(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る実施の形態を図面を用いて説明する。
【0018】
本発明の一実施形態における塗布装置を
図1に示す。塗布装置1は、送り出し装置2、巻き取り装置3、認識部4および塗布部5を有しており、送り出し装置2から送り出され巻き取り装置3によって巻き取られる帯状の基板Wに対し、塗布部5において固定された基板W上を塗布部5が有する塗布ユニット21が直線状に走査しながら塗布液を吐出することにより、基板Wに形成されている複数の塗布領域(以降、画素部Gと呼ぶ)への塗布液の塗布を行うものである。また、歪みの影響を含む各画素部Gの配列は、塗布部5による塗布の前に認識部4によって認識され、その結果に基づいて、塗布ユニット21の回転角などが変化しながら塗布部5による塗布が行われる。
【0019】
また、塗布装置1は、コンピュータプログラムを記憶する記憶装置等を有するコンピュータからなる制御部6を備え、この制御部6により、各種計算、塗布装置1が有する駆動機構の動作の制御などが行われる。
【0020】
なお、以下の説明では、塗布中に塗布ユニット21が走査する方向をX軸方向(第1方向)とする。また、水平面上でX軸方向と直交する方向をY軸方向(第2方向)とし、また、X軸方向およびY軸方向と直交する方向をZ軸方向とする。
【0021】
基板W上には、画素形成部Sが所定のピッチで形成されており、各画素形成部Sには、画素部GがX軸方向及びY軸方向それぞれに並んで複数形成されている。つまり、マトリックス状に形成されている。なお、
図1では説明を容易とするために画素部Gを大きくして記載している。
【0022】
画素部Gは凹部からなり、この凹部に塗布液が塗布される。本実施形態では、基板Wは樹脂製であり、インプリント法などにより、画素部Gが形成されている。また、この帯状の基板Wは塗布装置1による塗布工程より後の工程で画素形成部S毎に裁断され、たとえばカラーフィルタとなる。
【0023】
送り出し装置2は、帯状の基板Wが巻かれた筒状体が取り外し可能な機構を有し、また、巻き取り装置3は、基板Wを巻き取ってゆく筒状体が取り外し可能な機構を有する。これら筒状体を図示しない駆動機構により回転させることにより、基板Wは、送り出し装置2から巻き取り装置3へ送り出される。その間、塗布部5により基板Wへ塗布液の塗布が行われ、巻き取り装置3には、塗布液の塗布処理が完了した基板Wが巻き取られてゆく。
【0024】
認識部4は、基板Wを固定及び固定解除可能なステージ14と、カメラガントリ12に搭載されたカメラ11と、カメラ11をX軸方向及びY軸方向に移動させる駆動装置13とを有している。
【0025】
カメラ11は、例えばCCDカメラであり、ステージ14に固定した基板Wの画素部Gを撮像する。駆動装置13は、カメラガントリ12をX軸方向に移動させる機能と、カメラ11をカメラガントリ12に沿ってY軸方向に移動させる機能とを有し、例えばリニアガイド及びモータ等によって構成される。また、ステージ14は、エア吸引又は静電気によって基板Wを固定することができる。
【0026】
また、認識部4は、駆動装置13及びカメラ11と関連して機能する図示しない座標取得部を備えており、この座標取得部は、カメラ11が撮像した画像を処理する機能を有するほか、駆動装置13によって移動したカメラ11のX軸方向及びY軸方向の位置(座標)を制御(管理)する。このため、後述する、カメラ11によって取得された画像に基づいて、座標取得部は画素部Gの座標を取得することができる。なお、座標取得部の機能は、前記制御部6のコンピュータプログラムが実行されることで発揮される。
【0027】
また、駆動装置13は、カメラ11が移動するXY座標系をZ軸方向(高さ方向)の軸回りに回転させる機能を有している。また、座標取得部が得た座標情報を用いて、駆動装置13によって、ステージ14に固定状態とした基板WのXY座標系と、カメラ11の移動のためのXY座標系とを一致させるアライメント作業を行うことができる。
