(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873484
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】ドロネダロン及びその塩の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 307/80 20060101AFI20160216BHJP
A61K 31/343 20060101ALN20160216BHJP
A61P 9/06 20060101ALN20160216BHJP
【FI】
C07D307/80
!A61K31/343
!A61P9/06
【請求項の数】21
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-513534(P2013-513534)
(86)(22)【出願日】2011年6月3日
(65)【公表番号】特表2013-530959(P2013-530959A)
(43)【公表日】2013年8月1日
(86)【国際出願番号】CN2011075255
(87)【国際公開番号】WO2011153923
(87)【国際公開日】20111215
【審査請求日】2014年5月7日
(31)【優先権主張番号】201010195733.7
(32)【優先日】2010年6月9日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510166892
【氏名又は名称】ジエンス ヘンルイ メデイシンカンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU HENGRUI MEDICINE CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100153394
【弁理士】
【氏名又は名称】謝 卓峰
(74)【代理人】
【識別番号】100116311
【弁理士】
【氏名又は名称】元山 忠行
(72)【発明者】
【氏名】ホウ シエンシャン
(72)【発明者】
【氏名】チェン ヨンジアン
【審査官】
榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−316554(JP,A)
【文献】
X. HE et al.,Chinese Journal of Pharmaceuticals,2010年 2月,Vol.41, No.2,p.148-151
【文献】
IP.com journal,2009年,IP.com Number:IPCOM000190391D,p.1-9
【文献】
IP.com journal,2010年 2月,IP.com Number:IPCOM000193200D,p.1-6
【文献】
A. KAMAL et al.,Tetrahedron Letters,2008年,Vol.49,p.348-353
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 307/80
A61K 31/343
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5−アミノ−2−ブチル−3−(4−[3−(ジブチルアミノ)プロポキシ]ベンゾイル)ベンゾフランとメタンスルホニルクロリドとを触媒非存在下で反応させ、ドロネダロン塩酸塩を得ることを特徴とする、ドロネダロン塩酸塩の製造方法であって、該触媒が、5−アミノ−2−ブチル−3−(4−[3−(ジブチルアミノ)
プロポキシ]ベンゾイル)ベンゾフランとメタンスルホニルクロリドとの反応において触媒的な作用を有する触媒を指し、5−アミノ−2−ブチル−3−(4−[3−(ジブチルアミノ)プロポキシ]ベンゾイル)ベンゾフランとメタンスルホニルクロリドとの反応が1種の溶媒又は2種以上の混合溶媒で実施され、前記の溶媒が、ニトリル、ケトン、ハロゲン化炭化水素、エーテル及び芳香族炭化水素からなる群より選ばれ、前記の混合溶媒が、同一又は異なって、ニトリル、ケトン、ハロゲン化炭化水素、エーテル及び芳香族炭化水素の2種以上の溶媒からからなる群より選ばれることを特徴とする、ドロネダロン塩酸塩の製造方法。
【請求項2】
