(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873493
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】航空機の全エネルギー効率を最適化する方法、およびそれを実施するためのメインパワーパッケージ
(51)【国際特許分類】
B64D 13/02 20060101AFI20160216BHJP
B64D 41/00 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
B64D13/02
B64D41/00
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-525337(P2013-525337)
(86)(22)【出願日】2011年8月23日
(65)【公表番号】特表2013-538153(P2013-538153A)
(43)【公表日】2013年10月10日
(86)【国際出願番号】FR2011051943
(87)【国際公開番号】WO2012025687
(87)【国際公開日】20120301
【審査請求日】2014年8月5日
(31)【優先権主張番号】1056761
(32)【優先日】2010年8月25日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】501107994
【氏名又は名称】ターボメカ
【氏名又は名称原語表記】TURBOMECA
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エロ,ジヤン・ミシエル
【審査官】
志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第3711044(US,A)
【文献】
特開平01−269700(JP,A)
【文献】
米国特許第4912921(US,A)
【文献】
特開平01−237327(JP,A)
【文献】
米国特許第2929224(US,A)
【文献】
米国特許第2734356(US,A)
【文献】
国際公開第2003/037715(WO,A1)
【文献】
特開2003−184653(JP,A)
【文献】
米国特許第4684081(US,A)
【文献】
米国特許第6283410(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 13/00−13/08
B64D 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機(3)内へ供給されるエネルギーの全体効率を最適化する方法であって、このエネルギーは、推進力を生じ、または推進力を生まず、航空機には、調整された空気流(F3)のある乗客キャビン(4)とメインエンジンを含むパワーソースとが装備され、この種の最適化が、キャビン(4)の近くにある環境において、前記メインエンジン以外のキャビン(4)用の単一の空気圧エネルギーの発生源として、および最大でも部分的に航空機(3)の他部分用の、推進力を生じる、油圧および/または電気エネルギーの発生源として役立つようにサイジングされる少なくとも1つのメインエンジン式パワー発生手段(1)を提供するステップと、公称動作状態のもとで、および万一メインエンジンの故障の場合に、メインエンジンおよび主パワー発生手段のパワー寄与を等分割することによって、前記パワーソースが機能している場合のパワーソースのノミナルポイント((Pn)1、(Pn)0)とメインエンジンの故障の場合の前記パワーソースの推進力を生まないエネルギー寄与のサイジングポイント((Pd)0)との間のパワー差を最小限にするステップとに存することを特徴とする、方法。
【請求項2】
エネルギー消費機器(100)と、その空気が新しくされ、その温度および/または圧力が調整システムECS(41)によって調整されるキャビン(4)と、主パワー発生エンジンと、飛行制御装置とを含む航空機(3)において、防火隔壁(7)によって航空機の他の領域(5)から隔離され、外気取入れ口(21)および排気ノズル(22)が装着されているコンパートメント(2)に組み入れられ、公称動作状態のもとで、および万一主パワー発生エンジンの故障の場合に、パワー寄与が、主パワー発生エンジンのパワー寄与との間で等分割される、請求項1による最適化方法を実施するための主パワーユニット(1)であって、ガス発生器(11)と、過給機(15)を含む駆動機器(100)のための出力タービン(12)とが装着されているエンジン式パワーユニット(10)を含み、前記過給機が、制御装置に通じている調整制御装置(19)を介して、キャビン(4)に必要な空気圧エネルギーを供給するためにECSシステム(41)に結合されることを特徴とする、主パワーユニット(1)。
