特許第5873478号(P5873478)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5873478ニア・ネット・シェイプの溶融シリカ物品およびその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873478
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】ニア・ネット・シェイプの溶融シリカ物品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 8/04 20060101AFI20160216BHJP
   C03B 20/00 20060101ALI20160216BHJP
   C03C 3/06 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   C03B8/04 Z
   C03B20/00 Z
   C03C3/06
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-504961(P2013-504961)
(86)(22)【出願日】2011年4月8日
(65)【公表番号】特表2013-523598(P2013-523598A)
(43)【公表日】2013年6月17日
(86)【国際出願番号】US2011031735
(87)【国際公開番号】WO2011130113
(87)【国際公開日】20111020
【審査請求日】2014年4月8日
(31)【優先権主張番号】61/324,502
(32)【優先日】2010年4月15日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】ハウトフ,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】トーマス,ウィンザー ピー
【審査官】 増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭48−020404(JP,B1)
【文献】 特開平08−026757(JP,A)
【文献】 特表平10−502324(JP,A)
【文献】 特表平07−507034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 5/00 − 5/44
C03B 8/00 − 8/04
C03B 19/12 −20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニア・ネット・シェイプを有する溶融シリカガラス物品を製造する方法において、
a. 前記ニア・ネット・シェイプに相補的な形状を有すると共に、高周波のサセプタとして働くマンドレルを提供する工程、
b. シリカスート粒子を、ケイ素含有前駆体の火炎加水分解により、またはケイ素含有前駆体の燃焼により、提供する工程、
c. 前記シリカスート粒子を前記マンドレル上にその場で堆積させて、該シリカスート粒子からなるシリカスート体を形成する工程、
d. 前記マンドレルを約1200℃から約1900℃までの範囲の温度に誘導加熱する工程、および
e. 前記マンドレル上の前記シリカスート体をその場で焼結して、前記溶融シリカガラス物品を形成する工程、
を有してな
前記シリカスート粒子を前記マンドレル上に堆積させる工程が、圧縮下にある外層を前記シリカスート体上に堆積させる工程を含む、方法。
【請求項2】
前記シリカスート粒子を前記マンドレル上に堆積させる工程が、第1の組成を有するシリカスート粒子の第1の層を前記マンドレル上に堆積させ、前記第1の組成とは異なる第2の組成を有するシリカスート粒子の第2の層を前記第1の層上に堆積させる各工程を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1の組成および前記第2の組成の内の一方が、少なくとも1種類のドーパントを含み、該少なくとも1種類のドーパントが、チタニア、ゲルマニア、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、およびそれらの組合せの内の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記シリカスート体を焼結する工程が、前記マンドレルと前記シリカスート体との間の界面で該シリカスート体を加熱して、前記界面で前記シリカスート粒子を焼結する工程を含むことを特徴とする請求項1からいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記シリカスート粒子を前記マンドレル上に堆積させる工程が、第1の密度を有するシリカスート粒子の第1の層を前記マンドレル上に堆積させ、前記第1の密度とは異なる第2の密度を有するシリカスート粒子の第2の層を前記第1の層上に堆積させる各工程を含むことを特徴とする請求項1からいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
