一方の端はワークの投入および排出を行う投入排出口として開口しており、他方の端は封鎖端となっており、
前記制御部の制御の下に、前記回転ドラムを前記投入排出口の側が前記封鎖端の側よりも高い傾斜姿勢で第1方向に回転させて、ワークを前記封鎖端に向けて送り込みながらワークに洗浄液を吹き付けるワーク送り込み洗浄動作と、前記回転ドラムを前記投入排出口の側が前記封鎖端の側よりも低い傾斜姿勢で前記第1方向とは逆の第2方向に回転させてワークを前記封鎖端から前記投入排出口に向けて送り出すワーク送り出し動作とが行われることを特徴とする回転ドラム式ワーク洗浄装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記回転ドラムの前記筒状胴部は、第2筒状胴部および第3筒状胴部を備えており、
前記第2筒状胴部は液体を通さない板材から形成され、前記浸漬洗浄を行う部分であり、
前記第3筒状胴部は液体が通過する多孔質板材から形成され、前記シャワー洗浄を行う部分であり、
前記第3筒状胴部は前記投入排出口の側に位置し、前記第2筒状胴部は前記封鎖端の側に位置し、前記第1筒状胴部は前記第3、第2筒状胴部の間に位置し、
前記第3筒状胴部の前端が前記投入排出口であり、
前記第2筒状胴部の後端が前記封鎖端であることを特徴とする回転ドラム式ワーク洗浄装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記回転ドラムの筒状胴部は、金網製円筒と、この金網製円筒の外周面を覆う状態に取り付けた金属板とを備え、
前記第1筒状胴部は、金網製円筒における周方向の一部分が円弧状の金属板で覆われており、
前記第2筒状胴部は、金網製円筒の外周面の全体が円筒状の金属板で覆われており、
前記第3筒状胴部は金網製円筒によって規定されていることを特徴とする回転ドラム式ワーク洗浄装置。
【請求項11】
請求項8ないし10のうちのいずれかの項において、
前記ワーク送りフィンにおける前記投入排出口の開口縁から少なくとも一巻分の送りフィン部分は、他の部分よりも丈の高いパンチングメタル製ワーク送りフィンであり、
当該パンチングメタル製ワーク送りフィンにおける前記投入排出口の側の表面、および、前記筒状胴部の内周面における前記投入排出口の側の部分には、パンチングメタル製ワーク送りフィンに沿って所定の間隔で突起片あるいは突起部が配置されていることを特徴とする回転ドラム式ワーク洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内周面に沿って螺旋状のワーク送りフィンが形成されている回転ドラムに、金属加工品、プラスチック成形品、セラミック等の無機質加工品、ゴム製品等のワークを投入し、回転している回転ドラム内においてワーク送りフィンによってワークを搬送しながら洗浄液を吹き付けて洗浄を行う回転ドラム式ワーク洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転ドラムを用いてワークを洗浄する洗浄装置は特許文献1〜4に開示されている。特許文献3にはワークを傷つけることなく確実に洗浄可能な洗浄装置が提案されている。特許文献4にはワーク送りフィンの高さを変えることによりワーク送り方向とは逆方向に洗浄液をオーバーフローさせて効率良くワークの洗浄を行う洗浄装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−275819号公報
【特許文献2】特開2001−129499号公報
【特許文献3】特開2008−6364号公報
【特許文献4】特許第4557888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転ドラム式ワーク洗浄装置では、横置き状態の回転ドラムの内周面下側部分において、隣接するワーク送りフィンの間に位置するワークが、回転ドラムの回転に伴ってワーク送りフィンによって回転ドラムの軸線方向に送り出される。回転ドラムが金属円筒の場合には、隣接するワーク送りフィンの間に洗浄液が溜まり、ワークが洗浄液に浸漬された状態で送られる。したがって、ワークは搬送されながら浸漬洗浄される。
【0005】
回転ドラムがパンチングメタルなどの多孔質板からなる円筒の場合には、ワーク送りフィンの間に洗浄液が溜まることが無いので、ワークは洗浄液を吹き付けられながらワーク送りフィンによって送られる。したがって、ワークは搬送されながらシャワー洗浄される。
【0006】
特許文献4に開示の洗浄装置では、ワーク送りフィンの間に溜まった洗浄液がワーク送り込み側にオーバーフローする。したがって、ワークは搬送されながら浸漬洗浄および流水洗浄されるので、洗浄効果が高い。
【0007】
ここで、回転ドラム式洗浄装置において、回転ドラムの回転に伴って螺旋状のワーク送りフィンによって搬送されるワークに対して、浸漬洗浄、シャワー洗浄および流水洗浄を、同時に、あるいは連続して行うことができれば、ワークの洗浄効率を高めることができるので望ましい。
【0008】
本発明の課題は、この点に鑑みて、浸漬洗浄、シャワー洗浄および流水洗浄を、回転ドラムの構造を大幅に変更することなく、回転ドラムの回転に伴って繰り返し行うことのできる洗浄効果の高い回転ドラム式ワーク洗浄装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明による回転ドラム式ワーク洗浄装置は、
横置き式の回転ドラムをその中心軸線回りに回転させ、回転ドラムの内周面に沿って螺旋状に形成されているワーク送りフィンによって回転ドラムに投入されたワークを、当該回転ドラムにおける下側に位置する内周面部分に沿って前記中心軸線の方向に送り出し、ワーク送りフィンによって送り出されるワークに向けて洗浄液を吹き付けてワークを洗浄するものであり、
