(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
トリートメント、コンディショナーまたはリンスの形態であり、一種または複数の界面活性剤と脂肪アルコールと乳化シリコーン粒子とを含むベーストリートメント、ベースコンディショナーまたはベースリンスに、請求項1〜5いずれか一項に記載の方法で製造される毛髪化粧料用ベシクル組成物を添加して毛髪化粧料を得る、毛髪化粧料の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明におけるベシクルの製造方法は、以下の工程(i)および(ii)を含む。
(i)以下の成分(A)〜(C):
成分(A);総炭素数12〜40の脂肪酸、
成分(B);総炭素数8〜75の第3級アミン化合物、および
成分(C);総炭素数1〜10の有機酸
を含有する油相を、当該油相の融点以上の温度で溶解させる工程、ならびに
(ii)前記工程(i)で得られた油相に水相を加えながら混合する工程。
そして、工程(ii)において、攪拌所要動力Pvの最大値が0.1kW/m
3以上10kw/m
3以下となるよう混合をおこない、連続相が水相であるベシクル組成物を得る。
以下、各工程および使用される各成分について具体的に説明する。
【0015】
はじめに、成分(A)〜(C)について説明する。
本発明で用いられる成分(A)は総炭素数12〜40の脂肪酸であり、具体的には、以下の一般式(1)または(2)で表されるいずれか一種もしくは二種以上の脂肪酸である。
【0017】
(上記一般式(1)中、nは10〜38の整数を示す。)
【0019】
(上記一般式(2)中、a、bおよびcの総和は、a+b+c=9〜37であり、bは1である。)
【0020】
一般式(1)で表される成分(A)の直鎖脂肪酸は、総炭素数12〜40の直鎖脂肪酸であり、飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもよい。ベシクルをより一層確実に形成する観点から、さらに、総炭素数は14以上、特に16以上が好ましく、総炭素数24以下、更には22以下が好ましい。具体的には、ステアリン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸等が挙げられる。
【0021】
一般式(2)で表される分岐脂肪酸は、総炭素数が12〜40、更には8〜30、特に10〜22であるものが好ましい。具体的には、2−ヘプチルウンデカン酸(イソステアリン酸)、14−メチルペンタデカン酸、15−メチルヘキサデカン酸、16−メチルヘプタデカン酸、17−メチルオクタデカン酸、18−メチルノナデカン酸、19−メチルエイコサン酸、20−メチルヘンエイコサン酸、14−メチルヘキサデカン酸、15−メチルヘプタデカン酸、16−メチルオクタデカン酸、17−メチルノナデカン酸、18−メチルエイコサン酸、19−メチルヘンエイコサン酸が挙げられる。
また、「化粧品原料基準 第二版注解I(1984)薬事日報社」P.87(C)イソステアリン酸に記載されている分岐脂肪酸を用いてもよい。この分岐脂肪酸は、メチル基が側鎖であり、位置は特定されていないが、オレイン酸からダイマー酸を合成する際に副生される不飽和側鎖脂肪酸に水素添加して得られるC18側鎖脂肪酸であると記載されている。具体的には、イソステアリン酸EX(高級アルコール工業社製)が挙げられる。
【0022】
一般式(2)で表される分岐脂肪酸は、例えば、LIPIDS, vol.23, No.9, 878〜881(1988)の記載に従い、毛髪等から分離、抽出することもできるが、背景技術の項で前述した特許文献1の記載に従って合成することもできる。
【0023】
抽出品としては、ラノリンからの抽出物、すなわちラノリン脂肪酸及びその塩が挙げられる。ラノリン脂肪酸は、イソ脂肪酸、アンテイソ脂肪酸とよばれるメチル分岐長鎖脂肪酸を50重量%程度含有する。具体的にはクロダシッド18−MEA(クローダジャパン社製)、スクライロ(クローダジャパン社製)、FA−NH(日本精化社製)が挙げられる。
【0024】
一般式(1)または(2)で表される成分(A)の脂肪酸は、それぞれ2種以上を併用してもよいし、異なる一般式で示される2種以上を併用してもよい。
【0025】
成分(A)の含有量は、ベシクル組成物中にたとえば0.1質量%以上であり、1質量%以上が好ましく、たとえば10質量%以下であり、5質量%以下が好ましい。
【0026】
次に、成分(B)について説明する。
成分(B)は、総炭素数8〜75の第3級アミン化合物であり、具体的には、一般式(3)または(4)または(5)で表される第3級アミン化合物である。
【0030】
上記一般式(3)および(4)中、R
2は炭素数6〜24の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、R
3およびR
4は、同一又は異なる炭素数1〜6のアルキル基又は−(AO)
mH(AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、mは1〜6の数を示し、m個のAOは同一でも異なってもよく、その配列は任意である。)である。
また、上記一般式(5)中、R
5は炭素数11〜23の脂肪族炭化水素基を示し、R
6は同一又は異なっていて、水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、lは2〜4の整数を示す。
【0031】
一般式(3)および一般式(4)で表される成分(B)の第3級アミン化合物において、式中、R
2は好ましくは炭素数12〜24の直鎖または分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、より好ましくは炭素数14〜24の直鎖または分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、特に好ましくは炭素数18〜22の直鎖アルキル基を示す。
【0032】
更に、一般式(3)および一般式(4)において、R
3及びR
