(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
A.第1実施形態:
A−1. プラグキャップ100の全体構成
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態としてのプラグキャップ100を示す図である。
図1(A)には、プラグキャップ100の断面図が示され、
図1(B)には、外観図が示されている。
【0020】
図1に示すように、プラグキャップ100は、キャップ本体10と、コード取付ねじ20と、抵抗体30と、バネ40と、端子接続部材50と、プラグ側カバー60と、コード側カバー70と、を備えている。
【0021】
キャップ本体10は、耐熱性および耐電圧性に優れる熱硬化性樹脂、例えば、不飽和ポリエステル樹脂やフェノール樹脂を用いて形成されている。キャップ本体10は、第1の軸線CL1に沿って延びる筒形状を有する第1構成部11と、第2の軸線CL2に沿って延びる筒形状を有する第2構成部12と、を備えている。第1の軸線CL1と平行な方向のうち、
図1の下方向を第1方向D1とも呼び、
図1の上方向、すなわち、第1方向D1の反対方向を第2方向D2とも呼ぶ。第2の軸線CL2と平行な方向のうち、
図1の左上から右下へ向かう方向を第3方向D3とも呼び、
図1の右下から左上へ向かう方向を第4方向D4とも呼ぶ。第1構成部11の第2方向D2の端と、第2構成部12の第4方向D4の端とは、接続されている。
【0022】
第1の軸線CL1と、第2の軸線CL2と、が成す角度、すなわち、第1構成部11と第2構成部12とが成す角度は、
図1の例では、約60度の鋭角である。第1構成部11と第2構成部12とが成す角度は、これに限らず、90度、120度などの他の角度であっても良い。
【0023】
第1構成部11は、第1方向D1に開口する第1空洞11Aと、第1空洞11Aの第2方向D2側に配置され、空洞11Aと連通する第1挿入孔11Bと、を備えている。換言すれば、第1挿入孔11Bは、空洞11Aを形成する第1構成部11の内面に開口している。第1空洞11Aと第1挿入孔11Bとは、第1の軸線CL1を中心軸とする円筒形状を有している。第1空洞11Aの内径は、第1挿入孔11Bの内径より大きい。第1空洞11Aの第1方向D1側の端は、プラグ側カバー60の孔61A(後述)を介して、外部に連通している。なお、キャップ本体10(第1構成部11)の第1挿入孔11Bには、端子接続部材50が取り付けられる。このため、キャップ本体10(第1構成部11)のうち、第1挿入孔11Bが形成されている部位を取付部13とも呼ぶ。
【0024】
第2構成部12は、第3方向D3に開口する第2空洞12Aと、第2空洞12Aの第4方向D4側に配置され、第2空洞12Aと連通する第2挿入孔12Bと、を備えている。第2空洞12Aと第2挿入孔12Bとは、第2の軸線CL2を中心軸とする円筒形状を有している。第2空洞12Aの内径は、第2挿入孔12Bの内径より大きい。第2挿入孔12Bの第4方向D4側の端部は、第1挿入孔11Bの第2方向D2側の端部と、連通している。
【0025】
端子接続部材50は、導電性を有する金属(例えば、真鍮)で形成された筒形状を有する部材である。端子接続部材50の軸線は、キャップ本体10の第1構成部11の第1の軸線CL1と同じである。すなわち、端子接続部材50と第1構成部11とは、同軸状に配置されている。端子接続部材50は、頭部51と、頭部51より第1方向D1側に配置された挿入部52と、挿入部52より第1方向D1側に配置された露出部53と、を備えている。端子接続部材50の詳細については後述する。
【0026】
抵抗体30は、円筒形状を有しており、第2構成部12の第2挿入孔12B内に配置されている。抵抗体30は、導電性セラミックスを用いて形成されており、所定の抵抗値(例えば、5kΩ)を有している。抵抗体30は、電気的なノイズを抑制するために設けられている。
【0027】
バネ40は、導電性を有する金属(例えば、ステンレス)を用いて形成されている。バネ40は、第2構成部12の第2挿入孔12B内における抵抗体30と、端子接続部材50の頭部51と、の間に、第2の軸線CL2の方向に圧縮された状態で、配置されている。バネ40の第3方向D3側の端は、バネ40の弾性力によって、抵抗体30に圧接されている。同様に、バネ40の第4方向D4側の端は、バネ40の弾性力によって、端子接続部材50の頭部51に圧接されている。
