【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明による回転ドラム式ワーク洗浄装置は、
横置き式の回転ドラムをその中心軸線回りに回転させ、回転ドラムの内周面に沿って螺旋状に形成されているワーク送りフィンによって回転ドラムに投入されたワークを、当該回転ドラムにおける下側に位置する内周面部分に沿って前記中心軸線の方向に送り出し、ワーク送りフィンによって送り出されるワークに向けて洗浄液を吹き付けてワークを洗浄するものであり、
回転ドラムの筒状胴部のうちの少なくとも一部は、回転ドラムが1回転する間に、ワークに対して浸漬洗浄、流水洗浄およびシャワー洗浄を行う第1筒状胴部であり、
当該第1筒状胴部は、その周方向における所定範囲の周面部分が前記洗浄液を通さない板材から形成された液不通過部分であり、その周方向における残りの周面部分が洗浄液を通過させる多孔質板材から形成された液通過部分であることを特徴としている。
【0010】
本発明の回転ドラム式ワーク洗浄装置において、回転ドラムにワークを投入して回転ドラムを回転すると、ワークが回転ドラムの筒状胴部における下側に位置する下側内周面部分を、螺旋状のワーク送りフィンによって、回転ドラムの中心軸線に沿った方向に搬送される。回転ドラム内では洗浄液がワークに向けて吹き付けられる。すなわち、回転ドラムの内周面におけるワークが位置している下側内周面部分に向けて吹き付けられる。
【0011】
回転ドラムの第1筒状胴部においては、その下側内周面部分が、回転ドラムの回転に伴って、液不通過部分および液通過部分に交互に切り替わる。液不通過部分が下側に位置する状態では、ワーク送りフィンにおける隣接する送りフィン部分の間に洗浄液が溜まる。したがって、ワークは洗浄液に浸漬された状態で搬送されるので、ワークの洗浄形態は主として浸漬洗浄になる。
【0012】
これに対して、液通過部分が下側に位置する状態では、この液通過部分を通って洗浄液が回転ドラムから下方に流れ落ちるので、回転ドラムの下側内周面部分におけるワーク送りフィンの隣接する送りフィン部分の間には洗浄液が溜まらない。この結果、ワーク送りフィンによって搬送されるワークには洗浄液が直接に吹き付けられ、ワークの洗浄形態は主としてシャワー洗浄になる。
【0013】
第1筒状胴部の下側内周面部分が、液不通過部分から液通過部分に徐々に切り替わる場合には、ワーク送りフィンの隣接送りフィン部分の間に溜まっていた洗浄液が液通過部分から徐々に流れ落ちる。したがって、回転ドラムの回転に伴って、ワークの洗浄形態は、浸漬洗浄から、流水洗浄の状態を経て、シャワー洗浄の状態に移行する。
【0014】
逆に、第1筒状胴部の下側内周面部分が、液通過部分から液不通過部分に徐々に切り替わる場合には、ワーク送りフィンの隣接送りフィン部分の間に徐々に洗浄液が溜まり始める。したがって、回転ドラムの回転に伴って、ワークの洗浄形態は、シャワー洗浄状態から、流水洗浄の状態を経て浸漬洗浄の状態に移行する。
【0015】
このように、本発明の回転ドラム式ワーク洗浄装置では、回転ドラムの第1筒状胴部が1回転する間に、搬送されるワークの洗浄形態が、浸漬洗浄、流水洗浄、シャワー洗浄に順次に切り替わる。すなわち、液不通過部分が回転ドラムの中心軸線の真下に位置する回転角度位置を含む第1回転角度範囲では、ワーク送りフィンにおける隣接送りフィン部分の間に溜まる洗浄液にワークが浸漬されて浸漬洗浄が行われる。液通過部分が回転ドラムの中心軸線の真下に位置する回転角度位置を含む第2回転角度範囲では、ワークに直接洗浄液が吹き付けられるシャワー洗浄が行われる。第1回転角度範囲および第2回転角度範囲以外の回転角度範囲では、液不通過部分から液通過部分に向けて流れる洗浄液によってワークの流水洗浄が行われる。よって、回転ドラムの1回転毎に、異なる洗浄形態でワークを洗浄することができるので、ワークの洗浄効果を高めることができる。また、回転ドラムは、液通過部分と液不通過部分を周方向に沿って形成しておくだけでよいので、回転ドラムに大幅な変更を加えることなく3つの異なる洗浄形態によるワーク洗浄を実現できる。
【0016】
ここで、回転ドラムを揺動回転モードで回転駆動することが望ましい。揺動回転モードでは、回転ドラムを第1方向に繰り返し回転させると共に、各1回転の間に、1回転以内の所定の角度範囲で回転ドラムを第1方向および逆の第2方向に繰り返し回動させる。例えば、回転ドラムにおける浸漬洗浄が行われる回転角度範囲の状態において、回転ドラムを前記第1方向および前記第2方向に繰り返し回動させる。
