特許第5873635号(P5873635)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873635
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】単糖含有組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 19/02 20060101AFI20160216BHJP
   C13K 1/00 20060101ALI20160216BHJP
   A23K 20/00 20160101ALN20160216BHJP
【FI】
   C12P19/02
   C13K1/00
   !A23K1/16 304C
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2011-24976(P2011-24976)
(22)【出願日】2011年2月8日
(65)【公開番号】特開2012-161292(P2012-161292A)
(43)【公開日】2012年8月30日
【審査請求日】2014年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】100156845
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 威一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100112896
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 宏記
(72)【発明者】
【氏名】小林 久美子
(72)【発明者】
【氏名】中村 亮太
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 安彦
【審査官】 原 大樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−074993(JP,A)
【文献】 特開2010−057464(JP,A)
【文献】 特開平11−113600(JP,A)
【文献】 特開2008−141998(JP,A)
【文献】 特開2009−189291(JP,A)
【文献】 特開平01−312997(JP,A)
【文献】 特開2000−139490(JP,A)
【文献】 特開平11−137288(JP,A)
【文献】 特開2000−070000(JP,A)
【文献】 特開2009−067758(JP,A)
【文献】 Phytochemistry,1998年,Vol.48, No.3,p.479-484
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 1/00−41/00
B09B 1/00−5/00
B09C 1/00−1/02
1/06−1/10
C13B 5/00−99/00
C13K 1/00−13/00
MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/WPIDS/WPIX/CAplus(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
pH0.5〜2.5、反応温度60〜120℃、反応時間0.1〜18時間の条件下、ヘミセルロースを含有する植物を前加水分解処理に供する工程と、
前記前加水分解処理により得られた溶液を固液分離してヘミセルロース残渣を得る工程と、
前記ヘミセルロース残渣を、マンナナーゼ、ガラクトマンナナーゼ、グルコマンナナーゼ、及びβ―マンノシダーゼから選ばれる少なくとも1種の酵素を用いた酵素分解処理である本加水分解処理に供する工程と、
を備えており、
前記ヘミセルロースを含有する植物として、コプラミール、パーム核ミール、こんにゃく芋、グアー豆から選ばれる少なくとも1種を用いることを特徴とする、マンノースを主体とする単糖含有組成物の製造方法。
【請求項2】
ヘミセルロースが、マンナン、グルコマンナン、ガラクトマンナンから選ばれる少なくとも1種を構成成分とすることを特徴とする請求項1記載の単糖含有組成物の製造方法。
【請求項3】
前加水分解処理に用いる酸が、塩酸、硫酸、シュウ酸、リン酸、クエン酸、フマル酸から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の単糖含有組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単糖含有組成物の製造方法に関するものであり、さらに詳しくは単糖の遊離量を増加でき、且つ精製工程の簡略化が可能な単糖含有組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マンノース等の単糖類は、様々な生理活性作用が報告されており、機能性糖質として注目されている。例えば、マンノースには、マクロファージの活性化による傷の治癒の促進や細菌感染阻害、乳がん細胞の増殖抑制といった様々な機能が存在することが細胞レベルで解明されてきている。最近では、マンノースの経口投与により、糖尿病性白内障の進行を抑制したり先天的糖化障害において症状が改善するという報告もある。従って、今後、マンノース等の単糖類は、ヒトやその他の動物に対して、機能性成分として重要な役割を果たすと予想される。
