(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記昇圧制御部は、前記駆動モータが目標駆動力を出力するために必要な必要昇圧電圧よりも前記目標昇圧電圧を大きく設定し、前記走行モードに応じて、前記必要昇圧電圧に対する前記目標昇圧電圧のマージンを変化させることを特徴とする、請求項1に記載のバッテリ電圧の制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、昇圧の際にエコスイッチのオン/オフ状態は考慮しているが、駆動モータの出力特性に関する走行モード(例えば、スポーツモード、インテリジェントモードなど)に応じた制御は何ら考慮されていない。このため、走行モードに応じた昇圧電圧の制御を最適に行うことができず、昇圧が過剰になることによる損失の増大や、昇圧の不足による加速性能の劣化等の問題が生じることが想定される。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、駆動モータの出力特性に関する走行モードに応じてバッテリ電圧の昇圧を最適に制御することで、昇圧による損失を最小限に抑えるとともに、ドライバビリティを向上することが可能な、新規かつ改良されたバッテリ電圧の制御装置及びバッテリ電圧の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、バッテリの電圧を昇圧して駆動モータに印加する昇圧部と、ドライバが選択した前記駆動モータの出力特性に関する走行モードを取得する走行モード取得部と、アクセル開度に基づきドライバの要求駆動力を取得するアクセル開度要求駆動力取得部と、前記走行モードと前記アクセル開度要求駆動力とに基づいて、前記昇圧部による昇圧の目標昇圧電圧を制御する昇圧制御部と、を備え
、前記昇圧制御部は、前記走行モードと前記アクセル開度とに基づいて将来のドライバ要求駆動力を算出する将来ドライバ要求駆動力算出部と、前記将来のドライバ要求駆動力に基づいて前記目標昇圧電圧を算出する目標昇圧電圧算出部と、を有する、バッテリ電圧の制御装置が提供される。
【0007】
前記昇圧制御部は、前記走行モードに応じて、前記駆動モータが目標駆動力を出力するために必要なとなる必要昇圧電圧よりも前記目標昇圧電圧を大きく設定し、前記走行モードに応じて、前記必要昇圧電圧に対する前記目標昇圧電圧のマージンを変化させるものであっても良い。
【0009】
また、前記将来ドライバ要求駆動力算出部は、前記走行モード毎にアクセル開度と要求駆動力との関係を指定したマップに基づいてドライバ要求駆動力を算出し、前記ドライバ要求駆動力に基づいて前記将来
のドライバ要求駆動力を算出するものであっても良い。
【0010】
また、前記将来ドライバ要求駆動力算出部は、前記ドライバ要求駆動力に対し、前記ドライバ要求駆動力の変化率のしきい値に基づいたリミット処理を行い、前記リミット処理を行った前記ドライバ要求駆動力に基づいて前記将来ドライバ要求駆動力を算出するものであっても良い。
【0011】
また、前記将来ドライバ要求駆動力算出部は、前記リミット処理を行った前記ドライバ要求駆動力に前記ドライバ要求駆動力の変化率の上限値に応じた値を加算して、前記要求駆動力の変化率に応じた値を加算して得られた前記ドライバ要求駆動力に基づいて前記将来
のドライバ要求駆動力を算出するものであっても良い。
【0012】
また、前記将来ドライバ要求駆動力算出部は、前記ドライバ要求駆動力の変化率の上限値に応じた値を加算して得られた値前記ドライバ要求駆動力に対してアクセル開度が0%又は100%の時の要求駆動力の上下限値によりしきい値処理を行うことで、前記将来ドライバ要求駆動力を算出するものであっても良い。
【0013】
また、前記目標昇圧電圧算出部は、前記将来のドライバ要求駆動力と前記駆動モータの回転数とに応じて前記目標昇圧電圧を規定したマップに基づいて、前記目標昇圧電圧を算出するものであっても良い。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、ドライバが選択した前記駆動モータの出力特性に関するを定める走行モードを取得するステップと、アクセル開度をに基づきドライバの要求駆動力を取得するステップと、前記走行モードと前記アクセル開度要求駆動力とに基づいて、前記駆動モータに印加するバッテリ電圧の昇圧の目標昇圧電圧を制御するステップと、を備え、