4の一方が、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、中でもメチル基又はエチル基であるのが好ましく、特に双方が同じであることがより好ましい。
このような化合物としては、具体的には、一般式(3)で表わされる成分(B)の第三級アミン化合物であれば、N,N−ジメチル−3−ヘキサデシルオキシプロピルアミン、N,N−ジメチル−3−オクタデシルオキシプロピルアミン(「N,N−ジメチル−オクタデシロキシプロピルアミン」とも記載する。)が挙げられる。
また、一般式(4)で表される成分(B)の第3級アミン化合物であれば、具体的には、N,N−ジメチルテトラデシルアミン、N,N−ジメチルヘキサデシルアミン、N,N−ジメチルベヘニルアミン、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミンが挙げられる。
【0033】
一般式(5)で表される成分(B)の第3級アミン化合物として、R
5は好ましくは炭素数13〜23の直鎖または分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、さらに好ましくは炭素数17〜23の直鎖または分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示す。一般式(5)で表される第3級アミン化合物として、具体的には、N−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)ドコサンアミド、N−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)ステアラミドが挙げられる。
【0034】
成分(B)の3級アミンは、1種又は2種以上を併用してもよい。
成分(B)の3級アミンとしては、一般式(3)のエーテルアミン、一般式(5)のアミドアミンが好ましい。
【0035】
成分(B)の含有量は、すすぎ時のなめらかさ、乾燥時のなめらかさ付与の点から、ベシクル組成物中に0.5〜15質量%とすることが好ましい。更には1〜10質量%、特に、1.5〜7質量%が好ましい。
【0036】
次に、成分(C)について説明する。
成分(C)は、総炭素数1〜10の有機酸である。具体的には、酢酸、プロピオン酸、カプリル酸、カプリン酸等のモノカルボン酸;
マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸等のジカルボン酸;
グリコール酸、乳酸、ヒドロキシアクリル酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等のヒドロキシカルボン酸;
安息香酸、サリチル酸、フタル酸等の芳香族カルボン酸;
グルタミン酸、アスパラギン酸等の酸性アミノ酸などが挙げられる。これらの中で、ヒドロキシカルボン酸、酸性アミノ酸が好ましい。ヒドロキシカルボン酸としては、特にグリコール酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸が好ましく、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸が好ましく、中でもグルコール酸、乳酸が好ましい。酸性アミノ酸としては、グルタミン酸が特に好ましい。
【0037】
成分(C)の含有量は、ベシクル組成物中にたとえば0.05質量%以上とし、0.1質量%以上とすることが好ましい。また、成分(C)の含有量は、ベシクル組成物中にたとえば4質量%以下とし、2質量%以下とすることが好ましい。
【0038】
成分(A)、成分(B)、成分(C)の組み合せとしては上述の化合物を適宜組み合わせることが可能である。組み合せを特に限定するものではないが、成分(B)がN,N−ジメチル−3−オクタデシルオキシプロピルアミン、成分(C)が乳酸である場合の成分(A)としては18−メチルエイコサン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸及びこれらの混合物が好ましい。
【0039】
成分(A)、成分(B)、成分(C)及び水により、ベシクルが形成され、特にいくつかの二重膜から成る多層ラメラベシクル(いわゆる、オニオンベシクル)が水中に分散したベシクル組成物が形成されやすい。また、ベシクルとは通常内層が中空あるいは水相である小胞体を指すが、ここで形成される多層ラメラベシクルは内層の一部もしくは全部が油相となる構造を持つものも包含される。また、本願において、「ベシクル」には多層ラメラベシクルも包含される。
【0040】
ベシクル分散液中のベシクル体積濃度を高くするという観点から、成分(A)と成分(C)とのモル比(A)/(C)は、5/5以上が好ましく、特に好ましくは7/3以上であり、かつ、9/1以下が好ましく、特に好ましくは8/2である。
【0041】
また、成分(A)、成分(B)、成分(C)を効率的にベシクル形成に寄与させるという観点から、成分(A)および(C)の酸当量の合計(「(A)+(C)の酸当量」とも呼ぶ。)と成分(B)の塩基当量との比(((A)+(C))/(B))は、0.25以上が好ましく、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.6以上であり、かつ、4以下が好ましく、より好ましくは2以下、さらに好ましくは1.8以下である。
【0042】
さらに、ベシクル分散液の保存安定性やハンドリング性という観点から、ベシクル分散液すなわちベシクル組成物中の成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計は、1〜20質量%が好ましく、より好ましくは1〜15質量%である。
【0043】
また、ベシクル組成物に含まれるベシクルの平均粒径は、毛髪塗布時の馴染み感のさらなる向上という観点から、たとえば2μm以上、好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、かつ、たとえば20μm以下、好ましくは18μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。ここで、平均粒径は、たとえば粒度分布測定装置であるベックマン・コールター社製のMultisizer