互いに平行な内面と外面を有し、前記外面が圧縮下にある外層を有する、溶融シリカガラス物品であって、
前記溶融シリカガラス物品が、前記外面と前記内面に対して平行な多数の層を含み、該多数の層が、互いに異なる組成または密度を有する隣接する層を含み、前記多数の層の少なくとも一部分は、少なくとも1種類のドーパントを含み、該少なくとも1種類のドーパントは、チタニア、ゲルマニア、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、およびそれらの組合せの内の少なくとも1つを含む、溶融シリカガラス物品。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、米国法典第35編119条(e)の下で、2010年4月15日に出願された米国仮特許出願第61/324502号の優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、ニア・ネット・シェイプまたはネット・シェイプの溶融シリカガラス物品に関する。特に、本開示は、ミサイルや他の発射体のためのレドーム(radomes)および高温での低熱膨張と高強度を有するシリコンウェハー製造用坩堝などの他の溶融シリカガラス物品に関する。
【背景技術】
【0003】
極超音速ミサイルは、マッハ5〜7の範囲の速度およびそれより高速で大気中を移動する。そのようなミサイルのノーズコーン(「レドーム」とも称される)は、レーダおよび例えば、赤外(IR)センサなどの他の標的センサを収容する。そのような速度では、ミサイル構成部材は、数分間に亘り約1400℃以上の温度に曝露され得る。レドームは、そのような条件下で電気的および熱的性能を維持しなければならない。
【0004】
レドームは、低い熱膨張係数を有するPYROCERAM(登録商標)(コーニングガラスコード9606)などのセラミックガラスから製造されてきた。しかしながら、そのような材料は、より高い性能(例えば、増加した速度、耐候性)に関連する機械的要件をもはや満たさない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧縮、回転成形、または鋳込み成形された溶融シリカスートも、レドーム用材料として評価されてきた。そのような材料は、「PYROCERAM」よりも高い熱許容度および低い伝送損失を有するが、透水性のために、その中に囲まれる電子部品を保護する、そのような材料から製造されたレドームの能力が限られてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
レドームまたは坩堝やシリコンチップ加工に使用される他の「器具(furniture)」のような三次元物体などのニア・ネット・シェイプまたはネット・シェイプの溶融シリカガラス物品が提供される。その物品は、シリカスートをマンドレル上に堆積させて、溶融シリカガラス物品の形状に対応する形状を有するスート体を形成することによって形成される。いくつかの実施の形態において、マンドレルは、溶融シリカガラスを形成するためにそのマンドレル上に堆積した際にシリカスートを固結または焼結するのに十分な温度に誘導加熱される。溶融シリカガラス物品は、圧縮下にある外層および/または物理的、機械的、電気的、および/または光学的性質を変えるまたは性質に影響を与えることのできる様々なドーパントを含むまたは異なる密度を有する多層を備えてもよい。
【0007】
したがって、本開示の1つの態様は、ニア・ネット・シェイプを有する溶融シリカガラス物品を製造する方法を提供することにある。この方法は、ニア・ネット・シェイプに相補的なまたは対応する形状を有するマンドレルを提供する工程;シリカスート粒子を提供する工程;およびシリカスート粒子を堆積させて、シリカスート粒子を含むシリカスート体を形成し、マンドレル上のシリカスート体をその場で少なくともある程度焼結して、溶融シリカガラス物品を形成する工程を有してなる。
【0008】
本開示の第2の態様は、溶融シリカガラス物品を提供することにある。溶融シリカ物品は、互いに平行な内面と外面を有し、外層は圧縮下にある。
【0009】