【0003】
一方、食品加工工場から排出される食品廃棄物等の産業廃棄物による環境汚染の問題は、社会問題となって久しく、各方面の努力にもかかわらず解決の糸口はなかなか見えてこないもどかしさがある。
食品廃棄物は、食品原料中の特定の有効成分を取り出した後の残留物であるが、タンパク質、脂肪分、繊維素等が数多く含まれているため、有効な機能性糖質の原料となり得る。
しかしながら、例えば、ビール粕、豆腐粕、フスマ、ミカンジュース粕等の食品廃棄物の多くは、水分含量が高いため腐敗し易いという欠点がある。また、食品廃棄物であるヤシ油抽出残渣粉砕物のコプラミールやパーム核油抽出残渣粉砕物のパーム核ミールについても、国内では一部飼料として用いられているものの、十分に有効利用されるには至ってはいない。
【0004】
従来の検討において、食品廃棄物を原料とした単糖の製造方法としては、ゾウゲヤシの種子から得られるマンナンを酸加水分解する方法(例えば、非特許文献1参照)、コプラミール又はパーム核ミールにヘミセルラーゼを作用させる方法(例えば、特許文献1参照)が報告されている。
【0005】
しかしながら、ゾウゲヤシの種子に存在するマンナンを単に酸加水分解のみ行う方法では、酸加水分解を過酷な条件(硫酸濃度75%)下で行わなければならず、しかも工程が繁雑であり、収率が低い等の問題もあった。さらに原料であるゾウゲヤシの供給量には限度があるため、得られる単糖は極めて高価なものとなる問題があった。
【0006】
さらにコプラミール又はパーム核ミールにヘミセルラーゼを作用させる方法(例えば、特許文献1参照)においても、ヘミセルラーゼからの単糖の遊離量が不十分であり、高価なヘミセルラーゼ等の酵素を大量に用いなければならず、また、不純物の除去が煩雑になる等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−51795号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】H.S. Isbell,Method in Carbohydrate Chemistry, R.L.Wistler, M.L.Wolfrom Eds(Academic Press, New York,1962)pp 145−147
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ヘミセルロースを前加水分解処理に供し残渣を得ることにより不純物が除去でき、且つその後の本加水分解処理において前記得られた残渣から単糖を効率的に遊離させることにより、安価かつ簡便に単糖を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らはすでに、ヘミセルロースを酵素処理する前にpH0.5〜2.5、反応温度60〜120℃の条件下、加水分解処理を行うことにより単糖の遊離量が増加することを見出しているが(特願2010−1324044号)、単糖の遊離が増加するのと同時に不純物の遊離量も増加していまい、不純物除去が煩雑になってしまうという問題点があり、更なる改良の余地があった。前述の課題を解決するために、上記観点から鋭意研究を重ねた結果、ヘミセルロースを特定の条件の前加水分解処理に供した後ヘミセルロース残渣を得ることにより不純物が除去でき、且つ得られた残渣をその後の本加水分解処理に供することにより加水分解反応が効率的に進み、単糖を効率的に遊離させ得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)pH0.5〜2.5、反応温度60〜120℃、反応時間0.1〜18時間の条件下、ヘミセルロースを前加水分解処理後、得られた残渣を本加水分解処理に供することを特徴とする単糖含有組成物の製造方法。
(2)ヘミセルロースが、マンナン、グルコマンナン、ガラクトマンナンから選ばれる少なくとも1種を構成成分とすることを特徴とする(1)記載の単糖含有組成物の製造方法。
(3)ヘミセルロースを含有する植物を前加水分解処理に供することを特徴とする(1)又は(2)に記載の単糖含有組成物の製造方法。
(4)ヘミセルロースを含有する植物が、コプラミール、パーム核ミール、こんにゃく芋、グアー豆から選ばれる少なくとも1種である(1)〜(3)いずれかに記載の単糖含有組成物の製造方法。
(5)前加水分解処理に用いる酸が、塩酸、硫酸、シュウ酸、リン酸、クエン酸、フマル酸から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(1)〜(4)いずれかに記載の単糖含有組成物の製造方法。
(6)本加水分解処理が酵素分解処理であることを特徴とする(1)〜(5)いずれかに記載の単糖含有組成物の製造方法。