TM4を用いて体積平均粒径として測定できる。測定は室温下(15〜30℃)にておこなうことが望ましい。
【0044】
次に、ベシクル組成物の製造方法における各工程をさらに具体的に説明する。
本発明のベシクル組成物は、ベシクルの分散液(プレミックス)の形態をとることが望ましい。このベシクル分散液は、例えば以下の段階、すなわち、
(i)成分(A)、成分(B)、成分(C)を含有する油相を、当該油相の融点以上の温度で溶解する工程と、
(ii)上記工程(i)で得られた油相に水相を加えながら混合する工程と、
によって好適に製造できる。このような手順に従えば、連続相が水相であるベシクル組成物が得られる。
【0045】
まず、工程(i)において、安定的な製造の観点から油相は溶解する必要がある。このため、油相の融点以上の温度で溶解し、更に油相の融点より5℃以上高い温度で溶解することが好ましく、特に油相の融点より10℃以上高い温度で溶解することが好ましい。
また、油相は均一に混合された状態であることが好ましい。そこで、本工程は油相を混合しながら溶解させることが好ましい。混合方法は特に限定しないが、例えば攪拌により混合することが好ましい。
【0046】
次に、工程(ii)において、工程(i)で溶解した油相、具体的にはせん断混合状態の油相に水相を滴下する。混合装置はせん断混合ができれば特に限定されないが、水相添加途中で高粘度になる場合には高粘度物を混合できる装置、例えばプライミクス社製アヂホモミクサー、T.K.コンビミックス、みづほ工業社製真空乳化攪拌装置、住友重機械工業社製マックスブレンド攪拌槽、佐竹化学機械工業社製スーパーミックス攪拌槽などが好ましい。
【0047】
工程(ii)では、攪拌所要動力Pvの最大値が上述した特定の範囲となるように、混合をおこなう。これにより、層状ラメラ等の混在を抑制して効率的にベシクル構造を形成させるとともに、ベシクル組成物を用いて得られる毛髪化粧料の性能を安定的に向上させることができる。
【0048】
ここで、Pvは、一般的に配合槽および攪拌翼の形状因子、攪拌翼の回転数、配合槽内の液体の密度、体積および粘度等により決定される、配合槽内の液体の混合性を評価する指標である。
【0049】
本発明においては、工程(ii)におけるPvの最大値を0.1kW/m
3以上とする。これにより、油相と水相の混合性が向上するとともに、ベシクル体積濃度(分散液中に占めるベシクルの体積比率)と分散液の粘度とが好ましくバランスした状態で混合をおこなうことができるため、層状ラメラ等の形成を抑制し、ベシクル構造を効率良く得ることができる。さらに効率的にベシクルを製造する観点から、工程(ii)におけるPvの最大値は、好ましくは0.5kw/m
3以上、さらに好ましくは1.5kw/m
3以上とする。
【0050】
一方、Pvの最大値を10kw/m
3以下とすることにより、ベシクル組成物を毛髪化粧料中に配合した際に、すすぎ時のぬるつきや乾燥後のべたつきを抑えつつ、すすぎ時から乾燥後にわたっての滑らかさを特に安定的に向上させることができる。この理由は、Pvの最大値が大きすぎると、ベシクル中の含水率が減少しすぎることに関連するものと推察される。ベシクル組成物を配合した毛髪化粧料のすすぎ時から乾燥後にわたっての滑らかさをさらに向上させるとともに、工業的なベシクルの製造安定性をさらに向上させる観点からは、工程(ii)におけるPvの最大値を好ましくは7kw/m
3以下、さらに好ましくは5kw/m
3以下とする。
【0051】
工程(ii)において、Pvの最大値を制御する因子としては配合槽および攪拌翼の形状因子、攪拌翼の回転数、水相の滴下時間、配合槽内の液体の密度、体積および粘度等が挙げられる。これらのうち、容易にPvの最大値を制御する観点から、攪拌翼の回転速度、水相の滴下時間によってPvの最大値を制御することが好ましい。Pvの最大値は、たとえば攪拌翼の回転速度を大きくすることにより大きくすることができる。攪拌翼の回転速度は、例えば15〜800rpmとすることが好ましい。
【0052】
また、水相の滴下時間を長くすることによってもPvの最大値を大きくすることができる。滴下時間はたとえば5分以上、20分以上が好ましく、100分以下、好ましくは80分以下が好ましい。
【0053】
攪拌翼の回転速度(回転数)を大きくしたり、水相の滴下時間を長くしたりすることにより、油相と水相の混合性が向上し、Pvの最大値は大きくなるため、ベシクル構造の生成効率が高くなる。一方、攪拌翼の回転速度(回転数)が大きすぎたり、水相の滴下時間が長すぎたりすると、ベシクル中の水分含量が低下しすぎて、毛髪化粧料に配合したときに毛髪化粧料の性能が充分に発揮されない場合がある。このため、工程(ii)においてはPvの最大値が上述した特定の範囲内となるように、混合条件を設定する。
【0054】
工程(ii)において、Pvは、例えば日置電機社製のクランプ式電力計などを用いて実測することができる。簡便に最大のPv値を算出する観点から、動力は実測することが望ましい。
【0055】
Pvを実測する場合、下記式(II)に示すように、実測される攪拌動力から空転時の攪拌動力を差し引いた正味の攪拌動力を、その時の配合槽内の液量で割ることで算出できる。
Pv=(Pi−P0)/V (II)
(上記式(II)中、Piは、実測される攪拌動力[kW]であり、P0は、空転時の攪拌動力[kW]である。また、Vは、配合槽内の液体の体積[m
3]である。)
【0056】
なお、Pv値による構造の制御は配合槽への総仕込み量が多い方がより精密に制御できる。また、Pv値自体のコントロールも配合槽への総仕込み量が多いほうが精度良く制御できる。
そのため、Pvの最大値の制御性を向上させる観点から、配合槽へ仕込む油相と水相の総重量を10kg以上として混合することにより転相乳化をおこなうことが好ましく、より好ましくは100kg以上、さらに好ましくは200kg以上である。
