(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記磁石載置面から前記第1磁石の該磁石載置面と反対側の面までの第1距離、および前記磁石載置面から前記第2磁石の該磁石載置面と反対側の面までの第2距離は、前記磁石載置面から前記第3磁石の該磁石載置面と反対側の面までの第3距離と等しいことを特徴とする請求項10乃至12のいずれかに記載の磁石ユニット。
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、ターゲット利用率のさらなる向上が求められている。
【0005】
ここで、
図5A、5B、6を参照して、矩形の磁石ユニットをターゲットに対して相対的に揺動させた場合におけるターゲットのエロージョン形状とターゲット利用率を説明する。
【0006】
図5A、5Bは、略矩形の磁石ユニットがターゲットに対して相対的に静止している場合にターゲットに形成されるエロージョン領域・形状を示す模式図である。
図5Aはターゲットに形成されたエロージョンを示す平面図であり、
図5Aにおいて、エロージョン50はターゲット面であるxy面におけるエロージョン領域を示している。マグネトロン放電をさせるため、エロージョン50の領域は、
図5Aに示す無終端のリング状となっている。
図5Bは、
図5AのVB−VB線断面図であって、エロージョン50の断面形状を示している。
図5Bにおいて、
図5AのVB−VB線、すなわち略矩形の磁石ユニットの長辺に垂直、且つ、ターゲット面に垂直な方向において、2つの谷形なエロージョン50が並んでいる。
【0007】
図6は、略矩形の磁石ユニットがターゲットに対して相対的に静止している場合、およびターゲットに対して相対的に揺動している場合にターゲットに形成されるエロージョン形状のシミュレーション結果を示す断面図である。以下、磁石ユニットがターゲットに対して相対的に静止している場合にターゲットに形成されるエロージョンを静止エロージョン50と表記し、相対的に揺動している場合のそれを揺動エロージョン51と表記する。
【0008】
図6において、紙面に向かって左と右にそれぞれ破線と点線で示される2つの谷形なエロージョン50は、それぞれ、磁石ユニット700がターゲットに対して相対的に左、同右の端部にある場合において、ターゲットに形成される仮想の静止エロージョンを示している。なお、
図6では、磁石ユニット700は該磁石ユニット700の短辺方向に沿って揺動する。磁石ユニット700がターゲットに対して区間Lを揺動するのに伴い静止エロージョン50はターゲットに対して移動し、ターゲットには揺動エロージョン51が形成される。尚、静止エロージョン50、及び、揺動エロージョン51は、それぞれの最深エロージョン深さで規格化した相対エロージョン深さで示されている。
【0009】
図6からわかるように、揺動エロージョン51は、揺動に伴い静止エロージョン50がターゲットを完全に通過する領域Aと、静止エロージョン50がターゲットを完全には通過しない領域Bとに大別される。すなわち、
図6の領域Bで示される、磁石ユニットの短辺方向におけるターゲットの両端部は、有効活用されずに彫れ残ってしまう。
【0010】
本願発明者は、このエロージョンが十分に形成されずに彫れ残ってしまうターゲットの両端部を有効活用し、さらなるターゲット利用率の向上を図るため、マグネットの幅を従来に比べて細くする方法を考案した。この方法によりターゲット利用率がいかに向上するかを
図6を用いて説明する。
【0011】
図6に示される揺動エロージョン51は、短辺方向の幅Wが120mmの磁石ユニット700を長さが180mmである区間Lにおいて揺動をさせた場合に形成されるエロージョンのシミュレーション結果である。例えば、磁石ユニット700の短辺方向の幅を120mmから90mmへと短縮することにより、最深エロージョン深さとなる領域Aは拡大し、ターゲット利用率を向上させることが出来る。このように、磁石ユニットの幅Wを狭くすることにより、最深エロージョン深さとなる領域Aを拡大し、ターゲット利用率を向上させることが理論的には可能である。
【0012】
しかしながら、この理論に基づき磁石ユニットの幅Wを狭くすると、磁石ユニットにより生成されるターゲット表面における漏洩磁束密度が低くなりやすく、磁石ユニットの幅Wを変更する前に得られていた漏洩磁束密度を得るのが難しくなるという課題がある。
