特許第5873562号(P5873562)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873562
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】ハニカム構造体
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/80 20060101AFI20160216BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   B01J29/80 A
   B01J35/04 301P
   B01J35/04 301M
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-539532(P2014-539532)
(86)(22)【出願日】2012年10月3日
(86)【国際出願番号】JP2012075713
(87)【国際公開番号】WO2014054143
(87)【国際公開日】20140410
【審査請求日】2015年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】國枝 雅文
(72)【発明者】
【氏名】村越 世理花
【審査官】 壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−136407(JP,A)
【文献】 特表2012−508096(JP,A)
【文献】 特開2012−106909(JP,A)
【文献】 特表2012−522636(JP,A)
【文献】 特開2011−121055(JP,A)
【文献】 特開2011−167690(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/090922(WO,A1)
【文献】 特表2010−524677(JP,A)
【文献】 特表2011−510899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00−38/74
B01D53/86,53/94
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種類のゼオライトと無機バインダとを含み、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されたハニカムユニットを有するハニカム構造体であって、
前記2種類のゼオライトのうちの一方が、組成比Si/(Si+Al+P)が0.1〜0.25であるシリコアルミノリン酸塩(SAPO)であり、他方が、組成比Si/Alが2〜10であるアルミノケイ酸塩(CHA)であることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項2】
前記2種類のゼオライトにおいて、SAPO及びCHAの原料配合比率(SAPO:CHAの質量比)が、8:2〜2:8であることを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記SAPO及び前記CHAが、銅イオンでイオン交換されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記無機バインダが、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライト、アタパルジャイト及びベーマイトからなる群より選択される一種以上に含まれる固形分であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記ハニカムユニットが、無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質からなる群より選択される一種以上をさらに含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記無機繊維は、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、シリカアルミナ、ガラス、チタン酸カリウム及びホウ酸アルミニウムからなる群より選択される一種以上であり、
前記鱗片状物質は、ガラス、白雲母、アルミナ及びシリカからなる群より選択される一種以上であり、
前記テトラポット状物質は、酸化亜鉛であり、
前記三次元針状物質は、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、シリカアルミナ、ガラス、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム及びベーマイトからなる群より選択される一種以上であることを特徴とする請求項5に記載のハニカム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンから排出されるNOxを、SCR(Selective Catalytic Reduction)システムを用いて浄化するためのハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
SCRシステムに用いる触媒担体として、ゼオライトを含む組成物をハニカム状に成形したものが知られている。