回転ドラムの筒状胴部のうちの少なくとも一部は、回転ドラムが1回転する間に、ワークに対して浸漬洗浄、流水洗浄およびシャワー洗浄を行う第1筒状胴部であり、
当該第1筒状胴部は、その周方向における所定範囲の周面部分が前記洗浄液を通さない板材から形成された液不通過部分であり、その周方向における残りの周面部分が洗浄液を通過させる多孔質板材から形成された液通過部分であることを特徴としている。
【0010】
本発明の回転ドラム式ワーク洗浄装置において、回転ドラムにワークを投入して回転ドラムを回転すると、ワークが回転ドラムの筒状胴部における下側に位置する下側内周面部分を、螺旋状のワーク送りフィンによって、回転ドラムの中心軸線に沿った方向に搬送される。回転ドラム内では洗浄液がワークに向けて吹き付けられる。すなわち、回転ドラムの内周面におけるワークが位置している下側内周面部分に向けて吹き付けられる。
【0011】
回転ドラムの第1筒状胴部においては、その下側内周面部分が、回転ドラムの回転に伴って、液不通過部分および液通過部分に交互に切り替わる。液不通過部分が下側に位置する状態では、ワーク送りフィンにおける隣接する送りフィン部分の間に洗浄液が溜まる。したがって、ワークは洗浄液に浸漬された状態で搬送されるので、ワークの洗浄形態は主として浸漬洗浄になる。
【0012】
これに対して、液通過部分が下側に位置する状態では、この液通過部分を通って洗浄液が回転ドラムから下方に流れ落ちるので、回転ドラムの下側内周面部分におけるワーク送りフィンの隣接する送りフィン部分の間には洗浄液が溜まらない。この結果、ワーク送りフィンによって搬送されるワークには洗浄液が直接に吹き付けられ、ワークの洗浄形態は主としてシャワー洗浄になる。
【0013】
第1筒状胴部の下側内周面部分が、液不通過部分から液通過部分に徐々に切り替わる場合には、ワーク送りフィンの隣接送りフィン部分の間に溜まっていた洗浄液が液通過部分から徐々に流れ落ちる。したがって、回転ドラムの回転に伴って、ワークの洗浄形態は、浸漬洗浄から、流水洗浄の状態を経て、シャワー洗浄の状態に移行する。
【0014】
逆に、第1筒状胴部の下側内周面部分が、液通過部分から液不通過部分に徐々に切り替わる場合には、ワーク送りフィンの隣接送りフィン部分の間に徐々に洗浄液が溜まり始める。したがって、回転ドラムの回転に伴って、ワークの洗浄形態は、シャワー洗浄状態から、流水洗浄の状態を経て浸漬洗浄の状態に移行する。
【0015】
このように、本発明の回転ドラム式ワーク洗浄装置では、回転ドラムの第1筒状胴部が1回転する間に、搬送されるワークの洗浄形態が、浸漬洗浄、流水洗浄、シャワー洗浄に順次に切り替わる。すなわち、液不通過部分が回転ドラムの中心軸線の真下に位置する回転角度位置を含む第1回転角度範囲では、ワーク送りフィンにおける隣接送りフィン部分の間に溜まる洗浄液にワークが浸漬されて浸漬洗浄が行われる。液通過部分が回転ドラムの中心軸線の真下に位置する回転角度位置を含む第2回転角度範囲では、ワークに直接洗浄液が吹き付けられるシャワー洗浄が行われる。第1回転角度範囲および第2回転角度範囲以外の回転角度範囲では、液不通過部分から液通過部分に向けて流れる洗浄液によってワークの流水洗浄が行われる。よって、回転ドラムの1回転毎に、異なる洗浄形態でワークを洗浄することができるので、ワークの洗浄効果を高めることができる。また、回転ドラムは、液通過部分と液不通過部分を周方向に沿って形成しておくだけでよいので、回転ドラムに大幅な変更を加えることなく3つの異なる洗浄形態によるワーク洗浄を実現できる。
【0016】
ここで、回転ドラムを揺動回転モードで回転駆動することが望ましい。揺動回転モードでは、回転ドラムを第1方向に繰り返し回転させると共に、各1回転の間に、1回転以内の所定の角度範囲で回転ドラムを第1方向および逆の第2方向に繰り返し回動させる。例えば、回転ドラムにおける浸漬洗浄が行われる回転角度範囲の状態において、回転ドラムを前記第1方向および前記第2方向に繰り返し回動させる。
【0017】
このようにすると、回転ドラムの下側内周面部分に載っているワークが当該下側内周面部分に沿って第1方向および第2方向に繰り返し揺動する。揺動によってワークの姿勢が変化し、ワークの各部分に洗浄液が行き渡るので、ワークの洗浄を効率良く行うことができる。例えば、カップ状のワークの場合、その開口が回転ドラムの内周面に面した状態のままでは、ワークの凹部内に洗浄液を吹き付けることができないが、揺動させてワークを反転させることにより、ワークの凹部内に洗浄液を直接吹き付けて洗浄することができる。
【0018】
ワークの姿勢を変えるためには、前記ワーク送りフィンによって送られるワークを前記回転ドラムの内周面から一時的に跳ね上げるためのワーク跳ね上げ部材を用いることができる。すなわち、ワーク跳ね上げ部材を、前記ワーク送りフィンにおける前記中心軸線の方向に隣接している隣接送りフィン部分の間に架け渡たした状態に配置しておけばよい。回転ドラムの下側内周面部分をワーク送りフィンによって送られるワークは、途中に配置されているワーク跳ね上げ部材に当って跳ね上がり、その姿勢が変化する。したがって、ワークの各部分に洗浄液を行き渡らせることができ、洗浄効果を高めることができる。
【0019】
次に、回転ドラム式の洗浄装置においては、複数の回転ドラムをタンデムに接続して、洗浄、リンスなどの各処理をワークに施すようになっている。単一の回転ドラムを、その中心軸線の方向において前後に二分して、異なる液体(例えば、洗浄液とリンス液)を用いてワークを処理することができれば便利である。
【0020】
