(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873494
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】モリブデン(IV)アミド前駆体及び原子層堆積法におけるそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C23C 16/40 20060101AFI20160216BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20160216BHJP
H01L 21/314 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
C23C16/40
C23C16/455
H01L21/314 A
【請求項の数】20
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-527130(P2013-527130)
(86)(22)【出願日】2011年8月25日
(65)【公表番号】特表2013-540893(P2013-540893A)
(43)【公表日】2013年11月7日
(86)【国際出願番号】US2011049155
(87)【国際公開番号】WO2012027575
(87)【国際公開日】20120301
【審査請求日】2014年7月24日
(31)【優先権主張番号】61/377,692
(32)【優先日】2010年8月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598169572
【氏名又は名称】シグマ−アルドリッチ・カンパニー、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】ヘイズ,ピーター・ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】オデドラ,ラジェシュ
(72)【発明者】
【氏名】ヒンドリー,サラ・ルイーズ
【審査官】
國方 恭子
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05064686(US,A)
【文献】
特表2005−534180(JP,A)
【文献】
特表2010−505002(JP,A)
【文献】
特表2009−542654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00−16/56
H01L 21/314
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Mo[N(Me)(Et)]4を基板に供給することを含む、原子層堆積法によるMoO2膜の形成方法。
【請求項2】
構造が式Iに対応するMo(IV)錯体:
【化1】
式中、
Lは−NR
1R
2であり、
R
1及びR
2は独立してC
1−C
6アルキル又は水素であり、
RはC
1−C
6アルキルであり、かつ
nは0、1、2又は3であり、nが0の場合、R
1及びR
2は互いに異なる。
【請求項3】
R1及びR2は独立してメチル、エチル又はプロピルであり、
Rはメチル、エチル又はプロピルであり、かつ
nは0、1又は2である、請求項2に記載の錯体。
【請求項4】
R1及びR2は同じであり、
Rはメチルであり、かつ
nは1又は2である、請求項2に記載の錯体。
【請求項5】
R1はメチル、R2はエチルであり、
Rはメチルであり、かつ
nは0、1又は2である、
請求項2に記載の錯体。
【請求項6】
構造が式Iに対応する前記錯体が、
(メチルシクロペンタジエニル)Mo(NMe2)3、
(エチルシクロペンタジエニル)Mo(NMe2)3、
(プロピルシクロペンタジエニル)Mo(NMe2)3、
(メチルシクロペンタジエニル)Mo(NEt2)3、
(エチルシクロペンタジエニル)Mo(NEt2)3、
(プロピルシクロペンタジエニル)Mo(NEt2)3、
(シクロペンタジエニル)Mo(NMeEt)3、
(メチルシクロペンタジエニル)Mo(NMeEt)3、
(エチルシクロペンタジエニル)Mo(NMeEt)3及び
(プロピルシクロペンタジエニル)Mo(NMeEt)3
から成る群から選択される、請求項2に記載の錯体。
【請求項7】
構造が式Iに対応する前記錯体が、
(メチルシクロペンタジエニル)Mo(NMe2)3、
(メチルシクロペンタジエニル)Mo(NMeEt)3、及び