ニトリルが、C2〜C6脂肪族ニトリルからなる群より選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ニトリルが、アセトニトリルである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ケトンが、C3〜C6脂肪族ケトンからなる群より選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ケトンが、アセトンである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ハロゲン化炭化水素が、C1〜C6脂肪族ハロゲン化炭化水素からなる群より選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ハロゲン化炭化水素が、ジクロロメタンであることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
エーテルが、直鎖及び環状エーテルからなる群より選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
直鎖エーテルが、C1〜C6脂肪族エーテルからなる群より選ばれ、環状エーテルが、C2〜C4脂肪族環状エーテルからなる群より選ばれることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
直鎖エーテルが、1,2−ジメトキシエタンである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
環状エーテルが、テトラヒドロフランである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
芳香族炭化水素が、置換及び非置換C6〜C10芳香族からなる群より選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
芳香族炭化水素が、トルエンである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
方法が、得られたドロネダロン塩酸塩を精製する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
ドロネダロン塩酸塩の精製に使用される溶媒が、アセトンと水との混合物であることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
アセトンと水との混合物が、30:1〜5:1(v/v)の比率にあることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の手順を含むことを特徴とする、ドロネダロン塩酸塩の製造方法。
【請求項18】
方法が、さらに、ドロネダロン塩酸塩をアルカリ性溶液による処理を経由してドロネダロンに変換する工程、又は、他の製薬学的に許容される塩にさらに変換する工程を含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
アルカリ性溶液において使用されるアルカリが無機アルカリであることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
無機アルカリが、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムからなる群より選ばれることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
無機アルカリが、炭酸水素ナトリウムである、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環器疾患の治療に使用される2−ブチル−3−(4−[3−(ジブチルアミノ)プロピル]ベンゾイル)−5−メタンスルホニルアミノ−ベンゾフラン(ドロネダロン)及びその塩の新規製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドロネダロン(SR33589)は、不整脈治療において効力のある新規薬物としてのベンゾフラン誘導体である。ドロネダロンは化学的にはアミオダロンに類似しているが、ヨウ素を持たないので、アミオダロンより脂溶性が低い。ドロネダロンはアミオダロンの治療効果を保持するのみならず、アミオダロンの心外性有害反応がない。ドロネダロンは、より安全で、患者に対する忍容性がより高く、不整脈治療においてアミオダロンの代替物のひとつとして期待されるようになっている。
【0003】
