特許第5873639号(P5873639)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873639
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】シート定着構造
(51)【国際特許分類】
   E04H 15/64 20060101AFI20160216BHJP
【FI】
   E04H15/64
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-34736(P2011-34736)
(22)【出願日】2011年2月21日
(65)【公開番号】特開2012-172374(P2012-172374A)
(43)【公開日】2012年9月10日
【審査請求日】2014年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204192
【氏名又は名称】太陽工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】秋山 昌之
(72)【発明者】
【氏名】喜多村 淳
(72)【発明者】
【氏名】岡本 英一
【審査官】 仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−217524(JP,A)
【文献】 特開2007−314990(JP,A)
【文献】 実開昭63−171532(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 15/00−15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜体からなるシート本体部と前記膜体の周縁部が積層された状態で互いに固着された固着部とを有するシートと、
前記シートを定着させる固定体に固定される固定部材と、
前記固定部材との間に前記シートを挟み込む押さえ部材と、を備え、
前記固着部が前記固定部材の外側端部及び前記押さえ部材の外側端部よりも内側に位置して前記固着部の少なくともシート内側端部が前記固定部材と前記押さえ部材との間に位置し、且つ、前記シート本体部における前記固着部のシート内側端部に繋がる部位が前記固定部材と前記押さえ部材との間に挟み込まれているシートの定着構造。
【請求項2】
前記シート本体部は、複数の前記膜体を有し、
前記固着部は、前記複数の膜体の周縁部が積層された状態で互いに固着されることにより形成される請求項1に記載のシート定着構造。
【請求項3】
前記膜体は、樹脂製のフィルムである請求項1又は2に記載のシート定着構造。
【請求項4】
前記シートの端縁を保持する係止部材を備え、
前記押さえ部材は、前記固定部材との間に前記係止部材を収容する空間を形成する請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシート定着構造。
【請求項5】
前記係止部材は、前記シートの端縁に沿って延び且つ前記端縁を挿入可能な本体部とこの本体部から突出する被係止片とを有し、
前記本体部は、当該本体部に挿入された前記シート端縁から延出するシートを挿通させる切欠き部と、この切欠き部と前記被係止片との間に設けられ且つ外面が外側に向かって膨出する湾曲状の支持面部と、を有し、
前記固定部材は、前記押さえ部材と前記固定部材との間の空間に面する受け面であって、前記シートの張力によって作用する前記支持面部からの力を受ける凹湾曲状の受け面と、前記被係止片を係止させるための係止部と、を有する請求項4に記載のシート定着構造。
【請求項6】
前記被係止片は、前記押さえ部材と前記固定部材との間の空間内で、前記支持面部が前記受け面に沿うように前記係止部材が回動されることにより、前記係止部に係止される請求項5に記載のシート定着構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを用いてエアドームやテント等の膜構造建築物等を組み立てるときに、その建築物においてシートを定着させるシート定着構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、膜構造建築物等の組み立て等においてシートを定着させるときに建築物等の所定の位置に配置された固定部材にシートの縁部を係止させるシート定着構造として、特許文献1に記載のものがある。
【0003】
このシート定着構造では、図7に示されるように、建築物の支持部材等の固定体100に定着させるシート102と、固定体100に固定される固定部材110と、この固定部材110にシート102の縁部を係止させるための係止部材120と、シート102を固定部材110に向けて押さえ付ける押さえ部材130と、が用いられる。
【0004】
