【課題を解決するための手段】
【0018】
従って、本発明の第1の側面において、ナノ多孔質材料を製造するための方法を提供するものであり、次のステップ:連続マトリクス内に分離された島の3次元配列を含む形態を形成するステップを含み、前記島は、ブロックコポリマーの少なくとも1つの成分からなり、かつ前記マトリクスは前記ブロックコポリマーの少なくとも1つのマトリクス成分からなり、前記島の少なくともいくつかの間の前記マトリクス中にチャンネルを形成するステップを含み、かつ前記島成分を選択的に除去して、相互接続されたポアの配列を持つ前記マトリクスを残すステップを含む。
【0019】
本発明の好ましい(又は簡単に選択的に)構成は以下定められる。明細書の記載に特別の記載がない限り、これらは単独でも、又は本発明のいかな側面への組み合わせにおいても適用可能である。
【0020】
好ましくは前記島は実質的に等軸である。例えば、前記島の最大アスペクト比(即ち、前記島の3つの直交直線寸法の任意の2つの比)は好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下又は1.1以下である。好ましくは島の3つの直交直線寸法の全てが、他の2つの直交直線寸法のいずれかで割り算した場合にこの限定を満たすものである。最も好ましくは前記島は実質的に球状である。
【0021】
好ましくは、前記島は平均直径(又は対応する直線寸法)が、少なくとも1nm、より好ましくは少なくとも5nmである。好ましくは、前記島は平均直径(又は対応する直線寸法)が、最大100nm、より好ましくは最大50nm、なお好ましくは最大25nmである。前記直径は、例えばSEMよりTEMなどの顕微鏡で測定され得る。島の直径の分布は好ましくは比較的狭い。例えば、前記島の標準偏差は好ましくは最大10%である。より好ましくは島の直径に標準偏差は最大5%である。
【0022】
好ましくは島の3次元配列は実質的に規則配列である。例えば、島は結晶充填に基づく配列に適応し得る。通常の充填配列は体心立方、面心立方又は六方最密充填であり得る。ある程度の配列間違いは前記配列で許容され、例えば点欠陥、線欠陥及び/又は界面(表面)欠陥などである。通常の界面欠陥は、異なる充填方向の隣接する境界である。
【0023】
好ましくは、実質的に規則配列において、隣接する島間に規則的な最小の空間が存在することである。島の平均直径をdとすると、好ましくは隣接する島の間の規則的最小空間は少なくとも1.5d、より好ましくは少なくとも2dである。好ましくは、隣接する島の間の規則的最小空間は最大5d、より好ましくは最大4dである。これらの範囲は、相互接続された多孔性を生成するためと、島が前記ポアから除去された場合にその構造を支持することができる比較的強いマトリクスを有するための必要性とをバランスさせるために好ましい。
【0024】
前記ブロックコポリマーを、前記コポリマーのそれぞれのブロックのモノマー単位の数の点から考慮することが可能である。好ましくは前記コポリマーのブロックの島成分でのモノマー単位の数分率は少なくとも5%である。以下の知見が得られた、すなわち、いくつかの好適なブロックコポリマーシステムで、この数値よりも低い分率を用いると、島が前記形態中で離れすぎ、適切な相互接続ポアを生じないという結果となった、ということである。より好ましくは、ブロックコポリマーの島成分のモノマー単位の数分率は少なくとも8%である。
【0025】
好ましくは、ブロックコポリマーの島成分のモノマー単位の数分率は最大25%である。次の知見が得られた、すなわち、いくつかの好適なブロックコポリマーシステムで、この数値よりも大きい分率を用いると、島でない形態、例えば円筒形状、螺旋又はラメラ形態となるという結果となった、ということである。いくつかの形態は好ましくない、というのは、前記螺旋形態は組成の非常に狭い範囲でのみ生じ、円筒形状及びラメラ形態は特定の方向を持つ多孔性を生じ、このことは前記方向が好適な方向の多孔性を与えるように制御する必要があるということを意味する、ということである。より好ましくは、前記ブロックコポリマーの島成分のモノマー単位の数分率が最大20%である。
【0026】
