(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来の作業車両の油圧駆動装置として特許文献1に開示されたものである。この油圧駆動装置について次に説明する。ここでは、特許文献1に記載の用語を「()」内に示した。
【0003】
ボトム室に圧油を供給されて作業車両(ホイールローダ)の作業装置(ブーム、バケット)を上昇させ、ロッド室に圧油を供給されてその作業装置を下降させる油圧シリンダ(ブームシリンダ)と、この油圧シリンダを駆動する圧油を吐出するメインポンプ(油圧ポンプ)と、このメインポンプから油圧シリンダに供給される圧油の流れを制御する制御弁とを備える。
【0004】
制御弁はスプール弁であり、油圧シリンダのボトム室にボトム室側管路を介して接続されたボトム室側ポート、油圧シリンダのロッド室にロッド側管路を介して接続されたロッド室側ポート、メインポンプに接続されたポンプポート、および、作動油タンクに接続されたタンクポートを有する。この制御弁は、ポンプポートをボトム室側ポートに接続し、かつロッド室側ポートをタンクポートに接続する弁位置である第1の作動位置と、ポンプポートをロッド室側ポートに接続し、かつボトム室側ポートをタンクポートに接続する弁位置である第2の作動位置と、ポンプポートとボトム室側ポートの間およびポンプポートとロッド室側ポートの間の両方を遮断する中立位置とに切換可能に構成されたものである。
【0005】
さらに、従来の油圧駆動装置は、ボトム室側管路から分岐した接続管路の端部に接続されたアキュムレータと、接続管路上に設けられた開閉弁と、両端が接続管路に接続されて開閉弁を跨いで位置する蓄圧用のバイパス管路上に設けられ、開閉弁と並列した蓄圧弁(切換弁)とを備える。
【0006】
開閉弁は、ボトム室とアキュムレータを接続する弁位置である開位置と、ボトム室とアキュムレータの間を遮断する弁位置である閉位置とに切換可能に構成されて、作業車両が作業装置を上昇させた状態を保持して走行する積載走行が行われたときに開位置に制御されるようになっている。
【0007】
蓄圧弁は、蓄圧用のバイパス管路内でのアキュムレータに向かう圧油の流れを許可し、その逆向きの圧油の流れを阻止する弁位置である蓄圧位置と、蓄圧用のバイパス管路を閉鎖して制御弁とアキュムレータの間を遮断する弁位置である閉位置とに切換可能に構成されている。この蓄圧弁は、メインポンプの吐出油が制御弁およびボトム室側管路を通じてボトム室に圧油が供給される状態であって、アキュムレータ内の圧力が所定圧力未満の状態である場合に弁位置を蓄圧位置に制御されるようになっている。
【0008】
このように構成された従来の油圧駆動装置において、作業車両が積載走行を行ったときに開閉弁は開位置に制御される。これにより、油圧シリンダのボトム室がアキュムレータに接続された状態となる。この状態においては、積載走行中に油圧シリンダのボトム室に作用する負荷圧力がアキュムレータにより吸収される。この結果、作業車両の作業装置の縦揺れが抑えられる。
【0009】
なお、開閉弁の弁位置が開位置に制御されると、アキュムレータ内の圧力が油圧シリンダのボトム室内の圧力と同じになるまで、油圧シリンダのボトム室からアキュムレータに圧油が流入するため、油圧シリンダはアキュムレータに流入した圧油の量の分だけ収縮する。このときの油圧シリンダの収縮量、すなわち作業装置の降下量を少なくするため、蓄圧弁は開閉弁と並列に設けられている。
【0010】
つまり、蓄圧弁の弁位置が蓄圧位置に制御された状態において、作業装置を上昇させるためにメインポンプの吐出油が制御弁およびボトム室側管路を通じて油圧シリンダのボトム室に供給されると、その吐出油の一部は蓄圧用のバイパス管路を通じてアキュムレータに導かれ、このアキュムレータに圧油に蓄えられる。したがって、作業装置を上昇させた後、作業車両の積載走行を行うときには既にアキュムレータに圧油が蓄えられた状態である。これによって、開閉弁の弁位置が開位置に制御されたとき、油圧シリンダのボトム室からアキュムレータに流入する圧油の量を少なくすることができ、したがって油圧シリンダの収縮量、すなわち作業装置の下降量を少なくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の一実施形態に係る作業車両の油圧駆動装置について
図1〜
図5を用いて説明する。
【0033】
本実施形態に係る油圧駆動装置は、例えば
