(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明における位置推定システム100のシステム構成を示す図である。本発明の位置推定システム100は、通信端末10、AP20、位置推定装置30及び情報登録装置40を備える。通信端末10、位置推定装置30及び情報登録装置40のそれぞれは、ネットワーク50を介して通信可能に接続される。
【0016】
本発明における位置推定システム100は、屋内において通信端末10の位置を推定する際に利用される。まず、以下の説明において前提となる条件について説明する。
条件1:屋内に設置されたAP20の電波が外部に漏れないこと。ここで、外部とは、屋内の1フロアを対象とした場合にはその1フロアとは異なるフロアや屋外のことを表し、屋内を対象とした場合には屋外のことを表す。
条件2:屋内又は1フロアの構造や座標位置(例えば、緯度(X軸方向の位置)、経度(Y軸方向の位置))が分かるデータ(以下、「フロアマップ」という。)を事前に入手できること。
条件3:通信端末10にはAP20の識別情報が記憶されていること。識別情報は、例えばAP20のMACアドレスである。
以上で前提となる条件についての説明を終了する。
【0017】
ユーザが屋内に入ると、通信端末10は屋内に設置されたAP20から電波を受信し、位置推定を開始する。通信端末10は、ユーザが所定の距離移動する度に、AP20から送信された電波の受信電波強度(以下、単に「電波強度」という。)の値を記憶する。通信端末10は、あらかじめ設定された距離(以下、「設定距離」という。)だけ移動すると、自装置に記憶している全ての電波強度の値を位置推定装置30に送信する。位置推定装置30は、通信端末10から受信した電波強度の値と、あらかじめ記憶している、通信端末10が存在するフロア内の各位置における電波強度の値とに基づいて、通信端末10の移動経路を決定し、通信端末10の位置を推定する。
以下、位置推定システム100の詳細について説明する。
【0018】
通信端末10は、ユーザによって携帯される通信装置である。通信端末10は、例えばスマートフォン、携帯電話、タブレット端末、ノートパソコン、ゲーム機器等の情報処理装置を用いて構成される。通信端末10は、AP20の識別情報を記憶している。通信端末10は、AP20からの電波を受信してから設定距離移動すると、位置推定要求を位置推定装置30に送信する。位置推定要求とは、通信端末10の位置を推定させるための要求である。位置推定要求には、通信端末10がAP20からの電波を最初に受信した位置(以下、「初期位置」という。)に関する情報(以下、「初期位置情報」という。)と、設定距離移動するまでの所定の距離ごとに測定された電波強度の値(以下、「所定位置電波強度」という。)と、設定距離の情報とが含まれる。なお、設定距離は、ユーザによって設定されてもよいし、あらかじめ通信端末10で設定されていてもよい。
【0019】
AP20は、無線LAN(Local Area Network)のアクセスポイントであり、周期的に電波を出力する。AP20は、フロアに固定して設置される。
位置推定装置30は、通信端末10からの位置推定要求に応じて通信端末10の位置を推定する。位置推定装置30は、例えばパーソナルコンピュータ等の情報処理装置を用いて構成される。
【0020】
情報登録装置40は、位置推定システム100のサービス提供者の操作に応じて、位置推定に必要となる情報(以下、「位置推定必須情報」という。)を登録する。位置推定必須情報は、例えばフロアの各位置における電波強度の値、電波強度が測定されたフロア内の座標情報及び入口情報などである。入口情報は、電波強度が測定された位置に入口があるか否かを示す情報である。
【0021】
ネットワーク50は、どのように構成されたネットワークでもよい。例えば、ネットワーク50はインターネットを用いて構成されてもよい。
以下、本発明における位置推定システム100の具体的な構成例(第1実施形態及び第2実施形態)について説明する。
【0022】
[第1実施形態]
図2は、第1実施形態における通信端末10及び位置推定装置30の機能構成を表す概略ブロック図である。
まず、通信端末10の機能構成を説明する。通信端末10は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、情報表示プログラムを実行する。情報表示プログラムの実行によって、通信端末10は、通信部101、制御部102、距離測位部103、履歴情報記憶部104、表示部105を備える装置として機能する。なお、通信端末10の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。また、情報表示プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。また、情報表示プログラムは、電気通信回線を介して送受信されてもよい。
【0023】
通信部101は、AP20との間で通信を行う。例えば、通信部101は、AP20から送信された電波を受信する。また、通信部101は、ネットワーク50を介して位置推定装置30との間で通信を行う。例えば、通信部101は、位置推定装置30から位置情報を受信する。例えば、通信部101は、位置推定要求を位置推定装置30に送信する。
【0024】
制御部102は、通信端末10の各機能部を制御する。制御部102は、受信された電波の電波強度を測定する。また、制御部102は、受信された電波の送信元であるAP20の識別情報と自装置があらかじめ記憶しているAP20の識別情報とが一致するか否か判定する。AP20の識別情報が一致しない場合、制御部102は制御を行わない。一方、AP20の識別情報が一致する場合、制御部102は距離測位部103を制御して自装置の移動距離を測定させる。
【0025】
距離測位部103は、加速度センサなどの移動を判別可能なセンサを用いて構成される。距離測位部103は、制御部102の制御に従って通信端末10の移動距離を測定する。距離測位部103は、自装置が所定の距離移動する度に、所定の距離移動したことを示す通知(以下、「区画移動通知」という。)を制御部102に出力する。
履歴情報記憶部104は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。履歴情報記憶部104は、初期位置情報及び制御部102によって測定された電波強度の値を記憶する。
【0026】
表示部105は、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の画像表示装置である。表示部105は、通信部101によって受信された位置情報を表示する。表示部105は、画像表示装置を通信端末10に接続するためのインタフェースであってもよい。この場合、表示部105は、位置情報を表示するための映像信号を生成し、自身に接続されている画像表示装置に映像信号を出力する。
【0027】
次に、位置推定装置30の機能構成を説明する。位置推定装置30は、バスで接続されたCPUやメモリや補助記憶装置などを備え、情報送信プログラムを実行する。情報送信プログラムの実行によって、位置推定装置30は、通信部301、情報取得部302、電波強度情報記憶部303、検索部304、経路解析部305、位置推定部306を備える装置として機能する。なお、位置推定装置30の各機能の全て又は一部は、ASICやPLDやFPGA等のハードウェアを用いて実現されてもよい。また、情報送信プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。また、情報送信プログラムは、電気通信回線を介して送受信されてもよい。
【0028】
通信部301は、通信端末10との間で通信を行う。例えば、通信部301は、位置情報を通信端末10に送信する。例えば、通信部301は、通信端末10から位置推定要求を受信する。また、通信部301は、情報登録装置40との間で通信を行う。例えば、通信部301は、情報登録装置40から送信された位置推定必須情報を受信する。