前記ジブロックコポリマーに1以上のホモポリマーを、例えば特定の望ましい組成を得るために追加することが可能である。これは、前記組成物の出発物質の全コストを低減するために有用である。ホモポリマー添加は例えば、前記形態のマトリクス成分として使用するものと同じモノマー単位から形成されてよい。これに代えて又は加えて、前記ホモポリマーは前記マトリクス成分と混合可能な材料であり得る。さらに、ホモポリマー添加物は、前記形態の島成分として使用されるモノマー単位と同じモノマーから形成され得る。これに代えて又は加えて、このホモポリマーは前記島成分と混合可能であり得る。
【0027】
本発明者は、比較的高い、例えば30%以上の、ブロックコポリマーの島成分でのモノマー単位の数分率を用いることが可能であることを認めた。かかる材料は通常は、島形態とは異なる形態を形成するものである。しかし、1以上のホモポリマーを添加することで、島形態にすることができる。例えば、比較的高いブロックコポリマーの島成分のモノマー単位の数分率の場合、1以上の前記ブロックコポリマーのマトリクス成分に類似又は混合可能なホモポリマーを添加することが可能である。この場合好ましくは、マトリクスと一体化させるホモポリマーのモノマー単位の数分率と、マトリクス成分のモノマー単位の数分率との和が、75%以上、より好ましくは80%以上である。この方法は有利であり、というのは、純粋なジブロックコポリマーの特定の成分を慎重に特化することは高価である一方、すでに利用可能なジブロックコポリマー組成物へホモポリマーを添加することは比較的安価である、からである。
【0028】
さらに、本発明者は、比較的低い、例えば10%以下又は8%以下のブロックコポリマーの島成分のモノマー単位の数分率を使用することが可能であることを認めた。かかる材料は通常は、離れすぎる島を持つ形態を形成する。しかし、1以上のホモポリマーを添加することで、島形態が適切な空間を持つようにすることを可能にする。例えば、ブロックコポリマーの島の成分のモノマー単位の数分率が低い場合、前記ブロックコポリマーの島成分と類似又は混合可能な1以上のホモポリマーを添加することが可能である。例えば、比較的高い前記ジブロックコポリマーのマトリクス成分のモノマー単位の数分率の場合、前記ジブロックコポリマーの島成分と類似又は混合可能な1以上のホモポリマーを添加することが可能である。この場合好ましくは、島と一体化させるホモポリマーのモノマー単位の数分率と、島成分のモノマー単位の数分率との和が、8%以上、より好ましくは10%以上である。
【0029】
好ましくは、ホモポリマーが添加される場合、例えばマトリクスと統合化されるために、前記ホモポリマーの分子量は、前記コポリマーのマトリクス成分の分子量よりも大きくはない。さらに好ましくは、ホモポリマーの分子量は、前記コポリマーのマトリクス成分の分子量の1/5よりは小さくない、ということである。加えて、又はこれに代えて、例えば島と統合化するためにホモポリマーが添加される場合、ホモポリマーの分子量は、前記コポリマーの島成分の分子量よりは大きくない、ということである。さら好ましくは、前記ホモポリマーの分子量は、前記コポリマーの島成分の分子量の1/5より小さくない、ということである。
【0030】
この技術の利点は、好適な出発材料の範囲がより広くなり、従って、形態を形成するための費用が節約可能になる、ということである。ホモポリマーの好適な数分率(又は堆積分率であって、密度が等しいばあいには数分率に等しい)は、前記追加されるホモポリマーによる寄与を含むモノマー単位の全数分率に基づき計算され得る。当業者は理解するように、前記マトリクス中の異なる成分の全分率を変更するために添加されるホモポリマーの量を導き出すことは直接的であり、これはブロックコポリマー及びホモポリマー、成分の数などに依存する。留意すべきことは、異なる形態は、体積分率(重量又は数と仮定して)を用いる一般的方法で表現され得る、ということである。
【0031】
前記形態は熱処置により生成され得る。例えば、好適な熱処理は材料を少なくとも100℃に加熱することであり得る。より具体的には、前記材料は少なくとも150℃又は少なくとも200℃に加熱される。通常好適な温度は約200℃である。好ましくは、熱処理は不活性雰囲気下、例えば窒素下で実施される。
