【実施例】
【0023】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0024】
本実施例は、工具本体1の先端に2つの切れ刃2が設けられ、この工具本体1の外周に工具先端から基端側に向かう2つの螺旋状の切り屑排出溝3a・3bが形成され、一方の前記切り屑排出溝3a・3bが他方の前記切り屑排出溝3a・3bの途中部に連設され、前記各切り屑排出溝3a・3bは該各切り屑排出溝3a・3bの連設する位置(連設部)から夫々ねじれ角を等しくして並走するように設けられた穴明け工具であって、工具先端から軸方向に工具直径Dの1倍(1D)以下の範囲で、マージン4の周方向長さの合計が工具直径の円の円周長さの20%以上55%以下であり、工具外周面に硬質皮膜5が設けられ、この硬質皮膜5の厚さは工具先端から軸方向に1D以下の範囲で0.5μm以上10μm以下であり、前記硬質皮膜5は工具先端側ほど厚く設けられ、前記マージン4の工具先端側位置の前記硬質皮膜5の膜厚T1と、前記マージン4の工具先端から軸方向に工具直径の2倍の位置若しくは工具直径の2倍(2D)以下の範囲における工具後端側位置の前記硬質皮膜5の膜厚T2の比T2/T1が、0.50以上0.98以下であり、工具の心厚W(
図3(a)参照)が工具直径の20%以上60%以下のものである。
【0025】
具体的には、前記穴明け工具は、
図2,3に図示したように、外周に螺旋状の切り屑排出溝3a・3bが設けられている工具本体1及び該工具本体1より径大なシャンク本体9を有するシャンク部10とから成るPCBドリルである。また、シャンク部10は、直径が3.175mmのシャンク本体9と、シャンク本体9の先端側に連設され先端側ほど先細るシャンクテーパ部8とで構成されている。
【0026】
前記穴明け工具において、少なくとも前記工具本体1は、炭化タングステンとコバルトを含有し後述する硬質皮膜5と良好に密着する超硬合金部材で形成され、シャンク本体9はステンレス鋼部材で形成されており、この両者が接合されて構成されている。即ち、所謂コンポジットタイプのドリルでありそれだけコストを下げることができる。なお、本実施例では、シャンクテーパ部8のシャンク本体9近傍部位をステンレス鋼製とし残余を超硬合金製としている。即ち、工具本体1全体を超硬合金製とし、この工具本体1及びシャンクテーパ部8の超硬合金製部分を一体の超硬合金部材とし、ステンレス鋼部材と接合している。また、前記穴明け工具は、図示しないが、シャンクテーパ部8の先端に連設され工具本体1より径大な中間円柱部及び該中間円柱部の先端に連設され工具本体1の基端が連設される先端側ほど先細る第2テーパ部を有する形状としてもよく、その場合、超硬合金部材とステンレス鋼部材の接合位置は本実施例と同様シャンクテーパ部8に配置されていてもよいし、中間円柱部や第2テーパ部に配置されていてもよい。
【0027】
なお、前記超硬合金部材のコバルト含有量は重量%で3%以上15%以下であることが好ましい。また、シャンクテーパ部のテーパ角度は本実施例においては30°に形成されている。
【0028】
また、本発明は、工具摩耗により穴位置精度が悪化し易い工具本体1の直径Dが0.05mm以上1.0mm以下の小径ドリルで特に顕著な効果が発揮される。この直径Dはマージン4に設けられた硬質皮膜5を含めた最大直径であり(
図6参照)、より好ましくは0.05mm以上0.6mm以下である。本実施例においては0.3mmに設定されている。
【0029】
また、工具本体1の形状は、工具本体1の先端側から基端側にかけて径が一定となる所謂ストレート形状(
図6(A)参照)としても良いし、基端側で一段径小となるような所謂アンダーカット形状(
図6(B)参照)としても良い。
【0030】
本実施例は、工具本体1をアンダーカット形状とし、基端側に比し径大とした先端側部分の軸方向長さl