社会的近代化の過程がより速く動くとともに、人々はより強くなる社会的圧力に耐えねばならず、中国における循環器疾患における患者数はますます増加している。循環器疾患は死亡原因の上位10位のひとつに挙げられている。したがって、ドロネダロンの開発は大きな経済的利益と社会的利益をもたらす。ドロネダロンは式[I]で表される:
【0004】
【化1】
式[I]
【0005】
米国特許第5223510A号明細書(特許文献1)には、スキーム1に示されるドロネダロンの製造方法が開示されている。この特許において、ドロネダロンは、2−ブチル−5−ニトロベンゾフランをアシル化、加水分解、O−アルキル化及び還元を経由して5−アミノ−2−ブチル−3−(4−[3−(ジブチルアミノ)プロポキシ]ベンゾイル)ベンゾフラン(化合物A)に変換し;次に化合物Aを、触媒としてトリエチルアミンの存在下でメタンスルホニルクロリドと反応させ、アシル化化合物を得た後;このアシル化化合物をカラムクロマトグラフィーにより精製することにより製造される。最終的にドロネダロン塩酸塩は、ドロネダロンを酢酸エチル中で塩化水素−エーテルと反応させることにより得る。
【0006】
スキーム1:
【0007】
【化2】
【0008】
この方法においては、化合物Aはメタンスルホニルクロリドと反応し、不要な二重メタンスルホニル化合物(式Iaの化合物)が容易に生成し、カラムクロマトグラフィーによりドロネダロンをさらに精製する必要がある。これは工業生産においてあまり経済的ではない。さらにドロネダロン塩酸塩の追加的な塩化工程が必要であり、反応装置により費用がかかり、かつ全体的な収率を低下させ、また同時に製造原価を押し上げる。
【0009】
【化3】
【0010】
アミンのアシル化には多くの方法が報告されている。米国特許第5223510A号明細書(特許文献1)には、5−アミノ−2−ブチル−ベンゾフランを四塩化炭素中で、触媒としてトリエチルアミンの存在下でメタンスルホニルクロリドと反応させることにより、モノメチルスルホニル化合物(II)ではなく、二重メタンスルホニル化合物(IIa)が得られることが開示されている。化合物IIaは、追加的な脱アシル化工程による脱アシル化を経由して化合物IIに変換されるが、これもまた製造原価を増加させ、工業生産に好ましくない。これはスキーム2に示される:
【0011】
スキーム2:
【0012】
【化4】
【0013】
国際公開第03/048144A2号パンフレット(特許文献2)には、異なる触媒下で2−ブチルベンゾフラン−5−アミンを使用することにより最適化条件とし、化合物IIと化合物IIaの比率を調整することで化合物IIを製造する方法が報告されている。
【0014】
続いて、米国特許出願公開第2005049302号明細書(特許文献3)には、5−アミノ−2−ブチル−ベンゾフランから、化合物IIaではなく、化合物IIを製造する方法が記述された。この方法では、化合物IIを四塩化スズの存在下で化合物IIIと反応させ(スキーム3)、ドロネダロンを低収率で、また、カラムクロマトグラフィー等の複雑な操作を用いて得るが、これは工業生産に適していない。
【0015】
スキーム3:
【0016】
【化5】
【0017】
したがって、操作が簡便であり、高収率、低原価であり、また工業生産に適したドロネダロン及びその塩の製造方法を得ることには利益がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第5223510A号明細書
【特許文献2】国際公開第03/048144A2号パンフレット
【特許文献3】米国特許出願公開第2005049302号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
先行技術の短所を克服するため、本発明の目的は、少ない工程で、高収率、簡便な操作かつ工業生産に好適な、ドロネダロン及びその塩の新規製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、5−アミノ−2−ブチル−3−(4−[3−(ジブチルアミノ)プロポキシ]ベンゾイル)ベンゾフラン(化合物A)とメタンスルホニルクロリドとを触媒非存在下で反応させ、直接ドロネダロン塩酸塩を得ることを含む、ドロネダロン塩酸塩の製造方法に関する。この方法は、好ましくは
1種の溶媒又は多種の溶媒の混合溶媒の存在下で実施される。より好ましくは、この方法はさらに、粗ドロネダロン塩酸塩を精製し、高純度の生成物を得ることを含む。
【0021】