【0013】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、磁石ユニットの幅Wを狭くした場合においても、ターゲットの表面上に十分な漏洩磁束密度が得られるスパッタリング装置および磁石ユニットを提供することにある。
【0014】
このような目的を達成するために、本発明の第1の態様は、ターゲット載置面を有するターゲットホルダと、前記ターゲットホルダのターゲット載置面と反対の面側に配置され、長辺及び短辺を有する矩形の磁石ユニットと、を備えたスパッタリング装置であって、前記磁石ユニットは、前記ターゲット載置面に対して垂直方向に磁化された第1磁石と、前記第1磁石の周囲に配置され、前記ターゲット載置面に対して垂直方向であり、かつ前記第1磁石の磁化方向と異なる逆方向に磁化された第2磁石と、前記短辺方向における前記第1磁石と前記第2磁石との間の一部であって、かつ前記第1磁石と前記第2磁石との間の少なくとも真ん中の位置に前記短辺方向に磁化された第3磁石を有し、前記第3磁石は、前記第2磁石と対向する面が、前記第2磁石のターゲットホルダ側の面と同極の極性を有し、前記第1磁石と対向する面が、前記第1磁石のターゲットホルダ側の面と同極の極性を有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の第2の態様は、長辺及び短辺を有する矩形の磁石ユニットであって、磁石載置面と、前記磁石載置面に対して垂直方向に磁化された第1磁石と、前記第1磁石の周囲に配置され、前記磁石載置面に対して垂直方向であり、かつ前記第1磁石の磁化方向と異なる逆方向に磁化された第2磁石と、前記短辺方向における前記第1磁石と前記第2磁石との間の一部であって、かつ前記第1磁石と前記第2磁石との間の少なくとも真ん中の位置に前記短辺方向に磁化された第3磁石とを備え、前記第3磁石は、前記第2磁石と対向する面が、前記第2磁石の、前記磁石載置面と反対側の面と同極の極性を有し、前記第1磁石と対向する面が、前記第1磁石の、前記磁石載置面と反対側の面と同極の極性を有することを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、ターゲット表面での漏洩磁束密度を従来に比べて高くすることが出来る。ゆえに、磁石ユニットの幅を狭くすることによりターゲット利用率を向上させたスパッタリング装置及びマグネトロンユニットを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
以下に、本発明の代表的な実施形態を添付図面に基づいて説明する。本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種種の変更が可能である。
【0019】
図1は、本実施形態に適用可能なスパッタリング装置の構成を説明する概略断面図である。
図1に示すx方向は、ターゲット5、磁石ユニット7の短辺方向であり、磁石ユニット7の揺動方向である。
【0020】
図1に示すように、スパッタリング装置は、チャンバ3、マグネトロンカソード40、基板ホルダ2を主要な構成要素として有している。また、スパッタリング装置は、ターゲットホルダ4に対してスパッタ成膜処理に必要な電力を印加するための電源13を備えている。チャンバ3(真空容器)には、ターゲット5が接合されたターゲットホルダ4が絶縁体6を介して取り付けられている。絶縁体6は、チャンバ3とターゲットホルダ4を電気的に絶縁する部材である。チャンバ3、ターゲットホルダ4、絶縁体6により、真空排気可能な処理室14が構成されている。
【0021】
ターゲットホルダ4には、ターゲット5がボンディングにより接合されるターゲット取付け面(ターゲット載置面)4aが設けられている。ターゲット取付け面4aは基板ホルダ2に対向する平滑な面として形成されている。ターゲット5は被成膜材料であり、上述のようにターゲットホルダ4のターゲット取り付け面4aにボンディングされている。
【0022】