【0032】
好ましくは前記マトリクスはクロスリンクの処理をされる。好ましくはクロスリンクは照射により達成される。好適な照射は、電磁波照射、例えばUV照射を含む。マトリクスのクロスリンクの程度は、マトリクスの厚さに応じて変化され得る。予想されることは、クロスリンク密度の変化は、マトリクス材料の局所的剛性に影響を与え、マトリクスの好ましいナノ多孔質の生成の助けとなり得る、ということである。マトリクスのクロスリンクは、前記マトリクスが、前記島成分が除去される場合に実質的に自己支持性となることを可能にする。
【0033】
好ましくは島はまた、前記マトリクスのクロスリンクを生じる処理と同様の処理の対象とされる。しかし、好ましくは、前記マトリクスに適用されるクロスリンク処理に対応して島は分解する(クロスリンクされるよりは)。これは、生成物への同時進行が1つのステップで進行することから有利である。又は、前記島は、前記マトリクスのクロスリンク後に続く分解ステップの対象とされ得る。好ましくは、前記分解は、前記島成分のポリマー鎖が低分子量断片に分解されることである。
【0034】
好ましくは、分解された島は洗浄流体により除去されることである。例えば分解島材料の溶媒が使用され得る。島材料がPMMAを含む場合、好ましくは洗浄流体は酢酸を含む。この洗浄流体はまた、他の島成分組成物にも好適である。
【0035】
好ましくは、前記材料は、前記マトリクスのクロスリンクの際にガス状酸化剤への対象とすることである。理論に縛られるものではなく、前記ガス状酸化剤は少なくとも島成分を分解するために有効である、と考えられる。また理論に縛られるものではなく、前記ガス状酸化剤は、好ましくはないが、少なくとも部分的にマトリクス成分を分解する効果を持つ、と考えられる。島成分の分解は、続く島成分の除去をより容易にする。この分解モードはまた、前記装置の最終的な多孔性構造の形態(以下より詳細に説明される)を持つと考えられている(ただし正確なメカニズムは現時点では明らかではない)。
【0036】
ガス状酸化剤は、例えば液体(又は他の非ガス状流体)酸化剤と比べて、前記マトリクス相を通じて適切に拡散させるため、特に前記マトリクス相が固体(例えば既にクロスリンクされている)の場合又は固体化のプロセス中では、好ましいと考えられる。
【0037】
ガス状酸化剤は好ましくはオゾン(O
3)である。有利には、オゾンは、インシチュ(その場)で酸素、例えば空気中の酸素をUV照射することで形成され得る。マトリクス相をクロスリンクさせるためにまた、UV照射が好ましい。従って、空気などの酸素含有ガス中でUV照射を用いてクロスリンクを行うことは前記さらなる利益を提供することを可能にする。大気中の酸素濃度(20.9体積%)よりも高い酸素濃度を含むガス中でクロスリンクを実施することはさらに有利である。又は、別の供給源からオゾン、又は硫黄(例えばS
3)又は塩素やフッ素などの別のガス状酸化剤が提供され得る。
【0038】
本発明者は、前記方法の好ましい実施態様の生成物は、特徴的構造であって、比較的高密度と比較的低密度の交互層の形であって、前記高密度層が前記低密度層と流通する貫通孔(ポア)の配列を持つ、ということを見出した。本発明者は、かかる構造は、形成されるプロセスとは別に興味があることを認識した。しかし、明示的に留意されるべきことは、本発明の第1の側面による好ましい方法は、その目的として、以下の前記第2の側面に関し定められる望ましいナノ多孔質材料の形成である、ということである。
【0039】
従って、好ましくは、本発明は、複数のラメラを持ち、前記それぞれのラメラがそれを貫通するポアの配列を持つ、ナノ多孔質材料を形成するステップを含む。好ましくは、隣接するラメラは介在する空間層により離されて設けられる。前記空間層は、前記隣接するラメラと共に一体化されて形成されそれらの間に伸びる空間要素配列を含み得る。前記空間層は、前記空間層内に伸びる相互接続された多孔性を持ち得る。従って、前記相互接続されたポアの要求される配列は、前記構造により提供され得る。ここで考慮されるべきことは、前記島の間に形成される少なくともいくつかのチャンネルは前記ラメラを通って貫通する前記ポア内に延びている、ということである。