【請求項3】
出力タービン(12)と共に機器(100)を駆動するための少なくとも1つのエネルギー回収タービン(13)を含み、空気入口側では冷却するためにキャビン(4)の出口に、空気出口側では機器(100)に結合される回収構造体に結合され、過給機(15)がキャビン(4)への空気圧エネルギーのサプライヤとしてこの回収構造体に組み入れられることを特徴とする、請求項2に記載の主パワーユニット。
【請求項4】
回収タービン(13)が、出口側では主パワーユニット(1)のコンパートメント(2)の中に空気流を排出し、この主パワーユニット(1)は、空気流が後方コンパートメント(2)に収容される機器および補助機器を冷却した後に、出力タービン(12)から出てくる高温空気流(F2)の流出速度から生じるジェットポンプ作用によって排気ノズル(22)の中に排気される(F3′)、請求項3に記載の主パワーユニット。
【請求項5】
過給機(15)が、ブレード(154)を有する可変ピッチ空気拡散器(152)を含み、その調整が、すべての飛行段階においてECS(41)によって要求される圧力および流量の供給に合わせて空気流を厳密に調整することができる、調整制御装置(19)によってサーボ制御される、請求項2から4のいずれか一項に記載の主パワーユニット。
【請求項6】
過給機(15)の拡散器(152)の設定の変化が、実質的に一定の圧力比によって空気流量の変化になる、請求項5に記載の主パワーユニット。
【請求項7】
過給機(15)が、出力タービン(12)に直接結合される、請求項2から6のいずれか一項に記載の主パワーユニット。
【請求項8】
ガス発生器(11)が、過給機(15)として役立つことができる吸気コンプレッサ(110)を含む、請求項2から7のいずれか一項に記載の主パワーユニット。
【請求項9】
回収タービン(13)が、ブレード(134)を有する可変ピッチ案内羽根組立体(132)を備える求心タービンであり、その調整が、調整制御装置(19)によってサーボ制御される、請求項3から8のいずれか一項に記載の主パワーユニット。
【請求項10】
少なくとも1つの圧力センサ(155、135)が、調整制御装置(19)と関連して拡散器(152)および案内羽根組立体(132)のブレード(154、134)の開放および閉鎖を調整する、請求項3および9に記載の主パワーユニット。
【請求項11】
ブレード(134、154)の最も開いた可能な設定位置が、全開を越えて半径方向位置、すなわちいわゆるゼロ位置になることができる、請求項10に記載の主パワーユニット。
【請求項12】
地上での全開と高度を上げながらの連続的な空気流の閉鎖との間で、ブレード(134、154)の可変設定の調整が、キャビン(4)の与圧に従って調整制御装置(19)を使って自動化される、請求項10および11のうちの一項に記載の主パワーユニット。
【請求項13】
出力タービン(12)および回収タービン(13)から航空機の機械、空気圧、油圧および/または電気機器(100)までパワーを伝達するための手段(17)が設けられる、請求項2から12のいずれか一項に記載の主パワーユニット。
【請求項14】
パワー伝達手段が、パワー伝達ボックス(17)の形をとって設けられる、請求項13に記載の主パワーユニット。
【請求項15】
回収構造体が、2つの熱伝達回路、すなわち入口側では出力タービン(12)の高温空気流出口(F2)におよび出口側では排気ノズル(22)に結合される1次回路(C1)と、入口側ではキャビン(4)の空気流出口(F3)におよび出口側では回収タービン(13)に結合される2次回路(C2)とを有する熱交換器(18)を備える、請求項3から14のいずれか一項に記載の主パワーユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機内へ供給されるエネルギーの全体効率を最適化する方法、ならびにこの種の方法を実施するための主パワーユニットに関し、このエネルギーは推進力を生じ、または推進力を生まないものである。
【0002】
本発明は、航空機のエンジンセット、すなわち本質的に飛行機のエンジンセット(ジェットエンジン、ターボジェットエンジン、ターボプロップエンジン機)、ならびにヘリコプタのエンジンセット(ターボシャフトエンジン)に適用される。
【0003】