【0028】
塗布部5は、基板Wを固定及び固定解除可能なステージ26と、塗布ガントリ23と、塗布ユニット21をX軸方向及びY軸方向に移動させる塗布用の駆動装置24とを有している。塗布ガントリ23には、Z軸方向に回転軸を有する回転手段25が取付けられ、この回転手段25の回転軸には塗布ユニット21が取付けられており、塗布ユニット21はこの回転軸を中心に回動することが可能である。
【0029】
塗布ユニット21には、複数の画素部Gそれぞれに対して塗布液を吐出する吐出ノズル22が一方向に等間隔で複数並んで設けられており、塗布ユニットが回転手段25によって回動することにより、吐出ノズル22の配列方向を変化させることが可能である。
【0030】
このように吐出ノズル22の配列方向を変化させることにより、
図2に示すように吐出ノズル22のY軸方向の間隔と、画素部GのY軸方向の間隔とを等しくすることができるため、それぞれの画素部Gのたとえば中心といった所定位置の上方を、それぞれの吐出ノズル22を通過させることが可能である。
【0031】
そして、塗布動作中、塗布ユニット21がX軸方向に走査する際に、それぞれの吐出ノズル22が吐出目標とする画素部Gの所定位置の上方に差し掛かったときに塗布液を吐出することにより、それぞれの画素部Gの所定位置へ液滴27を形成することが可能である。なお、いつ吐出ノズル22がそれぞれの画素部Gの所定位置の上方に差し掛かるかについては、それぞれの画素部Gの座標と、塗布動作中におけるそれぞれの吐出ノズル22の位置の時間変位とを制御部6が管理しておくことにより、算出することが可能である。これらの算出についての詳細は、後述する。
【0032】
また、
図1の駆動装置24は、塗布ガントリ23をX軸方向に移動させる機能と、塗布ユニット21および回転手段25を塗布ガントリ23に沿ってY軸方向に移動させる機能とを有し、例えばリニアガイド及びモータ等によって構成される。これにより、塗布ユニット21は、基板Wに対してX軸方向及びY軸方向に移動することができる。また、ステージ26は、エア吸引又は静電気によって基板Wを固定することができる。
【0033】
また、駆動装置24は、塗布ユニットの移動するXY座標系をZ軸方向の軸回りに回転させる機能も有し、制御部6は、この駆動装置24によって、ステージ26に固定状態とした基板WのXY座標系と、塗布ユニット21の移動のためのXY座標系とを一致させるアライメント作業を行うことができる。
【0034】
なお、この塗布部5においても、認識部4と同様に、カメラがたとえば塗布ガントリ23に設置されていてもよく、この場合、ステージ26に固定された基板Wに対して当該カメラを用いてアライメント作業が行われる。
【0035】
塗布部5は、ステージ26に固定した基板Wの画素部Gそれぞれに対して、塗布ユニット21の吐出ノズル22から塗布液を吐出させて塗布する各種動作の制御を行う塗布動作制御部を備えている。また、塗布動作制御部は、各吐出ノズル22のX軸方向及びY軸方向の位置(座標)を制御(管理)することができる。この塗布動作制御部の機能は、前記制御部6のコンピュータプログラムが実行されることで発揮される。
【0036】
なお、画素形成部Sには、Y軸方向に並ぶ複数の画素部Gの列が、X軸方向に複数列並んでいることから、塗布動作制御部は、駆動装置24によって塗布ユニット21を基板Wに対してX軸方向に1ストローク走査させる間に、複数の吐出ノズル22から塗布液を吐出させる。以降、この塗布ユニット21をX軸方向に走査させる間に吐出ノズル22から塗布液を吐出させる動作を、「1ストローク動作」と呼ぶ。
【0037】