(7)酵素分解処理に用いられる酵素が、マンナナーゼ、ガラクトマンナナーゼ、グルコマンナナーゼ、β―マンノシダーゼ、α―キシロシダーゼ、キシログルカナーゼ、アラビナナーゼ、β―キシロシダーゼ、キシラナーゼ、α―アラビノフラノシダーゼから選ばれる少なくとも1種である(6)に記載の単糖含有組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ヘミセルロースを特定の条件下で前加水分解処理することで得られたヘミセルロース残渣を本加水分解処理に供することにより、得られる組成物中の単糖の遊離割合が顕著に増加し、好ましくは、得られる組成物中の単糖、例えばマンノースの、糖としての純度を高めることができるため、その後の糖の精製工程を簡略化することができ、安価且つ簡便に単糖含有組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における前加水分解処理は酸の存在下で加熱を行う処理であり、前加水分解処理条件としては、比較的穏やかな条件下で加熱処理を行うことが必要である。具体的にはpH0.5〜2.5、反応温度60〜120℃、反応時間0.1〜18時間の条件下、加熱処理を行うことが必要である。pH条件としては、pH0.5〜2.0が好ましく、pH0.5〜1.5がより好ましい。反応温度としては、80〜120℃が好ましく、90〜120℃がより好ましい。反応時間としては、反応時間と単糖遊離効果の観点から、1〜12時間がより好ましく、1.5〜6時間がいっそう好ましい。
【0014】
本発明における前加水分解処理条件が、pH0.5〜2.5、反応温度60〜120℃、反応時間0.1〜18時間を外れた場合、例えば、より穏やかな条件、即ち、pHがより中性側の条件、反応温度がより低い条件、反応時間がより短い条件となった場合には、ヘミセルロース中の単糖成分の分解が不十分となるため、本加水分解処理において、ヘミセルロース主鎖の単糖を効率的に遊離させることができず好ましくない。例えば、より厳しい条件、即ち、pHがより酸性側の条件、反応温度がより高い条件、反応時間がより長い条件となった場合には、ヘミセルロースの縮合等が起こるため、本加水分解処理において、効率的に単糖を遊離させることができず好ましくない。
【0015】
本発明における前加水分解処理に用いる酸は特に限定されるものではなく、塩酸、硫酸、シュウ酸、リン酸、フマル酸、クエン酸等を用いることができるが、マンノース遊離後の精製負荷の観点から、使用量を少なくできる塩酸、硫酸、シュウ酸がより好ましい。
【0016】
本発明におけるヘミセルロースとは、植物細胞壁に含まれるもののうちセルロースを除いた多糖類をいい、具体的には、キシラン、アラビナン、キシログルカン、マンナン等を構成成分とするものである。その中でも、単糖を純度高く含有する観点から、マンナン、グルコマンナン、ガラクトマンナン等を構成成分とするものが好ましい。
【0017】
本発明における原料ヘミセルロースを得る方法は特に限定されないが、パーム(アブラヤシ)、ココヤシ、ゾウゲヤシ、コーヒー、サイハイラン、こんにゃく芋、グアー豆等から抽出する方法が挙げられ、なかでも、単糖を多く含有する観点や低コストの観点から、こんにゃく芋、グアー豆、食品産業廃棄物であるコプラミール、パーム核ミールを用いることが好ましく、特にパーム核ミールがより好ましい。また、該植物から原料ヘミセルロースを抽出せずに、そのまま前加水分解処理に供しても良い。このような食品廃棄物を原料として用いることは、安価に製造する目的に則するだけでなく、廃棄物の有効利用という環境保護的側面からも非常に望ましい。
【0018】
本発明の製造方法においては、後述するように、ヘミセルロースの原料を選択することで、単糖の遊離量を増加させることができるだけではなく、本発明の単糖含有組成物に含まれるそれぞれの単糖の純度を向上させることができることから、該単糖含有組成物の目的に応じてヘミセルロース原料を選択することが好ましい。
【0019】
例えば、本発明における単糖含有組成物において、マンノースを主体とした単糖含有組成物を得るための原料ヘミセルロースとしては、マンナン、グルコマンナン、ガラクトマンナン、ガラクトグルコマンナンが好ましく、マンナンがより好ましい。ガラクトースを主体とした単糖含有組成物を得るためには、ガラクタン、ガラクトマンナン、ガラクトグルコマンナン、アラビノガラクタンが好ましく、ガラクタンがより好ましい。アラビノースを主体とした単糖含有組成物を得るためには、アラビナン、アラビノキシラン、アラビノガラクタンが好ましく、アラビナンがより好ましい。グルコースを主体とした単糖含有組成物を得るためには、グルコマンナン、ガラクトグルコマンナンが好ましく、グルコマンナンがより好ましい。
【0020】
本発明において、原料ヘミセルロースを目的とする単糖含有組成物に応じて選択することで主たる単糖の構成成分の純度を高めることができる理由は明らかではないが、後述するように、本願発明の前加水分解処理において、ヘミセルロースの分岐した側鎖が優先的に分解されることにより、特定の単糖を主たる構成成分として含むヘミセルロースが残渣となるためであると推測される。
【0021】
本発明における単糖含有組成物の製造方法においては、ヘミセルロースを特定の条件下で前加水分解処理し、ヘミセルロースを構成している単糖同士の結合が適度に分解したヘミセルロース残渣を得ることが必要である。
【0022】
ヘミセルロース残査を得る方法としては、前加水分解処理により得られた溶液から固液分離によりヘミセルロース残査を得ることができればその方法は特に限定されないが、例えば、濾過、沈殿、遠心分離、デカンテーション、圧搾分離等が挙げられる。本発明の製造方法においては、前加水分解処理により得られた溶液からヘミセルロース残査を得ることにより、ヘミセルロースに含まれるイノシトールやグリセロールなどの不純物を効果的に取り除くことができる。
【0023】