【0057】
更にベシクルの粒径を制御する場合、水相滴下開始以降の攪拌回転数により調整することができる。すすぎ時のぬるつきや乾燥後のべたつきを抑えつつ、すすぎ時から乾燥後にわたっての滑らかさを一層向上させるような粒径のベシクルを得る観点から、水相滴下開始以降の攪拌回転数は15〜800rpmが好ましい。
また、ベシクル組成物を配合した毛髪化粧料におけるすすぎ時のぬるつきや乾燥後のべたつきを抑えつつ、すすぎ時から乾燥後にわたっての滑らかさを安定的に向上させる観点から、ベシクル分散液中のベシクルの体積濃度は高い方が好ましい。ベシクル分散液中のベシクルの体積濃度は油相への水相の滴下速度及び水相滴下時の攪拌回転数により調整可能である。油相への水相の滴下速度や滴下時の攪拌回転数の最適値は、ベシクル組成物の処方や成分比及び配合槽の大きさ、形状によって変化するが、水相滴下途中で最も粘度の上昇する状態において均一に混合できる条件が好ましい。更に水相を滴下していくと、ベシクル分散液の粘度は低下し、ベシクル体積濃度は減少する。滴下する水相の量はベシクル分散液の保存安定性、ハンドリング性を考慮して適宜調整可能である。
油相への水相の滴下速度は上述のように適宜選択できるが、ベシクル分散液中のベシクルの体積濃度を高める目的から、特に滴下速度を制限するものではないが、5分以上時間をかけて滴下することが望ましい。
【0058】
工程(ii)において、水相滴下時の温度は油相温度及び滴下する水相の温度及び混合装置での加熱あるいは冷却により適宜決めることができるが、油相温度及び滴下する水相の温度を、形成させるベシクルのゲル転移温度以上にすることが好ましい。このように油相を攪拌しながら水相を滴下する乳化形式を一般に転相乳化という。本発明では、上述のように油相を構成し、転相乳化にてベシクル組成物とすることにより、ベシクル組成物がハンドリング性に優れたものとなる。
【0059】
ここで、「水相」には、イオン交換水、蒸留水などの精製水を用いるが、後述するように、水に溶解する成分(D)である多価アルコール、例えばグリセリンやジプロピレングリコールなどを含有させることもできる。
【0060】
また、得られるベシクル組成物の安定性の観点から、工程(ii)の後に
工程(iii)水相滴下終了後、速やかにベシクルのゲル転移温度以下まで冷却する工程
を含むベシクル組成物の製造方法であることが好ましい。
【0061】
ベシクル組成物の製造方法において、油相が、成分(D)多価アルコールをさらに含有してもよい。
また、本発明の製造方法で得られるベシクル組成物は、さらに、(D)多価アルコールを含んでいてもよい。
成分(D)として、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。特にプロピレングリコール、ジプロピレングリコールが好ましい。
【0062】
成分(D)の含有量は、ベシクル組成物の保存安定性の観点から、ベシクル組成物全体に対して0.5〜60質量%が好ましく、より好ましくは1〜50質量%である。特に2〜20質量%が好ましい。
【0063】
成分(D)をベシクル組成物中に配合する場合、前述したように工程(ii)の段階で水相に添加することもできるが、工程(i)において油相に添加することが好ましい。工程(i)において、成分(A)、成分(B)、成分(C)を含有する油相を、油相の融点以上の温度で溶解させた後、油相に成分(D)を加えることが好ましい。または、工程(i)において、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)を含有する油相を、油相の融点以上の温度で固形物が無くなるまで溶解させた油相を得てもよい。工程(i)の後、得られた油相に水相を加えながら混合する工程(ii)の段階を経ることによって、ベシクル体積濃度が高く、さらに保存安定性の高いベシクル分散液を得ることができる。さらにベシクルの保存安定性の観点から水相滴下終了後、速やかにベシクルのゲル転移温度以下まで冷却する工程(iii)の段階を経ることが好ましい。
【0064】
また、工程(i)において、油相には本発明のベシクルの製造を阻害しない範囲で任意の成分を入れることができる。任意成分としては、例えば各種エキス類及び酸化防止剤などを挙げることができるが、これに限定されない。油相に添加できる任意成分は、安定的なベシクル組成物の製造の観点から、たとえば油相の1質量%以下である。
【0065】
また、工程(ii)において、水相には本発明のベシクルの製造を阻害しない範囲で任意の成分を添加できる。添加できる任意成分としては、例えば各種エキス類及び防腐剤などがあるが、特にこれに限定されない。水相に添加できる任意成分は、安定的なベシクル組成物の製造の観点から、たとえば水相の0.1質量%以下である。
【0066】
なお、高級アルコールについては、本実施形態のように成分(A)成分、(B)成分および(C)を含む処方では、組成物中に含まれるベシクルの体積割合を増やす観点から、ベシクル組成物中には含まないか、あるいは実質的に含まない方がよく、ベシクル組成物中2質量%以下、特に1質量%以下が好ましい。
【0067】
次に、本発明において得られたベシクル組成物を用いる毛髪化粧料について説明する。
本発明における毛髪化粧料は、たとえば1種または複数の界面活性剤と脂肪族アルコールとを含有し、さらに前述したベシクル組成物を含有する。
【0068】
毛髪化粧料中のベシクル組成物の含有量は、塗布時の馴染み感、すすぎ時の滑らかさを付与する観点から、ベシクルを構成する成分(A)が、0.01〜5質量%となる量であることが好ましく、より好ましくは0.05〜2質量%となる量が挙げられる。このような毛髪化粧料は、従来の毛髪化粧料と有効成分の含有量が同程度であるにもかかわらず、従来の毛髪化粧料よりも塗布時のなじみ感を安定的に向上させることができる。
このような毛髪用化粧料としては例えば、コンディショナー、リンス、トリートメント、シャンプーなどが挙げられる。特に効果的な毛髪用化粧料として、コンディショナー、リンス、トリートメントが好ましい。これらの毛髪用化粧料は、毛髪化粧料塗布後、洗い流す使用形態でも洗い流さない使用形態でもよい。