本開示の第3の態様は、ニア・ネット・シェイプを有する溶融シリカガラス物品を成形するためのシステムを提供することにある。このシステムは、誘導加熱源;誘導加熱源に誘導連結されたサセプタ・マンドレルであって、ニア・ネット・シェイプに対応する形状を有するサセプタ・マンドレル;およびシリカスートをマンドレルに向けるように方向付けられたシリカスート源を備えている。
【0010】
これらと他の態様、利点、および顕著な特色は、以下の発明を実施するための形態、付随する図面、および添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1a】第1のレドームの断面図
図1b】第2のレドームの断面図
図1c】第3のレドームの断面図
図2】ニア・ネット・シェイプのシリカガラス物品を形成するためのシステムの説明図
図3】ニア・ネット・シェイプの溶融シリカ物品を製造する方法の流れ図
図4】ニア・ネット・シェイプの溶融シリカ物品を焼結させる方法の流れ図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の説明において、図面に示されたいくつかの図に亘り、同様の参照文字が、同様のまたは対応する部品を示す。別記しない限り、「上」、「下」、「外側」、「内側」などの用語は、便宜上の単語であり、制限用語として解釈すべきではないことも理解されよう。その上、ある群が、複数の要素とその組合せの群の少なくとも1つを含むと記載されているときはいつでも、その群は、個々にまたは互いの組合せのいずれかで、列記されたそれらのいくつの要素を含む、から実質的になる、またはからなるものであってもよいことが理解されよう。同様に、ある群が、複数の要素とその組合せの群の少なくとも1つからなると記載されているときはいつでも、その群は、個々にまたは互いの組合せのいずれかで、列記されたそれらのいくつの要素からなってもよいことが理解されよう。別記しない限り、値のある範囲は、列記されている場合、その範囲の上限と下限の両方を含む。
【0013】
広く図面を参照し、特に図1を参照すると、図示は、特定の実施の形態を記載する目的のためであり、本開示または添付の特許請求の範囲をそれらに制限することを意図していないことが理解されよう。図面は、必ずしも、一定の比率で描かれておらず、図面のある特徴およびある図形は、明瞭さと簡潔さの利益のために、縮尺で、または図式的に、誇張して示されているかもしれない。
【0014】
レドームには、持続期間に亘る高温能力、全天候耐久性、および電気的および/または熱的性能特性が必要である。広帯域レドームは、広帯域検出のための多数のセンサ、並びにより効果的な挟帯域追尾装置を収容し得る。そのようなレドームにより、例えば、多数の追尾装置の使用またはレドームの交換や再設計を必要とせずに代わりの追尾装置の将来の使用が可能になる。
【0015】
レドームの設計において関心が持たれる電気的性質としては、伝送損失、帯域幅、および偏波が挙げられる。空力的要因としては、抗力、加熱、およびアブレーティブ特性が挙げられるのに対し、機械的懸念としては、質量、耐衝撃性、振動、衝撃抵抗、および材料の静的強度が挙げられる。材料の選択は、誘電損失、動作温度、強度、衝撃抵抗、および製造許容差に影響を与え得る。高周波(RF)サイン、IRサイン、および光学的観測要因も、レドーム設計において役割を果たす。環境の観点から、雨による腐食、雹または鳥との衝突に耐える能力、静電気放電、落雷、温度、水分、流体または菌類、および熱衝撃が、たびたび検討されている要因である。最後に、開発、製造設備、および試験に関連する費用を含む費用の考慮も、レドームの設計および配備に影響し得る。
【0016】
溶融シリカ製坩堝および当該技術分野に公知の他の「器具」が、シリコンウェハーの製造に使用されている。そのような物品は、高純度のものであり、典型的に、切断され、組み立てられ、成形され、または圧縮されて、溶融シリコンを保持できる形状を形成する。
【0017】
したがって、ネット・シェイプまたはニア・ネット・シェイプの溶融シリカガラス物品が提供される。溶融シリカガラス物品は、高温安定性、化学的不活性、および低い熱膨張が望ましい用途に使用することができる。様々な実施の形態において、溶融シリカガラス物品は、ミサイルなどの発射体のためのレドーム、シリコンなどの半導体材料を高温加工するための器具(例えば、坩堝)、ウェハー・ステッパ器具、極紫外視線照射用途のための収容材料などとして働く。
【0018】
ここに用いたように、「溶融シリカ」という用語は、完全に緻密化された溶融シリカガラスの密度の約50%から約100%の密度を有するシリカまたはドープトシリカを称する。
【0019】