通常、航空機では、乗客を収容するキャビンは、空気調節され、かつ/または与圧される。キャビンの空気入口は、環境制御システムECS(“Environmental Control System”の頭文字)に接続され、この環境制御システムECSは、ECSシステムとキャビンとの間の可能な再循環システムと共同して空気流量、温度、および/または圧力を調整する。
【背景技術】
【0004】
高い圧力および温度―通常、0.8barおよび24℃―を有するキャビンの出口の空気と、その圧力および温度が実質的に低い―通常、0.2barおよび−50℃―航空機の外側の空気との間のエネルギー回収方法が知られている。たとえば、米国特許文献、米国特許第5482229号明細書は、航空機のエンジン圧縮機から得られるダクト内で循環する空気によって排出され、キャビンのECSシステムに結合される熱交換器を使ってキャビンの出口チャンネルから得られる空気の温度を増加させることを示唆している。次いで、熱交換器を通して暖められている、キャビンから得られる空気は、航空機の外側に排出される前に、補助機器(ポンプ、過給機、発電機、等)に機械または電気エネルギーを供給するパワー変換装置のタービンを駆動する。
【0005】
しかし、この種の形態では、信頼性のある方法でキャビンからの排気を使用することができない。実際、この空気の圧力は、一定のレベル、たとえば0.8barにキャビン内で調整され、航空機の内側と外側との間の圧力―たとえば航空機が上昇し、または高い高度にある場合には、内部では0.8bar、および外部では0.2bar―の変化は、圧力降下および所望しない現象を招き、調整は、キャビン内の圧力が初期の調整値よりも高いのでもはや正確に行うことができず、圧力過渡現象が、乗客の耳に許容できない。空気は、タービンがキャビンの出口で空気を阻止する背圧を常に生じるので、もはや正しく流れ出ることができない。これらの状態では、変換装置のタービンは、特に高度の上昇および高い高度の過渡的な段階中にもはや動作可能であり得ない。
【0006】
さらに、熱交換器は、キャビンドアが開いていると地上ではもはや動作可能でない。次に、この構成は、外気回路に結合される追加の熱交換器のある熱装置を必要とする。
【0007】
そのうえ、万一変換装置によって駆動される機器の故障の場合には、変換装置が過速度になる。
【0008】
さらに、航空機のエンジン圧縮機から得られる空気の使用は、熱交換器とエンジン出口との間の距離のため管内の損失により、エネルギー平衡に関して不利である。さらに、離陸中にECSシステムにエンジンによって供給されるパワーは、エネルギー要件に関して過大評価される。ECSシステムへのパワーの供給のサイジングポイントは、常に―アイドル速度においてさえ―ECSシステムに十分なパワーを供給することができるように、メインエンジンのHP(高圧)本体の最小速度で実際に決定される。
【0009】
一般に、メインエンジンは、たとえば航空機の離陸時に、すなわちHP本体が高速度にある場合には、重要な推進力を時々供給することができるが、他の段階では、たとえば降下時に、すなわちHP本体が低速度で作動する場合には中間の推進力、実際には最小限の推進力を供給するようにサイジングされる。推進力は、ジェットエンジンによって供給される推力、ならびに飛行機のターボプロップエンジン機およびヘリコプタのターボシャフトエンジンによって供給される機械的パワーに本質的に関係している。パワー供給のオーバーサイジングは、通常、アイドル速度は別として、すべての飛行段階において過剰な比消費量を伴うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5482229号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、無用のパワー供給を除去するように、パワー供給のサイジング、ならびにキャビンECSシステム、およびより一般的には航空機の実際のパワー要求を適応させることによって比消費量を制限することを明確な目的としている。
【0012】