このようにするためには、ワーク送りフィンにおける第1筒状胴部の内周面に沿って配置されている一巻き以上に亘る送りフィン部分を、他の送りフィン部分に比べて丈の高い仕切り用送りフィン部分にしておけばよい。丈の高い仕切り用送りフィン部分によって、回転ドラム内が中心軸線方向の前後に仕切られる。回転ドラムの前側の部分において洗浄液を用いてワークを洗浄し、その後側の部分においてリンス液を用いてワークの濯ぎを行うことができる。丈の高い仕切り用送りフィンによって洗浄液が後側のワークリンス部分に流れ込むことを防止できる。また、第1筒状胴部には液通過部分が形成されているので、液通過部分を通って洗浄液が回転ドラム外に流れ落ちる。よって、洗浄液が後側のワークリンス部分に流れ込むことを確実に防止できる。
【0021】
ここで、回転ドラムの筒状胴部は、その全体を第1筒状胴部から形成することができるが、当該第1筒状胴部と、洗浄液を通す多孔質板材からなる第2筒状胴部および洗浄液を通さない板材からなる第3筒状胴部のうちの少なくとも一方とを備えた構成とすることもできる。第2筒状胴部を搬送されるワークの洗浄形態はシャワー洗浄となり、第3筒状胴部を搬送されるワークの洗浄形態は浸漬洗浄となる。
【0022】
この場合、回転ドラムの回転に伴う前記ワーク送りフィンによるワーク送り方向に沿って、第3筒状胴部、第2筒状胴部および第1筒状胴部が、この順序で形成された構成とすることができる。回転ドラムに投入された洗浄対象のワークは、最初に、第3筒状胴部を通過する間にシャワー洗浄され、付着している比較的大きめの異物が洗浄水によって洗い流される。洗い流された異物は洗浄液と共に回転ドラムから外部に流れ落ちる。次に、ワークは第2筒状胴部を通過する間に浸漬洗浄され、ワーク表面全体に洗浄液が接触して異物が洗い流される。この後、ワークは第1筒状胴部を通過する間に、回転ドラムの回転毎に浸漬洗浄、流水洗浄およびシャワー洗浄される。ワークは回転毎に新たな洗浄液に晒され、異なる洗浄形態で洗浄されるので、微細な異物などを確実に洗い流す仕上げ洗浄を行うことができる。
【0023】
一方、本発明による回転ドラム式ワーク洗浄装置は、
横置き式の回転ドラムをその中心軸線回りに回転させ、回転ドラムの内周面に沿って螺旋状に形成されているワーク送りフィンによって回転ドラムに投入されたワークを、当該回転ドラムにおける下側に位置する内周面部分に沿って前記中心軸線の方向に送り出し、ワーク送りフィンによって送り出されるワークに向けて洗浄液を吹き付けて当該ワークを洗浄するものであり、
回転ドラムの筒状胴部のうちの少なくとも一部は、回転ドラムが1回転する間に、ワークに対して浸漬洗浄、流水洗浄およびシャワー洗浄を行う第1筒状胴部であり、
当該第1筒状胴部は、その周方向における所定範囲の周面部分が洗浄液を通さない板材から形成された液不通過部分であり、その周方向における残りの周面部分が洗浄液を通過させる多孔質板材から形成された液通過部分であり、
回転ドラムの傾斜角度を変更可能なドラム傾斜機構と、
回転ドラムの回転、ドラム傾斜機構による回転ドラムの傾斜角度、および洗浄液の吹き付け動作を制御する制御部とを有しており、
回転ドラムの一方の端はワークの投入および排出を行う投入排出口として開口しており、他方の端は封鎖端となっており、
制御部の制御の下に、回転ドラムの投入排出口が封鎖端よりも高い位置となる傾斜姿勢で回転ドラムを第1方向に回転させてワークを封鎖端に向けて送り込みながらワークに洗浄液を吹き付けるワーク送り込み洗浄動作と、回転ドラムの投入排出口が封鎖端よりも低い位置となる傾斜姿勢で回転ドラムを第1方向とは逆の第2方向に回転させてワークを封鎖端から投入排出口に向けて送り出しながらワークに洗浄液を吹き付けるワーク送り出し洗浄動作とが交互に行われることを特徴としている。
【0024】
本発明の回転ドラム式ワーク洗浄装置では、ドラム傾斜機構によって投入排出口を反対側の封鎖端よりも高い位置および低い位置となるように回転ドラムの傾斜角度を切り替えることができる。軽量なゴム製、プラスチック製の輪状ワーク、例えば、Oリング、シールリングなどは、回転ドラムの内周面に貼り付き易く、内周面に沿って転動し易いので、ワーク送りフィンによるワーク搬送を効率良く行うことができない場合がある。本発明では、回転ドラムの傾斜角度を切り替えて搬送方向が低くなるようにしてあるのでワーク搬送を効率良く行うことができる。
【0025】
ここで、回転ドラムの筒状胴部は、第2筒状胴部および第3筒状胴部を備えており、
第2筒状胴部は液体を通さない板材から形成された浸漬洗浄を行う部分であり、
第3筒状胴部は液体が通過する多孔質板材から形成されたシャワー洗浄を行う部分であり、
投入排出口の側から、第3筒状胴部、第1筒状胴部および第2筒状胴部が、この順序に形成されており、
第3筒状胴部の前端が投入排出口であり、
第2筒状胴部の後端が封鎖端であることを特徴としている。
【0026】
この構成の回転ドラムの投入排出口に投入されたワークは、回転ドラムの封鎖端に向かって送り込まれる送り込み工程では、第3筒状胴部を通過する間においてシャワー洗浄され、第1筒状胴部を通過する間において、1回転毎に浸漬洗浄、流水洗浄およびシャワー洗浄され、第2筒状胴部を通過する間において浸漬洗浄される。ワークが回転ドラムの封鎖端から投入排出口に戻る送り出し工程においてワーク洗浄が行われる場合には、浸漬洗浄された後に、回転毎に浸漬洗浄、流水洗浄およびシャワー洗浄され、最後にシャワー洗浄される。このように、ワークの送り方向においても異なる洗浄形態で洗浄を行うことにより、効率良くワークを洗浄することができる。
【0027】