本発明の製造方法においては、前加水分解処理後の本加水分解処理前に、さらに前記ヘミセルロース残査を洗浄することが好ましい。洗浄条件は特に限定されないが、後の精製工程の簡便化の観点から、洗浄液として水を用いることが好ましい。該洗浄液にて置換(水押し等)する等で洗浄を行なうことにより、ヘミセルロースに含有される糖アルコール、タンパク質、アミノ酸、有機酸などの前加水分解処理で遊離してきた不純物を効率的に除去することができるため、洗浄後の本加水分解工程時に発生する着色性物質を大幅に低減し、その後の単糖の精製が容易となる。
【0024】
洗浄時の温度は特に限定されないが、操作の容易性等の観点から、10〜80℃が好ましい。また、洗浄に使用する洗浄液の量は特に限定はされないが、操作の容易性等の観点から、洗浄するヘミセルロース残渣量の1〜10倍量程度の洗浄液で洗浄することが好ましい。
【0025】
本発明における本加水分解処理としては、酵素加水分解処理または酸加水分解処理が挙げられる。酵素加水分解処理に用いる酵素としては、ヘミセルラーゼに作用して単糖を遊離する活性を有する酵素であれば特に限定されないが、例えば、マンナナーゼ、ガラクトマンナナーゼ、グルコマンナナーゼ、β―マンノシダーゼ、α―キシロシダーゼ、キシログルカナーゼ、アラビナナーゼ、β―キシロシダーゼ、キシラナーゼ、α―アラビノフラノシダーゼ等のヘミセルロースの主鎖に作用する酵素が好ましい。その中でも、例えば、マンノースを主たる単糖成分とする単糖含有組成物を得るに際しては、マンナン、グルコマンナン、又はガラクトマンナンに作用するマンナナーゼ、マンノシダーゼ等のマンノース分解酵素が好ましい。
【0026】
本発明の本加水分解処理に用いる酵素としてヘミセルロースの主鎖に作用する酵素が好ましい理由は明らかではないが、前記の穏やかな条件下での前加水分解処理において、ヘミセルロースの分岐した側鎖が分解され、続く本加水分解処理において、ヘミセルロースの主鎖が分解されるためと推測される。
【0027】
なお、必要に応じて、ヘミセルロースの分岐した側鎖に存在するグルコースやガラクトース等を遊離する酵素であるグルコシダーゼ、ガラクトシダーゼ等を主鎖に作用する酵素と合わせて用いることもできる。さらに、これら異なる活性を有する2種類以上の酵素を混合することにより単糖の収量を上げることができる。また、使用する酵素はその酵素の起源である菌株の培養物のうち、単糖を遊離する活性を有するいかなる画分を用いてもよく、また必要に応じてこれらの酵素を含有する画分を常法により精製あるいは部分精製して使用することもできる。
【0028】
本発明における酵素加水分解反応においては、酵素加水分解反応時のpHを酵素の至適pHに調製するために、有機酸、無機酸を添加することができる。有機酸としては、シュウ酸、酢酸、プロピオン酸、蟻酸、酢酸、乳酸、フマル酸、クエン酸等が挙げられ、無機酸としては、塩酸、硫酸、リン酸等を挙げられる。
【0029】
酸加水分解処理の条件としては、一般的に知られている条件を適用することができる。例えば、鉱酸あるいは有機酸の存在下、反応温度60〜120℃、反応時間2〜60時間程度にて処理することにより、本発明の単糖含有組成物を得ることができる。この場合、酸加水分解処理に使用する酸の濃度は、0.05〜6Nが好ましく、鉱酸としては、塩酸、硫酸、シュウ酸等が好ましい。
【0030】
本発明においては、前加水分解処理にて得られたヘミセルロース残査を本加水分解処理することにより、マンノース、グルコース、ガラクトース、フルクトース、アラビノース等の単糖の遊離量が多い単糖含有組成物を得ることができる。
【0031】
本発明において、前記の前加水分解処理を行うことにより、その後の本加水分解処理時にヘミセルロース残渣から効率的に単糖を遊離させことができる理由は明らかではないが、比較的穏やかな条件下で前加水分解処理を行うことにより得られたヘミセルロース残渣は、ヘミセルロースの側鎖に存在する単糖成分が優先的に分解したものとなっているため、その後の本加水分解処理において、ヘミセルロース主鎖が容易に分解し易くなり、結果として効率的に単糖が純度高く遊離するものと推測される。
【0032】
本発明における単糖含有組成物とは、単糖を主体とした組成物であり、組成物中の糖成分としての単糖の割合が50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がいっそう好ましい。
【0033】
本発明における単糖含有組成物における各単糖の割合としては、例えば、マンノースを主体とした組成物の場合、該組成物中のマンノース割合が55質量%以上が好ましく、65質量%以上がより好ましく、75質量%以上がいっそう好ましい。
【0034】
本発明における単糖含有組成物は、必要に応じて精製を行い、単糖の含有率をさらに高めることが可能である。精製法としては、骨炭、活性炭、炭酸飽充法、吸着樹脂、マグネシア法などで脱色を行い、イオン交換樹脂、イオン交換膜、電気透析等で脱塩、脱酸を行うなど、公知の方法により行なうことができる。精製法の組み合わせおよび精製条件としては、マンノースを含む反応液中の色素、塩、および酸等の量およびその他の要因に応じて適宜選択すればよい。
【0035】
本発明における単糖含有組成物の形態としては、特に限定されないが、該単糖を含む水溶液、スプレードライ法などの方法により乾燥された粉末状または顆粒状、粉末状または顆粒状とされた組成物を打錠成形した錠剤状などが挙げられる。