また、本発明は、過速度を生じることもある航空機の故障の場合に取り組むように十分に信頼性のある方法でエネルギーを供給することを目的としている。本発明の他の目的は、特に過渡的な段階において、知られている形態に関してエネルギーの供給と消費との間の積極的な全エネルギー平衡をすべての飛行段階で保つために、推進力を生まない多数のエネルギー消費手段、特に電気、機械および/または油圧機器の結合を助けることである。さらに、本発明であれば、調整に対して有害である背圧のいかなる危険もなく、キャビンの出口側で熱エネルギーを回収することができるであろうし、その結果、最適化された熱交換が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このために、本発明は、エンジン式パワー発生手段を使って、キャビン出口の近くのエネルギー、特にキャビンへの空気圧エネルギーを供給することにある。パワー発生手段は、このパワー発生手段の構成がメインエンジンとして役立つパワー発生手段と同じ方法で、すべての飛行段階中に使用できるエンジンとしての保証を得るのに適合する場合にはエンジン式のものとなる。
【0014】
より正確には、本発明の目的は、航空機内へ供給されるエネルギーの全体効率を最適化する方法であり、このエネルギーが、推進力を生じ、または推進力を生まず、航空機には、調整された空気流のある乗客キャビンとメインエンジンを含むパワーソースとが装備されている方法である。この種の最適化は、キャビンの近くにある環境において、キャビン用の単一の他の空気圧エネルギー発生源として、および多くても部分的に航空機の他部分用の他の推進力を生じる油圧および/または電気エネルギー発生源として役立つようにサイジングされる少なくとも1つのエンジン式主パワー発生手段を提供するステップと、すなわち公称動作条件下で、かつ万一メインエンジンの故障の場合にはメインエンジンおよび主パワー発生手段のパワー寄与を等分割することによって、パワーソースが機能している場合のソースのノミナルポイントとメインエンジンの故障の場合には前記ソースの推進力を生まないエネルギー寄与のサイジングポイントとの間のパワー差を最小限にするステップとに存する。
【0015】
主パワー発生手段により、キャビンの厳しい要件による空気圧エネルギーの供給を調整することができるが、メインエンジンは、必要最小限のものよりも実質的に高い、通常2倍高いパワーを不必要に供給した。これらは、それらのサイジングがメインエンジンHP本体の最小速度に基づいているので、空気圧エネルギー平衡に関するかぎりオーバーサイジングとなった。空気圧エネルギーの供給は、今は本発明によるメインエンジンの問題ではなく、メインエンジンは、実質的に改善された効率を有し、次には、全体効率も実質的に改善される。
【0016】
そのうえ、そのようにサイジングされている主パワー発生手段の全熱効率は、下降段階または公称飛行段階において、通常20%程度の、推進力を生まないパワー供給についてのメインエンジンの全熱効率と実質的に等しい。次いで、電気パワーの量の等分割が、消費へのいかなる大きな不利益もなく適用される。逆に、高圧本体(HP)の速度が主パワー発生手段のそれよりも高いということによりメインエンジンの効率がより高いので、上昇段階において、メインエンジンによる電気エネルギーの供給が好ましいであろう。
【0017】
さらに、追加の主パワー発生手段の寄与は、エンジン手段の冗長性を提供し、したがって航空機の障害許容性およびアベイラビリティを増強する。
【0018】
また、本発明は、上記の方法による全エネルギー効率を最適化できる主パワーユニット(以下、MPU)に関する。この種の主パワーユニットは、補助パワーユニットタイプのパワーユニット(略して、APU)に基づいており、これは、エンジンカテゴリに属するためにより確実なものにされ、エネルギー回収構造体に結合されている。
【0019】
通常、APUは、地上でさまざまなエネルギー消費機器(電気、空気圧、および油圧式パワー、空調)に
パワーを供給するために航空機に適合し、メインエンジンを始動させる。エンジンが故障している場合には、いくつかのAPUが、飛行中に働かなくなっているエンジンを再起動させようと試みるために再び始動しかつ/または飛行中に機器に電気エネルギーの一部を供給することができるように、十分に確保されている。
【0020】
通常、APUは、―少なくとも吸気コンプレッサ、燃焼室、および少なくとも1つの出力タービンを含む―ガス発生器、ならびに直接に、または回転速度適応を有するパワー伝達ボックスを介して機器(過給機、燃料および油圧ポンプ、発電機、および/または電気始動機/発電機、等)を駆動するための手段から成る。過給機または吸気コンプレッサの出口側での空気抽気が、メインエンジンを空気圧で始動させるために使用される。
【0021】
推進力を生まないエネルギーを飛行段階のすべての間に供給するようにまさに確保されるAPUの使用は、メインエンジンに比して不利なエネルギー効率のため非現実的であると考えられており、全滞空時間中にAPUを作動させることは、追加の燃料消費を意味する。