【0040】
本発明の第2の側面によれば、本発明は、複数のラメラを持つナノ多孔質材料を提供し、それぞれのラメラはそこを貫通するポアの配列を含み、隣接するラメラは介在空間層で離されており、前記空間層が、前記隣接するラメラと共に一体となって形成されその間に伸びる空間要素の配列を含み、前記空間層が前記空間層内で伸びる相互接続される多孔性を持つ。
【0041】
前記第1及び第2の側面の好ましくは/場合による構造は、以下説明される。これらの組み合わせは、それのみで又は特に記載がない限り本発明の全ての側面と組み合わせることが可能出る。
【0042】
前記空間層の多孔性は通常、前記空間層内で、隣接する空間要素の間に多孔性が延びているという意味で通常相互接続されている。これにより、1つのラメラのそれぞれのポアが、隣接するラメラの1つのポア及び/又は前記隣接するラメラの離れる側への多重の流通路(パス)を持つことができる。このことが有利であるのは、これにより前記材料が効果的に例えばフィルター媒体として機能し得るからであり、そこでは前記ラメラの1つにおいれ、1つのポアの閉塞を容易に迂回することを可能にするからである。従って、前記のナノ材料は、それが、ボイド(相互接続された多孔性)と共連続である材料からなるという意味で共連続的である。
【0043】
好ましくは、前記空間層の多孔性の程度は前記ラメラよりも高い。例えば、ラメラ面内で観念的にある面が取られ、かつある観念的面を前記空間層内でこれに対して平行に取る場合、それぞれの多孔性の程度は、前記面の全考慮される領域に対するポアの比率を考慮することで推定され得る。これに基づくと前記空間層の多孔性の程度は、前記ラメラの多孔性程度の少なくとも1.5倍であり得る。より好ましくは、これに基づく前記空間層の多孔性程度は、前記ラメラの少なくとも、2倍、さらに好ましくは3倍、4倍又は5倍である。この考えで、多孔性の程度が最大である前記空間層内の面が考慮され得る。これは通常は隣接するラメラの約中間に位置される。
【0044】
前記の説明と同様に基づくと、前記空間層の多孔性の程度が好ましくは、少なくとも30%である。より好ましくは、前記空間層の多孔性の程度が、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%又は少なくとも80%である。ある実施態様では、前記多孔性の程度は、以下詳細に説明するように、前記ナノ材料の形成後にでも制御され得る。
【0045】
前記説明と同様に、前記ラメラの多孔性の程度は好ましくは少なくとも1%である。より好ましくは、前記ラメラの多孔性の程度は、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%又は少なくとも10%である。前記ラメラの多孔性の程度は多くとも30%、より好ましくは多くとも25%又は多くとも20%である。
【0046】
好ましくは、前記ナノ多孔性材料は膜として形成される。前記ナノ材料は基板上に形成され得るが必須ではない。好ましくは、前記ナノ材料の厚さ(例えば前記膜の厚さ)は少なくとも40nmである。前記ミクロ構造がブロックコポリマー中の分離された島の形成により形成される場合には、考慮されるべきことは、前記厚さの下限界値は、連続マトリクス内で必要とされる分離された島の3次元配列を与えるために必要とされる、ということである。前記ナノ材料の厚さは好ましくは少なくとも50nm、より好ましくは少なくとも60nm、より好ましくは少なくとも70nm、より好ましくは少なくとも80nm、より好ましくは少なくとも90nm、より好ましくは少なくとも100nm、より好ましくは少なくとも150nm、より好ましくは少なくとも200nm、より好ましくは少なくとも250nm、より好ましくは少なくとも300nmである。
【0047】