【0036】
本発明の単糖含有組成物は、飲食品、経口摂取用医薬品に含有すると、例えば、喫食しやすい飲食品、服用しやすい経口摂取用医薬品を得ることができる。
【0037】
上記飲食品としては特に制限はされないが、柑橘果汁や野菜果汁などを含む果実飲料又は野菜ジュース、コーラやジンジャーエール又はサイダーなどの炭酸飲料、スポーツドリンクなどの清涼飲料水、コーヒー、紅茶や抹茶などの茶系飲料、ココアや乳酸菌飲料などの乳飲料などの飲料一般;ヨーグルト、ゼリー、プディング及びムースなどのデザート類;ケーキや饅頭などといった洋菓子及び和菓子を含む焼き菓子や蒸し菓子などの製菓;果実フレーバーソースやチョコレートソースを含むソース類;チューイングガム、ハードキャンディー、ヌガーキャンディー、ゼリービーンズなどの菓子類を挙げることができる。
【0038】
さらに、飲食品として、蛋白質、食物繊維、糖類、ミネラル、ビタミン、香料、果汁、酸味料、調味料などを配合した低カロリーのダイエット食品、あるいは、高カロリー流動食やチューブ流動性、低浸透圧、耐加熱処理性を有する液状栄養食などの医療用食品が挙げられる。
【0039】
経口摂取用医薬品の形状としては、特に限定されず、錠剤、顆粒剤、カプセル剤などの固形製剤、溶液剤、懸濁剤などの液体製剤などが挙げられる。
【実施例】
【0040】
以下に、実施例を掲げて更に具体的に本発明の方法を説明するが、本発明の技術的範囲は以下の例に制限されるものではない。
【0041】
<単糖の分析>
単糖等の濃度はHPLCにより分析した。分析条件を以下に示す。
(1)ガラクトース、マンノース、フルクトース、イノシトールの分析条件
HPLC分析条件カラム:Aminex HPX87P(7.8×300mm、BIO RAD製)、移動相:水、流速:0.6mL/min、カラム温度:60℃、検出:示 差屈折計(RI)。
(2)グルコース、アラビノース、オリゴ糖、グリセロールの分析条件
HPLC分析条件カラム:Aminex HPX87H(7.8×300mm、BIO RAD製)、移動相:0.005N 硫酸、流速:0.6mL/min、カラム温度: 60℃、検出:示差屈折計(RI)。
(3)標準物質
ガラクトース: 商品名「D−(+)−ガラクトース」(ナカライテクス製)
アラビノース: 商品名「L−(+)−アラビノース」(ナカライテクス製)
マンノース: 商品名「D−(+)−マンノース」(ナカライテクス製)
フルクトース: 商品名「D−(−)−フルクトース」(ナカライテクス製)
グルコース: 商品名「D−(+)−グルコース」(ナカライテクス製)
イノシトール: 商品名「myo−イノシトール」(ナカライテクス製)
グリセロール: 商品名「グリセリン」(ナカライテスク製)
なお、オリゴ糖の定量は、上記マンノースの標準物質との面積比にて算出した。
【0042】
実施例1
パーム核ミール(カーギル社製)10gに、水22mL、1M硫酸8mLを加え、pH0.9に調整した後、90℃、4時間の前加水分解処理を行った。放冷後、1M水酸化ナトリウム3mLを添加してpH3.6に調整後、吸引ろ過を行い、水50mLで水押しを行い、パーム核ミールを洗浄した。洗浄したパーム核ミールを回収し、水24mL、1M硫酸を加え、pH3.6に調整した後、酵素セルロシンGM5(HBI製 マンナナーゼ、ユニット数:10,000unit/g)0.03gを加え、60℃で48時間振とうし、酵素反応を行なった後、100℃10分で酵素失活を行った。得られた粗糖液を珪藻土ろ過し、ろ液の糖成分の分析を行った。
【0043】
実施例2
パーム核ミール(カーギル社製)10gに、水22mL、1M硫酸8mLを加え、pH0.9に調整した後、90℃、4時間の前加水分解処理を行った。放冷後、1M水酸化ナトリウム3mLを添加してpH3.6に調整後、吸引ろ過を行い、水100mLで水押しを行い、パーム核ミールを洗浄した。洗浄したパーム核ミールを回収し、水24mL、1M硫酸を加え、pH3.6に調整した後、酵素セルロシンGM5(HBI製 マンナナーゼ、ユニット数:10,000unit/g)0.03gを加え、60℃で48時間振とうし、酵素反応を行なった後、100℃10分で酵素失活を行った。得られた粗糖液を珪藻土ろ過し、ろ液の糖成分の分析を行った。
【0044】
実施例3
パーム核ミール(カーギル社製)10gに、水22mL、1M硫酸8mLを加え、pH1.5に調整した後、90℃、4時間の前加水分解処理を行った。放冷後、1M水酸化ナトリウム3mLを添加してpH3.6に調整後、吸引ろ過を行い、水50mLで水押しを行い、パーム核ミールを洗浄した。洗浄したパーム核ミールを回収し、水24mL、1M硫酸を加えpH3.6に調整した後、酵素セルロシンGM5(HBI製 マンナナーゼ、ユニット数:10,000unit/g)0.03gを加え、60℃で48時間振とうし、酵素反応を行なった後、100℃10分で酵素失活を行った。得られた粗糖液を珪藻土ろ過し、ろ液の糖成分の分析を行った。
【0045】
実施例4
