【実施例】
【0022】
(試験片の作成)
すずの添加量を8.0重量%、リンの添加量を0.2重量%、ニッケルの添加量を1.0重量とし、鉛の添加量を適宜変化させ、残りを銅として、合金材料1〜3、R1〜R4とした。
【0023】
合金材料1〜3、R1〜R4のそれぞれについて、溶解温度を1200℃として、金型鋳造方法によりインゴットを作製した後、加工率10%程度の冷間圧延加工と650℃前後の焼き鈍しを繰り返し、4回目の冷間圧延加工後に、実施例となる本発明の快削りん青銅棒線材1〜3及び比較例となる快削りん青銅棒線材R1〜R4を得た。
【0024】
実施例1〜3及び比較例1〜4のそれぞれについて、日本工業規格JIS Z2241 4号試験片を作成し、試験片1〜3、R1〜R4を得た。試験片1〜3、R1〜R4の分析結果を表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
すずの添加量を8.0重量%、リンの添加量を0.2重量%、鉛の添加量を0.5重量とし、ニッケルの添加量を適宜変化させ、残りを銅として、合金材料4〜6、R5、R6とした。
【0027】
合金材料4〜6、R5、R6のそれぞれについて、溶解温度を1200℃として、金型鋳造方法によりインゴットを作製した後、加工率10%程度の冷間圧延加工と650℃前後の焼き鈍しを繰り返し、4回目の冷間圧延加工後に、実施例となる本発明の快削りん青銅棒線材4〜6及び比較例となる快削りん青銅棒線材R5、R6を得た。
【0028】
実施例4、5及び比較例5〜7のそれぞれについて、日本工業規格JIS Z2241 4号試験片を作成し、試験片4〜6、R5、R6を得た。試験片4〜6、R5、R6の分析結果を表2に示す。
【0029】
【表2】
【0030】
すずの添加量を8.0重量%、リンの添加量を0.2重量%、ニッケルの添加量を1.0重量とし、鉛の添加量を適宜変化させ、残りを銅として、合金材料7、8、R7〜R9とした。
【0031】
合金材料7、8、R7〜R9のそれぞれについて、溶解温度を1200℃として、金型鋳造方法によりインゴットを作製した後、加工率10%程度の冷間圧延加工と650℃前後の焼き鈍しを繰り返した。この際、冷間圧延加工を1回加工する毎に面削仕上げを行い、加工率を調整した。そして、4回目の焼き鈍し後に、実施例となる本発明の快削りん青銅棒線材7、8及び比較例となる快削りん青銅棒線材R7〜R9を得た。
【0032】
実施例7、8及び比較例7〜9のそれぞれについて、日本工業規格JIS Z2241 4号試験片を作成した後、伸び率を比較しやすくするため、更に焼き鈍しを行い、試験片7、8、R7〜R9を得た。試験片7、8、R7〜R9の分析結果を表3に示す。
【0033】
【表3】
【0034】
(試験例1)鉛の含有量の違いによる切削試験
試験片1〜3、R1〜R4(実施例1〜3、比較例1〜4)のそれぞれを切断して、横断面を均一な状態とした。試験片の横断面における中心から半径Rの1/2の位置で、直径5.0mmのドリル、回転数1200rpm、送り速度1mm/秒、穴あけ深さ5mmで測定を行い、ドリルにセットされたトルクセンサーの数値をデータロガーで記録し、平均値を切削抵抗値とした。試験片1〜3、R1〜R4についての切削抵抗値を表4に示す。
【0035】
【表4】
【0036】
その結果、鉛の含有量が0重量%である試験片R1(比較例1)及び0.09重量%である試験片R2(比較例2)については切削抵抗が大きいのに対し、鉛の含有量が0.17重量%である試験片1(実施例1)、0.43重量%である試験片2(実施例2)及び0.58重量%である試験片3(実施例3)については、試験片R1及び試験片R2よりも切削抵抗が小さいため、被削性が向上したことがわかった。鉛の含有量を増加させれば、切削抵抗が小さくなり、被削性が向上することは容易に予測可能であるが、試験片1及び試験片2は、試験片3、試験片R3及び試験片R4よりも、鉛の含有量が少ないにもかかわらず、切削抵抗が低くなることもわかった。以上の結果は、Pbの含有量が0.15〜0.55重量%であることが好ましいという事実を示している。
【0037】
(試験例2)ニッケルの含有量の違いによる塑性加工性試験
試験片4〜6、R5、R6(実施例4〜6、比較例5、6)のそれぞれについて、株式会社島津製作所製の引張試験器(UMH−30)を用いて、負荷を加え、破断時の最大荷重及び伸びを測定して、引張強さと伸び率を計算した。試験片4〜6、R5、R6についての引張強さと伸び率を表5に示す。
【0038】
【表5】
【0039】
その結果、ニッケルの含有量が2.11重量%である試験片R6(比較例6)については伸び率が極端に低くなった。これにより、ニッケルの含有量が1.5重量%を超えた場合にはよい塑性加工性が得られないことが明確となった。
【0040】
また、ニッケルの含有量が0.01重量%である試験片R5(比較例5)については、伸び率が良好であるが、引張強さが小さく低強度であるため、十分な強度が得られないことが明確となった。
【0041】
一方、ニッケルの含有量が0.52重量%である試験片4(実施例4)、1.01重量%である試験片5(実施例5)、1.39重量%である試験片6(実施例6)は、引張強さが大きく高強度であるため、例えば、コンタクトプローブ用として、一部の快削ベリリウム銅合金棒線材の代替となり得ることが予測される。
【0042】
更に、引張強さと伸び率の両方の結果を考察すると、ニッケルの含有量が0.52重量%である試験片4(実施例4)及び1.01重量%である試験片5(実施例5)は、ニッケルの含有量が1.39重量%である試験片6(実施例6)と比べ、引張強さが大きく高強度で、伸び率もよいため、良好な強度と塑性加工性が得られることが明確となった。以上の結果は、ニッケルの含有量が0.45〜1.1重量%であることが好ましいという事実を示している。
【0043】
(試験例3)鉛の含有量の違いによる塑性加工性試験
試験片7、8、R7〜R9(実施例7、8、比較例7〜9)について、株式会社島津製作所製の引張試験器(UMH−30)を用いて、負荷を加え、破断時の最大荷重及び伸びを測定して、引張強さと伸び率を計算した。試験片7、8、R7〜R9についての引張強さと伸び率の測定値を表6に示す。
【0044】
【表6】
【0045】
その結果、鉛の含有量が多くなるほど、引張強さが小さく低強度となった。特に、鉛の含有量が0.77重量%である試験片R7(比較例7)、2.05重量%である試験片R8(比較例8)及び2.57重量%である試験片R9(比較例9)については、引張強さの測定値から十分な強度が得られないことが明確となった。
【0046】
また、鉛の含有量が0.39重量%である試験片7(実施例7)及び0.53重量%である試験片8(実施例8)については、破断状態はよかったが、試験片R7〜R9については、いずれも内部割れを起こしていた。この事実により、鉛の含有量が0.7重量%を超えると、冷間加工性が極端に低下することも明確となった。