(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873692
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】可動式中間縦枠を備えた持ち出し型手摺
(51)【国際特許分類】
E04F 11/18 20060101AFI20160216BHJP
【FI】
E04F11/18
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-251687(P2011-251687)
(22)【出願日】2011年11月17日
(65)【公開番号】特開2013-108226(P2013-108226A)
(43)【公開日】2013年6月6日
【審査請求日】2014年7月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】591137950
【氏名又は名称】サンリット工営株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091867
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】日高 修一
【審査官】
西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−209598(JP,A)
【文献】
特開2011−094432(JP,A)
【文献】
特開2010−090558(JP,A)
【文献】
特開昭63−138058(JP,A)
【文献】
実開昭60−164532(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート躯体に立設される複数の手摺支柱と、これら手摺支柱の上部であって屋外側に延在して取り付けられる上胴縁と、これら手摺支柱の下部であって屋外側に延在して取り付けられる下枠と、前記上胴縁と前記下枠とともにフレーム形状を構成する左右の端部縦枠と、これら端部縦枠の間にあって摺動自在な少なくとも1本の中間縦枠と、前記上胴縁と前記下枠の間に介在する少なくとも2枚のパネルとから構成される持ち出し型手摺において、
中間縦枠の上部は上胴縁に懸架する接続部材を介して上胴縁に摺動可能に繋がり、中間縦枠の下部は下枠の長さ方向に延びる水平突起片を有する接続部材を介して下枠に摺動可能に繋がっていることを特徴とする持ち出し手摺。
【請求項2】
コンクリート躯体に立設される複数の手摺支柱と、これら手摺支柱の上部であって屋外側に延在して取り付けられる上胴縁と、これら手摺支柱の下部であって屋外側に延在して取り付けられる下枠と、前記上胴縁と前記下枠とともにフレーム形状を構成する左右の端部縦枠と、これら端部縦枠の間にあって摺動自在な少なくとも1本の中間縦枠と、前記上胴縁と前記下枠の間に介在する少なくとも2枚のパネルとから構成される持ち出し型手摺において、
上胴縁が下枠よりも長く、摺動自在な端部縦枠の上部は上胴縁に懸架する接続部材を介して上胴縁に摺動可能に繋がり、前記摺動自在な端部縦枠の下部は下枠の長さ方向に延びる水平突起片を有する接続部材を介して下枠に摺動可能に繋がっていることを特徴とする持ち出し手摺。
【請求項3】
左右の端部縦枠の少なくとも一方が、上胴縁と下枠の間で摺動自在に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の持ち出し型手摺。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動式中間縦枠を備えた持ち出し型手摺に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マンションやアパート等、集合住宅のバルコニーや外廊下の外部側には、手摺が設けられている。そのような手摺として、外観上の見栄えやバルコニー/廊下の広さ確保の観点から、コンクリートスラブの鼻先の立ち上がり部に手摺用支柱を立設し、この支柱よりも外方へ突き出たブラケットを取り付けて、このブラケットに手摺壁であるパネルを、コンクリートスラブの鼻先よりも外方へ持ち出して設置する所謂「持ち出し型手摺」が多く採用されている。
【0003】
従来、手摺を取り付ける工事に当たっては、作業者が仮設足場を組んで、バルコニーや外廊下の外側から取り付け作業を行っていたが、持ち出し型手摺の場合、外部養生ユニットを連結する壁つなぎが障害物となるため、仮設足場のない状態での持ち出し型手摺の設置が要請され、バルコニーや外廊下の内側で作業するための工夫・提案が多くなされている。
【0004】
