特許第5873699号(P5873699)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新電元工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5873699-電子部品ユニット 図000002
  • 特許5873699-電子部品ユニット 図000003
  • 特許5873699-電子部品ユニット 図000004
  • 特許5873699-電子部品ユニット 図000005
  • 特許5873699-電子部品ユニット 図000006
  • 特許5873699-電子部品ユニット 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873699
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】電子部品ユニット
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20160216BHJP
【FI】
   H05K7/20 F
   H05K7/20 D
   H05K7/20 H
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-266117(P2011-266117)
(22)【出願日】2011年12月5日
(65)【公開番号】特開2013-118340(P2013-118340A)
(43)【公開日】2013年6月13日
【審査請求日】2014年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】野口 昭一
(72)【発明者】
【氏名】篠原 孝輔
【審査官】 飯星 潤耶
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−307968(JP,A)
【文献】 特開平07−249885(JP,A)
【文献】 特開2010−098242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
H01L 23/34−23/36
H01L 23/373−23/427
H01L 23/44
H01L 23/467−23/473
H05K 5/00−5/06
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱性の電子部品を収容する複数の部品収容室が、冷却用流体の流れの上流側から下流側の間における各々の位置に設けられているケースを有する電子部品ユニットであって、
前記電子部品から発生する熱の前記ケースへの熱伝導量が、前記冷却用流体の流れの上流側から下流側に向かって順次増加するように、前記複数の部品収容室の各部品収室において前記ケースへの熱伝導量の調整がなされており、
前記各部品収容室の底面の側には放熱部材が設けられており、前記放熱部材は、当該放熱部材が前記冷却用流体の流れの上流側から下流側のどの位置に存在するかに応じて当該位置における放熱部材の熱伝導量が調整され、
前記放熱部材の熱伝導量は、前記放熱部材の量又は材質の少なくとも一方を変更することによって調整し、
前記放熱部材の量の変更は、前記放熱部材の前記各部品収容室の底面からの厚みを変えることによって行う、ことを特徴とする電子部品ユニット。
【請求項2】
発熱性の電子部品を収容する複数の部品収容室が、冷却用流体の流れの上流側から下流側の間における各々の位置に設けられているケースを有する電子部品ユニットであって、
前記電子部品から発生する熱の前記ケースへの熱伝導量が、前記冷却用流体の流れの上流側から下流側に向かって順次増加するように、前記複数の部品収容室の各部品収室において前記ケースへの熱伝導量の調整がなされており、
前記各部品収容室の底面の側には放熱部材が設けられており、前記放熱部材は、当該放熱部材が前記冷却用流体の流れの上流側から下流側のどの位置に存在するかに応じて当該位置における放熱部材の熱伝導量が調整され、
前記放熱部材の熱伝導量は、前記放熱部材の量又は材質の少なくとも一方を変更することによって調整し、
前記放熱部材の材質の変更は、当該放熱部材の熱伝導率を促進させる物質の含有量を変えることによって行う、ことを特徴とする電子部品ユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子部品ユニットにおいて、
