(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873496
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】合成ガス調整に付随した低温硫黄耐性タール除去
(51)【国際特許分類】
B01J 27/19 20060101AFI20160216BHJP
B01J 37/20 20060101ALI20160216BHJP
C01B 3/16 20060101ALI20160216BHJP
C07C 1/04 20060101ALI20160216BHJP
C07C 9/04 20060101ALI20160216BHJP
C07C 41/01 20060101ALI20160216BHJP
C07C 43/04 20060101ALI20160216BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20160216BHJP
【FI】
B01J27/19 M
B01J37/20
C01B3/16
C07C1/04
C07C9/04
C07C41/01
C07C43/04 A
!C07B61/00 300
【請求項の数】21
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-528390(P2013-528390)
(86)(22)【出願日】2011年9月13日
(65)【公表番号】特表2013-542061(P2013-542061A)
(43)【公表日】2013年11月21日
(86)【国際出願番号】US2011051460
(87)【国際公開番号】WO2012037164
(87)【国際公開日】20120322
【審査請求日】2014年5月30日
(31)【優先権主張番号】61/382,140
(32)【優先日】2010年9月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514092227
【氏名又は名称】ルーマス・テクノロジー・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パンサレ,スーラブ・エス
(72)【発明者】
【氏名】アリソン,ジヨー・デイ
(72)【発明者】
【氏名】ラスク,スチーブン・イー
(72)【発明者】
【氏名】ツアング,アルバート・シー
【審査官】
田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第5230789(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0205863(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0299288(US,A1)
【文献】
国際公開第2010/048376(WO,A1)
【文献】
特開2005−272782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
C01B 3/00−3/58
C07C 1/00−409/44
C07B 61/00
C10L 3/00−3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)NiO、
(b)MoO3またはWO3の少なくとも一方を含有して成る金属混合物、
(c)SiO2およびAl2O3の少なくとも一方を含有して成る混合物、および
(d)0.001から1重量%のP2O5、
を含有して成る触媒であって、触媒の金属部位が硫化されておりかつメタン生成および水性ガスシフト反応を300℃から600℃の範囲の温度で起こさせながら合成ガスからタールを除去する能力を有する触媒。
【請求項2】
前記NiOが1から10重量%存在する請求項1記載の触媒。
【請求項3】
前記金属混合物が10から20重量%存在する請求項1記載の触媒。
【請求項4】
触媒と接触する前の前記合成ガスが加熱されていない請求項1記載の触媒。
【請求項5】
前記タールの除去を350℃で65%以上の変換率で起こさせる請求項1記載の触媒。
【請求項6】
前記タールの除去を400℃で70%以上の変換率で起こさせる請求項1記載の触媒。
【請求項7】
前記メタン生成で150から800μモル/g触媒/秒のCH4をもたらす請求項1記載の触媒。
【請求項8】
前記水性ガスシフトで30から50%のCO変換率をもたらす請求項1記載の触媒。