パーム核ミール(カーギル社製)10gに、水22mL、1M硫酸8mLを加え、pH0.9に調整した後、90℃、0.2時間の前加水分解処理を行った。放冷後、1M水酸化ナトリウム3mLを添加してpH3.6に調整後、吸引ろ過を行い、水50mLで水押しを行い、パーム核ミールを洗浄した。洗浄したパーム核ミールを回収し、水24mL、1M硫酸を加え、pH3.6に調整した後、酵素セルロシンGM5(HBI製 マンナナーゼ、ユニット数:10,000unit/g)0.03gを加え、60℃で48時間振とうし、酵素反応を行なった後、100℃10分で酵素失活を行った。得られた粗糖液を珪藻土ろ過し、ろ液の糖成分の分析を行った。
【0046】
実施例5
パーム核ミール(カーギル社製)10gに、水22mL、1M硫酸8mLを加え、pH0.9に調整した後、90℃、9時間の前加水分解処理を行った。放冷後、1M水酸化ナトリウム3mLを添加してpH3.6に調整後、吸引ろ過を行い、水50mLで水押しを行い、パーム核ミールを洗浄した。洗浄したパーム核ミールを回収し、水24mL、1M硫酸を加え、pH3.6に調整した後、酵素セルロシンGM5(HBI製 マンナナーゼ、ユニット数:10,000unit/g)0.03gを加え、60℃で48時間振とうし、酵素反応を行なった後、100℃10分で酵素失活を行った。得られた粗糖液を珪藻土ろ過し、ろ液の糖成分の分析を行った。
【0047】
実施例6
パーム核ミール(カーギル社製)10gに、水22mL、1M硫酸8mLを加え、pH1.5に調整した後、90℃、4時間の前加水分解処理を行った。放冷後、1M水酸化ナトリウム3mLを添加してpH3.6に調整後、吸引ろ過を行った。得られたパーム核ミールに、水24mL、1M硫酸を加えpH3.6に調整した後、酵素セルロシンGM5(HBI製 マンナナーゼ、ユニット数:10,000unit/g)0.03gを加え、60℃で48時間振とうし、酵素反応を行なった後、100℃10分で酵素失活を行った。得られた粗糖液を珪藻土ろ過し、ろ液の糖成分の分析を行った。なお、前加水分解処理後、本加水分解処理(酵素分解処理)前に洗浄は行わなかった。
【0048】
比較例1
パーム核ミール(カーギル社製)10gに水28mL、1M硫酸2.0mLを加え、pH3.6に調整した後、酵素セルロシンGM5(HBI製 マンナナーゼ、ユニット数:10,000unit/g)0.03gを加え、60℃で48時間振とうし、酵素処理を行なった後、100℃10分の酵素失活を行った。なお、酵素分解処理前の前加水分解処理・ろ過・洗浄は行わなかった。得られた粗糖液を珪藻土ろ過し、ろ液の糖成分の分析を行った。
【0049】
比較例2
パーム核ミール(カーギル製)10gに水50mLを加え、吸引ろ過を行い、パーム核ミールを洗浄した。洗浄したパーム核ミールを回収し、水28mL、1M硫酸2.0mLを加え、pH3.6に調整した後、酵素セルロシンGM5(HBI製 マンナナーゼ、ユニット数:10,000unit/g)0.03gを加え、60℃で48時間振とうし、酵素処理を行なった後、100℃10分の酵素失活を行った。なお、酵素分解処理前の前加水分解処理は行わなかった。得られた粗糖液を珪藻土ろ過し、ろ液の糖成分の分析を行った。
【0050】
比較例3
パーム核ミール(カーギル社製)10gに、水22mL、1M硫酸8mLを加え、pH0.9に調整した後、90℃、4時間の前加水分解処理を行った。放冷後、パーム核ミールをろ過せずにそのまま1M水酸化ナトリウム3mLを添加してpH3.6に調整後、酵素セルロシンGM5(HBI製 マンナナーゼ、ユニット数:10,000unit/g)0.03gを加え、60℃で48時間振とうし、酵素反応を行なった後、100℃10分で酵素失活を行った。得られた粗糖液を珪藻土ろ過し、ろ液の糖成分の分析を行った。
【0051】
実施例1〜6、比較例1〜3について得られた糖成分の分析結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示したように、本発明の条件下、前加水分解処理を行った後に、得られた残渣に対して酵素分解処理を行なった実施例1〜6においては、前加水分解処理を行わなかった比較例1、2に比べて、マンノースの濃度が増加し、且つ糖・糖アルコール中のマンノース含量が高くなった。また、実施例1〜6は、濾過を行なわずそのまま酵素反応をおこなった比較例3に比べて、糖・糖アルコール中のマンノース含量が高くなった。さらに、前加水分解処理をpH0.9の条件下1時間以上行った後得られた残渣に対して酵素分解処理を行った実施例1、2、5においては、マンノース濃度も顕著に増加した。以上のことから本発明の単糖の製造方法が、安価かつ簡便な単糖の製造方法として極めて有効であることが明らかとなった。
【0054】
実施例7
こんにゃく芋荒粉1gに、0.1M塩酸9mL、2M塩酸1mLを加え、pH0.9に調整した後、90℃、2時間の前加水分解処理を行った。放冷後、4M水酸化ナトリウム1mLを添加してpH3.6に調整後、吸引ろ過を行った後、水10mLで水押しを行い、こんにゃく芋荒粉を洗浄した。洗浄したこんにゃく芋荒粉を回収し、水7.2mL、2M塩酸を加え、pH3.6に調整した後、酵素セルロシンGM5(HBI製 マンナナーゼ、ユニット数:10,000unit/g)0.05gを加え、60℃で24時間振とうし、酵素反応を行なった後、100℃10分で酵素失活を行った。得られた粗糖液を珪藻土ろ過し、ろ液の糖成分の分析を行った。
【0055】
実施例8