【0028】
コード取付ねじ20は、導電性を有する金属(例えば、真鍮)を用いて形成されている。コード取付ねじ20は、頭部側を第4方向D4に向け、雄ねじ側を第3方向D3に向けて、第2構成部12の第2空洞12A内に配置されている。コード取付ねじ20は、2個のワッシャー4、5によって、第2空洞12Aを形成する第2構成部12の内周面に固定されている。コード取付ねじ20の頭部は、抵抗体30に圧接されている。
【0029】
ワッシャー4、5は、平面視が円形状を有しており、円形状の外縁部にギザギザ形状が形成されている。ワッシャー4、5の円形状の中央部には、孔が形成されている当該孔にコード取付ねじ20の軸部分が挿入される。ワッシャー4、5は、第2構成部12の第2空洞12Aの奥において、コード取付ねじ20の頭部に当接するまで押し込まれている。
【0030】
コード取付ねじ20は、プラグキャップ100に、図示しないプラグコードを接続するために利用される。すなわち、プラグキャップ100にプラグコードを接続する際には、プラグコードの端が、第2空洞12Aに挿入され、コード取付ねじ20にねじ込まれる。これによって、プラグコード内の導線と、コード取付ねじ20と、とが、電気的に接続される。
【0031】
図1から解るように、バネ40と、抵抗体30と、コード取付ねじ20とは、キャップ本体10の第2構成部12の内部に、第2の軸線CL2に沿って同軸状に配置されている。
【0032】
プラグ側カバー60は、シリコンゴムなどのゴムを用いて形成されている。プラグ側カバー60は、筒状の小径部61と、小径部61の第2方向D2側に配置され、小径部61の外径より大きな外径を有する大径部62と、を備えている。孔61Aを形成する小径部61の内周面は、プラグキャップ100に接続される点火プラグ(図示省略)の外周面に密着して、外部から第1空洞11A内への水の侵入を防止する。大径部62に形成された孔62Aには、キャップ本体10の第1構成部11の第1方向D1側の端部が嵌合されている。
【0033】
コード側カバー70は、シリコンゴムなどのゴムを用いて形成されている。コード側カバー70は、筒状の小径部71と、小径部71の第4方向D4側に配置され、小径部71の外径より大きな外径を有する大径部72と、を備えている。孔71Aを形成する小径部71の内周面は、プラグキャップ100に接続されるプラグコード(図示省略)の外周面に密着して、外部から第2空洞12A内への水の侵入を防止する。大径部72に形成された孔72Aには、キャップ本体10の第2構成部12の第3方向D3側の端部が嵌合されている。
【0034】
A−2.端子接続部材50の構成
次に、端子接続部材50の構成について、さらに、説明する。
図2は、端子接続部材50の拡大図である。端子接続部材50は、上述したように、頭部51と挿入部52と露出部53とを備えている。頭部51は、円筒形状を有しており、第2構成部12の第2挿入孔12B内の第4方向D4の端部に位置している(
図1)。挿入部52は、頭部51の外径より大きな外径を有する円筒形状を有しており、第1構成部11の第1挿入孔11Bに挿入されている(
図1)。露出部53は、プラグキャップ100の第1構成部11の第1空洞11A内に露出している(
図1)。
【0035】
端子接続部材50の露出部53と挿入部52の内部には、円筒状のプラグ挿入孔55が形成されている。プラグ挿入孔55の第2方向D2側は、閉じており、プラグ挿入孔55の第1方向D1側は、点火プラグの端子電極(図示せず)を接続するための接続口CPとして開口している。すなわち、端子接続部材50は、第1の軸線CL1に沿う第1方向D1の端部に、接続口CPを有している。
【0036】
露出部53は、挿入部52より僅かに大きな外径を有している。露出部53の第1の軸線CL1に沿う方向(以下、軸線方向とも呼ぶ)の中央部には、環状のコネクタスプリング3(
図1)が係合する溝531が形成されている。溝531の一部には、プラグ挿入孔55と連通する切り欠き532が形成されている。これによって、溝531に係合されたコネクタスプリング3の一部が、切り欠き532からプラグ挿入孔55に露出する。コネクタスプリング3のうち、プラグ挿入孔55に露出する部分によって、プラグ挿入孔55に挿入された点火プラグの端子電極が、プラグ挿入孔55内に固定される。
