特許第5873685号(P5873685)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873685
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】窒素含有基を有するポリシロキサン
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/26 20060101AFI20160216BHJP
   D06L 1/00 20060101ALI20160216BHJP
   C11D 3/37 20060101ALN20160216BHJP
【FI】
   C08G77/26
   D06L1/00
   !C11D3/37
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2011-232982(P2011-232982)
(22)【出願日】2011年10月24日
(65)【公開番号】特開2012-92336(P2012-92336A)
(43)【公開日】2012年5月17日
【審査請求日】2014年8月4日
(31)【優先権主張番号】10 2010 042 861.2
(32)【優先日】2010年10月25日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】10 2010 062 156.0
(32)【優先日】2010年11月30日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501073862
【氏名又は名称】エボニック デグサ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(72)【発明者】
【氏名】ヘニング,フラウケ
(72)【発明者】
【氏名】フェレンツ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ノット,ウィルフリート
(72)【発明者】
【氏名】ジルバー,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンク,ハンス ヘニング
(72)【発明者】
【氏名】クペルト,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】コーニング,フランク
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−197174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/26
D06L 1/00
C11D 3/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1のポリシロキサン
【化1】

であり、式中、
は、各々の場合、独立して、1〜30個の炭素原子を有する同一または異なる直鎖状または分枝状の、飽和または不飽和の炭化水素基、あるいは6〜30個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基を表し、
は、各々の場合、独立して、R、アルコキシ基またはヒドロキシル基を表し、
は、各々の場合、独立して、水素または窒素原子で置換された炭化水素基を表し、
は、各々の場合、独立して、8〜30個の炭素原子を有する同一または異なる直鎖状または分枝状の、飽和またはオレフィン性不飽和の炭化水素基、例えばデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシルを表し、
は、各々の場合、独立して、1〜30個の炭素原子を有するグアニジン基もしくはアルキレニルグアニジン基を表し、
は、各々の場合、独立して、1〜20個の炭素原子を有する同一または異なる直鎖状または分枝状の、飽和または不飽和の二価炭化水素基を表し、
a=2〜20であり、
b=10〜5000であり、
c=1〜500であり、
d=0〜500であり、
e=0〜500であり、
f=0〜20であり、
g=0〜20である)、
またはプロトン性反応剤Hとのそれらのイオン付加物
(ただし、R基の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%がRであり、指数dおよびeの少なくとも一方が≠0であり、d=0の場合にはe≠0であり、e=0の場合にはd≠0である)。
【請求項2】
が、式1eおよび1f
【化2】

(式中、Rは、各々の場合、独立して、1〜20個の炭素原子を有する同一または異なる直鎖状または分枝状の、飽和または不飽和の二価炭化水素基を表す)
の置換基の群から選択される置換基である、請求項1に記載のポリシロキサン。
【請求項3】
式1においてc、e>0かつc>0.5eである、請求項1または2に記載のポリシロキサン。
【請求項4】
陰イオンAが、酸Hの有機または無機陰イオンおよびその誘導体から選択される、プロトン化された窒素含有基上の正電荷に対する同一または異なる対イオンであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のイオン付加物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリシロキサンを含む組成物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリシロキサンと、脂肪族および芳香族の、プロトン性および非プロトン性溶媒、共界面活性剤、ベタイン、乳化剤、脂肪アルコールアルコキシレート、モノ−、ジ−、およびトリグリセリド、合成および天然由来の油などのさらなる配合物および処理助剤とを含む組成物。
【請求項7】
OEM仕上げ用の織物調整剤および/または織物および織布の繰り返しの洗浄および再調整のための織物再調整組成物としての、請求項5または6に記載の組成物の使用。