ある実施の形態において、溶融シリカガラス物品は、レドーム;すなわち、レーダ・アンテナ、通信アンテナ、センサなどを収容するために使用される強力で薄いシェルである。特別な実施の形態において、ガラス物品は、ミサイルなどの発射体のためのレドームまたはノーズコーンである。様々な実施の形態において、レドームは、電波、赤外線などの、異なる波長および周波数の電子照射線に対して透過性である。第1のレドームの断面図が図1aに示されている。以下の議論では、レドームの特性および構造が記載されるが、その記載は、以下に限られないが、以下に記載されたものなどの他のネット・シェイプまたはニア・ネット・シェイプの溶融シリカガラス物品にも等しく適用されることが理解されよう。第1のレドーム100は、互いに対して実質的に平行な内面110と外面120を有し、典型的に、上述した通信またはセンサ設備150を収容する。ある実施の形態において、外面120は、特に室温より高い(すなわち、約25℃より高い)温度で、圧縮下にある外層122から構成される。外層122の圧縮は、外層122に10質量%までのチタニア(TiO2)をドープすることによって行うことができ、レドーム100の残りの内部の張力により釣り合わされる。チタニアの添加により、ゼロに近いまたは等しい熱膨張係数(CTE)を有する外層122が実証される。ミサイルが高速に近づきその速度を維持するときに、外層122中のTiO2の存在により、外面120または外層122と第1のレドーム100の本体の残りの部分との間のCTEの差により、外層122の厚さと等しい層深さ(DOL)まで外面120に圧縮応力が生じる。外層122の厚さにより、第1のレドーム100の割れや掻き傷に対する抵抗の度合いが決まる。
【0020】
いくつかの実施の形態において、溶融シリカガラス物品は、図1bの第2のレドーム102に示されるように、互いに実質的に平行な多層を含む。溶融シリカガラス物品/レドーム102の組成は、ある層から次の層までと、シリカガラス物品の厚さに亘りわずかに異なっていて差し支えない。例えば、第1の層130は、以下に限られないが、チタニア、ゲルマニアおよびその酸化物、金属セレン化物または硫化物(例えば、ZnSまたはZnSe)、それらの組合せなどのドーパントを少なくとも1種類含んで差し支えないが、第2の層132は、そのようなドーパントを含まない、第1の層130中に存在するものとは異なるドーパントを含有する、または第1の層130と同じ組成を有することも可能である。ある非限定的例において、第2のレドーム102は、内面110と外面120に対して実質的に平行な多層を含む。誘電定数、伝送損失、帯域幅、および偏波などのシリカガラス物品の物理的、光学的、および電気的性質は、シリカガラス物品の組成をその厚さに亘りおよび/または層から層まで調節することによって、変えることができる。シリカガラス製の第2のレドーム102の赤外線(IR)透過率は、例えば、レドーム102の選択された領域にゲルマニアを加えることによって、増加させることができる。
【0021】
いくつかの実施の形態において、ここに記載された溶融シリカガラス物品は、図1cの第3のレドーム104について示されるように、異なる密度の多層を備えてもよい。第3のレドーム104は、外層140、中間層144、内層142を含む。外層140と内層142は、ある程度焼結された多孔質溶融シリカからなる。外層140と内層142は、同程度まで焼結され、それゆえ、互いに実質的に等しい密度と気孔率を有してよい。あるいは、外層140と内層142は、異なる程度に焼結され、それゆえ、互いに異なる密度と気孔率を有してもよい。内層142と外層140は、完全に焼結された中間層144により隔てられている。中間層144は、通信またはセンサ設備(図示せず)を水分、埃などから保護するための「気密」層として働く。第3のレドーム104は、第3のレドーム104の取付強度を提供するために第3のレドーム104の基部148に複合プラグ146をさらに備えてもよい。他の実施の形態において、溶融シリカガラス物品は、例えば、図2の縦軸Aなどの、ガラス物品の少なくとも1つの軸に沿って変動する密度を有してもよい。
【0022】
ここに記載されたニア・ネット・シェイプまたはネット・シェイプの溶融シリカガラス物品を製造するための方法およびシステム/装置も提供される。この方法は、ニア・ネット・シェイプに相補的なまたは対応する形状を有するマンドレルを提供する工程;シリカスート粒子を提供する工程;およびシリカスート粒子を堆積させて、シリカスート粒子を含むシリカスート体を形成し、マンドレル上のシリカスート体をその場で少なくともある程度焼結して、溶融シリカガラス物品を形成する工程を有してなる。図2に示された実施の形態において、装置/システム200は、誘導コイル220、マンドレル210(ここでは「標的/基体」とも称される)、および少なくとも1つのバーナ300を含む。図2に示された実施の形態において、マンドレル210は、誘導コイル220と少なくとも1つのバーナ300との間に配置されている。