具体的に、シート102は、積層方向に配置された複数の膜体102a、102a、102aを有する。シート102の端縁であるシート端106の内側に隣接する部位には、複数の膜体102a、102a、102aの周縁部を積層した状態で互いに固着することにより固着部104が形成されている。このように構成されるシート102は、各膜体102a、102a間に空気等の気体が充填されて膨らんでいる。固定部材110は、シート102のシート端106に沿って延びる長尺部材であり、その内部に係止部材120が挿入される取付凹部112を有する。この取付凹部112は、図7において下方に向かって凹み、固定部材110の幅方向外側の側面114から内側に向けて係合片116が突出している。係止部材120は、シート端106を保持する本体部122と、本体部122の下端から外側に向かって突出し、前記取付凹部112の係合片116と係合する係合部124とを有する。係合部124は、図7の略下方に延びてその先端部が外向きに屈曲している。そして、この係合部124の先端部が取付凹部112の係合片116に係止されることによって、この取付凹部112内に係止部材120が固定される。この状態で押さえ部材130を固定部材110に取り付けることにより、押さえ部材130と固定部材110との間に係止部材120に保持されたシート端106から延びるシート102を挟み込む。これにより、シート102が固定体100に定着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−314990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のシート定着構造では、固定部材110と押さえ部材130とに挟み込まれたシート102の部位において、固着部104を出来るだけ均一に挟み込むため、両部材110、130の幅方向外側の端部に合わせた位置、あるいは前記端部位置より外側にシート102の固着部104、詳しくは、固着部104のシート内側の端部(シート内側端部)104aが形成されている。一例の詳細は、固着部104におけるシート内側端部104aの位置が固定部材110と押さえ部材130とにおけるシート102を挟みこんでいる部位の端部位置と略一致するように固着部104が形成されている。
【0007】
このようなシート定着構造においては、膜体102a、102a間に気体が充填されてシート102が膨らむことにより、膜体に所定の張力が導入されることや、風荷重等に起因する各膜体102aの主面と交差する方向(面外方向)の応力が固着部104のシート内側端部104aに集中する場合がある。固着部104のシート内側端部104aにおいて、前記の面外方向の応力が集中した状態が長期間続くと、膜体102aにおける固着部104のシート内側端部104a位置において引き裂きが生じることが懸念される。
【0008】
また、シートが1枚の膜体を有する場合にも、係止部材にシート端を保持させるために、膜体の周縁部をシート内側に向けて折り返して重ね、互いに固着することによって固着部が形成される。このシートにおいても、固着部におけるシート内側端部の位置が固定部材と押さえ部材とにおける当該シートを挟みこんでいる部位の端部位置と略一致するように固着部が形成されると、膜体に所定の張力が導入されることや、風荷重等に起因する膜体102の面外方向の応力が固着部のシート内側端部に集中することがある。この場合も、複数の膜体を有するシートの場合と同様に、固着部のシート内側端部において前記の面外方向の応力が集中した状態が長期間続くと、膜体における固着部のシート内側端部の位置で引き裂きが生じることが懸念される。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、膜体を備え且つこの膜体の周縁部が積層された状態で互いに固着されているシートにおいて、固着部近傍での引き裂きが生じ難いシート定着構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、上記課題を解消すべく、本発明に係るシート定着構造は、膜体からなるシート本体部と前記膜体の周縁部が積層された状態で互いに固着された固着部とを有するシートと、前記シートを定着させる固定体に固定される固定部材と、前記固定部材との間に前記シートを挟み込む押さえ部材と、を備える。そして、前記固着部が前記固定部材の外側端部及び前記押さえ部材の外側端部よりも内側に位置して前記固着部の少なくともシート内側端部が前記固定部材と前記押さえ部材との間に位置し、且つ、前記シート本体部における前記固着部のシート内側端部に繋がる部位が前記固定部材と前記押さえ部材との間に挟み込まれている。
【0011】
この発明では、固着部が固定部材の外側端部及び押さえ部材の外側端部よりも内側に位置し、シートのシート本体部における固着部のシート内側端部に繋がる部位が固定部材と押さえ部材との間に挟みこまれるので、各膜体に作用する面外方向(各膜体の主面と交差する方向)の応力が固定部材と押さえ部材との間に位置する固着部のシート内側の端部(シート内側端部)に伝わらない。これにより、前記シート内側端部に面外方向の応力が集中してこれに起因する引き裂きが固着部近傍(固着部のシート内側端部)に発生することを効果的に抑制することができる。
【0012】