例えば、特許文献1には、リン酸塩系ゼオライト(SAPO)を用いて、マクロ気孔の平均気孔径が0.1μm以上0.3μm以下であり、気孔率が30%以上40%以下としたハニカム構造体が開示されている。このハニカム構造体は、材料としてSAPOを用い、気孔構造を上記のようにすることで、NOxの浄化性能を高くすることができる。また、特許文献1には、浄化性能を向上させるため、SAPOをCuやFeなどによりイオン交換することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2011/061836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなSAPOを用いたハニカム構造体は、空気中の水分が吸着することにより構造変化が起こり、ハニカムとしてみたとき0.1%を超える収縮があり、この吸脱水による収縮/膨張により、ハニカム構造体にクラックが生ずる。また、体積膨張を抑制すべく、SAPOのSi/(Si+Al+P)の比を高くすると、NOx浄化性能が下がってしまう。
一方、SAPOを用いたハニカム構造体は、SAPOの性質上、80℃程度の水蒸気雰囲気に曝されることによりNOx浄化性能が低下することがあり(本明細書において「水和劣化」と呼ぶ。)、排ガスが700℃程度の高温に上がらない場合、浄化性能が低い状態が続くことがある。
【0005】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、SAPOの優れたNOx浄化性能を維持しつつ、クラックの発生及び水和劣化が抑えられるハニカム構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する本発明は以下の通りである。
(1)2種類のゼオライトと無機バインダとを含み、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されたハニカムユニットを有するハニカム構造体であって、
前記2種類のゼオライトのうちの一方が、組成比Si/(Si+Al+P)が0.1〜0.25であるシリコアルミノリン酸塩(SAPO)であり、他方が、組成比Si/Alが2〜10であるアルミノケイ酸塩(CHA)であることを特徴とするハニカム構造体。
【0007】
(2)前記2種類のゼオライトにおいて、SAPO及びCHAの原料配合比率(SAPO:CHAの質量比)が、8:2〜2:8であることを特徴とする前記(1)に記載のハニカム構造体。
【0008】
(3)前記SAPO及び前記CHAが、銅イオンでイオン交換されていることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のハニカム構造体。
【0009】
(4)前記無機バインダが、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライト、アタパルジャイト及びベーマイトからなる群より選択される一種以上に含まれる固形分であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0010】
(5)前記ハニカムユニットが、無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質からなる群より選択される一種以上をさらに含むことを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0011】
(6)前記無機繊維は、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、シリカアルミナ、ガラス、チタン酸カリウム及びホウ酸アルミニウムからなる群より選択される一種以上であり、
前記鱗片状物質は、ガラス、白雲母、アルミナ及びシリカからなる群より選択される一種以上であり、
前記テトラポット状物質は、酸化亜鉛であり、
前記三次元針状物質は、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、シリカアルミナ、ガラス、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム及びベーマイトからなる群より選択される一種以上であることを特徴とする前記(5)に記載のハニカム構造体。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、SAPOの優れたNOx浄化性能を維持しつつ、クラックの発生及び水和劣化が抑えられるハニカム構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のハニカム構造体の一例を示す斜視図である。
図2】本発明のハニカム構造体を有する排ガス浄化装置の一例を示す断面図である。
図3】本発明のハニカム構造体の他の例を示す斜視図である。
図4図3のハニカム構造体を構成するハニカムユニットを示す斜視図である。
図5】実施例・比較例で作製したハニカム構造体の、温度に対する吸脱水体積変化率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のハニカム構造体は、2種類のゼオライトと無機バインダとを含み、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されたハニカムユニットを有するハニカム構造体であって、前記2種類のゼオライトのうちの一方が、組成比Si/(Si+Al+P)が0.1〜0.25であるシリコアルミノリン酸塩(SAPO)であり、他方が、組成比Si/Alが2〜10であるアルミノケイ酸塩(CHA)であることを特徴としている。
以下に、本発明のハニカム構造体について詳述する。