前記放熱部材は、放熱性樹脂であることを特徴とする電子部品ユニット。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の電子部品ユニットにおいて、
前記放熱部材は、放熱シートであることを特徴とする電子部品ユニット。
【請求項5】
発熱性の電子部品を収容する複数の部品収容室が、冷却用流体の流れの上流側から下流側の間における各々の位置に設けられているケースを有する電子部品ユニットであって、
前記電子部品から発生する熱の前記ケースへの熱伝導量が、前記冷却用流体の流れの上流側から下流側に向かって順次増加するように、前記複数の部品収容室の各部品収室において前記ケースへの熱伝導量の調整がなされており、
前記各部品収容室の底面の側には放熱部材が設けられており、前記放熱部材は、当該放熱部材が前記冷却用流体の流れの上流側から下流側のどの位置に存在するかに応じて当該位置における放熱部材の熱伝導量が調整され、
前記放熱部材は、放熱性樹脂であることを特徴とする電子部品ユニット。
【請求項6】
発熱性の電子部品を収容する複数の部品収容室が、冷却用流体の流れの上流側から下流側の間における各々の位置に設けられているケースを有する電子部品ユニットであって、
前記電子部品から発生する熱の前記ケースへの熱伝導量が、前記冷却用流体の流れの上流側から下流側に向かって順次増加するように、前記複数の部品収容室の各部品収室において前記ケースへの熱伝導量の調整がなされており、
前記各部品収容室の底面の側には放熱部材が設けられており、前記放熱部材は、当該放熱部材が前記冷却用流体の流れの上流側から下流側のどの位置に存在するかに応じて当該位置における放熱部材の熱伝導量が調整され、
前記放熱部材は、放熱シートであることを特徴とする電子部品ユニット。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の電子部品ユニットにおいて、
前記放熱部材の熱伝導量は、前記放熱部材の量又は材質の少なくとも一方を変更することによって調整することを特徴とする電子部品ユニット。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の電子部品ユニットにおいて、
前記ケースは、アルミニウム製のケースであることを特徴とする電子部品ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に装着した電子部品を箱状のケース内に収容した電子部品ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
電気器具等には、基板に装着した電子部品を箱状のケース内に収容した電子部品ユニットが組み込まれている。このような電子部品ユニットに収容された電子部品に電流を供給して作動させると、電子部品から熱が発生する。この熱がケース内に蓄熱されると、電子部品ユニットとしての性能を満足することができない。このため、電子部品から発生した熱を効率よく放熱させることが必要であるが、加えて、ケース内の温度の偏りを少なくすることも重要であり、この点を考慮した電子部品ユニットは従来から種々提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図6は、特許文献1に開示されている電子部品ユニット900を説明するために示す図である。特許文献1に開示されている電子部品ユニット900(従来の電子部品ユニット900という。)は、図6に示すように、基板910に装着された第1電子部品920を有する第1電子部品グループG1と、同じく基板910に装着された第2電子部品930を有する第2電子部品グループG2と、第1電子部品920及び第2電子部品930を収容するケース940とを有する電子部品ユニットであって、ケース940には、各電子部品グループG1,G2に対応した部品収容室950,960が形成されている。
【0004】
そして、第1電子部品920を収容する部品収容室950には、放熱性樹脂970が充填され、第2電子部品930を収容する部品収容室960には、放熱性樹脂980が充填されている。
【0005】
なお、従来の電子部品ユニット900においては、第1電子部品920は、第2電子部品930に比較して発熱量が多いものとしている。このため、従来の電子部品ユニット900においては、部品収容室950に充填されている放熱性樹脂970は、部品収容室960に充填されている放熱性樹脂980に比較して熱伝導性に優れたものを使用している。
【0006】