図1に示す作業車両、すなわちホイールローダ1に適用される。このホイールローダ1の作業装置2は、車体の前部に上下方向に回動可能に設けられたリフトアーム3と、このリフトアーム3の前端に上下方向に回動可能に設けられたバケット4とを備える。これらリフトアーム3およびバケット4はそれぞれリフトアームシリンダ11(油圧シリンダ)およびバケットシリンダ12(油圧シリンダ)のそれぞれにより駆動されるようになっている。
【0034】
図2に示すように、本実施形態に係る油圧駆動装置10は、リフトアームシリンダ11と、バケットシリンダ12と、これらリフトアームシリンダ11およびバケットシリンダ12に供給される圧油を吐出するメインポンプ13(可変容量形油圧ポンプ)と、このメインポンプ13とリフトアームシリンダ11の間でメインポンプ13からリフトアームシリンダ11に供給される圧油の流れを制御するリフトアーム用の制御弁20と、メインポンプ13とバケットシリンダ12の間でメインポンプ13からバケットシリンダ12に供給される圧油の流れを制御するバケット用の制御弁25とを備える。リフトアーム用の制御弁20およびバケット用の制御弁25はバイパス管路14上に設けられ、このバイパス管路14に対し互いにパラレル接続されている。
【0035】
リフトアームシリンダ11は片ロッド形複動シリンダであり、シリンダチューブのボトム側に形成される圧力室であるボトム室11aと、ピストンのロッド側に形成される圧力室であるロッド室11bとを備える。このリフトアームシリンダ11は、ボトム室11aに圧油を供給されて伸長することでリフトアーム3を上方向に回動させてバケット4を上げ、ロッド室11bに圧油を供給されて収縮することでリフトアーム3を下方向に回動させてバケット21aを下す。以下では、リフトアーム3が上方向に回動してバケット4が上がることを作業装置2の上昇といい、リフトアーム3が下方向に回動してバケット4が下がることを作業装置2の下降という。
【0036】
リフトアーム用の制御弁20はスプール弁からなり、リフトアームシリンダ11のボトム室11aにボトム室側管路15を介して接続されたボトム室側ポート21、リフトアームシリンダ11のロッド室11bにロッド室側管路16を介して接続されたロッド室側ポート22、メインポンプ13に接続されたポンプポート23、および、作動油タンク17に接続されたタンクポート24を有する。このリフトアーム用の制御弁20は油圧パイロット式でスプリングセンタ式の3位置弁であり、ポンプポート23をボトム室側ポート21に接続し、かつロッド室側ポート22をタンクポート24に接続する弁位置である第1の作動位置20a(
図2の右側の弁位置)と、ポンプポート23をロッド室側ポート22に接続し、かつボトム室側ポート21をタンクポート24に接続する弁位置である第2の作動位置20b(
図2の左側の弁位置)と、ポンプポート23とボトム室側ポート21の間およびポンプポート23とロッド室側ポートの間の両方を遮断する中立位置20c(
図2の中央の弁位置)とに切換可能に構成されたものである。
【0037】
油圧駆動装置10はさらに、パイロットポンプ30と、このパイロットポンプ30の吐出圧からパイロット圧を生成する操作レバー装置31とを備える。この操作レバー装置31は初期位置から相反する2方向に傾倒操作可能な操作レバー31aを備え、この操作レバー31aが初期位置から一方向に傾倒操作されると、リフトアーム用の制御弁20の弁位置を中立位置20cから第1の作動位置20aに切り換える伸長用のパイロット圧を生成し、操作レバー31aが初期位置から一方向と相反する他方向に傾倒操作されると、リフトアーム用の制御弁20の弁位置を中立位置20cから第2の作動位置20b方向に変化させる収縮用のパイロット圧を生成するようになっている。伸長用のパイロット圧は伸長用のパイロット管路32によってリフトアーム用の制御弁20に導かれ、収縮用のパイロット圧は収縮用のパイロット管路33によってリフトアーム用の制御弁20に導かれるようになっている。
【0038】
バケットシリンダ12はリフトアームシリンダ11と同じく片ロッド形複動シリンダである。バケット用の制御弁25はリフトアーム用の制御弁20と同じく、スプール弁であり、油圧パイロット式でスプリングセンタ式の3位置弁である。このバケット用の制御弁25とバケットシリンダ12との接続関係は、リフトアーム用の制御弁20とリフトアームシリンダ11との接続関係と同様である。バケット用の制御弁25に対するパイロット圧を生成する操作レバー装置は図示を省略した。
【0039】