情報取得部302は、通信部301を介して位置推定必須情報を取得する。
【0029】
電波強度情報記憶部303は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。電波強度情報記憶部303は、電波強度マスタデータベースを記憶している。電波強度マスタデータベースには、フロアID毎に、位置推定必須情報が対応付けて記憶されている。フロアIDの値は、屋内のフロアを識別するための識別情報を表す。
【0030】
検索部304は、通信端末10からの要求に応じて、電波強度マスタデータベースを検索する。例えば、検索部304は、受信された位置推定要求に応じて、通信端末10が移動し得る経路の候補(以下、「候補経路」という。)を検索する。
経路解析部305は、受信された位置推定要求に含まれる所定位置電波強度の値と、候補経路における電波強度の値とに基づいて、検索部304によって検索された候補経路の中から通信端末10が移動した経路を決定する。
位置推定部306は、経路解析部305によって決定された経路に基づいて通信端末10の位置を推定する。
【0031】
図3は、位置推定装置30が記憶する電波強度マスタデータベースの具体例を示す図である。
電波強度マスタデータベースは、位置推定必須情報を表すレコード60を複数有する。レコード60は、フロアID、APID、X座標、Y座標、電波強度及び入口フラグ有無の各値を有する。フロアIDの値は、屋内のフロアを識別するための識別情報を表す。APIDの値は、同じレコード60のフロアIDで識別されるフロアに設置されているAP20の識別情報を表す。APIDは、例えばAP20のMACアドレスである。X座標の値は、同じレコード60のフロアIDで識別されるフロアのフロアマップにおけるX軸方向の座標を表す。Y座標の値は、同じレコード60のフロアIDで識別されるフロアのフロアマップにおけるY軸方向の座標を表す。電波強度の値は、同じレコード60のX座標及びY座標で示される位置で測定された電波強度を表す。入口フラグ有無の値は、同じレコード60のX座標及びY座標で示される位置にフロアの入口が有るか否かを表す。
図3の例では、入口フラグの有無が“0”又は“1”で示されている。入口フラグ有無の値が“0”の場合、同じレコード60のX座標及びY座標で示される位置にフロアの入口が無いことを表す。入口フラグ有無の値が“1”の場合、同じレコード60のX座標及びY座標で示される位置にフロアの入口が有ることを表す。
【0032】
図3に示される例では、電波強度マスタデータベースには1つのフロアIDが登録されている。このフロアIDは、“フロア1”である。
図3において、電波強度マスタデータベースの最上段に登録されているレコード60は、フロアIDの値が“フロア1”、APIDの値が“aaa”、X座標の値が“a”、Y座標の値が“b”、電波強度の値が“c”、入口フラグ有無の値が“0”である。すなわち、フロアID“フロア1”で識別されるフロアにはMACアドレス“aaa”のAP20が設置されており、当該フロアのフロアマップX座標“a”、Y座標“b”で示される位置で測定されたAP20の電波の電波強度が“c”であり、当該位置に入口が無いことが表されている。
【0033】
また、
図3において、電波強度マスタデータベースの2段目に登録されているレコード60は、フロアIDの値が“フロア1”、APIDの値が“aaa”、X座標の値が“a+1”、Y座標の値が“b”、電波強度の値が“d”、入口フラグ有無の値が“1”である。すなわち、フロアID“フロア1”で識別されるフロアにはMACアドレス“aaa”のAP20が設置されており、当該フロアのフロアマップX座標“a+1”、Y座標“b”で示される位置で測定されたAP20の電波の電波強度が“d”であり、当該位置に入口が有ることが表されている。
【0034】
図4は、事前処理を説明するための図である。
事前処理とは、サービス提供者が事前に各フロアの各位置における電波強度を測定し、位置推定装置30にフロアごとの各位置(X座標及びY座標で示される位置)における電波強度の値及び入口の有無を登録する処理である。ここで、事前とは、フロア内に極力人がいない状態を表す。例えば、店舗の開店前や、店舗の閉店後などのフロア内に極力人がいない状態である。この事前処理は、一度処理を行えば毎日行う必要はない。ただし、フロアの構造が変化する場合には、その都度事前処理を行う必要がある。フロアの構造が変化する場合とは、例えばフロア内に新たに仕切りが増える又は減る場合や、ドアが増える又は減る場合などである。
【0035】
事前処理の処理方法としては、
図4に示されるように、フロアを所定の区画に分類し、それぞれの区画を電波強度の測定対象とする。なお、以下の説明では、電波強度の測定対象の区画(以下、「対象区画」という。)が単位区画(正方形)である場合を例に説明する。また、フロアに1台のAP20が設置されている場合を例に説明する。
なお、
図4において、水平方向をX軸とし、垂直方向をY軸とする。各対象区画には、フロアに存在するいずれかの角の座標位置(
図4では、位置61−1)を基準として座標が一意に割り当てられており、座標の値は整数で表される。例えば、
図4の例では、位置61−2の座標は(X,Y)=(3,1)と表され、位置61−3の座標は(X,Y)=(3,2)と表され、位置61−4の座標は(X,Y)=(4,1)と表される。このように、ある対象区画と当該対象区画の隣の対象区画とでは、X座標又はY座標の値が+1もしくは−1される。
【0036】
図4に示される領域71は、AP20から送信された電波の電波強度が所定の値以上になる領域を表す。すなわち、領域71は、AP20から強い電波が受信できる領域である。領域72は、AP20から送信された電波の電波強度が所定の値未満になる領域を表す。すなわち、領域72は、領域71で受信される電波より弱い電波が受信される領域である。その他の領域(領域71及び領域72に含まれない領域)では、AP20からの電波は受信できるものの、領域71及び72で受信される電波と比較すると弱い電波が受信される。
【0037】
サービス提供者70は、電波強度を測定できる機能を有した通信装置(例えば、通信端末)を所持し、フロアの対象区画ごとに電波強度を測定する。なお、障害物(例えば、
図4の黒塗りの領域)などにより電波強度を測定できない区画は、電波強度取得と位置測位の対象外とし、電波強度マスタデータベースに情報を保存しない。すなわち、障害物などにより電波強度を測定できない区画については、電波強度や座標の項目ごと電波強度マスタデータベースに載せない。この処理を対象区画に対して繰り返し実行することにより、サービス提供者70はフロアの対象区画ごとに電波強度を測定する。そして、測定が完了すると、サービス提供者70は情報登録装置40を操作して、測定した電波強度の値を登録する。この際、AP20の識別情報と、電波強度を測定した対象区画の座標情報と、入口情報とを対応付けて登録する。以上のようにして登録された情報が位置推定必須情報である。
以上で、事前処理についての説明を終了する。
【0038】
図5は、第1実施形態における位置推定処理の概略を説明するための図である。
第1実施形態における位置推定処理は、通信端末10がフロア内において測定したAP20からの電波の電波強度の値と、電波強度マスタデータベースに記憶されている電波強度の値とに基づいて、通信端末10の位置を推定する処理である。第1実施形態における位置推定処理について、
図5(A)〜(C)を用いて具体的に説明する。
【0039】