【0037】
挿入部52は、後述するように、キャップ本体10の取付部13に形成された第1挿入孔11Bに挿入される部位である。挿入部52は、外径が一定値R1(第1の径R1とも呼ぶ)である等径部522と、等径部522の第2方向D2側に配置された拡径部521と、を備えている。拡径部521の外径は、第1方向D1側から、第2方向D2側に向かって、第1の径R1から第2の径R2まで直線的に大きくなっている。換言すれば、拡径部521は、外径が第1方向D1側から、第2方向D2側に向かって、第1の径R1から第2の径R2まで直線的に大きくなるテーパー形状を有している。第2の径R2は、これに限られるものではないが、例えば、4.0mm以上であり、4.5mm以上であることが好ましく、5.5mm以上であることが特に好ましい。また、第2の径R2は、これに限られるものではないが、例えば、25.0mm以下であり、20.0mm以下であることが好ましく、10.0mm以下であることが特に好ましい。第1の径R1は、拡径部521の第1方向D1の端の外径と言うことができ、第2の径R2は、拡径部521の第2方向D2の端の外径と言うことができる(
図2)。
【0038】
第1の径R1は、第2の径R2から所定の径差ΔRを減じた値(R1=R2−ΔR)とされている。径差ΔRの値は、これに限られるものではないが、例えば、0.03mm以上3.0mm以下であることが好ましい。径差ΔRの特に好ましい範囲は、評価試験の結果とともに後述する。
【0039】
挿入部52の軸線方向の長さY3は、これに限られるものではないが、例えば、3.5mm以上であり、4.0mm以上であることが好ましく、5.0mm以上であることが特に好ましい。また、挿入部52の軸線方向の長さY3は、これに限られるものではないが、例えば、25.0mm以下であり、20.0mm以下であることが好ましく、10.0mm以下であることが特に好ましい。
【0040】
拡径部521の軸線方向の長さY1は、これに限られるものではないが、挿入部52の軸線方向の長さY3の長さの10%以上100%以下であることが好ましく、20%以上100%以下であることが特に好ましい。
【0041】
等径部522の軸線方向の長さY2は、拡径部521の軸線方向の長さY1と、挿入部52の軸線方向の長さY3と、に応じて決定される値である。すなわち、等径部522の軸線方向の長さY2は、挿入部52の軸線方向の長さY3から拡径部521の軸線方向の長さY1を減じた値である(Y2=Y3−Y1)。拡径部521の縦方向の長さY1が、挿入部52の軸線方向の長さY3の100%であるとは、等径部522が省略されることを意味する。すなわち、挿入部52の全体が拡径部521となる。
【0042】
ここで、プラグキャップ100の製造工程における、キャップ本体10に対する端子接続部材50の取り付けについて説明する。
図3は、キャップ本体10への端子接続部材50の取り付け工程について説明する図である。先ず、熱硬化性樹脂を型成形することによって、キャップ本体10を作製する。キャップ本体10の取付部13に形成された第1挿入孔11Bに対して、端子接続部材50が、第1の軸線CL1に沿って、第1方向D1から第2方向D2に向かって挿入し、圧入される(
図3(A)、
図3(B))。これによって、その後にキャップ本体10が収縮して、端子接続部材50が、キャップ本体10に固定される。キャップ本体10の成形時の第1挿入孔11Bの内径R3は、端子接続部材50の挿入部52の上端の外径R2(
図2)より若干小さくされている。
【0043】
熱処理等による収縮によって、第1挿入孔11Bが形成された取付部13(樹脂)は、拡径部521の最大径である第2の径R2を有する仮想的な円筒より径方向内側の領域SA(
図2のハッチングされた領域)に侵入する。そして、取付部13は、拡径部521の外周面に圧接される。この結果、キャップ本体10に固定された状態の端子接続部材50において、拡径部521の外周面は、取付部13から力を受ける。拡径部521が上述したようにテーパー状に形成されているので、この力は、
図2の矢印AR1で示すように、軸線方向に沿って第1方向D1側から第2方向D2側に向かう第1成分と、矢印AR2で示すように、径方向の内側に向かう第2成分と、を有する。
【0044】
