特許第5873731号(P5873731)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873731
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】排気ガス処理用触媒構造体
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20160216BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20160216BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   B01J23/63 AZAB
   B01D53/94 222
   B01D53/94 245
   B01D53/94 280
   F01N3/10 A
【請求項の数】5
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2012-23864(P2012-23864)
(22)【出願日】2012年2月7日
(65)【公開番号】特開2013-158729(P2013-158729A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2014年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】特許業務法人竹内・市澤国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永尾 有希
(72)【発明者】
【氏名】中原 祐之輔
(72)【発明者】
【氏名】今田 安紀
(72)【発明者】
【氏名】法師人 央記
(72)【発明者】
【氏名】岩田 紀明
(72)【発明者】
【氏名】土佐 真一
(72)【発明者】
【氏名】猪瀬 昇志
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雅識
(72)【発明者】
【氏名】池田 知廣
【審査官】 佐藤 哲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−016124(JP,A)
【文献】 特開2010−005501(JP,A)
【文献】 特開2007−144412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
B01D 53/94
F01N 3/10
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶構造がアパタイト型に属する酸化物(以降「アパタイト」と称する)を含有する多孔質なアパタイト触媒層を備えた触媒構造体であって、
水銀圧入ポロシメータにより測定される対数微分空隙容積分布において、空隙容積径100nm〜1000nmにピークトップを有することを特徴とする触媒構造体。
【請求項2】
基材表面に2層以上の触媒層を備えており、そのうちの最表面層が上記アパタイト触媒層であること特徴とする請求項1に記載の触媒構造体。
【請求項3】
アルミナを含有する請求項1又は2に記載の触媒構造体であって、同一層に含有されるアルミナの含有量に対するアパタイトの含有量の質量比率が1以上であることを特徴とする触媒構造体。
【請求項4】
アパタイト触媒層は、セリア・ジルコニア複合酸化物を含有しないこと特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の触媒構造体。
【請求項5】
アパタイト触媒層に含まれる触媒活性成分の含有量が、触媒構造体に含まれるアパタイトの量100質量部に対して0.01〜1.5質量部であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の触媒構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2輪又は4輪自動車などの内燃機関から排出される排気ガスを浄化するために用いることができる触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
(3元触媒)
ガソリンを燃料とする自動車等の内燃機関の排気ガス中には、炭化水素(THC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)等の有害成分が含まれている。それぞれの有害成分を、酸化還元反応を用いて同時に浄化して排気する必要がある。例えば炭化水素(THC)は酸化して水と二酸化炭素に転化させ、一酸化炭素(CO)は酸化して二酸化炭素に転化させ、窒素酸化物(NOx)は還元して窒素に転化させて浄化する必要がある。
【0003】
このような内燃機関からの排気ガスを処理するための触媒(以下「排気ガス浄化触媒」と称する)として、CO、THC及びNOxを酸化還元することができる3元触媒(Three way catalysts:TWC)が用いられており、当該3元触媒は通常、排気パイプのエンジンとマフラーの中間位置にコンバーターの形で取付けられている。
【0004】
この種の3元触媒としては、例えば高い表面積を有するアルミナ多孔質体などの耐火性酸化物多孔質体に貴金属を担持し、これを基材、例えば耐火性セラミック又は金属製ハニカム構造で出来ているモノリス型基材に担持したり、或いは、耐火性粒子に担持したりしたものが知られている。
【0005】
(OSC材)
排気ガス浄化用触媒には、空燃比が変動する条件下でも常に高い浄化性能を発揮することが要求される。そのため、酸素吸蔵放出機能(OSC機能)を有する助触媒(「OSC材」とも称する)を貴金属と共存させることにより、浄化性能を確保することが行われている。
【0006】
セリアなどの酸化物は、その結晶格子のCeイオンのIII価とIV価とが可逆的に変化することによる酸素吸蔵放出能を有するOSC材である。このようなOSC材を貴金属と共存させることで、排気ガスの雰囲気変動を緩和することができ、浄化率を大きく向上させることができる。
【0007】
例えば特許文献1(特開平5−277375号公報)には、活性アルミナ及びニッケル化合物と共に、セリウム化合物やジルコニウム化合物を含有するスラリーを、担体にコーティングし、乾燥、焼成して得たウォッシュコート担体に貴金属成分を担持した後、アルカリ土類金属成分を担持した触媒が開示されている。
【0008】
(触媒担体)
触媒活性成分としての貴金属と基材との結合力はそれ程強くないため、基材に貴金属を直接担持させようとしても十分な担持量を確保することは難しい。そこで、十分な量の触媒活性成分を基材の表面に担持させるために、高い比表面積を有する粒子状の触媒担体に貴金属を担持させることが行われている。
【0009】
この種の触媒担体として、例えばシリカ、アルミナ、チタニア化合物などの耐火性無機酸化物からなる多孔質体が知られている。中でも、ガンマ相アルミナとデルタ相アルミナの混合物からなる活性化アルミナは、特に高い表面積を有しており、触媒担体として優れた材料である。
【0010】
(2層構造)
3元触媒としては、二層或いはそれ以上の層からなる触媒層を備えるものがある。
それぞれの触媒層に別の機能を持たせたり、同一層に混在させると活性が落ちるような成分を分けたりする等の目的で用いられている。
【0011】
例えば特許文献2(特開平2−56247号公報)には、ハニカム担体上に上下2層の触媒層を有し、下層をゼオライトを主成分とするHC吸着層とし、上層を触媒金属を担持した浄化触媒層とした構成の低温HCトラップ触媒が開示されている。これによれば、担体セル通路内に流入した排気ガスは、上層の浄化触媒層をセル通路側の面から下層のHC吸着層側の面まで通過してHC吸着層へ拡散していき、その結果、低温下で排気ガス中のHCがHC吸着層を構成するゼオライトに吸着される。そして、触媒の温度、より詳しくはHC吸着層の温度が排気ガス温度の上昇に伴ってある程度の高温、例えば120℃〜200℃にまで上昇すれば、吸着されていたHCが脱離し始め、下層のHC吸着層から上層の浄化触媒層をセル通路側に通過して担体セル通路外に流出する。そして、その際、HCは浄化触媒層を通過するときに触媒金属の触媒作用によって水(HO)や二酸化炭素(CO)に酸化浄化されることとなる。