2(マージン長)が0.2mm以上1.0mm以下に設定されている。即ち、硬質皮膜5の耐久性を改善するためにはマージン4の面積を大きくすることが有効であるが、加工穴内壁との接触面積が大きくなり過ぎると内壁粗さが悪化したり、切削抵抗が大きくなって折損が生じ易くなる可能性がある。
【0031】
この点、本実施例では工具本体1をアンダーカット形状とすることで、(マージン4の周方向長さを長くしつつ)マージン4と加工穴内壁面との接触面積を小さくし、内壁粗さの悪化を防いだり切削抵抗を小さくすることが可能となる。マージン長が0.2mm未満であると工具の摩耗が進行し易く、穴位置精度が悪化し易い。また、1.0mmより長いと切削抵抗が大きくなり折損が発生し易くなる。なお、より好ましいマージン長は0.3mm以上0.9mm以下である。本発明において、マージン4とは穴内壁面と接触し得る工具本体1の工具外周面を指し、
図6(A)に図示したようなストレート形状の場合、工具本体1の工具外周面はマージン4と同義であるが、
図6(B)に図示したようなアンダーカット形状の場合、一段径小となる基端側の円筒面(工具外周面)はマージン4とは異なる。また、工具本体1に二番取り面を設ける構成とした場合、二番取り面はマージン4とは異なる。
【0032】
また、本実施例は、2つの切れ刃2と2つの切り屑排出溝3a・3bとを工具先端位置において夫々点対称に設けた、
図3,4に図示したような所謂2刃2溝形状のドリルである。図中、符号6は第一逃げ面、7は第二逃げ面である。
【0033】
本実施例においては、根元部において剛性を確保する(溝容積を小さくする)ために、第一の切り屑排出溝3aが第二の切り屑排出溝3bの途中部に連設される構成としている。この連設部から工具基端側では各切り屑排出溝3a・3bのねじれ角が同一角度に設定され、各切り屑排出溝3a・3bが工具基端側所定位置まで並走するように構成されている(
図3参照。なお、
図3(a)〜(d)は
図2の先端部分(先端面、側面)を夫々90°異なる回転位相で見たものである。)。
【0034】
具体的には、第一の切り屑排出溝3aの溝長は、第二の切り屑排出溝3bの溝長lの50%以上97%以下に設定されている。2つの切り屑排出溝の溝長を同じとしてもよいが、異なる長さとして工具基端側所定位置まで並走させることで、折損の起点となりやすい工具本体1の基端部(根元部)で剛性を確保することができ、耐折損性をより改善することができる。なお、2つの切り屑排出溝の溝長を逆転させて、第二の切り屑排出溝3bの溝長を第一の切り屑排出溝3aの溝長より短く設定する構成としても良い。一方の切り屑排出溝の溝長が他方の切り屑排出溝の溝長の50%未満の場合、基板外に切り屑を排出するために重要となる溝中間部から基端にかけての溝容積が小さくなるため切り屑詰まりにより折損の可能性が高まり、97%より長い場合、溝長の差が小さく、根元部における剛性が確保し難くなる。なお、一方の切り屑排出溝の溝長を他方の切り屑排出溝の溝長の70%以上に設定した場合、より安定した切り屑排出が行われるためか、より長寿命で安定した穴加工を実現できることが、本発明者等により確認された。よって、一方の切り屑排出溝の溝長を他方の切り屑排出溝の溝長の70%以上97%以下に設定するのがより好ましい。
【0035】
また、本実施例においては、
図2〜4に図示したように、工具先端面及び切り屑排出溝3a・3bの内面には硬質皮膜5を設けず工具外周面にのみ硬質皮膜5を設けた構成としている。
【0036】
ここで、工具外周面とは、工具先端面及び切り屑排出溝3a・3bの内面を除く工具の外周面を指す。また、工具本体1に二番取り面を設ける構成とした場合、二番取り面は工具外周面とは異なる。即ち、
図6(A)に図示したようなストレート形状の場合、工具外周面はマージン4を指し、