【0069】
ベシクル組成物を含有する毛髪化粧料は、本発明におけるベシクル組成物を別途、通常の方法で調製した毛髪用化粧料ベースに混合することで得られる。通常の方法で調整した毛髪用化粧料ベースとは例えば界面活性剤と脂肪族アルコールを含有し、必要に応じてシリコーン、油性成分などを配合した一般的な毛髪化粧料をいう。これは任意の方法で調整することができる。
【0070】
毛髪用化粧料ベースの処方や製造方法は特に限定されるものではないが、例えば加熱攪拌した水相にカチオン性界面活性剤と高級アルコールを含有する油相を添加し、乳化することで得られる。
毛髪化粧料は、さらに具体的には、コンディショナーまたはリンスの形態であり、1種または複数の界面活性剤と脂肪アルコールと乳化シリコーン粒子とを含むベーストリートメント、ベースコンディショナーまたはベースリンスに、ベシクル組成物を添加することで得られる。
【0071】
通常の毛髪化粧料ベースにベシクル組成物を配合する方法は特に限定されないが、ベシクルの安定性の観点から、ベシクルのゲル転移温度以下の温度で配合することが望ましい。これによりベシクル組成物の構造を維持した毛髪用化粧料を得ることができる。
【実施例】
【0072】
(実施例1〜17、比較例1〜3)
以下の方法により、各例のプレミックス組成物を調製した。また、得られたプレミックス組成物を用いてリンスの調製および評価をおこなった。プレミックスおよびリンスの配合、プレミックスの製造条件ならびにリンスの評価結果を表1〜表4に示す。
【0073】
(実施例1)
18−MEA(18−メチルエイコサン酸を含む脂肪酸及び分岐脂肪酸混合物、平均分子量:364.3、融点35〜55℃、クローダジャパン社製)3.85kg、ムサシノ乳酸90(乳酸、純度90%、分子量:90.08、融点18℃、武蔵野化学研究所社製)0.26kg、ファーミンDM E−80(N,N−ジメチルオクタデシロキシプロピルアミン、純度90%、分子量355.63、花王社製)5.22kg及びDPG−RF(ジプロピレングリコール、融点−40℃、ADEKA社製)11.55kgを配合槽(T.K.アヂホモミクサー、プライミクス社製)に入れ、槽内温度が80℃までパドル翼による攪拌で加熱し、原料を完全溶解した。この油相中に、配合槽への総仕込量が110kgとなるように水相として80℃に加熱したイオン交換水89.12kgを80分かけて定量滴下し、80℃、攪拌回転数35rpmの条件で乳化をおこなった。その後、5℃の冷媒により30℃以下まで冷却し、プレミックス組成物を得た。
【0074】
乳化時の攪拌所要動力の最大値をクランプ式動力計(クランプオンパワーハイテスタ3169、日置電気社製)を用いて実測したところ、2.02kW/m
3であった。
上記の条件により調製されたベシクル組成物のゲル転移温度を示差走査熱量計(DSC)で測定したところ、52.7℃であった。
なお、ゲル転移温度の測定にはSETRAM INSTRUMENTATION社製μDSC7 evoを用い、5℃から90℃まで昇温速度0.5℃/分で測定した。
表1〜表4には、プレミックスの製造条件および各成分の重量分率を示した。
【0075】
(実施例2)
ルナックS−90V(ステアリン酸、平均分子量:284.8、花王社製)2.20kg、ファーミンDM E−80(N,N−ジメチルオクタデシロキシプロピルアミン、純度90%、分子量355.63、花王社製)3.82kg、ムサシノ乳酸90(乳酸、純度90%、分子量:90.08、融点18℃、武蔵野化学研究所社製)0.19kg及びDPG−RF(ジプロピレングリコール、融点−40℃、ADEKA社製)6.60kgを配合槽(T.K.アヂホモミクサー、プライミクス社製)に入れ、80℃までパドル翼による攪拌で加熱し、原料を完全溶解した。この油相中に、配合槽への総仕込量が110kgとなるように水相として80℃に加熱したイオン交換水97.19kgを80分かけて定量滴下し、80℃、攪拌回転数35rpmの条件で乳化をおこなった。その後、5℃の冷媒により30℃以下まで冷却し、プレミックス組成物を得た。
なお、乳化時の攪拌所要動力の最大値をクランプ式動力計(クランプオンパワーハイテスタ3169、日置電気社製)を用いて実測したところ、1.87kW/m
3であった。
【0076】
(実施例3)
ルナックMY−98(ミリスチン酸、平均分子量:228.4、花王社製)2.20kg、ファーミンDM E−80(N,N−ジメチルオクタデシロキシプロピルアミン、純度90%、分子量355.63、花王社製)4.76kg、ムサシノ乳酸90(乳酸、純度90%、分子量:90.08、融点18℃、武蔵野化学研究所社製)0.24kg及びDPG−RF((ジプロピレングリコール、融点−40℃、ADEKA社製)6.60kgを、配合槽(T.K.アヂホモミクサー、プライミクス社製)に入れ、80℃までパドル翼による攪拌で加熱し、原料を完全溶解した。この油相中に、配合槽への総仕込量が110kgとなるように水相として80℃に加熱したイオン交換水96.20kgを80分かけて定量滴下し、80℃、攪拌回転数35rpmの条件で乳化をおこなった。その後、5℃の冷媒により30℃以下まで冷却し、プレミックス組成物を得た。
なお、乳化時の攪拌所要動力の最大値をクランプ式動力計(クランプオンパワーハイテスタ3169、日置電気社製)を用いて実測したところ、1.93kW/m
3であった。
【0077】
(実施例4)
ルナックBA(ベヘン酸、平均分子量:340.6、花王社製)2.20kg、ファーミンDM E−80(N,N−ジメチルオクタデシロキシプロピルアミン、純度90%、分子量355.63、花王社製)3.19kg、乳酸(ムサシノ乳酸90、武蔵野化学研究所社製)0.16kg及びDPG−RF(ジプロピレングリコール、融点−40℃、ADEKA社製)6.60kgを、配合槽(T.K.アヂホモミクサー、プライミクス社製)に入れ、80℃までパドル翼による攪拌で加熱し、原料を完全溶解した。この油相中に、配合槽への総仕込量が110kgとなるように水相として80℃に加熱したイオン交換水97.85kgを80分かけて定量滴下し、80℃、攪拌回転数35rpmの条件で乳化をおこなった。その後、5℃の冷媒により30℃以下まで冷却し、プレミックス組成物を得た。