ターゲットホルダ4のターゲット取り付け面4aと反対の面側には、マグネトロン放電に必要な磁場を印加する、長辺および短辺を有する矩形の磁石ユニット(磁気回路ユニット)7が配置されている。磁石ユニット7は、ジョイント9を介してねじ軸8に吊り下げられており、ねじ軸8にはモータ10が接続されている。ねじ軸8はモータ10により回転(正転・反転)する。すなわち、ジョイント9とねじ軸8とでボールねじ機構が構成されており、磁石ユニット7は、ねじ軸8の回転に伴いx方向(磁石ユニット7の短辺方向)に揺動する。モータ10の回転を制御することにより、磁石ユニット7の移動距離、移動速度と移動方向を制御することが出来る。このように、ジョイント9、ねじ軸8とモータ10からなる揺動装置により、磁石ユニット7を
図1の破線で示されるように動かすことが出来る。
【0023】
なお、本実施形態では、磁石ユニット7を磁石ユニット7の短辺方向へのみ動かす揺動装置を備えているが、加えて、磁石ユニット7の長辺方向であるy方向へ磁石ユニット7を揺動させる揺動装置を備えていてもよい。
【0024】
チャンバ3内部には、基板1をターゲット5に対向するように保持できる基板ホルダ2が設けられている。チャンバ3の排気口11には、不図示のコンダクタンスバルブ等を介して排気ポンプ等の排気装置が接続されている。チャンバ3には、プロセスガスの導入手段として流量制御器(MFC)などを備えたガス導入機構12が接続されている。ガス導入機構12からプロセスガスを所定の流量で供給する。プロセスガスとしては、アルゴン(Ar)等の希ガスや窒素(N
2)等を含む単体または混合ガスを用いることができる。
【0025】
本実施形態においては、ターゲットホルダ4の背面側に磁石ユニット7が配置されているが、ターゲットホルダ4と磁石ユニット7の間の位置に仕切り板を設け、仕切り板を真空隔壁とする構成であってもよい。なお、本明細書において磁石ユニット7とは、少なくとも第1磁石71と第2磁石72と第3磁石(73a、73b)とを備える構成を言うものとする。また、マグネトロンカソード40とは、少なくとも磁石ユニット7とターゲットホルダ4とを含んだ構成をいうものとする。
【0026】
図2は本実施形態に係る磁石ユニット7の詳細を説明する平面図である。
図3は本実施形態に係る磁石ユニット7の詳細を説明する断面図であって、
図2のIII−III線断面図である。
【0027】
磁石ユニット7は、第1磁石71と、第2磁石72と、第3磁石73aと、第1磁石71、第2磁石72、および第3磁石73aを支持するための磁石載置面74aを有する磁石載置部74とを備えている。本実施形態では、磁石載置面74aには、少なくとも第1磁石71および第2磁石72が載置される。
なお、磁石ユニット7の長辺および短辺は、第1磁石71、第2磁石72によって決定される。
【0028】
磁石載置部74上に、永久磁石である棒状の第1磁石71と、該第1磁石71の周囲を取り囲むような永久磁石である第2磁石72とが互いに離間して載置されている。第1磁石71と第2磁石72とは、ターゲット面及びターゲット取り付け面4aに対して垂直方向(z方向)に着磁され、互いの極性は逆となっている。本実施形態では、第1磁石71は、N極が磁石載置面74a側に向き、S極がターゲットホルダ4側に向くように設けられている。一方、第2磁石72は、S極が磁石載置面74a側に向き、N極がターゲットホルダ4側に向くように設けられている。すなわち、第2磁石72は、第1磁石71の磁化方向と異なる逆方向に磁化されていることになる。
【0029】
一方、磁石ユニット7の短辺方向における第1磁石71と第2磁石72との間の領域の一部であって、かつ少なくとも第1磁石71と第2磁石72との間の真ん中の位置には、棒状の永久磁石である第3磁石73aが設けられている。すなわち、第3磁石73aの長辺方向と第1磁石71の長辺方向とが一致し、かつ第3磁石73aの短辺方向の中点が、第1磁石71と第2磁石72との間の中点と一致するように第3磁石73aは設けられている。また、他の側面から説明すれば、第3磁石73aは、磁石ユニット7の長辺方向(y方向)に沿って、第3磁石73aの第1磁石71側の面73bと該第1磁石71との間の距離と、第3磁石73aの第2磁石72側の面73cと該第2磁石72との間の距離とが等しくなるように設けられている。また、
図2に示されるように、第3磁石73aの長辺方向の長さは、第1磁石71の長辺方向の長さよりも短い。よって、第1磁石71および第2磁石72との間の領域において、第1磁石71の長辺方向の端部には第3磁石73aが配置されていない。
【0030】