ここで、Y軸方向の画素部Gの配列数が塗布ユニット21の吐出ノズル22の数より多い場合は、1回の1ストローク動作では、Y軸方向について全ての画素部Gに塗布液の塗布を行うことはできない。そこで、塗布動作制御部は、X軸方向の各列の画素部Gに対して塗布動作を行う1ストローク動作を終える毎に、基板Wに対して塗布ユニット21をY軸方向に移動させて、次の1ストローク動作を実行する機能を有している。この機能により、1ストローク動作を繰り返すことによって画素形成部Sのすべての画素部Gに塗布液を塗布することが可能となる。
【0038】
以上の構成を備えた塗布装置1によって実行される塗布方法を、
図3に沿って、さらに他図を参照しながら説明する。なお、以下に説明する塗布方法において、特に主体を記載していない処理は、制御部6が行う処理である。
【0039】
まず、認識部4において、画素部Gの配列の歪みを求める(
図3のステップS1)。なお、この歪みは、カメラ11が画素部Gを撮像し、これに基づいて座標取得部が画素部Gの座標を取得した結果(座標取得ステップ)から得ることができる。
【0040】
ここで、
図4は、座標取得ステップの説明図であり、代表となる画素部Gの座標(X
nx,Y
ny)を取得する処理を示している。なお、
図5は、基板Wのうち、認識部4に位置している画素形成部Sを取り出して説明する説明図である。
【0041】
画素形成部Sがステージ14上で固定されると(
図4のステップS11)、この画素形成部Sの隅部に設けられているアライメントマークMをカメラ11が撮像し、座標取得部は、この画素形成部S1のXY座標系とカメラ11のXY座標系とを一致させる前記アライメント作業を行う(ステップS12)。具体的には、カメラ11のY軸方向の移動を経て、Y軸方向に並んだ2つのアライメントマークMをカメラ11で撮像した場合に、両者のアライメントマークMのX座標が等しくなるように、駆動装置13によりカメラ11の移動のためのXY座標系を回転させて調節する。
【0042】
次に、カメラ11により代表となる画素部Gの撮像及びその座標の取得を行う前に、その取得回数の初期化を行う(ステップS13)。
【0043】
次に、駆動装置13は、画素部Gの配列の歪みを認識するための座標取得対象である画素部Gを順に撮像してゆく。まずは、最初に撮像する対象の画素部Gへカメラ11を移動させる(ステップS14)。本実施形態では、
図5(a)に示すように、左上の画素部G上へカメラ11が移動する。このカメラ11による画像には、撮像対象の画素部G以外の他の画素部Gも撮像されるが、座標取得部は、カメラ11が撮像した画像のうち、画像中心に最も近い画素部Gの中心点のXY座標(X
nx,Y
ny)を、対象の画素部Gの座標として取得する(ステップS15,S16)。そして、次の対象とする画素部Gへカメラ11を移動させるために、座標取得部は、Y軸方向についての取得回数n
yをインクリメントする(ステップS17)。このY軸方向についての取得回数n
yの上限値n
ymaxは、予め設定されている。この上限値n
ymaxは、Y軸方向にならんだ画素部Gの数、および次の撮像対象の画素部Gを撮像するためにカメラ11が移動する距離である、「カメラ移動ピッチ」に基づいて決定されている。なお、「カメラ移動ピッチ」の決定方法については後に説明する。
【0044】
そして、座標取得部によって前記上限値n
ymaxと、実際の取得回数n
yとの比較がされ(ステップS18)、上限値に達していない場合(ステップS18でNo)、カメラ11は、前記のステップS16で座標を取得した画素部Gの中心点のXY座標(X
nx,Y
ny)位置からY軸方向に前記「カメラ移動ピッチ」を足した座標位置に移動する(ステップS19)。以下、同様にして、Y軸方向について取得回数n
yが、上限値n
ymaxに達するまで実行される。これにより、Y軸方向の一列(
図5(a)では最も上の1列目)について、Y軸方向の「カメラ移動ピッチ」毎に存在する座標取得対象の画素部Gのそれぞれの座標(X
1,Y
ny)が取得される(
図5(a)では、対角線を付した画素部Gが、座標取得対象の画素部Gである)。ここで取得されたそれぞれの取得対象の画素部Gの座標は、制御部6に記憶される。
【0045】