(シクロペンタジエニル)Mo(NMeEt)3
から成る群から選択される、請求項2に記載の錯体。
【請求項8】
構造が式Iに対応する少なくとも1種の前駆体を基板に供給することを含む、原子層堆積法によるMoO
2膜の形成方法:
【化2】
式中、
Lは−NR
1R
2であり、
R
1及びR
2は独立してC
1−C
6アルキル又は水素であり、
RはC
1−C
6アルキルであり、かつ
nは0、1、2又は3である。
【請求項9】
R1及びR2は独立してメチル、エチル又はプロピルであり、
Rはメチル、エチル又はプロピルであり、かつ
nは0、1又は2である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
R1及びR2は同じであり、
Rはメチルであり、かつ
nは0、1又は2である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
R1はメチル、R2はエチルであり、
Rはメチルであり、かつ
nは0、1又は2である、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
構造が式Iに対応する前記少なくとも1種の前駆体が、
(シクロペンタジエニル)Mo(NMe2)3、
(メチルシクロペンタジエニル)Mo(NMe2)3、
(エチルシクロペンタジエニル)Mo(NMe2)3、
(プロピルシクロペンタジエニル)Mo(NMe2)3、
(メチルシクロペンタジエニル)Mo(NEt2)3、
(エチルシクロペンタジエニル)Mo(NEt2)3、
(プロピルシクロペンタジエニル)Mo(NEt2)3、
(シクロペンタジエニル)Mo(NMeEt)3、
(メチルシクロペンタジエニル)Mo(NMeEt)3、
(エチルシクロペンタジエニル)Mo(NMeEt)3、及び
(プロピルシクロペンタジエニル)Mo(NMeEt)3
から成る群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
構造が式Iに対応する前記少なくとも1種の前駆体が、
(メチルシクロペンタジエニル)Mo(NMe2)3、
(メチルシクロペンタジエニル)Mo(NMeEt)3、
(シクロペンタジエニル)Mo(NMeEt)3、及び
(シクロペンタジエニル)Mo(NMe2)3
から成る群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記原子層堆積法が、光原子層堆積法、液体注入原子層堆積法及びプラズマ原子層堆積法から成る群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記前駆体を、H2O、H2O2、O2、オゾン、iPrOH、tBuOH、及びN2Oから選択される酸素源のパルスと交互のパルスで基板に堆積する、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
構造が式Iに対応する少なくとも2種の前駆体を基板に供給し、原子層堆積法によりMoO2膜を形成する、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
更に基板に少なくとも1種の共前駆体を供給し、原子層堆積法により混合金属膜を形成することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
構造が式Iに対応する前記少なくとも1種の前駆体を、基板に供給する前に溶媒に溶解する、請求項8に記載の方法。
【請求項19】
構造が式Iに対応する前記少なくとも1種の前駆体をそのままの状態で基板に供給する、請求項8に記載の方法。
【請求項20】
MoO2膜がメモリー及び/又は論理回路用途である、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2010年8月27日に出願された米国仮出願第61/377,692号の優先権を主張し、参照により、その全体の開示が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、モリブデン(Mo)(IV)アミド前駆体及びそのような前駆体を用いる原子層堆積法(ALD)によってMoO