したがって、端子接続部材50の拡径部521は、キャップ本体10によって径方向の内側に支持されるとともに、第2方向D2側にも支持される。この結果、端子接続部材50をキャップ本体10に強固に固定することができる。また、端子接続部材50が第1方向D1に引き抜かれる場合には、拡径部521によって取付部13に形成された第1挿入孔11Bが押し広げられる。この結果、端子接続部材50を第1方向D1に引き抜くためには、比較的大きな力が必要になる。したがって、キャップ本体10に対する端子接続部材50の固着力を確保して、端子接続部材50の抜けを抑制することができる。
【0045】
さらに、端子接続部材50の拡径部521は、外径が滑らかに変化するので、取付部13と、端子接続部材50の拡径部521と、の間に隙間が発生し難い。例えば、拡径部521と等径部522とに代えて、第2の径R2を有する部分と、第1の径R1を有する部分とが、軸線方向に沿って交互に並ぶ構成が採用される場合には、第2の径R2を有する部分と、第1の径R1を有する部分と、の段差の部分で、取付部13と、端子接続部材の外周面と、の間に隙間が発生する可能性がある。このような隙間は、端子接続部材の固着力の低下をもたらす可能性がある。本実施形態では、取付部13と、端子接続部材50の拡径部521と、の間の隙間の発生を抑制して、端子接続部材50の抜けを抑制することができる。
【0046】
さらに、端子接続部材50の拡径部521は、外径が滑らかに変化するので、取付部13に対して局所的な応力が発生し難い。例えば、拡径部521と等径部522とに代えて、第2の径R2を有する部分と、第1の径R1を有する部分とが、軸線方向に沿って交互に並ぶ構成が採用される場合には、第2の径R2を有する部分と、第1の径R1を有する部分と、の段差の部分で、取付部13に対する局所的な応力が高くなる可能性がある。本実施形態では、取付部13に対する局所的な応力の発生を抑制して、取付部13にクラック等の破損が発生することを抑制することができる。
【0047】
A−3.第1評価試験
第1評価試験では、下の表1に示すように、15種類のプラグキャップのサンプル1〜15を作製し、端子接続部材50の固着力評価試験を行った。15種類のサンプルの間で異なる点は、端子接続部材50の寸法のみである。各サンプルで共通な寸法は、以下のとおりである。なお、端子接続部材50が挿入されるキャップ本体10の第1挿入孔11Bの内径R3は、拡径部521の第2の径R2以下の一定の径である。
拡径部521の第2の径R2:6.0mm
挿入部52の軸方向の長さY3:5.5mm
【0048】
15種類のサンプル間では、端子接続部材50の拡径部521の軸方向の長さY1と、径差ΔR(=R2−R1)と、の組合わせが互いに異なる。なお、等径部522の軸方向の長さY2は、拡径部521の軸方向の長さY1の長さに応じて変更されている(Y2=Y3−Y1)。具体的には、サンプル1〜5を含む第1サンプル群では、拡径部521の軸方向の長さY1が、2.0mmとされ、サンプル6〜10を含む第2サンプル群では、拡径部521の軸方向の長さY1が、3.0mmとされ、サンプル11〜15を含む第3サンプル群では、拡径部521の軸方向の長さY1が、5.5mmとされた。これに対応して、第1サンプル群では、等径部522の軸方向の長さY2が、3.5mmとされ、第2サンプル群では、等径部522の軸方向の長さY2が、2.5mmとされ、第3サンプル群では、等径部522の軸方向の長さY2が、0mmとされている。すなわち、第3サンプル群では、等径部522がなく、挿入部52の全体が拡径部521である。
【0049】
各サンプル群に含まれる5種類のサンプルでは、径差ΔRが互いに異なっている。具体的には、ΔRが0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mmの5種類に設定されている。なお、径差ΔRは、第2の径R2を固定し、第1の径R1を変更することによって、変更されている。
【0050】
さらに、比較形態として、拡径部521が設けられていないサンプル16を作製して、同様に、固着力評価試験を行った。すなわち、サンプル16では、径差ΔRが0mmであり、挿入部52の全体が第2の径R2の等径部となっている。
【0051】
固着力評価試験の内容について説明する。
図4は、固着力評価試験の説明図である。