図6(B)に図示したようなアンダーカット形状の場合、工具外周面はマージン4及び一段径小となる基端側の円筒面を指し、該工具外周面に硬質皮膜5が設けられている。即ち、本実施例においては、工具本体1の工具外周面に硬質皮膜5を設けた構成としているが、シャンクテーパ部8及びシャンク本体9の外周面など工具本体1より基端側の工具の外周面にも硬質皮膜5を設けた構成としても良い。なお、少なくとも工具本体1の工具外周面に硬質皮膜5を設ける構成とすれば硬質皮膜による耐摩耗性向上効果が得られる。
【0037】
従って、硬質皮膜5が被覆されていない切り屑排出溝3a・3bの内面部分が、切削時に工具に被覆された硬質皮膜に作用する圧縮、引張、ねじれ等の負荷を緩和する部分となり、硬質皮膜5に亀裂が生じることを防止できる。また、工具先端の逃げ面とすくい面との交差稜線部に存在する切れ刃2が硬質皮膜5に覆われず、刃物角を鋭利にすることができ、それだけ被削材への食いつき性が向上するため、被削材への食いつき時の穴位置精度が良好となり、工具の被削材進入後の進行方向ズレを未然に防ぐことができる。
【0038】
本実施例では硬質皮膜5として、金属成分として少なくともAlとCrとを含み、非金属成分として少なくともNを含むものを採用している。このような硬質皮膜5は、工具母材の摩耗を抑制するが、加工とともに皮膜自体が摩耗するため、適度な厚さが必要であり、通常使用される加工ヒット数の範囲内で消失させないため、0.5μm以上あることが望ましい。一方、厚すぎると剥離し易くなるため、10μm以下であることが望ましい。そのため、本実施例においては硬質皮膜5は、工具先端から軸方向に1D以下の範囲における膜厚が0.5μm以上10μm以下となるように設定されている。
【0039】
本実施例では、工具先端から軸方向に1D以下の範囲でマージン4の周方向長さの合計(
図5におけるP1+P2)が工具直径の円の円周長さ(πD、πは円周率)の20%以上55%以下となるように設定している(以下、このπDに対するマージンの周方向長さの合計の比率をマージン円周比という。)。
【0040】
ここで、マージン円周比が大きくなると、マージン4の皮膜耐久性が良くなり、それだけ工具先端部のコーナー付近の外周摩耗が進行し難くなって穴位置精度が悪化し難くなるが、マージン円周比がπDの55%より大きい場合には、切削抵抗が大きくなり折損しやすくなり、πDの20%より小さい場合には、マージン4の皮膜耐久性が悪くなり、工具先端部のコーナー付近の外周摩耗が進行しやすくなって穴位置精度が悪化しやすくなる。
【0041】
また、ドリルは先端部ほど切削抵抗を強く受けるため、工具先端部のコーナー付近で皮膜の耐久性が悪くなったり、摩耗が進行しやすくなったりする。よって、工具先端側のマージン4ほど厚めに硬質皮膜5を成膜したほうが(工具本体1の根元側から先端側にかけて膜厚が漸増するように設けたほうが)、穴位置精度の悪化を抑制しやすい。
【0042】
そのため、本実施例は、
図6に図示したように、マージン4の工具先端側位置(工具先端部のコーナー位置)L1の硬質皮膜5の膜厚T1と、マージン4の工具先端から軸方向に2Dの位置若しくは2D以下の範囲の工具後端側位置L2の硬質皮膜5の膜厚T2の比T2/T1が、0.50以上0.98以下となるように設定されている。なお、
図6(A)はL2がマージン4の工具先端から軸方向に2Dの位置の例、
図6(B)はL2がマージン4の工具先端から軸方向に2D以下の範囲の工具後端側位置の例である。即ち、
図6(B)のようにマージン4の工具軸方向後端(径大部後端)が工具先端から軸方向に2D以下の範囲に位置するアンダーカット形状の場合、前記マージン4の工具軸方向後端(径大部後端)の位置をL2とし、また、マージン4の工具軸方向後端(径大部後端)が工具先端から軸方向に2Dの範囲を超えて位置するアンダーカット形状(図示しない)の場合、工具先端から軸方向に2Dの位置をL2とする。つまり、この場合、
図6(A)に図示したようなストレート形状のドリルと同様にL2を設定する。
【0043】