2膜を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ALDは薄膜の堆積方法として知られている。これは原子層の制御ができ、様々な組成の基板表面に前駆体によって供給される材料の共形(conformal)薄膜を成長させることができる表面反応に基づく自己制限的で、逐次的な独特の膜成長技術である。ALDでは、反応中は複数の前駆体は分離されている。第1の前駆体は基板上を通過して基板表面に単分子層を生成する。未反応の余分な前駆体は反応室から排出される。次に、第2の前駆体を基板上に通して第1の前駆体と反応させ、基板表面に単分子層の膜を形成する。このサイクルを繰り返して所望の厚さの膜を作製する。
【0004】
ALD工程はナノテクノロジー及びコンデンサ電極、ゲート電極、接着性拡散障壁及び集積回路等の半導体装置の製造に利用される。更に、高誘電率を有する誘電体薄膜は超微細電子工学や光電子工学の多くの領域で必要とされている。超微細電子工学部品の絶え間ない小型化によりこのような誘電体膜を使用する必要性が増大している。
【0005】
Green,J.他は、「the synthesis and isolation of the Mo complex, Mo(C
5H
5)(NMe
2)
3(モリブデン錯体、Mo(C
5H
5)(NMe
2)
3、の合成と単離)、J. Chem. Soc., Dalton Trans., 1997、3219-3224を報告している。
【0006】
米国特許第5,064,686には、化学蒸着法(chemical vapor deposition:CVD)に用いるMo(IV)錯体が開示されている。CVDにおいてMo[N(Me)(Me)]
4の使用が試みられた。しかしながら、CVDでは熱安定性に関する問題が見られ、この前駆体が構造は類似しているが、MoO
2層を堆積させるには適していないことが判明した。
【0007】
更には、Mo(NtBu)
2(NMe
2)
2は、DRAMには不適切なMoO
3膜を形成したため、ALDによるMoO
2膜の形成に対してはうまくいかなかった。従って、ALDによってMoO
2膜を堆積することができ、より高い熱安定性、より高い揮発性、或はより高い堆積速度を有する新しいMo前駆体を見つけることが必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
一態様において、構造が式Iに対応する錯体が提供される:
【0010】
式中、Lは−NR
1R
2であり、R
1及びR
2はC
1−C
6アルキル又は水素であり、RはC
1−C
6アルキルであり、nは0、1、2又は3である。
別の態様において、ALDによるMoO
2膜の形成法が提供される。前記方法は少なくとも1種の前駆体を基板へ供給することを含み、前記少なくとも1種の前駆体は構造が上記の式Iに対応する。
【0011】
別の態様において、錯体Mo[N(Me)(Et)]
4が提供され、またALDおけるMoO
2膜を形成するためのその使用を提供する。
上記に要約した態様の特定の側面を含む他の態様は、以下の詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、Mo[N(Me)(Et)]
4のmg対温度/時間を示す熱重量分析(TGA)のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の種々の側面において、Mo(IV)アミド前駆体が提供され、それを用いてALDによりMoO
2薄膜を形成する方法が提供される。
一態様において、本発明の方法は高誘電率を示すMo含有薄膜を作製又は成長させるのに使用される。本明細書で用いる誘電体薄膜とは高誘電率を有する薄膜のことである。
【0014】
本明細書で用いる用語「前駆体」は、堆積のために基板に供給されてALDによる薄膜を形成する有機金属の分子、錯体及び/又は化合物を指す。
用語「Cp」は遷移金属に結合しているシクロペンタジエニル(C
5H
5)配位子を指す。本明細書で用いるCp配位子の5個の炭素原子は全てη
5−配位の金属中心とπ結合によって結合し、従って本発明の前駆体はπ錯体である。
【0015】
用語「アルキル」は、長さが1個から約6個の炭素原子の飽和炭化水素鎖であり、限定されないが、例えばメチル、エチル、プロピル及びブチルである。アルキル基は直鎖又は分岐鎖でもよい。例えば、本明細書で用いるように、プロピルはn−プロピル及びiso−プロピルを包含し、ブチルはn−ブチル、sec−ブチル、iso−ブチルおよびtert−ブチルを包含する。更に、本明細書で用いる「Me」はメチルを指し、「Et」はエチルを指す。
【0016】
本明細書では用語「アミノ」は必要に応じ置換されていてもよい1価の窒素原子(即ち、−NR
1R
2、ここでR