前記ナノ材料の厚さには特に上限界値はない。前記ラメラは、前記材料表面と平行に形成される傾向がある。前記ナノ材料の厚さは、前記マトリクス成分のクロスリンクのメカニズムにより制限され得る。クロスリンクがUV照射で実施される場合、UV照射の透過厚さが前記ナノ材料の厚さを10mmに制限する。かかる材料は両側からUV照射され得る。多くの応用で、前記ナノ材料の厚さは、大きくとも5mm、より好ましくは大きくとも1mm、より好ましくは大きくとも500μm、より好ましくは大きくとも400μm、より好ましくは大きくとも300μm、より好ましくは大きくとも200μm、より好ましくは大きくとも100μm1、より好ましくは大きくとも50μm、より好ましくは大きくとも40μm、より好ましくは大きくとも30μm、より好ましくは大きくとも20μm、より好ましくは大きくとも10μm、より好ましくは大きくとも5μmである。
【0048】
明示的に記載されるべきことは、前記ナノ材料の厚さの好適な範囲は、前記厚さについて列挙された下限値のいかなる厚さと、前記厚さについて列挙された上限値のいかなる厚さとの任意の組み合わせを使用して形成され得る、ということである。
【0049】
好ましくは、前記第2の側面のナノ多孔性材料はポリマー性材料であり、より好ましくは、クロスリンクされたポリマー性材料である。例えば前記ナノ多孔性材料は、ブロックコポリマー材料のマトリクス成分から形成され得る。
【0050】
前記第1の側面による方法で、好ましくは、前記ブロックコポリマー材料は、溶液から膜又はシートに形成される。例えば好適な膜はスピンキャストされ得る。PS−b−PMMAの場合では、好適な溶媒はトルエンである。
【0051】
前記ブロックコポリマー材料は、前記島成分を除去する前に、前記ナノ多孔性材料の厚さにつき列挙された任意の好ましい下限値と前記ナノ多孔性材料の厚さにつき列挙された任意の好ましい上限値との任意の組み合わせを用いて形成される範囲の厚さを持つ。しかしここで留意されるべきことは、本発明の好ましい実施態様では、前記島形態ブロックコポリマー材料からのナノ多孔性材料の生成は、前記ブロックコポリマー材料の厚さに比較してナノ多孔性材料の厚さを増加させる結果となる傾向がある、ということである。この厚さの増加は、例えば少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%又は少なくとも25%であり得る。ある意味で、従って前記ナノ多孔性材料は、前記ブロックコポリマー材料の前記マトリクス材料の膨張形と考えられ得る。
【0052】
前記構造中のラメラの平均厚さは、少なくとも10nm、より好ましくは少なくとも20nm、より好ましくは少なくとも30nm、より好ましくは少なくとも40nm及びより好ましくは少なくとも50nmである。前記構造中のラメラの平均厚さは、多くとも500nm、より好ましくは多くとも450nm、より好ましくは多くとも400nm、より好ましくは多くとも350nm、より好ましくは多くとも300nm、より好ましくは多くとも250nm、より好ましくは多くとも200nmである。明示的に記載されるべきことは、前記構造のラメラの厚さの好適な範囲は、前記厚さの列記された任意の好ましい上限値と前記厚さの列記された任意の好ましい下限値との任意の組み合わせを用いて形成され得る、ということである。
【0053】
前記ナノ多孔性材料中のラメラは特徴的な周期的空間を持って設けられている。
【0054】
この特徴的周期的空間は、少なくとも20nm、より好ましくは少なくとも40nm、より好ましくは少なくとも80nm、及びより好ましくは少なくとも100nmである。この特徴的周期的空間は、大きくとも1000nm、より好ましくは大きくとも900nm、より好ましくは大きくとも800nm、より好ましくは大きくとも700nm、より好ましくは大きくとも600nm、より好ましくは大きくとも500nm、及びより好ましくは大きくと400nmである。明示的に記載されるべきことは、前記構造のラメラの空間のための好適な範囲は、前記列空間の列挙された任意の好ましい下限値と前記列空間の列挙された任意の好ましい上限値の任意の組み合わせを用いて形成され得る、ということである。
【0055】