このように構成された従来の電子部品ユニット900においては、第1電子部品920及び第2電子部品930から発生した熱は、放熱性樹脂970,980を介してケース940から放熱される。このとき、高発熱性を有する第1電子部品920から発生した熱は、熱伝導性に優れた放熱性樹脂970を介してケース940に伝熱されて放熱されるため、発熱量の異なる電子部品が存在していても、ケース940内の温度の偏りを少なくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−294703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、この種の電子部品ユニットは、電子部品から発生する熱を冷却用流体(例えば冷却風)によっても放熱を行うようにしているものも多い。このような電子部品ユニットにおいては、冷却風の流れに対して電子部品がどのような位置にあるかによっても、当該電子部品の温度上昇の仕方が異なるため、ケース内の温度の偏りが大きくなってしまうといった課題もある。
【0009】
すなわち、ケース内において冷却風の流れの下流側(風下側という。)は、冷却風の流れの上流側(風上側という。)よりも、冷却風の放熱能力がより小さくなってしまい、それによって、ケース内の温度の偏りが大きくなる。これは、冷却風が風下側に向かって流れる際に、途中に存在する電子部品の熱を受けて温度が上昇してしまうため、風下側に行くほど冷却能力が低くなるからである。このため、ケース内の温度の偏りを少なくするには、電子部品の発熱量の大きさだけではなく、冷却風の流れに対する電子部品の位置を考慮することが重要である。
【0010】
そこで、本発明は、電子部品から発生する熱の放熱を冷却用流体によっても行う電子部品ユニットにおいて、電子部品ユニットにおけるケース内全体の温度の偏りを少なくすることによってケース内全体の温度を平準化することができる電子部品ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[1]本発明の電子部品ユニットは、発熱性の電子部品を収容する複数の部品収容室が、冷却用流体の流れの上流側から下流側の間における各々の位置に設けられているケースを有する電子部品ユニットであって、前記電子部品から発生する熱の前記ケースへの熱伝導量が、前記冷却用流体の流れの上流側から下流側に向かって順次増加するように、前記複数の部品収容室の各部品収納室において前記ケースへの熱伝導量の調整がなされていることを特徴とする。
【0012】
[2]本発明の電子部品ユニットにおいては、前記各部品収納室の底面の側には放熱部材が設けられており、前記放熱部材は、当該放熱部材が前記冷却用流体の流れの上流側から下流側のどの位置に存在するかに応じて当該位置における放熱部材の熱伝導量が調整されていることが好ましい。
【0013】
[3] 本発明の電子部品ユニットにおいては、前記放熱部材の熱伝導量は、前記放熱部材の量又は材質の少なくとの一方を変更することによって調整することが好ましい。
【0014】
[4]本発明の電子部品ユニットにおいては、前記放熱部材の量の変更は、前記底面側放熱部材の前記各部品収容室の底面からの厚みを変えることによって行うことが好ましい。
【0015】
[5]本発明の電子部品ユニットにおいては、前記放熱部材の材質の変更は、当該放熱部材の熱伝導率を促進させる物質の含有量を変えることによって行うことが好ましい。
【0016】
[6]本発明の電子部品ユニットにおいては、前記底面側放熱部材は、放熱性樹脂であることも好ましい。
【0017】
[7]本発明の電子部品ユニットにおいては、前記底面側放熱部材は、放熱シートであることも好ましい。
【0018】
[8]本発明の電子部品ユニットにおいては、前記ケースは、アルミニウム製のケースであることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電子部品ユニットは、電子部品から発生する熱のケースへの熱伝導量が、冷却用流体の流れの上流側から下流側に向かって順次増加するように、複数の部品収容室におけるケースへの熱伝導量の設定がなされている。このため、電子部品から発生する熱を冷却用流体によっても放熱を行う場合、電子部品ユニットにおけるケース内全体の温度の偏りを少なくすることができ、それによって、ケース内全体の温度を平準化することができる。その結果、電子部品ユニット内での部分的な蓄熱を抑制できるため、電子部品としての性能を満足することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態1に係る電子部品ユニット100Aを説明するために示す斜視図である。