ここで、回転ドラムの筒状胴部は、金網製円筒と、この金網製円筒の外周面の一部を覆い隠す状態に取り付けた金属板とから構成することができる。すなわち、第1筒状胴部は、金網製円筒における周方向の一部分が円弧状の金属板で覆われており、第3筒状胴部は金網製円筒によって規定されており、第2筒状胴部は、金網製円筒の外周面の全体が円筒状の金属板で覆われているようにすればよい。回転ドラムの内周面の全体が金網製円筒によって規定されているので、軽量なゴム輪などのワークが内周面に貼り付いたままとなることを防止でき、ワークの搬送を確実に行うことができる。なお、金属板からなる円筒における必要な部分に多数の孔を設けて液通過部分を形成してもよいことは勿論である。
【0028】
さらに、ワーク送りフィンにおける投入排出口の開口縁から少なくとも一巻分の部分を、他の部分よりも丈の高いパンチングメタル製ワーク送りフィンとし、当該パンチングメタル製ワーク送りフィンの投入排出口の側の面、あるいは、筒状胴部の内周面におけるパンチングメタル製ワーク送りフィンよりも投入排出口の側の部分に、パンチングメタル製ワーク送りフィンに沿って所定の間隔で突起部を設けておくことが望ましい。
【0029】
洗浄後のワークを投入排出口から排出する際に、ワークが回転ドラムの投入排出口の開口縁の内周面部分に沿って転動して排出されない場合がある。本発明では、内周面部分に沿って転動するワークが突起部に衝突して、投入排出口から確実に回転ドラム外に送り出される。
【発明の効果】
【0030】
本発明の回転ドラム式ワーク洗浄装置では、その回転ドラムに、周方向に沿って洗浄液が通過する液通過部分と洗浄液を通さない液不通過部分とが形成された第1筒状胴部が備わっている。したがって、ワークの洗浄形態は、回転ドラムの回転毎に、浸漬洗浄、流水洗浄およびシャワー洗浄に切り替わる。異なる洗浄形態で繰り返しワークが洗浄されるので、回転ドラム式ワーク洗浄装置の洗浄効果を高めることができる。また、そのために回転ドラムを大幅に変更する必要がないので、洗浄効果の高い回転ドラム式ワーク洗浄装置を廉価に構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明を適用した実施の形態1に係る回転ドラム式ワーク洗浄装置の主要部分を示す側面図、そのb−b線で切断した部分を示す横断面図、そのc−c線で切断した部分を示す横断面図、および、その縦断面図である。
図2図1の回転ドラム式ワーク洗浄装置の洗浄動作を示す説明図である。
図3図1の回転ドラム式ワーク洗浄装置における回転ドラムの揺動回転モードの一例を示す説明図である。
図4】本発明を適用した実施の形態2に係る回転ドラム式ワーク洗浄装置を示す外観斜視図である。
図5図4の回転ドラム式ワーク洗浄装置の前側カバーを開けた状態を示す外観斜視図、および、その上側カバーを取り外した状態を示す外観斜視図である。
図6図4の回転ドラム式ワーク洗浄装置における回転ドラムおよびその駆動機構を示す斜視図、その側面図、回転ドラムのワーク投入排出口を示す正面図、および、回転ドラムの封鎖端を示す背面図である。
図7】回転ドラムのワーク送り込み状態を示す説明図、および、回転ドラムのワーク送り出し状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した回転ドラム式ワーク洗浄装置の実施の形態を説明する。
【0033】
(実施の形態1)
図1は実施の形態1に係る回転ドラム式ワーク洗浄装置を示す図であり、(a)はその側面図、(b)はb−b線で切断した部分を示す横断面図、(c)はc−c線で切断した部分を示す横断面図、(d)はその縦断面図である。回転ドラム式ワーク洗浄装置1は、被洗浄物として例えばプレス加工等により製造された金属加工部品などのワークwを洗浄するための多槽式インライン洗浄装置であり、装置架台2に搭載されている回転ドラムユニット3を備えている。回転ドラムユニット3は、洗浄用の回転ドラム4に、リンス洗浄用の回転ドラム5および不図示の乾燥用の回転ドラムがタンデムに連結された構成の横置き式の回転ドラムユニットであり、その中心軸線が水平となるように配置されている。
【0034】
洗浄用の回転ドラム4は円筒状胴部6を備えており、この円筒状胴部6の先端開口がワーク投入口7Aとなっており、後端開口がワーク排出口7Bとなっている。円筒状胴部6のワーク排出口7Bはリンス洗浄用の回転ドラム5に連結されている。円筒状胴部6の円形内周面には、その中心軸線4aの方向に一定のピッチで螺旋状に配置されたワーク送りフィン8が取り付けられている。ワーク送りフィン8は、円筒状胴部6の円形内周面から直角に起立している所定高さのフィンである。
【0035】
ここで、図1(d)に示すように、ワーク送りフィン8によって送られるワークwを回転ドラム4の円形内周面から一時的に跳ね上げるためのワーク跳ね上げ部材50が配置されている。ワーク跳ね上げ部材50は、ワーク送りフィン8における回転ドラムの中心軸線4aの方向において隣接している隣接送りフィン部分8a、8bの間に架け渡されている。隣接送りフィン部分8a、8bの間に架け渡された状態となるように、回転ドラム4の円形内周面部分を盛り上げたワーク跳ね上げ部分を形成してもよい。本例のワーク跳ね上げ部材50は細長い円形断面の棒状部材であり、例えば、ワーク送りフィン8に沿って所定の間隔で配置されている。棒状部材以外の形状、構造の部材を用いることも可能である。
【0036】
円筒状胴部6におけるワーク排出口7Bの側の部位には、その外周面に円環状の従動歯車9が固定されている。この従動歯車9には、モータおよび減速機からなる回転アクチュエータ10(ドラム回転機構)の回転軸10aの先端に固定した駆動歯車11が噛み合っている。円筒状胴部6のワーク投入口7Aの側の外周面には円環状のリブ12が固定されており、このリブ12は、左右一対の支持ローラ13によって支持されている。回転アクチュエータ10を駆動することにより、回転ドラム4を含む回転ドラムユニット3がその中心軸線回りに回転する。