油圧駆動装置10はさらに、ボトム室側管路15から分岐した接続管路41の端部に接続されたアキュムレータ40と、ロッド室側管路16から分岐して作動油タンク17まで延びて設けられた戻り管路18と、接続管路41および戻り管路18に跨って設けられ、これら接続管路41および戻り管路18を開閉し開閉弁50とを備える。開閉弁50は油圧パイロット式でスプリングリターン式の2位置弁であり、閉位置50a(
図2の右側の弁位置)と開位置50b(
図2の左側の弁位置)の間で弁位置が変化可能に構成されている。閉位置50aはリターンスプリング51により規定されるノーマル位置であり、接続管路41および戻り管路18の両方を閉じる弁位置である。開位置50bは作動位置であり、接続管路41および戻り管路18の両方を開く弁位置である。開閉弁50の受圧面52には開弁用のパイロット管路53を通じて、開閉弁50が開く方向のパイロット圧が作用するようになっている。開閉弁50のリターンスプリング51側からはドレン管路54が延びて戻り管路18に接続されている。
【0040】
油圧駆動装置10はさらに、開弁用のパイロット管路53に接続されたスプリングリターン式の電磁比例弁であって開閉弁50の受圧面52に与えるパイロット圧をパイロットポンプ30の吐出圧から生成する開閉制御弁55を備える。この開閉制御弁55は、ノーマル位置55aと作動位置55bの間で弁位置を変化可能であって、ノーマル位置55aから作動位置55b方向に弁位置が変化するほど高いパイロット圧を生成するよう構成されている。
【0041】
油圧駆動装置10はさらに、ホイールローダ1の車速を検出してその車速に相応する車速検出信号(電気信号)を出力する車速センサ56と、この車速センサ56から出力された車速検出信号に基づき開閉制御弁55を制御するコントローラ57と、このコントローラ57に対し開閉制御弁55を作動させることの指示に相当する指示信号を出力する指示スイッチ58(指示SW)とを備える。
【0042】
コントローラ57は、指示スイッチ58からの指示信号を入力した場合に、車速が積載走行時の規定範囲内となったどうかの判定を行い、その判定の結果、車速がその規定範囲内である場合に、開閉制御弁55に制御電流を供給して作動させるよう設定されている。積載走行時の車速の規定範囲は、バケット4に荷が積載された状態での走行(積載走行)に適した車速の範囲として予め設定されたものである。
【0043】
開閉制御弁55に与えられる制御電流の電流値Iは、コントローラ57に備えられるCPU、ROM、RAMによって算出されるようになっている。その制御電流の電流値Iと開閉弁50の開度(開閉弁開度)との関係は、
図3に示すように、制御電流の電流値Iが大きくなるほど開閉弁50の開度が大きくなるよう設定されている。なお、開閉弁50の弁体には切欠きが設けられ(図示していない)、制御電流の電流値Iの範囲が「I0≦I≦I1」に設定された第1の範囲は、その切欠きの作用により開閉弁50の開度が変化する。制御電流の範囲が「I1<I≦Imax」に設定された第2の範囲においては、切欠きの位置を超えた範囲で開閉弁50の開度が変化するようになっている。切欠きによって第1の範囲における開閉弁50の開度の変化率の方が第2の範囲における開閉弁50の開度の変化率よりも小さく設定され、これにより第1の範囲の方が第2の範囲よりも開閉弁50の開度の微調整が行いやすくなっている。
【0044】
また、ホイールローダ1の車速と制御電流の電流値Iとの関係は、
図4に示すように、車速が積載走行時の規定範囲内となった場合、車速がその規定範囲内となった時点から時間T1が経過する間で、制御電流Iが経過時間に比例して増大し電流値I1に達するよう設定されている。
【0045】
コントローラ57は、開閉制御弁55の制御を、
図5に示す手順で行うように設定されている。つまり、指示スイッチ58がオンして指示信号がコントローラ57に入力されると(ステップS1でYES)、コントローラ57は車速センサ56からの車速検出信号に基づき、ホイールローダの車速が積載走行時の規定範囲内かどうかの判定を行う(ステップS2)。この判定の結果、車速が積載走行時の車速の規定範囲内であった場合(ステップS2YES)、開閉制御弁55に制御電流を供給する(ステップS3)。これらステップS1からステップS3のルーチンは、指示スイッチ58がオンの状態で車速が積載走行時の規定範囲内となった状態が継続する限り繰り返され、この間、開閉弁50の弁位置が閉位置50aから開位置50b方向に変化した状態が維持される。