特に、前記シート本体部が複数の前記膜体を有し、前記固着部が前記複数の膜体の周縁部が積層された状態で互いに固着されることにより形成される場合には、膜体間に気体が充填されてシートが膨らむことで固着部のシート内側端に面外方向の応力がより集中し易くなるため、当該位置における引き裂きの発生がより顕著になる。しかし、上述のシート本体部の一部を固定部材と押さえ部材とによって挟みこむ構成とすることによりシート内側端部への面外方向の応力の集中を抑制することができ、その結果、引き裂きが固着部近傍に発生することを効果的に抑制することができる。
【0013】
尚、前記膜体は、樹脂製のフィルムである場合には、固着部近傍における引き裂きの発生をより効果的に抑制することができる。これは、樹脂性のフィルムの引き裂き強度が低いため、膜体が樹脂性のフィルムである場合には、固着部のシート内側端部に面外方向の応力が集中すると当該位置における引き裂きの発生がより顕著になるが、上述のシート本体部の一部を固定部材と押さえ部材とで挟み込む構成とすることで、前記固着部の端部への面外方向の応力の集中を好適に阻止することができるためである。
【0014】
本発明に係るシート定着構造は、前記シートの端縁を保持する係止部材を備え、前記押さえ部材は、前記固定部材との間に前記係止部材を収容する空間を形成することにより、シートの端縁が固定体に確実に係止される。
【0015】
具体的に、前記係止部材は、前記シートの端縁に沿って延び且つ前記端縁を挿入可能な本体部とこの本体部から突出する被係止片とを有し、前記本体部は、当該本体部に挿入された前記シート端縁から延出するシートを挿通させる切欠き部と、この切欠き部と前記被係止片との間に設けられ且つ外面が外側に向かって膨出する湾曲状の支持面部と、を有し、前記固定部材は、前記押さえ部材と前記固定部材との間の空間に面する受け面であって、前記シートの張力によって作用する前記支持面部からの力を受ける凹湾曲状の受け面と、前記被係止片を係止させるための係止部と、を有することが好ましい。
【0016】
かかる構成によれば、被係止片と本体部の一部である支持面部とによって係止部材を固定部材に固定させるので、当該係止部材の長手方向と直交する断面を小さくすることができる。即ち、従来の係止部材では、係合部のみで当該係止部材を固定部材に固定するため、シートの張力に対向するための十分な強度を確保するために本体部から大きな係合部を突出させていた。これに対し、上述の構成の係止部材によれば、シートの張力によって作用する力を被係止片と支持面部とに分散することができるため、本体部から突出する被係止片を従来の係合部に比べて十分に小さくすることができる。これにより、固定部材と押さえ部材との間において係止部材を収容するための空間の省スペース化を図ることができ、その結果、シートの引き裂きを抑制する構成を採用しつつ固定部材及び押さえ部材の大型化を回避することが可能となる。
【0017】
前記被係止片は、前記押さえ部材と前記固定部材との間の空間内で、前記支持面部が前記受け面に沿うように前記係止部材が回動されることにより、前記係止部に係止される。
【0018】
かかる構成によれば、支持面部が受け面に沿うように係止部材を回動することにより係止部材が固定部材に固定されるため、従来の固定部材のように、係合部を係止片に係合させるために本体部を移動できる余裕を持たせた大きさの収容空間(例えば、図7における係止部材120が挿入される空間)を確保しなくてもよい。その結果、係止部材が収容される空間のさらなる省スペース化が可能となり、固定部材及び押さえ部材をより小型化することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
以上より、本発明によれば、膜体を備え且つこの膜体の周縁部が積層された状態で互いに固着されているシートにおいて、固着部近傍での引き裂きが生じ難いシート定着構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係るシート定着構造を適用した構造物を模式的に示した図である。
図2】シートの配置状態を説明するための図である。
図3A】前記シート定着構造を示す縦断面図である。
図3B図3Aの一部拡大図である。
図4】前記シート定着構造を示す分解図である。
図5】前記シートの定着作業を説明するための図である。
図6】前記シートの定着作業を説明するための図である。
図7】従来のシートの定着構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1は、本発明のシート定着構造を適用した構造物の一例を模式的に表す正面図である。
【0023】
本実施形態に係るシート定着構造は、構造物の支持部材10にシート30を定着させるための構造であり、シート30と、このシート30の縁部を支持部材10に定着させるためのシート定着装置20とを備えている。
【0024】
