(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0021】
[画像形成装置の構成例]
図1は、一般的な画像形成装置の概略構成を示す模式図である。画像形成装置は、トナー及びキャリアを含む2成分現像剤を用いるものであり、現像剤を担持して感光体ドラム102にトナーを供給する現像ローラー104と、現像剤を攪拌して摩擦によりトナー粒子を帯電させる第1及び第2の攪拌スクリュー106,108と、これらを収容保持する現像ケース110とを有している。
【0022】
2成分現像剤を用いる現像装置では、現像剤としてトナーとキャリアを混合したものを用いている。現像領域では、トナーのみが消費されキャリアは、再利用される。消費されたトナーを補給するため、あらかじめ印刷したトナー量をビットカウント(Bit Count)などで計測して予測し、また、トナー濃度センサーで検出された不足分を補給する。近年の画像形成装置は、デジタル化が進み、レーザースキャナー(Laser Scanner)やLEDヘッドなどのデジタル露光装置により画像を形成する。そのため、描画量をデジタル的に把握して計算できるためトナーの時間的な消費量を予想して補給することができる。一方、実際のトナー消費量は、使用状況の環境や電子写真部材の使用状況で変化する。また、トナー補給装置も機構部品のため機械的な寸法のばらつき等により補給量が変化する。そのためトナー濃度センサーなどで確認して補給することが望ましい。
【0023】
トナー補給装置は、トナーを定量的に補給するためスポンジや溝を切ったシャフトの補給ローラーを狭い隙間を通過させるなどの構成をしている。補給トナーは、2次粒子以上の凝集した状態で現像器内の現像剤の中に投入される。投入されたトナー粒子群は、現像剤のキャリア表面と接触し、帯電してキャリアの表面に付着する。この過程でトナーが適正に帯電され、キャリア表面に担持されていく。投入されたトナー粒子群は、この状態になって初めて現像可能な状態となる。混合攪拌装置は、例えば
図1のようなスクリューによる循環方式でトナーを現像剤中に投入し、搬送しながら混合攪拌、分散、帯電付与して現像ローラー104などの現像領域に搬送される。
【0024】
図1において、現像ケース110は、第1及び第2の攪拌スクリュー106,108がそれぞれ配設される第1及び第2の攪拌室112,114を備え、第1の攪拌室112は、現像ローラ104に近接配置されて現像剤を現像ローラー104に接触させるようにしている。
【0025】
現像ケース110では、第1及び第2の攪拌室112,114の間で現像剤が循環搬送されるように、両攪拌室112,114を仕切る仕切壁116の両端部に、その仕切壁116を貫通するように、第1の攪拌室112から第2の攪拌室114へ現像剤を受け渡す通路と、第2の攪拌室114から第1の攪拌室112へ現像剤を受け渡す通路とが設けられている。
【0026】
ところで、プリンターなどの画像形成装置においては、更なる高速化が進み、最近ではプロセススピードが300mm/sを超える高速化された装置が出現している。また、高速化とともに、A3サイズの装置からA4サイズ(またはレター(Letter)サイズ)の装置への移行、パドルを含む3軸構成から2軸螺旋撹拌スクリューへの移行、現像ユニット内で使用する現像剤の低量化(400gから半減の200gへ)などの要請により、装置の小型化も進行している。
【0027】
このような要請により、より限られた空間内でより高速にトナーを攪拌する必要が生じており、
図1に示すような2軸タイプの現像ユニットの構成では、もはや限界となっている。このため、本実施形態では、トナーの混合撹拌を円滑に進めるために、予備撹拌を行う。予備撹拌を用いると、2軸の螺旋撹拌スクリュー外径は、レイアウト構成に対する影響が小さくなるために、現像ローラー104の外径よりも大幅に小さくすることも可能となる。
【0028】