【0023】
マンドレル210が、溶融シリカ物品100の所望の形状に対応するまたは相補的な形状を有する;すなわち、ガラス物品100は、形成されたときに、マンドレル210の外面212の形状または輪郭をとる。いくつかの実施の形態において、マンドレル210は、当該技術分野に公知の高周波(RF)誘導加熱源/電源装置などの誘導加熱源/電源装置(図示せず)の誘導コイル220に誘導結合することができる。ある実施の形態において、マンドレル210はグラファイトから形成されるが、約1200℃超の温度で安定である、セラミック材料などの他のサセプタ材料を使用しても差し支えない。いくつかの実施の形態において、マンドレル210は、マンドレル210上に溶融シリカの多層を均一に形成できるように、軸Aの周りで回転可能である。ある非限定的例において、マンドレル210は、毎分60回転までの速度で軸Aの周りで回転可能である。あるいは、マンドレル210は、当該技術分野に公知の手段によって、水平におよび/または垂直に平行移動可能である。
【0024】
少なくとも1つのバーナ300は、シリカスートおよび/またはドープトシリカスートが燃焼または火炎加水分解いずれかによって形成される火炎315を発生させるための当該技術分野に公知のバーナである。いくつかの実施の形態において、少なくとも1つのバーナ300は、シリカスートによるマンドレル210の被覆率を最大にし、マンドレル上にシリカスートを確実に均一に堆積させるために当該技術分野で公知のバーナのアレイまたは多数のアレイを含む。少なくとも1つのバーナ300は、酸化剤、燃料、およびケイ素含有(およびいくつかの実施の形態においては、ドーパント含有)前駆体を送達し、火炎315を発生させることができ、そこで、ケイ素含有前駆体およびドーパント含有前駆体が火炎315内で加水分解されるか、または燃焼されて、シリカスートが形成され、次いで、そのシリカスートがマンドレル210上に堆積される。少なくとも1つのバーナ300は、火炎315内で形成されたシリカスートをマンドレル210の表面212に向けるように方向付けられており、シリカスートをマンドレル210の長手方向に沿って均一に堆積させるように平行移動できる。装置/システム200は、必要に応じて、マンドレル210、誘導コイル220、および少なくとも1つのバーナ300を収容する格納容器または格納槽400を備えることもできる。ガス/酸素外部バーナ320などの、少なくとも1つの追加の密度制御装置を必要に応じて設けてもよい。格納容器400により、シリカスートのマンドレル210上の堆積を制御された環境内−例えば、低水分雰囲気内−で行うことができ、それゆえ、形成中の溶融シリカガラス物品100の不慮の汚染が避けられる。マンドレル210を誘導加熱することのできるそれらの実施の形態において、誘導加熱源/電源装置は、いくつかの実施の形態において、十分な電力を誘導コイル220に供給して、マンドレル210の表面212を、マンドレル210の表面上に堆積されるシリカスート粒子を瞬時に焼結させるのに十分な温度に誘導加熱する。ある非限定的例において、誘導加熱源/電源装置は7.5kWの電源装置であり、誘導コイルは形状が円錐状である。シリカスート粒子の瞬時の焼結をその場で行うために、サセプタ・マンドレル210は、いくつかの実施の形態において、典型的に、約1200℃から約1900℃までの範囲の温度に加熱される。
【0025】
溶融シリカ物品100を製造する方法は、先に記載したように、最初にマンドレル210を提供する工程を含む。次いで、マンドレル210は、マンドレル210の表面212上に堆積されるシリカスート粒子を瞬時に焼結するまたは固結させるのに十分な温度(例えば、約1200℃から約1900℃までの範囲)に必要に応じて加熱される。しかしながら、いくつかの実施の形態において、堆積温度および随意的な追加の外部加熱(例えば、バーナ320による)は、マンドレル210を誘導により、または他の様式で加熱せずに、所望の密度を達成するのに十分である。マンドレル210はその温度に必要に応じて加熱されるが、シリカスート粒子310は、マンドレル210の表面212上に提供されて、いくつかの実施の形態において、シリカスート体を形成する。他の実施の形態において、堆積されたシリカスート粒子は表面212上で瞬時に焼結されるかまたは固結されて、マンドレル210上に溶融シリカガラス物品100が形成される。シリカスートの続いての層が、固結されたガラス上に堆積され、固結されて、所望の厚さを有するガラス物品100が形成される。
【0026】