図2】実施形態1に係る電子部品ユニット100Aの要部を拡大して示す断面図である。
図3】実施形態2に係る電子部品ユニット100Bの要部を拡大して示す断面図である。
図4】実施形態3に係る電子部品ユニット100Cの要部を拡大して示す断面図である。
図5】実施形態3に係る電子部品ユニット100Cの変形例を説明するために示す図である。
図6】特許文献1に開示されている電子部品ユニット900を説明するために示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0022】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る電子部品ユニット100Aを説明するために示す斜視図である。図2は、実施形態1に係る電子部品ユニット100Aの要部を拡大して示す断面図である。なお、図2図1におけるa−a矢視断面図である。
【0023】
実施形態1に係る電子部品ユニット100Aは、図1に示すように、箱状のケース110を有し、当該ケース110の内部は、複数の仕切り板120で仕切られることによって複数の部品収容室131〜135が形成されている。そして、部品収容室131〜135には、図示は省略するが、発熱性の電子部品(例えば、チョークコイル、半導体、トランスなど)が収容されている。なお、ケース110及び仕切り板120はアルミニウム製である。このように、ケース110及び仕切り板120をアルミニウム製とすることによって、電子部品から発生する熱の放熱性をより向上させることできる。
【0024】
また、図1及び図2において、矢印Aは冷却用流体(冷却風とする。)が流れる方向を示している。これは、他の図面(図3図4及び図5)においても同様である。
【0025】
このような電子部品ユニット100Aにおいて、各部品収容室131〜135の底面側には、電子部品から発生する熱をケース110に効率よく放熱可能とするための放熱部材が設けられている。これを図2により説明する。図2図1におけるa−a矢視断面図であるため、部品収容室131,132,133の内部が断面図として示されている。したがって、ここでは、部品収容室131,132,133を例にとって説明する。また、実施形態1に係る電子部品ユニット100Aにおいては、放熱部材は放熱性樹脂であるとする。
【0026】
実施形態1に係る電子部品ユニット100Aにおいては、部品収容室131,132,133に放熱性樹脂が注入されることによって、図2に示すように、それぞれの底面131a,132a,133aの側には放熱性樹脂層が形成されている。なお、部品収容室131に形成されている放熱性樹脂層を放熱性樹脂層210、部品収容室132に形成されている放熱性樹脂層を放熱性樹脂層220、部品収容室133に形成されている放熱性樹脂層を放熱性樹脂層230とする。
【0027】
このような放熱性樹脂層210,220,230は、例えば、熱伝導性フィラーを含有した溶融樹脂を各部品収容室131,132,133に注入して硬化させることによって形成することができる。なお、熱伝導性フィラーを樹脂に含有させることによって当該樹脂の熱伝導率を高める技術は公知の技術である。
【0028】
実施形態1に係る電子部品ユニット100Aにおいては、部品収容室131,132,133に形成されている放熱性樹脂層210,220,230が、冷却風の流れの風上側から風下側のどの位置に存在するかに応じて、当該位置における放熱性樹脂層210,220,230の熱伝導量が調整されている。そして、放熱性樹脂層210,220,230の熱伝導量の調整は、放熱性樹脂層210,220,230の量を変更することによって行う。また、放熱性樹脂層210,220,230の量の変更は、放熱性樹脂層210,220,230の厚み、すなわち、各部品収容室131,132,133の底面131a,132a,133aからの厚みを変えることによって行う。
【0029】
ところで、部品収容室131は最も風上側に位置し、部品収容室133は最も風下側に位置し、部品収容室132は、その中間に位置している。このため、以下では、部品収容室131を「風上側の部品収容室131」、部品収容室132を「中間の部品収容室132」、部品収容室133を「風下側の部品収容室133」と呼ぶ場合もある。
【0030】
ここで、風上側の部品収容室131に形成される放熱性樹脂層210の厚みをt1、中間の部品収容室132に形成される放熱性樹脂層220の厚みをt2、風下側の部品収容室133に形成される放熱性樹脂層230の厚みをt3とすると、t1<t2<t3となるようにそれぞれの厚みを設定している。