【請求項9】
(a)NiOが1から10重量%存在し、
(b)10から20重量%の量のMoO3含有金属混合物、
(c)SiO2およびAl2O3の少なくとも一方を含有する混合物、および
(d)0.001から1重量%の量のP2O5、
を含有して成る触媒であって、触媒の金属部位が硫化されておりかつ350℃から550℃の範囲の温度でメタン生成反応を150から800μモル/g触媒/秒のCH4がもたらされるように起こさせかつ水性ガスシフト反応を30から50%のCO変換率がもたらされるように起こさせながら加熱されていない合成ガスからタールを350℃で65%以上の変換率で除去する能力を有する触媒。
【請求項10】
方法であって、
合成ガスを生じさせ、
前記合成ガスを
(a)NiO、
(b)MoO3またはWO3の少なくとも一方を含有して成る金属混合物、
(c)SiO2およびAl2O3の少なくとも一方を含有して成る混合物、および
(d)P2O5、
を含有して成る触媒に接触させることで処理された合成ガスを生じさせ、そして
前記処理された合成ガスを触媒化学反応に導入するが、
前記触媒と接触させる前の前記合成ガスを加熱せずかつ前記処理された合成ガスの冷却を前記触媒化学反応を起こさせる前に行わない方法。
【請求項11】
前記合成ガスを前記触媒と接触させる時の温度の範囲を350℃から550℃にする請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記NiOを1から10重量%存在させる請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記金属混合物を10から20重量%存在させる請求項10記載の方法。
【請求項14】
前記P2O5を0.001から1重量%存在させる請求項11記載の方法。
【請求項15】
前記触媒の金属部位が硫化されておりかつ前記触媒がメタン生成および水性ガスシフト反応を300℃から600℃の範囲の温度で起こさせながら合成ガスからタールを除去する能力を有する請求項11記載の方法。
【請求項16】
前記タールの除去を350℃で65%以上の変換率で起こさせる請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記タールの除去を400℃で70%以上の変換率で起こさせる請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記メタン生成で150から800μモル/g触媒/秒のCH4を生じさせる請求項15記載の方法。
【請求項19】
前記水性ガスシフトで30から50%のCO変換率をもたらす請求項15記載の方法。
【請求項20】
前記触媒化学反応がフィッシャー・トロプシュ、メタン生成または合成ガスからジメチルエーテルそしてガソリンを生じさせる反応である請求項10記載の方法。
【請求項21】
方法であって、
合成ガスを生じさせ、
前記合成ガスを
(a)NiOが1から10重量%存在し、
(b)10から20重量%の量のMoO3含有金属混合物、
(c)SiO2およびAl2O3の少なくとも一方を含有する混合物、および
(d)0.001から1重量%の量のP2O5、
を含有して成っていて触媒の金属部位が硫化されておりかつ350℃から550℃の範囲の温度でメタン生成反応を150から800μモル/g触媒/秒のCH4がもたらされるように起こさせかつ水性ガスシフト反応を30から50%のCO変換率がもたらされるように起こさせながら加熱されていない合成ガスからタールを350℃で65%以上の変換率で除去する能力を有する触媒、
に接触させることで処理された合成ガスを生じさせ、そして
前記処理された合成ガスを触媒化学反応に導入するが、
前記触媒と接触させる前の前記合成ガスを加熱せずかつ前記処理された合成ガスの冷却を前記触媒化学反応を起こさせる前に行わない方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2010年9月13日付けで出願した表題が“Low Temperature Sulfur Tolerant Tar Removal with Concomitant Synthesis Gas Conditioning”の米国仮出願連続番号61/382,140(これは引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)の利点を請求しかつそれに対する優先権を主張する仮ではない出願である。