例えば特許文献1には、コンクリート躯体から立設された支柱と、支柱の下端近傍に固着される下枠ブラケットと、下枠ブラケットに取り付けられ支柱間に架け渡されるガラス下枠と、支柱頭部に取り付けられたガイドプレートと、ガイドプレートの先端に取り付けられたガスケット枠と、ガイドプレートの上に取り付けられた笠木受けと、笠木受けの上に取り付けられ支柱間に架け渡される笠木とから構成されるガラス持ち出し型手摺において、板ガラスの下端をガラス下枠で支持するとともに、板ガラスの上端をガスケット枠と笠木受けの一部で挟持することが提案され、笠木を取り外すことにより、上から板ガラスを落とし込んで作業をすることができ、板ガラスを横方向に移動することができ、一箇所から落とし込んだ板ガラスを左右方向に移動することで、安全に作業することができる、としている。
【0005】
また特許文献2には、コンクリートスラブの鼻先部に構築した手摺本体の支柱に対して、ブラケットを介して、持ち出しタイプかつスラブ隠しタイプの腰壁体を連結した構成において、腰壁体を昇降可能とする摺動機構を設けることが提案されている。この摺動機構は、上下に延びるレール部材と、レール部材に摺動自在に嵌挿されたスライダーを備え、腰壁体をコンクリートスラブの支柱を境とした内側空間から外側空間へ持ち出した状態で下降させるとき、レール部材の開口部にスライダーを挿入させるように構成され、腰壁体を定位置と上方の作業位置との間で昇降することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−37589号公報
【特許文献2】特開2010−144403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、作業者が屋内側から施工作業を容易に行うことができる持ち出し型手摺の新たな構成を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、コンクリート躯体に立設される複数の手摺支柱と、これら手摺支柱の上部であって屋外側に延在して取り付けられる上胴縁と、これら手摺支柱の下部であって屋外側に延在して取り付けられる下枠と、前記上胴縁と前記下枠とともにフレーム形状を構成する左右の端部縦枠と、これら端部縦枠の間にあって摺動自在な少なくとも1本の中間縦枠と、前記上胴縁と前記下枠の間に介在する少なくとも2枚のパネルとから構成される持ち出し型手摺
において、中間縦枠の上部が上胴縁に懸架する接続部材を介して上胴縁に摺動可能に繋がり、中間縦枠の下部が下枠の長さ方向に延びる水平突起片を有する接続部材を介して下枠に摺動可能に繋がっていることによって、解決する。
また、コンクリート躯体に立設される複数の手摺支柱と、これら手摺支柱の上部であって屋外側に延在して取り付けられる上胴縁と、これら手摺支柱の下部であって屋外側に延在して取り付けられる下枠と、前記上胴縁と前記下枠とともにフレーム形状を構成する左右の端部縦枠と、これら端部縦枠の間にあって摺動自在な少なくとも1本の中間縦枠と、前記上胴縁と前記下枠の間に介在する少なくとも2枚のパネルとから構成される持ち出し型手摺において、上胴縁が下枠よりも長く、摺動自在な端部縦枠の上部が上胴縁に懸架する接続部材を介して上胴縁に摺動可能に繋がり、前記摺動自在な端部縦枠の下部が下枠の長さ方向に延びる水平突起片を有する接続部材を介して下枠に摺動可能に繋がっていることによっても、上記課題は解決する。
【0009】
左右の端部縦枠の少なくとも一方が、上胴縁と下枠の間で摺動自在に構成されていれば、好適である
。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、縦枠が摺動可能であるので、フレーム状の枠体内にパネルを容易に装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る持ち出し型手摺の側方断面図である。
【
図2】
図1の持ち出し型手摺の縦枠部分での、コンクリートスラブ鼻先より外側から見た正面図である。
【
図3】
図1の持ち出し型手摺の上から見た断面図である。
【
図4】手摺の取り付け手順を説明する概略側面図である。
【
図5】パネルを手摺に取り付ける手順を説明する平面図である。
【
図6】最後のパネルを取り付ける際の端部縦枠の移動を説明する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の一つの実施形態に係る持ち出し型手摺の構造及びその取り付け方法を詳述する。
この手摺は、
図1〜