図5(A)は、位置測定の対象である通信端末10を所持しているユーザ73の移動経路及び各位置において測定された電波強度の値(測定値)を示す図である。まず、ユーザ73が位置74−0からフロア内に入ると、通信端末10はその位置74−0におけるAP20からの電波の電波強度を測定する。ここでは、位置74−0で測定された電波強度の値をE0[dB]とする。通信端末10は、測定した電波強度E0[dB]を位置推定装置30に送信し、位置推定装置30から初期位置情報を取得する。通信端末10は、電波強度E0[dB]と初期位置情報とを対応付けて履歴情報記憶部104に記録する。その後、通信端末10は、所定の距離(例えば、位置74−0から位置74−1までの1区画の距離)移動した後、その位置(例えば、位置74−1)における電波強度の値(所定位置電波強度)を測定して履歴情報記憶部104に記録する。通信端末10は、設定距離移動するまで、この処理を繰り返し実行する。
【0040】
図5(A)に示す例では、4区画分の距離を設定距離とした場合を例に示している。つまり、ユーザ73が矢印で示したように各位置74−1〜74−4の4区画分移動した場合を例に示している。通信端末10は、各位置74−1〜74−4におけるAP20からの電波の電波強度を測定する。ここでは、この処理で測定された電波強度をE1[dB]〜E4[dB]とする。通信端末10は、電波強度E1[dB]〜E4[dB]を履歴情報記憶部104に記録する。測定された電波強度E1[dB]〜E4[dB]を
図5(A)の下図に示す。
図5(A)の下図に示される例では、位置74−1で測定された電波強度E1の値が8[dB]、位置74−2で測定された電波強度E2の値が13[dB]、位置74−3で測定された電波強度E3の値が14[dB]、位置74−4で測定された電波強度E4の値が13[dB]であることが示されている。
以上のようにして、設定距離までの所定の距離ごとに測定された電波強度の値が、通信端末10の位置推定に利用される。
【0041】
図5(B)は、候補経路の具体例を示す図である。
図5(B)の上図には、ユーザ73−1が初期位置から設定距離まで移動する場合の移動経路のうち、2区画分までの移動経路の例が示されている。
図5(B)の上図において、破線の矢印は、ユーザ73−1が初期位置から所定の距離移動した場合に移動可能な経路を表す。
図5(B)の上図では、初期位置から所定の距離移動した場合に移動可能な経路として、3通りの経路が示されている。
【0042】
また、
図5(B)の上図において、実線の矢印は、ユーザ73−1が所定の距離移動した位置から次に所定の距離移動した場合に移動可能な経路を表す。
図5(B)の上図では、所定の距離移動した位置から次に所定の距離移動した場合に移動可能な経路として、10通りの経路が示されている。
位置推定装置30は、上述したような初期位置から設定距離まで移動する通信端末10の経路の組み合わせの電波強度の値を電波強度情報記憶部303から検索する。検索された初期位置から設定距離まで移動する通信端末10の経路の組み合わせの電波強度の値を
図5(B)の下図に示す。
図5(B)の下図には、
図5(A)の場合と同様に、4区画分の距離を設定距離とした場合を例に示している。
【0043】
図5(B)の下図に示される経路1〜3は、上述したように初期位置情報と設定距離とに基づいて決定される。
図5(A)を例に説明すると、例えば、
図5(B)に示される経路1のE1[dB]は初期位置(
図5(A)の74−0)から所定の距離(例えば、1区画分の距離)移動した位置であらかじめ測定された電波強度の値を示し、経路1のE2[dB]は経路1のE1[dB]が測定された位置から所定の距離移動した位置であらかじめ測定された電波強度の値を示し、経路1のE3[dB]は経路1のE2[dB]が測定された位置から所定の距離移動した位置であらかじめ測定された電波強度の値を示し、経路1のE4[dB]は経路1のE3[dB]が測定された位置から所定の距離移動した位置であらかじめ測定された電波強度の値を示す。このように、初期位置から設定距離移動した際の通信端末10が移動可能な全ての経路が
図5(B)の下図に示される候補経路となる。
【0044】
図5(C)は、第1実施形態における移動経路の決定方法を説明するための図である。
図5(C)には、
図5(A)の下図に示した電波強度の測定値と、
図5(B)の下図に示した候補経路における電波強度の値とが対応付けて示されている。位置推定装置30は、
図5(C)に示す測定値と、候補経路における電波強度の値とに所定の演算を行うことによって算出した値に基づいて、通信端末10の移動経路を決定する。具体的には、位置推定装置30は、以下のような処理により通信端末10の移動経路を決定する。
【0045】
まず、位置推定装置30は、測定値と、候補経路における電波強度の値との差の絶対値の総和を候補経路ごとに算出する。具体的な計算例を以下に示す。
測定値と経路1の場合、
|8−4|+|13−10|+|14−25|+|13−15|=20
測定値と経路2の場合、
|8−4|+|13−9|+|14−3|+|13−3|=29
測定値と経路3の場合、
|8−9|+|13−13|+|14−15|+|13−14|=3
【0046】
上述したように、位置推定装置30は、候補経路ごとに、測定値と、候補経路における電波強度の値との差の絶対値の総和を算出する。そして、位置推定装置30は、候補経路ごとに算出した差の絶対値の総和が最も小さい経路を通信端末10の移動経路に決定する。
図5(C)に示す例では、経路3(
図5(C)の太枠)を通信端末10の移動経路に決定する。
以上の処理により、通信端末10の移動経路が判明するため、通信端末10がどの位置に位置しているのかを判別することが可能であり、通信端末10の位置を推定することができる。
【0047】
図6は、第1実施形態における通信端末10の処理の流れを示すフローチャートである。なお、
図6の説明では、位置推定処理が開始された後の処理について説明する。
距離測位部103は、所定の距離の移動があったか否か判定する(ステップS101)。所定の距離の移動が無かった場合(ステップ101−NO)、ステップS101の処理を繰り返し実行する。
一方、所定の距離の移動があった場合(ステップ101−YES)、制御部102はその位置において通信部101が受信した電波の電波強度を測定する(ステップS102)。制御部102は、測定した電波強度の値を所定位置電波強度として履歴情報記憶部104に記憶させる(ステップS103)。
【0048】
その後、制御部102は、設定距離の移動があったか否か判定する(ステップS104)。設定距離の移動が無かった場合(ステップS104−NO)、通信端末10はステップS101以降の処理を繰り返し実行する。
一方、設定距離の移動があった場合(ステップS104−YES)、制御部102は履歴情報記憶部104に記憶されている全ての所定位置電波強度及び初期位置情報を読み出し、読み出した所定位置電波強度及び初期位置情報と、設定距離の情報を含む位置推定要求を生成する(ステップS105)。そして、制御部102は、生成した位置推定要求を、通信部101を介して位置推定装置30に送信する(ステップS106)。
【0049】
図7は、第1実施形態における位置推定装置30の処理の流れを示すフローチャートである。
通信部301は、通信端末10から送信された位置推定要求を受信する(ステップS201)。検索部304は、受信された位置推定要求と、電波強度情報記憶部303に記憶されている電波強度マスタデータベースとに基づいて候補経路を検索する(ステップS202)。具体的には、検索部304は、受信された位置推定要求に含まれる初期位置情報で示される位置から設定距離移動した際の移動可能な経路の組み合わせを候補経路として電波強度マスタデータベースから読み出す(
図5(B)の下図)。
【0050】
経路解析部305は、読み出された候補経路と、位置推定要求に含まれる所定位置電波強度とに基づいて通信端末10の移動経路を決定する(ステップS203)。位置推定部306は、決定された移動経路に基づいて通信端末10の位置を推定する(ステップS204)。その後、通信部301は、推定された位置情報を通信端末10に送信する(ステップS205)。
【0051】