取得回数n
yが上限値n
ymaxに達すると(ステップS18でYes)、X軸方向についてカメラ11を移動させるために、座標取得部は、X軸方向についての取得回数n
xをインクリメントする(ステップS20)。このX軸方向についての取得回数n
xの上限値n
xmaxについても予め設定されており、X軸方向にならんだ画素部Gの数、およびX軸方向の「カメラ移動ピッチ」に基づいて決定される。
【0046】
そして、座標取得部によって前記上限値n
xmaxと、実際の取得回数n
xとの比較がされ(ステップS22)、最大値に達していない場合(ステップS21でNo)、カメラ11は、前記動作(ステップS16)で座標を取得した画素部Gの中心点のXY座標(X
nx,Y
1)位置からX軸方向に前記「カメラ移動ピッチ」を足した座標位置に移動する(ステップS22)。そして、上記と同様にして、Y軸方向について取得回数n
yが上限値n
ymaxに達するまでステップS16からステップS19までの各ステップが実行され、これにより、X軸方向の次の一列について、Y軸方向の「カメラ移動ピッチ」毎に存在する座標取得対象の画素部Gそれぞれの座標(X
2,Y
ny)が取得される。ここで取得されたそれぞれの対象の画素部Gの座標は、制御部6に記憶される。
【0047】
そして、取得回数n
xが上限値n
xmaxに達するまでステップS16からステップS22の動作が繰り返され、取得回数n
xが上限値n
xmaxに達すると(ステップS21でYes)、全ての座標取得対象の画素部G(
図5(a)において対角線を付した9個の画素部G)についての座標取得の処理を終える。
【0048】
ここで、前述の「カメラ移動ピッチ」の決定方法について説明する。
【0049】
図4のステップS12のアライメント作業が完了した後において、基板Wに形成されているアライメントマークM(
図5(a)参照)をカメラ11が撮像することにより、座標取得部は、画素形成部Sの全体における、画素部Gの配列のX軸方向及びY軸方向の1mmあたりの歪み量Xd,Ydを取得することができる。
【0050】
ここで、隣接する画素部GのX軸方向及びY軸方向の間隔(ピッチ)の設計値がXpp(mm),Ypp(mm)であったとする。このとき、カメラ11がY軸方向に画素部Gの数「Ngy」個分隣りの画素部Gへ移動する距離が、Y軸方向についての「カメラ移動ピッチ」となるので、この画素部Gの数「Ngy」は、以下の式(1)を満足する必要がある。
Ypp/2 > Ypp×Ngy×Yd ・・・(1)
すなわち、
図4に示したステップS16では、座標取得部は、カメラ11の画像のうち、画像中心に最も近い画素部Gの中心点のXY座標(X
nx,Y
ny)を、座標取得対象の画素部Gの座標として取得することから、Y軸方向の「カメラ移動ピッチ」に相当する「Ngy」個分Y軸方向に離間した画素部Gへとカメラ11が移動した場合において、その移動前後の画素部G,Gの間で、実際に画素形成部Sに生じているY軸方向の歪み量が、画素部GのピッチYppの1/2以上になっていると、カメラ11の移動後の画像において、座標取得対象の画素部G以外の画素部Gが画像中心に近くなってしまい、間違った認識をしてしまう。そこで、この式(1)は、その歪み量を制限する式である。
【0051】
そして、この式(1)によって算出される画素部Gの数「Ngy」は、自然数である必要があるため、この「Ngy」の取り得る最大値は、式(2)で表される数値で表される最大の自然数となる。
Ngy = 1/(Yd×2) ・・・(2)
ただし、歪み量がY軸方向(X軸方向)に関して一様に存在している場合は良いが、実際では部位によって異なるため、つまり、歪み量に偏りがあるため、安全率(ゼロより大きく、1未満である値)を含めた式(3)によって、「Ngy」の取り得る最大値を取得するのが好ましい。
Ngy = (1×安全率)/(Yd×2) ・・・(3)