図4に示すように、端子接続部材50の頭部51が外部に露出するように、端子接続部材50が取り付けられたキャップ本体10から、キャップ本体10の第2構成部12等が、取り除かれる。その後に、端子接続部材50の頭部51に対して、第2方向D2から第1方向D1に向かって、荷重を加えた。そして、端子接続部材50がキャップ本体10から外れたときの荷重(単位は、N)を、固着力として測定した。そして、サンプルの種類ごとに、10回ずつ固着力の測定を行い、測定された固着力の平均値を各サンプルの固着力とした。
【0052】
端子接続部材50の接続口CPに接続された点火プラグを、第1方向D1に端子接続部材50から引き抜くために要する力は、約200Nである。端子接続部材50の固着力が200N以上であれば、点火プラグを端子接続部材50から引き抜いたときに、端子接続部材50がキャップ本体10から抜けることを防止することができる。このために、本固着力評価試験では、200Nと、200Nより大きな280Nを、閾値として、固着力を評価した。
【0053】
具体的には、固着力が、200N未満であるサンプルの評価を「C評価」とし、固着力が、200N以上280N未満のサンプルの評価を「B評価」とし、固着力が、280N以上のサンプルの評価を「A評価」とした。B評価であれば、端子接続部材50の抜けを抑制できると言え、A評価であれば、端子接続部材50の抜けをさらに効果的に抑制できると言える。評価結果を、以下の表1および
図5に示す。
図5において、棒グラフに示された数字は、サンプル番号を示す。
【0055】
表1に示すように、拡径部521が設けられていないサンプル16は、C評価であった。拡径部521が設けられているサンプル1〜15は、いずれもB評価、あるいは、A評価であった。この結果から、拡径部521の軸方向の長さY1や径差ΔRに拘わらずに、拡径部521を設けることによって、端子接続部材50の固着力を向上して、端子接続部材50の抜けを抑制することができることが確認された。
【0056】
図5(A)〜
図5(C)、表1に示すように、径差ΔRを変化させると、拡径部521の軸方向の長さY1に拘わらずに、径差ΔR=0.2mmで固着力が最大となった。そして、径差ΔR≦0.2mmの範囲では、径差ΔRが小さくなるほど固着力が小さくなる傾向があることが解った。また、径差ΔR>0.2mmの範囲では、径差ΔRが大きくなるほど固着力が小さくなる傾向があることが解った。すなわち、径差ΔR≦0.2mmの範囲では、径差ΔRは、0.1mm以上であることが好ましく、0.2mmであることが最も好ましい。そして、ΔR>0.2mmの範囲では、径差ΔRは、0.5mm以下であることが好ましく、0.4mm以下であることが特に好ましく、0.3mm以下であることが最も好ましい。
【0057】
そして、拡径部521の軸方向の長さY1に拘わらずに、少なくとも径差ΔRが、0.1mm≦ΔR≦0.5mmを満たす場合には、B評価以上、すなわち、点火プラグを引き抜いたときにおける端子接続部材50の抜けを抑制できる200N以上の固着力を確保できることが解った。なお、拡径部521の軸方向の長さY1に拘わらずに、B評価以上の評価を得られた径差ΔRは、具体的には、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mmである。これらの数値のうちの任意の2つの値を、径差ΔRの好ましい範囲の上限と下限として採用可能である。
【0058】
さらに、拡径部521の軸方向の長さY1=2.0mm、3.0mmであり、径差ΔRが0.1mm、0.2mm、0.3mmのサンプル1〜3、6〜8は、A評価であった(
図5(A)、
図5(B))。拡径部521の軸方向の長さY1=2.0mm、3.0mmであり、径差ΔRが0.4mm、0.5mmのサンプル4、5、9、10は、B評価であった(
図5(A)、
図5(B))。そして、拡径部521の軸方向の長さY1=5.5mmであり、径差ΔRが0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mmのサンプル11〜14は、A評価であった(
図5(C))。拡径部521の軸方向の長さY1=5.5mmであり、径差ΔRが0.5mmのサンプル15は、B評価であった(
