(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873614
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】トルク制限された留め具の製造方法
(51)【国際特許分類】
F16B 31/02 20060101AFI20160216BHJP
F16B 35/04 20060101ALI20160216BHJP
F16B 13/06 20060101ALI20160216BHJP
E04B 1/41 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
F16B31/02 B
F16B35/04 P
F16B13/06 A
E04B1/41 503G
【請求項の数】7
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-532092(P2013-532092)
(86)(22)【出願日】2011年8月23日
(65)【公表番号】特表2013-543567(P2013-543567A)
(43)【公表日】2013年12月5日
(86)【国際出願番号】EP2011064449
(87)【国際公開番号】WO2012048932
(87)【国際公開日】20120419
【審査請求日】2014年8月4日
(31)【優先権主張番号】102010042260.6
(32)【優先日】2010年10月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100123342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 承平
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス エクスタイン
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ゴルト
(72)【発明者】
【氏名】マルク シェーファ
(72)【発明者】
【氏名】ヨルク アップル
(72)【発明者】
【氏名】アルエン テットマー ディックイス
【審査官】
保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭46−021134(JP,B1)
【文献】
実開昭61−141808(JP,U)
【文献】
特開平05−023857(JP,A)
【文献】
特開平09−164487(JP,A)
【文献】
特開昭56−111541(JP,A)
【文献】
特開昭59−009309(JP,A)
【文献】
特開2006−214577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B1/38−1/61
F16B13/00−13/14
23/00−43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルク制限された留め具の製造方法であって、
当該留め具は、各々留め付け工具のための接続手段を有する第1の頭部部材(11)と、当該第1の頭部部材(11)に、所定の限界トルクで剪断される溶接接続部により、取り付けられた第2の頭部部材(12)とからなり、
当該第1の頭部部材(11)および当該第2の頭部部材(12)とは、当該溶接接続部を形成するための溶接工程において、互いに溶接され、
少なくとも2つの当該溶接工程が、少なくとも1つの異なる溶接パラメータにより実施され、それにより当該溶接接続部が剪断される異なる限界トルクが得られる、
ことを特徴とするトルク制限された留め具の製造方法。
【請求項2】
前記トルク制限された留め具はコンクリート・アンカーに使用される留め具である、ことを特徴とする請求項1に記載の留め具の製造方法。
【請求項3】
前記トルク制限された留め具は、剪断ナットであり、前記第1の頭部部材(11)は多角形(13)の外観を有し、及び/又は前記第2の頭部部材(12)はめねじ(33)を有する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の留め具の製造方法。
【請求項4】
少なくとも2つの前記溶接工程は、異なる溶接電圧で実施され、当該溶接接続部が剪断される異なる前記限界トルクが得られる、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の留め具の製造方法。
【請求項5】
少なくとも2つの前記溶接工程は、異なる溶接電流強度で実施され、当該溶接接続部が剪断される異なる前記限界トルクが得られる、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の製造方法。
【請求項6】