なお、ゼオライトは、狭義にはアルミノケイ酸塩のことであるが、広義にはシリコアルミノリン酸塩(SAPO)も含んでおり、本発明においては広義の方を採用している。
【0015】
図1に、本発明のハニカム構造体の一例を示す。ハニカム構造体10は、2種類のゼオライト(SAPO及びCHA)と無機バインダとを含み、複数の貫通孔11aが隔壁11bを隔てて長手方向に並設されている単一のハニカムユニット11を有する。また、ハニカムユニット11の両端面を除く外周面に外周コート層12が形成されている。
【0016】
本発明のハニカム構造体においては、SAPOのみを用いて形成した場合に発生する、水分吸着に伴う体積収縮を抑制するため、水分を吸着した場合に体積膨張するアルミノケイ酸塩(CHA)を併用し、全体として見かけの体積変化を抑制したものである。換言すると、脱水(吸水)に対して正(負)の体積変化を示すSAPOと、脱水(吸水)に対して負(正)の体積変化を示すCHAとを混成して形成することで、各材料は吸水・脱水に対して反対の体積変化の挙動を示し、全体として見かけの体積変化を相殺したのである。
【0017】
より詳細には、HO分子はAlへの吸着エネルギーが低いため、ゼオライトを構成するAlに吸着しやすい。AlはHO分子を吸着すると配位数は4配位から5配位に変化し、そのイオン半径は0.39Åから0.48Åと大きくなる。そのためAl,Si,Pの組成比にもよるが、SAPOは脱水することで、格子定数が変化し、おおよそa軸およびb軸方向に1.3%程度膨張し、c軸方向に0.4%程度収縮し、全体として結晶構造が2.0%程度膨張する。一方、CHAは脱水することで、格子定数が変化し、おおよそa軸およびb軸方向に0.15%程度収縮し、c軸方向に0.4%程度収縮し、全体として結晶構造が0.7%程度収縮する。
SAPOのみを用いて体積変化抑制するためには、組成比Si/(Si+Al+P)を大きくしたり、焼成により比表面積を小さくしたりすることが考えられるが、前者の場合は水和劣化しやすくなり、後者の場合はNOx浄化性能が若干低下する傾向にあることが分かった。本発明においては、SAPOとCHAとを混成して使用することで前述のような体積変化を抑制するため、組成比Si/(Si+Al+P)を小さくすること、及び比表面積を大きくすることが可能となり、NOx浄化性能の低下、及び水和劣化を抑えることができる。
以上より、本発明のハニカム構造体においては、NOx浄化性能を維持しつつ、体積変化に起因するクラックの発生及び水和劣化が抑えられる。
【0018】
本発明においては、2種類のゼオライトを混成して使用するのであるが、それらのうちの一方が、組成比Si/(Si+Al+P)が0.1〜0.25であるシリコアルミノリン酸塩(SAPO)である。当該組成比が0.1未満であると銅イオン交換サイトが少なく、NOx浄化性能が低下する。逆に、当該組成比が0.25を超えると構造欠陥が増加し、NOx浄化性能が低下する。
SAPOにおいて上記組成比としては、0.1〜0.17が望ましく、0.12〜0.16がより望ましい。
本発明において使用するSAPOとしては、SAPO−34であることが望ましく、粒子径が1〜5μmであり、比表面積が250−550m/gであることが望ましい。
【0019】
また、2種類のゼオライトのうちの他方が、組成比Si/Alが2〜10であるアルミノケイ酸塩(CHA)である。当該組成比が2未満であるとAlが多くなり熱劣化しやすくなる。逆に、当該組成比が10を超えると水分吸着時に膨張しなくなるため、NOx浄化性能が高く、水分吸着時に収縮するSAPOと混成して使用した時に体積変化を相殺する効果が得られない。
CHAにおいて、上記組成比としては、2〜8が望ましく、2〜6がより望ましい。
本発明において使用するCHAとしては、粒子径が1〜5μmであり、比表面積が500〜600m/gであることが望ましい。
【0020】
本発明のハニカム構造体では、上記SAPO及びCHAの原料配合比率(SAPO:CHAの質量比)が、8:2〜2:8であることが望ましい。
前述したメカニズムにより、SAPOおよびCHAのAl,Si,Pの組成比の違いで、それぞれの結晶構造の体積変化率(膨張率,収縮率)が変わるが、SAPOの組成比Si/(Si+Al+P)が0.1〜0.25であり、CHAの組成比Si/Alが2〜10の範囲であれば、原料配合比率を8:2〜2:8とすることで、ハニカム構造体とした時の体積変化率を低く抑えることができ、クラックの発生を抑えることができる。
上記SAPO及びCHAの原料配合比率としては、7:3〜5:5がより望ましく、7:3〜6:4がさらに好適である。7:3〜6:4にすることで、ハニカム構造体とした時の吸脱水による体積変化率を±0.14以内にすることができる。
【0021】
本発明のハニカム構造体では、上記SAPO及び上記CHAが、銅イオンでイオン交換されていることが望ましい。SAPO,CHAが銅イオン交換されることで、NOxの浄化性能を高くすることが可能となる。
銅イオンによりイオン交換されているSAPO又はCHAは、イオン交換量が2〜6質量%であることが好ましい。
【0022】
ハニカムユニット11に含まれる無機バインダとしては、特に限定されないが、ハニカム構造体としての強度を保つという観点から、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライト、アタパルジャイト、ベーマイト等に含まれる固形分が好適なものとして挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0023】