【請求項8】
洗濯洗剤および洗浄剤における、請求項5または6に記載の組成物の使用。
【請求項9】
異なる官能性シランを、縮合プロセスにおいて末端ヒドロキシル官能性ポリジメチルシロキサンと反応させて、多官能性の末端ブロックされたポリシロキサンを形成し、
ここで、
第1の工程において、アミノアルキルジアルコキシシランをアミノ基において官能化し、
第2の工程において、トリメチルシリル基を放出する試薬の存在下でヒドロキシル官能性ポリジメチルシロキサンと共縮合させることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のシロキサンの製造方法。
【請求項10】
トリメチルシリル基が、側鎖有機変性基のアミノ基またはヒドロキシル基をシラン化せずに、シリコーン鎖を選択的に末端ブロックすることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
a)末端ヒドロキシル官能性の直鎖状または分枝状ポリシロキサン、およびジメチルジアルコキシシラン、メチルトリアルコキシシラン、またはテトラエトキシシランとのそれらの混合物、
b)ヘキサメチルジシラザンまたは異なる炭素基で置換されたジシラザン、ならびに
c)3−アミノプロピルメチルジアルコキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジアルコキシシラン、またはヒドロキシル置換アミドおよび/またはヒドロキシル置換カルバメート構造および/またはエトキシ化アミンおよび/またはグアニジンまたはアルキレニルグアニジン構造で置換された、直鎖状または分枝状の、飽和または不飽和の炭化水素基を含むもしくは式2a〜iの物質の群から選択されるさらなる官能性ジアルコキシシラン
【化3】
(式中、R、RおよびRは、各々、式1に定義されるとおりであり、Rが、水素原子、メチル基またはカルボキシル基であり、Rが、アルキルまたはアシル基であり、f=0〜20である
が互いに反応することを特徴とする、請求項9または10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、所定の比率の側鎖アミノ官能基と少なくとも1つのさらなる側鎖官能基とによって変性されたポリシロキサン、これらの多官能性ポリシロキサンの製造方法、このような多官能性ポリシロキサンを含む調製物、およびこれらの多官能性ポリシロキサンまたはそれらの調製物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術
アミノ官能性シロキサンは、織物再調整(textile-reconditioning)組成物の成分、より特定的には織物軟化組成物の成分として、織物用の洗濯洗剤もしくは洗浄組成物および疎水化剤の成分として広く用いられている。この群の化合物の多くの構造的変形が、従来技術に記載されており、異なる経路を介して得られる。しかしながら、末端アミノ変性された純粋に直鎖状のポリジメチルシロキサンは、製造の過程においてその変性度を変えることができない。このことは、アミノ基の数だけでなくアミノ基の種類も、アミノポリシロキサンの直接性(substantivity)、すなわち、例えばケラチン物質などの担体あるいは織物に付着する能力にかなりの影響を及ぼすため、不都合である。アミノシロキサンにおける全窒素含量が重要なパラメータであるが、その理由は、それがアミノシロキサンの直接性と直接相関があるためである。アミノ官能基の数を減らさずにポリマー鎖を延長するために、ABn型マルチブロックコポリマーが記載されている。しかしながら、鎖長が長くなるにしたがい、直鎖状コポリマーは非常に粘性になるため、扱いにくくなる。米国特許第5,807,956号および同第5,981,681号には、ポリシロキサンおよびアミノ−ポリアルキレンオキシドからなる交互の単位を有する(AB)A型の非加水分解性ブロックコポリマーが教示されている。それらは、貴金属触媒によるヒドロシリル化によって、α,ω−二水素ポリジメチルシロキサンをエポキシ含有オレフィンに連結させ、得られるエポキシ末端シロキサンをアミノ末端ポリアルキレンオキシドと反応させることによって製造される。あるいは、α,ω−二水素ポリジメチルシロキサンは、ヒドロシリル化によってエポキシ末端アリルポリエーテルに連結され、このように得られるエポキシ官能化シロキサンは次にジアミンと反応される。
【0003】
窒素含量にかかわらず様々であってもよい鎖長を伴う高い変性度を有するポリシロキサンは、ポリシロキサンをアミノ含有有機置換基で側鎖官能化することによって得られる。
【0004】
従来技術には、側鎖が変性されたアミノシロキサンを扱う多くの参照文献が開示されている。側鎖が変性されたアミノシロキサンは、塩基触媒下または酸触媒下で得られる。例えば、欧州特許出願公開第1 972 330号の段落[0154]および[0155]に記載されるような、塩基触媒作用による平衡による製造では、用いられる出発材料に応じて、末端ジヒドロキシ官能性の側鎖アミノ変性ポリシロキサン、またはトリメチルシリル基で末端ブロックされた(endblocked)側鎖アミノ変性ポリシロキサンをもたらすことができる。このような末端ブロックされたポリシロキサンは、遊離SiOHを有するそれらの構造類似体と比較した際、溶媒の非存在下で優れた貯蔵安定性を有するだけでなく、このようなポリシロキサンの水性エマルジョンを取り扱う際のゲル状の沈殿物および付着物も防止する。これらのゲル堆積物は、織物分野の用途に特に望ましくない。
【0005】
例えば、米国特許第7,238,768 B2号に示されるような、従来技術による酸触媒作用による縮合重合は、鎖の末端にヒドロキシル基またはアルコキシ基を有するアミノ変性ポリシロキサンをもたらす。確かに、この方法は、より低い反応温度およびより短い反応時間を有するため、塩基触媒作用による平衡と比較して有利であるが、このより経済的な製造方法は、トリメチルシリル末端基がないため、これらの末端ブロックされていないシロキサンの加水分解安定性を低下させる原因となる。