ここで、T2/T1が、0.50未満の場合には、位置L1において皮膜が工具径方向に突き出る形状となって切削負荷が集中し、皮膜強度以上の応力が発生するため、この付近でかえって皮膜が欠損しやすくなり、穴位置精度の悪化を招く。T2/T1が、0.98より大きい場合には、工具本体1の根元側から先端側にかけて膜厚がほぼ一定に、若しくは、根元側から先端側にかけて膜厚が漸減するようになるため、工具先端部のコーナー付近に十分な膜厚が無く、先端部の皮膜の耐久性悪化や摩耗が進行し易くなり、穴位置精度が悪化しやすくなる。
【0044】
このT2/T1は、例えば、
図7に図示したように、皮膜を成膜する成膜炉内でドリルを保持するジグを、ドリルの直径Dに対して水平方向に十分大きいものとし、ジグに対するドリルの挿入深さを変化させることで、適宜設定することができる。具体的には、ドリルの挿入深さを深くするとT2/T1を小さくでき(L1におけるT1の膜厚を厚くでき)、浅くするとT2/T1を大きくできる(L1におけるT1の膜厚を薄くできる)。
【0045】
また、本実施例は、ドリル自体の剛性を確保し、ドリルに被覆された硬質皮膜の圧縮、引張、ねじれの負荷に対する耐性を高めるため、工具の心厚Wを工具直径Dの20%以上60%以下に設定している(以下、この工具直径Dに対する工具の心厚Wの比率を心厚直径比という。)。この工具の心厚Wは
図3(a)に示したように工具先端面における心厚であり、心厚直径比が20%未満の場合、剛性不足による穴位置精度の悪化や折損が生じ易くなる。また、心厚直径比が60%より大きいと溝容積が小さくなり、内壁粗さの悪化や切り屑詰まりによる折損が生じ易くなる。
【0046】
本実施例は上述のように構成したから、工具先端部においてマージン4の周方向長さを十分長くして硬質皮膜5の耐久性を向上させると共に、この硬質皮膜5を所定の膜厚で工具先端側ほど厚く設けることで、工具先端側の硬質皮膜5が摩耗し難くなる。従って、工具の被削材進入後の進行方向ズレが可及的に抑制され、穴位置精度が悪化し難くなる。
【0047】
更に、2つの切り屑排出溝3a・3bを途中で連設(合流)させて工具基端側で並走させることで、工具本体1の剛性を向上させることができ、上述の硬質皮膜5による穴位置精度の悪化防止効果が一層良好に発揮される。また、2つの切り屑排出溝3a・3bの溝長を異ならせることで、同一長さにした場合に比し、折損の起点となり易い工具基端側で剛性を確保することが可能となる。
【0048】
また、硬質皮膜5が被覆されていない切り屑排出溝3a・3bの内面部分が、切削時に工具に被覆された硬質皮膜に作用する圧縮、引張、ねじれ等の負荷を緩和する部分となり、硬質皮膜5に亀裂が生じることを防止できる。
【0049】
更に、工具の心厚Wを所定の大きさとすることで、この点でも工具本体1の剛性を確保することが可能となり、工具に被覆された硬質皮膜の圧縮、引張、ねじれ等の負荷に対する耐性が向上する。
【0050】
よって、本実施例は、穴位置精度及び耐折損性の更なる改善が可能な実用性に秀れたものとなる。
【0051】
本実施例の効果を裏付ける実験例について説明する。
【0052】
図8〜14は、ドリル形状や硬質皮膜の構成を変化させて穴位置精度等を評価した実験条件及び実験結果を示す表である。
【0053】
具体的には、
図8は切り屑排出溝を合流させず工具基端側まで夫々独立して設けた2刃2溝通常形状ドリルと切り屑排出溝を合流させ工具基端側で並走させた2刃2溝溝連設並走形状ドリルの硬質皮膜の被覆部位違いの比較評価結果の図である。
図9はマージン円周比違いの比較評価結果の図である。
図10は膜厚違いの比較評価結果の図である。
図11はT2/T1違いの比較評価結果の図である。
図12は心厚直径比違いの比較評価結果の図である。
図13はマージン長違いの比較評価結果の図である。
図14は工具直径違いの比較評価結果の図である。
【0054】
図8〜12に関する実験(試験No.1〜5)について詳述する。
【0055】
図8の実験で使用したドリルは、工具直径Dを0.3mmとした2刃2溝通常形状ドリル及び2刃2溝溝連設並走形状ドリルであり、硬質皮膜の被覆部位を変化させている。