なお、乳化時の攪拌所要動力の最大値をクランプ式動力計(クランプオンパワーハイテスタ3169、日置電気社製)を用いて実測したところ、1.95kW/m
3であった。
【0078】
(実施例5)
ルナックS−90V(ステアリン酸、平均分子量:284.8、花王社製)1.32kg、イソステアリン酸EX(イソステアリン酸、平均分子量:291.2、高級アルコール工業社製)0.88kg、ファーミンDM E−80(N,N−ジメチルオクタデシロキシプロピルアミン、純度90%、分子量355.63、花王社製)3.78kg、ムサシノ乳酸90(乳酸、純度90%、分子量:90.08、融点18℃、武蔵野化学研究所社製)0.19kg及びDPG−RF(ジプロピレングリコール、融点−40℃、ADEKA社製)6.60kgを配合槽(T.K.アヂホモミクサー、プライミクス社製)に入れ、80℃までパドル翼による攪拌で加熱し、原料を完全溶解した。この油相中に、配合槽への総仕込量が110kgとなるように水相として80℃に加熱したイオン交換水97.23kgを80分かけて定量滴下し、80℃、攪拌回転数35rpmの条件で乳化をおこなった。その後、5℃の冷媒により30℃以下まで冷却し、プレミックス組成物を得た。
なお、乳化時の攪拌所要動力の最大値をクランプ式動力計(クランプオンパワーハイテスタ3169、日置電気社製)を用いて実測したところ、2.12kW/m
3であった。
【0079】
(実施例6)
ルナックMY−98(ミリスチン酸、平均分子量:228.4、花王社製)1.32kg、イソステアリン酸EX(イソステアリン酸、平均分子量:291.2、高級アルコール工業社製)0.88kg、ファーミンDM E−80(N,N−ジメチルオクタデシロキシプロピルアミン、純度90%、分子量355.63、花王社製)4.35kg、ムサシノ乳酸90(乳酸、純度90%、分子量:90.08、融点18℃、武蔵野化学研究所社製)0.22kg及びDPG−RF(ジプロピレングリコール、融点−40℃、ADEKA社製)6.60kgを、配合槽(T.K.アヂホモミクサー、プライミクス社製)に入れ、80℃までパドル翼による攪拌で加熱し、原料を完全溶解した。この油相中に、配合槽への総仕込量が110kgとなるように水相として80℃に加熱したイオン交換水96.63kgを80分かけて定量滴下し、80℃、攪拌回転数35rpmの条件で乳化をおこなった。その後、5℃の冷媒により30℃以下まで冷却し、プレミックス組成物を得た。
なお、乳化時の攪拌所要動力の最大値をクランプ式動力計(クランプオンパワーハイテスタ3169、日置電気社製)を用いて実測したところ、2.05kW/m
3であった。
【0080】
(実施例7)
ルナックBA(ベヘン酸、平均分子量:340.6、花王社製)1.32kg、イソステアリン酸EX(イソステアリン酸、平均分子量:291.2、高級アルコール工業社製)0.88kg、ファーミンDM E−80(N,N−ジメチルオクタデシロキシプロピルアミン、純度90%、分子量355.63、花王社製)3.41kg、ムサシノ乳酸90(乳酸、純度90%、分子量:90.08、融点18℃、武蔵野化学研究所社製)0.17kg及びDPG−RF(ジプロピレングリコール、融点−40℃、ADEKA社製)6.60kgを、配合槽(T.K.アヂホモミクサー、プライミクス社製)に入れ、80℃までパドル翼による攪拌で加熱し、原料を完全溶解した。この油相中に、配合槽への総仕込量が110kgとなるように水相として80℃に加熱したイオン交換水97.62kgを75分かけて定量滴下し、80℃、攪拌回転数35rpmの条件で乳化をおこなった。その後、5℃の冷媒により30℃以下まで冷却し、プレミックス組成物を得た。
なお、乳化時の攪拌所要動力の最大値をクランプ式動力計(クランプオンパワーハイテスタ3169、日置電気社製)を用いて実測したところ、2.23kW/m
3であった。
【0081】
(実施例8)
ルナックS−90V(ステアリン酸、平均分子量:284.8、花王社製)1.76kg、イソステアリン酸EX(イソステアリン酸、平均分子量:291.2、高級アルコール工業社製)0.44kg、ファーミンDM E−80(N,N−ジメチルオクタデシロキシプロピルアミン、純度90%、分子量355.63、花王社製)3.80kg、ムサシノ乳酸90(乳酸、純度90%、分子量:90.08、融点18℃、武蔵野化学研究所社製)0.19kg及びDPG−RF(ジプロピレングリコール、融点−40℃、ADEKA社製)6.60kgを配合槽(T.K.アヂホモミクサー、プライミクス社製)に入れ、80℃までパドル翼による攪拌で加熱し、原料を完全溶解した。この油相中に、配合槽への総仕込量が110kgとなるように水相として80℃に加熱したイオン交換水97.21kgを80分かけて定量滴下し、80℃、攪拌回転数30rpmの条件で乳化をおこなった。その後、5℃の冷媒により30℃以下まで冷却し、プレミックス組成物を得た。
なお、乳化時の攪拌所要動力の最大値をクランプ式動力計(クランプオンパワーハイテスタ3169、日置電気社製)を用いて実測したところ、1.12kW/m
3であった。
【0082】
(実施例9)
ルナックS−90V(ステアリン酸、平均分子量:284.8、花王社製)1.98kg、イソステアリン酸EX(イソステアリン酸、平均分子量:291.2、高級アルコール工業社製)0.22kg、ファーミンDM E−80(N,N−ジメチルオクタデシロキシプロピルアミン、純度90%、分子量355.63、花王社製)3.81kg、ムサシノ乳酸90(乳酸、純度90%、分子量:90.08、融点18℃、武蔵野化学研究所社製)0.19kg及びDPG−RF(ジプロピレングリコール、融点−40℃、ADEKA社製)6.60kgを、配合槽(T.K.アヂホモミクサー、プライミクス社製)に入れ、80℃までパドル翼による攪拌で加熱し、原料を完全溶解した。この油相中に、配合槽への総仕込量が110kgとなるように水相として80℃に加熱したイオン交換水97.20kgを80分かけて定量滴下し、80℃、攪拌回転数30rpmの条件で乳化をおこなった。その後、5℃の冷媒により30℃以下まで冷却し、プレミックス組成物を得た。冷却後の温度は、得られたベシクル組成物のゲル転移温度以上であった。