前記ナノ多孔性材料中の空間層は、同じく、平均厚さが少なくとも10nm、より好ましくは少なくとも20nm、より好ましくは少なくとも30nm、より好ましくは少なくとも40nm及びより好ましくは少なくとも50nmである。前記構造中の空間層の平均厚さは、大きくとも500nm、より好ましくは大きくとも340nm、より好ましくは大きくとも400nm、より好ましくは大きくとも350nm、より好ましくは大きくとも300nm、より好ましくは大きくとも250nm、より好ましくは大きくとも200nmである。ここで明示的に記載されるべきことは、前記空間層の厚さの好適な範囲は、前記列挙された任意の好ましい厚さの下限値と前記列挙された任意の好ましい厚さの上限値の任意の組み合わせを用いて形成され得る、ということである。前記空間層の平均厚さは前記空間要素の高さに対応し得る。
【0056】
前記空間要素は好ましくは、構造内に実質的に円柱状である。より正確には、それらは前記ラメラに近似して幅広く、かつ前記空間層の中心方向に最も狭い部分を持つ、という意味で前記空間要素が実質的に構造中で回転懸垂面状であることが好ましい。前記空間要素自体は好ましくは固体(即ち中空ではない)である。前記空間要素は通常は前記ラメラの材料と同じ材料から形成される。
【0057】
好ましくは、前記ラメラを貫通するポアは、前記ブロックコポリマー材料内で前記分離された島の配列に実質的に従った配列で整列される。前記ラメラを貫通するポアは、2次元の最密充填配列で配列され得る。例えば、前記配列は六方配列であり得る。好ましく実施態様では、前記配列は長距離秩序(少なくともその程度のドメイン内で)を持つ。しかし、他の好ましい実施態様では、それぞれのポアが約(又は正確に)6つの実質的に最近接隣接ポアを持ち、これらが前記ラメラ中で前記ポアの周りに六角形状で整列されているという意味で、前記配列は短距離秩序のみ持ち得る。好ましくは、前記ラメラを貫通して伸びるポアの平均サイズは少なくとも1nmである。考慮されるべきことは、前記ポアの平均サイズは、前記ブロックコポリマーの前記分離された島の平均サイズにある程度依存するということである。これらのポアは通常は開口され、それぞれの端部は対応する空間層内に開口している。従って、前記ポアサイズは、前記ラメラの面方向に垂直な方向で測定された前記ポアの直径としてされ、前記直径は、前記ラメラの面内のポアの断面積に対して等価な断面積を持つ円形の直径である。より好ましくは、前記ラメラを貫通して伸びるポアの平均サイズは少なくとも2nm、なおより好ましくは少なくとも3nm、より好ましくは少なくとも4nm、より好ましくは少なくとも5nm、より好ましくは少なくとも6nm、より好ましくは少なくとも7nm、より好ましくは少なくとも8nm、より好ましくは少なくとも9nm及びより好ましくは少なくとも10nmである。前記ラメラを貫通して伸びるポアの平均サイズは大きくとも200nmである。しかしより好ましくは、前記ラメラを貫通して伸びるポアの平均サイズは大きくとも150nm、より好ましくは大きくとも100nm、より好ましくは大きくとも90nm、より好ましくは大きくとも80nm、より好ましくは大きくとも70nm、より好ましくは大きくとも60nm、より好ましくは大きくとも50nm、より好ましくは大きくとも40nmである。明示的に記載されるべきことは、前記ラメラを貫通して伸びるポアの平均サイズの好適な範囲は、前記列挙された任意のポアサイズの好ましい下限値と前記列挙された任意のポアサイズの好ましい上限値との任意の組み合わせを用いて形成され得る、ということである。好ましくは前記ポアサイズ分布は狭い。これが有利であるのは、それが篩い又はフィルターとして使用される場合には前記材料の高効率が可能となるからである。前記ポアサイズ分布は、ポアサイズの標準偏差により定義され得る。好ましくは、これらのポアのポアサイズの標準偏差は大きくとも30%である。より好ましくは、これらのポアのポアサイズの標準偏差は大きくとも20%である。
【0058】
好ましくは、前記ブロックコポリマーのマトリクス成分はPSを含む。このブロックコポリマーの島成分は、1以上のPMMA、PI及びPBDを含み得る。PMMAが最も好ましい。
【0059】
好ましくは、前記ラメラを貫通するポア配列は、前記ブロックコポリマー材料の分離された島の整列に対応する。しかし好ましくは、前記空間層の多孔性は前記ブロックコポリマー材料の分離された島の整列に対応する。
【0060】
第3の側面で、本発明は前記第2の側面によるナノ多孔質材料を、濾過プロセスでのフィルター媒体としての使用を提供するものである。