【0056】
図9の実験で使用したドリルは、工具直径Dを0.3mmとした2刃2溝溝連設並走形状ドリルであり、マージン円周比を変化させている。心厚直径比は38%以上42%以下とした。
【0057】
図10の実験で使用したドリルは、工具直径Dを0.3mmとした2刃2溝溝連設並走形状ドリルであり、膜厚を変化させている。なお、T2/T1は0.70以上0.88以下とした。
【0058】
図11の実験で使用したドリルは、工具直径Dを0.3mmとした2刃2溝溝連設並走形状ドリルであり、T2/T1を変化させている。なお、膜厚は8.7μm以上9.6μm以下とした。
【0059】
図12の実験で使用したドリルは、工具直径Dを0.3mmとした2刃2溝溝連設並走形状ドリルであり、心厚直径比を変化させている。マージン円周比は37%以上44%以下とした。
【0060】
なお、
図8〜12に関する実験において、全ての2刃2溝溝連設並走ドリルの一方の切り屑排出溝の溝長は他方の切り屑排出溝の溝長の91%に設定されている。また図中、被覆部位欄の表示は夫々、全体:工具本体1の全面に硬質皮膜を被覆、工具外周面:工具本体1においては工具外周面にのみ硬質皮膜を被覆、-:ノンコート(硬質皮膜を全く設けない)を示す。また、膜厚は夫々のドリルのL1の位置において測定した。また被覆されているドリルは、各実験において同一条件にてコーティングを行った。
【0061】
以上のドリルにより、基材としての「FR−4ハロゲンフリー材 厚さ1.6mm 6層銅箔」を2枚重ね、当て板としてアルミ板(厚さ0.15mm)、捨て板としてベーク板(厚さ1.5mm)を用い、各仕様について10本ずつ所定の条件で穴明け加工を行い穴位置精度評価及び折損評価実験を行った。なお、穴位置精度評価実験では、ドリル(スピンドル)の回転数:120,000min
−1、送り速度:1.8m/min、スピンドルの上昇速度:25.4m/min、ヒット数:10,000とし、折損評価実験では、ドリル(スピンドル)の回転数:100,000min
−1、送り速度:3.0m/min、スピンドルの上昇速度:25.4m/min、ヒット数4,000とした。
【0062】
図8〜
図12における評価方法について説明する。穴位置精度については、10本の10,000ヒット加工における最下基板裏側の穴位置ずれ量のAvg.+3s値を記載した(×:効果小さい(45μm以上)、△:効果中程度(40μm以上45μm未満)、○:効果大きい(40μm未満))。折損本数については、4,000ヒット以内で10本中の折損本数を記載した(×:効果小さい(4本以上)、△:効果中程度(2本以上4本未満)、○:効果大きい(2本未満))。
【0063】
評価結果より、以下の点を確認した。
【0064】
2刃2溝通常形状のドリルは剛性が低く、穴位置精度が2刃2溝溝連設並走形状より劣る。また、2刃2溝溝連設並走形状でもノンコートの場合は硬質皮膜を被覆してある場合に比べ穴位置精度は劣り、硬質皮膜被覆部位が工具本体の全面に及ぶと耐折損性が悪化する(
図8)。
【0065】
また、2刃2溝溝連設並走形状で工具外周面にのみ硬質皮膜が被覆されていても、マージン円周比が小さくなると穴位置精度が悪化し、大きくなると耐折損性が悪化する。マージン円周比が40%、50%の場合に穴位置精度と耐折損性で特に良好な結果が得られた(
図9)。
【0066】
また、膜厚が3.9μm、9.6μmでは穴位置精度の改善効果が高まる結果が得られた。(
図10)。
【0067】
また、T2/T1が0.78、0.90の場合に、穴位置精度が良好な結果となった(
図11)。
【0068】
また、心厚直径比が小さいと穴位置精度が悪化し、大きいと耐折損性が悪化する。心厚直径比が38%、48%で穴位置精度と耐折損性がどちらも特に良好な結果となった(
図12)。
【0069】