【0046】
なお、指示スイッチ58がオフの場合(ステップS1でNO)、または車速が積載走行時の規定範囲内でない場合(ステップS2でNO)、コントローラ57は開閉制御弁55に電流を供給しない(ステップS4)。したがって、指示スイッチ58がオフの状態または車速が積載走行時の規定範囲内でない状態が継続されれば、開閉弁50はリターンスプリング51によって閉位置50aに制御される。
【0047】
つまり、開閉弁50は、開弁用のパイロット管路53、パイロットポンプ30、開制御弁80、指示スイッチ58、車速センサ56およびコントローラ57によって、ホイールローダ1が積載走行を行う場合に開閉弁50の弁位置を開位置50bに制御されるようになっている。また、積載走行時以外のときにはリターンスプリング51によって閉位置50aに制御されるようになっている。
【0048】
油圧駆動装置10はさらに、両端が接続管路41に接続されて開閉弁50を跨いで位置する蓄圧用のバイパス管路60上に設けられて開閉弁50と並列した蓄圧弁61とを備える。この蓄圧弁61は、油圧パイロット式でスプリングリターン式の2位置弁であり、弁位置として蓄圧位置61aと閉位置61bとが設定されている。蓄圧位置61aはリターンスプリング62により規定されるノーマル位置であり、チェック弁63によって蓄圧用のバイパス管路60内でのアキュムレータ40に向かう圧油の流れを許可し、その逆向きの圧油の流れを阻止する弁位置である。閉位置61bは作動位置であり、蓄圧用のバイパス管路60を閉鎖してリフトアーム用の制御弁20とアキュムレータ40の間を遮断する弁位置である。
【0049】
蓄圧用のバイパス管路60において、接続管路41の開閉弁50よりもボトム室側管路15側に接続された蓄圧用のバイパス管路60の端部と蓄圧弁61との間には、絞り64が設けられている。この絞り64と蓄圧弁61の間の箇所からは、この箇所の圧力をパイロット圧として蓄圧弁61の受圧面65に作用させる蓄圧停止用のパイロット管路66が設けられている。絞り64と蓄圧停止用のパイロット管路66によって蓄圧弁61の受圧面65にアキュムレータ40内の圧力が作用するようになっている。蓄圧弁61のリターンスプリング62側からはドレン管路67が延びて戻り管路18に接続されている。
【0050】
蓄圧弁61は、アキュムレータ40内の圧力が所定圧力未満の状態において、弁位置を蓄圧位置61aに制御されるようになっている。所定圧力とは、リターンスプリング62の設定荷重により規定されるものであり、積載走行時にリフトアームシリンダ11のボトム室11aに作用する負荷圧力を想定して、その負荷圧力とアキュムレータ40内の圧力とが略同じになったときに蓄圧弁61の弁位置が閉位置61bに切り換わることを意図して設定されている。
【0051】
油圧駆動装置10はさらに、ボトム室側管路15上に負荷保持弁70を備える。この負荷保持弁70はボトム室側管路15を開閉するスプリングリターン式のポペット弁であり、ポペット71と、このポペット71に当接される弁座72と、ポペット71を弁座72方向に、すなわち閉じる方向に付勢するリターンスプリング73と、ポペット71がリターンスプリング73の弾性力に抗して開く方向の圧力を、リフトアーム用の制御弁20のボトム室側ポート21側から導入する第1の開側圧力室74と、ポペット71がリターンスプリング73の弾性力に抗して開く方向の圧力を、リフトアームシリンダ11のボトム室11a側から導入する第2の開側圧力室75と、ポペット71を閉じる方向に押圧する油圧を、ボトム室側管路15における負荷保持弁70とリフトアームシリンダ11のボトム室11aの間から導入する閉側圧力室76とを備える。閉側圧力室76内の圧力を受けるポペット71の閉側受圧面71aは、第2の開側圧力室75内の圧力を受けるポペット71の開側受圧面71bよりも大きく設定されている。閉側圧力室76は、リターンスプリング73を収容したバネ室を兼ねている。
【0052】