【0012】
特許文献3(特開2004−298813号公報)には、セラミックス又は金属材料からなる担体と、該担体上に形成される第一の触媒層と、該第一の触媒層上に形成される第二の触媒層とを有する層状触媒において、前記第一の触媒層は、多孔質アルミナに白金成分を担持してなる白金担持アルミナと、酸素貯蔵性セリア−ジルコニア複合酸化物とを含有する複合セラミックスからなり、前記第二の触媒層は、低熱劣化性セリア−ジルコニア複合酸化物又は多孔質アルミナにロジウム成分を担持してなるロジウム担持セリア−ジルコニア複合酸化物及びロジウム担持アルミナの少なくとも一方と、多孔質アルミナ及び低熱劣化性セリア−ジルコニア複合酸化物の少なくとも一方とを含有する複合セラミックスからなることを特徴とする層状触媒が開示されている。
【0013】
(ガス拡散性)
自動車の排気ガスなどは特に高速域において、ガス流速が速いため、触媒コート層の内部にまで排気ガスが拡散しにくいという課題を抱えていた。かかる課題を解決するため、次のような提案がなされている。
【0014】
例えば特許文献4(特開平2002−191988号公報)および特許文献5(特開平2002−253968号公報)には、特定の孔径を有する細孔を設けた多孔質構造体からなるコート層に貴金属とNOx吸蔵剤とを担持させることにより、排気ガスのガス拡散性を高めて、NOxの浄化効率を向上させたNOx吸蔵還元型触媒が提案されている。
【0015】
特許文献6(特開2004−025013号公報)には、ハニカム形状の基材と該基材の表面に形成された触媒コート層とよりなる排気ガス浄化用触媒において、該触媒コート層は、少なくとも酸素吸蔵放出材の粉末を含み、中心細孔径が0.1μm以上の細孔をもち、かつ中心細孔径の±50%の範囲の細孔の細孔容積が0.05cc/g以上であることを特徴とする排気ガス浄化用触媒が開示されている。
【0016】
特許文献7(特開2006−212527号公報)には、ガス拡散性に優れた触媒担体として、鋳物砂を原料として形成した多孔質体の表面に更にアルミナ層を形成してなることを特徴とする触媒担体が開示されている。
【0017】
特許文献8(特開2006−110485号公報)には、触媒層における排気ガスのガス拡散性を高めて、触媒効率を向上させる排気ガス触媒として、担体と、該担体上に形成された複数層とを少なくとも備えてなる排気ガス触媒であって、前記複数層の少なくとも一つの層が触媒成分を含んでなり、かつ前記複数層の少なくとも一つの層が触媒成分を含んでなり、かつ、該層中に空隙を有してなり、前記空隙の平均径が0.2μm以上であり、500μm以下である、排気ガス浄化触媒が開示されている。
【0018】
特許文献9(特開2010−149015号公報)には、RhとZrOを含む第一のサポート材とを含有する表層、及びPdとMgOを含む第二のサポート材とを含有する内層とからなる触媒層が担体に担持されたことを特徴とする本発明の排気浄化触媒を提案している。
【0019】
特許文献10(特開2010−201362号公報)には、十分なガス拡散性を確保でき、かつ触媒金属の粒成長を抑制することができる触媒担体として、炭化ケイ素系セラミックスからなるスポンジ状の立体骨格部と立体骨格部の間に形成された連続気孔部とを有する炭化ケイ素系多孔質構造体と、立体骨格部の表面に形成された金属シリコン層と、金属シリコン層の少なくとも一部が酸化されて形成されたSiO層とからなる触媒担体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開平5−277375号公報
【特許文献2】特開平2−56247号公報
【特許文献3】特開2004−298813号公報
【特許文献4】特開平2002−191988号公報
【特許文献5】特開平2002−253968号公報
【特許文献6】特開2004−025013号公報
【特許文献7】特開2006−212527号公報
【特許文献8】特開2006−110485号公報
【特許文献9】特開2010−149015号公報
【特許文献10】特開2010−201362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上述のように、3元触媒においては、触媒活性を示す貴金属が活性化アルミナに担持されることが多い。しかし、触媒担体として活性化アルミナを使用した場合、触媒層の深層部に行くにつれ、ガスの拡散性が低下するという課題を抱えていた。特に、速度を高めるためにエンジンの回転数を高めてガス流量を多くすると、ガス拡散性が著しく劣るようになり、浄化率が低くなるという課題を抱えていた。
【0022】
そこで本発明は、ガス流量が多い条件下においても、触媒層の深層部へのガス拡散性を維持することができる、新たな触媒構造を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、結晶構造がアパタイト型に属する酸化物(以降「アパタイト」と称する)を含有する多孔質なアパタイト触媒層を備えた触媒構造体であって、水銀圧入ポロシメータにより測定される対数微分空隙容積分布において、空隙容積径100nm〜1000nmにピークトップを有することを特徴とする触媒構造体を提案するものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明が提案する触媒構造体は、アパタイトを含有する多孔質なアパタイト触媒層を設けて、水銀圧入ポロシメータにより測定される対数微分空隙容積分布において、空隙容積径100nm〜1000nmにピークトップを有するように触媒構造体を形成したことにより、ガス流量が多い条件下においても、触媒層の深層部へのガス拡散性を維持することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施例1で作製したアパタイトのTEM写真である。
図2】比較例1で準備したγ―Al23のSEM写真である。
図3】実施例1で作製したアパタイト及び比較例1で準備したγ―Al23の水銀圧入ポロシメータにより測定した対数微分空隙容積分布(細孔分布)を示した図である。
図4】実施例7で作製した触媒構造体の水銀圧入ポロシメータにより測定した対数微分空隙容積分布(細孔分布)を示した図である。
図5】実施例11で作製した触媒構造体の水銀圧入ポロシメータにより測定した対数微分空隙容積分布(細孔分布)を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、実施の形態例に基づいて本発明を説明するが、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0027】
<本触媒構造体>
本発明の実施形態の一例としての触媒構造体(以下「本触媒構造体」と称する)は、アパタイトを含有するアパタイト触媒層を備えた触媒構造体である。
アパタイト触媒層を備えていればよいから、例えば基材の表面にアパタイト触媒層が形成されていてもよいし、基材の表面に他の層を介してアパタイト触媒層が形成されていてもよい。また、基材の表面側ではない箇所にアパタイト触媒層を備えていてもよい。
【0028】
本触媒構造体は、該触媒構造体の空隙分布を水銀圧入ポロシメータにより測定した際、該水銀圧入ポロシメータにより測定される対数微分空隙容積分布において、空隙容積径100nm〜1000nm、中でも好ましくは150nm以上或いは800nm以下、その中でも好ましくは150nm以上或いは600nm以下の範囲に、1つ或いは2つ以上のピークトップを有するものである。
このように空隙容積径100nm〜1000nmにピークトップを有するように触媒構造体を形成することにより、ガス流量が多い条件下においても、触媒層の深層部へのガス拡散性を維持することができ、浄化率を高めることができる。
【0029】
なお、そのピークが存在しないと仮定した場合のライン、すなわちバックグラウンドからの垂直高さが0.002ml/g未満のピークは、測定装置などのノイズであると考えられるため、本発明が規定する「ピークトップ」に該当するものではない。
【0030】
空隙容積径100nm〜1000nmに有するピークトップは、その微分細孔容積が0.01ml/g以上であるのが好ましく、中でも0.05ml/g以上或いは5ml/g以下、その中でも好ましく0.10ml/g以上或いは2ml/g以下であるのが好ましい。