以上から、本実施例に係る構成は良好な穴位置精度及び耐折損性を得られる構成であることが確認できた。
【0070】
図13に関する実験(試験No.6)について詳述する。
【0071】
図13の実験で使用したドリルは、工具直径Dを0.3mm、溝長l(2つの切り屑排出溝のうち長い方の溝長)を5.5mmとした2刃2溝溝連設並走形状ドリルであり、マージン長l
2を変化させている。なお、実験例8のみストレート形状とし、他はアンダーカット形状としている。硬質皮膜は工具外周面にのみ設け、膜厚は4.3μm以上5.0μm以下とした。
【0072】
以上のドリルにより、基材としての「FR−4ハロゲンフリー材 厚さ1.6mm 6層銅箔」を2枚重ね、当て板としてアルミ板(厚さ0.15mm)、捨て板としてベーク板(厚さ1.5mm)を用い、各仕様について10本ずつ穴位置精度評価及び折損評価実験を行い、各仕様について1本ずつ穴内壁粗さ評価実験を行った。なお、穴位置精度評価実験及び穴内壁粗さ評価実験では、ドリル(スピンドル)の回転数:120,000min
−1、送り速度:1.8m/min、スピンドルの上昇速度:25.4m/min、ヒット数:10,000とし、折損評価実験では、ドリル(スピンドル)の回転数:100,000min
−1、送り速度:3.0m/min、スピンドルの上昇速度:25.4m/min、ヒット数4,000とした。
【0073】
図13における評価方法について説明する。穴位置精度については、10本の10,000ヒット加工における最下基板裏側の穴位置ずれ量のAvg.+3s値を記載した(×:効果小さい(45μm以上)、△:効果中程度(40μm以上45μm未満)、○:効果大きい(40μm未満))。穴内壁粗さについては、10,000ヒット付近の5穴の穴内壁の粗さを測定した(×:効果小さい(30μm以上)、△:効果中程度(20μm以上30μm未満)、○:効果大きい(20μm未満))。折損本数については、4,000ヒット以内で10本中の折損本数を記載した(×:効果小さい(4本以上)、△:効果中程度(2本以上4本未満)、○:効果大きい(2本未満))。
【0074】
評価結果より、アンダーカット形状を採用することで穴内壁粗さ、耐折損性が改善することが確認できた。また、マージン長l
2が短いと摩耗が進行し易く、穴位置精度が悪化し易くなり、長いと切削抵抗が大きくなり折損が発生し易くなることが確認できた。
【0075】
以上から、本実施例で採用したアンダーカット形状及び0.2mm以上1.0mm以下のマージン長は、良好な穴位置精度、穴内壁粗さ及び耐折損性を得られる構成であることが確認できた。
【0076】
図14に関する実験(試験No.7)について詳述する。
【0077】
図14の実験で使用したドリルは、工具直径を変化させた2刃2溝溝連設並走形状のコートドリル(硬質皮膜を被覆したドリル)及びノンコートドリルである。なお、工具直径の変化に伴い、溝長(2つの切り屑排出溝のうち長い方の溝長)、マージン長、膜厚も変化させている。コートドリルでは硬質皮膜を工具外周面にのみ設けている。
【0078】
以上のドリルにより、各工具直径に応じて下記の条件で穴位置精度評価実験及び折損評価実験を行った。
【0079】
・工具直径D:0.05mm
基材としての「ハロゲンフリー材 厚さ0.1mm 2層銅箔」を2枚重ね、当て板として樹脂付きアルミ板(厚さ0.1mm)、捨て板としてベーク板(厚さ1.5mm)を用いた。穴位置精度評価実験では、ドリル(スピンドル)の回転数:300,000min
−1、送り速度:1.5m/min、スピンドルの上昇速度:50.0m/min、ヒット数:4,000とし、折損評価実験では、ドリル(スピンドル)の回転数:250,000min
−1、送り速度:2.5m/min、スピンドルの上昇速度:50.0m/min、ヒット数2,000とした。
【0080】
・工具直径D:0.15mm