【技術分野】
【0003】
低温硫黄耐性タール除去用触媒。
【背景技術】
【0004】
合成ガスには様々な不純物、例えばタール、H
2S、NH
3および粒状物などが入っている。タールは一般に炭素質材料、例えば木、石炭または泥炭などの熱分解中に生じる多核芳香族化合物であると定義され、それは操作上の問題の一因になり、例えば工程ラインの詰まりおよび熱交換表面の汚れなどの一因になり、その結果として工程効率の低下および工場の休止が起こってしまう。タールはコークス前駆体として作用する傾向があり、その結果としてガス化装置の下流で触媒の失活をもたらす。加うるに、タールに含まれるいくつかの成分は公知の発癌性物質である。従って、合成ガスを付加価値のある製品に経済的に変化させるには合成ガスの流れからタールを除去することが重要である。
【0005】
タールの濃度は原料、ガス化装置の種類および操作条件に応じて多様であり得る。下流の大部分の変換工程および装置がタールに対して示す許容値はゼロであるか或は非常に低い(ppbの範囲)。触媒作用でタールを除去することは最も簡単で最も経済的な方法ではあるが、研究開発努力が25年間継続して行われてきた後でさえ、商業化された低温(<500℃)タール除去用触媒は存在しない。当該技術分野で現在用いられている触媒は少なくとも600℃、好適には800℃の温度が要求されることから、加熱と高価な装置が必要である。合成ガスを発生装置から追加的加熱無しに直接取り出すことができれば、追加的費用も装置も必要でなくなる。
【0006】
1)耐硫黄性を示し、2)コークス化に抵抗を示し、3)高温および還元環境に耐える能力を有し、4)NH
3、HClおよび数種の重金属の存在下で作用を示す能力を有しかつ5)耐摩滅性を示すタール除去用触媒を見つけだす必要性が存在する。
【発明の概要】
【0007】
MoO
3またはWO
3の少なくとも一方から成るか或は本質的にから成る金属混合物、SiO
2およびAl
2O
3の少なくとも一方を含有して成る混合物、P
2O
5およびNiOを含有して成る触媒。本態様では、本触媒の金属部位が硫化されておりかつ本触媒は300℃から600℃の範囲の温度でメタン生成および水性ガスシフト反応を起こさせながら合成ガスからタールを除去する能力を有する。
【0008】
代替態様における触媒は、1から10重量%の量で存在するNiO、10から20重量%の量のMoO
3含有金属混合物、SiO
2およびAl
2O
3の少なくとも一方を含有して成る混合物および0.001から1重量%の量のP
2O
5から成るか或はから本質的に成る。この態様では、本触媒の金属部位が硫化されておりかつ本触媒は加熱されていない
合成ガスを用いたメタン生成反応および水性ガスシフト反応を同時に起こさせながらタールを除去する能力を有する。本触媒は、350℃から550℃の範囲の温度でメタン生成反応を150から800μモル/g触媒/秒のCH
4がもたらされるように起こさせかつ水性ガスシフト反応を30から50%のCO変換率がもたらされるように起こさせながらタールを350℃で65%以上の変換率で除去する能力を有する。
【0009】
別の態様では、合成ガスを生じさせることで本方法を開始する。次に、その合成ガスを触媒と接触させることで処理された合成ガスを生じさせる。この態様における触媒は、MoO
3またはWO
3の少なくとも一方を含有して成る金属混合物、SiO
2およびAl
2O
3の少なくとも一方を含有して成る混合物、P
2O
5およびNiOから成るか或はから本質的に成る。本触媒の金属部位は硫化されておりかつ本触媒は300℃から600℃の範囲の温度でメタン生成および水性ガスシフト反応を起こさせながら合成ガスからタールを除去する能力を有する。次に、その処理された合成ガスを触媒化学反応に導入する。この態様では、本触媒と接触させる前の合成ガスを加熱せずそしてその処理された合成ガスの冷却を触媒化学反応を起こさせる前に行わない。
【0010】
更に別の態様では、合成ガスを生じさせることで本方法を開始する。次に、その合成ガスを触媒と接触させることで処理された合成ガスを生じさせる。この態様における触媒は、1から10重量%の量で存在するNiO、10から20重量%の量のMoO
3含有金属混合物、SiO
2およびAl
2O
3の少なくとも一方を含有して成る混合物および0.001から1重量%の量のP
2O