図2は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置10の構成を示す模式図であってローラーの軸方向から見た状態を示している。本実施形態による画像形成装置10は、画像信号に応じて変調されたレーザービーム12を感光体ドラム14へ走査露光して、乾式電子写真方式により紙やプラスチックシートなどの印字媒体15へ印字等を行うものである。画像形成装置10は、レーザープリンター、レーザーファクス、デジタル複写機などとして、あるいはその一部として用いることができる。画像形成装置10は、トナーとキャリアとからなる2成分現像剤を用いて印字等を行うものである。
【0029】
画像形成装置10は、レーザービーム12を射出するレーザー露光ユニット(図示省略)を備えている。レーザー露光ユニットは、微小スポットに結像されたレーザービーム12を、感光体ドラム14上の露光位置aにおいて、感光体ドラム14の回転軸に平行な直線上を一定方向に走査するものである。感光体ドラム14の表面にレーザービーム12が走査されると、感光体ドラム14の露光部分が非露光部分に対して相対的に正電位となる。
【0030】
感光体ドラム14上の露光位置aの下流側には、現像ローラー16が配置されている。また、現像ローラー16と隣接して、現像ユニット18が配置されている。現像ユニット18内には、トナーとキャリアとからなる2成分現像剤Cが貯留されている。現像ユニット18内の2成分現像剤Cは、現像ユニット18内の第1の搬送スクリュー20によって軸方向に移動し、現像ローラー16の磁力によって現像ローラー16の表面に付着する。現像ローラー16上に供給された2成分現像剤Cのうち、負電位に帯電したトナーは、電位差によって現像ローラー16から感光体ドラム14の表面に供給される。一方、キャリアは、現像ローラー16の表面から現像ユニット18内に回収される。
【0031】
現像ユニット18内には、所定の色を有する粉体のトナーと、金属粉体のキャリアとからなる2成分現像剤Cが貯留されている。一例として、トナーは、直径7〜8μm程度のポリエステル粒子に、顔料、CCA、PMMAなどが含まれたものである。また、一例として、キャリアは、直径35〜60nm程度のフェライト粒子にシリコンコーティングが施されたものである。
【0032】
また、現像ユニット18には、透磁率センサ(不図示)が設けられており、2成分現像剤Cの総重量に対するトナーの重量%が所定値となるように、現像ユニット18へのトナーの供給量が調整される。
【0033】
図3は、現像ユニット18を
図2の上部から見た状態を示す模式図である。現像ユニット18内には、2成分現像剤Cを軸方向(矢印A1方向)に搬送する第1の搬送スクリュー20が設けられている。また、現像ユニット18内には、第1の搬送スクリュー20と平行に第2の搬送スクリュー22が配置されており、第1の搬送スクリュー20と第2の搬送スクリュー22との間には、仕切壁24が設けられている。第1の搬送スクリュー20によって搬送された2成分現像剤Cは、現像ローラー16に供給されながら、矢印A1方向に進み、仕切壁24の端部に設けられた通路から第2の搬送スクリュー22側の搬送室に入り、第2の搬送スクリュー22によって矢印A2方向に搬送される。
【0034】
現像ユニット18内で2成分現像剤Cが攪拌されると、トナーは負に帯電し、キャリアは正に帯電する。このとき、トナーの帯電量は、例えば−25〜−15[μC/g]程度である。これにより、負に帯電したトナーは、正に帯電したキャリアの表面に付着する。この際、現像ユニット18内に貯留されているトナーの重量%を6〜10%程度とすると、キャリアの表面積の60〜80%程度にトナーが付着した状態となる。
【0035】
トナーが付着したキャリアは、第1の搬送スクリュー20によって矢印A1方向に搬送されながら、現像ローラー16の表面に送られる。そして、現像ローラー16の磁力によって、トナーが付着したキャリアは、現像ローラー16の表面に付着する。
【0036】
[予備攪拌部の構成] 次に、現像ユニット18の予備攪拌部30について説明する。
図3に示すように、現像ユニット18の端部には、予備攪拌部30が設けられている。予備攪拌部30には、攪拌スクリュー32が設けられている。