ハニカムユニット11中の無機バインダの含有量は、5〜30質量%であることが好ましく、10〜20質量%がより好ましい。ハニカムユニット11中の無機バインダの含有量が5質量%未満であると、ハニカムユニット11の強度が低下する。一方、ハニカムユニット11中の無機バインダの含有量が30質量%を超えると、ハニカムユニット11を押出成形することが困難になる。
【0024】
ハニカムユニット11は、強度を向上させるために、無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質からなる群より選択される一種以上をさらに含むことが好ましい。
【0025】
ハニカムユニット11に含まれる無機繊維は、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、シリカアルミナ、ガラス、チタン酸カリウム及びホウ酸アルミニウムからなる群より選択される一種以上であり、前記鱗片状物質は、ガラス、白雲母、アルミナ及びシリカからなる群より選択される一種以上であり、前記テトラポット状物質は、酸化亜鉛であり、前記三次元針状物質は、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、シリカアルミナ、ガラス、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム及びベーマイトからなる群より選択される一種以上であることが望ましい。
いずれも耐熱性が高く、SCRシステムにおける触媒担体として使用した時でも、溶損などがなく、補強材としての効果を持続することができるためである。
【0026】
ハニカムユニット11に含まれる無機繊維のアスペクト比は、2〜1000であることが好ましく、5〜800がより好ましく、10〜500がさらに好ましい。ハニカムユニット11に含まれる無機繊維のアスペクト比が2未満であると、ハニカムユニット11の強度を向上させる効果が小さくなる。一方、ハニカムユニット11に含まれる無機繊維のアスペクト比が1000を超えると、ハニカムユニット11を押出成形する際に金型に目詰まり等が発生したり、無機繊維が折れて、ハニカムユニット11の強度を向上させる効果が小さくなったりする。
【0027】
鱗片状物質は、平たい物質を意味し、厚さが0.2〜5.0μmであることが好ましく、最大長さが10〜160μmであることが好ましく、厚さに対する最大長さの比が3〜250であることが好ましい。
【0028】
テトラポット状物質は、針状部が三次元に延びている物質を意味し、針状部の平均針状長さが5〜30μmであることが好ましく、針状部の平均径が0.5〜5.0μmであることが好ましい。
【0029】
三次元針状物質は、針状部同士がそれぞれの針状部の中央付近でガラス等の無機化合物により結合されている物質を意味し、針状部の平均針状長さが5〜30μmであることが好ましく、針状部の平均径が0.5〜5.0μmであることが好ましい。
【0030】
また、三次元針状物質は、複数の針状部が三次元に連なっていてもよく、針状部の直径が0.1〜5.0μmであることが好ましく、長さが0.3〜30.0μmであることが好ましく、直径に対する長さの比が1.4〜50.0であることが好ましい。
【0031】
ハニカムユニット11中の無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質の含有量は、3〜50質量%であることが好ましく、3〜30質量%がより好ましく、5〜20質量%がさらに好ましい。ハニカムユニット11中の無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質の含有量が3質量%未満であると、ハニカムユニット11の強度を向上させる効果が小さくなる。一方、ハニカムユニット11中の無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質の含有量が50質量%を超えると、ハニカムユニット11中の2種類のゼオライトの含有量が低下して、NOxの浄化性能が低下する。
【0032】
ハニカムユニット11は、気孔率が30〜60%であることが好ましい。ハニカムユニット11の気孔率が30%未満であると、ハニカムユニット11の隔壁11bの内部まで排ガスが侵入しにくくなって、2種類のゼオライトがNOxの浄化に有効に利用されなくなる。一方、ハニカムユニット11の気孔率が60%を超えると、ハニカムユニット11の強度が不十分となる。
【0033】
なお、ハニカムユニット11の気孔率は、水銀圧入法を用いて測定することができる。
【0034】
ハニカムユニット11は、長手方向に垂直な断面の開口率が50〜75%であることが好ましい。ハニカムユニット11の長手方向に垂直な断面の開口率が50%未満であると、2種類のゼオライトがNOxの浄化に有効に利用されなくなる。一方、ハニカムユニット11の長手方向に垂直な断面の開口率が75%を超えると、ハニカムユニット11の強度が不十分となる。
【0035】
ハニカムユニット11は、長手方向に垂直な断面の貫通孔11aの密度が31〜155個/cmであることが好ましい。ハニカムユニット11の長手方向に垂直な断面の貫通孔11aの密度が31個/cm未満であると、2種類のゼオライトと排ガスが接触しにくくなって、NOxの浄化性能が低下する。一方、ハニカムユニット11の長手方向に垂直な断面の貫通孔11aの密度が155個/cmを超えると、ハニカム構造体10の圧力損失が増大する。
【0036】