【0022】
次に、もしAPUがキャビンの厳しい要件による空気圧エネルギーを恒久的に供給するためにエンジン式パワーユニットに変えられるとすれば、その場合、この種の装置を有する航空機は、良好なバランスを提供する。
【0023】
したがって、エネルギー消費機器、特にその空気が新しくされ、その温度および/または圧力が調整システムECSによって調整されるキャビンと、主パワー発生エンジンと、飛行制御装置とを含む航空機において、防火隔壁によって航空機の他の領域から隔離され、外気取入れ口および排気ノズルが装着されているコンパートメントに組み入れられる本発明による主パワーユニットは、ガス発生器と、過給機を含む駆動機器のための出力タービンとが装着されている、上で説明したタイプのエンジン式パワーユニットを含む。過給機は、制御装置に通じている調整制御装置を介して、キャビンに必要な空気圧エネルギーを供給するためにECSシステムに結合される。
【0024】
特定の実施形態によれば、
主パワーユニットが、出力タービンと共に機器を駆動するための少なくとも1つのエネルギー回収タービンを含み、空気入口側では冷却するためにキャビンの出口に、空気出口側では機器に結合される回収構造体に結合され、過給機はキャビンへの空気圧エネルギーのサプライヤとしてこの回収構造体に組み入れられ、
過給機が、ブレードを有する可変ピッチ空気拡散器を含み、その調整が、すべての飛行段階においてECSによって要求される圧力および流量の供給に合わせて空気流を厳密に調整することができる調整制御装置によってサーボ制御され、
過給機の拡散器の設定の変化が、実質的に一定の圧力比によって空気流量の変化になり、したがって、要求と供給との間のバランスが、著しい浪費なしに満たされ、
過給機は、機械的伝達を除くパワーの伝達によるいかなるエネルギーの損失も避けるように、出力タービンに直接結合され、
ガス発生器が、過給機として役立つことができる吸気コンプレッサを含み、
回収タービンは、ブレードを有する可変ピッチ案内羽根組立体を備えるタービン、好ましくは求心タービンであり、その方向付けが、調整制御装置によってサーボ制御され、
少なくとも1つの圧力センサが、サーボ制御装置と関連して拡散器および案内羽根組立体のブレードの開放および閉鎖を調整し、
回収タービンが、出口側では主パワーユニットのコンパートメントの中に空気流を排出し、この主パワーユニットは、空気流が後方コンパートメントに収容される機器および補助機器を冷却した後に、出力タービンから出てくる高温空気流の流出速度から生じるジェットポンプ作用によって排気ノズルの中に排気され、
回収タービンは、キャビンの中への風切り音の伝播を回避するために防音装置に結合され、
最も開いた可能な設定位置が、全開を越えて半径方向位置、すなわちいわゆるゼロ位置になることができ、
地上での全開と高度を上げながらの連続的な空気流の閉鎖との間で、可変設定の調整が、キャビンの与圧に従って調整制御装置を使って自動化され得る。
【0025】
一般に、高さと共に増加する、主パワーユニットのエネルギー供給能力の損失は、キャビンの出口側の背圧と両立できる最も閉鎖した位置での回収タービンについて、および最も開いた可能な位置での過給機ついての可変設定の位置を最適化することによって、飛行中に少なくとも部分的に補償されるべきであるということが考慮された。
【0026】
主パワーユニットの飛行中の応力と両立できる熱力学的パワーのレベルが最小限にされ、地上では、たとえ可変設定の適切な位置が回収タービンおよび過給機の効率を不利にしても、この場合、その熱力学的パワーがそのような方法でサイジングされている主パワーユニットは、地上で十分なエネルギーを供給することができる。したがって、飛行中のエネルギーを最適化することが好まれた。したがって、全飛行エンベロープにおいて、圧縮機および回収タービンの全体効率は、可変設定を有する拡散器および/または案内羽根組立体の存在のため最適である。
【0027】
他の有利な実施形態によれば、
出力タービンおよび回収タービンから航空機の機械、空気圧、油圧および/または電気機器までパワーを伝達するための、特にパワー伝達ボックスの形の手段が設けられ、
回収構造体が、2つの熱伝達回路、すなわち入口側では出力タービンの高温空気流出口におよび出口側では排気ノズルに結合される1次回路と、入口側ではキャビンの空気流出口におよび出口側では回収タービンに結合される2次回路とを有する熱交換器を備え、