1及びR
2は同じでも異なっていてもよい)を指す。本発明に包含されるアミノ基の例としては、限定されないが、
【0021】
が挙げられる。更に、このアミノ基の窒素原子は金属中心に共有結合し、合わせて「アミド」基(即ち、
【0023】
)という。更に、これらは、「アンモノ」基又は無機アミドという。
第1の態様において、構造が式Iに対応する「ピアノ用椅子(pianostool)」型錯体が提供される:
【0025】
式中、Lは−NR
1R
2であり、R
1及びR
2は独立してC
1−C
6アルキル又は水素であり、RはC
1−C
6アルキルであり、nは0、1、2又は3である。
R
1及びR
2は同じでも異なっていてもよい。特定の態様において、R
1及びR
2は共にメチルである。別の特定の態様において、R
1はメチルであり、R
2はエチルである。
【0026】
更なる態様において、nが0の場合、R
1及びR
2は互いに異なる。
一態様において、R
1及びR
2は独立してメチル、エチル又はプロピルであり、Rはメチル、エチル又はプロピルであり、nは0、1又は2である。
【0027】
別の態様において、R
1及びR
2は同じであり、Rはメチルであり、nは0、1又は2である。
別の態様において、R
1はメチル、R
2はエチルであり、Rはメチルであり、nは0、1又は2である。
【0028】
構造が式Iに対応する錯体の例としては、
(シクロペンタジエニル)Mo(NMe
2)
3、
(メチルシクロペンタジエニル)Mo(NMe
2)
3、
(エチルシクロペンタジエニル)Mo(NMe
2)
3、
(プロピルシクロペンタジエニル)Mo(NMe
2)
3、
(メチルシクロペンタジエニル)Mo(NEt
2)
3、
(エチルシクロペンタジエニル)Mo(NEt
2)
3、
(プロピルシクロペンタジエニル)Mo(NEt
2)
3、
(シクロペンタジエニル)Mo(NMeEt)
3、
(メチルシクロペンタジエニル)Mo(NMeEt)
3、
(エチルシクロペンタジエニル)Mo(NMeEt)
3及び
(プロピルシクロペンタジエニル)Mo(NMeEt)
3が挙げられる。
【0029】
別の態様において、Mo(IV)アミド錯体のシクロペンタジエニル環は別のアミド基に置き換えられ、テトラキスアミド:Mo[N(Me)(Et)]
4を形成する。
式Iに従う錯体及びMo[N(Me)(Et)]
4は、ALDによりMoO
2膜を形成するための前駆体として用いられる。本明細書に開示される前駆体は、H
2O、H
2O
2、O
2、オゾン、iPrOH、tBuOH、又はN
2O等の適切な酸素源のパルスと交互のパルスで、基板に堆積するために供給されてもよい。
【0030】
一態様において、式Iに従う少なくとも1種の前駆体を堆積のために単独で、又は共反応物との組み合わせで供給することにより、MoO
2膜を形成することができる。そのような共反応物の例としては、水素、水素プラズマ、酸素、空気、水、H
2O
2、アンモニア、ヒドラジン類、アルキルヒドラジン類、ボラン類、シラン類、オゾン又はこれらのあらゆる組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
様々な基板を本発明の方法で使用することができる。例えば、式Iに従う前駆体又はMo[N(Me)(Et)]
4を、限定されないが、ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素、タンタル、窒化タンタル又は銅等の基板表面に堆積させるために供給することができる。
【0032】
本発明のALDの方法は種々のタイプのALD工程を包含する。例えば、一態様では従来型のALDを用いて本発明の金属含有膜を形成する。従来型及び/又はパルス注入ALD工程については、例えば、George S. M.等のJ. Phys. Chem. 1996. 100:13121-13131を参照されたい。
【0033】
別の態様では、液体注入ALDを用いて金属含有膜を形成するが、ここでは、液体前駆体が気泡管による蒸気の引き抜き(従来型)とは対照的に、直接的な液体注入によって反応チャンバーに供給される。液体注入ALD工程については、例えば、Potter R. J.等のChem. Vap. Deposition. 2005. 11(3):159を参照されたい。
【0034】
液体注入ALDの堆積条件の例としては、限定されないが、例えば下記が挙げられる:
(1)基板温度:Si(100)表面で160〜300℃
(2)蒸着装置温度範囲:約120〜200℃