ハニカムユニット11の隔壁11bの厚さは、0.1〜0.4mmであることが好ましく、0.1〜0.3mmがより好ましい。ハニカムユニット11の隔壁11bの厚さが0.1mm未満であると、ハニカムユニット11の強度が低下する。一方、ハニカムユニット11の隔壁11bの厚さが0.4mmを超えると、ハニカムユニット11の隔壁11bの内部まで排ガスが侵入しにくくなって、2種類のゼオライトがNOxの浄化に有効に利用されなくなる。
【0037】
外周コート層12は、厚さが0.1〜2.0mmであることが好ましい。外周コート層12の厚さが0.1mm未満であると、ハニカム構造体10の強度を向上させる効果が不十分になる。一方、外周コート層12の厚さが2.0mmを超えると、ハニカム構造体10の単位体積当たりの2種類のゼオライトの含有量が低下して、NOxの浄化性能が低下する。
【0038】
ハニカム構造体10の形状としては、円柱状に限定されず、角柱状、楕円柱状、長円柱状、丸面取りされている角柱状(例えば、丸面取りされている三角柱状)等が挙げられる。
【0039】
貫通孔11aの形状としては、四角柱状に限定されず、三角柱状、六角柱状等が挙げられる。
【0040】
次に、ハニカム構造体10の製造方法の一例について説明する。まず、2種類のゼオライトと無機バインダとを含み、必要に応じて、無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質からなる群より選択される一種以上をさらに含む原料ペーストを用いて押出成形し、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されている円柱状のハニカム成形体を作製する。
【0041】
原料ペーストに含まれる無機バインダは、特に限定されないが、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライト、アタパルジャイト、ベーマイト等として添加されており、二種以上併用してもよい。
【0042】
また、原料ペーストには、有機バインダ、分散媒、成形助剤等を、必要に応じて、適宜添加してもよい。
【0043】
有機バインダとしては、特に限定されないが、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、二種以上併用してもよい。なお、有機バインダの添加量は、2種類のゼオライト、無機バインダ、無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質の総質量に対して、1〜10%であることが好ましい。
【0044】
分散媒としては、特に限定されないが、水、ベンゼン等の有機溶媒、メタノール等のアルコール等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0045】
成形助剤としては、特に限定されないが、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0046】
原料ペーストを調製する際には、混合混練することが好ましく、ミキサー、アトライタ等を用いて混合してもよく、ニーダー等を用いて混練してもよい。
【0047】
次に、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機等の乾燥機を用いて、ハニカム成形体を乾燥してハニカム乾燥体を作製する。
【0048】
さらに、ハニカム乾燥体を脱脂してハニカム脱脂体を作製する。脱脂条件は、ハニカム乾燥体に含まれる有機物の種類及び量によって適宜選択することができるが、400℃で2時間であることが好ましい。
【0049】
次に、ハニカム脱脂体を焼成することにより、円柱状のハニカムユニット11を作製する。焼成温度は、600〜1200℃であることが好ましく、600〜1000℃がより好ましい。焼成温度が600℃未満であると、焼結が進行せず、ハニカムユニット11の強度が低くなる。一方、焼成温度が1200℃を超えると、焼結が進行しすぎて、2種類のゼオライトの反応サイトが減少する。
【0050】
次に、円柱状のハニカムユニット11の両端面を除く外周面に外周コート層用ペーストを塗布する。
【0051】
外周コート層用ペーストとしては、特に限定されないが、無機バインダ及び無機粒子の混合物、無機バインダ及び無機繊維の混合物、無機バインダ、無機粒子及び無機繊維の混合物等が挙げられる。
【0052】
外周コート層用ペーストに含まれる無機バインダは、特に限定されないが、シリカゾル、アルミナゾル等として添加されており、二種以上併用してもよい。中でも、シリカゾルとして添加されていることが好ましい。
【0053】
外周コート層用ペーストに含まれる無機粒子としては、特に限定されないが、炭化ケイ素粒子等の炭化物粒子、窒化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子等の窒化物粒子等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、熱伝導性に優れることから、炭化ケイ素粒子が好ましい。
【0054】
外周コート層用ペーストに含まれる無機繊維としては、特に限定されないが、シリカアルミナ繊維、ムライト繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、アルミナ繊維が好ましい。
【0055】
外周コート層用ペーストは、有機バインダをさらに含んでいてもよい。
【0056】
外周コート層用ペーストに含まれる有機バインダとしては、特に限定されないが、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0057】