【0031】
本触媒構造体において、対数微分空隙容積分布におけるピークトップの空隙容積径並びにその微分細孔容積は、アパタイト触媒層を構成するアパタイトの空隙容積径並びに微分細孔容積、さらに該アパタイトの量、焼成条件、アパタイト触媒層の厚さなどを変えることによって調整することができる。
【0032】
なお、水銀圧入ポロシメータは、水銀の表面張力が大きいことを利用して、測定対象に圧力を加えて水銀を侵入させ、その時の圧力と圧入された水銀量から空隙容積径及び対数微分空隙容積分布を測定する装置である。したがって、対象とする空隙は、オープンポア(外と連通している空隙)だけで、クローズドポア(独立した空隙)は対象に含まれない。
また、上記「空隙容積径」は、空隙を円柱近似した際の底面の直径を意味し、次の式により算出される。
dr=−4σcosθ/p(σ:表面張力、θ:接触角、p:圧力)
この式において、水銀の表面張力は既知であり、接触角は装置毎で固有の値を示すため、圧入した水銀の圧力から空隙容積径を算出することができる。
【0033】
<基材>
本触媒構造体に用いる基材の材質としては、セラミックス等の耐火性材料や金属材料を挙げることができる。
セラミック製基材の材質としては、耐火性セラミック材料、例えばコージライト、コージライト−アルファアルミナ、窒化ケイ素、ジルコンムライト、スポジュメン、アルミナ−シリカマグネシア、ケイ酸ジルコン、シリマナイト(sillimanite)、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、ペタライト(petalite)、アルファアルミナおよびアルミノシリケート類などを挙げることができる。
金属製基材の材質としては、耐火性金属、例えばステンレス鋼または鉄を基とする他の適切な耐食性合金などを挙げることができる。
【0034】
基材の形状は、ハニカム状、ペレット状、球状を挙げることができる。
【0035】
ハニカム材料としては、例えばセラミックス等のコージェライト質のものを用いることができる。また、フェライト系ステンレス等の金属材料からなるハニカムを用いることもできる。
ハニカム形状の基材を用いる場合、例えば基材内部を流体が流通するように、基材内部に平行で微細な気体流通路、すなわちチャンネルを多数有するモノリス型基材を使用することができる。この際、モノリス型基材の各チャンネル内壁表面に、触媒組成物をウォッシュコートなどによってコートして触媒層を形成することができる。
【0036】
<触媒層>
触媒層は、単層であっても、二層以上の多層であってもよい。そのうちの少なくとも一層が、結晶構造がアパタイト型に属する酸化物(「アパタイト」と称する)を含有するアパタイト触媒層であればよい。
なお、本発明において「触媒層」とは、ガス吸着作用乃至ガス浄化触媒作用を有する層を意味し、触媒活性成分を含有していればガス浄化触媒作用を有するから該当するが、必ずしも触媒活性成分を含有していなくてもよい。
【0037】
触媒層が二層以上の多層からなる場合、アパタイト触媒層は一層或いは二層以上でもよく、アパタイト触媒層の上下方向に一層或いは二層以上の他の層を積層してもよい。その際、触媒層と触媒層の間に、触媒層ではない層、例えば多孔質耐火性無機酸化物粉体からなる層や、多孔質耐火性無機酸化物粉体及び助触媒成分からなる層などの層が存在していてもよい。
いずれにしても、触媒層が二層以上の多層からなる場合、内層側へのガス拡散性を高める観点から、アパタイト触媒層が最表面層であるのが好ましい。
また、排気ガスの流通方向にアパタイト触媒層とは異なる他の触媒層を形成してもよい。
【0038】
(アパタイト触媒層)
アパタイト触媒層は、アパタイトを含有する多孔質な層である。
【0039】
アパタイト触媒層は、アパタイトのほか、触媒活性成分、必要に応じて無機多孔質体、OSC材、安定化材、その他の成分を含有することができる。
【0040】
アパタイト触媒層は、基材1リットル当たり20g〜200gの割合で含有するのが好ましい。
基材1リットル当たりのアパタイト触媒層の含有量が20g以上であれば、アパタイト触媒層に貴金属を十分に担持できる。他方、アパタイト触媒層の含有量が200g以下であれば、多孔質であるアパタイトのガス拡散性をいかすことができる。
かかる観点から、アパタイト触媒層の含有量は、基材1リットル当たり30g以上或いは150g以下であるのがより一層好ましく、その中でも50g以上或いは120g以下であるのがさらに好ましい。
【0041】
触媒層が2層以上の多層の場合、アパタイト触媒層と他の層との割合は、5:1〜1:20であるのが好ましく、中でも3:1〜1:10、その中でも1:1〜1:5であるのが特に好ましい。
【0042】
(アパタイト)
アパタイト触媒層が含有するアパタイトは、結晶構造がアパタイト型に属する酸化物であればよく、例えば一般式(Laa-xx)(Si6-yy)O27-z(式中、Mは1〜3価の陽イオンを表し、Nは3〜7価の陽イオンを表し、8≦a≦10であり、0≦x≦5であり、0≦y≦3であり、0≦z≦2である)で示されるLa系アパタイトを挙げることができる。
この際、化学量論組成を持つ場合にはa=10であり、非化学量論組成を持つ場合にはa<10である。非化学量論組成を持つ上記一般式の複合酸化物については現実的に容易に入手できる複合酸化物のaの範囲は8≦a<10である。
上記一般式において、Mは、Laサイトの一部を置換する陽イオンであり、例えばCa、Al、Ce、Ba、Sr、Li、Nd及びPrからなる群から選択される少なくとも1種の元素の陽イオンを挙げることができる。
また、上記一般式において、Nは、Siサイトの一部を置換する陽イオンであり、例えばNがFe、Cu及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の元素の陽イオンを挙げることができる。
この種のLa系アパタイトの具体例としては、La9.33Si626、La8.33BaSi626、La8.33CaSi626、La8.33SrSi626、La8.33BaSi4.5Fe1.526、La6.83Pr3Si4.5Fe1.527、La7.33BaYSi25.50などを挙げることができる。
【0043】
上述のように、アパタイト触媒層を形成するアパタイトの空隙分布は、アパタイト触媒層及び本触媒構造体の空隙分布に影響する。かかる観点から、アパタイトの空隙分布は、水銀圧入ポロシメータにより測定される対数微分空隙容積分布において、空隙容積径が100nm〜1000nm、中でも好ましくは150nm以上或いは800nm以下、その中でも好ましくは150nm以上或いは600nm以下の範囲にピークトップを持ち、その微分細孔容積が0.05ml/g〜10ml/g、中でも好ましく0.1ml/g以上或いは5ml/g以下、その中でも好ましく0.1ml/g以上或いは2ml/g以下の範囲であるのが好ましい。
【0044】
(触媒活性成分)
本触媒構造体(アパタイト触媒層を含む)に用いる触媒活性を有する金属として、例えばパラジウム(Pd)、白金、ロジウム、金、銀、ルテニウム、イリジウム、ニッケル、セリウム、コバルト、銅、オスミウム、ストロンチウム等の金属を挙げることができる。
中でも、アパタイト触媒層は触媒活性成分として、プラチナ〔Pt〕、パラジウム〔Pd〕を含むのが好ましく、その中でも、パラジウム(Pd)を含有するのが好ましい。アパタイト触媒層は触媒活性成分としてパラジウム(Pd)を含有することにより、Pdの耐食性を高めることができ、特に炭化水素(THC)の転化率を高めることができる。
【0045】
アパタイト触媒層に含まれる触媒活性成分の含有量は、触媒構造体に含まれるアパタイトの量100質量部に対し0.01〜1.5質量部であるのが好ましい。かかる割合となるように触媒活性成分とアパタイトとの割合を調整することで、触媒活性成分のシンタリングを防止して分散性を高めることができる。
かかる観点から、アパタイト触媒層に含まれる触媒活性成分の含有量は、触媒構造体に含まれるアパタイトの量100質量部に対して0.05質量部以上或いは1.5質量部以下であるのがより一層好ましく、中でも0.1質量部以上或いは1.0質量部以下であるのがさらに好ましい。
【0046】
本触媒構造体(アパタイト触媒層を含む)における触媒活性成分の含有量は、基材1リットル当たり0.1〜15gであるのが好ましい。