なお、乳化時の攪拌所要動力の最大値をクランプ式動力計(クランプオンパワーハイテスタ3169、日置電気社製)を用いて実測したところ、1.20kW/m
3であった。
【0083】
(実施例10)
18−MEA(18−メチルエイコサン酸を含む脂肪酸及び分岐脂肪酸混合物、平均分子量:364.3、融点35〜55℃、クローダジャパン社製)3.85kg、AMIDET APA−22(N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]ドコサンアミド、純度99%、分子量424.8、融点76℃、花王社製)5.66kg、ムサシノ乳酸90(乳酸、純度90%、分子量:90.08、融点18℃、武蔵野化学研究所社製)0.26kg及びDPG−RF(ジプロピレングリコール、融点−40℃、ADEKA社製)11.55kgを、配合槽(T.K.アヂホモミクサー、プライミクス社製)に入れ、80℃までパドル翼による攪拌で加熱し、原料を完全溶解した。この油相中に、配合槽への総仕込量が110kgとなるように水相として80℃に加熱したイオン交換水88.67kgを75分かけて定量滴下し、80℃、攪拌回転数35rpmの条件で乳化をおこなった。その後、5℃の冷媒により30℃以下まで冷却し、プレミックス組成物を得た。冷却後の温度は、得られたベシクル組成物のゲル転移温度以上であった。
なお、乳化時の攪拌所要動力の最大値をクランプ式動力計(クランプオンパワーハイテスタ3169、日置電気社製)を用いて実測したところ、1.88kW/m
3であった。
【0084】
(実施例11)
18−MEA(18−メチルエイコサン酸を含む脂肪酸及び分岐脂肪酸混合物、平均分子量:364.3、融点35〜55℃、クローダジャパン社製)3.85kg、ファーミンDM8098(N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン、純度98%、分子量297.56、融点23℃、花王社製)4.01kg、ムサシノ乳酸90(乳酸、純度90%、分子量:90.08、融点18℃、武蔵野化学研究所社製)0.26kg及びDPG−RF(ジプロピレングリコール、融点−40℃、ADEKA社製)11.55kgを配合槽(T.K.アヂホモミクサー、プライミクス社製)に入れ、80℃までパドル翼による攪拌で加熱し、原料を完全溶解した。この油相中に、配合槽への総仕込量が110kgとなるように水相として80℃に加熱したイオン交換水90.33kgを78分かけて定量滴下し、80℃、攪拌回転数35rpmの条件で乳化をおこなった。その後、5℃の冷媒により30℃以下まで冷却し、プレミックス組成物を得た。冷却後の温度は、得られたベシクル組成物のゲル転移温度以上であった。
なお、乳化時の攪拌所要動力の最大値をクランプ式動力計(クランプオンパワーハイテスタ3169、日置電気社製)を用いて実測したところ、1.92kW/m
3であった。
【0085】
(実施例12)
実施例1に記載のパドル翼の回転数を45rpmとしたこと以外は、実施例1に準じて乳化をおこない、プレミックス組成物を得た。
なお、乳化時の攪拌所要動力の最大値をクランプ式動力計(クランプオンパワーハイテスタ3169、日置電気社製)を用いて実測したところ、3.31kW/m
3であった。
【0086】
(実施例13)
実施例1に記載のパドル翼の回転数を60rpmとしたこと以外は、実施例1に準じて乳化をおこない、プレミックス組成物を得た。
なお、乳化時の攪拌所要動力の最大値をクランプ式動力計(クランプオンパワーハイテスタ3169、日置電気社製)を用いて実測したところ、4.29kW/m
3であった。
【0087】
(実施例14)
実施例1に記載のパドル翼の回転数を25rpmとしたこと以外は、実施例1に準じて乳化をおこない、プレミックス組成物を得た。
なお、乳化時の攪拌所要動力の最大値をクランプ式動力計(クランプオンパワーハイテスタ3169、日置電気社製)を用いて実測したところ、0.45kW/m
3であった。
【0088】
(実施例15)
実施例1に記載の水相の滴下時間を45分としたこと以外は、実施例1に準じて乳化をおこない、プレミックス組成物を得た。
なお、乳化時の攪拌所要動力の最大値をクランプ式動力計(クランプオンパワーハイテスタ3169、日置電気社製)を用いて実測したところ、1.46kW/m
3であった。
【0089】
(実施例16)
18−MEA(18−メチルエイコサン酸を含む脂肪酸及び分岐脂肪酸混合物、平均分子量:364.3、融点35〜55℃、クローダジャパン社製)24.50kg、ムサシノ乳酸90(乳酸、純度90%、分子量:90.08、融点18℃、武蔵野化学研究所社製)1.68kg、ファーミンDM E−80(N,N−ジメチルオクタデシロキシプロピルアミン、純度90%、分子量355.63、花王社製)33.18kg及びDPG−RF(ジプロピレングリコール、融点−40℃、ADEKA社製)73.50kgを配合槽(T.K.アヂホモミクサー、プライミクス社製)に入れ、槽内温度が80℃までパドル翼による攪拌で加熱し、原料を完全溶解した。この油相中に、配合槽への総仕込量が700kgとなるように水相として80℃に加熱したイオン交換水567.14kgを77分かけて定量滴下し、80℃、攪拌回転数40rpmの条件で乳化をおこなった。その後5℃の冷媒により30℃以下まで冷却し、プレミックス組成物を得た。
なお、乳化時の攪拌所要動力の最大値をクランプ式動力計(クランプオンパワーハイテスタ3169、日置電気社製)を用いて実測したところ、1.37kW/m
3であった。
【0090】
(実施例17)