【0037】
回転ドラム4の内部には、その中心軸線4aに平行に延びる状態に洗浄液供給管14が配置されており、洗浄液供給管14にはその長さ方向に沿って一定の間隔で洗浄液吹き出しノズル15が取り付けられている。洗浄液吹き出しノズル15は、斜め下方に向けて洗浄液を吹き出すように設定されている。
【0038】
回転ドラム4の円筒状胴部6は、第1円筒状胴部21と、この前端(ワーク投入口7Aの側の端)および後端(ワーク排出口7Bの側の端)に、それぞれ、同軸状に形成されている前側第2円筒状胴部22Aおよび後側第2円筒状胴部22Bとを備えている。さらに、円筒状胴部6は、前側第2円筒状胴部22Aの前端に同軸状態に形成されている前側第3円筒状胴部23Aと、後側第2円筒状胴部22Aの後端に同軸状態に形成されている後側第3円筒状胴部23Bとを備えている。
【0039】
第1円筒状胴部21は、図1(a)に示すように、円周方向に沿って見た場合に、洗浄液を通さない金属板からなる液不通過部分21aと、洗浄液を通すパンチングメタル(多孔質板材)からなる液通過部分21bとを備えている。例えば、液不通過部分21aは円周方向に270度の角度を張る一定幅の円弧部分であり、液通過部分21bは円周方向に90度の角度を張る一定幅の円弧部分である。前側第2円筒状胴部22Aおよび後端側第2円筒状胴部22Bは、それぞれ、全体として金属板から形成された液不通過性の円筒状胴部である。前側第3円筒状胴部23Aおよび後側第3円筒状胴部23Bは、それぞれ、全体としてパンチングメタルから形成された液通過性の円筒状胴部である。
【0040】
図2は、洗浄用の回転ドラム4によるワーク洗浄動作を示す説明図である。回転アクチュエータ10を駆動して回転ドラム4を回転すると共に、洗浄液吹き出しノズル15から洗浄液を吹き出す。この状態で、回転ドラム4のワーク投入口7Aから洗浄対象のワークwを投入する。回転ドラム4に投入されたワークwは、回転ドラム4の円筒状胴部6における円形内周面のうち、下側に位置する下側内周面部分を、螺旋状のワーク送りフィン8によって、回転ドラム4の中心軸線4aに沿った方向に搬送される。洗浄液吹き出しノズル15から吹き出された洗浄液は、円筒状胴部6の下側内周面部分に向けて吹き付けられ、下側内周面部分の最も低い位置に向けて流れ落ちる。
【0041】
なお、ワークwは、回転ドラム4の円筒状胴部6の下側内周面部分における最も低い位置よりも、回転ドラム4の回転方向に僅かに片寄った部分に保持される。これに応じて、洗浄液吹き出しノズル15の洗浄液吹き出し方向も全体として、鉛直方向に対して回転ドラム4の回転方向に僅かに傾斜した方向に設定されている。
【0042】
回転ドラム4のワーク投入口7Aの側の前側第3円筒状胴部23Aは、パンチングメタルから形成されているので、洗浄液が下側内周面部分に溜まることがなく下方に流れ落ちる。したがって、ワーク送りフィン8によって搬送されるワークwに直接に洗浄液が吹き付けられ、付着している異物などが洗浄液によって洗い流されて洗浄液と共に下方に落下する。
【0043】
前側第3円筒状胴部23Aの後側に繋がっている前側第2円筒状胴部22Aは金属板から形成された円筒状胴部であり、吹き出された洗浄液が、この第2前側円筒状胴部22Aの下側内周面部分において、ワーク送りフィン8の隣接送りフィンの間に溜まり、ワークwは溜まった洗浄液に浸漬した状態で搬送される。したがって、前側第2円筒状胴部22Aを搬送される間におけるワークの洗浄形態は主として浸漬洗浄である。
【0044】
次に、前側第2円筒状胴部22Aの後側に連続している第1円筒状胴部21は、円周方向における3/4の部分が金属板からなる液不通過部分21aであり、残りの1/4の部分がパンチングメタルからなる液通過部分21bである。したがって、回転ドラム4の回転に伴って、下側内周面部分が、液不通過部分21aと液通過部分21bに交互に切り替わる。
【0045】
図2(a1)、(b1)に示すように、液不通過部分21aが下側に位置する状態では、隣接するワーク送りフィン8の部分8a、8bの間に、洗浄液吹き出しノズル15から吹き出された洗浄液25が溜まる。したがって、ワークwは洗浄液25に浸漬された状態で搬送されるので、ワークの洗浄形態は主として浸漬洗浄である。
【0046】
これに対して、図2(a3)、(b3)に示すように、液通過部分21bが下側に位置する状態では、この液通過部分21bを通って洗浄液25が流れ落ち、回転ドラム4の下側部分には洗浄液が溜まらない。ワーク送りフィン8によって搬送されるワークwには、洗浄液吹き出しノズル15から吹き出された洗浄液25が吹き付けられるので、ワークwの洗浄形態は主としてシャワー洗浄である。また、洗浄液吹き出しノズル15から高圧で噴射された洗浄液が、液通過部分21bの上に重なった状態で搬送されるワークに吹き付けられると、上側のワークの間の狭い隙間を通って下側のワークにも高圧で吹き付けられ、然る後に液通過部分21bを通過する。したがって、液通過部分21bに重なった状態でワークが乗っている場合においても、下側のワークに対しても確実に洗浄液が吹き付けられ、ワークのそれぞれに対するシャワー洗浄が確実に行われる。
【0047】
また、図2(a2)、(b2)に示すように、第1円筒状胴部21における下側に位置する部分が、液不通過部分21aから液通過部分21bに徐々に切り替わる場合には、ワーク送りフィン8の隣接する部分8a、8aの間に溜まっている洗浄液25が液通過部分21bから徐々に流れ落ちる。よって、回転ドラム4の回転に伴って、ワークwの洗浄形態は、図2(a1)、(b1)に示す浸漬洗浄の状態から流水洗浄の状態に移行し、この後は、図2(a3)、(b3)に示すシャワー洗浄の状態に移行する。