かかる範囲で触媒活性成分を含有することにより、排気ガスを浄化できるようになる。ただし、触媒活性成分が増えれば製品価格の上昇を招くことから多量に使用することは難しい。
かかる観点から、本触媒構造体(アパタイト触媒層を含む)における触媒活性成分の含有量は、基材1リットル当たり0.2g以上或いは12g以下であるのがより一層好ましく、その中でも0.3g以上或いは10g以下であるのがさらに好ましい。
【0047】
また、アパタイト触媒層における触媒活性成分の含有量は、アパタイト触媒層の0.01〜2質量%であるのが好ましい。
かかる範囲で触媒活性成分を含有することにより、アパタイトに活性成分を担持し、活性が得られるようになる。ただし、触媒活性成分が増えれば製品価格の上昇を招くことから多量に使用することは難しい。
かかる観点から、アパタイト触媒層における触媒活性成分の含有量は、アパタイト触媒層の0.05質量%以上或いは2質量%以下であるのがより一層好ましく、その中でも0.1質量%以上或いは1.5質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0048】
なお、上記触媒活性成分は、例えばアルミナなどの触媒担持体に固溶体化して存在していてもよいし、アルミナなどの触媒担持体に担持されて存在していてもよい。
【0049】
(無機多孔質体)
本触媒構造体において、アパタイト触媒層、アパタイト触媒層以外の触媒層、或いは、触媒層でない層は、触媒担持体として無機多孔質を含有することができる。
かかる無機多孔質としては、例えばシリカ、アルミナおよびチタニア化合物から成る群から選択される化合物の多孔質体、より具体的には、例えばアルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、アルミノ−シリケート類、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−クロミアおよびアルミナ−セリアから選択される化合物からなる多孔質体を挙げることができる。
【0050】
このうちアルミナとしては、比表面積が50m/gより大きなアルミナ、例えばγ,δ,θ,αアルミナを使用することができる。中でも、γもしくはθアルミナを用いるのが好ましい。なお、アルミナについては、耐熱性を上げるため、微量のLaを含むこともできる。
上記アルミナの格子をアルカリ土類金属酸化物、二酸化珪素、二酸化ジルコニウム又は希土類の酸化物によって予め安定化させたものも好ましい。
【0051】
なお、アルミナの量がアパタイトに対して多すぎると、相対的にアパタイトのマクロ孔(孔径100nm〜1000nm)の量が少なくなるため、同一層に含有されるアルミナの含有量に対するアパタイトの含有量の質量比率は1以上、特に3以上或いは30以下、中でも6以上或いは20以下であるのが好ましい。
【0052】
(OSC材)
本触媒構造体において、アパタイト触媒層、アパタイト触媒層以外の触媒層、或いは、触媒層でない層は、酸素ストレージ能(OSC:Oxygen Storage capacity)を有する助触媒(OSC材)を含んでいてもよい。
【0053】
かかるOSC材としては、例えばセリウム化合物、ジルコニウム化合物、セリア・ジルコニア複合酸化物などを挙げることができる。
【0054】
但し、アパタイト触媒層には、OSC材、特にセリア・ジルコニア複合酸化物を含有させない方が、排気ガスの浄化効率を高めることができるため、好ましい。はっきりしたメカニズムは不明であるが、アパタイト触媒層がOSC材を含有すると、OSC材が細孔を塞いでしまうためか、あるいは、CO及びHCの酸化反応が選択的に進む結果、NOxの浄化効率が低下するためではないかと考えることができる。
【0055】
(安定剤及びその他の成分)
本触媒構造体において、アパタイト触媒層、アパタイト触媒層以外の触媒層、或いは、触媒層でない層は、安定剤及びその他の成分を含むことができる。
【0056】
安定剤としては、例えばアルカリ土類金属やアルカリ金属を挙げることができる。中でも、マグネシウム、バリウム、ホウ素、トリウム、ハフニウム、ケイ素、カルシウムおよびストロンチウムから成る群から選択される金属のうちの一種又は二種以上を選択可能である。その中でも、PdOxが還元される温度が一番高い、つまり還元されにくいという観点から、バリウムが好ましい。
【0057】
また、バインダ−成分など、公知の添加成分を含んでいてもよい。
バインダ−成分としては、無機系バインダ−、例えばアルミナゾル等の水溶性溶液を使用することができる。
【0058】
(触媒層の構成例)
好ましい触媒層の構成例として、基材表面、例えば基材がハニカム形状である場合には、基材内部のチャンネル内壁表面からアパタイトを含有しない触媒層(下層)とアパタイト触媒層(上層)とを順次形成してなる構成例を挙げることができる。
【0059】
この際、下層は、Pd、Pt、Rhなどの触媒活性成分、アルミナなどの無機多孔質体、Ce・ZrOなどのOSC材、バインダ−及び必要に応じて水酸化Baなどの安定化材を含む構成とし、上層であるアパタイト触媒層は、アパタイト、PdやPtなどの触媒活性成分、バインダ−及び必要に応じて水酸化Baなどの安定化材を含む構成とするのが好ましい。
また、アパタイト触媒層は、アルミナなどの無機多孔質体、並びに、Ce・ZrOなどのOSC材を必要に応じて含有するのが好ましい。
【0060】
<製法>
本触媒構造体を製造するための一例として、アパタイト、触媒活性成分、必要に応じて無機多孔質体、OSC材、安定化材、バインダ−及び水を混合・撹拌してスラリーとし、得られたスラリーを例えばセラミックハニカム体などの基材にウオッシュコートし、これを焼成して、基材表面にアパタイト触媒層を形成する方法などを挙げることができる。
【0061】
また、2層の触媒層を形成する場合には、例えば触媒活性成分、無機多孔質体、OSC材、安定化材、バインダ−及び水を混合・撹拌してスラリーとし、得られたスラリーを例えばセラミックハニカム体などの基材にウオッシュコートし、これを焼成して、基材表面に下層の触媒層を形成した後、上記同様に上層(表面層)としてのアパタイト触媒層を形成すればよい。
【0062】
なお、アパタイトの場合、焼成温度が低過ぎるとマクロ孔を持たず、高温過ぎるとシンタリングにより細孔がつぶれてしまう場合があるため、焼成は1000〜1200℃で行うのが好ましい。
【0063】
ただし、本触媒構造体を製造するための方法は公知のあらゆる方法を採用することが可能であり、上記例に限定するものではない。
【0064】
<語句の説明>
本明細書において「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいてさらに詳述する。
【0066】
<実施例1:アパタイトの作製>
最初に、La7.33BaYSi25.50の所定比となるように秤量した硝酸ランタン、硝酸バリウム、硝酸イットリウム及びコロイダルシリカを純水に加え、攪拌して透明溶液を得た。この透明溶液をアンモニア水と炭酸アンモニウムとの混合溶液中に滴下して沈殿物を得た。得られた沈殿物を40℃で24時間熟成させた後、水洗し、ろ過し、100℃で乾燥させて前駆体を得た。この前駆体を1000℃で6時間焼成してアパタイトとしてLa7.33BaYSi25.50を得た。
【0067】
<比較例1>
市販のγ-Al23を用意した。
【0068】
<実施例2>
上記実施例1で得たアパタイト(La7.33BaYSi625.50)90.5質量部を、Pdメタル換算で1.5質量部の硝酸Pd溶液に添加し、湿式粉砕処理を施した後、無機系バインダーとしてアルミナゾルを8.0質量部添加し、Pd含有スラリーを得た。
得られたPd含有スラリーを、Φ105.7mm×L114.3mm−400セルのコージェライト製ハニカム基材に塗布し、次いで乾燥及び500℃で1時間焼成処理を施した。
なお、Pd塗布量は70g/cft、ウォッシュコート量は160g/Lであった。
【0069】
<比較例2>
La安定化アルミナ90.5質量部を、Pdメタル換算で1.5質量部の硝酸Pd溶液に添加し、湿式粉砕処理を施した後、無機系バインダーとしてアルミナゾルを8.0質量部添加し、Pd含有スラリーを得た。
得られたPd含有スラリーを、Φ105.7mm×L114.3mm−400セルのコージェライト製ハニカム基材に塗布し、次いで乾燥及び500℃で1時間焼成処理を施した。