【0006】
アミノ官能性ポリシロキサンは、それらで処理された織布に、有利な効果、例えば、織物軟化効果および防しわ性を与えることができ、ならびに/あるいは、洗浄および/または調整(conditioning)および/または磨耗の過程で起こり得る弊害または悪影響、例えば色落ち、変退色などを低減するように、絶えず改良されている。さらに、織布の良好な柔軟性だけでなく十分な親水性が得られるべきである。従来技術のポリシロキサンをベースとする織物軟化配合物(formulation)のさらなる欠点は、それを用いて仕上げられた織布の軟化特性が、最悪の場合、一度洗濯しただけで失われ得ることである。したがって、織物製造のOEM仕上げ、ならびに洗浄および再調整、例えば洗濯機のすすぎサイクル軟化のいずれの際も織物における耐久性が改良された織物軟化ポリシロキサンが必要とされている。
【0007】
これにより、窒素含量、アミノ基の種類および量、ならびに鎖長を処方によって独立して変えることができる構造的に正確に定義されたポリマーを提供するための製造方法の必要性が高まっている。しかしながら、同時に、製造方法は、特定の用途に関して、アミノ含有ポリマーの一貫した組成および再現可能な品質を守るべきである。米国特許第6,171,515 B1号には、シロキサン重合後の合成工程において第一級および第二級アミノ基を例えばグリシドールなどのエポキシ官能性モノマーで官能化させた、末端ブロックされたアミノポリシロキサンおよびジアルコキシ官能性アミノポリシロキサンが記載されている。アルキレンオキシドによるアミノシロキサンの同様の官能化は、欧州特許出願公開第0399706号に記載されている。炭酸グリセロールまたはグルコノラクトンによるアミノ官能性ポリシロキサンの他の官能化は、欧州特許出願公開第1 972 330号およびJ. Phys. Chem. B 2010, 114, 6872-6877に記載されている。
【0008】
直接性の向上に関し、特開2002−167437号には、対応するアミノポリシロキサンをシアナミドと反応させることによって製造される側鎖グアニジノ官能化ポリシロキサンが記載されている。国際公開第2006/081927号には、グアニジノ含有シランおよびアミノ含有シランによるジヒドロキシ官能性ポリジメチルシロキサンの縮合共重合が記載されている。種類および量の異なる窒素含有基によるポリシロキサンの官能化がこのように可能であるが、国際公開第2006/081927号には、末端ブロックされた多アミノ官能性ポリシロキサンへのいかなる経路も開示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明の概要
本発明が解決すべき課題は、織物製造のOEM仕上げならびに洗浄および再調整、例えば洗濯機のすすぎサイクル軟化のいずれでも織物に対する耐久性および/または直接性が改良された代替の官能化アミノポリシロキサンを提供するということである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、意外にも、所定の比率の側鎖アミノ官能基と少なくとも1つのさらなる側鎖官能基および/または末端官能基とによって変性された新規な末端ブロックされたポリシロキサンによって解決される。
【0011】
したがって、本発明は、所定の比率の側鎖アミノ官能基と少なくとも1つのさらなる側鎖官能基および/または末端官能基とによって変性された末端ブロックされたポリシロキサン、およびその製造方法を提供する。
【0012】
本発明は、式1のポリシロキサン
【化1】

であり、式中、
は、各々の場合、独立して、1〜30個の炭素原子を有する同一または異なる直鎖状または分枝状の、飽和または不飽和の炭化水素基、あるいは6〜30個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基、好ましくはメチルまたはフェニル、より特定的にはメチルを表し;
は、各々の場合、独立して、R、アルコキシ基またはヒドロキシル基、好ましくはR、より特定的にはメチルを表し;
が、各々の場合、独立して、水素または窒素原子で置換された炭化水素基、例えばアミノエチル基、より特定的には水素を表し;
は、各々の場合、独立して、8〜30個の炭素原子を有する同一または異なる直鎖状または分枝状の、飽和またはオレフィン性不飽和の炭化水素基、例えばデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、より特定的にはヘキサデシルおよびオクタデシルを表し;
は、各々の場合、独立して、1〜30個の炭素原子を有する同一または異なる直鎖状または分枝状の、飽和または不飽和の極性ヒドロキシル置換アミド基、および/または1〜30個の炭素原子を有するヒドロキシル置換カルバメート基、および/または1〜30個の炭素原子を有するエトキシ化アミン基、および/または1〜30個の炭素原子を有するグアニジン基もしくはアルキレニルグアニジン基を表し、好ましくは式1a〜1hの置換基の群から選択され、
【化2】

は、水素、炭化水素基、アシル基、カルボキシレート基またはカルバメート基または炭酸基、より特定的には水素およびCH−C(O)を表し;
は、各々の場合、独立して、1〜20個、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する同一または異なる直鎖状または分枝状の、飽和または不飽和の二価炭化水素基、より特定的には(CH−基を表し、
a=2〜20;好ましくは2〜10、特に2であり;
b=10〜5000、好ましくは20〜2000、特に20〜1000であり;
c=1〜500、好ましくは1〜100、特に1〜30であり;
d=0〜500、好ましくは0〜100、特に0〜30であり;
e=0〜500、好ましくは1〜100、特に1〜30であり;