前記目標昇圧電圧を制御するステップは、前記走行モードと前記アクセル開度とに基づいて将来のドライバ要求駆動力を算出するステップと、前記将来のドライバ要求駆動力に基づいて前記目標昇圧電圧を算出するステップと、を有する、バッテリ電圧の制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、駆動モータの出力特性に関する走行モードに応じてバッテリ電圧の昇圧を最適に制御することで、昇圧による損失を最小限に抑えるとともに、ドライバビリティを向上することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0018】
まず、
図1を参照して、本発明の一実施形態に係るシステム1000の構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る、電気自動車等の車両を駆動するためのシステム1000を示す模式図である。
図1に示すように、システム1000は、駆動力切替スイッチ100、アクセルペダル200、ハイブリッドECU300、高電圧バッテリ500、昇圧コンバータ600、インバータ700、駆動モータ800を有して構成される。
【0019】
ハイブリッド自動車、電気自動車などの車両を駆動するシステムは、駆動輪を駆動するための駆動モータを備えている。
図1に示す構成において、駆動モータ800は、直流電圧を交流に変換するインバータ700の電圧が高いほど大出力を発生することができる。このため、昇圧コンバータ600により高電圧バッテリ500の電圧を昇圧してインバータ700に印加している。一方、昇圧コンバータ600では、バッテリ電圧500を昇圧すると、昇圧が大きいほど損失が発生する。昇圧コンバータ600の昇圧比が高いほど損失が大きくなるため、大出力を出そうとすると、昇圧コンバータ600における損失の増加につながる。更に、高電圧バッテリ500の電圧からインバータ700の最大電圧まで昇圧するために、目標電圧に対して実際の昇圧が行われるまでに200ms程度の遅延時間が発生する。このため、車両発進時に昇圧を行ったとしても、実際の昇圧は発進時よりも遅延するため、加速のもたつき感やドライバビリティの悪化が生じる。
【0020】
駆動力切替スイッチ100は、車両内のドライバーが操作できる位置に搭載され、ドライバーの操作に応じて走行モードを切り替えるスイッチである。本実施形態では、一例として、駆動力切替スイッチ100の操作により、スポーツシャープ(#)モード、スポーツモード、インテリジェントモードの3つのモードを切り替えて設定することができる。具体的には、スポーツシャープ(#)モードは、ドライバーのアクセル操作に対する反応をより鋭敏に設定するとともに高回転域まで活用し、積極的な走りに対応するモードである。スポーツモードは、アクセル操作に忠実な出力特性とし、幅広い用途において快適かつスポーティな走行を愉しめるモードである。インテリジェントモードは、市街地走行などの実用領域でスムーズかつ実用十分な出力特性を設定し、扱い易さと優れた実用燃費性能を実現するモードである。駆動力切替スイッチ100は、ドライバーが選択した走行モードをハイブリッドECU300へ送信する。
【0021】
アクセルペダル200は、ドライバーのアクセル操作を検出するセンサを含んでいる。ドライバーのアクセル操作は、ドライバーの要求駆動力としてハイブリッドECU300に送られる。
【0022】
ハイブリッドECU300は、駆動力切替スイッチ100の操作に応じた走行モードを取得する走行モード取得部302と、アクセル開度を取得するアクセル開度取得部304と、将来ドライバ要求駆動力算出部310と、目標昇圧電圧算出部350とを有して構成されている。また、将来ドライバ要求駆動力算出部310と目標昇圧電圧算出部350とから昇圧制御部306が構成されている。
【0023】
昇圧コンバータ600は、高電圧バッテリ500とインバータ700との間に設けられ、高電圧バッテリ500の電圧を昇圧して、昇圧した電圧をインバータ700に加える。ここで、高電圧バッテリ500の電圧に対する昇圧した電圧の比を昇圧比と称する。
【0024】
ここで、
図2は、駆動モータ800の回転数とモータトルクとの関係が、昇圧コンバータ600における昇圧によって変化する様子を示す特性図(モータ出力マップ)である。