構造物は、所定の間隔をおいて並ぶ複数(本実施形態の例では3つ)の支持部材(固定体)10を有する。支持部材10は、当該支持部材10の並ぶ方向と直交し且つ水平に延びる水平板10aと、この水平板10aを支持するために当該水平板10aの下側に当該水平板10aの延びる方向に所定間隔で並ぶ支柱10b、10b、…とを有する。この水平板10aの上にシート定着装置20が配置され、このシート定着装置20によって両側のシート30、30が支持部材10に定着させられる。
【0025】
各シート30は、図2にも示されるように、複数の膜体32a、32b、34aを備え、シート本体32と接続部34とを有する。シート本体32は、シート定着装置20の外側(図1においては支持部材10の間)に主として存在するものであり、シート本体部36bと固着部36aとを有する。具体的に、シート本体32は、複数の膜体32a、32bを有する。このシート本体32では、これら複数の膜体32a、32bの周縁部が積層された状態で互いに固着されることによって固着部36aが形成されている。また、シート本体32おける固着部36aよりも内側の部位がシート本体部36bを構成する。このシート本体部36bでは、各膜体32a、32b同士が互いに固着されていない状態(離間した又は離間可能な状態)で積層方向に配置されている。各膜体間(例えば膜体32a、32b間)は気密状態となっている。このシート本体32は、積層された膜体32a、32b間に流体(本実施形態では空気)が充填されており、これによって中央部がシート30の厚み方向に膨出した形状を有する。
【0026】
接続部34は、シート本体32の周縁部に接続される部位であり、シート定着装置20の内部に存在する。接続部34の一端34bは、シート本体32を構成する膜体32a、32bの端部と重ね合わされると共に固着されている。即ち、シート30は、シート本体32の膜体32a、32bと接続部34の膜体34aとが固着された固着部36aを有している。本実施形態では、シート30が3つの膜体32a、32b、34aを有し、そのうちの2つの膜体32a,32bがシート本体32を構成し、1つの膜体34aが接続部34を構成している。尚、固着部36aでは、熱溶着や接着剤による接着、強度の必要ないところでは両面テープによる貼着によって膜体32a、32b、34a同士が固着されている。
【0027】
膜体32a、32b、34aは、芯材となる繊維織物を有さない樹脂製のフィルムである。例えば、具体的に、膜体32a、32b、34aは、フッ素樹脂やポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂等の合成樹脂によって形成されたフィルムである。尚、膜体32a、32b、34aは、芯材となる繊維織物を有さない樹脂製のフィルムに限定されず、繊維織物(繊維織布や編物等)によって形成された芯材の少なくとも片方の面に上記合成樹脂を被覆したシート等であってもよい。本実施形態の膜体32a、32b、34aは、例えば、フッ素樹脂により形成されたフィルムであり、フッ素樹脂として、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)が使用され、大きさが例えば4×4mの正方形で、厚さが例えば50〜500μmである。
【0028】
このようなシート30の端縁33は、係止部材210に保持される被保持部を構成する。この被保持部33は、シート本体32において当該被保持部33と隣接する部位と比べて、厚さ寸法(図2における上下方向の寸法)が大きくなるように構成される。具体的に、本実施形態の被保持部33は、シート本体32を構成するために積層されている膜体32a、32bのうちのいずれかの膜体(図2に示す例では、下側の膜体32a)の端部を、長尺状の芯材38を内包するように折り返すことによって形成されている。この膜体32aの折り返された部位の先端は、固着部36aにおいて他の膜体32b,34aと共に積層された状態で固着されている。
【0029】
一方のシート30の接続部34は、他方のシート30の接続部34と接続されている。即ち、一方のシート30の接続部34は、他方のシート30の接続部34に向かって延びている。一方のシート30の接続部34の一端34bは、前記のように固着部36aでシート本体32の膜体32a、32bと固着され、他端34cは、他方のシート30の接続部34の他端34cと重ねられる。本実施形態では、接続部34の他端34c、34c同士は、両面テープ39によって固着されているが、これに限定されない。
【0030】
図3Aは、本実施形態のシート定着構造を示す縦断面図であり、図3Bは、図3Aにおいて一点鎖線で囲った部位の拡大図であり、図4は、その分解図である。
【0031】
本実施形態のシート定着構造におけるシート定着装置20は、シート30の端縁(被保持部33)を保持する係止部材210と、支持部材10に固定される固定部材220と、この固定部材220に取り付けられる押さえ部材230と、を備える。
【0032】
係止部材210は、シート30の被保持部33に沿って延び、この被保持部33を挿入可能な本体部211と、この本体部211から突出する被係止片212と、を有し、固定部材220と押さえ部材230との間に形成される空間(係止部材収容空間)S1に配設される。