外周コート層用ペーストは、酸化物系セラミックスの微小中空球体であるバルーン、造孔剤等をさらに含んでいてもよい。
【0058】
外周コート層用ペーストに含まれるバルーンとしては、特に限定されないが、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン、ムライトバルーン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、アルミナバルーンが好ましい。
【0059】
外周コート層用ペーストに含まれる造孔剤としては、特に限定されないが、球状アクリル粒子、グラファイト等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0060】
次に、外周コート層用ペーストが塗布されたハニカムユニット11を乾燥固化し、円柱状のハニカム構造体10を作製する。このとき、外周コート層用ペーストに有機バインダが含まれている場合は、脱脂することが好ましい。脱脂条件は、有機物の種類及び量によって適宜選択することができるが、700℃で20分間であることが好ましい。
【0061】
なお、ハニカムユニット11又はハニカム構造体10を銅イオンを含む水溶液中に浸漬することにより、2種類のゼオライトをイオン交換してもよい。また、銅イオンによりイオン交換されているSAPOと、銅イオンによりイオン交換されているCHAの少なくとも一方を含む原料ペーストを用いてもよい。
【0062】
図2に、本発明のハニカム構造体を有する排ガス浄化装置の一例を示す。排ガス浄化装置100は、ハニカム構体10の外周部に保持シール材20を配置した状態で、金属容器(シェル)30にキャニングすることにより作製することができる。また、排ガス浄化装置100には、排ガスが流れる方向に対して、ハニカム構造体10の上流側の配管(不図示)内に、アンモニア又は分解してアンモニアを発生させる化合物を噴射する噴射ノズル等の噴射手段(不図示)が設けられている。これにより、配管を流れる排ガス中にアンモニアが添加されるため、ハニカムユニット11に含まれる2種類のゼオライトにより、排ガス中に含まれるNOxが還元される。
【0063】
分解してアンモニアを発生させる化合物としては、配管内で排ガスにより加熱されて、アンモニアを発生させることが可能であれば、特に限定されないが、貯蔵安定性に優れるため、尿素水が好ましい。
【0064】
尿素水は、配管内で排ガスにより加熱されて、加水分解し、アンモニアが発生する。
【0065】
図3に、本発明のハニカム構造体の他の例を示す。なお、ハニカム構造体10'は、複数の貫通孔11aが隔壁11bを隔てて長手方向に並設されているハニカムユニット11'(図4参照)が接着層13を介して複数個接着されている以外は、ハニカム構造体10と同一の構成である。
【0066】
ハニカムユニット11'は、長手方向に垂直な断面の断面積が10〜200cmであることが好ましい。ハニカムユニット11'の長手方向に垂直な断面の断面積が10cm未満であると、ハニカム構造体10'の圧力損失が増大する。一方、ハニカムユニット11'の長手方向に垂直な断面の断面積が200cmを超えると、ハニカムユニット11'に発生する熱応力に対する強度が不十分になる。
【0067】
なお、ハニカムユニット11'は、長手方向に垂直な断面の断面積以外は、ハニカムユニット11と同一の構成である。
【0068】
接着層13は、厚さが0.5〜2.0mmであることが好ましい。接着層13の厚さが0.5mm未満であると、ハニカムユニット11'の接着強度が不十分になる。一方、接着層13の厚さが2.0mmを超えると、ハニカム構造体10'の圧力損失が増大する。
【0069】
次に、ハニカム構造体10'の製造方法の一例について説明する。まず、ハニカム構造体10と同様にして、四角柱状のハニカムユニット11'を作製する。次に、ハニカムユニット11'の両端面を除く外周面に接着層用ペーストを塗布して、ハニカムユニット11'を順次接着させ、乾燥固化することにより、ハニカムユニット11'の集合体を作製する。
【0070】
接着層用ペーストとしては、特に限定されないが、無機バインダ及び無機粒子の混合物、無機バインダ及び無機繊維の混合物、無機バインダ、無機粒子及び無機繊維の混合物等が挙げられる。
【0071】
接着層用ペーストに含まれる無機バインダは、特に限定されないが、シリカゾル、アルミナゾル等として添加されており、二種以上併用してもよい。中でも、シリカゾルとして添加されていることが好ましい。
【0072】
接着層用ペーストに含まれる無機粒子としては、特に限定されないが、炭化ケイ素粒子等の炭化物粒子、窒化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子等の窒化物粒子等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、熱伝導性に優れることから、炭化ケイ素粒子が好ましい。
【0073】
接着層用ペーストに含まれる無機繊維としては、特に限定されないが、シリカアルミナ繊維、ムライト繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、アルミナ繊維が好ましい。
【0074】
また、接着層用ペーストは、有機バインダを含んでいてもよい。
【0075】
接着層用ペーストに含まれる有機バインダとしては、特に限定されないが、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0076】
接着層用ペーストは、酸化物系セラミックスの微小中空球体であるバルーン、造孔剤等をさらに含んでいてもよい。