なお、Pd塗布量は70g/cft、ウォッシュコート量は160g/Lであった。
【0070】
<比較例3>
CeO2-ZrO2系複合酸化物55.0質量部と、La安定化アルミナ29.3質量部と、炭酸バリウム換算で7.0質量部に相当する量の酢酸バリウムとを、Pdメタル換算で0.7質量部に相当する硝酸Pd溶液に添加し、湿式粉砕処理を施した後、無機系バインダーとしてアルミナゾルを8.0質量部添加し、Pd含有スラリーを得た。
得られたPd含有スラリーを、Φ105.7mm×L114.3mm−400セルのコージェライト製ハニカム基材に塗布し、次いで乾燥及び500℃で1時間焼成処理を施した。
なお、Pd塗布量は20g/cft、ウォッシュコート量は100g/Lであった。
【0071】
<実施例3>
(下層)
比較例3と同様にPd含有スラリーを得、得られたPd含有スラリーを、比較例3と同様に、Φ105.7mm×L114.3mm−400セルのコージェライト製ハニカム基材に塗布し、焼成処理を施した。
【0072】
(上層)
次に、上記実施例1で得たアパタイト(La7.33BaYSi625.50)92.0質量部を純水に添加し、湿式粉砕処理を施した後、無機系バインダーとしてのアルミナゾルを8.0質量部添加し、スラリーを得た。
得られたスラリーを、上記の如く下層を塗布形成したコージェライト製ハニカム基材に塗布し、次いで乾燥及び500℃で1時間焼成処理を施した。
なお、上層におけるウォッシュコート量は70g/Lであった。
【0073】
<実施例4>
(下層)
実施例3と同様に、Φ105.7mm×L114.3mm−400セルのコージェライト製ハニカム基材に下層を形成した。
【0074】
(上層)
ウォッシュコート量が150g/Lであること以外は、実施例3と同様に上層を形成した。
【0075】
<実施例5>
(下層)
実施例3と同様に、Φ105.7mm×L114.3mm−400セルのコージェライト製ハニカム基材に下層を形成した。
【0076】
(上層)
ウォッシュコート量が200g/Lであること以外は、実施例3と同様に上層を形成した。
【0077】
<実施例6>
(下層)
実施例3と同様に、Φ105.7mm×L114.3mm−400セルのコージェライト製ハニカム基材に下層を形成した。
【0078】
(上層)
ウォッシュコート量が300g/Lであること以外は、実施例3と同様に上層を形成した。
【0079】
<比較例4>
(下層)
実施例3と同様に、Φ105.7mm×L114.3mm−400セルのコージェライト製ハニカム基材に下層を形成した。
【0080】
(上層)
次に、La安定化アルミナ92.0質量部を純水に添加し、湿式粉砕処理を施した後、無機系バインダーとしてのアルミナゾルを8.0質量部添加し、スラリーを得た。
得られたスラリーを、上記の如く下層を塗布形成したコージェライト製ハニカム基材に塗布し、次いで乾燥及び500℃で1時間焼成処理を施した。
なお、上層におけるウォッシュコート量は70g/Lであった。
【0081】
<比較例5>
(下層)
比較例4と同様に、Φ105.7mm×L114.3mm−400セルのコージェライト製ハニカム基材に下層を形成した。
【0082】
(上層)
ウォッシュコート量が150g/Lであること以外は、比較例4と同様に上層を形成した。
【0083】
<比較例6>
(下層)
比較例4と同様に、Φ105.7mm×L114.3mm−400セルのコージェライト製ハニカム基材に下層を形成した。
【0084】
(上層)
ウォッシュコート量が200g/Lであること以外は、比較例4と同様に上層を形成した。
【0085】
<比較例7>
(下層)
比較例4と同様に、Φ105.7mm×L114.3mm−400セルのコージェライト製ハニカム基材に下層を形成した。
【0086】
(上層)
ウォッシュコート量が300g/Lであること以外は、比較例4と同様に上層を形成した。
【0087】
<実施例7>
(下層)
CeO2-ZrO2系複合酸化物55.0質量部と、La安定化アルミナ29.7質量部と、炭酸バリウム換算で7.0質量部に相当する量の酢酸バリウムとを、Pdメタル換算で0.3質量部に相当する硝酸Pd溶液に添加し、湿式粉砕処理を施した後、無機系バインダーとしてアルミナゾルを8.0質量部添加し、Pd含有スラリーを得た。
得られたPd含有スラリーを、Φ105.7mm×L114.3mm−400セルのコージェライト製ハニカム基材に塗布し、次いで乾燥及び500℃で1時間焼成処理を施した。
なお、下層におけるPd塗布量は15g/cft、ウォッシュコート量は160g/Lであった。
【0088】
(上層)
次に、上記実施例1で得たアパタイト(La7.33BaYSi625.50)84.7質量部と、炭酸バリウム換算で7.0質量部に相当する量の酢酸バリウムとを、Pdメタル換算で0.3質量部に相当する硝酸Pd溶液に添加し、湿式粉砕処理を施した後、無機系バインダーとしてのアルミナゾルを8.0質量部添加し、Pd含有スラリーを得た。
得られたPd含有スラリーを、上記の如く下層を塗布形成したコージェライト製ハニカム基材に塗布し、次いで、乾燥及び500℃で1時間焼成処理を施した。
なお、上層におけるPd塗布量は5g/cft、ウォッシュコート量は70g/Lであった。
【0089】
<実施例8>
(下層)
実施例7と同様に、Φ105.7mm×L114.3mm−400セルのコージェライト製ハニカム基材に下層を形成した。
【0090】
(上層)
次に、上記実施例1で得たアパタイト(La7.33BaYSi625.50)64.7質量部と、CeO2-ZrO2系複合酸化物20.0質量部と、炭酸バリウム換算で7.0質量部に相当する量の酢酸バリウムとを、Pdメタル換算で0.3質量部に相当する硝酸Pd溶液に添加し、湿式粉砕処理を施した後、無機系バインダーとしてのアルミナゾルを8.0質量部添加し、Pd含有スラリーを得た。
得られたPd含有スラリーを、上記の如く下層を塗布形成したコージェライト製ハニカム基材に塗布し、次いで、乾燥及び500℃で1時間焼成処理を施した。
なお、上層におけるPd塗布量は5g/cft、ウォッシュコート量は70g/Lであった。
【0091】
<実施例9>
(下層)
CeO2-ZrO2系複合酸化物55.0質量部と、La安定化アルミナ28.9質量部と、炭酸バリウム換算で7.0質量部に相当する量の酢酸バリウムとを、Pdメタル換算で1.1質量部に相当する硝酸Pd溶液に添加し、湿式粉砕処理を施した後、無機系バインダーとしてアルミナゾルを8.0質量部添加し、Pd含有スラリーを得た。
得られたPd含有スラリーを、Φ105.7mm×L114.3mm−400セルのコージェライト製ハニカム基材に塗布し、次いで乾燥及び500℃で1時間焼成処理を施した。
なお、下層におけるPd塗布量は50g/cft、ウォッシュコート量は160g/Lであった。
【0092】
(上層)
次に、上記実施例1で得たアパタイト(La7.33BaYSi625.50)84.0質量部と、炭酸バリウム換算で7.0質量部に相当する量の酢酸バリウムとを、Pdメタル換算で1.0質量部に相当する硝酸Pd溶液に添加し、湿式粉砕処理を施した後、無機系バインダーとしてのアルミナゾルを8.0質量部添加し、Pd含有スラリーを得た。
得られたPd含有スラリーを、上記の如く下層を塗布形成したコージェライト製ハニカム基材に塗布し、次いで、乾燥及び500℃で1時間焼成処理を施した。
なお、上層におけるPd塗布量は20g/cft、ウォッシュコート量は70g/Lであった。
【0093】
<実施例10>
(下層)
実施例9と同様に、Φ105.7mm×L114.3mm−400セルのコージェライト製ハニカム基材に下層を形成した。
【0094】
(上層)
次に、上記実施例1で得たアパタイト(La7.33BaYSi625.50)78.0質量部と、La安定化アルミナ6.0質量部と、炭酸バリウム換算で7.0質量部に相当する量の酢酸バリウムとを、Pdメタル換算で1.0質量部に相当する硝酸Pd溶液に添加し、湿式粉砕処理を施した後、無機系バインダーとしてのアルミナゾルを8.0質量部添加し、Pd含有スラリーを得た。
得られたPd含有スラリーを、上記の如く下層を塗布形成したコージェライト製ハニカム基材に塗布し、次いで、乾燥及び500℃で1時間焼成処理を施した。
なお、上層におけるPd塗布量は20g/cft、ウォッシュコート量は70g/Lであった。