f=0〜20、好ましくは0〜10、特に0であり;
g=0〜20、好ましくは0〜10、特に0である)
またはプロトン性反応剤Hとのそれらのイオン付加物を提供し、
ただし、R基の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%はRであり、指数dおよびeの少なくとも一方は≠0であり、d=0の場合、e≠0であり、e=0の場合、d≠0であり;好ましくはc、e>0かつc>0.5eであり、より特定的にはc、e>0かつc≧eである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るポリシロキサンの好ましい実施形態では、式1のRは、式1a〜1fから選択される少なくとも1つの置換基であり、ただし、式1の指数cは、指数eより大きい。
【0014】
式に示されるシロキサン鎖の様々なモノマー単位は、任意の数のブロックおよび任意の順序を有するブロックで構成可能であり、またはある統計的分布を有する。式に用いられる指数は、統計的手段とみなされるべきである。
【0015】
本発明は、一般式Hの酸との窒素含有基を有する本発明のポリシロキサンのイオン付加物をさらに提供する。陰イオンAは、酸Hの有機または無機陰イオンおよびその誘導体から選択される、正電荷に対する同一または異なる対イオンである。好ましい陰イオンは、例えば、塩化物、硫酸塩または硫酸水素塩、炭酸塩または炭酸水素塩、リン酸塩またはリン酸水素塩、酢酸塩または直鎖状または分枝状の、飽和またはオレフィン性不飽和のアルキル鎖を有する同種のカルボン酸塩、芳香族カルボン酸塩、アミノ酸カルボン酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、置換または非置換のコハク酸塩、および例えば乳酸塩などのL−ヒドロキシカルボン酸塩である。本発明に係るアミノシロキサンおよびそれらのイオン付加物は、形成される付加物の安定性に応じて、解離平衡の状態で存在することができる。
【0016】
本発明は、これらの多官能性ポリシロキサンの組成物および調製物ならびに使用もさらに提供し、これは、OEM仕上げ用の織物調整剤および繰り返し洗浄を再調整するための織物再調整組成物の簡単な配合、ならびに織物および織布に対するその良好な適用特性を確実にする。
【0017】
本発明は、本発明に係る多官能性シロキサンと、例えば脂肪族および芳香族の、プロトン性および非プロトン性溶媒、共界面活性剤(cosurfactants)、ベタイン、乳化剤、脂肪アルコールアルコキシレート、モノ−、ジ−、およびトリグリセリド、合成および天然由来の油などのさらなる配合物および処理助剤とを含む組成物をさらに提供する。
【0018】
織物調整組成物とは、この文脈において、消費者に販売される前に、製造された織物の仕上げに用いられる任意の組成物を意味する。
【0019】
織物再調整組成物とは、この文脈において、それを用いて処理される織布に有利な効果、例えば、織物軟化効果および防しわ性を与え、ならびに/あるいは、洗浄および/または調整および/または磨耗の過程で起こり得る弊害または悪影響、例えば色落ち、変退色などを低減する任意の組成物を意味する。織物再調整組成物が織物軟化組成物(すすぎサイクル柔軟剤)であるのが特に好ましい。本発明は、多官能性ポリシロキサンを含む洗濯洗剤または洗浄剤組成物をさらに提供する。
【0020】
本発明は、様々な官能性シランを縮合プロセスにおいて末端ヒドロキシル官能性ポリジメチルシロキサンと反応させて、多官能性の末端ブロックされたポリシロキサンを形成することができる方法も提供する。本発明の係る方法の第1の工程では、アミノアルキルジアルコキシシランを、アミノ基においてさらに官能化し、第2の工程では、トリメチルシリル基を放出する試薬の存在下において、互いに対して特定の比率でヒドロキシル官能性ポリジメチルシロキサンと共縮合させることができる。国際公開第99/17615号に記載のように、側鎖有機変性基のアミノ基またはヒドロキシル基をシラン化せずに、トリメチルシリル基がシリコーン鎖を選択的に末端ブロックすることは当業者にとって予想外かつ意外なことである。
【0021】
本発明は、織物調整および織物再調整組成物、より特定的には織物軟化組成物(すすぎサイクル柔軟剤)における、本発明に係る多官能性シロキサンの使用をさらに提供する。市販のすすぎサイクル柔軟剤は、その主な活性成分として、分子中に1つまたは複数の長鎖アルキル基を有する1種以上の陽イオン性織物軟化化合物を含む水性配合物である。広く用いられている陽イオン性織物軟化化合物は、例えば、メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−N,N−ジ(獣脂アシルオキシエチル)アンモニウム化合物またはN,N−ジメチル−N,N−ジ(獣脂アシルオキシエチル)アンモニウム化合物を含む。他の好適なアンモニウム化合物は、米国特許出願公開第2010/0184634号によって段落[0027]〜[0068]に開示されており、これに関し、その明確な開示内容は参照により本明細書に援用される。このすすぎサイクル柔軟剤は、添加剤および助剤、より特定的には香料、染料、粘度調節剤、消泡剤、防腐剤、有機溶媒、非シロキサンポリマーおよび本発明に係らない他のシロキサンポリマーをさらに含んでいてもよい。より特定的には、本発明に係る組成物は、0.001重量%〜25重量%、より好ましくは0.01重量%〜15重量%の1種以上の異なる添加剤または助剤を含んでいてもよい。
【0022】
香料として、従来技術の水性すすぎサイクル柔軟剤に適していることが知られている任意の香料または香料混合物が、好ましくは香油の形態で使用され得る。香料および/または芳香剤の化学物質の例が、特に独国特許出願公開197 51 151 A1号第4ページの11〜17行に開示されている。より特定的には、本発明に係る組成物は、0.01重量%〜10重量%、より好ましくは0.1重量%〜5重量%の1種以上の香料または香料混合物を含んでいてもよい。