また本発明は、ドロネダロン及び塩酸塩ではないその塩の新規製造方法に関する。この方法は、5−アミノ−2−ブチル−3−(4−[3−(ジブチルアミノ)プロポキシ]ベンゾイル)ベンゾフラン(化合物A)とメタンスルホニルクロリドとを反応させ、ドロネダロン塩酸塩を得ること;次にドロネダロン塩酸塩を、アルカリ性溶液による処理を経由して高純度のドロネダロンに変換すること、又は、他の製薬学的に許容される塩に後で変換することを含む。これはスキーム4に示される:
【0022】
スキーム4:
【0023】
【化6】
【0024】
さらに具体的には、このドロネダロン及びその塩の製造方法は、下記の工程を含む:
【0025】
a)5−アミノ−2−ブチル−3−(4−[3−(ジブチルアミノ)プロポキシ]ベンゾイル)ベンゾフラン(化合物A)を、触媒非存在下でメタンスルホニルクロリドによりアシル化し、粗ドロネダロン塩酸塩を得る。この方法は、好ましくは
1種の溶媒又は多種の溶媒の混合溶媒の存在下で実施される。
【0026】
b)粗ドロネダロン塩酸塩を精製し、高純度のドロネダロン塩酸塩を得る、若しくはアルカリ性溶液による処理を経由して高純度のドロネダロンにさらに変換する、又は、ドロネダロン塩酸塩を他の製薬学的に許容される塩に変換する。
【0027】
驚くべきことに、本発明により、化合物Aとメタンスルホニルクロリドとの間のアシル化は触媒非存在下で直接達成され、二重メタンスルホニル化合物Iaの生成を顕著に抑制しながら、高純度のドロネダロン塩酸塩が得られることが見いだされた。このようにして、ドロネダロン及びその塩の新規合成製造法が得られたのである。
【0028】
本発明により、化合物Aとメタンスルホニルクロリドとの間のアシル化は、触媒非存在下で、ニトリル、ケトン、ハロゲン化炭化水素、エーテル若しくは芳香族炭化水素、又は前記の任意の2種以上の溶媒混合物等の溶媒の存在下で良好に進行することが見いだされた。さらに、高純度のドロネダロンが、カラムクロマトグラフィー等の複雑な操作や追加の塩化工程なしに直接得られる。必要に応じて、ドロネダロン塩酸塩は、他の製薬学的に許容される塩に後で変換することができる。
【0029】
本願において、「触媒」は、5−アミノ−2−ブチル−3−(4−[3−(ジブチルアミノ)プロポキシ]ベンゾイル)ベンゾフラン(化合物A)とメタンスルホニルクロリドとの反応において
触媒的な作用を有する触媒試薬、例えば、トリエチルアミンやジプロピルアミンのようなアルキルアミン等の有機アルカリ;及び、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムのようなアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩等の無機アルカリを含む酸受容体等を指す。
【0030】
本発明で使用されるニトリルは、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等のC
2〜C
6脂肪族ニトリルからなる群より選ばれ、好ましくはアセトニトリルである。
【0031】
室温から還流温度の温度範囲で、好ましくは還流温度で、5−アミノ−2−ブチル−3−(4−[3−(ジブチルアミノ)プロポキシ]ベンゾイル)ベンゾフランとメタンスルホニルクロリドとをアセトニトリル溶媒中で反応させ、粗ドロネダロン塩酸塩を与える。ここで、使用されるアセトニトリル量は、化合物Aの1重量部に基づいて0〜10容量部、好ましくは1〜8容量部、より好ましくは3〜6容量部の範囲である。また、使用されるメタンスルホニルクロリド量は、化合物Aに対して1〜5当量、好ましくは1.1〜3当量、より好ましくは1.2〜2.5当量の範囲で反応混合物を得る。反応を終了するときには、反応混合物を−30〜50℃、好ましくは−20〜35℃、より好ましくは−15〜25℃に冷却して粗ドロネダロン塩酸塩を得る。次に、粗ドロネダロン塩酸塩を精製し、高純度のドロネダロン塩酸塩を得ることができる。必要に応じて、得られたドロネダロン塩酸塩は、アルカリ性溶媒による処理を経由して高純度のドロネダロンに変換することができ、又は、他の製薬学的に許容される塩にさらに変換することができる。
【0032】
本発明で使用されるケトンは、C
3〜C
6脂肪族ケトンからなる群より選ばれ、好ましくはアセトンである。
【0033】