18−MEA(18−メチルエイコサン酸を含む脂肪酸及び分岐脂肪酸混合物、平均分子量:364.3、融点35〜55℃、クローダジャパン社製)3.85kg、ムサシノ乳酸90(乳酸、純度90%、分子量:90.08、融点18℃、武蔵野化学研究所社製)0.26kg、ファーミンDM E−80(N,N−ジメチルオクタデシロキシプロピルアミン、純度90%、分子量355.63、花王社製)5.22kg及びDPG−RF(ジプロピレングリコール、融点−40℃、ADEKA社製)11.55kgを配合槽(スーパーミックス MR205、佐竹化学機械工業社製)に入れ、槽内温度が80℃までパドル翼による攪拌で加熱し、原料を完全溶解した。この油相中に、配合槽への総仕込量が110kgとなるように水相として80℃に加熱したイオン交換水89.12kgを30分かけて定量滴下し、80℃、攪拌回転数90rpmの条件で乳化をおこなった。その後、5℃の冷媒により30℃以下まで冷却し、プレミックス組成物を得た。
なお、乳化時の攪拌所要動力の最大値をクランプ式動力計(クランプオンパワーハイテスタ3169、日置電気社製)を用いて実測したところ、1.53kW/m
3であった。
【0091】
(比較例1)
実施例1に記載のパドル翼の回転数を10rpmに変更し、加熱したイオン交換水を71分かけて定量滴下したこと以外は、実施例1に準じて乳化をおこない、プレミックス組成物を得た。
なお、乳化時の攪拌所要動力の最大値をクランプ式動力計(クランプオンパワーハイテスタ3169、日置電気社製)を用いて実測したところ、0.08kW/m
3であった。
【0092】
(比較例2)
実施例1に記載のパドル翼の回転数を80rpmに変更し、加熱したイオン交換水を15分かけて定量滴下したこと以外は、実施例1に準じて乳化をおこない、プレミックス組成物を得た。
なお、乳化時の攪拌所要動力の最大値をクランプ式動力計(クランプオンパワーハイテスタ3169、日置電気社製)を用いて実測したところ、11.0kW/m
3であった。
【0093】
(比較例3)
配合槽(T.K.アヂホモミクサー、プライミクス社製)に水相として配合槽への総仕込量が110kgとなるようにイオン交換水89.12kgを入れ槽内温度が80℃までパドル翼による攪拌で加熱した後、18−MEA(18−メチルエイコサン酸を含む脂肪酸及び分岐脂肪酸混合物、平均分子量:364.3、融点35〜55℃、クローダジャパン社製)3.85kg、ムサシノ乳酸90(乳酸、純度90%、分子量:90.08、融点18℃、武蔵野化学研究所社製)0.26kg、ファーミンDM E−80(N,N−ジメチルオクタデシロキシプロピルアミン、純度90%、分子量355.63、花王社製)5.22kg及びDPG−RF(ジプロピレングリコール、融点−40℃、ADEKA社製)11.55kgを含む原料を80℃で完全溶解することで得られる油相を配合槽中の水相に80分かけて定量滴下し、80℃、攪拌回転数35rpmの条件で乳化をおこなった。その後、5℃の冷媒により30℃以下まで冷却し、プレミックス組成物を得た。
なお、乳化時の攪拌所要動力の最大値をクランプ式動力計(クランプオンパワーハイテスタ3169、日置電気社製)を用いて実測したところ、1.78kW/m
3であった。
【0094】
(プレミックスの評価)
(1)各例で得られたプレミックスにおけるベシクル形成の有無は偏光顕微鏡観察により評価した。
◎:ベシクル構造由来の明瞭なマルテーゼクロス(Maltese Cross)が観察される
○:ベシクル構造由来のマルテーゼクロスが観察される
×:ベシクル構造由来のマルテーゼクロスが観察されない
(2)各例で得られたプレミックス中のベシクルの平均粒径は、ベックマンコールター社製のMultisizer
TM4を用いて25℃で測定した。なお、平均粒径は体積基準のメディアン径(D50)を用いた。
【0095】
(リンスの調製)
実施例1〜17および比較例1〜3で得られたプレミックス組成物を用いてリンスの調製をおこなった。500mLビーカーに水相としてイオン交換水301.40g、ムサシノ乳酸90(乳酸、純度90%、分子量:90.08、融点18℃、武蔵野化学研究所社製)を2.36g入れ、55℃までプロペラで攪袢下加熱した。その後、ファーミンDM E−80(N,N−ジメチルオクタデシロキシプロピルアミン、純度90%、分子量355.63、花王社製)を9.29g、カルコール8098(ステアリルアルコール、花王社製)21.00g、DPG−RF(ジプロピレングリコール、融点−40℃、ADEKA社製)5.95gからなる油相を80℃で均一溶解した後、水相中に添加し、10分間300rpmで攪拌して乳化した。35℃以下まで放冷してベースリンスを調製した後、前述のプレミックス10.00gを添加し、リンスとした。
【0096】
(リンスの評価方法)
コールドパーマ、ブリーチ等の美容処理をおこなった日本人女性の毛髪20g(約15.20cm)を束ね、シャンプーで洗浄した。この毛髪に実施例1〜15および比較例1〜2で調製したリンス2gを均一に塗布し、30秒間流水ですすぎ流した後、タオルドライを行い、さらにドライヤー乾燥を行った毛髪の「すすぎ時のなめらかさ、ぬるつきのなさ」および「乾燥後のなめらかさ、べたつきのなさ」について官能評価をおこなった。
評価は専門パネラー5人が5段階評価をおこない、その平均値を取った。平均点が3点以上であれば合格品とした。
【0097】
(評価基準)
「すすぎ時のなめらかさ、ぬるつきのなさ」
5:すすぎ時のなめらかさ、ぬるつきのなさ共に優れる
4:すすぎ時のなめらかさ、ぬるつきのなさ共に良好
3:すすぎ時のなめらかさ又はすすぎ時のぬるつきのなさのどちらかが良好
2:すすぎ時のなめらかさ又はすすぎ時のぬるつきのなさのどちらかが劣る
1:すすぎ時のなめらかさ、ぬるつきのなさのどちらも劣る
【0098】
「乾燥後のなめらかさ、べたつきのなさ」
5:乾燥後のなめらかさ、べたつきのなさ共に優れる
4:乾燥後のなめらかさ、べたつきのなさ共に良好
3:乾燥後のなめらかさ又は乾燥後のべたつきのなさのどちらかが良好
2:乾燥後のなめらかさ又は乾燥後のべたつきのなさのどちらかが劣る
1:乾燥後のなめらかさ、べたつきのなさのどちらも劣る
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
【表3】
【0102】
【表4】