第3磁石73aは、ターゲット面及びターゲット取り付け面4aに水平、且つ、磁石ユニット7の長辺に垂直な方向(x方向)に着磁されている。第3磁石73aの第1磁石71に隣接する面(第1磁石71と対向する面)73bの極性は、第1磁石71のターゲットホルダ4側に面する面の極性と同じである。一方、第3磁石73aの第2磁石72に隣接する面(第2磁石71と対向する面)73bは、第2磁石72のターゲットホルダ側の面と同極の極性を有する。マグネトロン放電に必要な磁場を経済的に優れた方法で生成すると言う観点から、磁石載置部74は磁性材料であることが好ましい。また、第1磁石71と第2磁石72を固定するという観点から、磁石載置部74は存在する方が好ましい。しかし、第1磁石71、第2磁石72、および第3磁石73のみにより、必要十分な磁場を生成できる場合においては、磁石載置部74は非磁性材料であってもよい。また、この場合において、第1磁石71、第2磁石72および、第3磁石73を互いに固定できる場合において、磁石載置部74は無くてもよい。
【0031】
第3磁石73aと磁石載置部74との間には、支持部73dが設けられている。本実施形態において支持部73dは非磁性材料であるアルミニウムである。なお、好ましい磁気回路が設計可能であるならば、支持部73dは磁性材料であってもよく、また、第3磁石73aと同一着磁方向、同一極性である磁石であってもよい。また、支持部73dを設けずに、第3磁石73aを磁石載置部74に直接載置させても良い。
【0032】
なお、本実施形態では、磁石載置部74上に第1磁石71および第2磁石72を直接設ける形態について説明したが、この形態に限らず、磁石載置部74と、第1磁石71および第2磁石72の少なくとも一方との間に、支持部73dのようなスペーサを設けても良い。
【0033】
上述した実施形態においては、第3磁石73aが棒状である場合について説明したが、第3磁石73aはひとつの環状磁石であっても良い。すなわち、本実施形態において第3磁石が、第1磁石71と第2磁石72の短辺方向における第1磁石71と第2磁石72との間の少なくとも一部であって、第1磁石71と第2磁石72との少なくとも中心位置に配置されることが肝要である。
【0034】
本実施形態の磁石ユニット7が形成する磁気ループと、従来の磁石ユニット90が形成する磁気ループの比較を、
図9を用いて説明する。
【0035】
図9において、従来構造の磁石ユニット90は、本実施形態に係る磁石ユニット7から第3磁石73aおよび支持部73dを除いた構成を有する。従来の磁石ユニット90において、第1磁石71のターゲットホルダ側の磁極であるN極と第2磁石72のターゲットホルダ側の磁極であるS極とにより磁力線(磁気ループ)91が形成される。該磁力線91においてターゲット表面と平行となる磁場の強さ(漏洩磁束密度)がXGauss(X:任意)となる領域までの、第1磁石71および第2磁石72からの距離をL1とする。
【0036】
本実施形態の磁石ユニット7では、第1磁石71および第2磁石72により従来の磁石ユニット90と同様に磁力線(磁気ループ)92が形成されるが、さらに、該磁力線92の内側(第1磁石71および第2磁石73側)において、第3磁石73aのN極およびS極により磁力線(磁気ループ)93が形成される。本実施形態では、第2磁石72のN極から出た磁力線92が第3磁石73aのN極から出た磁力線93と反発する。このため、第2磁石72のN極から出た磁力線92は第3磁石73aが形成する磁力線93を迂回する形で第1磁石71のS極に入る。この結果、従来の磁石ユニット90に比べ、より磁石ユニットの遠方まで磁気ループを形成することが可能となる。
【0037】
すなわち、本実施形態では、第2磁石72に対向する面73c(第3磁石のN極)からターゲット側に出た磁力線93が第1磁石71に対向する面73b(第3磁石のS極)に入り、かつ面73cの極性が該面73cと対向する第2磁石72の領域の磁性と同極であり、面73bの極性が該面73bと対向する第1磁石71の磁性と同極となるように第3磁石73aを第1磁石71と第2磁石72との間に設けているので、第1磁石71および第2磁石により形成される磁力線92と反発する磁力線93を、磁力線92の内側に形成することができる。このような磁力線92と反発する磁力線93の存在により、漏洩磁束密度に係わる磁力線92を磁石ユニット7から遠くに形成することができる。すなわち、第1磁石71および第2磁石72から、漏洩磁束密度に係る磁力線92においてターゲット表面と平行となる磁場の強さが上記XGaussとなる領域までの距離L2を、従来の磁石ユニット90における距離L1よりも大きくすることができる。