5から成るか或はから本質的に成る。この態様では、本触媒の金属部位が硫化されておりかつ本触媒は加熱されていない合成ガスを用いたメタン生成反応および水性ガスシフト反応を同時に起こさせながらタールを除去する能力を有する。本触媒は、350℃から550℃の範囲の温度でメタン生成反応を150から800μモル/g触媒/秒のCH
4がもたらされるように起こさせかつ水性ガスシフト反応を30から50%のCO変換率がもたらされるように起こさせながらタールを350℃で65%以上の変換率で除去する能力を有する。次に、その処理された合成ガスを触媒化学反応に導入する。この態様では、本触媒と接触させる前の合成ガスを加熱せずそしてその処理された合成ガスの冷却を触媒化学反応を起こさせる前に行わない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
以下の説明を添付図と協力させて参照することで本発明および本発明の利点のより完全な理解が得られるであろう。
【
図1】
図1に、本触媒が500psig、5.5時
−1および350℃で示した性能を示す。
【
図2】
図2に、500psigおよび5.5時
−1で350℃および400℃の異なる2種類の温度率におけるナフタレン変換率を示す。
【
図3】
図3に、特定温度範囲におけるナフタレン変換率を示す。
【
図4】
図4に、特定時間経過した時のナフタレン変換率を示す。
【
図5】
図5に、特定温度範囲におけるCH
4生成率を示す。
【
図6】
図6に、特定時間が経過した時のCH
4生成率を示す。
【0012】
次に、本発明の好適な手順の1種または2種以上の詳細な説明を行うが、本発明の特徴および概念を他の手順で示す可能性がありかつ本発明の範囲をその記述または例示する態
様に限定するものでないと理解されるべきである。本発明の範囲を以下の請求項の範囲でのみ限定することを意図する。
【0013】
1つの態様における本触媒は、MoO
3またはWO
3の少なくとも一方を含有して成る金属混合物、SiO
2およびAl
2O
3の少なくとも一方を含有して成る混合物、P
2O
5およびNiOを含有して成る。この態様では、本触媒の金属部位は硫化されておりかつ本触媒はメタン生成および水性ガスシフト反応を300℃から600℃の範囲の温度で起こさせながら合成ガスからタールを除去する能力を有する。
【0014】
1つの態様において、硫化された金属部位は、その部位に活性が与えられるように硫黄と結合した状態の金属を記述するものである。硫化を典型的には金属酸化物と反応して金属の硫化物をもたらす硫黄分子、例えば二硫化ジメチル、硫化ジメチルまたはH
2Sガスなどを用いて達成する。
【0015】
1つの態様では、NiOを0.5から15重量%、1から10重量%、或は7.5から12.5重量%存在させる。別法として、Niが基になった触媒の他の変形、例えばNiS
2なども同様に使用可能である。そのようなNiが基になった触媒は追加的に水性ガスシフト活性も示す可能性があるが、これは一酸化炭素と水蒸気が反応して二酸化炭素と水素がもたらされる化学反応(CO+H
2O→CO
2+H
2)である。追加的に生じるH
2はメタン生成反応(3H
2+CO→CH
4+H
2O)に有用であり、これが起こると水性ガスシフトの反応体のための追加的水が生じる。その上、生じたH
2はまたタールに存在するナフタレンの分解にも有用である(mC
10H
8+nH
2→CH
4+C
2H
6+C
3H
8+C
6H
6+コークス)。
【0016】
そのメタン生成反応によってCH
4が150から800μモル/g触媒/秒の生成量、或は300から700μモル/g触媒/秒の生成量で生じ得る。
【0017】
その水性ガスシフト反応によって30%以上のCO変換率がもたらされ得る。代替態様では、その水性ガスシフト反応によって30−50%のCO変換率がもたらされ得る。
【0018】
別の態様における前記金属混合物はMoO
3またはWO
3の少なくとも一方を含有して成り、それを5から25重量%、10から20重量%、或は12.5から17.5重量%存在させる。別法として、Niが基になった触媒の他の変形、例えばNiSなども同様に使用可能である。
【0019】
更に別の態様では、P
2O
5を0.001から1重量%存在させる。
【0020】
他の1つの態様における前記混合物はSiO
2およびAl
2O
3の少なくとも一方を含有して成り、それを59から95重量%、69から89重量%存在させる。
【0021】