室温から還流温度の温度範囲で、好ましくは還流温度で、5−アミノ−2−ブチル−3−(4−[3−(ジブチルアミノ)プロポキシ]ベンゾイル)ベンゾフランとメタンスルホニルクロリドとをアセトン溶媒中で反応させ、粗ドロネダロン塩酸塩を与える。ここで、使用されるアセトン量は、化合物Aの1重量部に基づいて0〜15容量部、好ましくは4〜10容量部、より好ましくは5〜8容量部の範囲である。また、使用されるメタンスルホニルクロリド量は、化合物Aに対して1〜5当量、好ましくは1.5〜3.5当量、より好ましくは2〜2.5当量の範囲で反応混合物を得る。反応を終了するときには、反応混合物を−30〜55℃、好ましくは−15〜40℃、より好ましくは−10〜25℃に冷却して粗ドロネダロン塩酸塩を得る。次に、粗ドロネダロン塩酸塩を精製し、高純度のドロネダロン塩酸塩を得ることができる。得られたドロネダロン塩酸塩は、必要に応じて、アルカリ性溶媒による処理を経由して高純度のドロネダロンに変換することができ、又は、他の製薬学的に許容される塩にさらに変換することができる。
【0034】
本発明で使用されるハロゲン化炭化水素は、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン等のC
1〜C
6脂肪族ハロゲン化炭化水素からなる群より選ばれ、好ましくはジクロロメタンである。
【0035】
室温から還流温度の温度範囲で、好ましくは還流温度で、5−アミノ−2−ブチル−3−(4−[3−(ジブチルアミノ)プロポキシ]ベンゾイル)ベンゾフランとメタンスルホニルクロリドとをジクロロメタン溶媒中で反応させ、粗ドロネダロン塩酸塩を与える。ここで、使用されるジクロロメタン量は、化合物Aの1重量部に基づいて0〜30容量部、好ましくは10〜25容量部、より好ましくは15〜20容量部の範囲である。また、使用されるメタンスルホニルクロリド量は、化合物Aに対して1〜15当量、好ましくは5〜10当量、より好ましくは6〜9当量の範囲で反応混合物を得る。反応を終了するときには、反応混合物を、アルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウム等)、アルカリ金属炭酸塩又は炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩等のアルカリ性試薬、好ましくは炭酸水素ナトリウムで処理する。次に、得られたドロネダロンを、アセトン溶媒中の塩酸存在下、塩化する。その後、粗ドロネダロン塩酸塩は急速に結晶化する。必要に応じて粗ドロネダロン塩酸塩を精製し、高純度ドロネダロン塩酸塩を得る。次に、得られた粗ドロネダロン塩酸塩は、アルカリ性溶媒による処理を経由して高純度のドロネダロンに変換することができ、又は、必要に応じて他の製薬学的に許容される塩にさらに変換することができる。
【0036】
本発明で使用されるエーテルは、C
1〜C
6脂肪族エーテル等の直鎖エーテルからなる群より選ばれ、好ましくはグリムであり、また、C
2〜C
4脂肪族環状エーテル等の環状エーテルからなる群より選ばれ、好ましくはテトラヒドロフランである。
【0037】
室温から還流温度の温度範囲で、好ましくは還流温度で、5−アミノ−2−ブチル−3−(4−[3−(ジブチルアミノ)プロポキシ]ベンゾイル)ベンゾフランとメタンスルホニルクロリドとをテトラヒドロフラン溶媒中で反応させ、粗ドロネダロン塩酸塩を与える。ここで、使用されるテトラヒドロフラン量は、化合物Aの1重量部に基づいて0〜15容量部、好ましくは3〜12容量部、より好ましくは5〜10容量部の範囲である。また、使用されるメタンスルホニルクロリド量は、化合物Aに対して1〜8当量、好ましくは1.5〜5当量、より好ましくは2〜3当量の範囲で反応混合物を得る。反応を終了するときには、反応混合物を−25〜50℃、好ましくは−15〜40℃、より好ましくは−10〜35℃に冷却して粗ドロネダロン塩酸塩を得る。次に、粗ドロネダロン塩酸塩を精製し、高純度のドロネダロン塩酸塩を得ることができる。得られたドロネダロン塩酸塩は、必要に応じて、アルカリ性溶媒による処理を経由して高純度のドロネダロンに変換することができ、又は、他の製薬学的に許容される塩にさらに変換することができる。
【0038】
本発明で使用される芳香族炭化水素は、トルエン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン等の置換又は非置換C
6〜C
10芳香族からなる群より選ばれ、好ましくはトルエンである。
【0039】
本発明における溶媒混合物は、ニトリル、ケトン、ハロゲン化炭化水素、エーテル及び芳香族炭化水素からなる群より選ばれる2種以上の溶媒混合物、好ましくはアセトンとアセトニトリルとの混合物である。