油圧駆動装置10はさらに、ボトム室側管路15と負荷保持弁70の閉側圧力室76の間に介在して設けられた切換弁80を備える。この切換弁80は、ボトム室側管路15に対し負荷保持弁70とリフトアームシリンダ11のボトム室11aの間で接続された第1のポート81と、閉弁側圧力室76に接続された第2のポート82と、作動油タンク17に接続されたタンクポート83とを備える。この切換弁80はスプリングリターン式の2位置弁であり、第1のポート81を第2のポート82に接続するとともにこれら第1のポート81および第2のポート82からタンクポート83に向かう圧油の流れをポペット84により阻止する弁位置である供給位置80a(ノーマル位置)と、第2のポート82をタンクポート83に接続する弁位置である排出位置80b(作動位置)とに切換可能に構成されている。切換弁80のタンクポート83を作動油タンク17に接続する戻り管路85には絞り86が設けられている。戻り管路85において絞り86よりも作動油タンク17側には、切換弁80のリターンスプリング87側から延びたドレン管路88が接続されている。
【0053】
油圧駆動装置10はさらに、収縮用のパイロット管路33から分岐した第1の保持圧排出用のパイロット管路111と、開弁用のパイロット管路53から分岐した第2の保持圧排出用のパイロット管路112と、第1の保持圧排出用のパイロット管路111内の圧力および第2の保持圧排出用のパイロット管路112内の圧力のうち高い方をパイロット圧として選択し切換弁80の受圧面89に導く高圧選択弁113(高圧優先形シャトル弁)とを備える。
【0054】
つまり、開閉制御弁55によりパイロット圧が生成されていない状態において、すなわち積載走行時以外の状態において、操作レバー31aが傾倒操作されないとき、および操作レバー31aが傾倒操作されて伸長用のパイロット圧が生成されたとき、すなわち、収縮用のパイロット圧が操作レバー装置31により生成されないとき、さらに言い換えると、リフトアーム用の制御弁20の弁位置が中立位置20cのとき、およびリフトアーム用の制御弁の弁位置が第1の作動位置20aのときには、切換弁80の弁位置はリターンスプリング87によって供給位置80aに制御されるようになっている。また、同状態において、操作レバー装置31が収縮用のパイロット圧を生成したときには、すなわち、リフトアーム用の制御弁20の弁位置が第2の作動位置20bのときには、その収縮用のパイロット圧が第1の保持圧排出用のパイロット管路111と高圧選択弁113を通じて切換弁80の受圧面89に導かれ、切換弁80の弁位置はリターンスプリング87の弾性力に抗して排出位置80bに制御されるようになっている。
【0055】
一方、開閉制御弁55によりパイロット圧が生成されている状態においては、すなわち積載走行の状態においては、開閉制御弁55により生成されたパイロット圧が第2の保持圧排出用のパイロット管路112と高圧選択弁113を通じて切換弁80の受圧面89に導かれ、切換弁80の弁位置はリターンスプリング87の弾性力に抗して排出位置80bに制御されるようになっている。
【0056】
本実施形態に係る油圧駆動装置10の動作について次の(1)〜(4)で説明する。
【0057】
(1) ホイールローダ1を走行させていない状態で作業装置2を上昇させる場合の油圧駆動装置10の動作について、はじめに説明する。
【0058】
この場合、ホイールローダ1のオペレータは操作レバー31aを操作し、操作レバー装置31からリフトアーム用の制御弁20に伸長用のパイロット圧を与えて、リフトアーム用の制御弁20の弁位置を第1の作動位置20aに切り換える。これにより、リフトアーム用の制御弁20においてポンプポート23がボトム室側ポート21に接続され、かつロッド室側ポート22がタンクポート24に接続された状態となる。
【0059】
また、オペレータは指示スイッチ58をオンしない。さらに車速センサ56から出力された車速検出信号は積載走行時の規定範囲内の車速を示さない。したがってコントローラ57は開閉制御弁55に制御電流を与えない状態である。つまり、開閉制御弁55はパイロット圧を生成していない状態である。
【0060】
これらの状態においては、第1の保持圧排出用のパイロット管路111と高圧選択弁113を通じて切換弁80に収縮用のパイロット圧が与えられることはなく、第2の保持圧排出用のパイロット管路112と高圧選択弁113を通じてパイロット圧が切換弁80に与えられることもない。このため、切換弁80の弁位置はリターンスプリング87により供給位置80aに制御される。したがって、リフトアームシリンダ11のボトム室11a内の圧力は負荷保持弁70とボトム室11aの間に介在するボトム室側管路15の部分と、切換弁80の第1のポート81および第2のポート82とを通じて閉側圧力室76に導入され、リターンスプリング73とともにポペット71を閉じる方向に押圧する。この一方で、メインポンプ13の吐出圧はリフトアーム用の制御弁20と負荷保持弁70との間に介在するボトム室側管路15の部分を通じて第1の開側圧力室74に導入され、ポペット71を開く方向に押圧する。