図2の横軸はモータ回転数を、縦軸はモータトルクを示している。縦軸のモータトルクにおいて、正の値は駆動モータ800が駆動輪を駆動する際のトルクを、負の値は回生時に駆動輪が駆動モータ800を駆動する際のトルク(駆動モータ800による制動力)を示している。
【0025】
図2に示すように、モータトルクが正の値の場合、昇圧コンバータ600による昇圧が大きいほど同じモータ回転数に対するモータトルクが増加する。従って、昇圧コンバータ600による昇圧を大きくしてインバータ700に印加する電圧を高くすることで、より大きなモータトルクで駆動モータ800を駆動することが可能となる。
【0026】
また、
図2に示すように、モータトルクが負の値の場合は、昇圧コンバータ600による昇圧が大きいほど、駆動輪が駆動モータ800を回転させる際のモータトルクが増加する。
【0027】
また、
図3は、昇圧コンバータ600の変換効率を示す模式図である。
図3に示すように、高電圧バッテリ500の電圧は200[V]であり、昇圧コンバータ600は昇圧比を1〜3.250の範囲で変化させ、高電圧バッテリ500の電圧を200[V]から650[V]の範囲まで昇圧してインバータ700に印加する。また、
図3に示す一次側電力[kW]は、正の値はモータ駆動時に高電圧バッテリ500から取り出される電力を示しており、負の値は回生時に高電圧バッテリ500に充電される電力を示している。
図3では、一次側電力の各値毎に昇圧コンバータ600の変換効率(%)を示している。
図3に示すように、昇圧コンバータ600の昇圧比が増加するほど、昇圧コンバータ600の変換効率は低下する。すなわち、昇圧コンバータ600の昇圧電圧が高くなるほど変換効率は低下する。従って、必要な時以外は、昇圧コンバータ600の昇圧比を低下させておくことが望ましい。なお、効率の低下分は、昇圧コンバータ600が発生する熱として消費される。
【0028】
昇圧コンバータ600は、ハイブリッドECU300からの昇圧指令に基づいて高電圧バッテリ500の電圧を昇圧し、昇圧した電圧をインバータ700に印加する。インバータ700は、昇圧コンバータ600によって昇圧された電圧を利用し、直流電圧を交流に変換して駆動モータ800に印加することで、駆動モータ800のモータ巻線に電流を流す。駆動モータ800は、インバータ700によってモータ巻線に流された電流が発生させる磁界と駆動モータ800内部に設置されたマグネットの磁力とによって発生する電磁力により、車両を動かすための駆動力を発生させる。
【0029】
本実施形態において、ハイブリッドECU300は、駆動力切替スイッチ100の状態に応じて将来ドライバ要求駆動力を算出し、将来ドライバ要求駆動力に応じて最適な目標昇圧電圧を算出することで、昇圧コンバータ600による昇圧を必要最小限に制御する。ここで、将来ドライバ要求駆動力とは、将来的にドライバが要求可能な駆動力の最大値である。将来ドライバ要求駆動力は、駆動力マップから算出される最大駆動力、または(現在の駆動力+駆動力変化率上限)のいずれか小さい方の値となる。
【0030】
図4は、走行モードと電圧マージンの大きさとの関係を説明するための図である。なお、「目標昇圧電圧」とは、昇圧コンバータ600が昇圧する際の目標値を意味する。一例として、上述のように目標昇圧電圧は200V〜600V程度とされる。「必要昇圧電圧」とは、目標駆動力を出力するために最低限必要な昇圧電圧を示し、「実昇圧電圧」とは、昇圧コンバータが実際に出力している電圧を意味する。実昇圧電圧が必要昇圧電圧を下回ると、目標駆動力を出力することができない。また、実昇圧電圧は目標昇圧電圧とほぼ同一の値に制御されるが、実昇圧電圧は目標昇圧電圧に対して応答遅れがある場合がある。また、「目標駆動力(=要求駆動力)」とは、ドライバのアクセル操作によって要求される駆動力を示し、「実駆動力」とは駆動モータ800が実際に発生している駆動力を示す。「実駆動力」は、必要昇圧電圧が確保されていれば、応答遅れを生じることなく出力される。
【0031】
図4(a)〜
図4(c)の縦軸は昇圧電圧(相対値)及び駆動力(相対値)を示しており、横軸は時間を示している。また、
図4(a)〜
図4(c)のそれぞれにおいて、昇圧電圧を示す破線が目標昇圧電圧Vol_tgt_A,Vol_tgt_B,Vol_tgt_Cを示し、実線が実昇圧電圧Vol_act_A,Vol_act_B,Vol_act_Cを示し、一点鎖線が必要昇圧電圧Vol_0_A,Vol_0_B,Vol_0_Cを示している。また、駆動力を示す破線が次の制御周期の要求駆動力Qtgt_A,Qtgt_B,Qtgt_Cを示し、実線が現在の要求駆動力(実駆動力)Qact_A,Qact_B,Qact_Cを示している。また、