図2に示すように、予備攪拌部30は、感光体ドラム14、現像ローラー16、第1の搬送スクリュー20、及び第2の搬送スクリュー22よりも大きな直径を有して構成されている。予備攪拌部30は、第1の搬送スクリュー20、及び第2の搬送スクリュー22が配置された攪拌部と、搬送通路を介して接続されている。予備攪拌部30で混合された2成分現像剤は、搬送通路から第1の搬送スクリュー20の端部20aの位置に供給され、第1の搬送スクリュー20によって搬送される。
【0037】
上述したように、トナーが付着したキャリアは、第1の搬送スクリュー20によって矢印A1方向に搬送されながら、現像ローラー16の表面に送られた後、第2の搬送スクリュー22によって
図3中の矢印A2方向に搬送される。このため、第2の搬送スクリュー22によって搬送された2成分現像剤Cにおいては、総重量に対するトナーの重量%が低下している。このため、トナーの重量%が低下した2成分現像剤Cは、第2の搬送スクリュー22によって予備攪拌部30に送られて、予備攪拌部30にて新たにトナーが投入される。
【0038】
図3に示すように、新たにトナーが供給される位置は、予備攪拌部30の端部である。第2の搬送スクリュー22によって予備攪拌部30に供給された2成分現像剤Cは、攪拌スクリュー32の回転によって、新たに投入されたトナーと混合されながら、予備攪拌部30内を矢印A3方向に送られる。そして、本実施形態においては、予備攪拌部30内で新たに投入されたトナーは、予備攪拌部30内でキャリアに付着してマイナスの電位に帯電されて、第1の搬送スクリュー20の端部20aの位置に送られる。第1の搬送スクリュー20の端部20aの位置に送られた2成分現像剤Cは、第1の搬送スクリュー20によって矢印A1方向に送られて、現像ローラー16へ供給される。
【0039】
このように、本実施形態では、予備攪拌部30を大径に構成することで、新たに投入したトナーを予備攪拌部30内で完全にキャリアと混合することができ、所定の電位に帯電した状態とすることができる。
【0040】
従って、本実施形態では、
図2のトナー供給位置でトナーが供給されてから、トナーが第1の搬送スクリュー20の端部20aの位置に到達するまでの時間T(以下、混合攪拌に必要な時間という)の間に、トナーとキャリアの混合を完了することができ、トナーを負電位にすることができる。
【0041】
これにより、2成分現像剤Cが第1の搬送スクリュー20によって搬送される際には、トナーは既にマイナスの電位に帯電しているため、現像ローラー16に対してプラスの電位に帯電したトナーが供給されることを確実に抑止できる。
【0042】
本実施形態では、主攪拌部の側部に大径の予備攪拌部30を設けている。このような構成により、
図1に示したような、断面積の小さい第1及び第2の攪拌スクリュー106,108で混合を行う場合と比較すると、新たに投入されたトナーとキャリアとを確実に混合することができる。そして、予備攪拌部30における攪拌のみで、トナーの電位を確実に負電位にすることができる。
【0043】
そして、予備攪拌部30におけるこのような攪拌を実現するため、本実施形態では、予備攪拌部30内での2成分現像剤Cの量(新たに投入されたトナーを含む)と、攪拌スクリュー32のピッチ、攪拌スクリューの回転数R、混合攪拌に必要な時間Tとの間に所定の関係を成立させている。
【0044】
以下、これらの関係について詳細に説明する。
図4は、予備攪拌部30の構成を示す模式図であって、攪拌スクリュー32の軸方向から予備攪拌部30を見た状態を模式的に示している。
図4に示すように、予備攪拌部30には、攪拌スクリュー32が設けられている。
図4に示すように、本実施形態では、予備攪拌部30において、2成分現像剤C(新たに投入されたトナーを含む)によって攪拌スクリュー32が完全に埋まらないように、攪拌スクリュー32の外径の最上部から予備攪拌部30内の2成分現像剤Cの表面までの間に距離rを確保するようにしている。
【0045】
非特許文献1には、