【0040】
室温から還流温度の温度範囲で、好ましくは還流温度で、5−アミノ−2−ブチル−3−(4−[3−(ジブチルアミノ)プロポキシ]ベンゾイル)ベンゾフランとメタンスルホニルクロリドとを、アセトンとアセトニトリルとの混合溶媒中で反応させ、粗ドロネダロン塩酸塩を与える。ここで、使用されるアセトンとアセトニトリルとの比率は、0〜5:1(v/v)、好ましくは0.2〜3:1(v/v)、より好ましくは0.5〜1:1(v/v)の範囲である。また、使用されるメタンスルホニルクロリド量は、化合物Aに対して1〜5当量、好ましくは1.5〜4当量、より好ましくは2〜3当量の範囲で反応混合物を得る。反応を終了するときには、反応混合物を−40〜50℃、好ましくは−15〜40℃、より好ましくは−10〜35℃に冷却して粗ドロネダロン塩酸塩を得る。次に、粗ドロネダロン塩酸塩を精製し、高純度のドロネダロン塩酸塩を得ることができる。得られたドロネダロン塩酸塩は、必要に応じて、アルカリ性溶媒による処理を経由して高純度のドロネダロンに変換することができ、又は、他の製薬学的に許容される塩にさらに変換することができる。
【0041】
本発明においてドロネダロン塩酸塩の精製に使用される溶媒は、アセトンと水との混合物であり、好ましくは30〜5:1(v/v)の比率にある。
【0042】
本願において、粗ドロネダロン塩酸塩を、精製又はアルカリ性溶媒による処理を経由して高純度のドロネダロン又はドロネダロン塩酸塩に変換する場合、又は、必要に応じて、他の製薬学的に許容される塩にさらに変換する場合、「アルカリ性溶媒」中で使用される「アルカリ」は、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機アルカリであり、好ましくは炭酸水素ナトリウムである。
【0043】
すなわち本発明では、アセトニトリル等のニトリル、アセトン等のケトン、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素に例示される単溶媒又は混合溶媒中において、化合物A及びメタンスルホニルクロリド間のアシル化が、触媒非存在下で良好に進行し、粗ドロネダロン塩酸塩が与えられる。さらに、粗ドロネダロン塩酸塩は、カラムクロマトグラフィー等の複雑な操作や追加の塩化工程なしに直接得られる。必要に応じて粗ドロネダロン塩酸塩は精製され、高純度生成物が得られる。次に、ドロネダロン塩酸塩は、アルカリ性溶媒による処理を経由して高純度のドロネダロンに変換することができ、又は、必要に応じて他の製薬学的に許容される塩にさらに変換することができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明の方法は、工程が少なく、高収率、簡便な操作かつ低原価であり、工業生産等に好適であり、著しい社会的利益や経済的利益を伴う。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明は下記の実施例により、より良く理解される。当業者であれば、本発明を容易に理解できる。下記の実施例は、本発明の単なる実例に過ぎず、本発明の範囲をなんら限定するものではない。
【0046】
特に断りのない限り、実施例において使用される略語は下記のとおりである:
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
1H NMR:水素核磁気共鳴分光法
MS:質量分析
【0047】
出発物質である化合物Aの製造
5−アミノ−2−ブチル−3−(4−[3−(ジブチルアミノ)プロポキシ]ベンゾイル)ベンゾフラン(化合物A)は、米国特許第5223510A号明細書にしたがって製造した。
【実施例1】
【0048】
(工程1)粗ドロネダロン塩酸塩の製造
5 Lのフラスコに、480 g(1 mol)の化合物Aと1.7 Lのアセトニトリルを加え、加熱還流して混合物を得た。次に、100 mL(1.29 mol)のメタンスルホニルクロリド/800 mLのアセトニトリルを、25〜30分間以内にこの混合物中に滴下した。反応は8時間還流を維持した。その後、反応物を自然に冷却し、固形物を得た。翌日、得られた固形物を濾取し、乾燥させて、530 gの粗ドロネダロン塩酸塩を得た。収率:89.2%、HPLCによる純度:99.5%。
【0049】
(工程2)ドロネダロン塩酸塩の製造