少なくとも2つの前記溶接工程は、異なる加工温度で実施され、当該溶接接続部が剪断される異なる前記限界トルクが得られる、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の製造方法。
【請求項7】
少なくとも2つの前記溶接工程は、前記頭部部材(11、12)の間の異なるプレテンションを用いて実施され、当該溶接接続部が剪断される異なる前記限界トルクが得られる、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトルク制限された留め具、例えば剪断ナットまたは剪断ネジ、の製造方法に関する。それらは、各々、留め付け工具のための接続手段を有する第1の頭部部材と、所定の限界トルクでせん断される溶接接続部により第1の頭部部材に取り付けられた第2の頭部部材と、を有する。本製造方法は、同じ形状を有する複数の第1の頭部部材と第2の頭部部材とが提供され、それら第1の頭部部材および第2の頭部部材は、溶接接続部を形成する溶接工程において、いずれも互いに溶接される。
【背景技術】
【0002】
溶接接合によって互いに接続された、2つの頭部部材を有する剪断ナットまたは剪断ネジは知られている。これらのナットまたはネジが据え付けられる際は、第1の頭部部材に回転力を作用させるために留め付け工具が用いられる。この際、留め付け手順の初めには、回転力は溶接接合を介して第2の頭部部材に作用する。留め付け手順の最後に所定の限界トルクに達すると、第1の頭部部材は溶接接合のところで第2の頭部部材から剪断される。この剪断により第2の頭部部材に作用する最大トルクが制限される。
【0003】
このような剪断ナットは、例えば特許文献1に開示されている。この特許文献1によれば、これらの2つの頭部はレーザー溶接によって互いに接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/076295号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、数多くの異なる限界トルクを有する留め具を、容易にそして安価に製作することのできる、トルク制限された留め具の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、独立クレームの特徴事項により達成される。効果的な改良は従属請求項に示されている。
【0007】
本発明による方法は、異なる少なくとも1つの溶接パラメータを使用した、少なくとも2つの溶接工程が実施されるので、同じ形状を有するパーツについて異なる限界トルクが得られ得る、ことを特徴とする。
【0008】
本発明の基本的な考えは、限界トルクを設定するのに、パーツの形状を異ならせる、特に頭部部材の形状および寸法を異ならせる、あるいは溶接個所の数を異ならせる、ことが必要ないという点にある。むしろ、本発明によれば、少なくとも1つの溶接パラメータを異ならせることで、異なる限界トルクの状態が得られる。溶接パラメータが溶接箇所の破壊特性を決定するので、対象となる少なくとも1つの溶接パラメータを変形することにより、2つの頭部部材が相互に剪断される最大トルクの目標を確定できる。従って、本発明によれば、中間部材、すなわち頭部部材の形状を変化させずに、パーツの限界トルクを所定の要求に適合させることができる。結果として、苦労して生産工具を異なる形状に適合させる必要はない。同時に、在庫として1種類の頭部部材があればよいので、在庫費用を下げることができる。
【0009】
電気抵抗溶接が溶接法として使用される場合は、異なる溶接電圧を使用して少なくとも2つの溶接工程を実施できるので、特に好ましく、同じ形状を有するパーツについて異なる限界トルクが得られる。溶接電圧は、きわめて簡単な方法で変更され得る。この態様によれば、異なる少なくとも1つの溶接パラメータは溶接電圧である。しかしながら、他の溶接パラメータが異なってもよい。
【0010】
溶接法として電気抵抗溶接が使用される場合は、それに代えてまたはそれに加えて、異なる溶接電流強度により少なくとも2つの溶接工程が実施できるので都合が良く、同じ形状を有するパーツについて異なる限界トルクが得られる。溶接電流強度の変更は、工程制御がきわめて良いことを意味する。この態様によれば、異なる少なくとも1つの溶接パラメータは溶接電流強度である。しかしながら、他の溶接パラメータが異なってもよい。
【0011】
さらに、少なくとも2つの溶接工程が、異なる加工温度を用いて実施されると都合がよく、それにより同じ形状を有するパーツについて異なる限界トルクが得られる。この態様によれば、異なる少なくとも一つの溶接パラメータは加工温度である。しかしながら、他の溶接パラメータが異なっていてもよい。加工温度は、電気的ではない溶接法が使われるときにも、確定パラメータとして利用され得る。
【0012】