そして、この「Ngy」に、Y軸方向の画素部GのピッチYppを乗算した値が、Y方向についての「カメラ移動ピッチ」となる。また、この「カメラ移動ピッチ」と、画素形成部Sに実際に存在しているY軸方向についての画素部Gの総数とによって、
図4の処理で必要となる、Y軸方向についての取得回数n
yの上限値n
ymaxを算出することができる。なお、X軸方向の「カメラ移動ピッチ」である「Ngx」に関しても同様であり、ここでは説明を省略する。
【0052】
このように「Ngy」および「Ngx」の取り得る最大値を取得することで、座標取得のために、代表となる画素部Gの数を減らすことができる。この結果、座標取得のためのカメラ11による撮像時間を短縮することができ、作業効率の向上に貢献することができる。
【0053】
ここで、
図5(b)は、上述の座標取得ステップの処理の結果に基づいて、画素部Gの配列の歪みを示した説明図である。すなわち、
図5(b)は、代表である9個の前記画素部Gについての座標(X
nx,Y
ny)をXY平面にプロットした図であり、設計値では画素部GはX軸方向及びY軸方向それぞれに直線的に並んで配置されるが、実際では、基板Wを製造する際の熱等の影響により、歪みが生じており、画素部Gは直線的に並んでいない。そこで、塗布部5にてそれぞれの画素部Gへ塗布液の吐出を行うにあたり、あらかじめ、座標取得部は、画素部Gの配列の歪みを考慮して画素部Gの並びの再構築を行う(
図3のステップS2)。
【0054】
画素部Gの並びの再構築について、本実施形態では、座標取得部が全ての画素部Gそれぞれについての座標を求める。
図4および
図5で示した座標取得の処理では、9個の代表となる(間欠的な)画素部Gについてのみ座標を取得したが、ステップS2では、残りの他の画素部Gの座標も推定し、求める。この推定処理は、座標取得部が、代表となる画素部Gの座標に基づいて、直線補間又は二次曲線補間等することで実現できる。
【0055】
次に、制御部6は、X軸方向に画素部Gの所定個数分おきに指定した、塗布ユニット21の回転角の算出ポイントとする画素部G(以降、基準点Pと呼ぶ)において、ステップS2で求められた画素部Gの座標にもとづき、歪みの影響を含めた実際の画素部GのY軸方向のピッチ(塗布領域ピッチ)を求める。そして、この画素部GのY軸方向のピッチにもとづいて、それぞれの基準点Pにおける塗布ユニット21の回転角を求める(ステップS3)。
【0056】
たとえば、ある基準点PにおけるY軸方向の画素部Gのピッチがlであり、塗布ユニット21に設けられた隣接する吐出ノズル22の中心間距離がdであったとした場合、以下の式(4)で求められる角度θに塗布ユニット21の回転角を調節することにより、この基準点Pにおいて画素部GのY軸方向のピッチと、隣接する吐出ノズル22間のY軸方向の距離とが等しくなり、各画素部Gの所定位置(本実施形態では、各画素部Gの中心とする)へ吐出ノズル22から塗布液を吐出することが可能となる。
l = d×cosθ ・・・(4)
ここで、本実施形態では、吐出ノズル22の個数と同じ個数分Y軸方向にならんだ画素部Gを回転角θの算出の対象とし、これらの両端の画素部Gの中心間の距離(すなわち、算出の対象とした画素部Gの個数より1個少ない個数分のピッチの合計。すなわち、吐出ノズル22の個数より1個少ない個数分のピッチの合計)を求め、この距離Lと、塗布ユニット21の両端の吐出ノズル22の中心間距離Dに対し、式(4)と同様の以下の式(5)で求められる角度θを求め、このθを、当該基準点において塗布ユニット21がとる回転角としている。
L = D×cosθ ・・・(5)
この回転角をそれぞれの基準点にて求め、塗布ユニット21の所定部位がそれぞれの基準点の上方に到達したときにこの回転角となるように制御することにより、基板Wが歪み、画素部Gの配列に歪みが生じても、それぞれの基準点Pにおける画素部GのY軸方向のピッチと、吐出ノズル22のY軸方向のピッチとを等しくすることが可能である。
図6を例にとると、塗布ユニット21の回転角を基準点P1ではθ