図8は、位置推定システム100における事前処理の流れを示すシーケンス図である。
情報登録装置40は、サービス提供者から位置推定必須情報の登録を受け付ける(ステップS301)。情報登録装置40は、位置推定必須情報の登録が完了すると、登録した位置推定必須情報を位置推定装置30に送信する(ステップS302)。
位置推定装置30の通信部301は、情報登録装置40から送信された位置推定必須情報を受信する(ステップS303)。情報取得部302は、通信部301を介して位置推定必須情報を取得する(ステップS304)。その後、情報取得部302は、取得した位置推定必須情報を電波強度情報記憶部303の電波強度マスタデータベースに記憶させる(ステップS305)。
【0052】
図9及び
図10は、第1実施形態における位置推定開始時の処理の流れを示すシーケンス図である。
AP20は、周期的に電波を出力する(ステップS401)。
通信端末10の通信部101は、AP20からの電波を受信する(ステップS402)。通信部101は、受信した電波をデジタル信号に変換して制御部102に出力する(ステップS403)。制御部102は、受信された電波の電波強度を測定する(ステップS404)。制御部102は、受信された電波の送信元であるAP20の識別情報が、自装置に記憶されているAP20の識別情報と一致するか否か判定する(ステップS405)。
【0053】
判定の結果、識別情報が一致するため、制御部102は距離測位部103に起動確認する(ステップS406)。この時点では、位置推定処理が開始されていないため、距離測位部103は起動していない。そのため、距離測位部103は応答を返さない(ステップS407)。制御部102は、一定時間の間、距離測位部103からの応答がない場合に距離測位部103が起動していないと判定する。
【0054】
制御部102は、距離測位部103が起動していないと判定した場合、ステップS404の処理で測定した電波強度の値と、AP20の識別情報とを含む入口情報検索要求を生成し、生成した入口情報検索要求を通信部101に出力する(ステップS408)。通信部101は、入口情報検索要求を位置推定装置30に送信する(ステップS409)。
【0055】
位置推定装置30の通信部301は、通信端末10から送信された入口情報検索要求を受信する。通信部301は、受信した入口情報検索要求を検索部304に出力する(ステップS410)。検索部304は、入口情報検索要求に含まれる電波強度の情報とAP20のMACアドレスとに基づいて、電波強度マスタデータベースから初期位置を検索する(ステップS411)。
【0056】
具体的には、検索部304は、電波強度情報記憶部303に記憶されている電波強度マスタデータベースを読み出す。検索部304は、読み出した電波強度マスタデータベースに記憶されているレコード60のうち、APID及び電波強度の項目の値が入口情報検索要求に含まれる電波強度の情報及びAP20のMACアドレスと一致するレコード60を選択する。そして、検索部304は、選択したレコード60のX座標及びY座標に記憶されている各値を初期位置として取得する(ステップS412)。
【0057】
検索部304は、初期位置を通信部301に出力する(ステップS413)。通信部301は、初期位置情報を通信端末10に送信する(ステップS414)。
通信端末10の通信部101は、位置推定装置30から送信された初期位置情報を受信する。通信部101は、受信した初期位置情報を制御部102に出力する(ステップS415)。制御部102は、初期位置情報とステップS404の処理で測定した電波強度の値とを対応付けて履歴情報記憶部104に記憶させる(ステップS416)。履歴情報記憶部104は、初期位置情報と電波強度の値とを対応付けて記憶する(ステップS417)。その後、制御部102は、距離測位部103に対して距離の測位を指示する(ステップS418)。距離測位部103は、制御部102の制御に従って距離の測位を開始する(ステップS419)。
【0058】
図11及び
図12は、第1実施形態における位置推定処理の流れを示すシーケンス図である。
距離測位部103は、所定の距離の移動を検知すると(ステップS501)、区画移動通知を制御部102に出力する(ステップS502)。制御部102は、距離測位部103から区画移動通知が出力されると、その位置において通信部101に受信された電波の電波強度を測定する(ステップS503)。制御部102は、測定した電波強度の値(所定位置電波強度)と、所定の距離(例えば、1区画)進んだことを示す情報としてカウントを1だけインクリメントしたカウント値(例えば、カウント値“0”の場合には、カウント値“1”)の情報とを対応付けて履歴情報記憶部104に記憶させる(ステップS504)。履歴情報記憶部104は、電波強度の情報と、カウント値とを対応付けて記憶する(ステップS505)。その後、通信端末10が設定距離移動するまでステップS501からステップS505までの処理が繰り返し実行される。つまり、通信端末10が初期位置から設定距離移動するまでに、所定の距離移動する度にカウント値が1ずつインクリメントされる。このカウント値は、
図5で示すE1〜E4に対応する。
【0059】
通信端末10が設定距離移動すると、制御部102は履歴情報記憶部104に記憶されている初期位置情報及び全ての所定位置電波強度の値を読み出す(ステップS506)。制御部102は、読み出した初期位置情報及び全ての所定位置電波強度の値と、設定距離の情報とを含む位置推定要求を生成し、生成した位置推定要求を通信部101に出力する(ステップS507)。通信部101は、位置推定要求を位置推定装置30に送信する(ステップS508)。
【0060】
位置推定装置30の通信部301は、通信端末10から送信された位置推定要求を受信する。通信部301は、受信した位置推定要求を検索部304に出力する(ステップS509)。検索部304は、位置推定要求に含まれる初期位置情報及び設定距離の情報に基づいて候補経路を検索する(ステップS510)。検索部304は、複数の候補経路を検索結果として取得する(ステップS511)。検索部304は、取得した検索結果を経路解析部305に出力する(ステップS512)。また、検索部304は、位置推定要求に含まれる所定位置電波強度の値を経路解析部305に出力する(ステップS513)。
【0061】
経路解析部305は、検索結果と、所定位置電波強度の値とに所定の演算を行う(ステップS514)。経路解析部305は、候補経路ごとに算出した値の中で最小の値となった候補経路を通信端末10が移動した経路に決定する(ステップS515)。経路解析部305は、決定した経路の情報を位置推定部306に出力する(ステップS516)。
位置推定部306は、決定された経路から通信端末10の位置を推定する(ステップS517)。例えば、位置推定部306は、決定された経路の最後に電波強度が測定された位置を通信端末10の位置として推定してもよい。位置推定部306は、推定した通信端末10の位置を示す位置情報を通信部301に出力する(ステップS518)。通信部301は、位置情報を通信端末10に送信する(ステップS519)。この際、通信部301は、フロアマップのデータも位置情報に含めて送信してもよい。
【0062】
通信端末10の通信部101は、位置推定装置30から送信された位置情報を受信する。通信部101は、受信した位置情報を制御部102に出力する(ステップS520)。制御部102は、表示部105を制御して位置情報を表示させる(ステップS521)。例えば、制御部102は、表示部105を制御して、位置情報で示される位置の情報をフロアマップ上に表示(例えば、プロット表示)させる。表示部105は、制御部102の制御に従って位置情報を表示する(ステップS522)。制御部102は、履歴情報記憶部104に記憶されている情報を全て削除する(ステップS523)。
【0063】