(3)反応容器圧力範囲:約2〜50ミリバール
(4)溶媒:トルエン又は上述の任意の溶媒
(5)溶液濃度範囲:約0.05〜2M
(6)注入速度範囲:約1〜10μl/パルス(4パルス/サイクル)
(7)不活性ガス流量:約50〜500cm
3/分
(8)パルス順序(秒)(前駆体/気体による洗浄(purge)/H
2O/気体による洗浄(purge)):チャンバーの大きさによって変わる。
(9)サイクル数:所望の膜厚によって変わる。
【0035】
前記前駆体を適切な炭化水素系溶媒又はアミン系溶媒に溶解することができる。適切な炭化水素系溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン及びノナン等の脂肪族炭化水素、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素、並びにジグリム、トリグリム、テトラグリム等の脂肪族エーテル及び環状エーテルが挙げられるが、これらに限定されない。適切なアミン溶媒の例としては、限定されないが、オクチルアミン及びN,N−ジメチルドデシルアミンが挙げられる。例えば、前駆体はトルエンに溶解して0.05から1M溶液を調製することができる。
【0036】
別の態様では、構造が式Iに対応する少なくとも1種の前駆体、及び/又はMo[N(Me)(Et)]
4は「そのままの状態で」(キャリアガスで希釈されずに)、基板に供給することができる。
【0037】
別の態様では、光ALDを使って、金属含有膜を形成することができる。光ALD工程については、例えば米国特許第4,581,249号を参照されたい。
別の態様では、液体注入と光ALDの両方を使って、構造が式Iに対応する少なくとも1種の前駆体、及び/又はMo[N(Me)(Et)]
4を使用して金属含有膜を形成することができる。
【0038】
別の態様では、プラズマALDを使って、構造が式Iに対応する少なくとも1種の前駆体、及び/又はMo[N(Me)(Et)]
4を使用して金属含有膜を形成することができる。
【0039】
従って、これらの方法で利用される、構造が式Iに対応する有機金属前駆体及びMo[N(Me)(Et)]
4は液体、固体或は気体状でもよい。具体的には、前記前駆体は処理チャンバーへ蒸気を一貫して移送するための高い蒸気圧を有し、雰囲気温度で液体である。
【0040】
ALDは実質的に化学反応性に依存し、熱分解には依存しない。従って、前駆体に適する望ましい特性に基本的な差がある。前駆体は使用される温度で熱的に安定でなければならず、基板表面に堆積するために十分な揮発性がなければならない。更に、金属酸化物の膜が堆積するとき、金属前駆体と酸化物源との間に迅速かつ完全な化学反応が必要である。しかし、反応は基板表面でのみ起きるようにして、下層の構造を損傷しないようにすべきであり、炭素及び水素等の副生成物は表面から容易に除かれなければならない。
【0041】
金属中心に付くCp環及び3個の同じ配位子の置換の変化がALD工程には有用で改善された特性を示すことが見出された。例えば、式Iの前駆体は、単純な金属アミド類の場合に近い成長速度でALDによるMoO
2膜を堆積する能力が高いが、熱安定性が高いためにより高温で操作でき、生成物の品質向上をもたらす。また、モリブデン(IV)アミドのピアノ椅子型錯体を使用すると、分子を分極し、優れた共形性制御のための自己制限性膜成長となる表面との飽和反応が可能となり、ALDの性能を向上させる。
【0042】
特定の態様では、本発明の方法は、シリコンチップ等の基板表面のメモリー及び論理回路用途のダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー(DRAM)及び相補型金属酸化物半導体(CMOS)等の用途に利用される。
【0043】
更なる態様では、ALDによる「混合」金属膜の形成方法が提供される。本明細書で使用する「混合」金属膜という用語は少なくとも2つの異なる金属が膜を構成することを指す。
【0044】
一態様において、混合金属膜は、式Iに従う少なくとも1種の前駆体及び/又はMo[N(Me)(Et)]
4、並びに少なくとも1種の異なる金属中心を有する共前駆体を堆積させるために供給することによってALDで形成する。例えば、式Iに従う少なくとも1種のMo前駆体及び/又はMo[N(Me)(Et)]
4、並びに、鉛、チタン、ストロンチウム及び/又はバリウム前駆体等の少なくとも1種の適切な共前駆体を堆積させるために基板に供給し、混合金属膜を作製してもよい。
【0045】