図3から分かるように、手摺支柱3と、例えば一戸のベランダ長さに相当する上胴縁6と、同じ長さの下枠5と、上胴縁、下枠とともにフレーム形状を構成する左右の端部縦枠と、上胴縁、下枠の間で摺動自在な複数の中間縦枠とを有する。
【0013】
図1から分かるように、バルコニーや外廊下を構成するコンクリートスラブの先端である鼻先部1に相前後して構築された2本のベースポスト2に、手摺支柱3を嵌挿して取り付け固定する。これら手摺支柱3を、ベランダの長さ方向において所定の等間隔(但し、例えば
図2に示すような壁際等の端部手摺支柱については他の支柱間隔よりも若干短く割り付けしておけば、壁際までパネルを延ばすことが可能である)で立設する。
図3で示すように断面矩形状をした各手摺支柱3は、台座31とこれに立設する柱部32からなっている。
図1において、これら手摺支柱3の下端近傍のベランダ側とは逆側である外面にブラケット4をリベット止めして、その先端上面に下枠5をネジ止めする一方、手摺支柱3の上端には上胴縁6を直接固着する。
【0014】
図2に示すように、上胴縁6と下枠5の端部には、端部縦枠7が取り付けられ、両端の端部縦枠7の間には少なくとも1本の中間縦枠8、複数本の場合には均等間隔で中間縦枠8が配置されている。端部縦枠7と中間縦枠8の間、あるいは2本の中間縦枠8の間には、パネル9が取り付けられている。パネル9は、採光性を有するように、透明又は半透明の合わせガラス、強化ガラス、あるいはアクリルその他の樹脂等により形成することが可能である。そして笠木10が上胴縁6や縦枠7,8を覆って取り付けられている。
【0015】
上胴縁6と下枠5を手摺支柱3に組み付けた後に縦枠7,8を上胴縁6や下枠5に取り付けるに当たっては、図
4から理解可能なように、端部縦枠7の端部もしくは中間縦枠8の真ん中に挿入され得る接続金具11,12を用いる。上側の接続金具11は縦枠の上端に取り付けられ、下側の接続金具12は縦枠の下端に取り付けられる。これら接続金具11,12の側面にはビス穴が形成され、縦枠の長手方向に形成された長穴を介してビスが嵌合している。接続金具11,12を上方に持ち上げてビスを締め付けて固定した後、
図4aに示すように、手摺支柱3の外側から縦枠7,8を上胴縁6や下枠5に近づけて、縦枠の下端を、上方に開放した断面コの字状下枠5に嵌め込み、しかる後に
図4bに示すように、ビスを緩めて接続金具11,12を落とし込み、上側の接続金具11のかぎ状凹部を上胴縁6の先端側の上面突起部に引っ掛けるとともに、下側の接続金具12を断面コの字状下枠5の内側に形成されたレール部51にセットする。このセットを安定化させ、また後述する縦枠7,8のレール部51に沿ったずらしを容易にするために、下側の接続金具12の下端では、
図3から分かるように、水平突起片13が延びていて、L型アングル材を形成している。
【0016】
次に、
図4cに示すように、笠木10を被せて嵌合する。その後に、上胴縁6と下枠5と、端部縦枠7と中間縦枠8あるいは2つの中間縦枠8で形成される矩形フレームにパネル9を上下ケンドン式に嵌め込む。その際、中間縦枠8、あるいは最後のパネル9を嵌め込む場合には端部縦枠7を上胴縁6と下枠5の間でずらす。これを
図5、
図6において説明する。
【0017】
この手摺に最初のパネル9を嵌め込む場合、
図5aに示すように、パネル9を入れる前に中間縦枠8を手摺支柱3の幅に相当する程度、ずらしておく。そしてパネル9を
図4cのように上下ケンドン式に嵌め込み、ビス止めにより固着した端部縦枠7の方へ送る。ずらしておいた中間縦枠8を支柱センタに合わせてセットし、接続金具のビスを締め付ける。この中間枠体8を、先ほどの端部縦枠7のように基準として、
図5bのように、2枚目以降のパネル9を同様の作業において嵌め込んで取り付ける。
【0018】
最後のパネル9を嵌め込む場合、
図5c、
図6aに示すように、端部縦枠7を止めているビスを外して、この端部縦枠7を外側に広げておく。笠木10や上胴縁6が下枠5よりも外側に延びていることと端部縦枠7の水平突起片13とによって、端部縦枠7の脱落は防止される。しかる後、パネル9を上下ケンドン式に嵌め込み、
図5d、
図6bに示すように、端部縦枠7を元の位置に戻してビスを締め直す。
【0019】
ベランダ内側から縦枠7,8の上下端にシール15を挿入して、縦枠7,8の内部前側に予め取り付けてある先付ビート16との間でパネル9を固定する(
図1、
図3)。
【符号の説明】
【0020】
1 コンクリートスラブ鼻先部
2 ベースポスト
3 手摺支柱
4 ブラケット
5 下枠
6 上胴縁
7 端部縦枠
8 中間縦枠
9 パネル
10 笠木
11 上側接続金具
12 下側接続金具
13 水平突起片
15 シール
16 先付ビート