シリカスートは、以下に限られないが、ケイ素含有前駆体の燃焼および/または火炎加水分解、化学的気相成長法などを含む当該技術分野に公知のプロセスを使用して製造し、マンドレル上に堆積させることができる。ある非限定的例において、多孔質シリカスートは、外付け法(OVD)および多孔質スートプリフォームを形成する中間工程なく、シリカスート粒子がマンドレル上のその場で透明ガラスに直接形成される、ダイレクト・ツー・ガラス法によってマンドレル上に堆積させることができる。
【0027】
このダイレクト・ツー・ガラス法において、蒸気形態にある、または噴霧液体としてケイ素含有化合物を含むガス流が提供され、少なくとも1つのバーナ300によって発せられる火炎315内に導入される。ケイ素含有化合物は、火炎315を通過しながら、酸化(燃焼)による熱分解または火炎加水分解によってシリカスートに転化されて、溶融シリカスートの非晶質粒子を形成し、これがマンドレル210上に堆積される。
【0028】
当該技術分野に公知のそれらのバーナ300、酸化剤および燃料と同様に、ハロゲン化ケイ素、有機ケイ素化合物などの当該技術分野で公知の様々なケイ素前駆体化合物を使用して、これらのプロセスにおいてシリカガラスを製造することができる。ケイ素含有前駆体の例としては、以下に限られないが、ハロゲン化ケイ素(例えば、SiCl4)およびヘキサメチルジシロキサン、ポリメチルシクロシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、その混合物などのポリメチルシロキサンを含む、ハロゲン化物不含有のシクロシロキサンが挙げられる。ここに記載されたこれらのプロセスは、いくつかの実施の形態において、プラズマ支援されていても差し支えない。
【0029】
いくつかの実施の形態において、シリカスートを堆積させてシリカスート体を形成し、このシリカスート体を焼結して、加熱されたマンドレル210上に溶融シリカ物品100を形成する工程は、マンドレル210上に溶融シリカの多数の層を順次に堆積して、焼結する各工程を含む。ここに前述したように、これらの多数の層130,132は、互いに対して、またガラス物品の内面110と外面120に対して実質的に平行である。いくつかの実施の形態において、異なる組成を有する溶融シリカの隣接する層は、シリカスート310を生成するために使用される気相堆積バーナ300中に様々なドーパントの前駆体を導入することによって形成される。様々なドーパントの前駆体の非限定的例としては、所望のドーパントを含むここに前述されたものなどのハロゲン化物(例えば、TiCl4、GeCl4)および有機ケイ素化合物が挙げられる。あるいは、硫化亜鉛および/またはセレン化亜鉛などのドーパントは、バーナ300を通じて、スート粒子310の流れへの導入により製造中に、ガラス物品100に、または製造中にガラス物品100の表面に直接、蒸気形態で提供できる。追加のシリカスート粒子が堆積され、焼結されて、溶融シリカガラス物品を形成するときに、多数の層130,132が溶融シリカガラス物品の本体へと固結される。
【0030】
ある実施の形態において、シリカスート体を堆積させ、焼結して、溶融シリカ物品100を形成する工程は、圧縮下にある外層(図1の12)を堆積させる工程を含む。そのような外層は、例えば、外層に約10質量%までのチタニアをドープすることによって形成され、これは、チタン含有前駆体(例えば、TiCl4などのハロゲン化チタン)を、バーナ300により発せられる燃焼火炎315中に導入することによって、達成できる。
【0031】
シリカスートまたはシリカスート体を堆積し、焼結して溶融シリカ物品100を形成した後、溶融シリカ物品100およびマンドレル210は、能動的または受動的に冷却され、溶融シリカ物品100はマンドレル210から取り外される。次いで、溶融シリカ物品100にはさらなる仕上げを行うことができ、その仕上げとしては、例えば、その物品の表面上にある微小割れまたは微小傷(microflaw)を閉じるための局所的なレーザ処理などの当該技術分野で公知の仕上げ工程が挙げられる。
【0032】
ニア・ネット・シェイプのガラス物品を堆積させる例示の方法500の流れ図が図3に示されている。第1の工程510において、マンドレル210(図2)などの三次元標的が提供され、回転可能ステージ上に取り付けられる(工程520)。取り付けられた標的は回転させられつつ(工程530)、スート流が提供され、標的に向けられる(工程540)。スート流は、標的が回転されながら、標的を横切って横断する(工程550)。いくつかの実施の形態において、バーナ300から標的(図2のマンドレル210)までの距離は、標的の形状に基づいてスート密度を調節するように調節または選択される(工程560)。工程530〜560は、所望の厚さの三次元スート体が基体上に堆積されるまで、行われる−すなわち、スート流の多数回の横断/通過を行ってよい(工程570)。標的上に堆積される材料の組成、厚さ、堆積速度、および/または密度は、横断速度、バーナから標的までの距離、およびバーナの流れなどの堆積パラメータを変えることによって変更されるであろう。