図1に示したような2軸の螺旋撹拌スクリュー(Auger)を用いた2成分磁気ブラシスクリュー現像における画像濃度均一性の研究に於いて、マグローラー(Mag Roller;本実施形態の現像ローラー18に相当)上の両端における現像剤のトナー濃度差ΔCtと、現像剤の搬送量Wの関係(以下の(1)式)が示されている。ここで、現像剤搬送量Wは、現像ユニットが単位時間に搬送する現像剤の量(g/s)である。また、(2)式は、現像剤搬送量Wと、搬送(現像剤)断面積S、スクリューのピッチP、スクリューの回転数Rとの関係を示す式である。また、(3)式は、
図4に示す状態において、現像剤の断面積S(
図4中にドットを付した領域の面積)を算出する式である。
【0046】
ΔCt= (M/A)*V*L/W ・・・(1)
W=η*ρ*S*P*R ・・・(2)
S=π*(D/2+G)
2/2 +(D+2*G)*d−π*(d/2)
2 ・・・(3)
【0047】
また、上式において、
P:スクリューのピッチ(Pitch)
R:スクリューの回転数
D:スクリュー外径
d:スクリュー軸径
G:スクリューとケーシング(Casing)の間隙(
図4参照)
ΔCt:トナー濃度差
M/A:感光体(感光体ドラム14)上のトナー付着量
V:感光体(感光体ドラム14)の周速
L:現像幅(現像ローラー16、感光体ドラム14の有効長)
W:現像剤搬送量
η:搬送効率
ρ:現像剤嵩密度
S:搬送(現像剤)断面積
である。
【0048】
(1)式から、現像剤搬送量Wが多くなるほど、トナー濃度差ΔCtを低下できることが判る。
図5は、本実施形態が想定する各条件を示す模式図である。
図5において、条件1は、300mm/s程度の高速化は想定していない従来までの条件を示しており、プロセススピード(感光体周速V)は161mm/s程度である。一方、条件2、条件3は、本実施形態に係る画像形成装置10が想定している条件であり、300mm/s以上のプロセススピードを想定している。また、条件1は、A3サイズの印字媒体15を想定したもので、現像幅は294mmと比較的大きな値となっている。一方、条件2、条件3は、A4サイズ(またはレター(Letter)サイズ)の印字媒体15を想定したもので、現像幅は220mmと小さい。
【0049】
プロセススピードの高速化に応じて、新たに投入されたトナーとキャリアとをより高速に混合する必要が生じる。また、
図1から判るように、現像幅が少なくなると、第1及び代2の攪拌スクリュー106,108によって攪拌される距離が減るため、トナーとキャリアを混合する観点からは不利となる。
図5に示すように、条件1〜3のいずれにおいても、トナー濃度差ΔCtは1%以下を想定している。マグローラー両端における現像剤のトナー濃度差ΔCtが1%を超えると、用紙の両端での濃度差が目立つためである。本実施形態では、これらの要因を大径の予備攪拌部30を設けることによって解決する。
【0050】
(1)式より、トナー濃度差ΔCtと現像ユニット18の現像剤搬送量Wとの関係が求まる。
図6は、式(1)における、マグローラー(Mag Roller)上のトナー濃度差ΔCtと、現像剤搬送量Wとの関係を示す特性図である。ΔCtは、1.0%を超えると印字媒体15上での濃度差が認識されてしまうため、1.0%以下を目標値とする。
図6は、
図5の条件1、条件2、条件3のそれぞれについて、トナー濃度差ΔCtと現像剤搬送量Wとの関係を示している。
図6に示すように、現像剤搬送量Wが多くなるほど、トナーとキャリアを効率良く混合できるため、トナー濃度差ΔCtは小さくなる。
【0051】
図7は、
図6の条件1、条件2、条件3のそれぞれについて、トナー濃度差ΔCtを1%以下にするための現像剤搬送量Wを示す模式図である。
図6によれば、トナー濃度差ΔCtを1%以下にするためには、
図7に示すように、条件1の場合は現像剤搬送量Wを28g/s以下、条件2の場合は現像剤搬送量Wを47g/s以下、条件3の場合は現像剤搬送量Wを37g/s以下とする必要がある。
【0052】
一方、現像剤を搬送するスクリューの回転数は、軸受部の温度上昇、現像剤に対するストレスなどの要因を考慮すると、500rpm近傍とするのが好ましく、ここでは、スクリューの回転数を500rpmとする。Wの値が条件1〜3のぞれぞれで求まり、R=500rpmであることから、式(2)より、必要とされる搬送(現像剤)断面積SとピッチPの関係を求めることができる。