【0023】
従来技術の水性すすぎサイクル柔軟剤に適していることが知られている任意の染料を使用することができ、その場合、水溶性染料が好ましい。好適な市販の水溶性染料の例は、SANDOLAN(登録商標)Walkblau NBL 150ミリングブルー(milling blue)(Clariant製)およびSicovit(登録商標)Azorubin 85 E122アゾルビー(azo ruby)(BASF製)である。より特定的には、本発明に係る組成物は、0.001重量%〜0.1重量%、より好ましくは0.002重量%〜0.05重量%の1種以上の染料または染料混合物を含んでいてもよい。
【0024】
粘度を低下させるために粘度調節剤として、水性すすぎサイクル柔軟剤は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、好ましくは塩化カルシウムを、0.05〜2重量%の量で含んでいてもよい。粘度を高めるための粘度調節剤として、水性すすぎサイクル柔軟剤は、従来技術の適していることが知られている増粘剤を含んでいてもよく、その場合、国際公開第2007/125005号から知られているポリウレタン増粘剤が好ましい。好適な増粘剤の例は、TEGO(登録商標)Visco Plus 3030(Evonik Tego Chemie製)、Acusol(登録商標)880および882(Rohm & Haas製)、Rheovis(登録商標)CDE(BASF製)、Rohagit(登録商標)KF 720 F(Evonik Roehm GmbH)およびPolygel(登録商標)K100(Neochem GmbH製)である。
【0025】
従来技術の水性すすぎサイクル柔軟剤に適していることが知られている任意の消泡剤が使用され得る。好適な市販の消泡剤の例は、Dow Corning(登録商標)DB-110AおよびTEGO(登録商標)Antifoam(登録商標)7001 XPである。より特定的には、本発明に係る組成物は、0.0001重量%〜0.05重量%、より好ましくは0.001重量%〜0.01重量%の1種以上の異なる消泡剤を含んでいてもよい。
【0026】
防腐剤として、水性すすぎサイクル柔軟剤は、従来技術の適していることが知られている殺菌性および/または抗真菌性の活性剤を含んでいてもよく、その場合、水溶性活性剤が好ましい。好適な市販の殺菌剤の例は、メチルパラベン、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンである。水性すすぎサイクル柔軟剤は、同様に、防腐剤として酸化防止剤を含んでいてもよい。好適な市販の酸化防止剤の例は、アスコルビン酸、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、トコフェロールおよび没食子酸プロピルである。より特定的には、本発明に係る組成物は、0.0001重量%〜0.5重量%、より好ましくは0.001重量%〜0.2重量%の1種以上の異なる防腐剤を含んでいてもよい。より特定的には、本発明に係る組成物は、0.001重量%〜0.01重量%、より好ましくは0.001重量%〜0.01重量%の1種以上の異なる酸化防止剤を含んでいてもよい。
【0027】
有機溶媒として、すすぎサイクル柔軟剤は、短鎖アルコール、グリコールおよびグリコールモノエーテルを含んでいてもよく、その場合、エタノール、2−プロパノール、1,2−プロパンジオールおよびジプロピレングリコールが好ましい。より特定的には、本発明に係る組成物は、0.1重量%〜10重量%、より好ましくは0.2重量%〜5重量%の1種以上の異なる有機溶媒を含んでいてもよい。
【0028】
すすぎサイクル柔軟剤は、1種以上の非シロキサンポリマーを含んでいてもよい。非シロキサンポリマーの例は、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミンまたは多糖類である。より特定的には、本発明に係る組成物は、0.01重量%〜25重量%、より好ましくは0.1重量%〜10重量%の1種以上の様々な非シロキサンポリマーを含んでいてもよい。
【0029】
本発明は、洗濯洗剤または洗浄剤における、本発明に係る多官能性シロキサンの使用をさらに提供する。洗濯洗剤または洗浄剤組成物に組み込むことにより、消費者に織物再調整洗濯洗剤または洗浄剤(「ツーインワン(2in1)」の洗濯洗剤または洗浄剤)を提供し、それらは、2つの製品(一方では洗濯洗剤または洗浄剤製品、および他方ではすすぎサイクル柔軟剤)を注入する必要がないだけでなく、別個のすすぎサイクルも不要である。織物再調整組成物および界面活性剤に加えて、洗濯洗剤または洗浄剤組成物は、洗濯洗剤または洗浄剤組成物の性能および/または審美的特性をさらに改善するためのさらなる成分を含み得る。好ましい洗濯洗剤または洗浄剤組成物は、界面活性剤、ビルダー、漂白剤、漂白活性化剤、酵素、香料、香料担体、蛍光剤、染料、発泡防止剤、シリコーン油、再付着防止剤、光学的増白剤、変退色防止剤(greyness inhibitors)、防縮剤(shrinkage inhibitors)、防しわ剤、色素移動抑制剤(dye transfer inhibitors)、抗菌活性剤、殺菌剤、抗真菌剤、酸化防止剤、防腐剤、腐食防止剤、帯電防止剤、苦味剤、アイロン助剤、撥剤(phobing agents)および含浸剤、膨張剤および防滑剤、中性充填塩(neutral filling salts)、およびまた紫外線吸収剤の群からの1つ以上をさらに含む。より特定的には、本発明の組成物は、本明細書に記載のさらなる成分のうちの1種以上を、0.001重量%〜90重量%、より好ましくは0.01重量%〜45重量%含んでいてもよい。使用可能な界面活性剤の例は、国際公開第2007/115872号第17ページ28行から第21ページ24行に記載されている。ビルダー、漂白剤、漂白活性化剤、漂白触媒および酵素の例は、国際公開第2007/115872号の第22ページ7行から第25ページ26行に記載されている。再付着防止剤、光学的増白剤、変退色防止剤、色素移動抑制剤は、国際公開第2007/115872号の第26ページ15行から第28ページ2行に記載されている。防しわ剤、抗菌活性剤、殺菌剤、抗真菌剤、酸化防止剤、防腐剤、帯電防止剤、アイロン助剤、紫外線吸収剤の例は、例として国際公開第2007/115872号第28ページ14行から第30ページ22行に記載されている。