【0048】
逆に、図2(a4)、(b4)に示すように、下側に位置する第1円筒状胴部21の部分が、液通過部分21bから液不通過部分21aに徐々に切り替わる場合には、ワーク送りフィン8の隣接する部分8a、8bの間に徐々に洗浄液が溜まり始める。したがって、ワークwの洗浄形態は、図2(a3)、(b3)に示すシャワー洗浄状態から流水洗浄の状態に移行し、この後は、図2(a1)、(b1)に示す浸漬洗浄の状態に移行する。
【0049】
したがって、洗浄用の回転ドラム4は、その回転に伴って、図2(a1)、(b1)に示すワークの浸漬洗浄、図2(a2)、(b2)に示すワークの流水洗浄、図2(a3)、(b3)に示すワークのシャワー洗浄、および、図2(a4)、(b4)に示す流水洗浄を順次に行いながら、ワークwを後端側に向けて搬送する。すなわち、液不通過部分21aが回転ドラム4の中心軸線4aの真下に位置する回転角度位置を含む第1回転角度範囲では、ワーク送りフィン8における隣接送りフィン部分8a、8bの間に溜まる洗浄液にワークが浸漬されて浸漬洗浄が行われ、液通過部分21bが回転ドラム4の中心軸線4aの真下に位置する回転角度位置を含む第2回転角度範囲では、ワークwに直接洗浄液が吹き付けられるシャワー洗浄が行われ、第1回転角度範囲および第2回転角度範囲以外の回転角度範囲では、液不通過部分から液通過部分に向けて流れる洗浄液によってワークの流水洗浄が行われる。勿論、各洗浄形態への切り替わり時には双方の洗浄形態が併存する状態になる。
【0050】
次に、ワークwは後側第2円筒状胴部22Bを通る間は浸漬洗浄され、次の後側第3円筒状胴部23Bを通る間は再びシャワー洗浄される。このようにして洗浄液によって洗浄された後のワークwは、次段のリンス洗浄用の回転ドラム5に送り込まれて、ワークwにリンス洗浄が施される。
【0051】
以上説明したように、回転ドラム式ワーク洗浄装置1の洗浄用の回転ドラム4では、回転ドラムの第1円筒状胴部21の回転毎に、搬送されるワークwには、浸漬洗浄、流水洗浄、シャワー洗浄がこの順序で繰り返し行われる。したがって、洗浄用の回転ドラム4によるワーク洗浄効率を高めることができる。
【0052】
回転ドラム4は、液不通過部分21aと液通過部分21bとを周方向に沿って形成しておくだけでよいので、回転ドラム4に大幅な変更を加えることなく3つの異なる洗浄形態によるワーク洗浄を実現できるので、回転ドラム4の製造コストも殆ど増加することがない。
【0053】
さらに、回転ドラム4内をワーク投入口7Aからワーク排出口7Bに向けて送られる間に、ワークwは、前側第3円筒状胴部23Aにおいてシャワー洗浄され、前側第2円筒状胴部22Aにおいて浸漬洗浄され、第1円筒状胴部21において上記のように回転毎に浸漬洗浄、流水洗浄およびシャワー洗浄され、後側第2円筒状胴部22Bにおいて浸漬洗浄され、後側第3円筒状胴部23Bにおいてシャワー洗浄される。よって、回転ドラム4によるワークwの洗浄効果を高めることができる。
【0054】
さらにまた、ワーク送りフィン8の途中位置には、ワーク跳ね上げ部材50が配置されている。ワーク送りフィン8によって送り出されるワークwは、ワーク跳ね上げ部材50に当り、一時的に回転ドラム4の円形内周面から跳ね上がり、その姿勢が変わる。この結果、洗浄液をワークwの表面全体に確実に接触させることができ、凹部、溝等の付いているワークであっても確実に異物を洗い流すことができる。
【0055】
ここで、図3に示すように、回転ドラム4によるワーク洗浄効果を更に高めるためには、回転ドラム4を揺動回転させることが望ましい。揺動回転では、回転ドラム4を第1方向51に繰り返し回転させると共に、各1回転の間に、1回転以内の所定の角度範囲θで回転ドラム4を第1方向51および逆の第2方向52に繰り返し回動させる。例えば、回転ドラム4における浸漬洗浄が行われる回転角度範囲の状態において、回転ドラム4を図3(a)に示す回転位置と図3(b)に示す回転位置との間で、第1方向51および第2方向52に繰り返し回動させる。
【0056】
このようにすると、回転ドラム4の下側内周面部分に載っているワークwが当該下側内周面部分に沿って第1方向51および第2方向52に繰り返し揺動する。揺動によってワークwの姿勢が変化し、ワークwの各部分に洗浄液が行き渡るので、ワークの洗浄を効率良く行うことができる。例えば、多数の重なった状態となっている場合に、これらのワークを揺動させて分離させて、各ワークを洗浄液で確実に洗うことができる。
【0057】
次に、本例では、複数の回転ドラム4、5等をタンデムに接続して、洗浄、リンスなどの各処理をワークに施すようになっている。単一の回転ドラムを、その中心軸線の方向において前後に二分して、異なる液体(例えば、洗浄液とリンス液)を用いてワークを処理することもできる。このためには、ワーク送りフィン8における第1円筒状胴部21の内周面に沿って配置されている一巻き以上に亘る送りフィン部分を、他の送りフィン部分に比べて丈の高い仕切り用送りフィン部分にしておけばよい。
【0058】
丈の高い仕切り用送りフィン部分によって、回転ドラム4内が中心軸線4aの方向において前後に仕切られる。回転ドラム4の前側の部分において洗浄液を用いてワークを洗浄し、その後側の部分においてリンス液を用いてワークの濯ぎを行うことができる。丈の高い仕切り用送りフィンによって洗浄液が後側の部分に流れ込むことを防止できる。また、第1円筒状胴部21には液通過部分21bが形成されているので、液通過部分21bを通って洗浄液が回転ドラム外に流れ落ちる。この結果、洗浄液が後側のワークリンス部分に流れ込むことを確実に防止できる。よって、回転ドラム4を前後に確実に仕切った状態を形成できる。