1、基準点P2ではθ
2、基準点P3ではθ
3というように1ストローク動作中に変化させることにより、それぞれの基準点Pにおける画素部GのY軸方向のピッチと、吐出ノズル22のY軸方向のピッチとを等しくすることが可能である。
【0057】
なお、本実施形態では、配列の中央の吐出ノズル22である吐出ノズル28の中心を塗布ユニット21の回転軸が通るようにしており、この吐出ノズル28を上記の所定部位としている。こうすることにより、塗布ユニット21の回転角が変化しても、吐出ノズル28の位置は変わらないため、制御が容易である。
【0058】
一方、所定部位を塗布ユニット21の回転軸上にない部位に設定した場合であっても、それぞれの基準点Pで塗布ユニット21が所定の回転角を有する状態における所定部位の座標のX軸方向の変化量を計算に加味することにより、所定部位がそれぞれの基準点Pの上方に到達するタイミングを把握することが可能である。
【0059】
また、本実施形態では、座標取得ステップにおける隣接する座標取得対象の画素部GのY軸方向の間隔(カメラ移動ピッチ)を吐出ノズル22の個数より1個少ない個数分の画素部Gのピッチの合計としている。すなわち、上記式(5)における距離Lと等しくしている。さらに、X軸方向についても、塗布ユニット21の回転角の算出に使用する画素部Gを座標取得ステップ(ステップS1)における座標取得対象の画素部Gと同じ画素部Gとしている。こうすることにより、ステップS1で求められた座標取得対象の画素部の座標から、隣接するG同士の座標(X
m,Y
n)、(X
m,Y
n+1)をもとに、ステップS2の結果を求めることなく、すぐに各基準点Pにおける塗布ユニット21の回転角を求めることができる。ただし、1ストローク動作で全ての画素部Gに正確に吐出を行うためには、全ての画素部Gの座標を求め、後述のステップS5の工程を行うことが必要であり、この場合でも、ステップS2の工程は省略しない方が良い。
【0060】
次に、それぞれの画素部Gの所定位置の上方を吐出ノズル22が通過するように、それぞれの基準点Pにおける塗布ユニット21のY軸方向の補正量を求める(ステップS4)。上述のステップS3によって、それぞれの基準点Pにおける吐出ノズル22のY軸方向の間隔は画素部Gの間隔と等しくなったが、それぞれの吐出ノズル22の位置は画素部Gの所定位置(画素部Gの中心)からずれているおそれがあるためである。
【0061】
ここでは、塗布ユニット21の所定の吐出ノズル22がそれぞれの基準点Pの画素部Gの上方にある場合に、画素部Gの中心にあるように、塗布ユニット21の位置を管理すれば良い。本実施形態では、ステップS3と同様に、配列の中央の吐出ノズル28を所定の吐出ノズル22とし、この吐出ノズル28が各基準点Pの画素部Gの中心を通過するように、制御部6が1ストローク動作中の塗布ユニット21のY軸方向の位置を制御、補正することにより、各基準点Pにおいて画素部Gの中心に液滴27を形成させることが可能である。
図6を例にとると、吐出ノズル28のY軸方向の位置を、基準点P1ではY
1、基準点P2ではY
2、基準点P3ではY
3となるよう、位置を補正することにより、各基準点Pにおいて画素部Gの中心に液滴27を形成させることが可能である。
【0062】
一方、所定の吐出ノズル22が塗布ユニット21の回転軸上にない場合であっても、それぞれの基準点Pで塗布ユニット21が所定の回転角を有する状態における所定の吐出ノズル22の座標のY軸方向の変化量を計算に加味することにより、上記のように吐出ノズル22が各基準点Pの画素部Gの中心を通過するように、塗布ユニット21のY軸方向の位置を制御することは可能である。
【0063】
上記のステップS3およびステップS4により、X軸方向に設けられたそれぞれの基準点Pにおいて、それぞれの画素部Gの所定位置(画素部Gの中心)に液滴27を形成させることが可能となる。一方、基準点P以外の画素部Gへの塗布液の塗布を正確に行うことを考慮する場合、