【0095】
<実施例11>
(下層)
実施例9と同様に、Φ105.7mm×L114.3mm−400セルのコージェライト製ハニカム基材に下層を形成した。
【0096】
(上層)
次に、上記実施例1で得たアパタイト(La7.33BaYSi625.50)72.0質量部と、La安定化アルミナ12.0質量部と、炭酸バリウム換算で7.0質量部に相当する量の酢酸バリウムとを、Pdメタル換算で1.0質量部に相当する硝酸Pd溶液に添加し、湿式粉砕処理を施した後、無機系バインダーとしてのアルミナゾルを8.0質量部添加し、Pd含有スラリーを得た。
得られたPd含有スラリーを、上記の如く下層を塗布形成したコージェライト製ハニカム基材に塗布し、次いで、乾燥及び500℃で1時間焼成処理を施した。
なお、上層におけるPd塗布量は20g/cft、ウォッシュコート量は70g/Lであった。
【0097】
<実施例12>
上記実施例1で得たアパタイト(La7.33BaYSi625.50)90.9質量部を、Pdメタル換算で1.1質量部の硝酸Pd溶液に添加し、湿式粉砕処理を施した後、無機系バインダーとしてアルミナゾルを8.0質量部添加し、Pd含有スラリーを得た。
得られたPd含有スラリーを、Φ105.7mm×L114.3mm−400セルのコージェライト製ハニカム基材に塗布し、次いで乾燥及び500℃で1時間焼成処理を施した。
なお、Pd塗布量は50g/cft、ウォッシュコート量は160g/Lであった。
【0098】
<実施例13>
上記実施例1で得たアパタイト(La7.33BaYSi625.50)83.3質量部と、炭酸バリウム換算で7.6質量部に相当する量の酢酸バリウムとを、Pdメタル換算で1.1質量部の硝酸Pd溶液に添加し、湿式粉砕処理を施した後、無機系バインダーとしてアルミナゾルを8.0質量部添加し、Pd含有スラリーを得た。
得られたPd含有スラリーを、Φ105.7mm×L114.3mm−400セルのコージェライト製ハニカム基材に塗布し、次いで乾燥及び500℃で1時間焼成処理を施した。
なお、Pd塗布量は50g/cft、ウォッシュコート量は160g/Lであった。
【0099】
<実施例14>
上記実施例1で得たアパタイト(La7.33BaYSi625.50)75.7質量部と、炭酸バリウム換算で15.2質量部に相当する量の酢酸バリウムとを、Pdメタル換算で1.1質量部の硝酸Pd溶液に添加し、湿式粉砕処理を施した後、無機系バインダーとしてアルミナゾルを8.0質量部添加し、Pd含有スラリーを得た。
得られたPd含有スラリーを、Φ105.7mm×L114.3mm−400セルのコージェライト製ハニカム基材に塗布し、次いで乾燥及び500℃で1時間焼成処理を施した。
なお、Pd塗布量は50g/cft、ウォッシュコート量は160g/Lであった。
【0100】
<実施例15>
上記実施例1で得たアパタイト(La7.33BaYSi625.50)99.5質量部を、Pdメタル換算で0.5質量部の硝酸Pd溶液に添加し、湿式粉砕処理を施してPd含有スラリーを得た。次いで乾燥及び500℃で1時間焼成処理を施した。
【0101】
<実施例16>
上記実施例1で得たアパタイト(La7.33BaYSi625.50)99.0質量部を、Pdメタル換算で1.0質量部の硝酸Pd溶液に添加し、湿式粉砕処理を施してPd含有スラリーを得た。次いで乾燥及び500℃で1時間焼成処理を施した。
【0102】
<実施例17>
上記実施例1で得たアパタイト(La7.33BaYSi625.50)98.5質量部を、Pdメタル換算で1.5質量部の硝酸Pd溶液に添加し、湿式粉砕処理を施してPd含有スラリーを得た。次いで乾燥及び500℃で1時間焼成処理を施した。
【0103】
<実施例18>
上記実施例1で得たアパタイト(La7.33BaYSi625.50)98.0質量部を、Pdメタル換算で2.0質量部の硝酸Pd溶液に添加し、湿式粉砕処理を施してPd含有スラリーを得た。次いで乾燥及び500℃で1時間焼成処理を施した。
【0104】
<実施例19>
(下層)
CeO2-ZrO2系複合酸化物55.0質量部と、La安定化アルミナ28.7質量部と、炭酸バリウム換算で7.0質量部に相当する量の酢酸バリウムとを、Pdメタル換算で1.3質量部に相当する硝酸Pd溶液に添加し、湿式粉砕処理を施した後、無機系バインダーとしてアルミナゾルを8.0質量部添加し、Pd含有スラリーを得た。
得られたPd含有スラリーを、Φ105.7mm×L114.3mm−400セルのコージェライト製ハニカム基材に塗布し、次いで乾燥及び500℃で1時間焼成処理を施した。
なお、下層におけるPd塗布量は60g/cft、ウォッシュコート量は160g/Lであった。
【0105】
(上層)
次に、上記実施例1で得たアパタイト(La7.33BaYSi625.50)91.5質量部を、Pdメタル換算で0.5質量部に相当する硝酸Pd溶液に添加し、湿式粉砕処理を施した後、無機系バインダーとしてのアルミナゾルを8.0質量部添加し、Pd含有スラリーを得た。
得られたPd含有スラリーを、上記の如く下層を塗布形成したコージェライト製ハニカム基材に塗布し、次いで、乾燥及び500℃で1時間焼成処理を施した。
なお、上層におけるPd塗布量は10g/cft、ウォッシュコート量は70g/Lであった。
【0106】
<実施例20>
(下層)
CeO2-ZrO2系複合酸化物55.0質量部と、La安定化アルミナ28.9質量部と、炭酸バリウム換算で7.0質量部に相当する量の酢酸バリウムとを、Pdメタル換算で1.1質量部に相当する硝酸Pd溶液に添加し、湿式粉砕処理を施した後、無機系バインダーとしてアルミナゾルを8.0質量部添加し、Pd含有スラリーを得た。
得られたPd含有スラリーを、Φ105.7mm×L114.3mm−400セルのコージェライト製ハニカム基材に塗布し、次いで乾燥及び500℃で1時間焼成処理を施した。
なお、下層におけるPd塗布量は50g/cft、ウォッシュコート量は160g/Lであった。
【0107】
(上層)
次に、上記実施例1で得たアパタイト(La7.33BaYSi625.50)91.0質量部を、Pdメタル換算で1.0質量部に相当する硝酸Pd溶液に添加し、湿式粉砕処理を施した後、無機系バインダーとしてのアルミナゾルを8.0質量部添加し、Pd含有スラリーを得た。
得られたPd含有スラリーを、上記の如く下層を塗布形成したコージェライト製ハニカム基材に塗布し、次いで、乾燥及び500℃で1時間焼成処理を施した。
なお、上層におけるPd塗布量は20g/cft、ウォッシュコート量は70g/Lであった。
【0108】
<実施例21>
(下層)
CeO2-ZrO2系複合酸化物55.0質量部と、La安定化アルミナ29.1質量部と、炭酸バリウム換算で7.0質量部に相当する量の酢酸バリウムとを、Pdメタル換算で0.9質量部に相当する硝酸Pd溶液に添加し、湿式粉砕処理を施した後、無機系バインダーとしてアルミナゾルを8.0質量部添加し、Pd含有スラリーを得た。
得られたPd含有スラリーを、Φ105.7mm×L114.3mm−400セルのコージェライト製ハニカム基材に塗布し、次いで乾燥及び500℃で1時間焼成処理を施した。
なお、下層におけるPd塗布量は40g/cft、ウォッシュコート量は160g/Lであった。
【0109】
(上層)
次に、上記実施例1で得たアパタイト(La7.33BaYSi625.50)90.5質量部を、Pdメタル換算で1.5質量部に相当する硝酸Pd溶液に添加し、湿式粉砕処理を施した後、無機系バインダーとしてのアルミナゾルを8.0質量部添加し、Pd含有スラリーを得た。
得られたPd含有スラリーを、上記の如く下層を塗布形成したコージェライト製ハニカム基材に塗布し、次いで、乾燥及び500℃で1時間焼成処理を施した。
なお、上層におけるPd塗布量は30g/cft、ウォッシュコート量は70g/Lであった。
【0110】
<実施例22>
(下層)
CeO2-ZrO2系複合酸化物55.0質量部と、La安定化アルミナ29.3質量部と、炭酸バリウム換算で7.0質量部に相当する量の酢酸バリウムとを、Pdメタル換算で0.7質量部に相当する硝酸Pd溶液に添加し、湿式粉砕処理を施した後、無機系バインダーとしてアルミナゾルを8.0質量部添加し、Pd含有スラリーを得た。