【0030】
本発明のシロキサンの製造方法:
本発明のポリシロキサンを製造するための方法は、例として後述される化合物の使用に基づくものであり、ここで、
a)末端ヒドロキシル官能性の直鎖状または分枝状ポリシロキサン、およびジメチルジアルコキシシランまたはメチルトリアルコキシシランまたはテトラエトキシシランとその混合物、好ましくは直鎖状の末端ジヒドロキシ官能性ポリシロキサン、
b)ヘキサメチルジシラザンまたは異なる炭素基で置換されたジシラザン、例えばジビニルテトラメチルジシラザン、好ましくはヘキサメチルジシラザン;
c)3−アミノプロピルメチルジアルコキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジアルコキシシラン、またはヒドロキシル置換アミドおよび/またはヒドロキシル置換カルバメート構造および/またはエトキシ化アミンおよび/またはグアニジンまたはアルキレニルグアニジン構造で置換された直鎖状または分枝状の飽和または不飽和炭化水素基を含むもしくは式2a〜iの物質の群から選択されるさらなる官能性ジアルコキシシラン
【化3】

(式中、RおよびRは、各々、式1に定義されるとおりであり、Rは、Rであり、好ましくはRは、水素原子、メチル基またはカルボキシル基、より好ましくはHまたはアセチルであり、Rは、アルキルまたはアシル基、より特定的にはメチル、エチルまたはアセチルである)
が互いに反応する。シランはモノマーとして使用されるのが有利である。後の使用のために有利である場合、ジヒドロキシ官能性ポリシロキサンの付加によってポリマー構築を開始する前に、加水分解による酸性条件下でシランを予め縮合してオリゴマーを形成してもよい。
【0031】
化学量論量をわずかに超える量でシラザンを使用するのが有利であり得る。使用されるジアルコキシシランは、従来技術において公知の合成方法を用いて製造される。アミノ官能性シランのグアニジン化は、特開2002 167437号に記載されているアミノシロキサンのグアニジン化と同様に行われる。アミノ官能性シロキサンと炭酸グリセロールまたはグルコノラクトンとの反応は、欧州特許出願公開第1 972 330 A1号およびJ. Phys. Chem. B 2010, Vol. 114, pp. 6872-6877に沿って行われる。
【0032】
加水分解および縮合反応に用いられる触媒は、例えば、酢酸、プロピオン酸、イソノナン酸またはオレイン酸などのカルボン酸である。反応は、加水分解を速めるための少量の水を添加して行うことができるが、乾燥させずに用いられる試薬中には多くの場合十分な水分が存在するであろう。反応は、溶媒を用いずに、あるいは例えば脂肪族および芳香族のプロトン性および非プロトン性溶媒、グリコール、エーテル、脂肪アルコールアルコキシレート、モノ−、ジ−、およびトリグリセリド、または合成および天然由来の油などの溶媒の存在下で行うことができる。溶媒を用いることは、例えば、所望の構造の鎖長が高い粘度をもたらすときに有利であろう。反応前、反応中または反応後に、溶媒を添加することができる。反応は、室温から150℃の範囲の温度、好ましくは50〜100℃で行うことができる。加水分解の際に放出されるアルコールは、反応中または反応後に、真空蒸留により取り除かれる。中和およびろ過工程は任意選択による。
【実施例】
【0033】
例示的実施形態:
NMRスペクトルの記録および解釈は、当業者に公知である。Marcel Dekker Inc.によって2000年に出版された、A. BrandoliniおよびD. Hills著の「NMR Spectra of Polymers and Polymer Additives」という書籍が、参照により本明細書に援用され得る。ポリシロキサンの置換基間のモル比は、NMR分光法により、より特定的には定量的13C NMR法により、第一級および第二級および第三級アミン構造の窒素を選択的に決定することで補完して求めることができる。
【0034】
合成実施例
実施例1:式2bのグルコノラクタムプロピルジエトキシメチルシランの製造
35gの2−プロパノールに溶かした35.62gのD(+)−グルコノ−δ−ラクトン(純度99%、Sigma Aldrich)を、KPG攪拌器、滴下漏斗、還流冷却器および内部温度計が連結装備された250mlの四つ口フラスコ中で、70℃で懸濁し、1時間攪拌した。38.62gの3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン(ダイナシラン(Dynasylan)(登録商標)1505、Evonik Degussa GmbH)を、75℃で5分間滴下添加する。この後、さらに4時間75℃で攪拌して、固形分64.8%の透明の淡黄色の生成物を得る。60℃、20mbarでのロータリーエバポレータで2時間溶媒を留去し、その後秤量することによって、固形分を求める。13C NMRスペクトルは、CH−NH基の残量を示す45ppmにおけるシグナルがないため、グルコノラクトンとの完全な反応を示している。
【0035】
実施例2:式2cの3−グアニジノプロピルメチルジエトキシシランおよび3−アミノプロピルメチルジエトキシシランの製造