図7に示すように各基準点P間で画素部Gの配列は徐々に変化するものと考えると、塗布ユニット21の回転角の調節およびY軸方向の位置の補正は、塗布ユニット21が基準点Pの上方に差し掛かったときに一気に行うのではなく、基準点P間を塗布ユニット21が走査する間に、回転角およびY軸方向の位置を連続的に変化させることが望ましい。
【0064】
ここで、塗布ユニット21の回転角の調節およびY軸方向の位置の補正に対する制御を効率よくするため、1ストローク動作において塗布ユニット21は一定速度でX軸方向に走査し、その際、基準点の上方から次の基準点の上方へ移動する間は、等速の回転速度で回転角が変化し、また、等速の移動速度でY軸方向に移動し、位置補正するようにすると良い。ただし、この場合でも、等速の回転速度および等速の移動速度なるまでに少なからず加減速の部分は発生するが、加減速の時間は無視できるほど十分に短いため、本説明ではこの加減速の動作を含め、「等速」の動作と呼ぶものとする。
【0065】
図7を例にとると、ステップS3およびステップS4によって基準点P1での塗布ユニット21の回転角がθ
1、吐出ノズル28のY座標がY
1、基準点P2での塗布ユニット21の回転角がθ
2、吐出ノズル28のY座標がY
2、基準点P1での塗布ユニット21の回転角がθ
3、吐出ノズル28のY座標がY
3となり、基準点から次の基準点に到達に到達するまでの時間をtとした場合、基準点P1と基準点P2との間では、回転速度は(θ
2−θ
1)/t、Y軸方向の補正速度は(Y
2−Y
1)/tで連続的に変化し、基準点P2と基準点P3との間では、回転速度は(θ
3−θ
2)/t、Y軸方向の補正速度は(Y
3−Y
2)/tで連続的に変化するように制御部6が制御すると良い。したがって、基準点P1と基準点P2の間における塗布ユニット21の回転速度およびY軸方向の移動速度と、基準点P2と基準点P3の間における塗布ユニット21の回転速度およびY軸方向の移動速度とは、必ずしも等しくなくても構わない。
【0066】
ちなみに、各基準点P間で回転角およびY軸方向の位置を等しい速度で変化させた場合、基準点P1と基準点P2との中間点では、塗布ユニット21の回転角θ
4は(θ
1+θ
2)/2、吐出ノズル28のY軸方向の位置Y
4は(Y
1+Y
2)/2となり、基準点P2と基準点P3との中間点では、塗布ユニット21の回転角θ
5は(θ
2+θ
3)/2、吐出ノズル28のY軸方向の位置Y
5は(Y
2+Y
3)/2となる。
【0067】
次に、画素形成部Sの各画素部Gへの塗布液の吐出のタイミングの決定を行う(ステップS5)。具体的には、ステップS3およびステップS4の結果および基準点P間の塗布ユニット21の回転角の調節およびY軸方向の位置の補正動作にもとづいて、1ストローク動作における各吐出ノズル22のX軸方向の位置の時間推移が求められ、この時間推移にもとづいて、各画素部Gの中心のX座標の位置に吐出ノズル22が到達するタイミングを制御部6が算出し、その算出結果を塗布に反映させることにより、塗布の際に正確に各画素部Gの中心に液滴27を形成することが可能となる。
【0068】
なお、上記のステップS2からステップS5の工程は、実際に塗布が行われる前であればいつ実施しても良く、後述のステップS6もしくはステップS7の後のタイミングで実施しても構わない。
【0069】
次に、認識部4にて画素部Gの並びの再構築を行った画素形成部Sを塗布部5へ移動させる(ステップS6)。塗布部5では、画素形成部SのXY座標系と塗布ユニット21のXY座標系とを一致させる前記アライメント作業が行われ(ステップS7)、認識部4におけるXY座標系を塗布部5で再現させる。
【0070】
次に、実際の塗布作業が実行される。具体的には、ステップS5塗布ユニット21を画素形成部Sに対してX軸方向に走査させる間に、各吐出ノズル22から塗布液を吐出させる「1ストローク動作」を実行する(ステップS8)。
【0071】
