【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決し目的を達成するため、本発明に係る金属条材の曲げ加工装置は、曲げ加工対象である金属条材の推進方向を前、当該推進方向と逆の方向を後とそれぞれした場合に、前記金属条材の一部を環状に加熱する加熱手段と、当該加熱手段に向け前記金属条材を推進させる推進手段と、前記金属条材の前記加熱手段による加熱部より前側を把持すると共に、支軸により旋回可能に支持され、前記推進手段による前記金属条材の推進に伴い前記支軸を中心として旋回して前記金属条材に曲げモーメントを加えるクランプアームとを備えた金属条材の曲げ加工装置であって、前記クランプアームよる把持点より後側の近接位置において前記金属条材の表面に当接して当該金属条材の首折れ変形を阻止する支持クランプを備えた。
【0013】
本発明の曲げ加工装置では、上記加熱手段により金属条材の一部を環状に加熱しつつ当該条材を推進させ、同時に、クランプアームによって加熱手段を通過した金属条材が弧を描いて湾曲するように案内する。具体的には、前記加熱手段により加熱される部分(加熱部)より前側の部分をクランプアームによって把持する。このクランプアームは、支軸を中心として回動可能に設置してあり、上記推進手段による金属条材の推進に伴って回動し、これに伴い、クランプアームによる金属条材の把持部分は当該支軸を中心に旋回することとなって金属条材の加熱部に曲げモーメントが加わり、これにより金属条材を連続的に塑性変形させて弧を描くように金属条材を曲げることが出来る。
【0014】
一方、本発明では、曲げ加工中に前記支持クランプにより金属条材の変形を規制し、折れ曲がりを防ぐ。すなわち、当該支持クランプはクランプアームよる把持部分より後側(金属条材の基端側)のクランプアームに近い位置において金属条材の表面に当接するもので、この支持クランプによって金属条材の不所望な変形を抑え、金属条材の首折れ変形を阻止する。
【0015】
支持クランプの具体的構造としては、金属条材の曲げ外周側の表面に当接する閉成状態と、金属条材の当該曲げ外周側表面から離間する開放状態との間で開閉動作可能な外爪を備え、この外爪を金属条材の曲げ外周側表面に押し当てて金属条材の変形を防ぐ。また本発明の典型的な態様では、この外爪に加えて、金属条材の曲げ内周側の表面に当接する閉成状態と当該曲げ内周側表面から離間する開放状態との間で開閉動作可能な内爪をさらに備え、これら外爪と内爪とで金属管を把持することにより同様に金属条材の変形を抑える。なお、曲げ加工に伴い、曲げの外周側は引張力がかかるためこれを「テンション側」又は「引張側」と、曲げ内周側は圧縮力がかかるためこれを「コンプレッション側」又は「圧縮側」とそれぞれ称することがある。
【0016】
曲げ加工における首折れは、前記特許文献において記載したように金属条材の前側を把持するクランプ(後述の前方クランプ)の後方側の近接位置で金属条材が折れ曲がるように変形することにより生じるが、上記本発明の支持クランプ構造によれば、当該変形が生じやすい前方クランプの後方側近接位置を外爪によって支えることが出来るから、このような首折れ変形を良好に抑えることが可能となる。さらに、内爪も備える装置では外爪と内爪とによって金属条材を掴み、金属条材を包み込むように把持することが出来るから、加工中の当該金属条材の断面強度を増加させ、より確実に首折れ変形を防ぐことが出来るとともに管の扁平化を防ぐことも可能となる。
【0017】
また、上記支持クランプにおいて外爪や内爪は、例えば油圧シリンダや電動機等の駆動手段により開閉できるようにすることが可能であり、従来のように首折れ防止用アタッチメントの装着作業の煩雑さ及び作業効率の悪さを解消することができ、作業時の危険性を回避することが出来る。さらに、本発明の支持クランプは金属条材の表面(側面)に当接させるものであり、従来の首折れ防止器具のように金属条材の先端に装着しなければならないようなものではないから、所謂S字曲げや立体曲げのようなクランプアームの持ち替えを伴う曲げ加工にも対応することが可能である。
【0018】