【0017】
このようにすると、回転ドラムの下側内周面部分に載っているワークが当該下側内周面部分に沿って第1方向および第2方向に繰り返し揺動する。揺動によってワークの姿勢が変化し、ワークの各部分に洗浄液が行き渡るので、ワークの洗浄を効率良く行うことができる。例えば、カップ状のワークの場合、その開口が回転ドラムの内周面に面した状態のままでは、ワークの凹部内に洗浄液を吹き付けることができないが、揺動させてワークを反転させることにより、ワークの凹部内に洗浄液を直接吹き付けて洗浄することができる。
【0018】
ワークの姿勢を変えるためには、前記ワーク送りフィンによって送られるワークを前記回転ドラムの内周面から一時的に跳ね上げるためのワーク跳ね上げ部材を用いることができる。すなわち、ワーク跳ね上げ部材を、前記ワーク送りフィンにおける前記中心軸線の方向に隣接している隣接送りフィン部分の間に架け渡たした状態に配置しておけばよい。回転ドラムの下側内周面部分をワーク送りフィンによって送られるワークは、途中に配置されているワーク跳ね上げ部材に当って跳ね上がり、その姿勢が変化する。したがって、ワークの各部分に洗浄液を行き渡らせることができ、洗浄効果を高めることができる。
【0019】
次に、回転ドラム式の洗浄装置においては、複数の回転ドラムをタンデムに接続して、洗浄、リンスなどの各処理をワークに施すようになっている。単一の回転ドラムを、その中心軸線の方向において前後に二分して、異なる液体(例えば、洗浄液とリンス液)を用いてワークを処理することができれば便利である。
【0020】
このようにするためには、ワーク送りフィンにおける第1筒状胴部の内周面に沿って配置されている一巻き以上に亘る送りフィン部分を、他の送りフィン部分に比べて丈の高い仕切り用送りフィン部分にしておけばよい。丈の高い仕切り用送りフィン部分によって、回転ドラム内が中心軸線方向の前後に仕切られる。回転ドラムの前側の部分において洗浄液を用いてワークを洗浄し、その後側の部分においてリンス液を用いてワークの濯ぎを行うことができる。丈の高い仕切り用送りフィンによって洗浄液が後側のワークリンス部分に流れ込むことを防止できる。また、第1筒状胴部には液通過部分が形成されているので、液通過部分を通って洗浄液が回転ドラム外に流れ落ちる。よって、洗浄液が後側のワークリンス部分に流れ込むことを確実に防止できる。
【0021】
ここで、回転ドラムの筒状胴部は、その全体を第1筒状胴部から形成することができるが、当該第1筒状胴部と、洗浄液を通す多孔質板材からなる第2筒状胴部および洗浄液を通さない板材からなる第3筒状胴部のうちの少なくとも一方とを備えた構成とすることもできる。第2筒状胴部を搬送されるワークの洗浄形態はシャワー洗浄となり、第3筒状胴部を搬送されるワークの洗浄形態は浸漬洗浄となる。
【0022】
この場合、回転ドラムの回転に伴う前記ワーク送りフィンによるワーク送り方向に沿って、第3筒状胴部、第2筒状胴部および第1筒状胴部が、この順序で形成された構成とすることができる。回転ドラムに投入された洗浄対象のワークは、最初に、第3筒状胴部を通過する間にシャワー洗浄され、付着している比較的大きめの異物が洗浄水によって洗い流される。洗い流された異物は洗浄液と共に回転ドラムから外部に流れ落ちる。次に、ワークは第2筒状胴部を通過する間に浸漬洗浄され、ワーク表面全体に洗浄液が接触して異物が洗い流される。この後、ワークは第1筒状胴部を通過する間に、回転ドラムの回転毎に浸漬洗浄、流水洗浄およびシャワー洗浄される。ワークは回転毎に新たな洗浄液に晒され、異なる洗浄形態で洗浄されるので、微細な異物などを確実に洗い流す仕上げ洗浄を行うことができる。
【0023】
一方、本発明による回転ドラム式ワーク洗浄装置は、
横置き式の回転ドラムをその中心軸線回りに回転させ、回転ドラムの内周面に沿って螺旋状に形成されているワーク送りフィンによって回転ドラムに投入されたワークを、当該回転ドラムにおける下側に位置する内周面部分に沿って前記中心軸線の方向に送り出し、ワーク送りフィンによって送り出されるワークに向けて洗浄液を吹き付けて当該ワークを洗浄するものであり、
回転ドラムの筒状胴部のうちの少なくとも一部は、回転ドラムが1回転する間に、ワークに対して浸漬洗浄、流水洗浄およびシャワー洗浄を行う第1筒状胴部であり、