第1の開側圧力室74に導かれたメインポンプ13の吐出圧がポペット71を開く方向に押圧する力は、閉側圧力室76に導かれたリフトアームシリンダ11のボトム室11a内の圧力とリターンスプリング73とがポペット71を閉じる方向に押圧する力に抗してポペット71を押し退け、これにより負荷圧保持弁70は開く。つまり、負荷保持弁70はリフトアーム用の制御弁20からボトム室側管路15を通じてリフトアームシリンダ11のボトム室11aに向かう圧油の流れを許可する。これに伴ってメインポンプ13の吐出油はリフトアーム用の制御弁20のポンプポート23およびボトム室側ポート21を通過した後、ボトム室側管路15を通過してリフトアームシリンダ11のボトム室11aに供給される。これと並行してリフトアームシリンダ11のロッド室11b内の圧油はロッド室側管路16と、リフトアーム用の制御弁20のロッド室側ポート22およびタンクポート24とを通じて作動油タンク17に排出される。この結果、リフトアームシリンダ11は伸長して作業装置2を上昇させる。
【0061】
このようにして作業装置2が上昇していくとき、すなわち、メインポンプ13の吐出油がリフトアーム用の制御弁20とボトム室側管路15を通じてリフトアームシリンダ11のボトム室11aに供給されるとき、アキュムレータ40内の圧力が所定圧力未満の状態であれば、蓄圧弁61の弁位置は、リターンスプリング62により蓄圧位置61aに制御される。このとき、蓄圧弁61はチェック弁63により蓄圧用のバイパス管路60内でのアキュムレータ40に向かう圧油の流れを許可し、その逆向きの圧油の流れを阻止する。したがって、ボトム室側管路15内を流れる圧油の一部は、アキュムレータ40内の圧力が所定圧力に達するまで、または、リフトアーム用の制御弁20の弁位置が第1の作動位置20aでなくなるまで、蓄圧用のバイパス管路60を通じてアキュムレータ40に供給される。この結果、アキュムレータ40は圧力を蓄えた状態となる。
【0062】
(2) 積載走行時を除き作業装置2を上昇させた状態に保持する場合の油圧駆動装置10の動作について次に説明する。
【0063】
この場合、ホイールローダ1のオペレータは操作レバー31aを操作しないため、操作レバー装置31からリフトアーム用の制御弁20には伸長用のパイロット圧も収縮用のパイロット圧も与えられず、リフトアーム用の制御弁20の弁位置は中立位置20cに保持される。これによりリフトアーム用の制御弁20においてポンプポート23とボトム室側ポート21の間およびポンプポート23とロッド室側ポート22の間の両方が遮断された状態となる。
【0064】
また、オペレータは指示スイッチ58をオンしない。さらに車速センサ56から出力された車速検出信号は積載走行時の規定範囲内の車速を示さない。したがってコントローラ57は開閉制御弁55に制御電流を与えない状態である。つまり、開閉制御弁55はパイロット圧を生成していない状態である。
【0065】
これらの状態においては、第1の保持圧排出用のパイロット管路111と高圧選択弁113を通じて切換弁80に収縮用のパイロット圧が与えられることはなく、第2の保持圧排出用のパイロット管路112と高圧選択弁113を通じてパイロット圧が切換弁80に与えられることもない。このため、切換弁80の弁位置はリターンスプリング87により供給位置80aに制御される。したがって、リフトアームシリンダ11のボトム室11a内の圧力は負荷保持弁70とボトム室11aの間に介在するボトム室側管路15と、切換弁80の第1のポート81および第2のポート82を通じて閉側圧力室76に導入され、リターンスプリング73とともにポペット71を閉じる方向に押圧する。また、リフトアームシリンダ11のボトム室11a内の圧力は、負荷保持弁70とリフトアームシリンダ11のボトム室11aの間に介在するボトム室側管路15の部分を通じて、第2の開側圧力室75に導入される。また、メインポンプ13と負荷保持弁70の間はリフトアーム用の制御弁20により遮断されているため、負荷保持弁70の第1の開側圧力室74にメインポンプ13の吐出圧は導入されない。閉側圧力室76内に導入されたリフトアームシリンダ11のボトム室11a内の圧力とリターンスプリング73は、第2の開側圧力室75内に導入されたリフトアームシリンダ11のボトム室11a内の圧力に抗して、ポペット71を弁座72に押し付け、すなわち閉じる方向に押圧し、これによって負荷圧保持弁70は閉じた状態に保持される。つまり、負荷保持弁70は、リフトアームシリンダ11のボトム室11aからボトム室側管路15を通じてリフトアーム用の制御弁20に向かう圧油の流れをポペット71により阻止する。この結果、リフトアームシリンダ11は伸長した状態に保持されて作業装置2を上昇した状態に保持する。この状態において、圧油の流れを阻止するものはポペット71であるので、リフトアームシリンダ11のボトム室11a内の圧油がリフトアーム用の制御弁20の隙間を通じて作動油タンク17に漏れることに起因する作業装置2の降下が確実に防止される。