【0033】
本体部211は、当該本体部211に挿入された被保持部33から延出するシート30を挿通させる切欠き部213と、この切欠き部213と被係止片212との間に設けられる支持面部214とを有する。
【0034】
切欠き部213は、本体部211の内側の空間(被保持部収容空間)S2と本体部211の外側の空間とを連通させる部位である。切欠き部213は、本体部211において、長さ方向の全体に亘って形成される。この切欠き部213におけるシート30の通過する部位の間隔は、被保持部33の芯材38の径よりも小さい。
【0035】
支持面部214の外面214aは、外側に向かって膨出する湾曲形状を有する。詳しくは、支持面部214の外面214aは、本体部211の長手方向と直交する断面が外側に向かって膨出する円弧となる湾曲状の面である。
【0036】
また、本体部211は、シート30の定着作業において、係止部材210が固定部材220に係止するように当該本体部211を回動させるときに用いられる冶具を着脱可能な冶具取付部215を有する。この冶具取付部215は、本体部211において、支持面部214と被保持部収容空間S2を挟んで反対側に設けられる。
【0037】
冶具取付部215は、本体部211から突出し、本体部211の周方向において、保持したシート30に加わる張力方向(図3Aの矢印T参照)と直交する方向よりもシート30側に向かって開口する溝部215aを有する。この溝部215aには、冶具の先端部が挿入される(図5参照)。尚、この冶具取付部215の溝部215aは、本体部211の長手方向に沿って連続してもよく、断続していてもよい。
【0038】
被係止片212は、本体部211において、切欠き部213と被保持部収容空間S2を挟んで反対側に設けられる。この被係止片212は、係止部材収容空間S1内で支持面部214が固定部材220の受け面222に沿うように係止部材210が回動されることにより、固定部材220の係止部224によって係止される。本実施形態の被係止片212は、本体部211の長さ方向の全体に亘って形成されている。
【0039】
固定部材220は、一方向(シート30の端縁33に沿う方向)に延びる形状を有する。この固定部材220は、前記一方向と直交する断面において、両サイドの肉厚の部位220a、220aと、中央の突設部位220bと、肉厚の部位220a及び突設部位220bの間に設けられる取付凹部221、221と、を備える。
【0040】
突設部位220bには、固定部材220に押さえ部材230を固定するためのボルトB2が螺入される雌ねじ穴部220cが設けられる。
【0041】
肉厚の部位220aには、固定部材220を支持部材10(水平板10a)に固定するためのボルトB1を受けるボルト受け部220dが設けられる。肉厚の部位220aの支持部材10と反対側の端部には、傾斜したシート受け面225が形成されている。このシート受け面225は、固定部材220の幅方向において、取付凹部221の外側に形成されている。そして、シート受け面225は、固定部材220の幅方向において、固着部36aの幅よりも大きな幅を有する。これにより、シート受け面225は、シート30における固着部36aを含む所定範囲を押さえ部材230との間に挟みこむことができる。また、シート受け面225は、外側に向かって支持部材10から離れる方向(例えば、図3Aにおいては、外側に向かって高くなる方向)に傾斜している。本実施形態の固定部材220は、このシート受け面225上に当該シート受け面225に沿って配置される防水部材226を有する。この防水部材226の表面(固定部材220と反対側の面)は、シート受け面225と略平行である。そして、係止部材210に挿入された被保持部33から延出するシート30がこの防水部材226上に配置される。このとき、シート30の固着部36aは、固定部材220の幅方向において、防水部材226の外側端部よりも内側に位置する。本実施形態の防水部材226は、ゴムにより形成されている。
【0042】
取付凹部221は、シート30の被保持部33に沿って延び、係止部材210が挿入される部位である。この取付凹部221は、押さえ部材230との間に空間(係止部材収容空間)S1を形成する。取付凹部221は、係止部材収容空間S1に面する受け面222を有し、この受け面222は、シート受け面225の内端からほぼ垂直に延びる面227と連続するように形成されている。このほぼ垂直に延びる面227は、上側が固定部材220の幅方向外側(隣接するシート受け面225側)に向ってわずかに傾斜している。
【0043】
受け面222は、シート30の張力Tによって作用する支持面部214からの力を受ける面であり、凹湾曲形状を有する。具体的に、受け面222は、係止部材210の支持面部214の外面214aと対応する湾曲形状を有し、係止部材収容空間S1内に配置された(即ち、取付凹部221内に挿入された)係止部材210の支持面部214における外面214aと面接触している。そのため、支持面部214を受け面222に沿って回動させることができ、これにより、係止部材210を固定部材220における固定位置で回動させることができる。