【0053】
図8は、面積SとスクリューのピッチPとの関係を、条件1(W=28g/s)、条件2(W=47g/s)、条件3(W=37g/s)のそれぞれについて示す特性図である。スクリューの回転数は500rpmとしている。このように、スクリューの面積Sを大きくするほど、また、ピッチPを大きくするほど、現像剤搬送量Wを増加することができる。
【0054】
ところで、スクリューの内径は、強度上の観点から、下限値を6mmとする必要がある。このため、スクリューの内径は最小の6mmとする。また、スクリューとハウジングの隙間Gは、公差内で両者が接触しない隙間にする必要があり、G=1とする。このため、
図8に示す結果に対して、式(3)を導入することにより、スクリューの外径DとピッチPとの関係を求めることができる。
図9は、スクリューの外径Dと、ピッチPとの関係を、条件1(W=28g/s)、条件2(W=47g/s)、条件3(W=37g/s)のそれぞれについて示す特性図である。
【0055】
図9に示すように、攪拌スクリュー32の外径Dを大きくするほど、また、ピッチPを大きくするほど、現像剤搬送量Wを増加することができる。従って、本実施形態のように、予備攪拌部30の攪拌スクリュー32を大径にすることによって、現像剤搬送量Wを増加することができ、この結果、トナー濃度差ΔCtを小さくすることができる。一例として、
図9によれば、現像剤搬送量W=37g/sを確保するためには、攪拌スクリュー32の外径D=400mmとし、ピッチP=3mmとすることにより実現可能である。
【0056】
一方で、上述したように、現像ユニット18内に存在する現像剤量mは、現像ユニット18の小型化のために低量化の傾向にあり、従来は350g程度であったが、本実施形態では、200g程度を想定している。また、現像ユニット18内に存在する現像剤量と、現像剤搬送量Wとから、2つのスクリューで現像ユニット内を周回させる構成において、現像剤が現像ユニット内を1周する際に要する時間を求めることができ、2軸系の混合撹拌に必要な時間が求められる。
図10は、条件1(W=28g/s)、条件2(W=47g/s)、条件3(W=37g/s)のそれぞれについて、現像剤量mと、現像剤が現像ユニット内を1周する時間T1、混合攪拌の時間T2を示す模式図である。
図10に示すように、本実施形態においては、条件2及び条件3における現像ユニット18内の現像剤量mを200gとする。一方、従来の条件1における現像剤量mは350gである。現像剤が現像ユニット内を一周する時間T1は、現像剤量m(g)を現像剤搬送量W(g/s)で除算することによって算出できる。また、混合攪拌の時間T2は、2軸のスクリューを有する構成において、往路のみで攪拌を行う場合の時間であり、現像剤が現像ユニット内を1周する時間T1の1/2の値である。
【0057】
図10に示すように、本実施形態(条件2、条件3)では、混合攪拌の時間T2が、従来(条件1)の混合撹拌の1/2〜1/3程度になることが判る。従って、大径のスクリューを使用した予備攪拌部30を設けた場合に、現像ユニット18自体の大きさを従来と同様のままにして、トナー濃度差ΔCtを最小に抑えるともに、混合撹拌の時間も短くする必要がある。
【0058】
ここで、
図11は、
図3で説明した混合攪拌の時間Tをより詳細に説明するための模式図である。
図11は、攪拌スクリュー100によって2成分現像剤Cを矢印A4方向に搬送しながら攪拌する場合に、
図11に示すトナー供給位置で供給されたトナー110が2成分現像剤Cと混ざる様子を模式的に示している。
【0059】
図11に示すように、トナー供給位置新たにトナー101を供給すると、トナー101の比重は2成分現像剤Cよりも小さいため、投入された直後は、トナー101は2成分現像剤Cと混ざることなく、トナー101は2成分現像剤Cの上に積層した状態となる。その後、トナー101及び2成分現像剤Cが矢印A4方向に搬送されていくと、時間の経過とともに、トナー101が2成分現像剤Cと混合されていき、トナー110が2成分現像剤Cのキャリアに付着していく。これにより、トナー101が