【0031】
部品収容室131,132,133の厚みt1、t2、t3をこのように設定することによって、各部品収容室131,132,133におけるケース110への熱伝導量は、風上側の部品収容室131、中間の部品収容室132、風下側の部品収容室133の順で順次増加する。
【0032】
これによって、仮に、部品収容室131,132,133に収容される電子部品がほぼ同等の発熱量であるとすれば、部品収容室131,132,133に収容されている各電子部品から発生する熱の放熱量は、放熱性樹脂層210,220,230のみによる放熱量で比較すると、風下側の部品収容室133の放熱量が最も大きく、以下、中間の部品収容室132、風上側の部品収容室131の順となる。
【0033】
一方、電子部品ユニット100Aにおいては、矢印A方向に冷却風が流れており、冷却風のみによる放熱量で比較すると、風上側の部品収容室131が最も放熱量が大きく、以下、中間の部品収容室132、風下側の部品収容室133の順となる。このため、放熱性樹脂層による放熱量と冷却風による放熱量とを合わせて考えると、部品収容室131,132,133に収容されている各電子部品から発生する熱の放熱量は、風上側の部品収容室131、中間の部品収容室132、風下側の部品収容室133においてほぼ同等のものとなる。
【0034】
なお、部品収容室131,132,133に収容される各電子部品の発熱量が大きく異なる場合には、部品収容室131,132,133に収容される各電子部品の発熱量を考慮して、放熱性樹脂層210,220,230の厚みを部品収容室131,132,133ごとに適宜設定することも可能である。例えば、発熱量の大きい電子部品を収容する部品収容室においては、放熱性樹脂層の厚みをより厚くする。これにより、冷却風の流れに対する部品収容室131,132,133の位置だけでなく、部品収容室131,132,133に収容される各電子部品の発熱量を考慮した放熱量の調整が可能となり、部品収容室131,132,133に収容される各電子部品の発熱量が大きく異なる場合であっても、風上側の部品収容室131、中間の部品収容室132、風下側の部品収容室133それぞれの温度の偏りを少なくすることができる。
【0035】
なお、図2においては、部品収容室131,132,133のみについて説明したが、他の部品収容室134,135においても、これら部品収容室134,135に形成すべき放熱性樹脂層の厚みを適宜設定することにより、ケース110内全体の温度の偏りを少なくすることができ、それによって、ケース110内全体の温度を平準化することができる。
【0036】
[実施形態2]
図3は、実施形態2に係る電子部品ユニット100Bの要部を拡大して示す断面図である。なお、図3図2に対応する図であり、図2と同一部材には同一符号が付されている。また、図2と同様に部品収容室131,132,133に収容されている電子部品は図示が省略されている。
【0037】
実施形態2に係る電子部品ユニット100Bにおいても、実施形態1に係る電子部品ユニット100Aと同様、部品収容室131,132,133に形成されている放熱性樹脂層210,220,230が、冷却風の流れの風上側から風下側のどの位置に存在するかに応じて、当該位置における放熱性樹脂層210,220,230の熱伝導量が調整されている。ただし、実施形態2に係る電子部品ユニット100Bにおいては、放熱性樹脂層210,220,230の熱伝導量の調整は、放熱性樹脂層210,220,230の材質を変更することによって行う。
【0038】
なお、実施形態2に係る電子部品ユニット100Bにおいても、部品収容室131,132,133を例にとって説明する。また、実施形態2に係る電子部品ユニット100Bにおいては、部品収容室131,132,133に形成されている放熱性樹脂層210,220,230の厚みは同じであるとする。ここでは、放熱性樹脂層210,220,230の厚みをt4とする。
【0039】
実施形態2に係る電子部品ユニット100Bにおいては、放熱性樹脂層210,220,230の材質の変更は、放熱性樹脂層210,220,230を形成するための放熱性樹脂が、例えば、熱伝導性フィラーを含有した放熱性樹脂である場合、熱伝導性フィラーの含有量を適宜変えることによって行う。
この場合、部品収容室131,132,133におけるケース110への熱伝導量が、風上側の部品収容室131、中間の部品収容室132、風下側の部品収容室133の順で順次大きくなるように、熱伝導性フィラーの含有量を適宜設定する。