このように、本実施形態では、自身で形成される磁気ループ(磁力線93)が第1磁石71および第2磁石72により形成される磁気ループ(磁力線92)と反発するように設けられた第3磁石73aは、漏洩磁束密度に係る磁力線92を磁石ユニット7から遠ざかる位置に形成するように作用し、所定の漏洩磁束密度が得られる磁気ループを磁石ユニット7から従来よりも遠くに形成することができる。このように本実施形態では、漏洩磁束密度に係る磁力線92を磁石ユニット7から遠くに形成することができるので、磁石ユニット7の短辺方向の幅Wを小さくしても、ターゲット表面において十分な漏洩磁束密度を得ることができる。
【0038】
また、第3磁石73aは、第1磁石71と第2磁石72との間の少なくとも真ん中に位置していれば、上述したような磁気ループを十分遠方に形成する効果が期待できる。加えて、第3磁石73aの短辺方向の中点が、第1磁石71と第2磁石72との間の中点と一致するように第3磁石73aを設けることで、第3磁石73aの第2磁石72と対向する面73cと第2磁石72との間の距離D1(D4)と、第3磁石73aの第1磁石71と対向する面73bと第2磁石71との間の距離D2(D3)とを同一にすることができる。これにより、第2磁石72のN極による磁力線93への作用と、第1磁石71のS極による磁力線93への作用とを同様にすることができる。よって、第3磁石73aのターゲット側に形成される磁力線93をより対称にすることができ、該磁力線93の反発の作用を受ける磁力線92もより対称な形で形成される。従って、所定の漏洩磁束密度が得られる領域をより遠くに形成することができる。
【0039】
だたし、本実施形態では、第3磁石73aの短辺方向の中点が、第1磁石71と第2磁石72との間の中点と一致するように第3磁石73aを設ける形態が好ましいが、中点が一致する位置からからずれて第3磁石73aを設けても、本発明の効果を得ることができる。すなわち、本発明では、漏洩磁束密度に係る磁力線92を、磁石ユニット7からなるべく遠くに形成するために本発明に特徴的な第3磁石73aを第1磁石71と第2磁石72との間の少なくとも真ん中の位置に設けることが重要である。よって、第3磁石73aにより磁力線92の内側(磁石ユニット7側)に磁力線92と反発する磁力線93を形成し、これにより磁力線92の形成位置を磁石ユニット7から遠ざけることができるのであれば、磁石ユニット7が上記真ん中の位置からずれていても本発明の一実施形態に含まれる。
【0040】
さらに、本実施形態では、上記距離D1、D2、D3、D4はそれぞれ、5mm以下であることが好ましい。上記距離D1〜D4が5mm以下であれば、第1磁石71および第2磁石72と、第3磁石73aの同極同士を十分に反発させることができる。第3磁石73aのN極から出た磁力線93は、すぐ近傍にある第2磁石72のN極に強く反発し、よりターゲット側のより遠くに磁力線93を形成する。このため第1磁石71のN極から出た磁力線92は、上記より遠くに形成された磁力線93により押し上げられ、その結果、ターゲット側のより遠くに磁力線92が形成される。すなわち、第3磁石73aの幅(第3磁石73aの、磁石ユニット7の短辺方向(x方向)の幅)を十分大きくすることで、第3磁石73aと、第1磁石71および第2磁石72を十分に反発させ、それにより反発させた第3磁石73aの磁力線93により、漏洩磁束密度に係わる磁力線92をターゲット側のより遠くに形成させることができる。なお、本実施形態では、第3磁石73aは、第1磁石71および第2磁石72の少なくとも一方と接していても良い。よって、上記距離D1〜D4は、0mm以上5mm以下であることが好ましい。
【0041】
なお、本実施形態では、磁石載置部74は板状のヨークであっても良いし、板状の非磁性材料であっても良い。このように、磁石載置部74がヨークである場合は、所定の漏洩磁束密度が形成される磁気ループを磁石ユニット7からより遠くに形成することができる。
【0042】
また、本実施形態では、第3磁石73aを棒状の永久磁石とし、棒状の第3磁石73aの長辺方向を第1磁石71の長辺方向と一致させているので、ターゲットの長辺方向(長手方向)端部の被スパッタ量を低減することができ、ターゲットの寿命を延ばすことができる。このように、ターゲットの長辺方向の端部が深く削れるのを低減してターゲットの寿命を延ばすことで利用効率を上げることができる。