1つの態様では、前記合成ガスを本触媒と接触させる前にそれを加熱しない。合成ガスを発生装置から直接取り出すと、追加的加熱費用も装置も全く必要でなくなる。更に、合成ガスと本触媒の接触を300℃から600℃の範囲の温度で起こさせると、その処理された合成ガスは、硫黄および他の不純物が除去されていることで、合成ガス変換反応、例えばフィッシャー・トロプシュおよびメタン生成などで用いる前にそれを冷却する必要がなくなるであろう。
【0022】
本触媒と合成ガスの反応を14.7から1,500psig、14.7から1,200psig、或は250から1,000psigの範囲の圧力レベルで起こさせてもよい。
【0023】
1つの態様では、そのような反応の温度範囲を350℃から550℃にする。温度を350℃にすると、タールの除去が65%以上の変換率で起こる。温度を400℃にするとタールの除去が70%以上の変換率で起こる。
【0024】
代替態様における本触媒は、NiOを1−10重量%、10−20重量%の量のMoO
3を含有して成る金属混合物、SiO
2およびAl
2O
3の少なくとも一方を含有して成る混合物およびP
2O
5を0.001から1重量%含有して成る。この態様では、本触媒の金属部位を硫化させる。本触媒はタールを合成ガスから350℃で65%以上の変換率で除去する能力を有する。同時に、本触媒はまた300℃から600℃の範囲の温度でメタン生成反応をCH
4が150から800μモル/g触媒/秒の量でもたらされかつ水性ガスシフト反応を30から50%のCO変換率がもたらされるように起こさせる能力も有する。
【0025】
更に別の態様における本方法では、合成ガスを生じさせた後に前記合成ガスを触媒と接触させることによって処理された合成ガスを生じさせることを開示する。この態様における本触媒は、MoO
3またはWO
3の少なくとも一方を含有して成る金属混合物、SiO
2およびAl
2O
3の少なくとも一方を含有して成る混合物、P
2O
5およびNiOを含有して成り得る。次に、その処理された合成ガスを触媒化学反応に導入する。この態様では、その合成ガスを本触媒と接触させる前にそれを加熱せずかつ前記処理された合成ガスの触媒化学反応を実施する前にそれを冷却しない。
【0026】
そのような触媒化学反応には、フィッシャー・トロプシュ反応、メタン生成反応、または合成ガスからジメチルエーテルそしてガソリンを生じさせる反応などの如き反応が含まれ得る。そのフィッシャー・トロプシュ反応は液体燃料を生じさせる時に使用可能である。他の触媒反応を用いて合成天然ガス、アルコール、アンモニア、ガソリンまたは他の化学品を生じさせることも可能である。
【0027】
前記合成ガスを本触媒と接触させる前にそれを加熱しないと、追加的加熱源が必要でなくなる。更に、前記処理された合成ガスが触媒化学反応、例えばフィッシャー・トロプシュなどを起こさせる前に前記処理された合成ガスを追加的に冷却する必要もなくなる。
【0028】
1つの態様では、そのような合成ガスが含有する硫黄の量は1,000ppmv以上、或は10,000ppmv以上、或は硫黄の量は15,000ppmv以上である。一例として、そのような合成ガスに由来する硫黄の量は10,000から20,000ppmvの範囲であり得る。
【0029】
別の態様における本方法では、合成ガスを生じさせた後、その合成ガスを触媒と接触させることで処理された合成ガスを生じさせる。この態様における触媒は、NiOを1−10重量%、10−20重量%の量のMoO
3を含有して成る金属混合物、SiO
2およびAl
2O
3の少なくとも一方を含有して成る混合物およびP
2O
5を0.001から1重量%含有して成っていてもよい。この触媒では、金属部位を硫化させる。加うるに、この触媒はタールを合成ガスから350℃で65%以上の変換率で除去する能力を有する。同時に、この触媒はまた300℃から600℃の範囲の温度でメタン生成反応を150から800μモル/g触媒/秒のCH
4がもたらされるように起こさせかつ水性ガスシフト反応を30から50%のCO変換率がもたらされるように起こさせる能力も有する。次に、その処理された合成ガスを触媒化学反応に導入する。この態様では、その合成ガスを本触媒と接触させる前にそれを加熱せずかつ前記処理された合成ガスの触媒化学反応を実施する前にそれを冷却しない。
【0030】
以下に本発明の特定の態様の実施例を示す。各実施例は本発明の説明として示すもので
あり、それは本発明の数多くの態様の中の1つであり、かつ以下の実施例は本発明の範囲を制限することも限定することもないとして読まれるべきである。
【実施例1】
【0031】
この実施例では、NiMo触媒の製造を使用前に焼成を650℃で4時間実施することで行った。そのNiMo触媒はNiOを4.0%、MoO