得られたPd含有スラリーを、Φ105.7mm×L114.3mm−400セルのコージェライト製ハニカム基材に塗布し、次いで乾燥及び500℃で1時間焼成処理を施した。
なお、下層におけるPd塗布量は30g/cft、ウォッシュコート量は160g/Lであった。
【0111】
(上層)
次に、上記実施例1で得たアパタイト(La7.33BaYSi625.50)90.0質量部を、Pdメタル換算で2.0質量部に相当する硝酸Pd溶液に添加し、湿式粉砕処理を施した後、無機系バインダーとしてのアルミナゾルを8.0質量部添加し、Pd含有スラリーを得た。
得られたPd含有スラリーを、上記の如く下層を塗布形成したコージェライト製ハニカム基材に塗布し、次いで、乾燥及び500℃で1時間焼成処理を施した。
なお、上層におけるPd塗布量は40g/cft、ウォッシュコート量は70g/Lであった。
【0112】
<実施例23>
(下層)
CeO2-ZrO2系複合酸化物48.9質量部と、La安定化アルミナ35.8質量部と、炭酸バリウム換算で6.2質量部に相当する量の酢酸バリウムとを、Pdメタル換算で1.1質量部に相当する硝酸Pd溶液に添加し、湿式粉砕処理を施した後、無機系バインダーとしてアルミナゾルを8.0質量部添加し、Pd含有スラリーを得た。
得られたPd含有スラリーを、Φ105.7mm×L114.3mm−400セルのコージェライト製ハニカム基材に塗布し、次いで乾燥及び500℃で1時間焼成処理を施した。
なお、下層におけるPd塗布量は56g/cft、ウォッシュコート量は180g/Lであった。
【0113】
(上層)
次に、上記実施例1で得たアパタイト(La7.33BaYSi625.50)91.0質量部を、Pdメタル換算で1.0質量部に相当する硝酸Pd溶液に添加し、湿式粉砕処理を施した後、無機系バインダーとしてのアルミナゾルを8.0質量部添加し、Pd含有スラリーを得た。
得られたPd含有スラリーを、上記の如く下層を塗布形成したコージェライト製ハニカム基材に塗布し、次いで、乾燥及び500℃で1時間焼成処理を施した。
なお、上層におけるPd塗布量は14g/cft、ウォッシュコート量は50g/Lであった。
【0114】
<実施例24>
(下層)
CeO2-ZrO2系複合酸化物62.9質量部と、La安定化アルミナ20.0質量部と、炭酸バリウム換算で8.0質量部に相当する量の酢酸バリウムとを、Pdメタル換算で1.1質量部に相当する硝酸Pd溶液に添加し、湿式粉砕処理を施した後、無機系バインダーとしてアルミナゾルを8.0質量部添加し、Pd含有スラリーを得た。
得られたPd含有スラリーを、Φ105.7mm×L114.3mm−400セルのコージェライト製ハニカム基材に塗布し、次いで乾燥及び500℃で1時間焼成処理を施した。
なお、下層におけるPd塗布量は44g/cft、ウォッシュコート量は140g/Lであった。
【0115】
(上層)
次に、上記実施例1で得たアパタイト(La7.33BaYSi625.50)91.0質量部を、Pdメタル換算で1.0質量部に相当する硝酸Pd溶液に添加し、湿式粉砕処理を施した後、無機系バインダーとしてのアルミナゾルを8.0質量部添加し、Pd含有スラリーを得た。
得られたPd含有スラリーを、上記の如く下層を塗布形成したコージェライト製ハニカム基材に塗布し、次いで、乾燥及び500℃で1時間焼成処理を施した。
なお、上層におけるPd塗布量は26g/cft、ウォッシュコート量は90g/Lであった。
【0116】
<実施例25>
(下層)
CeO2-ZrO2系複合酸化物73.3質量部と、La安定化アルミナ8.3質量部と、炭酸バリウム換算で9.3質量部に相当する量の酢酸バリウムとを、Pdメタル換算で1.1質量部に相当する硝酸Pd溶液に添加し、湿式粉砕処理を施した後、無機系バインダーとしてアルミナゾルを8.0質量部添加し、Pd含有スラリーを得た。
得られたPd含有スラリーを、Φ105.7mm×L114.3mm−400セルのコージェライト製ハニカム基材に塗布し、次いで乾燥及び500℃で1時間焼成処理を施した。
なお、下層におけるPd塗布量は39g/cft、ウォッシュコート量は120g/Lであった。
【0117】
(上層)
次に、上記実施例1で得たアパタイト(La7.33BaYSi625.50)91.0質量部を、Pdメタル換算で1.0質量部に相当する硝酸Pd溶液に添加し、湿式粉砕処理を施した後、無機系バインダーとしてのアルミナゾルを8.0質量部添加し、Pd含有スラリーを得た。
得られたPd含有スラリーを、上記の如く下層を塗布形成したコージェライト製ハニカム基材に塗布し、次いで、乾燥及び500℃で1時間焼成処理を施した。
なお、上層におけるPd塗布量は31g/cft、ウォッシュコート量は110g/Lであった。
【0118】
<対数微分空隙容積分布測定>
対数微分空隙容積分布の測定は、水銀に加える圧力を変化させ、その際の細孔中に進入した水銀の量を測定することにより、細孔(空隙)分布を測定する方法である。
細孔内に水銀が侵入し得る条件は、圧力P、細孔直径D、水銀の接触角と表面張力をそれぞれθとσとすると、力の釣り合いからPD=−4σCOSθで表すことができる。この際、接触角と表面張力を定数とすれば、圧力Pとそのとき水銀が侵入し得る細孔直径Dは反比例することになる。このため、圧力Pとそのときに侵入する液量Vを、圧力を変えて測定し、得られたP−V曲線の横軸Pを、そのままこの式から細孔直径に置き換え、細孔分布を求めることができる。
【0119】
測定装置としては、株式会社島津製作所製自動ポロシメータ「オートポアIV9520」を用いて、下記条件・手順で測定を行った。
【0120】
(測定条件)
測定環境:25℃
測定セル:試料室体積 3cm、圧入体積 0.39cm3
測定範囲:0.0048MPa から 255.106MPa まで
測定点:131点(細孔径を対数で取ったときに等間隔になるように点を刻んだ)
圧入体積:25%以上80%以下になるように調節した。
【0121】
(低圧パラメーター)
排気圧力:50μmHg
排気時間:5.0min
水銀注入圧力:0.0034MPa
平衡時間:10secs
(高圧パラメーター)
平衡時間:10secs
(水銀パラメーター)
前進接触角:130.0degrees
後退接触角:130.0degrees
表面張力:485.0mN/m(485.0dynes/cm)
水銀密度:13.5335g/mL
【0122】
(測定手順)
(1)触媒粉末約0.15g若しくはハニカム約0.5gを秤取し、測定を行った。
(2)低圧部で0.0048MPaから0.2068MPa以下の範囲で46点測定。
(3)高圧部で0.2241MPaから255.1060MPa以下の範囲で85点測定。
(4)水銀注入圧力及び水銀注入量から、細孔径分布を算出する。
なお、上記(2)、(3)、(4)は、装置付属のソフトウエアにて、自動で行った。
【0123】
<触媒性能評価方法>
エージングは、上記の触媒を1000℃に保持した電気炉にセットし、C36とO2が完全燃焼比となるように混合したガスを90秒流通させた後、次に空気を10秒流通させるように周期させながら24時間実施した。
触媒の浄化性能は、CO、CO2、C36、H2、O2、NO、H2O及びN2バランスから成る完全燃焼比となるように混合したガスを、SV=100,000h-1となるように流通させて、100〜500℃における出口ガス成分をCO/HC/NO分析計を用いて測定した。
【0124】
得られた温度−浄化率のデータから、CO/HC/NOそれぞれの50%浄化率に到達した温度(以下T50)と、400℃における浄化率(以下η400)を求め、各サンプルの触媒性能を比較した。
また、実施例2と比較例2については、温度は350℃、A/F=14.6で、SV=60,000、100,000、150,000、200,000、2500,00h-1の5水準でCO、HC、NOxの浄化率を測定した。
実施例3〜6、19〜22、比較例3〜7については、温度は350℃、A/F=14.6、SV=250000h-1でCO、HC、NOxの浄化率を測定した。
実施例7,8、12〜14については、温度は400℃、A/F=14.6で、SV=100,000でCO、HC、NOxの浄化率を測定した。
実施例9〜11、20、23〜25については、温度は400℃、A/F=14.6で、SV=100,000、150,000、200,000、2500,00h-1の4水準でCO、HC、NOxの浄化率を測定した。
【0125】