5 Lのフラスコに、530 gの粗ドロネダロン塩酸塩、3 Lのアセトン及び100 mLの水を加え、加熱還流して完全に溶解させた。反応物を、自動的に撹拌しながら氷水浴により冷却し、結晶化させた。約30分後、大量の固形物が沈澱した。得られた固形物を濾取して、アセトンで洗浄し、乾燥させて、440 gの目的とする化合物を得た。収率:83%、融点:141.5〜143℃、HPLCによる純度:99.8%、MS:[M+H]
+ m/e 557.50。
【0050】
【化7】
【0051】
(表1)ドロネダロン塩酸塩の
1H NMRデータ及び帰属
【実施例2】
【0052】
(工程1)粗ドロネダロン塩酸塩の製造
反応温度が55〜60℃、また反応時間が15時間で相違する以外、実施例1の工程1に記載された方法で製造した。収率:85.3%、HPLCによる純度:99.0%。
【0053】
(工程2)ドロネダロン塩酸塩の製造
実施例1の工程2に記載された方法で製造した。収率:81%、融点:141〜143℃、HPLCによる純度:99.5%。
【実施例3】
【0054】
(工程1)粗ドロネダロン塩酸塩の製造
反応温度が40〜45℃、また反応時間が41時間で相違する以外、実施例1の工程1に記載された方法で製造した。収率:82.1%、HPLCによる純度:98.3%。
【0055】
(工程2)ドロネダロン塩酸塩の製造
実施例1の工程2に記載された方法で製造した。収率:80%、融点:141〜143℃、HPLCによる純度:99.1%。
【実施例4】
【0056】
(工程1)粗ドロネダロン塩酸塩の製造
5 Lのフラスコに、530 g(1.1 mol)の化合物Aと3 Lのアセトンを加え、加熱還流した。次に、200 mL(2.58 mol)のメタンスルホニルクロリド/1 Lのアセトンを20分間以内に滴下した。反応は6時間還流を維持した。その後、反応物を一晩撹拌し、白色固形物を得た。翌日、得られた固形物を濾取し、乾燥させて、473 gの粗ドロネダロン塩酸塩を得た。収率:72%、HPLCによる純度:99.3%。
【0057】
(工程2)ドロネダロン塩酸塩の製造
5 Lのフラスコに、470 gの粗ドロネダロン塩酸塩、1550 mLのアセトン及び310 mLの水を加え、加熱還流して完全に溶解させた。反応物を、自動的に撹拌しながら氷水浴により冷却し、結晶化させた。約1.5時間後、大量の固形物が沈澱した。得られた固形物を濾取して、アセトンで洗浄し、乾燥させて、399.5 gの標記化合物を得た。収率:84%、融点:141.5〜143.5℃、HPLCによる純度:99.5%。
【実施例5】
【0058】
(工程1)粗ドロネダロン塩酸塩の製造
反応温度が40〜45℃、また反応時間が48時間で相違する以外、実施例4の工程1に記載された方法で製造した。収率:69%、HPLCによる純度:98.8%。
【0059】
(工程2)ドロネダロン塩酸塩の製造
実施例1の工程2に記載された方法で製造した。収率:83%、融点:141〜143℃、HPLCによる純度:99.0%。
【実施例6】
【0060】
(工程1)粗ドロネダロン塩酸塩の製造
2.4 g(5 mmol)の化合物Aを30 mLの塩化メチレンに加え、加熱還流して混合物を得た。次に、10 mLの塩化メチレン中の3 mLのメタンスルホニルクロリド溶液を、20分間以内にこの混合物中に滴下した。反応は26時間還流を維持した。混合物のHPLCにより測定した純度は95%であった。次に、混合物を、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で中性になるまで洗浄し、乾燥し、濾過し、減圧下で蒸発乾固させた。固形物に6 mLのアセトンと1 mLの塩酸を撹拌しながら加え、結晶化させた。得られた固形物を濾取し、乾燥させて、2.1 gの粗ドロネダロン塩酸塩を得た。収率:70.8%、HPLCによる純度:99%。
【0061】
(工程2)ドロネダロン塩酸塩の製造
実施例1の工程2に記載された方法で製造した。収率:81%、融点:141.5〜143.5℃、HPLCによる純度:99.5%。
【実施例7】
【0062】
(工程1)粗ドロネダロン塩酸塩の製造
500 mLのフラスコに、53 g(0.11 mol)の化合物Aと350 mLのテトラヒドロフランを加え、加熱還流して混合物を得た。次に、20 mL(0.26 mol)のメタンスルホニルクロリド/40 mLのアセトニトリルを、20分間以内にこの混合物中に滴下した。反応は9時間還流を維持した。その後、反応物を一晩撹拌し、固形物を得た。翌日、得られた固形物を濾取し、乾燥させて、56.4 gの粗ドロネダロン塩酸塩を得た。収率:86%、HPLCによる純度:98.8%。