なお、支持クランプは、加工中常に使用する(金属条材に当接させておく)必要は必ずしも無く(加工中常に使用しても勿論良いが)、例えば、曲げ角度が小さく首折れが生じ難い曲げの初期段階では開放状態として使用しなくても良い。また、例えば管の肉厚が大きい場合や曲げ角度が小さい場合、曲げ半径が大きい場合など首折れが生じ難い場合には、内爪は使用せず(開放状態とし)外爪のみを使用して加工を行うことも可能である。
【0019】
また、本発明の一態様では、前記加熱手段がクランプアームに向け前後方向に移動可能であり、前記外爪(内爪を備える態様では内爪についても/以下同様)は、前記開閉動作を可能とするため基端部に備えた回動支軸を中心として回動可能に支持され、前記支持クランプは、開放状態において、当該支持クランプと金属条材との間に前記加熱手段を収容できるように外爪(又は外爪および内爪)ならびに回動支軸と、金属条材との間に隙間が形成されるように設置する。なお、外爪と内爪を備える装置では、典型的に同一の(単一の)回動支軸によって両爪を支持するが、外爪と内爪が別々の回動支軸によってそれぞれ支持されていても構わない。
【0020】
上記のように開放状態において支持クランプと金属条材との間に加熱手段を収容可能な隙間が形成される構造とするのは、クランプアームの後側に配置する支持クランプが加熱手段の邪魔にならないように(クランプアームに近い位置に加熱手段を配置できるように)するとともに、加工開始時にクランプアームに近接した位置にまで加熱手段を前方へ移動できるようにするためであり、このような構造によればグラデーション曲げと称される次のような曲げ加工が可能となる。
【0021】
曲げ加工の最初から最後まで一定の曲率で金属条材を曲げていくのではなく、曲げの最初と最後で曲げ半径を次第に変えるグラデーション曲げを行えば首折れが生じ難くなることが知られている。このグラデーション曲げは、(1)曲げ加工の初期(曲げ始め)には曲げ半径を無限大(直線)から所定の曲げ半径(クランプアームの旋回中心である支軸から金属管のクランプ点までの距離である旋回半径によって決まる曲げ半径/以下この半径を「定常曲げ半径」と言う)になるまで次第に小さくしていき、(2)加工の中間期(定常曲げ)では一定の曲げ半径(定常曲げ半径)を維持し、(3)曲げ加工の終期(曲げ終り)には定常曲げ半径から次第に曲げ半径を大きくしていくもので、このような曲げ方法によれば、当該金属条材両端の直線部分(前方クランプによる把持部分、並びに、金属条材後部の未加工部分)から所定曲率の曲部へ次第に曲率が変わる滑らかな曲げ条材(金属管であれば管路)を形成することが出来る。
【0022】
ここで、上記態様を採用すれば、開放状態において支持クランプと金属条材との間に加熱手段を収容可能な隙間が形成されるから、曲げ始めにおいて加熱手段をクランプアーム(前方クランプ)の近接位置まで移動させることができ、クランプアーム近接位置に当接可能な支持クランプを備えるにも拘らず、当該クランプアーム近接位置まで加熱して曲げ加工を行うことが出来る。なお、首折れは、金属条材の推力によってクランプアームによる把持部分(クランプ部)の後方側直近位置に曲げモーメントがかかることにより生じるが、この曲げモーメント(「クランプ際モーメント」と称する)は加工が進行するほど大きくなり曲げ始めには比較的小さいから、加工の初期段階において上記のように支持クランプを開放状態にしておいても問題は生じない。
【0023】
また、推力による曲げモーメントは一定であるが、上記クランプ際モーメントは、(1)ベンディングポイントPと前方クランプ36(後述の
図1参照)との間の距離が大きいほど、また(2)上記のように加工が進行して曲げ角度が増すほど(特に45°以上になると)、また(3)減肉率が小さく零%に近づくほど、それぞれ大きくなり、首折れが発生しやすくなる。なお、本発明はグラデーション曲げを必須とするものではなく、加工の前後にグラデーション曲げにおける上記処理を行わない通常の曲げ加工を行っても勿論構わない。
【0024】