<CO吸着法によるPd分散度評価>
エージングは、上記の触媒を1000℃に保持した電気炉にセットし、C36とO2が完全燃焼比となるように混合したガスを80秒流通させた後、次に空気を20秒流通させるように周期させながら25時間実施した。そして、エージング後の触媒粉末のCO吸着量及びPd担持量から、Pd分散度を見積もった。
【0126】
<結果及び考察>
図1は、実施例1で作製したアパタイトのTEM写真を示し、図2は比較例1で準備したγ―Al23のSEM写真を示し、図3は、水銀圧入ポロシメータ(「Hgポロシメータ」と略す場合もある。)により測定したこれらの対数微分空隙容積分布(細孔分布)を示した図である。
【0127】
図1を見ると、実施例1のアパタイトは、立体網目の構造をとっており、100nm〜1000nm程度の細孔を持つことが分かった。これに対し、比較例1のγ-Al23図2)は、このようなマクロな細孔や立体網目の構造をとっていないことが分かった。
また、図3のHgポロシメータの測定結果を見ると、実施例1のアパタイトは空隙容積径100nm〜1000nmの範囲にピークトップを有するという特徴を有するのに対し、比較例1のγ-Al23はかかる範囲にピークトップを有しないことが分かった。
また、実施例1のアパタイトにおいて、空隙容積径100nm〜1000nmの範囲に存在するピークトップは、微分細孔容積が少なくとも0.05ml/g以上であった。
【0128】
次に、図4及び図5は、実施例7及び実施例11で作製した触媒構造体のHgポロシメータにより測定した対数微分空隙容積分布(細孔分布)を示した図である。
なお、図4において、空隙容積径100nm〜1000nmの範囲に存在するピークトップは、バックグラウンドBからの高さLが0.023ml/gであり、図5のピークトップの当該高さLは0.020ml/gであった。
【0129】
表1には、実施例・比較例における対数微分空隙容積分布(細孔分布)の結果とガス浄化性能の評価結果を示し、表2には、実施例2と比較例2のSVを変えたときの浄化率(η350(%))のデータを示した。
この際、ガス浄化性能の評価は、HCの浄化率が97%以上の場合を「A:very good」、90%以上97%未満の場合を「B(good)」、90%未満の場合を「C(poor)」と評価して表1に示した。(ただし、SVが異なる測定の場合は、SVが一番低いデータを採用した。)
【0130】
【表1】
【0131】
【表2】
【0132】
表1の結果を見ると、各実施例で得た触媒構造体はいずれも、水銀圧入ポロシメータにより測定される対数微分空隙容積分布において、空隙容積径100nm〜1000nmの範囲にピークトップを有するのに対し、各比較例で得た触媒構造体はいずれも、空隙容積径100nm〜1000nmの範囲にピークトップが無いことが確認された。
そして、当該範囲にピークトップを有する実施例の触媒構造体は、当該範囲にピークトップを有さない比較例の触媒構造体に比べて、浄化性能が高いことが確認された。
また、表2の結果を見ると、高SVでの浄化率の低下は、アパタイト触媒層を有する実施例2の方が、アルミナで構成される比較例2より小さく、触媒深層部へのガス拡散が良いことが分かった。
【0133】
よって、上記実施例の結果とこれまでの試験結果を考慮すると、空隙容積径100nm〜1000nmにピークトップを有するように触媒構造体を形成することにより、ガス流量が多い条件下においても、触媒層の深層部へのガス拡散性を維持することができ、浄化率を高めることができることが分かった。
この際、空隙容積径100nm〜1000nmに有するピークトップは、その微分細孔容積が0.01ml/g以上であるのが好ましく、中でも0.05ml/g以上或いは5ml/g以下、その中でも好ましく0.10ml/g以上或いは2ml/g以下であるのが好ましいものと考えることができる。
また、空隙容積径100nm〜1000nmの範囲にピークトップを有する特徴を備えたアパタイトを用いて形成することで、上記のような触媒構造体を形成できることも分かった。
【0134】
【表3】
【0135】
表3には、実施例3〜6と比較例3〜7の高SVでの浄化率(η350(%))のデータを示した。
この表3の結果を見ると、アパタイト触媒層を上層として備えた触媒構造体(実施例3〜6)の方が、比較例3〜7の触媒構造体よりも、コート層すなわち上層及び下層の厚みを大きくしても浄化率を高く維持できることが分かった。
このように、アパタイトのような100nm〜1000nm程度のマクロの細孔を有する材料を上層に用いることで、高SVでも下層までガス拡散が起こり、浄化率を高く保つことができることが分かった。
【0136】
【表4】
【0137】
表4には、下層にアパタイトとOSC材を共存させない場合(実施例7)と、共存させた場合(実施例8)の模擬排ガス浄化性能評価結果を示した。
この結果、アパタイトが含まれる同一層、すなわちアパタイト触媒層はOSC材を含まない方が好ましいことが分かった。
【0138】
【表5】
【0139】
表5には、上層におけるアパタイトとAl23の混合比を変えた場合(実施例9〜11)の模擬排ガス浄化性能(η400(%))の評価結果を示した。
この結果、上層にAl23が入ると、浄化率が低下しており、その量を増やすほど浄化率の低下が顕著になることが分かった。そして、この傾向は、SVが高いほど強いことが分かった。この理由は、三次元的に立体網目構造を有するアパタイトに対してAl23を入れることで、アパタイトのガス拡散性が阻害されるものと考えることができる。
かかる観点から、同一層に含有されるアルミナの含有量に対するアパタイトの含有量の比率は1以上、特に3以上或いは30以下、中でも6以上或いは20以下であるのが好ましいと考えることができる。
【0140】
【表6】
【0141】
表6には、アパタイト触媒に対してBaの添加量を変えた場合(実施例12〜14)の模擬排ガス浄化性能評価結果を示した。
この結果、Baを添加すると、η400が向上することが分かった。ただし、Ba/アパタイト比が1/5ほどの量のBaを添加すると、T50に特に顕著な低下が見られた。
従来から、Pd触媒に対しBaを添加すると、Pdのシンタリングを抑えられるとの報告があるが、Pd/アパタイト触媒も例外ではなく、Baを添加すると性能向上が認められた。ただし、Ba添加量が多すぎると、逆効果である場合があるので注意が必要である。
【0142】
【表7】
【0143】
表7には、エージング後のアパタイト触媒(実施例15〜18)のPd分散度を示した。なお、表7におけるPd濃度(wt%)は、アパタイト触媒層に含まれるPd含有量の割合(wt%)を示すものである。
Pd濃度が1.5wt%までは高いが、それ以上になると分散度が低下していることが分かった。
【0144】
【表8】
【0145】
表8には、実施例19〜22の浄化率(η350(%))のデータを示した。表8におけるPd濃度(wt%)も、アパタイト触媒層に含まれるPd含有量の割合(wt%)を示すものである。
この結果、こちらも、Pd濃度が1.5wt%までは高いが、それ以上になると低下することが確認された。おそらく、アパタイトは比表面積が小さく、高濃度だとシンタリングが進みやすくなるものと思われる。アパタイトに対してPd濃度は1.5wt%以下にした方がよいことが分かった。
【0146】
表7及び表8の結果を考慮すると、触媒活性成分の分散性及びシンタリング抑制の観点から、触媒構造体に含まれる触媒活性成分の含有量は、触媒構造体に含まれるアパタイトの量100質量部に対して0.01〜1.5質量部、中でも0.05質量部以上或いは1.5質量部以下、その中でも0.1質量部以上或いは1.0質量部以下であるのが好ましい、と考えることができる。
【0147】
【表9】
【0148】
表9には、上層の貴金属濃度を一定にし、コート量を増やしたサンプル(実施例20、23〜25)の模擬排ガス浄化性能(η400(%))の評価結果を示した。
実施例20、23と比較して、コート量の厚い実施例24、25は、高SVでの性能が落ちていることが分かった。アパタイトは、3次元の立体網目構造を有し、ガス拡散が良いのが特徴であるが、コート量が厚いと、その特徴が生かせず、性能が低下するものと思われる。このことから、上層のコート量は80g/L以下、中でも70g/L以下であるのが好ましいと考えることができる。
図1
図2
図3
図4
図5