調整の手段に結合される、回収タービンの可変ピッチ案内羽根組立体は、特に航空機の過渡的な段階中ならびに高度により―離陸、上昇、降下、および着陸の各段階に関係する過渡的な段階―熱交換器から得られる空気流を方向付けることができる。
【0028】
これらの条件において、―圧力および/または温度の形をとった―キャビンの出口側のエネルギー回収は、主パワーソースに近いために最適化され、同時にキャビン内の制御された背圧によってキャビンの出口側での空気流出を確実にする。そのうえ、エネルギー回収手段を、単なる圧縮機や発電機にではなく主パワー発生源に接続することにより、パワー発生源の構成部品および機器のすべてによる質量効果から生じる慣性のため、万一故障の場合に急に生じる場合がある過速度を吸収することができる。
【0029】
さらに、キャビンの出口側でのエネルギーの回収は、前述の空気流の間の熱交換によってさらに豊富化される前に、航空機機器専用のシステムを冷却するのに使用される熱エネルギーによって、キャビンからの空気流出に含まれる位置エネルギーを補うことにより保証され得る。
【0030】
本発明の他の態様、特徴、および利点は、各々、添付の図面に関して、特定の実施形態の次に述べる非限定的な説明により明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】環境制御システムECSが装着されている航空機キャビンと関連して、航空機の後方コンパートメントでの、本発明による主パワーユニットの実施例の線図である。
【
図2】可変ピッチ案内羽根組立体が設けられるMPU求心力利用回収タービンの実施例の概略断面図である。
【
図3】可変ピッチ案内羽根組立体が設けられるMPU過給機の実施例の概略断面図である。
【
図4】パワーソースの熱効率に従って航空機に供給されるパワーのグラフであり、ノミナルポイントおよびサイジングポイントが示されている図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図のすべてにおいて、同じ機能を有する同一または類似の要素は、同一または関係のある参照マークで認識される。
【0033】
概略図を示す
図1に関して、主パワーユニット1が、航空機3の下流部分に位置している後方コンパートメント2に配置されている。乗客キャビン4は、上流に位置しており、中間コンパートメント5を介して後方コンパートメント2に結合される。圧力隔壁6が、中間コンパートメントからキャビン4を分離し、防火隔壁7が、後方コンパートメント2から中間コンパートメント5を隔離し、後方コンパートメント2には、外気取入れ口21および排気ノズル22が装着されている。
【0034】
APUタイプであるがエンジンカテゴリに属する主パワーユニット1は、エネルギー回収構造体に結合されるエンジン10を含む。補助エンジンは、外気取入れ口21から得られる空気流F1用の吸気コンプレッサ110を含むガス発生器またはHP本体11と、燃焼室111と、HPシャフト113によってコンプレッサ110を駆動するためのタービン112とから成る。このガス発生器は、入口側で外気取入れ口21に取り付けられる空気流ダクトK1に、および出口側で通常約500℃から600℃までの高温空気流F2を生じる出力タービン12に結合される。
【0035】
エネルギー回収構造体は、コンパートメントの外側、特にキャビンの中への風切り音の伝播を回避するために、防音装置14と共に回収タービン13上に集められる。
【0036】
この回収タービン13は、実施例ではパワー伝達ボックス17を介して、機器100−機械、空気圧(圧縮機)、電気(発電機)、および/または油圧(ポンプ)−特に過給機15および始動機/発電機16を駆動するために出力タービン12に結合される。このボックス17には、パワー伝達に適したギアボックスおよび傘歯車(図示せず)が装着される。出力タービン12は、シャフト121、すなわち示された実施例では端から端まで通るシャフトを介してボックス17にそのパワーを供給する。あるいは、このシャフトは、適切な減速箱(図示せず)を介して端から端まで通らないシャフトまたは外側シャフトであることができる。このボックスには、非回収段階において(たとえば、開いている飛行機キャビンドアの場合に)その分離が意図されるフリーホイールが装着されることが有利である。
【0037】
過給機15は、ECSシステムと呼ばれる、キャビン4の環境制御システム41に空気を供給し、ダクトK1の分岐K11を通して外気取入れ口21から得られる圧縮空気を、再循環混合バルブ42を介して、キャビンに移送する。過給機15は、キャビンに必要な空気圧エネルギーを供給するように、制御装置(図示せず)に通じている調整制御装置19よって調整される。変形として、吸気コンプレッサ110は、適切に空気を抽気することによって過給機15として役立つことができる。