【0063】
(工程2)ドロネダロン塩酸塩の製造
500 mLのフラスコに、55 gの粗ドロネダロン塩酸塩、225 mLのアセトン及び22.5 mLの水を加え、加熱還流して完全に溶解させ、混合物を得た。この反応物を、自動的に撹拌しながら氷水浴により冷却した。約1時間後、大量の固形物が沈澱した。得られた固形物を濾取して、アセトンで洗浄し、乾燥させて、45.1 gの目的とする化合物を得た。収率:82%、融点:141.5〜143.5℃、HPLCによる純度:99.1%。
【実施例8】
【0064】
(工程1)粗ドロネダロン塩酸塩の製造
5 Lのフラスコに、64 g(1.13 mol)の化合物Aと1 Lのアセトニトリルを加え、加熱還流して混合物を得た。次に、26 mL(0.34 mol)のメタンスルホニルクロリド/104 mLのアセトニトリルを、25〜30分間以内にこの混合物中に滴下した。反応は16時間還流を維持した。その後、反応物を自然に冷却し、固形物を得た。翌日、得られた固形物を濾取し、乾燥させて、68 gの粗ドロネダロン塩酸塩を得た。収率:88.3%、HPLCによる純度:99.1%。
【0065】
(工程2)ドロネダロン塩酸塩の製造
実施例1の工程2に記載された方法で製造した。収率:82.5%、融点:141.5〜143℃、HPLCによる純度:99.4%。
【実施例9】
【0066】
(工程1)粗ドロネダロン塩酸塩の製造
反応温度が40〜45℃、また反応時間が36時間で相違する以外、実施例7の工程1に記載された方法で製造した。収率:86.1%、HPLCによる純度:98.8%。
【0067】
(工程2)ドロネダロン塩酸塩の製造
実施例1の工程2に記載された方法で製造した。収率:82.5%、融点:141.5〜143℃、HPLCによる純度:99.2%。
【実施例10】
【0068】
(工程1)ドロネダロンの製造
実施例1で得られたドロネダロン塩酸塩5.93 g(0.01 mmol)を塩化メチレン40 mLに溶解し、混合物を得た。次に、この混合物に飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加えて、pHを中性に調整した。有機層を分離し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液(10 mL×2)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧蒸発させて、5.61 gの油状生成物を得た。
【0069】
(工程2)ドロネダロン硫酸塩の製造
得られた油状生成物を12 mLのアセトンに溶解し、混合物を得た。この混合物には2 mLの水を加えた。次に、3
mLのアセトン中の1.1 mLの濃硫酸溶液を、10〜15℃で約20分間かけて滴下した。その後、この混合物を52℃に加熱し、1時間撹拌した。この混合物を、撹拌しながら氷水浴により冷却し、結晶化させた。約3.5時間後、大量の固形物が沈澱した。得られた固形物を濾取し、減圧下50℃で乾燥させて、5.5 gの目的とする化合物を得た。収率:84%(ドロネダロン硫酸塩としての算出)、HPLCによる純度:99.85%。
【実施例11】
【0070】
(工程1)ドロネダロンの製造
実施例10の工程1に記載された方法で製造した。
【0071】
(工程2)ドロネダロンメシル酸塩の製造
使用した酸が、濃硫酸に替えてメタンスルホン酸(99%)(1.5 g)であることが相違する以外、実施例10の工程2に記載された方法で製造した。収率:76%、HPLCによる純度:99.83%。
【実施例12】
【0072】
(工程1)粗ドロネダロン塩酸塩の製造
500 mLのフラスコに、15 g(0.03 mol)の化合物Aと15 mL(0.19 mol)のメタンスルホニルクロリドを加え、80℃に加熱し、混合物を得た。反応は80℃で5.5時間維持した。未反応のメタンスルホニルクロリドは、減圧下で混合物より蒸発させた。100 mLのアセトニトリルを添加して混合物を溶解し、混合物を自然に冷却して固形物を得た。翌日、得られた固形物を濾取し、13.5 gの粗ドロネダロン塩酸塩を得た。収率:72.5%、HPLCによる純度:97.5%。
【0073】
(工程2)ドロネダロン塩酸塩の製造
実施例1の工程2に記載された方法で製造した。収率:78.5%、融点:140.5〜142.5℃、HPLCによる純度:98.9%。