こんにゃく芋荒粉1gに、0.1M塩酸9mL、2M塩酸1mLを加え、pH0.9に調整した後、90℃、2時間の前加水分解処理を行った。放冷後、4M水酸化ナトリウム1mLを添加してpH3.6に調整後、吸引ろ過を行った後、水20mLで水押しを行い、こんにゃく芋荒粉を洗浄した。洗浄したこんにゃく芋荒粉を回収し、水11mL、2M塩酸を加え、pH3.6に調整した後、酵素セルロシンGM5(HBI製 マンナナーゼ、ユニット数:10,000unit/g)0.05gを加え、60℃で24時間振とうし、酵素反応を行なった後、100℃10分で酵素失活を行った。得られた粗糖液を珪藻土ろ過し、ろ液の糖成分の分析を行った。
【0056】
実施例9
こんにゃく芋荒粉1gに、0.1M塩酸10mLを加え、pH1.5に調整した後、90℃、2時間の前加水分解処理を行った。放冷後、4M水酸化ナトリウム1mLを添加してpH3.6に調整後、吸引ろ過を行った後、水10mLで水押しを行い、こんにゃく芋荒粉を洗浄した。洗浄したこんにゃく芋荒粉を回収し、水11mL、2M塩酸を加え、pH3.6に調整した後、酵素セルロシンGM5(HBI製 マンナナーゼ、ユニット数:10,000unit/g)0.05gを加え、60℃で24時間振とうし、酵素反応を行なった後、100℃10分で酵素失活を行った。得られた粗糖液を珪藻土ろ過し、ろ液の糖成分の分析を行った。
【0057】
実施例10
こんにゃく芋荒粉1gに、0.1M塩酸9mL、2M塩酸1mLを加え、pH0.9に調整した後、90℃、0.2時間の前加水分解処理を行った。放冷後、4M水酸化ナトリウム1mLを添加してpH3.6に調整後、吸引ろ過を行った後、水10mLで水押しを行い、こんにゃく芋荒粉を洗浄した。洗浄したこんにゃく芋荒粉を回収し、水11mL、2M塩酸を加え、pH3.6に調整した後、酵素セルロシンGM5(HBI製 マンナナーゼ、ユニット数:10,000unit/g)0.05gを加え、60℃で24時間振とうし、酵素反応を行なった後、100℃10分で酵素失活を行った。得られた粗糖液を珪藻土ろ過し、ろ液の糖成分の分析を行った。
【0058】
実施例11
こんにゃく芋荒粉1gに、0.1M塩酸9mL、2M塩酸1mLを加え、pH0.9に調整した後、90℃、9時間の前加水分解処理を行った。放冷後、4M水酸化ナトリウム1mLを添加してpH3.6に調整後、吸引ろ過を行った後、水10mLで水押しを行い、こんにゃく芋荒粉を洗浄した。洗浄したこんにゃく芋荒粉を回収し、水11mL、2M塩酸を加え、pH3.6に調整した後、酵素セルロシンGM5(HBI製 マンナナーゼ、ユニット数:10,000unit/g)0.05gを加え、60℃で24時間振とうし、酵素反応を行なった後、100℃10分で酵素失活を行った。得られた粗糖液を珪藻土ろ過し、ろ液の糖成分の分析を行った。
【0059】
比較例4
こんにゃく芋荒粉1gに、水10.8mL、2M塩酸0.2mLを加え、pH3.6に調整後、酵素セルロシンGM5(HBI製 マンナナーゼ、ユニット数:10,000unit/g)0.05gを加え、60℃で24時間振とうし、酵素反応を行なった後、100℃10分で酵素失活を行った。なお、酵素分解処理前の前加水分解処理・ろ過・洗浄は行わなかった。得られた粗糖液を珪藻土ろ過し、ろ液の糖成分の分析を行った。
【0060】
比較例5
こんにゃく芋荒粉1gに、水10mLを添加し、吸引ろ過を行い、こんにゃく芋荒粉を洗浄した。洗浄したこんにゃく芋荒粉を回収し、水10.8mL、2M塩酸0.2mLを加え、酵素セルロシンGM5(HBI製 マンナナーゼ、ユニット数:10,000unit/g)0.05gを加え、60℃で24時間振とうし、酵素反応を行なった後、100℃10分で酵素失活を行った。なお、酵素分解処理前の前加水分解処理は行わなかった。得られた粗糖液を珪藻土ろ過し、ろ液の糖成分の分析を行った。
【0061】
比較例6
こんにゃく芋荒粉1gに、0.1M塩酸9mL、2M塩酸1mLを加え、pH0.9に調整した後、90℃、9時間の前加水分解処理を行った。放冷後、こんにゃく芋荒粉をろ過せずにそのまま、4M水酸化ナトリウム1mLを添加してpH3.6に調整後、酵素セルロシンGM5(HBI製 マンナナーゼ、ユニット数:10,000unit/g)0.05gを加え、60℃で24時間振とうし、酵素反応を行なった後、100℃10分で酵素失活を行った。得られた粗糖液を珪藻土ろ過し、ろ液の糖成分の分析を行った。
【0062】
【表2】
【0063】
表2に示したように、本発明の条件下、前加水分解処理を行った後に得られた残渣に対して酵素反応を行なった実施例7〜11においては、前加水分解処理を行わなかった比較例4、5に比べてマンノース及びグルコースの濃度が増加し、且つ糖・糖アルコール中のマンノース及びグルコース含量が高くなった。また、実施例7〜11は、濾過を行わずそのまま酵素反応をおこなった比較例6に比べて、糖・糖アルコール中のマンノース及びグルコース含量が高くなった。さらに、前加水分解処理をpH0.9の条件下1時間以上行った後得られた残渣に対して酵素反応を行った実施例7、8、11においては、マンノース及びグルコース濃度も顕著に増加した。以上のことから本発明の単糖の製造方法が、安価かつ簡便な単糖の製造方法として極めて有効であることが明らかとなった。
【0064】
実施例12
グアー豆粉砕物1gに、0.05M硫酸5mLを加え、pH0.9に調整した後、90℃、2時間の前加水分解処理を行った。放冷後、1M水酸化ナトリウム0.5mLを添加してpH3.6に調整後、吸引ろ過を行い、水10mLで水押しを行い、グアー豆粉砕物を洗浄した。洗浄したグアー豆粉砕物を回収し、水5.5mL、酵素セルロシンGM5(HBI製 マンナナーゼ、ユニット数:10,000unit/g)0.03gを加え、60℃で24時間振とうし、酵素反応を行なった後、100℃10分で酵素失活を行った。得られた粗糖液を珪藻土ろ過し、ろ液の糖成分の分析を行った。