以上のように構成された位置推定システム100によれば、位置推定装置30が、通信端末10が測定した電波強度と、あらかじめ測定されたフロアの所定の位置ごとの電波強度とに基づいて通信端末10が移動した経路を決定し、その経路から推定される位置を通信端末10の位置として推定する。したがって、1台のAP20であっても通信端末10が電波を受信することができれば通信端末10の位置を推定することができる。これにより、Place Engine(登録商標)の技術に比べ、AP設置コストを削減することができる。さらに、通信端末10が実際に移動した経路を推定した結果に応じて通信端末10の位置を推定しているため、1台のAPの電波強度を利用してそのAPの電波の届く範囲に通信装置が存在するか否か判別する技術(例えば、特許文献1参照)に比べ、より精度良く位置を推定することが可能となる。
【0064】
位置測定の度に、位置推定装置30が保持している電波強度マスタデータベースが利用される。したがって、一度位置測定の対象となるフロアの所定の位置ごとの電波強度に関する情報が記憶された電波強度マスタデータベースを作成しておけば、そのフロアにおいて容易に位置測定が可能になる。そのため、以降のメンテナンスコストを削減することもできる。
【0065】
<変形例>
本実施形態では、AP20の識別情報としてAP20のMACアドレスを例に説明したが、AP20の識別情報はSSID(Service Set IDentifier)でもよいし、その他の情報であってもよい。
本実施形態では、屋内を例に説明したが、本発明における位置推定システム100は屋外で利用されてもよい。このように構成される場合、通信端末10は、屋外に設置されて通信端末10の位置推定に利用されるAP20の識別情報を記憶する。また、事前処理では、屋外に設置されて位置推定に利用されるAP20の識別情報を記憶する通信端末を用いて屋外の所定のフロアの各位置における電波強度の値が測定される。そして、サービス提供者は、情報登録装置40を操作して、測定した電波強度の値と、電波強度を測定した位置を示す位置情報とを登録する。情報登録装置40に登録された情報は、位置推定装置30の電波強度情報記憶部303に記憶される。以下、具体的な処理の流れについて説明する。
【0066】
通信端末10は、自装置に記憶しているAP20の識別情報と一致するAP20からの電波を受信した場合に距離測位を開始する。つまり、通信端末10は、自装置に記憶しているAP20の識別情報と一致しないAP20からの電波を受信した場合には距離測位を開始しない。そして、通信端末10は、所定の距離移動する度に、自装置に記憶しているAP20の識別情報と一致するAP20からの電波の電波強度のみを測定して記憶する。そして、通信端末10は、設定距離移動すると、履歴情報記憶部104に記憶している初期位置情報及び全ての電波強度の値、設定距離の情報を含む位置推定要求を位置推定装置30に送信する。位置推定装置30は、通信端末10から送信された位置推定要求と、電波強度情報記憶部303とに基づいて通信端末10の位置を推定する。
このように構成されることにより、屋内だけでなく、屋外であってもよい本発明における位置推定システム100を利用することができる。
【0067】
通信端末10の移動経路を決定する際の算出方法は、上述の方法(測定値と、候補経路における電波強度の値との差の絶対値の総和)に限定される必要はない。例えば、測定値と、候補経路における電波強度の値との差分の二乗の総和を算出する情報であってもよいし、その他の算出方法であってもよい。
【0068】
本実施形態では、1フロアに1台のAP20が設置されている場合を例に説明したが、1フロアには複数台のAP20が設置されていてもよい。この場合、通信端末10は複数台のAP20の識別情報をそれぞれ記憶する。
また、事前処理では、サービス提供者は、AP20ごとに各フロアの各位置における電波強度の値を測定する。そして、サービス提供者は、情報登録装置40を操作して、位置推定必須情報をAP20ごとに登録する。位置推定装置30の電波強度情報記憶部303に記憶されている電波強度マスタデータベースは、位置推定必須情報をAP20ごとに記憶する。
【0069】
位置推定処理では、通信端末10は、複数のAP20から送信された電波を受信し、AP20ごとに電波強度の値を測定して記憶する。そして、通信端末10は、設定距離移動すると、記憶している初期位置情報及びAP20ごとの全ての電波強度の値と、設定距離の情報を含む位置推定要求を位置推定装置30に送信する。
位置推定装置30は、通信端末10から送信された位置推定要求に含まれるAP20ごとの電波強度の値に基づいて通信端末10の位置を推定する。
【0070】
[第2実施形態]
図13は、第2実施形態における通信端末10a及び位置推定装置30aの機能構成を表す概略ブロック図である。
まず、通信端末10aの機能構成を説明する。通信端末10aは、バスで接続されたCPUやメモリや補助記憶装置などを備え、情報表示プログラムを実行する。情報表示プログラムの実行によって、通信端末10aは、通信部101、制御部102、距離測位部103、履歴情報記憶部104a、表示部105、変化量演算部106を備える装置として機能する。なお、通信端末10aの各機能の全て又は一部は、ASICやPLDやFPGA等のハードウェアを用いて実現されてもよい。また、情報表示プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。また、情報表示プログラムは、電気通信回線を介して送受信されてもよい。
【0071】
第2実施形態における通信端末10aは、履歴情報記憶部104に代えて履歴情報記憶部104aを備える点、変化量演算部106を新たに備える点で通信端末10と構成が異なる。通信端末10aは、他の構成については通信端末10と同様である。そのため、通信端末10a全体の説明は省略し、履歴情報記憶部104a及び変化量演算部106について説明する。
【0072】
履歴情報記憶部104aは、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。履歴情報記憶部104aは、制御部102によって測定された電波強度の値と、電波強度の変化量の値を記憶する。
変化量演算部106は、電波強度の変化量の値を算出する。
【0073】
次に、位置推定装置30aの機能構成を説明する。位置推定装置30aは、バスで接続されたCPUやメモリや補助記憶装置などを備え、情報送信プログラムを実行する。情報送信プログラムの実行によって、位置推定装置30aは、通信部301、情報取得部302、電波強度情報記憶部303、検索部304a、経路解析部305a、位置推定部306を備える装置として機能する。なお、位置推定装置30aの各機能の全て又は一部は、ASICやPLDやFPGA等のハードウェアを用いて実現されてもよい。また、情報送信プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。また、情報送信プログラムは、電気通信回線を介して送受信されてもよい。
【0074】
第2実施形態における位置推定装置30aは、検索部304及び経路解析部305に代えて検索部304a及び経路解析部305aを備える点で位置推定装置30と構成が異なる。位置推定装置30aは、他の構成については位置推定装置30と同様である。そのため、位置推定装置30a全体の説明は省略し、検索部304a及び経路解析部305aについて説明する。
【0075】
検索部304aは、通信端末10aからの要求に応じて、電波強度マスタデータベースを検索する。例えば、検索部304aは、受信された位置推定要求に応じて候補経路を検索する。
経路解析部305aは、受信された位置推定要求に含まれる電波強度の変化量の値と、候補経路における電波強度の変化量の値とに基づいて、検索部304aによって検索された候補経路の中から通信端末10aが移動した経路を決定する。
【0076】
図14は、第2実施形態における位置推定処理の概略を説明するための図である。