【0059】
(実施の形態2)
図4は、本発明を適用した実施の形態2に係る回転ドラム式ワーク洗浄装置を示す外観斜視図である。図5(a)は回転ドラム式ワーク洗浄装置の前側カバーを開けた状態を示す外観斜視図であり、図5(b)は、その上側カバーを取り外した状態を示す外観斜視図である。回転ドラム式ワーク洗浄装置100は、例えば、Oリング、シールリングなどの軽量で柔軟なワークの洗浄に適したものである。
【0060】
回転ドラム式ワーク洗浄装置100は矩形枠状の装置架台101を備えており、装置架台101の前側部分の下側には洗浄液のタンク102が搭載され、その上側には、回転ドラム載置部103が取り付けられており、ここに回転ドラム104が搭載されている。回転ドラム104は、前側カバー105および前後の上側カバー106、107によって覆い隠されている。前側カバー105は図5(a)に示すように下端を中心として前方に開くことができ、また、回転ドラム載置部103から取り外すことができる。前側カバー105の上端面にはワーク投入部105aが形成され、内部には投入されたワークを回転ドラム104に導くシュート105bが取り付けられている。上側カバー106、107は、図5(b)に示すように、回転ドラム載置部103から取り外すことが可能である。回転ドラム載置部103の前端部には洗浄後のワークが落下するワーク排出口103aが開いている。
【0061】
装置架台101の後側部分には、その下側に洗浄液循環用のポンプ108が搭載されており、その上側にはワーク乾燥用の熱風発生機109が搭載されている。また、熱風発生機109の左隣には制御盤110が搭載されている。制御盤110は、回転ドラム式ワーク洗浄装置100の駆動制御を行うものであり、その外側の側面には、図5(a)、(b)に示すように、操作ボタン111、表示画面112、警告灯113などが配置されている。
【0062】
次に、図6(a)は回転ドラム載置部103に搭載されている回転ドラム104および、その駆動機構を取り出して示す斜視図であり、図6(b)はその側面図であり、図6(c)は回転ドラム104のワーク投入排出口を示す正面図であり、図6(d)は回転ドラム104の封鎖端を示す背面図である。
【0063】
これらの図を参照して説明すると、回転ドラム104は、円筒状胴部121と、その前端に形成されているワーク投入排出口122と、その後端を封鎖している封鎖端123とを備えている。封鎖端123の中心部には後方に同軸状態に延びる中空のドラム回転軸124が固定されており、封鎖端123の内周側の面には円盤状の回転部カバー125が取り付けられている。
【0064】
回転ドラム104は、回転ドラム載置部103に配置されているドラム傾斜機構130によって支持されている。ドラム傾斜機構130は矩形枠状のドラム保持フレーム131を備えており、このドラム保持フレーム131は、その前後方向の中程の位置において装置幅方向に延びる支軸132を中心として上下に揺動可能であり、不図示のエアーシリンダーなどの駆動源によって姿勢を切り替えることが可能となっている。
【0065】
ドラム保持フレーム131の先端部(装置前側の端部)には、左右一対のドラム支持ローラ133L、133Rが回転自在の状態で取り付けられている。これらのドラム支持ローラ133L、133Rによって回転ドラム104のワーク投入排出口122の側の外周面部分に固定した円環状リブ134が支持されている。ドラム保持フレーム131の後端部には上方に延びているドラム支持枠135が取り付けられている。ドラム支持枠135の上端部には前向きに中空の軸受部136が固定されている。この軸受け部136は回転自在の状態でドラム回転軸124に後側から挿入されて、ドラム回転軸124を回転自在の状態で支持している。
【0066】
このように、回転ドラム104は、前側が左右一対のドラム支持ローラ133L、133Rによって回転自在の状態で支持され、後端が軸受部136によって回転自在の状態で支持されている。また、ドラム傾斜機構130のドラム保持フレーム131を支軸132を中心として上下に揺動させることにより、回転ドラム104を所定の傾斜姿勢に設定することができる。本例では、後述のように(図7参照)、ワーク投入排出口の側が上になる傾斜姿勢と、ワーク投入排出口の側が下になる傾斜姿勢とに切替可能となっている。
【0067】
次に、ドラム傾斜機構130には、回転ドラム104をその中心軸線104Aを中心として回転駆動するためのドラム回転機構140が搭載されている。ドラム回転機構140は、モータおよび減速機からなる回転アクチュエータ141と、この回転アクチュエータ141の回転出力軸142に固定した駆動歯車143と、ドラム回転軸124の外周面部分に固定した円環状の従動歯車144とを備えている。回転アクチュエータ141を駆動すると、回転ドラム104がその中心軸線104Aを中心として回転する。
【0068】
次に、回転ドラム104の円形内周面には、その中心軸線104Aに沿って一定のピッチで螺旋状に配置されたワーク送りフィン151が取り付けられている。ワーク送りフィン151は、回転ドラム104の円筒状胴部121の内周面において、そのワーク投入排出口122の側の開口縁から後側の封鎖端123まで延びている。
【0069】
また、回転ドラム104の後端からは、中空の軸受部136の内部を通って洗浄液供給管152が回転ドラム104内を同軸状態に延びており、その先端はワーク投入排出口122の近傍に達している。洗浄液供給管152にはその長さ方向に沿って一定の間隔で洗浄液吹き出しノズル153が配置されている。各洗浄液吹き出しノズル153からは斜め下方向に洗浄液が吹き出されるようになっている。