図11の左に進むほど、2成分現像剤Cの上のトナー110の厚さが薄くなり、地点Bに達するとトナー101が完全に2成分現像剤Cと混合された状態となる。
【0060】
本実施形態では、
図11において、トナー供給位置で新たにトナー101を供給した後、供給したトナーが地点Bに到達して完全にキャリアと混合されるまでの時間を混合攪拌に必要な時間Tと定義する。
図10で説明したように、本実施形態の条件2、条件3のように現像ユニット18内の現像剤量を200gまで少なくすると、時間T2がより小さくなるため、混合攪拌の時間Tの値も十分に小さくする必要があり、条件2の場合は2.1秒、条件3の場合は2.7秒程度まで小さくする必要がある。従って、高速プロセスである条件2、条件3を達成するためには、より短時間でトナーをキャリアに混合する必要があり、混合攪拌に必要な時間Tを可能な限り小さくする必要がある。
【0061】
従って、
図9の結果から、攪拌スクリュー32を大径にし、かつピッチPを大きくして所望の現像剤搬送量Wを確保するとともに、混合攪拌に必要な時間Tを最小限に抑える必要がある。この点に関し、本発明者は、混合撹拌に必要な時間Tは、
図4で説明したrの値と、スクリューの回転数R、スクリューのピッチPとの間で下式(4)のような関係があることを見出した。
T>α・P/(r・R) ・・・(4)
【0062】
換言すれば、混合撹拌に必要な時間Tは、rが大きいほど小さくなる。また、時間Tの値はRが大きいほど小さくなる。更に、Tの値はピッチPが小さいほど小さくなる。ここで、
図15〜
図17に基づいて、式(4)が成立する根拠について説明する。先ず、実際の装置を用いて、回転数R=500rpm、P=15mmとして、rとTの関係を実験によって求めたところ、
図15に示す結果が得られた。
図15の結果から、rが大きくなると時間Tは小さくなることが判明した。また、同様にして、r=3mm、P=15mmとして、RとTの関係を実験によって求めたところ、
図16に示す結果が得られた。
図16の結果から、Rを大きくすると、Tの値が小さくなることが判明した。また、回転数R=500rpm、r=3mmとして、PとTの関係を実験によって求めたところ、
図17に示す結果が得られた。
図17の結果から、Pを大きくするとTの値が大きくなることが判明した。従って、αを係数として、式(4)の関係が成立することが判明した。
【0063】
図9によれば、予備攪拌部30において、外径Dが40mm程度の大径の撹拌スクリュー32を用いる場合、攪拌スクリュー32のピッチPは3mm程度(W=37g/sの場合)となる。
図12は、混合攪拌に必要な時間Tと、
図4に示すrの値との関係を示す特性図であって、撹拌スクリュー32の外径Dを40mmとし、スクリューのピッチPが14mmである場合の理論値と実験値(実測値)、及び、ピッチPを3mmとした場合の理論値と実験値を示す特性図である。ここで、理論値は、(4)式を表したものであり、(4)式の不等号を等号にした場合のrとTの関係を示す特性曲線である。また、実験値は、外径Dが40mmの攪拌スクリュー32を実際に用いて、rの値を変えながら時間Tを測定して得られた値である。なお、時間Tは、搬送経路の任意の位置にトナーの電荷の分布を測定するセンサー(帯電量分布測定器)を配置し、トナー供給位置から最も近い地点であって、正電位のトナーが存在しない地点(
図11中の地点B)にトナーが到達するまでの時間を測定することによって得ることができる。このように、rとTの関係を求めると、
図12の理論値と実験値が得られ、この結果から式(4)の定数αを求めると、α=20であることが判明した。
【0064】
図12の結果から、ピッチPを3mmとした場合、
図10で説明した2秒程度まで混合攪拌に必要な時間Tを小さくするためには、rの値を3mm以上確保すれば良いことが判る。
【0065】
このように、予備攪拌部30において、rとTの関係が(4)式を満たすことにより、混合攪拌の条件が満たされ、予備攪拌部30から