【0065】
実施例13
グアー豆粉砕物1gに、0.05M硫酸5mLを加え、pH0.9に調整した後、90℃、2時間の前加水分解処理を行った。放冷後、1M水酸化ナトリウム0.5mLを添加してpH3.6に調整後、吸引ろ過を行い、水20mLで水押しを行い、グアー豆粉砕物を洗浄した。洗浄したグアー豆粉砕物を回収し、水5.5mL、酵素セルロシンGM5(HBI製 マンナナーゼ、ユニット数:10,000unit/g)0.03gを加え、60℃で24時間振とうし、酵素反応を行なった後、100℃10分で酵素失活を行った。得られた粗糖液を珪藻土ろ過し、ろ液の糖成分の分析を行った。
【0066】
実施例14
グアー豆粉砕物1gに、0.05M硫酸4.5mL、水0.5mLを加え、pH1.5に調整した後、90℃、2時間の前加水分解処理を行った。放冷後、1M水酸化ナトリウム0.3mLを添加してpH3.6に調整後、吸引ろ過を行い、水10mLで水押しを行い、グアー豆粉砕物を洗浄した。洗浄したグアー豆粉砕物を回収し、水5.5mL、酵素セルロシンGM5(HBI製 マンナナーゼ、ユニット数:10,000unit/g)0.03gを加え、60℃で24時間振とうし、酵素反応を行なった後、100℃10分で酵素失活を行った。得られた粗糖液を珪藻土ろ過し、ろ液の糖成分の分析を行った。
【0067】
実施例15
グアー豆粉砕物1gに、0.05M硫酸5mLを加え、pH0.9に調整した後、90℃、0.2時間の前加水分解処理を行った。放冷後、1M水酸化ナトリウム0.5mLを添加してpH3.6に調整後、吸引ろ過を行い、水10mLで水押しを行い、グアー豆粉砕物を洗浄した。洗浄したグアー豆粉砕物を回収し、水5.5mL、酵素セルロシンGM5(HBI製 マンナナーゼ、ユニット数:10,000unit/g)0.03gを加え、60℃で24時間振とうし、酵素反応を行なった後、100℃10分で酵素失活を行った。得られた粗糖液を珪藻土ろ過し、ろ液の糖成分の分析を行った。
【0068】
実施例16
グアー豆粉砕物1gに、0.05M硫酸5mLを加え、pH0.9に調整した後、90℃、9時間の前加水分解処理を行った。放冷後、1M水酸化ナトリウム0.5mLを添加してpH3.6に調整後、吸引ろ過を行い、水10mLで水押しを行い、グアー豆粉砕物を洗浄した。洗浄したグアー豆粉砕物を回収し、水5.5mL、酵素セルロシンGM5(HBI製 マンナナーゼ、ユニット数:10,000unit/g)0.03gを加え、60℃で24時間振とうし、酵素反応を行なった後、100℃10分で酵素失活を行った。得られた粗糖液を珪藻土ろ過し、ろ液の糖成分の分析を行った。
【0069】
比較例7
グアー豆粉砕物1gに、0.05M硫酸0.05mL、水5.45mLを加え、pH3.6に調整後、酵素セルロシンGM5(HBI製 マンナナーゼ、ユニット数:10,000unit/g)0.03gを加え、60℃で24時間振とうし、酵素反応を行なった後、100℃10分で酵素失活を行った。なお、酵素分解処理前の前加水分解処理・ろ過・洗浄は行わなかった。得られた粗糖液を珪藻土ろ過し、ろ液の糖成分の分析を行った。
【0070】
比較例8
グアー豆粉砕物1gに、水5mLを添加し、吸引ろ過を行い、グアー豆粉砕物を洗浄した。洗浄したグアー豆粉砕物を回収し、0.05M硫酸0.05mL、水5.45mLを加え、pH3.6に調整後、酵素セルロシンGM5(HBI製 マンナナーゼ、ユニット数:10,000unit/g)0.03gを加え、60℃で24時間振とうし、酵素反応を行なった後、100℃10分で酵素失活を行った。なお、酵素分解処理前の前加水分解処理は行わなかった。得られた粗糖液を珪藻土ろ過し、ろ液の糖成分の分析を行った。
【0071】
比較例9
グアー豆粉砕物1gに、0.05M硫酸5mLを加え、pH0.9に調整した後、90℃、2時間の前加水分解処理を行った。放冷後、グアー豆粉砕物をろ過せずにそのまま、1M水酸化ナトリウム0.5mLを添加後、酵素セルロシンGM5(HBI製 マンナナーゼ、ユニット数:10,000unit/g)0.03gを加え、60℃で24時間振とうし、酵素反応を行なった後、100℃10分で酵素失活を行った。得られた粗糖液を珪藻土ろ過し、ろ液の糖成分の分析を行った。
【0072】
【表3】
【0073】
表3に示したように、本発明の条件下、前加水分解処理を行った後に得られた残渣に対して酵素反応を行なった実施例12〜16においては、前加水分解処理を行わなかった比較例7、8に比べてマンノース及びグルコースの濃度が増加し、且つ糖・糖アルコール中のマンノース及びグルコース含量が高くなった。また、実施例12〜16は、濾過を行わずそのまま酵素反応をおこなった比較例9に比べて、糖・糖アルコール中のマンノース及びグルコース含量が高くなった。さらに、前加水分解処理をpH0.9の条件下1時間以上行った後得られた残渣に対して酵素反応を行った実施例12、13、16においては、マンノース及びグルコース濃度も顕著に増加した。以上のことから本発明の単糖の製造方法が、安価かつ簡便な単糖の製造方法として極めて有効であることが明らかとなった。