第2実施形態における位置推定処理は、通信端末10aがフロア内において測定したAP20の電波強度の変化量の値と、電波強度マスタデータベースに記憶されている電波強度の値から算出された電波強度の変化量の値とに基づいて、通信端末10aの位置を推定する処理である。第2実施形態における位置推定処理について、
図14(A)〜(C)を用いて具体的に説明する。
【0077】
図14(A)は、位置測定の対象である通信端末10aを所持しているユーザ73aの移動経路及び各位置において測定された電波強度の変化量を示す図である。まず、ユーザ73aが位置74a−0からフロア内に入ると、通信端末10aはその位置74a−0におけるAP20からの電波の電波強度を測定する。ここでは、位置74a−0で測定された電波強度をE0[dB]とする。通信端末10aは、測定した電波強度E0[dB]を位置推定装置30aに送信し、位置推定装置30aから初期位置情報を取得する。通信端末10aは、電波強度E0[dB]と初期位置情報とを対応付けて履歴情報記憶部104aに記録する。その後、通信端末10aは、所定の距離(例えば、位置74a−0から位置74a−1までの1区画の距離)移動した後、その位置(例えば、位置74a−1)における電波強度の値(所定位置電波強度)を測定して履歴情報記憶部104aに記録する。そして、通信端末10aは、前回測定した電波強度の値と、今回測定した電波強度の値との変化量を算出して記憶する。例えば、位置74a−0において測定した電波強度の値と、位置74a−1において測定した電波強度の値との差分を電波強度の変化量として算出する。通信端末10aは、設定距離移動するまで、所定の距離ごとに、測定された電波強度の値と、前回測定された電波強度の値との変化量を算出して記憶する。
【0078】
図14(A)に示す例では、4区画分の距離を設定距離とした場合を例に示している。つまり、ユーザ73aが矢印で示したように各位置74a−1〜74a−4の4区画分移動した場合を例に示している。通信端末10aは、各位置74a−1〜74a−4におけるAP20からの電波の電波強度を測定する。ここでは、この処理で測定された電波強度をE1[dB]〜E4[dB]とする。通信端末10aは、所定の距離ごとに測定された電波強度の変化量の値を算出して履歴情報記憶部104aに記録する。算出された電波強度の変化量ΔE1[dB]〜ΔE4[dB]を
図14(A)の下図に示す。
【0079】
図14(A)の下図に示される例では、位置74a−0で測定された電波強度E0と位置74a−1で測定された電波強度E1との変化量ΔE1(E1−E0)の値が3[dB]、電波強度E1と電波強度E2との変化量ΔE2(E2−E1)の値が5[dB]、電波強度E2と電波強度E3との変化量ΔE3(E3−E2)の値が1[dB]、電波強度E3と電波強度E4との変化量ΔE4(E4−E3)の値が−1[dB]であることが示されている。
【0080】
図14(B)は、候補経路の具体例を示す図である。
図14(B)の上図には、ユーザ73a−1が初期位置から設定距離まで移動する場合の移動経路のうち、2区画分までの移動経路の例が示されている。
図14(B)の上図において、破線の矢印は、ユーザ73a−1が初期位置から所定の距離(
図14(B)では、1区画分の距離)移動した場合に移動可能な経路を表す。
図14(B)の上図では、初期位置から所定の距離移動した場合に移動可能な経路として、3通りの経路が示されている。
【0081】
また、
図14(B)の上図において、実線の矢印は、ユーザ73−1が所定の距離移動した位置から次に所定の距離移動した場合に移動可能な経路を表す。
図14(B)の上図では、所定の距離移動した位置から次に所定の距離移動した場合に移動可能な経路として、10通りの経路が示されている。
位置推定装置30aは、上述したような初期位置から設定距離まで移動する通信端末10aの経路の組み合わせの電波強度の値を電波強度情報記憶部303から検索する。そして、位置推定装置30aは、検索された初期位置から設定距離まで移動する通信端末10の経路の組み合わせの電波強度の変化量を候補経路毎に算出する。算出された候補経路毎の電波強度の変化量を
図14(B)の下図に示す。
図14(B)の下図には、
図14(A)の場合と同様に、4区画分の距離を設定距離とした場合を例に示している。
【0082】
図14(B)の下図に示される経路1〜3は、上述したように初期位置情報と設定距離とに基づいて決定される。
図14(A)を例に説明すると、例えば、
図14(B)に示される経路1のΔE1[dB]は初期位置(
図14(A)の74a−0)であらかじめ測定された電波強度E0の値と、初期位置から所定の距離(例えば、1区画分の距離)移動した位置であらかじめ測定された電波強度E1の値との変化量を示し、経路1のΔE2[dB]は電波強度E1の値と、電波強度E1が予め測定された位置から所定の距離移動した位置であらかじめ測定された電波強度E2の値との変化量を示し、経路1のΔE3[dB]は電波強度E2の値と、電波強度E2が予め測定された位置から所定の距離移動した位置であらかじめ測定された電波強度E3の値との変化量を示し、経路1のΔE4[dB]は電波強度E3の値と、電波強度E3が予め測定された位置から所定の距離移動した位置であらかじめ測定された電波強度E4の値との変化量を示す。このように、初期位置から設定距離移動した際の通信端末10が移動可能な全ての経路が
図14(B)の下図に示される候補経路となる。
【0083】
図14(C)は、第2実施形態における移動経路の決定方法を説明するための図である。
図14(C)には、
図14(A)の下図に示した電波強度の測定値の変化量の値と、
図14(B)の下図に示した候補経路における電波強度の変化量の値とが対応付けて示されている。位置推定装置30aは、
図14(C)に示す測定値の変化量の値と、候補経路における電波強度の変化量の値とに所定の演算を行うことによって算出した値に基づいて、通信端末10aの移動経路を決定する。具体的には、位置推定装置30aは、以下のような処理により通信端末10aの移動経路を決定する。
【0084】
まず、位置推定装置30aは、測定値の変化量の値の値と、候補経路における電波強度の変化量の値との差の絶対値の総和を候補経路ごとに算出する。具体的な計算例を以下に示す。
測定値の変化量の値と経路1の場合、
|3−2|+|5−1|+|1−14|+|−1−1|=20
測定値の変化量の値と経路2の場合、
|3−0|+|5−3|+|1−(−5)|+|−1−3|=15
測定値の変化量の値と経路3の場合、
|3−3|+|5−4|+|1−1|+|−1−0|=3
【0085】
上述したように、位置推定装置30aは、候補経路ごとに、変化量の値と、候補経路における電波強度の変化量の値との差の絶対値の総和を算出する。そして、位置推定装置30aは、候補経路ごとに算出した差の絶対値の総和が最も小さい経路を通信端末10aの移動経路に決定する。
図14(C)に示す例では、位置推定装置30aは、経路3(
図14(C)の太枠)を通信端末10aの移動経路に決定する。
以上の処理により、通信端末10aの移動経路が判明するため、通信端末10aがどの位置に位置しているのかを判別することが可能であり、通信端末10aの位置を推定することができる。
【0086】
図15は、第2実施形態における通信端末10aの処理の流れを示すフローチャートである。なお、
図6と同様の処理については、
図15において
図6と同様の符号を付して説明を省略する。
ステップS102までの処理が終了すると、変化量演算部106は、前回測定した値と、ステップS102の処理で測定した電波強度の値との電波強度の変化量を算出する(ステップS601)。具体的には、変化量演算部106は、履歴情報記憶部104aに最も新しく記録された電波強度の値と、ステップS102の処理で測定した電波強度の値との差分を電波強度の変化量として算出する。変化量演算部106は、算出した電波強度の変化量を履歴情報記憶部104aに記憶させる(ステップS602)。