そして、制御部6は、1ストローク動作を終える毎に、固定状態にある画素形成部Sに対して塗布ヘッド7をY軸方向に移行させ(ステップS10)、次の1ストローク動作を実行する(ステップS6)。ここで、1ストローク動作では、吐出ノズル22の個数分、Y軸方向に並んだ画素部Gへの塗布が完了するため、ステップS10におけるY軸方向の移行では、その個数分の距離だけ移行すると良い。
【0072】
これらステップS8およびS10がY軸方向の全幅について塗布が完了するまで繰り返し実行され(ステップS9)、これにより、画素形成部Sのすべての画素部Gに塗布液を塗布することが可能となる。
【0073】
以上説明した塗布動作を行う塗布装置により、基板の歪みによって生じる塗布領域の配列の変化に吐出ノズルの配列を対応させ、液滴を吐出することが可能である。
【0074】
また、上記の説明では、塗布ユニット21の回転角の算出を行う際、たとえば画素部G(X
m,Y
n)と画素部G(X
m,Y
n+1)のように、Y軸方向に並んだ2個の画素部GのY座標から上記の式(5)にならって算出しているが、X軸方向にもY軸方向にも位置がずれた2つの画素部GのY座標から算出しても良い。たとえば、互いの位置関係(XY平面上の配置角度)が設計上1ストローク動作時の塗布ユニット21の回転角と近似するような2つの画素部Gを用いて回転角の算出を行うことにより、より実際の動作に近い条件で算出を行うことになるため、その算出結果によって、より正確に画素部Gへの塗布ができるようになる。
【0075】
図8は、斜めに並んだ2つの画素部G(X
m,Y
n+1)と画素部G(X
m+1,Y
n)の位置関係が設計上1ストローク動作時の塗布ユニット21の回転角と近似するように座標取得対象の画素部GのX軸方向およびY軸方向の間隔(カメラ移動ピッチ)を設定した例である。こうすることにより、座標取得ステップ(
図3のステップS1)で求められたそれぞれの画素部Gの座標から、すぐに位置関係が設計上1ストローク動作時の塗布ユニット21の回転角と近似する2つの画素部G(X
m,Y
n+1)と画素部G(X
m+1,Y
n)の組み合わせを取得することができる。その結果、上記の通り、より実際の動作に近い条件で基準点Pにおける塗布ユニット21の回転角の算出を行うことになるため、より正確に画素部Gへの塗布ができるようになる。
【0076】
なお、上記の説明は、塗布領域を画素部Gとし、画素部Gにインクを塗布してカラーフィルタを製造する塗布装置をもとに行っているが、塗布領域は画素部に限らず、塗布液の塗布によってTFTなどの有機半導体の回路パターンを製造する装置や、基板上へのコンデンサ、抵抗体、配線などを形成する装置に対しても適用可能である。
【0077】
また、上記の説明では、認識部4を設け、そこで取得した塗布領域の座標の情報から、制御部6がそれぞれの基準点における塗布領域の間隔の情報を取得し、その結果をもとに塗布ユニット21の回転角やY軸方向の位置の調節を行っているが、上流の工程の他の装置による塗布領域の座標の測定結果の情報が存在すれば、必ずしも認識部4は設ける必要は無く、その測定結果の情報を利用しても構わない。たとえば、他の装置によって塗布領域の座標が既存の情報として得られているのであれば、この既存の情報をもとに、制御部6は、それぞれの基準点における塗布領域の間隔を算出しても良く、また、他の装置によって塗布領域の間隔まで求められているのであれば、制御部6は、この塗布領域の間隔の情報をそのまま塗布ユニット21の回転角やY軸方向の位置の調節に利用しても良い。
【0078】
また、上記の説明では、塗布ユニット21には吐出ノズル22が等間隔に1列のみ配列されているが、
図9に示す通り、塗布ユニット21は等間隔に直線状に配列された吐出ノズル22の列を複数列有していても良い。この場合でも、直線状の配列上で隣接した吐出ノズル22の間隔dを塗布領域の間隔と合わせることにより、全ての塗布領域の所定位置へ塗布液を吐出することが可能となる。