図4(a)〜
図4(c)において、電圧マージンVol_mar_A,Vol_mar_B,Vol_mar_Cは、実昇圧電圧と必要昇圧電圧との差分である。
【0032】
図4(a)〜
図4(c)は、それぞれスポーツシャープ(#)モード、スポーツモード、インテリジェントモードにおいて、所定の駆動力から自車両が全開加速した場合に昇圧電圧(相対値)及び駆動力(相対値)が変化する様子を示している。
【0033】
図4(a)に示すように、スポーツシャープ(#)モードにおいては、ドライバーのアクセル操作による要求駆動力を駆動モータ800により遅れなく出力させるために、要求駆動力の上限値(=最大値;将来ドライバ要求駆動力)を実現可能な電圧に昇圧する必要がある。そのために、スポーツシャープ(#)モードの電圧マージンVol_mar_Aは大きくなっている。
【0034】
これに対して、
図4(b)に示すように、スポーツモードにおいては、要求駆動力の上限値(=将来ドライバ要求駆動力)がスポーツシャープ(#)モードよりも低く設定される。そして、スポーツシャープ(#)モードよりも低い将来ドライバ要求駆動力を出力可能であれば良いため、電圧マージンVol_mar_Bは、スポーツシャープ(#)モードの電圧マージンVol_mar_Aよりも小さくなっている。これにより、昇圧コンバータ100における電力損失を低減することができる。
【0035】
また、
図4(c)に示すように、インテリジェントモードでは、要求駆動力の上限値に加えて、変化率の上限によって将来ドライバ要求駆動力が制限される。従って、実昇圧電圧Vol_act_Cの変化率も制限される。この場合には、将来ドライバ要求駆動力は、現在のドライバ要求駆動力に対して要求駆動力の変化率の上下限に相当する電圧マージンが上乗せされていればよいため、電圧マージンVol_mar_Cはさらに小さくなっている。したがって、昇圧コンバータ100における電力損失をさらに低減することができる。特に、起こり得る要求駆動力の変化率が、昇圧コンバータ100の昇圧応答性能による変化率よりも小さい場合には、電圧マージンVol_mar_Cをゼロにすることも可能となる。
【0036】
以上のように、走行モード毎に、将来ドライバ要求駆動力に応じて目標昇圧電圧を設定することで、電圧マージンを必要最小限の値に設定することができる。これにより、目標駆動力を確保するとともに、損失を最小限に抑えることが可能となる。
【0037】
次に、将来ドライバ要求駆動力を算出する手法について説明する。
図5は、将来ドライバ要求駆動力算出部310の構成を示す模式図である。
図5に示すように、将来ドライバ要求駆動力算出部310は、駆動力マップ312,314,316、絶対値算出部(ABS)318、最大値算出部320、変化率リミット処理部322、最大値算出部324、加算部326、最小値算出部328、を有して構成されている。
【0038】
駆動力マップ312,314,316のそれぞれは、スポーツシャープ(#)モード、スポーツモード、インテリジェントモードの3つのモードに対応するマップを有している。駆動力マップ312,314,316のそれぞれは、入力された駆動力切替スイッチ100の状態に基づいて、駆動力切替スイッチ100の状態に対応するマップを選択する。例えば、駆動力切替スイッチ100によりスポーツシャープ(#)モードが設定されている場合、駆動力マップ312が有する3つのマップのうち、スポーツシャープ(#)モードに対応するマップが選択される。
【0039】
駆動力マップ312には、現時点でのアクセル開度と車速が入力される。そして、駆動力マップ312は、駆動力切替スイッチ100の状態に対応するマップに基づいて、アクセル開度と車速に応じた駆動力を出力する。
【0040】
駆動力マップ314は、アクセル全閉時(0%)のマップに対応する。駆動力マップ314は、駆動力マップ314が有する3つのマップのうち、駆動力切替スイッチ100の状態に対応するマップを選択する。また、駆動力マップ314には、アクセル開度(0%)と車速が入力される。そして、駆動力マップ314は、駆動力切替スイッチ100の状態に対応するマップに基づいて、0%のアクセル開度と車速に応じた駆動力を出力する。