【0040】
このような構成とすることによって、仮に、部品収容室131,132,133に収容される電子部品がほぼ同等の発熱量であるとすれば、実施形態1に係る電子部品ユニット100Aと同様、放熱性樹脂層による放熱量と冷却風による放熱量とを合わせて考えると、部品収容室131,132,133に収容されている各電子部品から発生する熱の放熱量は、風上側の部品収容室131、中間の部品収容室132、風下側の部品収容室133においてほぼ同等のものとなる。
【0041】
なお、この明細書では、「放熱性樹脂の材質を変える」ということは、熱伝導性フィラーの含有量を適宜変えるというように、放熱性樹脂の成分を変えることも含むものであるとする。
【0042】
また、部品収容室131,132,133に収容される電子部品の発熱量が大きく異なる場合には、部品収容室131,132,133に収容される電子部品の発熱量を考慮して、放熱性樹脂層210,220,230における熱伝導性フィラーの含有量をそれぞれの部品収容室において適宜設定することも可能である。これにより、冷却風の流れに対する部品収容室131,132,133の位置だけでなく、部品収容室131,132,133に収容される電子部品の発熱量を考慮した放熱量の調整が可能となり、部品収容室131,132,133に収容される電子部品の発熱量が大きく異なる場合であっても、風上側の部品収容室131、中間の部品収容室132、風下側の部品収容室133それぞれの温度の偏りを少なくすることができる。
【0043】
なお、図3においては、部品収容室131,132,133のみについて説明したが、他の部品収容室134,135においても、これら部品収容室134,135に形成すべき各放熱性樹脂層における熱伝導性フィラーの含有量を適宜設定することにより、ケース110内全体の温度の偏りを少なくすることができ、それによって、ケース110内全体の温度を平準化することができる。
【0044】
[実施形態3]
図4は、実施形態3に係る電子部品ユニット100Cの要部を拡大して示す断面図である。なお、図4図2に対応する図であり、図2と同一部材には同一符号が付されている。また、図2と同様に部品収容室131,132,133に収容されている電子部品は図示が省略されている。
【0045】
実施形態3に係る電子部品ユニット100Cは、実施形態1に係る電子部品ユニット100Aと同様、放熱性樹脂層の厚みを各部品収容室において適宜設定するものである。ただし、実施形態3に係る電子部品ユニット100Cにおいては、各部品収容室における底面の高さ(底面のケース110の開口面方向の高さ)を各部品収容室ごとに変えることによって、放熱性樹脂層の厚みを変えるようにしている点が実施形態1に係る電子部品ユニット100Aと異なる。なお、「底面のケース110の開口面方向の高さ」の設定は、各部品収容室の底面を底上げすることによって行う。底面を底上げする量を「底上げ量」と呼ぶことにする。また、実施形態3に係る電子部品ユニット100Cにおいても、部品収容室131,132,133を例にとって説明する。
【0046】
実施形態3に係る電子部品ユニット100Cにおいては、図4に示すように、部品収容室133は、当該部品収容室133の底面133aの底上げを行わず底上げ量はゼロとし、部品収容室131,132についてはそれぞれの底面131a,132aを所定量だけ底上げする。ここでは、部品収容室133の底面133aを基準とする。図4に示すように、部品収容室132の底面132aの底上げ量はh1であり、部品収容室131の底面131aの底上げ量はh2である。なお、h1>h2である。
【0047】
部品収容室131,132の底面131a,132aの底上げ量を、部品収容室133の底面133aに対してこのように設定することにより、例えば、ケース110を水平面上に設置した状態で、放熱性樹脂をケース110内全体に渡って同一水平面となるように注入すると、部品収容室131,132,133に形成される放熱性樹脂層の厚みは、各部品収容室131,132,133の底上げ量に応じた量となる。ここで、部品収容室131に形成される放熱性樹脂層210の厚みをt1、部品収容室132に形成される放熱性樹脂層220の厚みをt2、部品収容室133に形成される放熱性樹脂層230の厚みをt3とすれば、必然的に、t1<t2<t3となる。
【0048】
部品収容室131,132,133に形成される各放熱性樹脂層210,220,230の厚みt1,t2,t3をこのような関係とすることによって、実施形態1に係る電子部品ユニット100Aと同様の効果が得られる。