【0044】
また、取付凹部221は、係止部材210を挟んで受け面222と反対側に設けられ且つ係止部材収容空間S1に面する側面(突設部位220bの側面)223を有する。この側面223からは、係止部材210の本体部211に向かって係止部224が突出している。この係止部224は、前記のように被係止片212を係止させるための部位である。具体的に、係止部224は、係止部材収容空間S1内に配置された係止部材210を支持面部214が受け面222に沿うように回動させることにより被係止片212が当接する当接面224aを有する。この当接面224aは、例えば図3Aに示す姿勢で固定部材220を支持部材10に固定した場合、固定部材220の側面223から下を向いた状態で水平若しくは先端側が斜め下に向かって延びている。
【0045】
このような取付凹部221内に係止部材210を挿入することにより、固定部材220に係止部材210が固定される。具体的に、支持面部214の外面214aが受け面222と面接触し、且つ、被係止片212が係止部224に係止された(当接した)状態で固定部材220の取付凹部221内に係止部材210を配置することにより、係止部材210が固定部材220に固定される。
【0046】
以上のように構成される固定部材220は、支持部材10の水平板10aに対してボルトB1によって固定されている。
【0047】
押さえ部材230は、固定部材220との間にシート30を挟み込む。本実施形態の押さえ部材230は、固定部材220に沿って延びる板状の部材である。この押さえ部材230の裏面(固定部材220側の面)231の幅方向の両側には、固定部材220のシート受け面225と対応する傾斜面であるシート押圧面232が形成されている。この押さえ部材230のシート押圧面232と固定部材220のシート受け面225との間に係止部材210から延出するシート30が配置される。換言すると、シート押圧面232によって被保持部33から延出するシート30がシート受け面225に向けて押圧される。本実施形態では、係止部材210及びシート30が配置された状態の固定部材220の上(押さえ部材230側)に防水カバー233が配置された状態で、押さえ部材230が固定部材220との間にシート30を挟み込んでいる。これにより、係止部材210から延出するシート30は、防水部材226と防水カバー233とによって挟持される。この防水カバー233は、防水部材226と同様にゴムによって形成されている。そのため、防水カバー23は、防水部材226との間にシート30と密着した状態で当該シート30を挟み込むことによって、シート本体32に沿って雨水等が流れてきてもシート定着装置20内への雨水等の浸入を防ぐことができる。これにより、シート30が定着された構造物内への前記雨水等の浸が防がれる。
【0048】
シート30の固着部36aは、押さえ部材230(固定部材220)の幅方向において、シート押圧面232及び防水カバー233の外側端部よりも内側に位置する。また、この押さえ部材230との間にシート30を挟み込む固定部材220においても、シート30の固着部36aが固定部材220の外側端部よりも内側に位置している。このため、固定部材220と押さえ部材230とによって、係止部材収容空間S1内に収容された係止部材210から延出するシート30において、固着部36aとその前後の部分とが挟み込まれた状態となる。本実施形態におけるシート30においては、固着部36aは、シート30が張力Tによって延びたときに固定部材220及び押さえ部材230の間から外側(固定部材22の幅方向の外側)に出ないような位置に形成されている。例えば、本実施形態では、固定部材220の幅方向において、固着部36aの外側端部が固定部材220及び押さえ部材230の外側の端部よりも内側に10mm程度入った位置である。尚、本実施形態では、前記幅方向において、押さえ部材230のシート押圧面232の端部よりも固定部材220の防水部材226の端部の方が前記幅方向において外側に突出している(図3A及び図3B参照)。
【0049】
このような押さえ部材230は、当該押さえ部材230を介してボルトB2を突設部位220bの雌ねじ穴部220cに螺入することにより固定部材220に取り付けられている。
【0050】
次に、以上のようなシート定着構造を用いた支持部材10へのシート30の定着作業を図5及び図6を参照しつつ説明する。
【0051】
支持部材10の水平板10a上に固定部材220を取り付ける。そして、シート本体32を構成する膜体32a、32b間(詳しくは、シート本体部36bにおける膜体32a、32b間)に空気を充填する前に、シート30の被保持部33を係止部材210の被保持部収容空間S2内に挿入して、係止部材210にシート30を保持させる。具体的には、係止部材210の軸方向の端面開口から前記軸方向に沿ってシート30の被保持部33を被保持部収容空間S2内に挿入する。そして、冶具取付部215の溝部215a内に冶具の先端部を挿入する。この冶具は、溝部215aの幅と対応する厚さの板状部材の先端部を屈曲させた部位を備える。