別の好ましい態様は、少なくとも2つの溶接工程を、頭部部材の間に異なるプレテンションをかけて実施することにより、同じ形状を有するパーツについて異なる限界トルクが得られる。この態様によれば、異なる少なくとも1つの溶接パラメータは、溶接の際接続されることとなる頭部部材各々の間に存在するプレテンションである。しかしながら、他の溶接パラメータが異なっていてもよい。互いに溶接されることとなる頭部部材間のプレテンションを変更することにより、きわめて幅広い限界トルク範囲を呈するパーツを製作できる。
【0013】
このトルク制限された留め具は、例えば剪断ナットであってよい。この場合、第1の頭部部材は外形が多角形を有し、及び/又は、第2の頭部部材はめねじを有する、と都合が良い。この留め具は例えば、剪断ネジであってもよい。この場合、第1の頭部部材は外形が多角形を有し、及び/又は、第2の頭部部材はおねじを有する軸部部材を備えている、と都合が良い。多角形の外形は、特に六角形であり得る。
【0014】
本発明による留め具をアンカーに、特にコンクリート・アンカーに使用すると、溶接接続部が剪断されれば、正しい締付けトルクが与えられたことが明白になるので、トルク・レンチを使用することなくアンカーの正しい据付けを確認できる。剪断された後の第2の頭部部材上に残る溶接の残渣により、トルク制限された留め具が使われたことを後に特定できる。これらの残渣により、留め具またはアンカーが設置されたずっと後でも、必要なトルクが作用したかどうか検査できる。これは検査手法として有用な特徴である。
【0015】
従って、留め付け工具のための接続手段を有する第1の頭部部材と、所定の限界トルクでせん断される溶接接続部によって第1の頭部部材に連結される第2の頭部部材と、を有するトルク制限された留め具であって、特にアンカー、特にコンクリート・アンカーを設置するために本発明による方法により製作された留め具を使用することも、本発明に含まれる。
【0016】
本発明は、好ましい態様を基礎として、以下更に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】トルク制限された留め具の、本発明による溶接工程中の実施例を示す図である。
【
図2】本発明によるトルク制限された留め具を示す図である。
【
図3】限界トルクに達した後の、
図2の留め具を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、剪断ナットとして構成された、本発明によるトルク制限された留め具の製造方法を概略的に示す。示される剪断ナットは、第1の頭部部材11を有し、その外形は六角形に構成される外付けのポリゴン31であり、そこへ回転工具が接続される。さらに、剪断ナットは、めねじ33が形成される貫通孔32を有する第2の頭部部材12を備える。第1の頭部部材11も、内径が第2の頭部部材12のめねじ33のそれより大きい貫通孔34を有するので、第2の頭部部材12のめねじ33に適合するねじ付きロッドは、第1の頭部部材11の貫通孔34を自由に通ることができる。第1の頭部部材11の表面には、第1の頭部部材11の表面から突出するフット部材38が設けられ、それが第2の頭部部材12との溶接接合を形成する。
図1の実施例では、各々が三角柱の形状を有する3つのフット部材38が設けられている。
【0019】
図1に示されているように、整列配置された穴32および34を有する留め具が製作される場合、2つの頭部部材11および12は、第1の頭部部材11のフット部材38が第2の頭部部材12の上に載った形で配置される。電気抵抗溶接のために、2つの頭部部材11および12は、電源40の対向する電極に接続されて電流を流される。この工程で、2つの頭部部材11と12の間に溶接接続部がフット部材38に形成される。
【0020】
本発明によれば、同じ形状を有する頭部部材11および12が常に用いられる。にもかかわらず、溶接接続部で異なる限界トルクを有する留め具を得るために、溶接の際異なるプロセス・パラメータが選択される。このように、例えば、電圧源40による出力である電圧及び/又は頭部部材11および12を通って流れる電流を、溶接の際に異ならせることができる。それに代えて又はそれに加えて、溶接部所の加工温度Tを異ならせることができる。他の代案として又は他に加えて、プレテンション、すなわち頭部部材11および12が溶接の際に互いに押圧される接触力Fを異ならせることもできる。
【0021】
図2および
図3は本発明により製作された、アンカー50に溶接された頭部部材11および12からなる留め具の使用状態を示す。
図2に示されるように、頭部部材11および12は据付け前に互いに接続されている。
図3に示すように、一旦限界トルクに達すると、トルクが作用した第1の頭部部材11は第2の頭部部材12から剪断されるので、第2の頭部部材12はそれ以上きつく締められない。