また上記態様では、外爪を支持する回動支軸を、金属条材の装填位置より上方に配置するとともに、支持クランプの開放状態において外爪が金属条材の装填位置より上方に位置する構造とすることが好ましい。
【0025】
加工終了後に(あるいはS字曲げや立体曲げを行うような場合には一定区間の曲げが終了した後に)、金属条材を加工装置から取り出しやすくするためである。上記のような好ましい態様によれば、外爪とこれを支える回動支軸が共に金属条材より上方位置に配置されるから、外爪と回動支軸が金属条材の取出作業の邪魔になることがなく、金属条材を外方へ(クランプアームの先端側へ(支軸と反対方向へ))水平に移動させて取り出すことが出来る。
【0026】
また、支持クランプとして外爪と内爪の双方を含む装置では、内爪は外爪より前後方向の幅が狭く、内爪の前面と外爪の前面とが前後方向について略同位置となるように且つ内爪の後面が外爪の後面より前方に位置するように、内爪と外爪とを構成することが好ましい。
【0027】
曲げ内周側(コンプレッション側)では、金属条材の表面が曲げ中心に向け盛り上がる(例えば金属管の場合には増肉/管厚の増加により支軸側に向かって管表面がせり出す/膨らむ)ことがあるが、このようなコンプレッション側の変形を逃がし、変形分を収容できる余裕を持たせるためである。
【0028】
また同様の理由から、金属条材に当接する面である前記内爪の内面に、後方に行くにつれ次第に金属条材表面から遠ざかるように傾斜するテーパ面を形成しても良い。なお、このテーパ面の形成は、前後方向に関する外爪と内爪の幅および後面位置が同じ構造に対して適用しても良いし、上記のように当該外爪と内爪の幅および後面位置を異ならせた構造において行っても構わない。
【0029】
さらに、閉成状態において外爪の先端部を閉成方向に押し付けて外爪の開放方向への回動を阻止する押圧ストッパを備えても良い。当該押圧ストッパにより首折れ変形をより確実に防ぐためである。なお、この押圧ストッパとしては、例えば油圧シリンダを使用することが出来る。
【0030】
また、上記押圧ストッパを備える場合には、これを金属条材の装填位置より下方に配置することが好ましい。前述のように金属条材を外方へ取り出すときに当該押圧ストッパが邪魔にならないようにするためである。
【0031】
また、閉成状態において外爪の先端部が当接し、閉成方向への外爪の過度な回動を阻止する圧潰防止ストッパをさらに備えても良い。首折れ変形に抗する大きな支持力を必要とする外爪が、加工対象の金属条材に不所望な変形を加えるおそれを排除するためである。このような圧潰防止ストッパを備えれば、外爪の過度な(必要以上の)回動が阻止され、首折れ変形に対抗する必要十分な支持力を金属条材に対して付与することが出来る。
【0032】
また、本発明の加工装置は、クランプアームの旋回角度を検出する曲げ角度検出手段と、当該曲げ角度検出手段により検出された旋回角度を予め定められた値と比較して当該旋回角度が当該予め定められた値となった場合に前記外爪を閉成状態とする制御部とをさらに備えても良い。
【0033】
このような装置構成によれば、金属条材が所定の曲げ角度になったときに人手を介することなく制御部が支持クランプの駆動部(例えば油圧シリンダ)を介して支持クランプを作動させ、外爪を閉じて首折れを防ぐことが可能となる。なお、上記予め定められた値は、加工対象である金属条材の材質や径、肉厚、要求される減肉率等に対応して首折れを防ぐことが出来るように予め設定しておけば良い。
【0034】
本発明に係る加工装置では、金属条材の推進に伴うクランプアームの旋回方向とは逆方向にクランプアームを引き戻す引戻力をクランプアームに加えて金属条材に圧縮力を作用させる圧縮手段をさらに備える場合がある。単純曲げに比べて圧縮曲げを行う場合に首折れが生じやすいことは既に述べたとおりであるが、本発明は上記のような圧縮手段を備えた加工装置に好ましく適用することが可能であり、圧縮曲げで生じやすい首折れを効果的に防ぐことが出来る。
【0035】