KPG攪拌器、滴下漏斗、還流冷却器および内部温度計が連結装備された500mlの四つ口フラスコに、最初に、95.67gの3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン(ダイナシラン(Dynasylan)(登録商標)1505、Evonik Degussa GmbH)および70gのエタノールを入れる。攪拌しながら、27gの酢酸(純度99〜100%、J. T. Baker)を室温で15分間滴下添加する。この後、79℃に加熱し、攪拌しながら、30gのエタノールに溶解させた10.51gのシアナミド(Cyanamid)F 1000(Alzchem Trostberg GmbH)を2時間の期間にわたって滴下添加する。この後、79℃でさらに4時間攪拌して、固形分54.9%の無色透明の生成物を得る。13C NMRによって求めたアミノプロピルシラン対グアニジノプロピルシランのモル比は、3:2である。
【0036】
実施例3:グルコノラクタムプロピル官能性ポリシロキサンおよびアミノプロピル官能性ポリシロキサンの製造
KPG攪拌器、滴下漏斗、還流冷却器および内部温度計が連結装備された500mlの四つ口フラスコを用いて、47.2のジメチルシロキサン単位の鎖長を有する200gのジヒドロキシ官能性ポリジメチルシロキサン、6.52gの3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン(ダイナシラン(Dynasylan)(登録商標)1505、Evonik Degussa GmbH)および6.48gの、実施例1の64.8%の2−プロパノールシラン溶液を、攪拌しながら85℃に加熱する。0.68gの酢酸(純度99〜100%、J. T. Baker)を添加し、真空をかける。混合物を85℃、20mbarで1時間攪拌する。真空を中断し、1.28gのヘキサメチルジシラザン(純度98.5%、ABCR GmbH)を添加し、混合物を85℃および室温で1時間攪拌する。この後、85℃、20mbarで1時間蒸留する。53.57gのテゴソフト(Tegosoft)(登録商標)P(Evonik Goldschmidt GmbH)を添加してからさらに2時間蒸留して、25℃で320000mPasの粘度を有する透明の淡黄色の生成物を得る。トリメチルシリルで末端ブロックされた鎖の末端の割合は、29Si NMRで求めたところ、全ての鎖の末端の合計を基準にして65%である。
【0037】
実施例4:グアニジノプロピル官能性ポリシロキサンおよびアミノプロピル官能性ポリシロキサンの製造
KPG攪拌器、滴下漏斗、還流冷却器および内部温度計が連結装備された1000mlの四つ口フラスコを用いて、47.6のジメチルシロキサン単位の鎖長を有する656.3gのジヒドロキシ官能性ポリジメチルシロキサン、10.62gの3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン(ダイナシラン(Dynasylan)(登録商標)1505、Evonik Degussa GmbH)および26.95gの、実施例2の54.9%のエタノールシラン溶液を、攪拌しながら85℃に加熱する。混合物を、85℃、20mbarで1時間攪拌する。真空を中断し、4.18gのヘキサメチルジシラザン(純度98.5%、ABCR GmbH)を添加し、混合物を85℃および室温で1時間攪拌する。この後、85℃、20mbarで3時間蒸留して、25℃で41500mPasの粘度を有する濁った無色の生成物を得る。トリメチルシリルで末端ブロックされた鎖の末端の割合は、29Si NMRで求めると、全ての鎖の末端の合計を基準にして80%である。塩基度の異なる2つの窒素含有基を有する生成物の電位差滴定により、2つの端点が示される。
【0038】
実施例5:オクタデシル変性アミノシロキサンの製造
KPG攪拌器、滴下漏斗、還流冷却器および内部温度計が連結装備された500mlの四つ口フラスコを用いて、47.2のジメチルシロキサン単位の鎖長を有する246.6gのジヒドロキシ官能性ポリジメチルシロキサン、9.64gの3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン(ダイナシラン(Dynasylan)(登録商標)1505、Evonik Degussa GmbH)、2.01gのオクタデシルメチルジメトキシシラン(Wacker AG)および1.18gの酢酸(純度99〜100%、J. T. Baker)を、攪拌しながら85℃に加熱する。この後、85℃、20mbarで1時間蒸留する。真空を中断し、1.28gのヘキサメチルジシラザン(純度98.5%、ABCR GmbH)を添加し、混合物を85℃および室温で1時間攪拌する。この後、85℃、20mbarで3時間蒸留して、25℃で1520mPasの粘度を有するやや濁った無色の生成物を得る。トリメチルシリル末端ブロックされた鎖の末端の割合は、29Si NMRで求めたところ、全ての鎖の末端の合計を基準にして75%である。
【0039】
織物調整に関する使用実施例
一般的な配合:
5重量%〜50重量%の本発明に係るシロキサンまたはその溶液を、6〜10のエトキシ化度を有する1.25重量%〜12.5重量%のラウリルアルコールエトキシレートの混合物、または異なるエトキシ化度を有する混合物、0.05重量%〜0.5重量%の濃酢酸および37.0重量%〜93.7重量%の水を含むプロペラ攪拌式ガラスビーカーに添加する。
【0040】
配合実施例1−本発明:
20重量%の合成実施例1の生成物を、6のエトキシ化度を有する8.0重量%のラウリルアルコールエトキシレートと10のエトキシ化度を有する2.0重量%のラウリルアルコールエトキシレートとの混合物、0.4重量%の濃酢酸、および69.6重量%の水を含むプロペラ攪拌式ガラスビーカーに添加して、白色の低粘度の配合物を得る。
【0041】
表1に示される配合物は、一般的な配合物と同様に製造した。比較例の製品であるバイオソフト(Biosoft)09(BT Biotex SDN BHD(マレーシア)製)は、繊維および織物用の柔軟剤(soft-handle agent)として使用可能なアミノ官能性シリコーン流体である。
【0042】
【表1】
【0043】
適用実施例:
本発明に係る生成物の手触り(handle)および親水性を確認するために、天然繊維からなる製品を以下のプロセスを用いて仕上げた。
【0044】
パディング(padding)プロセス:
各エマルジョンによって与えられる柔軟性を調べるために、綿のニット織布(160g/m)および綿のテリー織布(400g/m)を、いずれの場合も12.5g/lの対応するエマルジョンを含有する液でパディングし、ウェットピックアップ(wet pick-up)が約100%になるまで搾り、100℃で3分間乾燥させた。
【0045】
親水性を調べるために、綿織物(200g/m)を、いずれの場合も150g/lの対応するエマルジョンを含有する液でパディングし、ウェットピックアップが約100%になるまで搾り、130℃で3〜5分間乾燥させた。
【0046】
吸尽(exhaust)法:
柔軟性を調べるために、綿のニット織布(160g/m)および綿のテリー織布(400g/m)を、12:1の液体比を有する(有効なシリコーン成分を基準にして)0.025重量%の液に穏やかに攪拌しながら20分間浸漬し、軽く絞り、オーブン中で100℃で乾燥させた。親水性を調べるために、綿織物(200g/m)を、120:1の液体比を有する(有効なシリコーン成分を基準にして)0.025重量%の液に、穏やかに攪拌しながら20分間浸漬し、オーブン中で100℃で乾燥させた。
【0047】
試験方法:
手触り評価:
熟練したチームによって、織布の手触りを評価した。チームは、ハンドパネル試験によって、エマルジョンで仕上げられた綿のニット織布および綿テリー織布の手触り試料を名を伏せて評価した。ニット織布の手触り試料には、明白にラベル表示されていない未処理の試料がさらに含まれていた。
【0048】
洗濯作業:
Miele Novotronic W 918という市販の洗濯機で、wfk規格の洗濯洗剤であるIECA基剤および3kgの綿のバラスト織布を用いて、40℃で予洗なしの色柄用洗濯(coloured wash)によって洗濯作業を行った。このように処理した織布を、最終的に、室温で12時間乾燥させた。
【0049】
親水性試験:
ドイツ標準規格DIN 53924に準拠して、水の上昇高を測定するための自家試験方法を用いて、親水性試験を行った。仕上げられた試験用綿織物を、各々の長さが25cm、幅が1.5cmの5つの片に切り分け、水性ペンで印を付け、張力を加えずに、ピンと張った垂直な位置でホルダに固定する。次に、片が2cm水につかるようにホルダを5分間水浴に入れる。ホルダを10分間、水浴の外に立てた後、上昇高をcm単位で読み取り、空試験値(未処理の綿片の上昇高×cm=100%)に対して評価し、空試験値のパーセント表示として報告する。
【0050】
柔軟性に関する試験結果を表2、3および4に報告し、親水性に関しては、表5に報告する。
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
【0054】
【表5】
【0055】
評価のまとめ:
結果は、本発明に係る生成物で仕上げられた織布の手触りが、柔軟で、非常にふんわりして、滑らかである(例えば配合物1、表3および4)。このように仕上げられた織布は、高い弾力性(springability)および改良されたしわ取り性も示す。より特定的には、配合物実施例1の軟化効果は、吸尽法による適用後の配合物実施例2より優れている(表4)。織布は、より高い再湿潤性の値によって反映されるように、優れた吸水率も示す(表5)。優れた耐久性は、表2の結果によって証明される。
【0056】
織物再調整に関する使用実施例:
織物に対する本発明に係るシロキサンの軟化効果を測定するために、それを用いて綿布を処理する。この目的のため、以下の処方にしたがってシロキサンを用いてエマルジョンを製造する。
【0057】
40℃〜80℃で加熱された本発明に係るポリシロキサン20部を、最初に、プロペラ攪拌式ガラスビーカーに入れる。次に、5〜25重量部のジプロピレングリコール、6のエトキシ度を有する5〜25重量部の脂肪アルコールエトキシレートを、攪拌しながら逐次添加する。最後に、混合物を水により100重量部になるようにし、次に、室温に冷めるまで、ただし少なくとも15分間攪拌する。
【0058】
綿織布の前処理:
約350g/mの坪量を有する80cm×50cmの綿のテリー織布を、fully-built粉末で2回洗浄し、2回すすぎ、脱水し、空気中で単層で自然乾燥させた。
【0059】
綿織布の処理:
上述した本発明のシロキサンの配合物を、冷たい水道水で希釈して、0.025重量%の本発明のシロキサンを含むすすぎ溶液を形成した。綿布を、2リットルのすすぎ溶液に10分間浸漬した。ここで、布がすすぎ溶液によって確実にむらなく湿るように注意しなければならない。次に、布を脱水し、単層で室温で自然乾燥させた。処理された綿のテリー織布を、16cm×25cmの大きさに10等分に切り分けた。
【0060】
9人編成の熟練したチームによって柔軟性を評価した。チームは、ハンドパネル試験によって、エマルジョンで仕上げられた綿織布の名を伏せた手触り試料を評価した。各評価者に評価のための別々の綿布が与えられた。評価スケールは、整数の中間値を与える可能性も含めて、0(ざらざらして、手触りが悪い)から5(柔らかく、手触りが良い)の範囲であった。柔軟性を評価するために、個々の評価を合計した。これは、9人の評価者によって最大で45の柔軟性スコアが可能であることを意味している。
【0061】
手触り試料には、常に、明白にラベル表示されていない未処理の試料(空試験)がさらに含まれていた。
【0062】
比較例:
20重量%の固形分を有するTEGOSIVIN(登録商標)IE 11/59などの市販のアミノ官能化シロキサンのマイクロエマルジョンを従来技術とする。
【0063】
【表6】
【0064】
表6のデータから、本発明の変性シロキサンでは、従来技術のシロキサンと比較して改良された乃至非常に改良された柔軟性が達成されることが明らかに分かる。