【0077】
接着層用ペーストに含まれるバルーンとしては、特に限定されないが、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン、ムライトバルーン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、アルミナバルーンが好ましい。
【0078】
接着層用ペーストに含まれる造孔剤としては、特に限定されないが、球状アクリル粒子、グラファイト等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0079】
次に、ハニカムユニット11'の集合体を円柱状に切削加工した後、必要に応じて、研磨することにより、円柱状のハニカムユニット11'の集合体を作製する。
【0080】
なお、ハニカムユニット11'の集合体を円柱状に切削加工する代わりに、長手方向に垂直な断面が所定の形状に成形されているハニカムユニット11'を接着させて、円柱状のハニカムユニット11'の集合体を作製してもよい。このとき、ハニカムユニット11'の長手方向に垂直な断面の形状は、中心角が90°の扇形であることが好ましい。
【0081】
次に、円柱状のハニカムユニット11'の集合体の両端面を除く外周面に外周コート層用ペーストを塗布する。
【0082】
外周コート層用ペーストは、接着層用ペーストと同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0083】
次に、外周コート層用ペーストが塗布された円柱状のハニカムユニット11'の集合体を乾燥固化することにより、円柱状のハニカム構造体10'を作製する。このとき、接着層用ペースト及び/又は外周コート層用ペーストに有機バインダが含まれている場合は、脱脂することが好ましい。脱脂条件は、有機物の種類及び量によって適宜選択することができるが、700℃で20分間であることが好ましい。
【0084】
なお、ハニカム構造体10及び10'は、外周コート層12が形成されていなくてもよい。
【実施例】
【0085】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0086】
[実施例1]
SAPOを2400質量部、CHAを507質量部、ベーマイトを827質量部、平均繊維径が3μm、平均繊維長が100μmのアルミナ繊維を1050質量部、メチルセルロースを436質量部、成形助剤としてソルビタントリオレエートを441質量部及びイオン交換水を2749質量部を混合混練して、原料ペースト1を作製した。なお、SAPOとしては、粒子径1.9μm、比重2.73、組成比Si/(Si+Al+P):0.13、比表面積483m/g、Cuイオン交換量が、酸化銅として4.1質量%のものを用い、CHAとしては粒子径2.4μm、比重2.31、組成比Si/Al:2.6、比表面積534m/g、Cuイオン交換量が、酸化銅として6.3質量%のものを用いた。
【0087】
次に、押出成形機を用いて、原料ペースト1を押出成形して、正四角柱状のハニカム成形体を作製した。そして、減圧マイクロ波乾燥機を用いて、ハニカム成形体を出力4.5kW、減圧6.7kPa、で7分乾燥させた後、700℃で2時間脱脂焼成して、ハニカム焼成体を作製した。ハニカムユニット11'は、一辺が38mm、長さが150mmの正四角柱状であり、貫通孔11aの密度が124個/cm、隔壁11bの厚さが0.20mmであった。
【0088】
次に、平均繊維径が0.5μm、平均繊維長が15μmのアルミナ繊維を767部、シリカガラスを2500部、カルボキシメチルセルロースを17部、固形分30質量%のシリカゾルを600部、ポリビニルアルコールを167部、界面活性剤を167部及びアルミナバルーンを17部、混合混練して、接着層用ペーストを作製した。
【0089】
ハニカムユニット11'の両端部を除く外周面に、接着層13の厚さが2.0mmになるように接着層用ペーストを塗布して、ハニカムユニット11'を16個接着させ、150℃で10分間乾燥固化した。次に、ダイヤモンドカッターを用いて、長手方向に垂直な断面が略点対称になるように円柱状に切削加工して、ハニカムユニット11'の集合体を作製した。
【0090】
さらに、ハニカムユニット11'の集合体の両端部を除く外周面に、外周コート層12の厚さが1.0mmになるように接着層用ペーストを塗布した後、マイクロ波乾燥機及び熱風乾燥機を用いて、接着層用ペーストを150℃で10分間乾燥固化し、400℃で2時間脱脂して、直径が160mm、長さが150mmの円柱状のハニカム構造体10'を作製した。
【0091】
[実施例2]
SAPO及びCHAの添加量を、それぞれ2700質量部及び979質量部、ベーマイトを945質量部、アルミナ繊維を1200質量部、メチルセルロースを529質量部、ソルビタントリオレエートを501質量部及びイオン交換水を3331質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、ハニカム構造体10'を作製した。
【0092】
[実施例3]
SAPO及びCHAの添加量を、それぞれ2700質量部及び1523質量部、ベーマイトを1102質量部、アルミナ繊維を1401質量部、メチルセルロースを570質量部、ソルビタントリオレエートを581質量部及びイオン交換水を3592質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、ハニカム構造体10'を作製した。
【0093】
[実施例4]