【0049】
なお、図4に示す例では、部品収容室131,132,133の底面の底上げを行う場合、個々の部品収容室について当該部品収容室の底面全体を底上げしたが、実施形態3に係る電子部品ユニット100Cの変形例として、個々の部品収容室内における底面の底上げ量が当該部品収容室の領域によって異なるようにしてもよい。
【0050】
図5は、実施形態3に係る電子部品ユニット100Cの変形例を説明するために示す図である。なお、図5図4に対応する図であり、図4と同一部材には同一符号が付されている。また、図4と同様に部品収容室131,132,133に収容されている電子部品は図示が省略されている。
【0051】
実施形態3に係る電子部品ユニット100Cの変形例(電子部品ユニット100Dとする。)は、図5に示すように、ある1つの部品収容室(部品収容室131とする。)においては、当該部品収容室131を複数の領域に分けて、各領域ごとに底上げを行っている。例えば、図5に示すように、部品収容室131を風上側から風下側に向かって2つの領域W1,W2に分けた場合、これら各領域W1,W2ごとに所定の底上げ量で底上げを行っている。この場合、風上側の領域W1の底面131a1の底上げ量をh3、風下側の領域W2の底面131a2の底上げ量をh2としている。なお、h3>h2である。
【0052】
このような構成とすることによって、例えば、部品収容室131に複数種類の電子部品を収納するような場合においては、それぞれの種類の電子部品に対応した放熱量の調整が可能となる。図5においては、部品収容室131を例にとって説明したが、他の部品収容室においても同様に実施することができる。また、1つの部品収容室において、3つ以上の領域を設定してもよい。
【0053】
また、図4及び図5に示す例では、ケース110を水平面上に設置した状態で放熱性樹脂をケース110内全体に渡って同一水平面となるように注入した場合を例示したが、冷却風の流れに対する部品収容室131,132,133の位置及び収容される電子部品の発熱量など考慮して、部品収容室131,132,133に注入する放熱性樹脂の量を部品収容室131,132,133ごとに適宜設定することも可能である。この場合、部品収容室131,132,133には必要な量だけ放熱性樹脂を注入すればよいため、放熱性樹脂層の量を節約することができる。
【0054】
本発明は、上記各実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能となるものである。例えば、下記に示すような変形実施も可能である。
【0055】
(1)上記各実施形態においては、各部品収容室には放熱性樹脂層を形成するようにしたが、ある部品収容室に収容される電子部品の発熱量が少ない場合は、当該部品収容室においては放熱性樹脂層を形成しなくてもよい場合もある。
【0056】
(2))上記各実施形態においては、各部品収容室には放熱性樹脂層を形成し、当該放熱性樹脂層により各部品収容室の放熱量の調整を行うようにしたが、ある特定の部品収容室においては断熱材などを設け、当該断熱材によって放熱量を調整するようにしてもよい。
【0057】
(3)上記各実施形態においては、放熱部材としては、放熱性樹脂を注入することによって放熱性樹脂層を形成する場合を例示したが、これに限られるものではなく、放熱シートを敷設するようにしてもよい。この場合は、各部品収容室において敷設する放熱シートの厚み又は材質の少なくとも一方を適宜設定することにより、各部品収容室における放熱量の調整を行うことができる。それによって、上記各実施形態と同様に、ケース110内全体の温度の偏りを少なくすることができ、それによって、ケース110内全体の温度を平準化することができる。
【0058】
(4)上記各実施形態においては、冷却用流体が風(冷却風)であるとして説明したが、水などの液体(冷却液)であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
100A,100B,100C・・・電子部品ユニット、110・・・ケース、120・・・仕切り板、130〜135・・・部品収容室、131a,132a,133a・・・部品収容室131,132,133の底面、210,220,230・・・放熱性樹脂層、A・・・冷却風の流れの方向、h1,h2,h3・・・底上げ量、t1,t2,t3,t4・・・放熱性樹脂層の厚み、WI,W2・・・部品収容室131の領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6