図3の矢印A3方向に搬送され、第1の搬送スクリュー20の端部20aに到達したトナーが全て負に帯電していることになる。従って、(4)式を変形することにより、大径の予備攪拌部30を設けた場合に、必要とされるrとTの関係は以下の(5)式で表すことができる。
r>α・P/(R・T) ・・・(5)
【0066】
一例として、予備撹拌部30の外径Dの大きさを40mm、内径を6mm、回転数Rを500rpm(8.3rps)とすると、
図9の結果からピッチPは3mm程度(条件3;W=37g/sの場合)となる。このとき、rの値を7mmにすれば、(4)式、(5)式より混合攪拌に必要な時間Tは1秒程度となる。
【0067】
従って、大径の攪拌スクリュー32を設けた際に、(5)式を満たすように予備攪拌部30及び攪拌スクリュー32を構成し、必要なrの値を確保することで、混合攪拌に必要な時間Tを所望の時間に設定することが可能である。
【0068】
次に、本実施形態による予備攪拌部30の具体的な適用例について説明する。
図13は、感光体ドラム14をφ30、現像ローラー16をφ20、第1の搬送スクリュー20をφ18とし、現像ユニット18におけるトナーとキャリアの撹拌機能を予備撹拌部30のみで実施する構成を示している。攪拌スクリュー32の外径は400mmとする。(5)式を満たすことにより、予備攪拌部30でトナーとキャリアが完全に混合されて、第1の搬送スクリュー20の端部20aの位置に供給される。これにより、第1の搬送スクリュー20、第2の搬送スクリュー22には、混合が完了した2成分現像剤Cを搬送する機能のみ持たせることができる。従って、第1の搬送スクリュー20及び第2の搬送スクリュー22には、攪拌機能が必要なく、搬送機能のみを持たせれば良いため、第1の搬送スクリュー20及び第2の搬送スクリュー22の外径を大幅に縮小することができ、
図13に示すプロセス(処理)ユニットを大幅に小型化することが可能となる。
図13の例による配置では、作図上から、横幅を60mm〜70mm程度、高さを40mm〜50mm程度まで縮小することができる。従って、
図13に示す構成のプロセスユニット断面積を大幅に縮小することができ、(
図13の例では、3500mm
2以下)、複数の色を印刷可能なカラープリンタ等の場合、隣接する他色のプロセスユニットとの間のプロセス間ピッチも小さくすることができる。
図13の例では、左右の幅が最大70mmであるため、プロセス間ピッチを70mm以下に抑えることが可能となる。
【0069】
また、
図13において、感光体ドラム14の外径が30[mm]以下とした場合に、予備攪拌部30の断面積をS1[mm
2]、感光体ドラム14の断面積をS2[mm
2]、現像ローラー16の断面積をS3[mm
2]、第1の搬送スクリュー20の断面積をS4[mm
2]とすると、以下の式(6)が成立する。
S1
<S2+S3+S4 ・・・(6)
【0070】
また、
図13は、予備攪拌部30の攪拌スクリュー32の回転方向による現像剤の流れを考慮して、予備攪拌部30から第1の攪拌スクリュー20への現像剤の受け渡し位置を設定した例を示す模式図である。
図13に示すように、予備攪拌部30の攪拌スクリュー32が矢印A10方向に回動する場合、
図13中にドットを付して示す2成分現像剤Cは、攪拌スクリュー32の回動に伴って予備攪拌部30内での表面が傾斜する。このため、予備攪拌部30と第1の搬送スクリュー20が設けられた搬送室とが連通する搬送通路を
図13中に一点鎖線Bで示す領域内に設けることで、搬送通路内に現像剤が完全に充填されてしまうことを回避でき、搬送通路内に空隙を確保することができるため、第1の攪拌スクリュー20への2成分現像剤Cの移動を効率良く行うことができる。
【0071】
図14は、大径の予備撹拌部30を用いて、プロセスピッチ間を最小にした例を示す模式図である。
図14に示すように、第1の搬送スクリュー20を第2の搬送スクリュー22よりも下に配置することで、
図13の構成よりもプロセス間ピッチを小さくすることができる。この場合、プロセス間ピッチを50mm〜60mm程度まで小さくすることが可能である。
【0072】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。