【0066】
(3) ホイールローダ1が走行していない状態で作業装置2を下降させる場合の油圧駆動装置10の動作について次に説明する。
【0067】
この場合、ホイールローダ1のオペレータは操作レバー31aを操作し、操作レバー装置31からリフトアーム用の制御弁20に収縮用のパイロット圧を与えて、リフトアーム用の制御弁20の弁位置を第2の作動位置20bに切り換える。これにより、リフトアーム用の制御弁20においてポンプポート23がロッド室側ポート22に接続され、かつボトム室側ポート21がタンクポート24に接続された状態となる。
【0068】
また、オペレータは指示スイッチ58をオンしない。さらに車速センサ56から出力された車速検出信号は積載走行時の規定範囲内の車速を示さない。したがってコントローラ57は開閉制御弁55に制御電流を与えない状態である。つまり、開閉制御弁55はパイロット圧を生成していない状態である。
【0069】
これらの状態においては、操作レバー装置31により生成された収縮用のパイロット圧が、第1の保持圧排出用のパイロット管路111および高圧選択弁113を通じて切換弁80にも与えられる。このため、切換弁80の弁位置は排出位置80bに切り換わる。これにより、負荷保持弁70の閉側圧力室76内の圧力は切換弁80の第2のポート82とタンクポート83を通じて作動油タンク17に排出される。この一方で、メインポンプ13の吐出油はリフトアーム用の制御弁20のポンプポート23およびロッド室側ポート22を通過した後、ロッド室側管路16を通過してリフトアームシリンダ11のロッド室11bに供給される。これに伴ってリフトアームシリンダ11のボトム室11a内の圧力は負荷保持弁70の第2の開側圧力室75に導入され、ポペット71をリターンスプリング73の弾性力に抗して押し退け、これにより負荷保持弁70は開く。つまり、負荷保持弁70はリフトアームシリンダ11のボトム室11aからボトム室側管路15を通じてリフトアーム用の制御弁20に向かう圧油の流れを許可する。したがって、リフトアームシリンダ11のボトム室11a内の圧油は、ボトム室側管路15とリフトアーム用の制御弁20のボトム室側ポート21およびタンクポート24を通じて作動油タンク17に排出される。この結果、リフトアームシリンダ11は収縮して作業装置2を降下させる。
【0070】
(4) 作業装置2を上昇させた状態を保持してホイールローダ1を走行させる場合、すなわちホイールローダ1が積載走行を行う場合の油圧駆動装置10の動作について次に説明する。
【0071】
この場合、ホイールローダ1のオペレータは操作レバー31aを操作しないため、操作レバー装置31からリフトアーム用の制御弁20には伸長用のパイロット圧も収縮用のパイロット圧も与えられず、リフトアーム用の制御弁20の弁位置は中立位置20cに保持される。これによりリフトアーム用の制御弁20においてポンプポート23とボトム室側ポート21の間およびポンプポート23とロッド室側ポート22の間の両方が遮断された状態となる。
【0072】
また、オペレータは指示スイッチ58をオンし、コントローラ57に積載走行を行うことを指示した状態にする。その後、車速センサ56から出力された車速検出信号が積載走行時の規定範囲内の車速を示すと、コントローラ57はその車速が積載走行時の規定範囲内であると判定し、開閉制御弁55に制御電流を供給する。これにより開閉制御弁55はパイロット圧を生成する。このパイロット圧は開弁用のパイロット管路53を通じて開閉弁50に与えられ、この開閉弁50の弁位置を開位置50bに切り換えるとともに、第2の保持圧排出用のパイロット管路112と高圧選択弁113を通じて切換弁80に与えられて、切換弁80の弁位置を排出位置80bに切り換える。
【0073】