【0043】
また、
図10において、棒状の第1磁石71の長辺方向の長さaは、棒状の第3磁石73aの長辺方向の長さb以上であることが好ましい。このようにすることで、ターゲットの長辺方向の端部の被スパッタ量を低減することができる。よって、ターゲットの寿命を延ばし、利用効率を上げることができる。さらに、磁石ユニット7の短辺方向における第1磁石71と第2磁石72との間の距離(間隔)αは、磁石ユニット7の長辺方向における第1磁石71と第2磁石72との間の距離(間隔)β以上であることが好ましい。このようにすることで、
図10における領域Bの箇所のエロージョンの幅を領域Cの箇所のエロージョンの幅よりも狭くすることができる。従って、領域A2の箇所の削れ量に対する領域A1の箇所の削れ量の割合を小さくすることができる。この効果は、距離αに比べて距離βが小さいほど顕著である。このように、上記割合を小さくできるので、ターゲットの寿命を延ばすことができ、利用効率を向上させることができる。
【0044】
(実施例)
本実施例におけるターゲット5の大きさ、形状と材質は、幅である短辺方向(x方向)長さ300mm、長辺方向(y方向)長さ1700mmの矩形であり、厚さ(z方向)は15mmのアルミニウム(A1050)である。また、ターゲットホルダ4の厚さ(z方向)は、20mmである。磁石ユニット7の大きさは、幅である短辺方向(x方向)長さWは90mm、長辺方向(y方向)長さ1700mmの矩形である。第1磁石71、第2磁石72、第3磁石73aは、残留磁束密度1.39T、保持力12.8kOeであるネオジム磁石である。また、磁石載置部74はSUS430である。
【0045】
磁石ユニット7のターゲットホルダ4側の面からターゲット5のスパッタ面までの距離は、39mmである。
図3の符号gは磁石ユニット7により生成される磁場の磁力線を示しており、山形の磁力線の頂点に対応する、符号pで示すターゲット5の箇所(磁力線gにおいてターゲット表面と平行となる箇所)が最もスパッタされやすい。その箇所pにおける磁石ユニット7の短辺方向(x方向)の漏洩磁束密度は約510Gaussであった。
【0046】
本実施例における磁石ユニット7の移動距離は210mm、一往復の所要時間は10秒である。
図7は本実施例における静止エロージョン50と揺動エロージョン51のシミュレーション結果を示す図である。シミュレーションにおけるターゲット利用率は69%であった。また、実際にターゲット5をスパッタすることにより得られる揺動エロージョン51を測定することにより得られたターゲット利用率は65%であった。揺動エロージョン51の測定には非接触測定であるレーザ変位計を搭載した三次元測定機を用いた。
【0047】
(比較例)
本発明を実施にあたり、従来技術である
図8A〜8Cに示す磁石ユニット700により生成される磁場と、ターゲット利用率の検討を行った。
【0048】
図4は従来技術である磁石ユニット700の詳細を説明する平面図である。
図8A〜8Cは従来技術である磁石ユニット700の詳細を説明する断面図である。
【0049】
従来の磁石ユニット700では、ヨークである磁石載置部74上に、永久磁石である棒状の第1磁石71と、該第1磁石71の周囲を取り囲むような第2磁石72が載置されている。第1磁石71と第2磁石72は、ターゲット面及びターゲット載置面に垂直方向(z方向)に着磁され、互いの極性は逆となっている。
【0050】
(比較例1)
図8Aに示す磁石ユニット7の大きさは、幅である短辺方向(x方向)長さWは120mm、長辺方向(y方向)長さ1700mmの矩形である。すなわち、比較例1の磁石ユニットは
図6にて説明した構造である。第1磁石71、第2磁石72は、残留磁束密度1.39T、保持力12.8kOeであるネオジム磁石である。また、磁石載置部74はSUS430である。
【0051】
比較例1の磁石ユニット700のターゲットホルダ側の面からターゲットのスパッタ面までの距離は、本実施例と同じ39mmである。本実施例において説明し
図3の符号pで示した、ターゲットにおいて最もスパッタされやすい箇所における磁石ユニット700の短辺方向(x方向)の漏洩磁束密度は約520Gaussであった。
【0052】
比較例1における磁石ユニット700の移動距離は180mm、一往復の所要時間は10秒である。