図5(C))。以上のように、拡径部521の軸方向の長さY1に拘わらずに、少なくとも径差ΔRが、0.1mm≦ΔR≦0.3mmを満たす場合には、280N以上の固着力を確保できることが解った。なお、拡径部521の軸方向の長さY1に拘わらずに、A評価以上の評価を得られた径差ΔRは、具体的には、0.1mm、0.2mm、0.3mmである。これらの数値のうちの任意の2つの値を、径差ΔRの特に好ましい範囲の上限と下限として採用可能である。
【0059】
上記評価結果の理由は、以下のように推定される。径差ΔRが過度に小さい場合には、拡径部521の外周面が、軸線方向に平行に近くなる。この結果、拡径部521の外周面が、取付部13から受ける圧力のうち、第2方向D2の成分(
図2の矢印AR2)が小さくなる。また、
図2の領域SAの体積が小さくなるので、端子接続部材50が第1方向D1に引き抜かれるときの抵抗が小さくなる。このために、径差ΔR≦0.2mmの範囲では、径差ΔRが小さくなるほど、端子接続部材50の固着力が低下すると考えられる。
【0060】
そして、径差ΔRが過度に大きい場合には、キャップ本体10の冷却による収縮に対して、
図2の領域SAの体積が過度に大きくなり、拡径部521の外周面が、取付部13から受ける圧力が小さくなる。場合によっては、拡径部521の外周面と、第1挿入孔11Bを形成する取付部13の表面とが、接触しない領域が発生する可能性もある。この結果、径差ΔR>0.2mmの範囲では、径差ΔRが大きくなるほど、端子接続部材50の固着力が低下すると考えられる。
【0061】
以上の説明から解るように、端子接続部材50の固着力を向上する観点から、拡径部521の軸方向の長さY1に拘わらずに、径差ΔRが、0.1mm≦ΔR≦0.5mmを満たすことが好ましく、径差ΔRが0.1mm≦ΔR≦0.3mmを満たすことが特に好ましい。さらに、径差ΔRが0.2mmであることが、最も好ましい。
【0062】
さらに、詳細に見ると、径差ΔRが同じサンプルを比較すると、表1から解るように、拡径部521の軸方向の長さY1が長いほど、固着力が高いことが解った。例えば、径差ΔR=0.2であるサンプル2、7、12を比較すると、固着力が高い順に、サンプル12(Y1=5.5mm)、サンプル7(Y1=3.0mm)、サンプル2(Y1=2.0mm)であった。この理由は、拡径部521の軸方向の長さY1が長いほど、拡径部521の外周面の面積が大きくなるからであると考えられる。すなわち、上述した第2方向D2の成分と、径方向内側に向かう成分と、を含む圧力を、キャップ本体10の表面から受ける面積が大きくなるからであると考えられる。すなわち、拡径部521の軸方向の長さY1は、2.0mm以上であることが好ましく、3.0mm以上であることが特に好ましく、5.5mm以上であることが最も好ましい。ただし、評価結果から解るように、拡径部521の軸方向の長さY1の個着力への影響は、径差ΔRの影響と比較すると、小さいことが解った。
【0063】
B.第2実施形態:
図6は、第2実施形態のプラグキャップの端子接続部材50Aを示す図である。第2実施形態のプラグキャップは、
図2の端子接続部材50に代えて、
図6の端子接続部材50Aが採用されている点を除いて、第1実施形態と同一である。したがって、端子接続部材50Aの構成について説明し、他の構成については説明を省略する。
【0064】
図6に示すように、端子接続部材50Aの挿入部52Aは、第1実施形態の拡径部521とは異なる拡径部521Aを備えている。端子接続部材50Aの他の構成は、第1実施形態の端子接続部材50(
図2)と同一であるので、同一の構成要素について
図2と同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0065】
拡径部521Aは、
図2の拡径部521と同様に、外径が第1方向D1側から、第2方向D2側に向かって、第1の径R1から第2の径R2まで直線的に大きくなるテーパー形状を有している。さらに、拡径部521は、外周面に、周方向と直交する方向に沿って延びる複数個の溝状の凹部57が形成されている。各凹部57は、拡径部521の軸線方向の全長に亘って、すなわち、拡径部521の第1方向D1側の端から、第2方向D2の端まで延びている。複数個の凹部57は、拡径部521の全周に亘って、略等間隔で配置されている。
【0066】
ここで、拡径部521の第2の径R2は、拡径部521の第2方向D2の端のうち、凹部57が形成されていない位置の径、すなわち、凹部57が形成されている位置とは異なる位置の径である。同様に、拡径部521の第1の径R1は、拡径部521の第1方向D1の端のうち、凹部57が形成されていない位置の径である。