【0038】
キャビン圧力調整弁と呼ばれる少なくとも1つの可変バルブ40が、キャビン4の出口43からダクトK2を介してエネルギー回収構造体に空気流F3を循環させる。有利なことに、ダクトK2は、空気流F3がキャビネット51の内側でパワーエレクトロニクス50を冷却するように中間コンパートメント5に通じており、―これらの補助機器は、もちろん、キャビンドアが開いていると動作可能でない、航空機の機能のために作られるさまざまなシステム専用である(着陸装置、等)―。コンパートメント5の出口において、空気流F3は約40℃の温度を有する。可変ピッチ案内羽根組立体は、キャビン出口で圧力調整弁に取り替え得ることが有利である。
【0039】
この例では、回収構造体は、入口側では高温空気流出口F2に、および出口側では排気ノズル22に結合される1次回路C1―この場合、流れF2の温度は、通常ca.550℃から300℃までに低下されている―と、入口側ではキャビン4から得られる空気流F3に、および出口側では回収タービン13に結合される2次回路C2とが装着される熱交換器18を備える。次いで、流れF3は、入口(約40℃)においてよりも実質的に高い、たとえば150℃程度の温度を有する。回収タービン13の出口において、空気流F3は、機器100を(下は約40℃まで)冷却するために後方コンパートメント2に分散され、次いで、コンパートメントの壁200での反射によって、ノズル22の中に流れF3′の形をとって集められる。収集は、このノズルの広くされた取入れ口221において、熱交換器18の出口で出力タービン12から得られる高温空気流F2の流出速度から生じるジェットポンプ作用によって行われる。
【0040】
回収タービン13は、
図2の概略断面図に関して詳細に説明される。回収タービンは、空気(流れF3)を持ち込むためのリングチャンバ131が装着される求心タービンである。次いで、この空気は、可変ピッチ案内羽根組立体136によって方向付けられる。タービン133は、ステータブレーディング132を有する。出口側空気流F3は、音響的に処理され、機器100および他の図示されていない補助機器(火炎、ジャッキ、等)の温度を制御するように後方コンパートメント2に分配される。あるいは、他のタイプのタービン、すなわち軸流または反動衝動タービン(傾斜のある)が使用され得る。
【0041】
案内羽根組立体136は、熱交換器18から得られる空気流を案内し加速する可変ピッチ可動式ブレード134から成る。これらのブレードは、可変ピッチを有し、それらの方向付けは、航空機の過渡的な段階中にならびに高度により調整制御装置19によって調整される。動作時に、圧力センサ135は、制御装置19と共同して案内羽根組立体132のブレード134の開放および閉鎖を調整する。
【0042】
過給機15は、
図3の概略断面図に関して後で詳細に説明される。この過給機は、回収タービンの構造に類似するが、空気流F1の循環に関して逆になる構造、すなわちリングチャンバ151―可変式ブレード154を有する可変拡散器156―と固定ブレード152が装着される遠心圧縮機153とを有する。可変ピッチ可動式ブレード154は、特に過渡的な段階中におよび高度により調整制御装置19によって案内される。圧力センサ155は、ECSシステムによって規定される特性を満たすために制御装置19を介してブレード154の方向付け、すなわち要求される圧力および流量の供給に調整される空気流量151を調整する(矢印F1)。
【0043】
具体的な例では、一般的な飛行機のECSシステムに対する空気圧パワーの要求は、通常180kWである。メインエンジンは、アイドル速度においてこれらの180kWを供給するようにサイジングされるが、公称動作では、飛行段階のある程度全体で360kWを生じる。したがって、本発明による主パワーユニットは、ECSシステムの要求を満たすのに全く十分である180kWの空気圧パワーを供給するようにサイジングされる。
【0044】
本発明による主パワーユニットによるパワー供給は、空気圧エネルギーの供給に限定されない。実際、この装置は、駆動モードで使用されるメインエンジンの始動機/発電機に結合される発電機として使用される始動機/発電機16を介して、メインエンジンのHP本体にパワーを供給することができる。
【0045】