【0033】
標的/基体610上に堆積されたシリカスート体を焼結する3つの方法600を示す流れ図が図4に示されている。第1の方法(図4のa)において、シリカスート体は、シリカスート体を界面から加熱して、基体表面からシリカスート体を放出させることによつて焼結される(工程612)。標的/基体は、工程612において、誘導加熱され、誘導コイルに対して回転させられる(工程614)。シリカスート体は標的/基体に対して回転させられる(工程616)。スート体の焼結が標的/基体の面で行われ、スート体の自由表面に向かって外側に進むまで、電力が誘導コイルに供給される(工程618)。次いで、焼結体は、例えば、焼結体をねじって引っ張ることにより、標的/基体から取り外してもよい(工程640)。シリカスート体を焼結して溶融シリカ物品を形成する工程は、いくつかの実施の形態において、所望のレベルの気孔率を維持するように部分的であってよいのに対し、他の実施の形態においては、溶融シリカ物品は完全に焼結されていてもよい。三次元形状体を焼結する主な方法は、標的/基体に隣接するシリカスートが最初に焼結され、焼結フロントが、堆積されたシリカスート体の自由面に向かって外側に進行するように標的/基体を加熱することである。焼結フロントのこの外側への進行により、シリカスート体に捕捉されたガスを逃がす自由通路が提供される。
【0034】
別の実施の形態において(図4の方法b)、スート体は、スート体を、例えば、水素/酸素トーチなどの熱源によって加熱することにより、内側に−すなわち、自由面から標的/基体との界面へ−焼結される(工程622)。標的/基体は、トーチにより発せられた火炎に対して回転させられ(工程624)、火炎はシリカスート体を横切って横断させられる(工程626)。次いで、焼結体は、例えば、焼結体をねじって引っ張ることによって、標的/基体から取り外してもよい(工程640)。工程626は、シリカスート体の全体が、標的/基体から取り外される前に焼結されるまで、必要に応じて繰り返してもよい(工程640)。自由表面でシリカスート体を最初に焼結することによって、自由表面の直ぐ下にあるシリカスート体内にガスが捕捉される。これらの捕捉されたガスは、シリカスート体を全体に亘り焼結しようとした場合、焼結体内に気泡を形成する。この方法は、内部スート構造を備えたガラス質表面を有するニア・ネット・シェイプを得るために使用してもよい。
【0035】
さらに別の実施の形態において(図4の方法c)、シリカスート体は、抵抗炉またはオーブン内でシリカスート体を全体加熱することによって焼結される(工程632)。ここでは、シリカスート体は、環境から全ての酸素を除去するために不活性雰囲気中または真空中いずれかで焼結され(工程634)、その炉は、焼結温度まで加熱されるまたは「昇温され(ramped)」、シリカスート体が焼結されるまでその温度に保持され、次いで、炉の温度を低下させることによって、冷却される(工程636)。次いで、この焼結体は、標的/基体から取り外してもよい(工程640)。
【0036】
溶融シリカガラス物品および特にここに記載された溶融シリカガラスレドームは、そのような用途に現在使用されている回転成形されたまたは鋳込み成形された溶融シリカおよびセラミックガラスなどの材料のものより優れた高温性能を有する。ゼロに近づくまたは等しいCTEを有する外面または表面を提供することによって、熱衝撃破損がなくなる。シリカスートの気相成長法により、組成を調節することができ、所望であれば、溶融シリカ物品の形成中により正確に変更することができ、マンドレル210の使用により、焼結の程度を厚さの関数として調節することが可能になり、それゆえ、回転成形されたまたは鋳込み成形された材料のものを超えて設計の融通性が増加する。
【0037】
典型的な実施の形態を説明の目的のために述べてきたが、先の記載は、本開示または添付の特許請求の範囲への制限と考えるべきではない。したがって、様々な改変、適用、および変更は、本開示または添付の特許請求の範囲および精神から逸脱せずに、当業者に見出されるであろう。
【符号の説明】
【0038】
100,102,104 レドーム
110 内面
120 外面
122,140 外層
130 第1の層
132 第2の層
142 内層
144 中間層
150 センサ設備
200 装置/システム
210 マンドレル
220 誘導コイル
300 バーナ
310 シリカスート粒子
図1(a)】
図1(b)】
図1c
図2
図3
図4