【0061】
第4の好ましい側面で、本発明は濾過膜を提供し、ここで濾過基材が設けられ、かつ前記第2の側面によるナノ多孔質材料が前記濾過基材上又は前記濾過基材内に設けられる。
【0062】
前記濾過基材は、例えば比較的粗な濾過基材であり、比較的荒い多孔性を持つ。前記ナノ多孔質材料は前記濾過基材の多孔性を塞ぐために設けられる。前記ナノ多孔質材料は前記濾過基材の領域にのみ設けられ得るものであり、例えば前記濾過基材の表面領域や表面に近い領域のみである。従って、ある実施態様では、前記ナノ多孔質材料は膜として設けられるのではなく、それに代えて、濾過基材中の部分を塞ぐ配列として設けられ得る。前記ナノ多孔質材料はこの形で非常に高い濾過効率を与える、ということが見出された。
【0063】
第5の好ましくい側面では、本発明は、ナノ多孔質媒体の製造のためのプロセスを提供し、前記プロセスは、前記第2の側面によるナノ多孔質材料から形成されるテンプレート内に第2の材料を導入するステップを含み、それにより少なくとも部分的に前記テンプレート材料の多孔性を充填し、及びその後少なくとも部分的に前記テンプレートナノ多孔質材料を除去して、前記第2の材料から少なくとも部分的に形成される前記ナノ多孔質媒体又はその前駆体を残す、ことを含む。
【0064】
第6の好ましい側面では、本発明はナノ多孔質媒体の製造のためのプロセスを提供し、前記プロセスは、前記第1の側面の方法を用いて形成されるナノ多孔質材料からなるテンプレート内に第2の材料を導入し、これにより少なくとも部分的に前記テンプレートナノ多孔質材料の多孔性を充填し、その後少なくとも部分的に前記テンプレートナノ多孔質材料を除去して、前記第2の材料から少なくとも部分的に形成される前記ナノ多孔質媒体又はその前駆体を残す。
【0065】
好ましくは、前記テンプレートナノ多孔質材料は熱処理で除去される。又は、前記テンプレートナノ多孔質材料は溶解で除去され得る。これは、例えば、前記テンプレートナノ多孔質材料のみを前記第2の材料よりも選択的に溶解し得る溶媒を用いて実施され得る。しかしこの場合好ましくは、前記第2の材料が、前記テンプレートナノ多孔質材料が除去される際及び後に、十分強い自己支持性を持つことである。
【0066】
好ましくは、前記第2の材料は熱処理の対象とされる。これは、前記テンプレートナノ多孔質材料を除去するために使用される同じ熱処理であってよく、前記テンプレートナノ多孔質材料が熱処理で除去される。又は、さらなる熱処理が適用され得る。この熱処理で、前記第2の材料が反応するか又は焼成され、ナノ多孔質媒体の強度を増加させる。
【0067】
前記ナノ多孔質媒体は、金属、合金、セラミック材料などの広い範囲の材料から形成され得る。好ましいセラミック材料は、例えばチタン酸化物などの金属酸化物などの無機材料を含む。前記ナノ多孔質媒体は、スーパーキャパシタや燃料電池の電極のために使用され得る。
【0068】
本発明者は、これらの発明がまた、エネルギー貯蔵の分野、特に(限定されるものではないが)スーパーキャパシタの分野で、応用され得る、ということを認識した。スーパーキャパシタ(又電解キャパシタとも呼ばれる)の最近の文献はSimon及びGogotsiにより「P. Siman and Y Gogotsi “Materials for Electrochemical Capacitors” Nature Materials Vol. 7 November 2008 p. 845」で説明されており、これらの内容は参照されて本明細書に援用される。従って、スーパーキャパシタの背景技術、通常の構造及び操作原理についてはここでは説明はされないが、当業者には明らかであろう。
【0069】
本発明者は、前記第1の側面の方法及び/又は前記第5又は第6の側面の方法が、スーパーキャパシタの電極の製造の方法で使用され得ることを認識した。同様に、前記第2の側面のナノ多孔質材料がスーパーキャパシタの電極の製造に使用され得ることを認識した。
【0070】