これらの状態において、負荷保持弁70の閉側圧力室76内の圧力は切換弁80の第2のポート82およびタンクポート83を通じて作動油タンク17に排出される。このとき、第2の開側圧力室75には、負荷保持弁70とリフトアームシリンダ11のボトム室11aの間に介在するボトム室側管路15の部分を通じて、リフトアームシリンダ11のボトム室11a内の圧力が導入されている。したがって、その第2の開側圧力室75に導入されたリフトアームシリンダ11のボトム室11a内の圧力が、リターンスプリング73の弾性力に抗してポペット71を押し退け、これにより負荷保持弁70は開く。このとき、開閉弁50の弁位置が開位置50bに制御されているとともに、リフトアーム用の制御弁20の弁位置が中立位置20cとなってメインポンプ13と負荷保持弁70の間が遮断されているから、リフトアームシリンダ11のボトム室11a内の圧油は負荷保持弁70が開いたことによって、負荷保持弁70と接続管路41を通じてアキュムレータ40に導かれる。つまり、負荷保持弁70はリフトアームシリンダ11のボトム室11aから接続管路41を通じてアキュムレータ40に向かう圧油の流れを許可する。この結果、積載走行中にリフトアームシリンダ11のボトム室11aに作用する負荷圧力がアキュムレータ40によって吸収され、作業装置の縦揺れが抑えられる。
【0074】
なお、ホイールローダ1の車速が積載走行時の規定範囲内となってから時間T1が経過するまでの間は、開閉制御弁55への制御電流の電流値Iは徐々にI1まで増大し、これによって開閉弁50は徐々に開度を増大させる(
図3中の切欠きの位置および
図4参照)。これにより、リフトアームシリンダ11のボトム室11a内の圧油がアキュムレータ40に急激に流入することが防止され、その急激な流入に伴う作業装置2の急激な降下が抑えられる。ホイールローダ1の走行開始から時間T1が経過すると開閉弁50の開度は十分に大きくなり、アキュムレータ40内の圧力はリフトアームシリンダ11のボトム室11a内に作用する負荷圧力と略同じになる。
【0075】
また、開閉弁50の弁位置が開位置50bに制御されたとき、アキュムレータ40内の圧力がリフトアームシリンダ11のボトム室11a内の圧力と略同じになるまで、リフトアームシリンダ11のボトム室11aからアキュムレータ40に圧油が流入するため、リフトアームシリンダ11はアキュムレータ40に流入した圧油の量の分だけ収縮することになる。「(1)」で説明したように作業装置2が上昇していくときに、アキュムレータ40にメインポンプ13の吐出油の一部が供給されるので、リフトアームシリンダ11が伸長して作業装置2が上昇した後、ホイールローダ1が積載走行を行うときには既にアキュムレータに圧油が蓄えられている。これにより、開閉弁50の弁位置が開位置50bに制御された直後におけるリフトアームシリンダ11の収縮量、すなわち作業装置2の降下量を少なくすることができる。
【0076】
本実施形態に係る油圧駆動装置10によれば次の効果を得られる。
【0077】
本実施形態に係る油圧駆動装置10は、作業装置2を上昇させるときにメインポンプ13の吐出油を蓄圧弁61を通じてアキュムレータ40に圧油を供給できる。これにより、積載走行時に開閉弁50の弁位置が開位置に制御された直後の作業装置の下降量を少なくすることができる。
【0078】
本実施形態に係る油圧駆動装置10は、積載走行時を除き作業装置2を上昇させた状態に保持する場合に、リフトアームシリンダ11のボトム室11a内の圧油がリフトアーム用の制御弁20の隙間を通じて作動油タンク17に漏れることに起因した作業装置の降下を、負荷保持弁70のポペット71によって確実に防止できる。これにより、オペレータの意図に反して作業装置2が降下することを確実に防止できる。
【0079】
さらに、本実施形態に係る油圧駆動装置10は、切換弁80においてポペット84が、第1のポート81からタンクポート83に向かう圧油の流れと、第2のポート82からタンクポート83に向かう圧油の流れを阻止するので、リフトアームシリンダ11のボトム室11a内の圧力を漏らすことなく負荷保持弁70の閉側圧力室76に導いてポペット71に作用させることができる。したがって、負荷保持弁70のポペット71を確実に閉じた状態に保持することができ、これにより負荷保持弁70からリフトアーム用の制御弁20に圧油が漏れることの防止に貢献できる。
【0080】
なお、前述の実施形態に係る油圧駆動装置10は、ホイールローダ1の作業装置2に対して適用されたものであるが、ホイールショベルのフロント作業装置、ダンプトラックのベッセルに対して適用してもよい。