【0087】
その後、制御部102は、設定距離の移動があったか否か判定する(ステップS603)。設定距離の移動が無かった場合(ステップS603−NO)、通信端末10aはステップS101以降の処理を繰り返し実行する。
一方、設定距離の移動があった場合(ステップS603−YES)、制御部102は履歴情報記憶部104aに記憶されている全ての電波強度の変化量の値及び初期位置情報を読み出し、読み出した電波強度の変化量の値及び初期位置情報と、設定距離の情報とを含む位置推定要求を生成する(ステップS604)。そして、制御部102は、生成した位置推定要求を、通信部101を介して位置推定装置30aに送信する(ステップS605)。
【0088】
図16は、第2実施形態における位置推定装置30aの処理の流れを示すフローチャートである。なお、
図7と同様の処理については、
図16において
図7と同様の符号を付して説明を省略する。
ステップS202までの処理が終了すると、検索部304aは候補経路ごとに、候補経路における電波強度の変化量を算出する(ステップS701)。経路解析部305aは、算出された候補経路ごとの電波強度の変化量に基づいて、通信端末10aの移動経路を決定する(ステップS702)。その後、ステップS205以降の処理が実行される。
【0089】
図17及び
図18は、第2実施形態における位置推定処理の流れを示すシーケンス図である。なお、
図11及び
図12と同様の処理については、
図17及び
図18において
図11及び
図12と同様の符号を付して説明を省略する。
ステップS503までの処理が終了すると、制御部102は区画移動通知及びステップS503の処理で測定した電波強度の値を変化量演算部106に出力する(ステップS801)。変化量演算部106は、履歴情報記憶部104aに最も新しく記録された電波強度の値を読み出す(ステップS802)。変化量演算部106は、読み出した電波強度の値と、ステップS801の処理で出力された電波強度の値とに基づいて電波強度の変化量を算出する(ステップS803)。
【0090】
変化量演算部106は、算出した電波強度の変化量の値と、所定の距離(例えば、1区画)進んだことを示す情報としてカウントを1だけインクリメントしたカウント値(例えば、カウント値“0”の場合には、カウント値“1”)の情報とを対応付けて履歴情報記憶部104aに記憶させる(ステップS804)。また、変化量演算部106は、ステップS503の処理で測定された電波強度の値を履歴情報記憶部104aに記憶させる。履歴情報記憶部104aは、電波強度の情報と、カウント値とを対応付けて記憶する(ステップS806)。また、履歴情報記憶部104aは、ステップS805の処理で出力された電波強度の値を新たに記憶する。その後、通信端末10aが設定距離移動するまで、ステップS501〜ステップS806までの処理が繰り返し実行される。つまり、通信端末10aが初期位置から設定距離移動するまでに、所定の距離移動する度にカウント値が1ずつインクリメントされる。このカウント値は、
図14で示すΔE1〜ΔE4に対応する。
【0091】
通信端末10aが設定距離移動すると、制御部102は履歴情報記憶部104aに記憶されている初期位置情報及び全ての電波強度の変化量の値を読み出す(ステップS807)。制御部102は、読み出した初期位置情報及び全ての電波強度の変化量の値と、設定距離の情報とを含む位置推定要求を生成し、生成した位置推定要求を通信部101に出力する(ステップS808)。通信部101は、位置推定要求を位置推定装置30aに送信する(ステップS809)。
【0092】
位置推定装置30aの通信部301は、通信端末10aから送信された位置推定要求を受信する。通信部301は、受信した位置推定要求を検索部304aに出力する(ステップS810)。検索部304aは、位置推定要求に含まれる初期位置情報及び設定距離の情報に基づいて候補経路を検索する(ステップS811)。検索部304aは、候補経路ごとに、電波強度の変化量の値を算出し、算出した候補経路ごとの電波強度の変化量の値を検索結果として取得する(ステップS812)。検索部304aは、取得した検索結果を経路解析部305aに出力する(ステップS813)。
【0093】
また、検索部304は、位置推定要求に含まれる電波強度の変化量の値を経路解析部305aに出力する(ステップS814)。経路解析部305aは、検索結果と、位置推定要求に含まれる電波強度の変化量の値とに所定の演算を行う(ステップS815)。経路解析部305aは、候補経路ごとに算出した値の中で最小の値となった候補経路を通信端末10aが移動した経路に決定する(ステップS816)。その後、ステップS515以降の処理が実行される。
【0094】
以上のように構成された位置推定システム100によれば、位置推定装置30aが、通信端末10aが測定した電波強度の変化量と、あらかじめ測定されたフロアの所定の位置ごとの電波強度の変化量とに基づいて通信端末10aが移動した経路を決定し、その経路から推定される位置を通信端末10aの位置として推定する。したがって、1台のAP20であっても通信端末10aが電波を受信することができれば通信端末10aの位置を推定することができる。これにより、Place Engine(登録商標)の技術に比べ、AP設置コストを削減することができる。さらに、通信端末10aが実際に移動した経路を推定した結果に応じて通信端末10aの位置を推定しているため、1台のAPの電波強度を利用してそのAPの電波の届く範囲に通信装置が存在するか否か判別する技術(例えば、特許文献1参照)に比べ、より精度良く位置を推定することが可能となる。
【0095】
位置測定の度に、位置推定装置30aが保持している電波強度マスタデータベースが利用される。したがって、一度位置測定の対象となるフロアの所定の位置ごとの電波強度に関する情報が記憶された電波強度マスタデータベースを作成しておけば、そのフロアにおいて容易に位置測定が可能になる。そのため、以降のメンテナンスコストを削減することもできる。
【0096】
<変形例>
本実施形態では、屋内を例に説明したが、本発明における位置推定システム100は屋外で利用されてもよい。このように構成される場合、通信端末10aは、屋外に設置されて通信端末10aの位置推定に利用されるAP20aの識別情報(例えば、MACアドレス)を記憶する。また、事前処理では、屋外に設置されて位置推定に利用されるAP20aの識別情報を記憶する通信端末を用いて屋外の所定のフロアの各位置における電波強度の値が測定される。そして、サービス提供者は、情報登録装置40を操作して、測定した電波強度の値と、電波強度を測定した位置を示す位置情報とを登録する。情報登録装置40に登録された情報は、位置推定装置30の電波強度情報記憶部303に記憶される。以下、具体的な処理の流れについて説明する。
【0097】
通信端末10aは、自装置に記憶しているAP20aの識別情報と一致するAP20aからの電波を受信した場合に距離測位を開始する。つまり、通信端末10aは、自装置に記憶しているAP20aの識別情報と一致しないAP20aからの電波を受信した場合には距離測位を開始しない。そして、通信端末10aは、所定の距離移動する度に、自装置に記憶しているAP20aの識別情報と一致するAP20aからの電波の電波強度のみを測定する。そして、通信端末10aの変化量演算部106は、履歴情報記憶部104aに最も新しく記録された電波強度の値と、測定された電波強度の値との差分を電波強度の変化量として算出して履歴情報記憶部104aに記憶させる。さらに、変化量演算部106は、測定した電波強度の値も履歴情報記憶部104aに記憶させる。そして、通信端末10aは、設定距離移動すると、履歴情報記憶部104aに記憶されている初期位置情報及び全ての電波強度の変化量の値、設定距離の情報を含む位置推定要求を位置推定装置30aに送信する。位置推定装置30aは、通信端末10aから送信された位置推定要求と、電波強度情報記憶部303aとに基づいて通信端末10aの位置を推定する。