当該第1筒状胴部は、その周方向における所定範囲の周面部分が洗浄液を通さない板材から形成された液不通過部分であり、その周方向における残りの周面部分が洗浄液を通過させる多孔質板材から形成された液通過部分であり、
回転ドラムの傾斜角度を変更可能なドラム傾斜機構と、
回転ドラムの回転、ドラム傾斜機構による回転ドラムの傾斜角度、および洗浄液の吹き付け動作を制御する制御部とを有しており、
回転ドラムの一方の端はワークの投入および排出を行う投入排出口として開口しており、他方の端は封鎖端となっており、
制御部の制御の下に、回転ドラムの投入排出口が封鎖端よりも高い位置となる傾斜姿勢で回転ドラムを第1方向に回転させてワークを封鎖端に向けて送り込みながらワークに洗浄液を吹き付けるワーク送り込み洗浄動作と、回転ドラムの投入排出口が封鎖端よりも低い位置となる傾斜姿勢で回転ドラムを第1方向とは逆の第2方向に回転させてワークを封鎖端から投入排出口に向けて送り出しながらワークに洗浄液を吹き付けるワーク送り出し洗浄動作とが交互に行われることを特徴としている。
【0024】
本発明の回転ドラム式ワーク洗浄装置では、ドラム傾斜機構によって投入排出口を反対側の封鎖端よりも高い位置および低い位置となるように回転ドラムの傾斜角度を切り替えることができる。軽量なゴム製、プラスチック製の輪状ワーク、例えば、Oリング、シールリングなどは、回転ドラムの内周面に貼り付き易く、内周面に沿って転動し易いので、ワーク送りフィンによるワーク搬送を効率良く行うことができない場合がある。本発明では、回転ドラムの傾斜角度を切り替えて搬送方向が低くなるようにしてあるのでワーク搬送を効率良く行うことができる。
【0025】
ここで、回転ドラムの筒状胴部は、第2筒状胴部および第3筒状胴部を備えており、
第2筒状胴部は液体を通さない板材から形成された浸漬洗浄を行う部分であり、
第3筒状胴部は液体が通過する多孔質板材から形成されたシャワー洗浄を行う部分であり、
投入排出口の側から、第3筒状胴部、第1筒状胴部および第2筒状胴部が、この順序に形成されており、
第3筒状胴部の前端が投入排出口であり、
第2筒状胴部の後端が封鎖端であることを特徴としている。
【0026】
この構成の回転ドラムの投入排出口に投入されたワークは、回転ドラムの封鎖端に向かって送り込まれる送り込み工程では、第3筒状胴部を通過する間においてシャワー洗浄され、第1筒状胴部を通過する間において、1回転毎に浸漬洗浄、流水洗浄およびシャワー洗浄され、第2筒状胴部を通過する間において浸漬洗浄される。ワークが回転ドラムの封鎖端から投入排出口に戻る送り出し工程においてワーク洗浄が行われる場合には、浸漬洗浄された後に、回転毎に浸漬洗浄、流水洗浄およびシャワー洗浄され、最後にシャワー洗浄される。このように、ワークの送り方向においても異なる洗浄形態で洗浄を行うことにより、効率良くワークを洗浄することができる。
【0027】
ここで、回転ドラムの筒状胴部は、金網製円筒と、この金網製円筒の外周面の一部を覆い隠す状態に取り付けた金属板とから構成することができる。すなわち、第1筒状胴部は、金網製円筒における周方向の一部分が円弧状の金属板で覆われており、第3筒状胴部は金網製円筒によって規定されており、第2筒状胴部は、金網製円筒の外周面の全体が円筒状の金属板で覆われているようにすればよい。回転ドラムの内周面の全体が金網製円筒によって規定されているので、軽量なゴム輪などのワークが内周面に貼り付いたままとなることを防止でき、ワークの搬送を確実に行うことができる。なお、金属板からなる円筒における必要な部分に多数の孔を設けて液通過部分を形成してもよいことは勿論である。
【0028】
さらに、ワーク送りフィンにおける投入排出口の開口縁から少なくとも一巻分の部分を、他の部分よりも丈の高いパンチングメタル製ワーク送りフィンとし、当該パンチングメタル製ワーク送りフィンの投入排出口の側の面、あるいは、筒状胴部の内周面におけるパンチングメタル製ワーク送りフィンよりも投入排出口の側の部分に、パンチングメタル製ワーク送りフィンに沿って所定の間隔で突起部を設けておくことが望ましい。
【0029】
洗浄後のワークを投入排出口から排出する際に、ワークが回転ドラムの投入排出口の開口縁の内周面部分に沿って転動して排出されない場合がある。本発明では、内周面部分に沿って転動するワークが突起部に衝突して、投入排出口から確実に回転ドラム外に送り出される。