したがって、通常420kW―すなわちECSシステムのための空気圧パワーの180kW、ジャッキのための油圧パワーの60kW、および発電機、ポンプ、等のため電気パワーの180kW―のパワーに対する全体的な要求に関して、本発明の回収構造体による過給機、回収タービン、および/または熱交換器を使用すると、これらの機能を実行するようにメインエンジンの排他的な使用により発生されることになるエネルギーの損失を実質的に低下させることができる。たとえば、可変ピッチ拡散器を有する過給機により、180kW、可変ピッチ回収タービンにより通常90kW、および熱交換器により15kWから20kW、すなわち全体で285kWから290kWを節約することができる。次いで、メインエンジンは、空気圧パワー(180kW)を除いた、これらのパワー供給の全体(420kW)の単に1/3すなわち約80kWに、換言すれば、この例では150kW(それぞれ空気圧、電気/油圧エネルギーを供給するように、70kWと、残りの240kWの1/3すなわち80kWとの和)を供給する主パワーユニットのそれよりも実質的に小さい供給に寄与する。
【0046】
上昇またはエンジンのうちの1つの故障の他に飛行段階においてメインエンジンの効率に類似し、完全な使用時(上昇または他のエンジンが故障中)にメインエンジンの効率(40%)の効率よりも低い主パワーユニットの効率(通常20%)を考慮すると、これがメインエンジンであれ主パワーユニットであれ、エンジンの間のエネルギーの供給を等分割することにより、公称動作条件下でまたは万一故障の場合に、飛行段階のすべてに適用される全体効率を最適化することができ、たとえば、油圧および電気パワーの供給の等分割とは、動作中の2つのメインエンジンおよび主パワーユニットについて1/3、1/3、1/3であり、万一メインエンジンの故障の場合には1/2、1/2である。
【0047】
さらに、等分割することにより、
図4において、エンジンによって供給されるパワーPwに依存する熱効率の変化を表すグラフGによって示されるように、タービンエンジンを構成するパワーソースのすべての効率化を最適化することができる。このグラフでは、
タービンエンジンのパワーサイジングポイント((Pd)0):このサイジングポイントは、パワーに対する要求の最も厳しい条件で(通常、エンジンの故障、または特に困難な離陸の場合に)確立されること、
主パワーユニットなしのタービンエンジンのノミナルポイント((Pn)0)、および等分割を有する主パワーユニットを備えるタービンエンジンのノミナルポイント((Pn)1)
を見ることができる。
【0048】
燃料の消費と関係がある熱効率に変化は、タービンエンジンが主パワーユニットを含む場合、すなわち次に述べる理由で最適化される。主パワーユニットのない場合、ポイント(Pn)0と(Pd)0との間の効率変化D0は、航空機が主パワーユニットを含む場合のポイント(Pn)1と(Pd)0との間の変化D1よりも大きいが、実質的により少ない量のパワーが供給される。この状況は、ノミナルポイントとサイジングポイントとの間の差を最小にすることによって等分割することで得られる最適化の表現である。実際、最初のD0は、ノミナル状態からサイジング状態まで作動するエンジンによって供給されるパワーの(万一故障の場合に供給されるべき200%に対応する)50%から100%までの移行、すなわち50%の差に対応する。第2の変化D1は、状態の第1のタイプから第2のタイプまで作動するために33%(より正確には1/3)から50%までの移行に対応する。主パワーユニットについて、タービンエンジンは、メインエンジンのすべてについて1/3すなわち33%の供給されるべきパワーの減少を示しており、(効率変化に対応する)全体効率は、差(D0−D1)だけ増加される。この例は、故障の場合に適用され得る負荷シェディングの可能性を考慮していない。負荷シェッドがあろうとなかろうと、効率は改善される。
【0049】
上のステートメントは、主パワーユニットの機能に言及している。この装置の故障の場合は引き合いに出されなかったが、万一それが発生するようであれば、もちろん、この装置と取り替えることできる他の非常用機器、たとえば劣化モードで、特に、この場合追加のパワーを供給する2つのメインエンジンのうちの少なくとも1つ、または予備のAPUや均等物、あるいはこれらのソースの組合せを考えておくことができる。
【0050】
そのうえ、本ステートメントで引き合いに出される等分割は、パワーソースにより設定条件でこの種の等分割ができるようになると考えられていることを意味する。考慮されるべき法的制約および物理的応力、特に機械的応力により、通常、等分割を得るためにできるだけ理想条件に向かって努力することができるだけである。