基材としての「ハロゲンフリー材 厚さ0.4mm 2層銅箔」を3枚重ね、当て板として樹脂付きアルミ板(厚さ0.1mm)、捨て板としてベーク板(厚さ1.5mm)を用いた。穴位置精度評価実験では、ドリル(スピンドル)の回転数:200,000min
−1、送り速度:2.0m/min、スピンドルの上昇速度:25.4m/min、ヒット数:4,000とし、折損評価実験では、ドリル(スピンドル)の回転数:180,000min
−1、送り速度:2.6m/min、スピンドルの上昇速度:25.4m/min、ヒット数2,000とした。
【0081】
・工具直径D:0.3mm
基材としての「FR−4ハロゲンフリー材 厚さ1.6mm 6層銅箔」を2枚重ね、当て板としてアルミ板(厚さ0.15mm)、捨て板としてベーク板(厚さ1.5mm)を用いた。穴位置精度評価実験では、ドリル(スピンドル)の回転数:120,000min
−1、送り速度:1.8m/min、スピンドルの上昇速度:25.4m/min、ヒット数:6,000とし、折損評価実験では、ドリル(スピンドル)の回転数:100,000min
−1、送り速度:3.0m/min、スピンドルの上昇速度:25.4m/min、ヒット数4,000とした。
【0082】
・工具直径D:0.6mm
基材としての「FR−4材 厚さ1.6mm 6層銅箔」を3枚重ね、当て板としてアルミ板(厚さ0.2mm)、捨て板としてベーク板(厚さ1.5mm)を用いた。穴位置精度評価実験では、ドリル(スピンドル)の回転数:75,000min
−1、送り速度:2.05m/min、スピンドルの上昇速度:25.4m/min、ヒット数:4,000とし、折損評価実験では、ドリル(スピンドル)の回転数:40,000min
−1、送り速度:3.0m/min、スピンドルの上昇速度:25.4m/min、ヒット数2,000とした。
【0083】
・工具直径D:1.0mm
基材としての「FR−4材 厚さ1.5mm 4層銅箔」を2枚重ね、当て板としてアルミ板(厚さ0.15mm)、捨て板としてベーク板(厚さ1.5mm)を用いた。穴位置精度評価実験では、ドリル(スピンドル)の回転数:48,000min
−1、送り速度:0.96m/min、スピンドルの上昇速度:25.4m/min、ヒット数:3,000とし、折損評価実験では、ドリル(スピンドル)の回転数:30,000min
−1、送り速度:1.4m/min、スピンドルの上昇速度:25.4m/min、ヒット数2,000とした。
【0084】
・工具直径D:1.2mm
基材としての「FR−4材 厚さ1.6mm 2層銅箔」を3枚重ね、当て板としてアルミ板(厚さ0.15mm)、捨て板としてベーク板(厚さ1.5mm)を用いた。穴位置精度評価実験では、ドリル(スピンドル)の回転数:48,000min
−1、送り速度:0.96m/min、スピンドルの上昇速度:25.4m/min、ヒット数:3,000とし、折損評価実験では、ドリル(スピンドル)の回転数:30,000min
−1、送り速度:1.5m/min、スピンドルの上昇速度:25.4m/min、ヒット数2,000とした。
【0085】
図14における評価方法について説明する。穴位置精度については、10本の設定ヒット数におけるノンコートドリルとコートドリルの穴位置ずれ量Avg.+3s値の差(ノンコート差)を記載した(×:効果小さい(ノンコート差が2μm未満)、△:効果中程度(ノンコート差が2μm以上4μm未満)、○:効果大きい(ノンコート差が4μm以上))。折損本数については、設定ヒット数以内でコートドリル10本中の折損本数を記載した(×:効果小さい(4本以上)、△:効果中程度(2本以上4本未満)、○:効果大きい(2本未満))。
【0086】
評価結果より、工具直径Dが0.05mm〜1.0mmでノンコートドリルに対しコートドリルの効果(硬質皮膜を被覆することによる穴位置精度及び耐折損性向上効果)が発揮されることが確認できた。
【0087】
以上から、工具直径Dが0.05mm〜1.0mmのドリルで特に本発明の効果が発揮されることが確認できた。