【0041】
駆動力マップ316は、アクセル全開時(100%)のマップに対応する。駆動力マップ316は、駆動力マップ316が有する3つのマップのうち、駆動力切替スイッチ100の状態に対応するマップを選択する。また、駆動力マップ316には、アクセル開度(100%)と車速が入力される。そして、駆動力マップ316は、駆動力切替スイッチ100の状態に対応するマップに基づいて、100%のアクセル開度と車速に応じた駆動力を出力する。
【0042】
駆動力マップ312が出力したアクセル開度と車速に応じた駆動力は、変化率リミット処理部322へ入力され、変化率リミット処理が行われる。変化率リミット処理部322には、ドライバ要求駆動力の変化率の上限値と変化率の下限値が入力される。そして、変化率リミット処理部322には、ドライバ要求駆動力の変化率の上限値と変化率の下限値とに基づいて、駆動力マップ312から入力された駆動力を制限し、ドライバ要求駆動力として出力する。このような変化率リミット処理により、急な駆動力変化による車体の前後振動が抑制される。ドライバ要求駆動力に基づいて駆動モータ800の制御が行われる。また、将来ドライバ要求駆動力を算出するため、ドライバ要求駆動力は加算部326へ入力される。なお、変化率リミット処理は、主としてインテリジェントモードにて行うことができる。
【0043】
また、ドライバ要求駆動力の変化率の上限値と変化率の下限値のそれぞれは、絶対値算出部(ABS)318にて絶対値がとられて最大値算出部324へ入力される。最大値算出部324では、ドライバ要求駆動力の変化率の上限値の絶対値と変化率の下限値の絶対値とを比較して、大きい方を加算部326へ出力する。加算部326では、変化率リミット処理部322から入力されたドライバ要求駆動力と、最大値算出部324から入力された変化率の上限値の絶対値、下限値の絶対値の大きい方とを加算する。ドライバ要求駆動力は変化率リミット処理部322で増減分が制限されているため、以下の関係が成立する。
将来ドライバ要求駆動力<現在のドライバ要求駆動力+変化率上限
【0044】
このように、現在のドライバ要求駆動力に対して、ドライバ要求駆動力の変化率の最大値が加算された値は、将来的なドライバ要求駆動力として見込まれる最大値と考えることができる。つまり、将来ドライバ要求駆動力の値は、現在のドライバ要求駆動力に対して変化率上限を加算して得られる値よりも小さい値とされる。なお、将来ドライバ要求駆動力は、現在の制御周期に対して、次の制御周期における最大のドライバ要求駆動力と考えることができる。加算部326では、上式の右辺を計算し、計算結果を最小値算出部328へ出力する。
【0045】
一方、駆動力マップ314が出力した0%のアクセル開度と車速に応じた駆動力と、駆動力マップ316が出力した100%のアクセル開度と車速に応じた駆動力は、絶対値算出部(ABS)318にてそれぞれの絶対値が算出されて、最大値算出部320へ入力される。最大値算出部320では、入力された絶対値のうち大きい方を要求駆動力上下限値として出力する。このようにして、アクセル全閉時の駆動力マップ314とアクセル全開時の駆動力マップ316とから、ドライバ要求駆動力の上下限値が決定される。この上下限値は、アクセル全開又は全閉時の要求駆動力であることから、将来ドライバ要求駆動力は、この上下限値を超えることはできない。
【0046】
このため、要求駆動量の上下限値は最小値算出部328に入力され、加算部326からの出力と比較される。そして、要求駆動力の上下限値と加算部326からの出力のうちの小さい方が将来ドライバ要求駆動力として出力される。このようにして、変化率リミット処理部322による変化率の制限と「ドライバ要求駆動力の上下限値」による制限を加えることで、将来のドライバが要求する駆動力の上限を将来ドライバ要求駆動力として出力することが可能となる。
【0047】
図6は、駆動力マップ312の一例を示す模式図である。
図6に示すように、スポーツシャープ(#)モード(S# Mode)、スポーツモード(S Mode)、インテリジェントモード(I Mode)のそれぞれについて、アクセルペダルの開度に応じた駆動力が規定されている。また、
図6に示すマップは、車速毎に設定されている。従って、駆動力マップ312によれば、アクセル開度と車速に応じた駆動力を求めることができる。駆動力マップ314,316は、駆動力マップ312と基本的な構成は同様であるが、駆動力マップ314は、アクセル開度が0%のときの駆動力を車速に応じて規定し、駆動力マップ316は、アクセル開度が100%のときの駆動力を車速に応じて規定している。