【0052】
この冶具を係止部材210の周方向におけるシート30から離れる方向(図5に示す例では、矢印Aの方向)に押圧することにより、係止部材210(本体部211)を回動させる(図5の矢印B参照)。このとき、本体部211から突出する被係止片212の先端が取付凹部221の底部を向く位置まで回動させる。具体的には、取付凹部221において、側面223から突出する係止部224をかわして被係止片212を係止部224よりも奥まで挿入できる姿勢(図5に示すような姿勢)になるまで回動させる。
【0053】
そして、この回動させた状態で、係止部材210を被係止片212側から先に受け面222と突設部位220bの側面223との間隙に挿入する(図5の矢印C参照)。本体部211の支持面部214が受け面222と面接触するまで係止部材210を取付凹部221内に挿入し、その後、冶具への押圧の力を緩める。そうすると、シート30にはその自重等による張力(図5及び図6の矢印T参照)が働いているため、このシート30の張力Tによって本体部211が先ほどとは反対向き(図6の矢印D参照)に回動する。これにより、支持面部214が受け面222に沿うように係止部材210が取付凹部221内で回動して被係止片212が係止部224に当接して係止される。このように、上述のシート定着装置20によれば、シート30の張力Tを利用しながら係止部材210を固定部材220に固定することができる。このとき、係止部材210を固定部材220における固定位置で回動させるため、係止のために張力Tに抗して係止部材210を移動させる必要はない。この状態で、固着部36aは、シート受け面225の外側端部よりも内側に位置している。
【0054】
次に、冶具の先端部を溝部215aから引き抜く(図6の矢印E参照)。
【0055】
このようにして、固定部材220の両側の取付凹部221、221内にシート30を保持した状態の係止部材210をそれぞれ固定した後、防水カバー233と押さえ部材230とを順に被せ、ボルトB2によって押さえ部材230を固定部材220に取り付ける。
【0056】
以上のようにして、シート30が支持部材10に定着させられる。そして、このシート30のシート本体32を構成する膜体32a、32b間に空気を充填してシート30を膨らませ膜体に張力を導入する。
【0057】
上述のシート定着構造によれば、係止部材210から延出するシート30における固着部36aよりもシート内側の部位(即ち、シート本体部36bの一部)が固定部材220と押さえ部材230とによって挟みこまれるので、各膜体32a、32bに作用する面外方向(各膜体の主面と交差する方向)の応力が固定部材220と押さえ部材230との間に位置する固着部36aに伝わらない。これにより、固着部36aのシート内側の端部に面外方向の応力が集中してこれに起因する引き裂きが固着部36a近傍に発生することを効果的に抑制することができる。
【0058】
尚、特に本実施形態の膜体32a、32bが芯材となる繊維織物を有さない樹脂性のフィルムであるため、固着部36a近傍における引き裂きの発生をより効果的に抑制することができる。これは、樹脂性のフィルムの引き裂き強度が芯材を有する膜体よりも低いため、膜体32a、32bが樹脂性のフィルムである場合(芯材となる繊維織物を有さない場合)には、固着部36aのシート内側端部に面外方向の応力が集中すると当該位置における引き裂きの発生がより顕著になるが、固着部36aの少なくともシート内側端部が固定部材220と押さえ部材230との外側端部より外側に出ないよう上述のシート30における固着部36aよりもシート内側の部位(即ち、シート本体部36bの一部)を固定部材220と押さえ部材230とで挟み込む構成とすることで、固着部36aの端部への面外方向の応力の集中を好適に阻止することができるためである。
【0059】
特には、膜体32a、32bに所定の張力を導入した後であっても、シート本体部36bの一部が固定部材220と押さえ部材230とで挟み込まれている構成が好ましい。具体的には、施工後の風荷重の影響等も考慮すると、シート本体部36bの一部が少なくとも10mm以上、固定部材220と押さえ部材230とに挟み込まれていることが好ましい。この挟み込まれている部位が10mmより少ないと、膜体32a、32bに風荷重等の何らかの外力が加わった場合に、固着部36aのシート内側端部が外側に露出する可能性があるためである。
【0060】
また、上述のシート定着構造によれば、被係止片212と本体部211の一部である支持面部214とによって係止部材210を固定部材220に固定させるので、当該係止部材210の長手方向と直交する断面を小さくすることができる。即ち、従来の係止部材では、係合部のみで当該係止部材を固定部材に固定するため、シートの張力に対向するための十分な強度を確保するために本体部から大きな係合部を突出させていた。これに対し、上述の構成の係止部材210によれば、シート30の張力Tによって作用する力を被係止片212と支持面部214とに分散することができるため、本体部211から突出する被係止片212を従来の係合部に比べて十分に小さくすることができる。これにより、係止部材収容空間S1の省スペース化を図ることができ、その結果、シート30の引き裂きを抑制する構成を採用しつつ固定部材220及び押さえ部材230の大型化を回避することが可能となる。