図6は比較例1における静止エロージョン50と揺動エロージョン51のシミュレーション結果を示している。シミュレーションにおけるターゲット利用率は58%であった。これに対して、本実施例では、ターゲット利用率は69%であり、本実施例により、ターゲット利用率を向上できることがわかる。
【0053】
(比較例2)
図8Bに示す磁石ユニット7の大きさは、幅である短辺方向(x方向)長さWは90mm、長辺方向(y方向)長さ1700mmの矩形である。また、第1磁石71、第2磁石72の大きさはそれぞれ、比較例1に示した第1磁石71、第2磁石72のそれらと同じである。すなわち、
図8Aと
図8Bにおいては、磁石ユニット7の幅Wが異なることに伴い、第1磁石71と第2磁石72の距離が異なっている。第1磁石71、第2磁石72は、残留磁束密度1.39T、保持力12.8kOeであるネオジム磁石である。また、磁石載置部74はSUS430である。
【0054】
比較例2の磁石ユニット700のターゲットホルダ側の面からターゲットのスパッタ面までの距離は、本実施例および比較例1と同じ39mmである。本実施例において説明し
図3の符号pで示した、ターゲットにおいて最もスパッタされやすい箇所における磁石ユニット700の短辺方向(x方向)の漏洩磁束密度は約330Gaussであり、本実施例、及び比較例1で得られた500Gauss以上を得ることが出来なかった。このように、本実施例および比較例2とを比較すると、本実施例によれば、磁石ユニットの短辺方向の幅を小さくしても、磁石ユニットから所定の距離における漏洩磁束密度を大きくすることができることがわかる。
【0055】
(比較例3)
図8Cに示す磁石ユニット7の大きさは、幅である短辺方向(x方向)長さWは90mm、長辺方向(y方向)長さ1700mmの矩形である。比較例1で示した
図8A、比較例2で示した
図8Bとは第1磁石71、第2磁石72の大きさが異なり、第1磁石71と第2磁石72とが離間することなくそれらを最大限大きくした、すなわち、従来技術において最大となる漏洩磁束密度が得られる形状である。第1磁石71、第2磁石72は、残留磁束密度1.39T、保持力12.8kOeであるネオジム磁石である。また、磁石載置部74はSUS430である。
【0056】
比較例3の磁石ユニット700のターゲットホルダ側の面からターゲットのスパッタ面までの距離は、本実施例、比較例1、2と同じ39mmである。本実施例において説明し
図3の符号pで示した、ターゲットにおいて最もスパッタされやすい箇所における磁石ユニット700の短辺方向(x方向)の漏洩磁束密度は約440Gaussであり、本実施例、及び比較例1で得られた500Gauss以上を得ることが出来なかった。
【0057】
(第2の実施形態)
本実施形態では、第1磁石71、第2磁石72、第3磁石73aの、磁石載置面74aから該磁石載置面74aと反対側の面までの距離(ターゲット載置面までの距離の長さ)を変更した場合について述べる。
【0058】
それぞれの場合についてターゲット表面に形成される漏洩磁場をシミュレーションにより調べた。その結果、
図11A〜11Cに示す位置関係のとき、ターゲット表面の漏洩磁場の強さを大きくすること、すなわち、より遠くに磁気ループを形成することができた。
図11A〜11Cにおいて、磁石載置面74aから第1磁石71の該磁石載置面74aと反対側の面までの第1距離をDaとし、磁石載置面74aから第2磁石72の該磁石載置面74aと反対側の面までの第2距離をDbとし、磁石載置面74aから第3磁石73aの該磁石載置面74aと反対側の面までの第3距離をDcとする。なお、第1磁石71や第2磁石72と磁石載置面74aとの間にスペーサが設けられている場合であっても、第1距離Daおよび第2距離Dbはそれぞれ、磁石載置面74aから第1、第2磁石の磁石載置面74aと反対側の面までの距離をもって決定される。
【0059】
図11Aは、第1距離Da、第2距離Db、および第3距離Dcが全て等しい形態である。また、
図11Bは、第1距離Daおよび第3距離Dcが等しく、第2距離Dbが第3距離Dcよりも小さい形態である。さらに、
図11Cは、第2距離Dbおよび第3距離Dcが等しく、第1距離Daが第3距離Dcよりも小さい形態である。すなわち、本実施形態では、第1距離および第2距離は第3距離以下の長さであり、かつ第1距離および第2距離の少なくとも一方は、第3距離と等しいことが肝要であると言える。