【0048】
以上のようにして、ハイブリッドECU300の将来ドライバ要求駆動力算出部310では、駆動力切替スイッチ100により設定された走行モードと、アクセルペダル開度と、車速とに基づいて、将来ドライバ要求駆動力を求めることができる。
【0049】
次に、ハイブリッドECU300の目標昇圧電圧算出部350で行われる処理について説明する。
図7は、目標昇圧電圧算出部350の構成例を示す模式図である。
図7に示すように、目標昇圧電圧算出部350には、将来ドライバ要求駆動力と駆動モータ800の回転数とが入力される。目標昇圧電圧算出部350には、将来ドライバ要求駆動力と駆動モータ800の回転数とから、昇圧コンバータ600の目標昇圧電圧を算出する。
【0050】
図8は、目標昇圧電圧算出部350が昇圧コンバータ600の目標昇圧電圧を算出する際に用いるマップを示す模式図である。
図8において、横軸は駆動モータ800の回転数を、縦軸は駆動モータ600の駆動力(将来ドライバ要求駆動力)を示している。
図8に示すマップでは、駆動モータ800の回転数と駆動モータ800の駆動力(将来ドライバ要求駆動力)に応じて、目標昇圧電圧(200V,300V,400V,500V,600V,650V)が規定されている。
【0051】
目標昇圧電圧算出部350は、入力された将来ドライバ要求駆動力と駆動モータ800の回転数を
図8のマップに当てはめ、入力された将来ドライバ要求駆動力と駆動モータ800の回転数に対応する目標昇圧電圧を算出する。そして、ハイブリッドECU300の昇圧制御部306は、目標昇圧電圧算出部350が算出した目標昇圧電圧を用いて、昇圧コンバータ600に対して昇圧指令を送る。
【0052】
以上のようにして、目標昇圧電圧算出部350は、将来ドライバ要求駆動力と駆動モータ800の回転数から昇圧コンバータ600の目標昇圧電圧を算出し、昇圧コンバータ600を目標昇圧電圧に昇圧することができる。将来ドライバ要求駆動力を実現可能な昇圧電圧が目標電圧として算出されることで、ドライバがいかなるアクセル操作をしても遅延なく駆動力を出力することができる。
【0053】
以上のようにして、本実施形態では、ドライバ要求駆動力が将来取り得る値(将来ドライバ要求駆動力)を、駆動力切替スイッチ100の操作状態と変化率リミット処理から推定する。そして、現在の駆動力を出力するために必要な電圧(=必要昇圧電圧)に電圧マージンを加え、将来ドライバ要求駆動力を出力できる電圧を目標昇圧電圧として設定し、昇圧制御を行う。これにより、(必要昇圧電圧+昇圧マージン)の電圧を実現していれば、ドライバがどのようなアクセル操作をしたとしても、遅延無く駆動力を出力することが可能となる。
【0054】
また、入力された駆動力切替スイッチ100の状態に基づいて、駆動力マップ312,314,316のそれぞれから、駆動力切替スイッチ100の状態に対応するマップが選択される。これにより、走行モードに応じて将来ドライバ要求駆動力を算出することが可能となり、
図4で示したように、走行モードに応じて実昇圧電圧に対する目標昇圧電圧のマージンを変化させることが可能となる。
【0055】
これにより、アクセルペダル量に対して要求駆動力を可変させる駆動力切替スイッチ100を備え、車両の加速特性をドライバー自身が選択できるようにしたシステムにおいて、加速特性の低い走行モードが選択された場合は、要求駆動力の応答性は低くても良いため、昇圧の電圧マージンが小さくなるように制御することで、昇圧損失を低減することができる。また、加速特性の高い走行モードが選択された場合は、昇圧の電圧マージンが大きくなるように制御することで、要求駆動力を瞬時に確実に発揮させることが可能となる。
【0056】
以上説明したように本実施形態によれば、走行モードに応じた将来ドライバ要求駆動力と駆動モータの回転数とから昇圧コンバータ600の目標昇圧電圧を算出するようにした。これにより、走行モードに応じて昇圧コンバータ600の昇圧の電圧マージンを必要最小限に確保することができ、昇圧損失を最小限に抑えるとともに、ドライバの要求に確実に応えることが可能となる。
【0057】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。