3を14.3%、Al
2O
3を81.7%含有していて表面積は323.3m
2/gである。
【0032】
合成ガスを15psigの圧力下250−650℃の反応槽温度で流した。この流速にすると下記の反応が起こった:mC
11H
10+nH
2→CH
4+C
2H
6+C
3H
8+C
6H
6+コークス。
【0033】
350℃で3000時
−1にした時のタール除去率は65%であったが、400℃で3000時
−1にした時のタール除去率は70%であった。
【実施例2】
【0034】
NiOを1−10重量%、MoO
2を10−20重量%、SiO
2およびAl
2O
3の少なくとも一方を含有して成る混合物を含有して成っていてP
2O
5の量が1重量%未満である触媒に評価を受けさせた。流入させた合成ガス流れは28.5%のH
2、42%のCO、12%のCO
2、16%のH
2O、1.5%のH
2S(H
2Sが15,000ppmvであることに相当)および200ppmvのナフタレンから成っていた。この反応の反応条件を500psigで350から400℃の範囲の温度にした。前記触媒に前以て硫化を5%のH
2S/H
2を存在させて360psig下200℃で2時間受けさせておいた。
【0035】
図1に、500psig、5.5時
−1および350℃にした時に前記触媒が示した性能を示す。メタン、エタン、プロパン、イソ−ブタン、イソ−ブチレン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンがナフタレンの分解反応生成物であった。
【0036】
図2に、500psigおよび5.5時
−1で350℃および400℃の2種類の異なる温度率にした時のナフタレン変換率を示す。350℃にした時の平均ナフタレン変換率は91%であるが、400℃にした時の平均ナフタレン変換率は100%である。
【0037】
350℃にした時のナフタレン変換率の方が400℃にした時のそれよりも高いことは流入ナフタレン濃度の差によるものであると理論付けする。流入ナフタレン濃度は350℃の時(228ppmv)の方が400℃の時(158ppmv)よりもずっと高かった。その結果として観察されるように350℃にした時の方が反応速度が高い。ナフタレン濃度に関して正規化すると、400℃の時の速度の方が350℃の時よりも高いであろう。
【実施例3】
【0038】
様々な触媒が低温におけるタール分解、メタン生成、水性ガスシフトおよび硫黄除去で示す能力を評価するための試験を実施した。以下の表中のWHSVは1時間当たりの重量空間速度を意味する。
【0039】
5種類の異なる触媒に試験を受けさせた。
【0040】
【表1】
【0041】
当該触媒がタール分解を起こさせる能力を以下および
図3および
図4に示す。
図3に特定温度範囲におけるナフタレン変換率を示す。
図4に特定時間が経過した時のナフタレン変換率を示す。
【0042】
【表2】
【0043】
当該触媒がメタン生成を起こさせる能力を以下および
図5および
図6に示す。
図5に特定温度範囲におけるCH
4生成速度を示す。
図6に特定時間が経過した時のCH
4生成速度を示す。
【0044】
【表3】
【0045】
当該触媒が水性ガスシフト反応を起こさせる能力を以下に示す。
【0046】
【表4】
【0047】
当該触媒が硫黄除去を起こさせる能力を以下に示す。
【0048】
【表5】
【0049】
最後に、如何なる引用文献、特に公開日付が本出願の優先日以降であり得る如何なる文献の考察もそれが本発明の先行技術であることを認めるものではないことを注目すべきである。それと同時に、それによって、以下に示す1つ1つの請求項は本発明の追加的態様として本詳細な説明または明細書に組み入れられる。
【0050】
本明細書に記述するシステムおよび方法を詳細に説明してきたが、以下の請求項で定義する如き本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な変更、置換および修正を行うことができると理解されるべきである。当業者は、本明細書に記述した如く正確ではなくても本発明を実施するための好適な態様を研究しかつ他の方法を確認することができるであろう。本発明の変形および相当物は本請求項の範囲内であると同時に説明、要約および図は本発明の範囲を限定する目的で用いるものでないことが本発明者が意図することである。特に、本発明は以下の請求項およびそれらの相当物の如く幅広いことを意図する。