しかし、考慮されるべきことは、本発明はこれよりも広い範囲を持つものであるということであり、発明者の知る限りにおいて、ブロックコポリマーを用いて形成されるいかなる多孔性固体テンプレート構造を用いてスーパーキャパシタの電極を製造することはこれまで提案されてこなかった、ということである。これは、前記第1の側面に関して説明された分離された島を用いて形成される多孔性固体テンプレート構造を含み、また、螺旋形態を含む他の形態を用いて形成される多孔性固体テンプレート構造を含む。
【0071】
従って、第7の側面で、本発明は、スーパーキャパシタ電極の製造の方法を提供し、前記方法は、次のステップ:ブロックコポリマーの第1の成分の3次元配列を含む形態を、前記ブロックコポリマーの少なくとも1つのマトリクス成分から形成される連続マトリクス内に形成するステップ;及び前記第1の成分を選択的に除去して、相互接続されるポアの配列を持つ前記マトリクスを残すステップ、を用いてポリマー性ナノ多孔質材料テンプレートを製造することを含み、及び続いて以下のステップ:前記テンプレートに第2の材料を導入して、前記テンプレートの多孔性を少なくとも部分的に充填するステップ、及び前記テンプレートを少なくとも部分的に除去又は分解するステップを用いて前記スーパーキャパシタの電極を形成し、ここで、前記第2の材料がスーパーキャパシタ誘電材料又はその前駆体である。
【0072】
前記ブロックコポリマーの形態は、前記第1の側面に関して説明したように、前記第1の成分が前記マトリクス中に島を形成する1つであり得る。この場合、前記第1の側面に関する本発明の任意の好ましい構成が第7の側面に適用され得る。しかし、前記ブロックコポリマーの形態が、前記第1の成分が前記マトリクス内に分離された相互接続されたネットワークを形成する1つであってもよい。この場合、前記第1の成分及び前記マトリクス成分は共連続となる。例えば前記ブロックコポリマーは螺旋構造であり得る。この状況で、前記島が相互接続されていると考えられる限り、前記第1の側面に関して本発明の任意の好ましい構成が前記第7の側面へ適用されてよい(例えば寸法、組成など)。
【0073】
前記ポリマー性ナノ多孔質材料テンプレートの構造及び/又は組成に関して、前記第2の側面に関する任意の好ましい構成が第7の側面に適用されてよい。
【0074】
好ましくは、前記テンプレートは、熱処理で除去される。又は、前記テンプレートは溶解で除去される。これは、例えば、前記第2の材料よりも前記テンプレートをより選択的に溶解する溶媒を用いることで達成され得る。しかしこの場合、好ましくは、前記第2の材料が、前記テンプレートが除去される間及びその後に十分強い自己支持性を持つことである。
【0075】
好ましくは、前記第2の材料は熱処理の対象とされる。これは、前記テンプレートが熱処理で除去される場合に、前記テンプレートを除去するために使用される同じ熱処理であり得る。又は、さらなる熱処理が適用されてよい。この熱処理で、前記第2の材料は反応するか又は焼成されて前記スーパーキャパシタの強度を増加させる。
【0076】
好ましくは、前記スーパーキャパシタ誘電材料は、RuO
2、IrO
2、NiO、CoO
x及にMnO
2からなる群から選択される材料を含む。このうちMnO
2が最も好ましい。
【0077】
好ましくは前記テンプレートのマトリクス成分は、熱分解して相互接続される炭素豊富ネットワークを形成させる。この相互接続される炭素豊富ネットワークは、好ましくは前記スーパーキャパシタ誘電材料で共連続である。熱分解は好ましくは不活性雰囲気下で行われる。これは前記ポリマーが酸化されることを防止するためである。例えば、300から500℃の温度の熱処理が熱分解を達成するために好ましい。同じ熱処理が、前記スーパーキャパシタ誘電材料を少なくとも部分的に焼成するために与えられてよい。得られる構造は、前記二重層キャパシタンスへ擬似容量増強効果を持つこととなる。
【0078】
第8の側面で、本発明は好ましくはスーパーキャパシタの製造方法を提供し、前記方法は、前記第7の側面によるスーパーキャパシタ電極を製造する方法を含み、スーパーキャパシタを形成するために、場合により層状化スーパーキャパシタ構造の隣接するスーパーキャパシタ電極層間にセパレータ層を挿入することで、前記スーパーキャパシタ電極を用いることを含む。
【0079】
本発明のさらなる選択的な構成は以下説明される。