【0061】
また、上述のシート定着構造によれば、支持面部214が受け面222に沿うように係止部材210を回動することにより係止部材210が固定部材220に固定されるため、従来の固定部材のように、係合部を係止片に係合させるために本体部を移動できる余裕を持たせた大きさの収容空間(例えば、図7における係止部材120が挿入される空間)を確保しなくてもよい。その結果、係止部材収容空間S1のさらなる省スペース化が可能となり、固定部材220及び押さえ部材230をより小型化することが可能となる。
【0062】
尚、本発明のシート定着構造は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0063】
上記実施形態では、固定部材220と押さえ部材230とによって、シート30の固着部36aとその前後の部分とが挟み込まれている。しかし、固定部材220と押さえ部材230とによって挟み込まれるシート30の部位は、この部位に限定されず、シート本体部36bの一部が挟み込まれていればよい。これは、固着部36aよりもシート内側の部位が固定部材220と押さえ部材230とに挟み込まれていれば、シート30を膨らませることによって生じる各膜体32a、32bの面外方向の応力が固着部36aに伝達されることが阻止され、これにより、固着部36a近傍での引き裂きの発生が抑制されるからである。そのため、固定部材220のシート受け面225と押さえ部材230の押圧面232との間にシート本体部36b(シート30における固着部36aよりもシート内側の部位)しか位置せず、係止部材210が収容される空間内に固着部36aが位置していても、前記面外方向の応力の固着部36aへの伝達が抑制されるため、固着部36a近傍での引き裂けの発生を抑えることができる。また、固着部36aの一部が固定部材220と押さえ部材230との間に挟み込まれる構成であってもよい。
【0064】
また、上記実施形態の膜体32a、32bは樹脂性のフィルムであるが、これに限定されない。例えば、膜体は、シート状の基材に樹脂等をコーティングしたものでもよい。
【0065】
シート本体32を構成する膜体の具体的な数は限定されない。例えば、上記実施形態では、シート本体32を構成する積層方向に配置された膜体の数は2つであるが、3つ以上でもよい。
【0066】
また、シート本体を構成する膜体の数は、1つでもよい。この場合、膜体の端部を、長尺の芯材38を内包するように折り返すことによって、係止部材210に保持される被保持部33が形成される。また、この膜体の折り返した端部とこの端部よりも内側の部位とが積層された状態で互いに固着されることにより固着部が形成される。
【0067】
このようなシートであっても、固定部材220及び押さえ部材230によって建物等の固定体に定着させたときに、固着部のシート内側端部が固定部材220と押さえ部材230との間から外側に出ていると、風荷重等によって膜体に面外方向の応力が発生したときに、この応力が固着部のシート内側端部に集中して当該部位で引き裂きが発生する。そこで、シート本体部の一部を固定部材と押さえ部材とによって挟みこむ構成とすることにより固着部のシート内側端部への面外方向の応力の集中を抑制することができ、その結果、引き裂きが固着部近傍に発生することを効果的に抑制することができる。即ち、係止部材210から延出するシートの固着部よりもシート内側の部位が固定部材220と押さえ部材230とによって挟みこまれるようにして、膜体に作用する面外方向の応力が固定部材220と押さえ部材230との間に位置する固着部に伝わらないようにすることで、前記面外方向の応力に起因する固着部近傍での引き裂きの発生を抑制することができる。
【0068】
また、上記実施形態では、固定部材220に設けられる取付凹部221の数は2つであるが、これに限定されず、1つでもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、受け面222と係止部224とによって固定部材220に対して係止部材210を固定しているが、これに限定されない。受け面222及び係止部224による押圧に加え、例えば、押さえ部材230により係止部材210を押さえることによって固定部材に対して係止部材210を固定してもよい。
【符号の説明】
【0070】
10 支持部材(固定体)
30 シート
32a,32b 膜体
33 被保持部(シートの端縁)
36a 固着部
36b シート本体部
210 係止部材
211 本体部
212 被係止片
214 支持面部
214a 支持面部の外面
220 固定部材
222 受け面
224 係止部
230 押さえ部材
S1 係止部材収容空間
T シートの張力
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7