【0070】
ここで、回転ドラム104の円筒状胴部121は、所定メッシュの金網からなる金網製円筒161と、この金網製円筒161の外周面の一部を覆い隠している金属板からなるカバー162とを備えている。カバー162は、金網製円筒161の後端側の外周面部分を覆い隠している細幅の円筒部分162aと、この円筒部分162aの前端縁から前方に延びて、金網製円筒161の外周面部分を円周方向の半分だけ覆い隠している円弧板部分162bとを備えている。円弧板部分162bの先端からワーク投入排出口122までの一定幅の部分は金網製円筒161が露出している。
【0071】
したがって、円弧板部分162bが取り付けられている円筒状胴部121の一定幅の部分は、その円周方向における半分が金網からなる液通過部分104bであり、残りの半分が金属板からなる液不通過部分104aとなっている第1円筒状胴部104(1)である。また、この後側の部分が金属板からなる液不通過性の第2円筒状胴部104(2)であり、第1円筒状胴部104(1)の前側の部分が金網製円筒161からなる液通過性の第3円筒状胴部104(3)である。
【0072】
さらに、図6(d)から分かるように、回転ドラム104の後側の封鎖端123は金網からなる円板状の端板123aと、この端板123aの略半円形部分を覆い隠している金属板からなる封鎖板123bとから構成されている。
【0073】
次に、図7(a)は回転ドラム式ワーク洗浄装置100におけるワーク送り込み状態における回転ドラム104を示す側面図であり、図7(b)はワーク送り出し状態における回転ドラム104を示す側面図である。
【0074】
図7(a)に示すように、ドラム傾斜機構130は、ワークw1をワーク投入排出口122から回転ドラム104に投入して、その後端側に送り込みながら洗浄を行う場合には、回転ドラム104をワーク投入排出口122の中心が封鎖端123の中心よりも高い位置となるように角度θ1だけ傾斜した状態に保持する。この状態で、洗浄液を供給しながら回転ドラム104を回転して、ワークw1を洗浄しながら送り込む。
【0075】
逆に、ワークw1を回転ドラム104の後端まで送り込んだ後は、図7(b)に示すように、回転ドラム104をワーク投入排出口122の中心が封鎖端123の中心よりも僅かに低い位置となるように逆向きに角度θ2だけ傾斜した状態に保持する。この状態で、回転ドラム104を逆回転させることにより、ワーク送りフィン151によって洗浄後のワークw1がワーク投入排出口122に向けて送り出される。この送り動作では、洗浄液供給管152を介して乾燥用の熱風を送り込むことにより、送り出されるワークw1を乾燥することができる。
【0076】
回転ドラム式ワーク洗浄装置100では、ドラム傾斜機構130によってワーク投入排出口122を後側の封鎖端123よりも高い位置および低い位置となるように回転ドラム104の傾斜角度を切り替えることができる。軽量なゴム製、プラスチック製の輪状のワークw1などは、回転ドラム104の内周面に貼り付き易く、内周面に沿って転動し易いので、ワーク送りフィン151によるワーク搬送を効率良く行うことができない場合がある。本例では、回転ドラム104の傾斜角度を切り替えて搬送方向が低くなるようにしてあるのでワーク搬送を効率良く行うことができる。また、回転ドラム104の内周面の全体が金網製円筒161によって規定されているので、軽量なゴム輪などのワークが内周面に貼り付いたままとなることを防止でき、ワークw1の搬送を確実に行うことができる。
【0077】
ここで、図6、7に示すように、ワーク送りフィン151におけるワーク投入排出口122の開口縁から少なくとも一巻分の部分は、他の部分よりも丈の高いパンチングメタル製のワーク送りフィン151aとなっている。また、パンチングメタル製のワーク送りフィン151aと円筒状胴部121の内周面によって規定されるワーク投入排出口122に面する入隅部分に、パンチングメタル製のワーク送りフィン151aに沿って所定の間隔で突起片170が取り付けられている。なお、パンチングメタル製のワーク送りフィン151aのワーク投入排出口122の側の表面に突起片あるいは突起部を形成しておいてもよい。また、円筒状胴部121の内周面におけるパンチングメタル製のワーク送りフィン151aよりもワーク投入排出口122の側の部分に突起片あるいは突起部を形成しておいてもよい。
【0078】
このようにすると、洗浄後のワークw1をワーク投入排出口122から排出する際に、リング状のワークw1が回転ドラム104のワーク投入排出口122の開口縁の内周面部分に沿って転動してしまい、ワークの排出を効率良く行うことができないという弊害を防止できる。すなわち、内周面部分に沿って転動するワークw1が突起片170に衝突してワーク投入排出口122から確実に回転ドラム外に落下する。
【0079】
また、回転ドラム式ワーク洗浄装置100では、その回転ドラム104の円筒状胴部121には、ワーク投入排出口122の側から、金網製円筒からなる第3円筒状胴部104(3)、金網製円筒の外周面の一部が金属板で覆い隠された第1円筒状胴部104(1)、および、金属円筒からなる第2円筒状胴部104(2)が形成されている。ワーク送り込み動作においては、ワークの洗浄形態は、最初の第3円筒状胴部104(3)ではシャワー洗浄であり、第1円筒状胴部104(1)では、回転ドラムの回転に伴って浸漬洗浄、流水洗浄およびシャワー洗浄が繰り返され、第2円筒状胴部104(2)では浸漬洗浄である。ワーク送り出し動作においては、この逆にワーク洗浄形態が切り替わる。したがって、ワークの洗浄効果を高めることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7