このように構成されることにより、屋内だけでなく、屋外であってもよい本発明における位置推定システム100を利用することができる。
【0098】
本実施形態では、通信端末10aが電波強度の変化量の値を算出する構成を示したが、位置推定装置30が、通信端末10aが測定した電波強度の値の変化量を算出するように構成されてもよい。このように構成される場合、通信端末10aが変化量演算部106を備えず、位置推定装置30が変化量演算部を備えるように構成される。この場合、通信端末10aは、設定距離移動すると、履歴情報記憶部104aに記憶されている初期位置情報及び全ての電波強度の値、設定距離の情報を含む位置推定要求を位置推定装置30aに送信する。位置推定装置30aの変化量演算部は、受信された位置推定要求に含まれる電波強度の値に基づいて電波強度の変化量を算出する。
【0099】
図19及び
図20は、本発明における位置推定システム100の適用例を示す図である。
本発明における位置推定システム100の適用例として、
図19及び
図20に示すサービスがある。以下、それぞれのサービスについて図を用いて説明する。
【0100】
図19に示すように、本発明における位置推定システム100の適用例の1つとしては、ショッピングセンター等の商業施設におけるナビゲーションサービスが想定される。ナビゲーションサービスには、例えば本発明における位置推定システム100で推定されたユーザの位置情報と、ナビゲーションシステムが利用される。ナビゲーションシステムは、ユーザ情報記憶部と、経路計算機能部とを備える。なお、ナビゲーションシステムには、フロア内の各施設の座標位置情報があらかじめ登録されているものとする。フロア内の各施設とは、ユーザが利用する施設であり、例えばお店やお手洗いなどである。
【0101】
ユーザ情報記憶部は、ユーザの位置情報が記録されたユーザデータベースとユーザがあらかじめ設定した目的地の情報が記録された目的地データベースとを記憶する。ユーザデータベースは、ユーザ、時刻、フロア内座標(X座標)及びフロア内座標(Y座標)の各値を記憶する。ユーザの値は、位置推定システム100によって位置が推定されたユーザの名前を表す。時刻の値は、位置推定システム100によって位置が推定された時刻を表す。フロア内座標(X座標)の値は、同じレコードのユーザが位置推定システム100によって推定されたフロア内のX座標を表す。フロア内座標(Y座標)の値は、同じレコードのユーザが位置推定システム100によって推定されたフロア内のY座標を表す。
【0102】
目的地データベースは、ユーザ及び目的地の各値を記憶する。ユーザの値は、目的地を登録したユーザの名前を表す。目的地の値は、同じレコードのユーザが目的地としている店舗を表す。
経路計算機能部は、ユーザ情報記憶部に記憶されている各データベースと、フロア内の各施設の座標位置情報とに基づいて、ユーザの推定された位置から目的地までの経路を求め、求めた経路をユーザに提示する機能部である。
【0103】
以下、ナビゲーションサービスの流れについて説明する。なお、この説明では、ユーザA75−1に対するナビゲーションを例に説明する。また、ユーザA75−1の現在位置は、既に位置推定システム100によって推定され、ナビゲーションシステムのユーザデータベースに記録されている。
【0104】
ユーザA75−1がフロア内の店Aに行きたいとする。ユーザA75−1は、所持している通信端末を操作してナビゲーションシステムに目的地の情報を登録する。ナビゲーションシステムに目的地の情報が登録されると、経路計算機能部は、ユーザ情報記憶部に記憶されている目的地データベースを読み出す。経路計算機能部は、読み出した目的地データベースから新たに登録された目的地及び目的地を登録したユーザ(ユーザA)の名前を取得する。次に、経路計算機能部は、ユーザ情報記憶部に記憶されているユーザデータベースを読み出す。経路計算機能部は、読み出したユーザデータベースを参照し、ユーザデータベースに記録されているレコードのうち、目的地データベースから取得したユーザ(ユーザA)に対応するレコードを複数選択する。経路計算機能部は、複数選択したレコードのうち、時刻の項目に記録されている値が現在時刻に最も近いレコードを選択する。そして、経路計算機能部は、選択したレコードのフロア内座標(X座標)及びフロア内座標(Y座標)の項目に記録されている値を取得する。
【0105】
次に、経路計算機能部は、あらかじめ記憶しているフロア内の各施設の座標位置情報を参照し、ユーザA75−1が目的地としている店舗(店A)のフロア内座標(X座標)及びフロア内座標(Y座標)の項目に記録されている値を取得する。その後、経路計算機能部は、ユーザデータベースから取得したフロア内座標(X座標)及びフロア内座標(Y座標)の各値と、フロア内の各施設の座標位置情報から取得したフロア内座標(X座標)及びフロア内座標(Y座標)とに基づいて、ユーザA75−1の現在位置から目的地までの経路を算出する。ナビゲーションシステムにおける経路の算出には、既存の技術が適用されてもよい。そして、経路計算機能部は、算出した目的地までの経路をユーザA75−1の通信端末に送信する。
【0106】
このように本発明における位置推定システム100がナビゲーションシステムに適用されることによって、位置推定システム100で精度よくユーザの位置が推定できるため、より精度よくユーザの位置に応じたナビゲーションが実現可能になる。
なお、上述したナビゲーションシステムは、一例であり、これに限定される必要はない。
【0107】
次に、
図20に示すサービスについて説明する。
図20に示すように、本発明における位置推定システム100の適用例の1つとしては、ユーザの移動軌跡による行動分析サービスが想定される。行動分析サービスには、例えば本発明における位置推定システム100で推定されたユーザの位置情報と、移動軌跡分析システムが利用される。移動軌跡分析システムは、位置情報記憶部と、動線分析機能部と、情報処理装置とを備える。
【0108】
位置情報記憶部は、ユーザ、時刻、フロア内座標(X座標)及びフロア内座標(Y座標)の各値を記憶する。ユーザの値は、位置推定システム100によって位置が推定されたユーザの名前を表す。時刻の値は、位置推定システム100によって位置が推定された時刻を表す。フロア内座標(X座標)の値は、同じレコードのユーザが位置推定システム100によって推定されたフロア内のX座標を表す。フロア内座標(Y座標)の値は、同じレコードのユーザが位置推定システム100によって推定されたフロア内のY座標を表す。
【0109】
動線分析機能部は、位置情報記憶部に記憶されている各値に基づいて、ユーザの行動履歴を求め、求めた行動履歴を情報処理装置に送信する。
情報処理装置は、行動分析サービスのサービス提供者76によって操作される。情報処理装置は、例えばパーソナルコンピュータ等の情報処理装置である。情報処理装置は、サービス提供者76の操作に応じて、動線分析機能部によって求められたユーザの行動履歴を表示する。例えば、情報処理装置は、ユーザごとの行動履歴の移動軌跡をユーザ毎に表示してもよいし、全てのユーザの行動履歴の移動軌跡を表示してもよい。
【0110】
このように本発明における位置推定システム100が行動分析サービスに適用されることによって、位置推定システム100で精度よくユーザの位置が推定できるため、より精度よくユーザの行動履歴を把握することができる。このように把握された情報は、商業施設等において、「人があまり通らない経路に人気商品を配置し、密度を分散させる」といったフロアマネジメントに活用することができる。
なお、上述した行動分析サービスは、一例であり、これに限定される必要はない。
【0111】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。