【0067】
第2実施形態のプラグキャップによれば、キャップ本体10の取付部13が、拡径部521の複数個の凹部57に入り込むことによって、端子接続部材50がキャップ本体10に対して回転すること(端子接続部材50の緩みとも呼ぶ)を抑制することができる。端子接続部材50の緩みが生じると、キャップ本体10に対する端子接続部材50Aの固着力の低下し得る。この結果、キャップ本体10から端子接続部材50が抜けやすくなる可能性がある。第2実施形態のプラグキャップによれば、端子接続部材50の緩みを抑制することによって、より効果的に、端子接続部材50の抜けを抑制することができる。
【0068】
さらに、詳しく説明する。
図7は、第1の軸線CL1と直交する面CS(
図6)で、拡径部521Aを切断した断面図である。各凹部57の幅Wは、これに限られるものではないが、取付部13が適切に入り込み、端子接続部材50の緩みを抑制できるように、例えば、0.05mm以上0.5mm以下とされることが好ましい。また、凹部57の深さDは、これに限られるものではないが、例えば、0.05mm以上0.5mm以下とされることが好ましい。
【0069】
C.変形例:
(1)
図8は、第2実施形態のプラグキャップの端子接続部材の変形例を示す図である。
図6の凹部57は、周方向と直交する方向に沿って延びる形状を有しているが、これに限られない。例えば、
図8(A)に示す端子接続部材50Bの拡径部521Bの外周面に形成された複数個の凹部57Bは、周方向に直交する方向に沿って延びる複数個の溝と、周方向に沿って延びる複数個の溝と、を含んでいる。また、
図8(B)に示す端子接続部材50Cの拡径部521Cの外周面に形成された複数個の凹部57Cは、周方向に対して斜めに延びている。また、
図8(C)に示す端子接続部材50Dの拡径部521Dの外周面に形成された複数個の凹部57Dは、周方向に対して斜めに延びる複数個の溝と、当該溝に対して交差するとともに周方向に対して斜めに延びる複数個の溝と、を含んでいる。周方向に対して斜めに延びる溝は、端子接続部材50の回転に対する抵抗となるとともに、端子接続部材50の軸線方向への移動に対する抵抗となる。この結果、キャップ本体10からの端子接続部材50の抜けを効果的に抑制し得る。
【0070】
また、上述複数個の凹部57、57B〜57Dは、拡径部521A〜521Dの外周面の全体に亘って配置されているが、外周面の一部の領域にのみ配置されていても良い。例えば、拡径部521A〜521Dの外周面のうちの第2方向D2側の半分の領域にのみ、複数個の凹部57、57B〜57Dが配置されても良い。
【0071】
以上を一般的に言えば、拡径部に形成される凹部は、拡径部の外周面のうちの少なくとも一部に、周方向と交差する方向に延びるように形成されていればよい。
【0072】
(2)上記各実施形態では、プラグ接続具の一例として、プラグキャップ100(
図1)を例示しているが、これに限られない。例えば、プラグ接続具は、プラグキャップ100が端部に接続されたプラグコード(キャップ付きのプラグコード)として実現されても良い。
【0073】
(3)
図1のプラグキャップ100の具体的な構成は、一例であり、これに限られない。例えば、抵抗体30は、省略されても良い。また、抵抗体30が端子接続部材50の第2方向D2側の端部に固定され、抵抗体30とコード取付ねじ20との間にバネ40が配置されても良い。
【0074】
(4)また、
図1のプラグキャップ100を構成する部材の材質は、上記で例示した材料に限られない。例えば、抵抗体30は、セラミックスに限らず、巻線抵抗体でも良い。また、端子接続部材50、コード取付ねじ20、バネ40は、各種金属、導電性樹脂、導電性セラミックスなど様々な材質が用いられ得る。キャップ本体10は、不飽和ポリエステル樹脂やフェノール樹脂など熱硬化性樹脂で形成されている。これに代えて、キャップ本体10は、例えば、PPS樹脂などの熱可塑性樹脂など様々な絶縁性の材質で作製されても良い。
【0075】
以上、実施形態、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した本発明の実施形態、変形例は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。