SAPO及びCHAの添加量を、それぞれ2700質量部及び2285質量部、ベーマイトを1322質量部、アルミナ繊維を1681質量部、メチルセルロースを677質量部、ソルビタントリオレエートを694質量部及びイオン交換水を4285質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、ハニカム構造体10'を作製した。
【0094】
[比較例1]
SAPO及びCHAの添加量を、それぞれ3000質量部及び0質量部、ベーマイトを 735質量部、アルミナ繊維を934質量部、メチルセルロースを396質量部、ソルビタントリオレエートを396質量部及びイオン交換水を2493質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、ハニカム構造体10'を作製した。
【0095】
[比較例2]
SAPO及びCHAの添加量を、それぞれ0質量部および3000質量部、ベーマイトを868質量部、アルミナ繊維を1103質量部、メチルセルロースを392質量部、ソルビタントリオレエートを443質量部及びイオン交換水を2471質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、ハニカム構造体10'を作製した。
【0096】
[吸脱水体積変化率]
実施例1〜4及び比較例1、2で作製したハニカムユニットから、ダイヤモンドカッターを用いて、一辺が5mm、高さが25mmの正四角柱状の試験片を切り出した。これらの試験片に対して、室温から、昇温速度10℃/分にて700℃まで昇温して、その後50℃まで降温し、その昇温・降温過程における10℃ごとのハニカムユニットの径方向の吸脱水体積変化率を熱膨張計(BRUKER社製、NETZSCH DIL402C)を用いて測定した。なお、測定は、He流量100ml/分の雰囲気下で行った。測定結果を表1及び図5においてグラフで示す。
実施例1〜4のハニカム構造体においては、体積変化率を±0.20%以内に抑えることができたのに対し、SAPOが100%の比較例1は+0.30%の体積変化率を、CHAが100%の比較例2は−0.64%の体積変化率を示した。
【0097】
[クラックの評価]
実施例1〜4及び比較例1、2で作製したハニカムユニットから、ダイヤモンドカッターを用いて、一辺が35mm、高さが80mmの正四角柱状の試験片を切り出した。これらの試験片に対して、絶乾状態から、調湿ルーム(温度25℃、湿度60%RH)に4時間静置させて吸水させた後のクラックの長さを測定したところ、体積変化率が±0.2%以内であれば、ハニカムユニットが破壊に至らない程度の微小なクラックに留まり、±0.14%以内であれば、目視できるクラックが生じないことが確認できた。
【0098】
[NOxの浄化性能]
実施例4及び比較例1、2で作製したハニカムユニットから、ダイヤモンドカッターを用いて、直径:1inch、長さ:3inchの円柱状試験片を切り出した。これらの試験片に、200℃の模擬ガスを空間速度(SV)80000/hrで流しながら、触媒評価装置(堀場製作所社製、SIGU−2000/MEXA−6000FT)を用いて、試料から流出するNOxの流出量を測定し、式
(NOxの流入量−NOxの流出量)/(NOxの流入量)×100
で表されるNOxの浄化率[%]を算出した。算出結果を表1に示す。なお、模擬ガスの構成成分は、一酸化窒素350ppm、アンモニア350ppm、酸素10%、二酸化炭素5%、水4.6%、窒素(balance)である。
表1より、実施例4および比較例1、2で作製したハニカムユニットの初期のNOx浄化性能は全て85%以上と高い値を示した。
実施例1〜3のハニカムユニットについては、NOx浄化性能を評価していないが、SAPOとCHAの配合比率が異なるだけであるため、実施例4及び比較例1、2のNOx浄化性能の値から、85%以上のNOx浄化性能が得られると推測できる。
【0099】
[水和劣化耐久性]
実施例4及び比較例1、2で作製したハニカムユニットから、ダイヤモンドカッターを用いて、直径:1inch、長さ:3inchの円柱状の試験片を切り出した。これらの試験片を、温度80℃に保持した炉内に静置し、キャリアガスとして窒素93質量%と水分7質量%を含有するガスを流量1L/分にて循環させ、24時間経過後、各試験片に対して上記「NOxの浄化性能」と同様の操作をしてNOxの浄化率[%]を算出した。以上の操作を1サイクルとし、このサイクルを6サイクル繰り返し、6サイクル目のNOx浄化性能の値を表1に記入した。
比較例1は、水和劣化耐久後のNOx浄化性能が74%と初期と比べて大きく低下したのに対して、実施例4では、水和劣化耐久後でも85%と高いNOx浄化性能を示した。
実施例1〜3のハニカムユニットについては、水和劣化耐久後のNOx浄化性能を評価していないが、SAPOとCHAの配合比率が異なるだけであるため、実施例4及び比較例2の水和劣化耐久後のNOx浄化性能の値から、85%以上のNOx浄化性能が得られると推測できる。
【0100】
【表1】
【0101】
表1及び図5より、実施例1〜4のハニカム構造体は、吸脱水による体積変化率が小さく、SCR触媒として用いた時にもクラックによる破損の恐れがなく、実施例4のハニカム構造体は、初期及び水和劣化耐久後でも85%以上の高いNOx浄化性能が得られることが分かる。
【符号の説明】
【0102】
10、10' ハニカム構造体
11、11' ハニカムユニット
11a 貫通孔
11b 隔壁
12 外周コート層
13 接着層
20 保持シール材
30 金属容器
100 排ガス浄化装置
図1
図2
図3
図4
図5