本発明の方法によって作製される薄膜は10から250、好ましくは少なくとも25から40、より好ましくは少なくとも40から100の誘電率を有することができる。さらに、100を超える値の超高誘電率が考えられる。膜の得られる誘電率は堆積に使用される金属、作製される膜の厚さ、堆積に使用されるパラメータ及び基板、並びにその後の加工等の多くの要因に依存することは当業者には理解される。
【実施例】
【0046】
下記の実施例は単なる例示であり、いかなる意味においても本開示を限定するものではない。すべての操作はグローブボックス及びシュレンク・ライン技術を使用して不活性雰囲気中で行った。NMR分析はBruker250MHz装置を用いて行った。
【0047】
実施例1−Mo(NMeEt)
4の合成
リチウムN−エチルメチルアミドを、標準的な技術を用いて、nBuLi及びHNEtMeから調製した。nBuLi(680mL、1.6Mヘキサン溶液、氷浴で0℃に冷却)に4時間にわたって、N−エチルメチルアミン(65.6g、1.1モル)を滴下した。アミン全量を添加後、直ちに混合物を室温まで温め、次いで一晩攪拌した。これにTHF(250ml)を加え、混合物を1時間攪拌し、次いで氷浴で0℃に冷却した。この混合物にMoCl
5(50.2g、0.18モル、混合物が大きな発熱と吹き出し(spitting)を起こすため、1〜2gの少量ずつで8時間にわたって添加)を加えた。MoCl
5を全量添加後直ちに暗褐色(ほぼ黒色)の反応混合物を室温まで温め、次いで1時間環流した。混合物を冷却し、次いで一晩攪拌した。混合物を沈降(LiCl)させ、標準的な手法を用いて濾過した。溶媒を反応混合物から除去し、次に紫色の液体を反応混合物から昇華/蒸留させて紫色の液体を得た。
【0048】
蒸留条件:3.5×10
−2Torrの圧力、100〜110℃油浴温度
【0049】
【表1】
【0050】
図1にMo(NMeEt)
4のTGAデータを示す。
実施例2−[Mo(MeCp)(NEtMe)
3]の合成
氷浴で0℃に冷却したMo(NEtMe)
4(上記で調製、3.3g、0.01モル)の暗紫色のトルエン溶液(60ml)に、新たに熱分解したMeCpH(4g、0.05モル、シリンジで添加)を加えた。即時に色が変化することは観察されなかったので、混合物を2時間室温で攪拌した。この場合も、色の変化は観察されなかったので、混合物を3時間還流したところ、暗緑色の溶液を生成した。トルエンを反応混合液から除去し、暗緑色の液体を得た。
【0051】
【表2】
【0052】
実施例3−[Mo(MeCp)(NEtMe)
3]を用いたALD
MoO
2膜は特注のALD反応器で堆積する。Mo(MeCp)(NEtMe)
3及びオゾンを前駆体として使用する。MoO
2膜はシリコンウエハ基板表面に堆積する。堆積の前にウエハを四角(1インチ×1/2インチ)に切り、1%HFで研磨してウエハ基板を準備する。
【0053】
成長温度は200〜350℃である。成長圧力は0.5〜1.5Torrである。反応器に30sccmの乾燥窒素を連続して流す。反応器内の全てのコンピュータ制御弁はCajon社製の空気作動ALD VCR弁である。
【0054】
オゾンを過剰に流す。モリブデンはステンレス鋼製アンプルに保存する。ALD弁をアンプルに直接付ける。このALD弁の出口は窒素注入に使用する別のALD弁とT字型に分岐する。T字型出口の脚部は500cm
3ステンレス鋼製容器に接続する。容器の出口には注入弁と呼ばれる第三のALD弁が取り付けられ、その出口は反応器に直結している。窒素注入はモリブデン注入弁後方の全圧を高めるために使用し、圧力が反応器の成長圧よりも高くなるようにする。窒素の注入は30ミクロン・ピンホールVCRガスケットを使用して行う。すべての弁とアンプルを、アンプル、弁及び管を50℃から250℃に均一に加熱できるオーブンのような筺体に入れる。
【0055】
ALD成長操作中、弁は次のような方法で順序づける。モリブデン前駆体を、活性化したシリコン表面に導入する。次いで、表面に付着していない余分の反応分子を除去する排気の目的も含む窒素流による洗浄を行う。オゾンを次に導入し、続いて追加の窒素流洗浄を行う。次いで、オゾンを注入してALDサイクルをもう一度開始する。
【0056】
総サイクル数は典型的には300である。
本明細書において引用したすべての特許及び刊行物は、その全体が参照によりこの用途に組み込まれる。
【0057】
用語「含む(comprise、comprises、comprising)」は、排他的ではなく包含的に解釈する。