また、本発明に係る首折れ防止用支持クランプ装置は、曲げ加工対象である金属条材の一部を環状に加熱する加熱手段と、当該加熱手段に向け金属条材を推進させる推進手段と、金属条材の前記加熱手段による加熱部より前側を把持すると共に支軸により旋回可能に支持されて前記推進手段による金属条材の推進に伴い前記支軸を中心として旋回して金属条材に曲げモーメントを加えるクランプアームとを備えた曲げ加工装置に装着可能なクランプ装置であって、前記クランプアームよる把持点より後側の近接位置において金属条材の曲げ外周側の表面に当接する閉成状態と、当該金属条材の曲げ外周側の表面から離間する開放状態との間で開閉動作可能な外爪と、当該外爪を前記クランプアームに固定する固定手段とを備えた。
【0036】
本発明に係る支持クランプ装置は、前記本発明の曲げ加工装置に備えた支持クランプと同様の機能を有するものであるが、上記固定手段によって曲げ加工装置に装着することが可能であり、本発明が意図する首折れを防ぐ機能を既存の(従来の)曲げ加工装置に付加することが出来る。
【0037】
また上記支持クランプ装置では、前記クランプアームよる把持点より後側の近接位置において金属条材の曲げ内周側の表面に当接する閉成状態と当該金属条材の曲げ内周側の表面から離間する開放状態との間で開閉動作可能な内爪をさらに備えて良く、この場合、上記固定手段は外爪とともに当該内爪を前記クランプアームに固定することを可能とする。
【0038】
さらに、本発明に係る曲部を備えた金属条材の製造方法は、前記本発明の曲げ加工装置並びに支持クランプ装置と同様の特徴を備えるものであり、金属条材の一部を環状に加熱すると共に、当該加熱部に曲げモーメントを加えて金属条材の少なくとも一部を湾曲状態に塑性変形させる金属条材の製造方法であって、前記金属条材の加熱部近傍位置を把持すると共にこの把持部から一定距離隔てた支軸を中心として旋回可能なクランプアームによって金属条材を把持すると共に、金属条材を材軸方向へ推進させることにより前記クランプアームによる把持部を旋回させ金属条材の少なくとも一部が弧を描いて湾曲するように案内する一方、金属条材の推進方向を前、当該推進方向と逆の方向を後とそれぞれした場合に、前記クランプアームによる金属条材の案内中に、前記クランプアームによる金属条材の把持部より後側の近接位置において支持クランプを金属条材の少なくとも曲げ外周側の表面に当接させ、これにより首折れ変形を防ぎながら金属条材の曲げ加工を行うものである。
【0039】
またこの製造方法においても、金属条材の曲げ外周側の表面に当接する閉成状態と、金属条材の曲げ外周側の表面から離間する開放状態との間で開閉動作可能な外爪を支持クランプに含め、クランプアームが予め定められた角度旋回したときに、外爪を閉成状態として金属条材の曲げ外周側表面に当接させるようにすることが出来る。
【0040】
さらに、上記支持クランプに、金属条材の曲げ内周側の表面に当接する閉成状態と、金属条材の曲げ内周側の表面から離間する開放状態との間で開閉動作可能な内爪を含め、前記クランプアームが予め定められた角度旋回したときに、当該内爪を閉成状態として金属条材の曲げ内周側表面に当接させるようにすることも可能である。
【0041】
本発明において加工対象となる金属条材は、典型的には金属製の中空管であるが、これに限定されず、例えば中実管であっても良いし、H鋼や山形鋼その他の長尺の部材であっても構わない。なお、後に説明する実施形態は断面円形の金属管を対象としており、したがって、クランプアーム(前方クランプ)や支持クランプの把持部の形状を当該金属管の形状に合わせたものとしてあるが、加工対象である金属条材が他の断面形状を有する場合には、当該加工対象の形状に合わせてクランプアーム(前方クランプ)や後方クランプ、支持クランプの把持部の形状を適宜変更すれば良い。
【0042】
また、金属条材の材料および寸法(外径・内径・肉厚寸法等)についても特定のものに限られない。例えば、典型的に本発明は、鉄を主体とした材料からなる管(例えば鋼管やステンレス管、特殊鋼管など)を加工対象とするが、他の金属材料を主体とする管や他の金属合金を材料とする管であっても構わない。さらに、本発明において曲げ加工する部分(曲部ないし曲管部)は、当該条材の全長の一部であっても全体であっても良い。