【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度から20年度の独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構との共同研究“無曝気・省エネルギー型次世代水資源循環技術の開発”、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
嫌気性生物を用いて被処理水をメタン発酵処理して、メタンガスを含む発生ガス、メタン発酵処理水及びメタン発酵処理汚泥を得るメタン発酵処理工程と、好気性生物を用いて前記メタン発酵処理水を生物学的酸化分解処理して好気性生物処理水及び好気性生物処理汚泥を得る好気性生物処理工程と、前記好気性生物処理汚泥の一部又は全部を酸発酵処理して酸発酵処理汚泥を得る酸発酵処理工程と、該酸発酵処理汚泥を、混合脱ガス槽で発酵ガスを分離した後、前記メタン発酵処理工程の入り口側に、前記メタン発酵処理工程におけるスカムの発生を抑制するために供給する工程と、を備えた有機性排水の処理方法。
被処理水(原水)を固液分離して分離水と分離汚泥を得、該分離汚泥或いは該分離汚泥を濃縮した濃縮分離汚泥を、好気性生物処理汚泥の一部とともに酸発酵処理して酸発酵処理汚泥を得、該酸発酵処理汚泥を前記分離水と共にメタン発酵処理工程の入り口側に供給することを請求項1又は2に記載の有機性排水の処理方法。
上向流汚泥床式メタン発酵水槽と、該メタン発酵水槽から出たメタン発酵処理水を、好気性生物を用いて生物学的酸化分解処理する好気性生物処理槽と、好気性生物処理槽から出た好気性生物処理汚泥の一部を酸発酵処理する酸発酵処理槽と、該酸発酵処理槽から出た酸発酵処理汚泥を、混合脱ガス槽に供給して発酵ガスを分離した後、メタン発酵処理槽の入り口側に、前記メタン発酵処理槽におけるスカムの発生を抑制するために供給する供給手段と、を備えた有機性排水の処理装置。
上向流汚泥床式メタン発酵水槽の入り口側に、被処理水を固液分離して分離水と分離汚泥を得る固液分離装置を配置し、該分離汚泥或いは該分離汚泥を濃縮した濃縮分離汚泥を、好気性生物処理汚泥の一部とともに酸発酵処理槽に供給し、酸発酵処理槽から出た酸発酵処理汚泥を、前記分離水と共に前記メタン発酵処理槽の入り口側に供給することを請求項8〜10の何れかに記載の有機性排水の処理装置。
【背景技術】
【0002】
有機性排水の処理方法として、好気性生物処理、嫌気性生物処理が挙げられる。嫌気性生物処理の中でメタン発酵処理は、酸素のない嫌気性環境下で生育する嫌気性微生物の代謝反応を利用して、有機物をメタンガスや炭酸ガスなどに分解する生物処理方法である。
【0003】
メタン発酵処理は、好気性生物処理と比べて、汚泥発生量が少なく、ブロワ−(曝気)などの電気代が不要なためランニングコストがかからない。また、発生したメタンガスを有効利用できたりするなどのメリットがあるため、近年、下水処理、し尿処理、産業排水処理等の分野などで普及している。
【0004】
メタン発酵処理の種類としては、例えばUASB(Upflow Anaerobic Sludge Blanket(上向流嫌気性汚泥床)の略)法、固定床法、流動床法等のメタン発酵処理方式などが知られている。中でも、UASB法は、嫌気性微生物の自己造粒機能を利用して、沈降性の優れたグラニュ−ル汚泥を槽内に高濃度に保持でき、CODcr負荷10〜30kg/m
3/dのような高い負荷をかけることができため、有機性排水の処理方法として国内外で普及している方法である。
【0005】
メタン発酵処理は、前述のように好気性生物処理と比較して、曝気が不要なため運転動力費用が安価であるばかりか、生成したメタンガスを各種発電設備の燃料として利用できるなどのメリットがある。その一方で、メタン発酵処理のみでは、有機物が残存するため河川などに直接放流できる水質までに浄化することができないというデメリットを抱えていた。
このため、メタン発酵処理後、活性汚泥法などの好気性生物処理を行ない、放流基準を満足する水質まで浄化した後、河川に放流することが提案されている。
【0006】
メタン発酵処理と好気性生物処理とを組み合わせた処理として、例えば特許文献1には、工場等から排出される排水を、嫌気性微生物を利用した嫌気性処理工程において排水中の有機物をメタンガスに分解することで燃料としての再利用を図った後、好気性微生物を利用した好気性生物処理工程においてリンや窒素などの無機物を除去し、環境への悪影響を与える化学物質を除去した上で放流する方法が開示されている。
【0007】
特許文献2には、被処理水をメタン発酵処理し、処理後の消化液を活性汚泥法による好気性生物処理する有機性排水処理方法であって、前記被処理水の有機物濃度が、設定濃度以上であればメタン発酵処理を行い、前記設定濃度に達しない場合は前記消化液と共に好気性生物処理することを特徴とする有機性排水処理方法が開示されている。
【0008】
特許文献3には、排水に対して酸生成工程とメタン発酵工程と好気性生物処理工程とを順次行う排水の処理方法において、前記酸生成工程に供給される排水を、前記メタン発酵工程が終了し前記好気性生物処理工程に送出される処理水と熱交換させることにより予熱することを特徴とする排水の処理方法が開示されている。
【0009】
このようにメタン発酵処理と好気性生物処理とを組合わせることにより、比較的安価に有機性排水を放流基準に適合する水質まで浄化することができるばかりか、燃料などとして利用可能なメタンを回収することができるため、環境的なメリットと経済的なメリットの両面で利点があった。しかし、後工程の好気性生物処理方法では、微生物は、取り込んだ有機物の一部を酸化分解し、残りの有機物は汚泥に変換されて余剰汚泥として排出されることになり、難脱水性の余剰汚泥が大量に生成するという課題を抱えていた。
【0010】
そこで従来から、このような余剰汚泥の減容化を行う処理方法として、例えば、曝気槽又は沈殿槽から余剰汚泥を引き抜き、この引抜汚泥をオゾン処理、加熱処理、酸またはアルカリ処理等の改質処理により易生物分解性に改質し、改質された汚泥を曝気槽に返送して生物分解させる方法などが提案されている(例えば特許文献4)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<本処理方法A>
図2は、本実施形態の一例に係る有機性排水の処理方法A(「本処理方法A」と称する)の装置並びに工程の一例を示した図である。
【0021】
本処理方法Aは、酸発酵処理工程から供給される酸発酵処理汚泥と被処理水(原水)とを混合すると共に、当該酸発酵処理汚泥中の発酵ガスを抜いて脱ガス混合水を得る混合脱ガス工程と、脱ガス混合水をメタン発酵処理し、メタンガスを含む発生ガス、メタン発酵処理水及びメタン発酵処理汚泥を得るメタン発酵処理工程と、メタン発酵処理水を好気性生物処理して、好気性生物処理水と好気性生物処理汚泥を得る好気性生物処理工程と、好気性生物処理汚泥の一部(余剰汚泥)を必要に応じて濃縮して濃縮余剰汚泥を得る余剰汚泥濃縮工程と、好気性生物処理汚泥若しくは濃縮余剰汚泥を酸発酵処理して酸発酵処理汚泥を得、該酸発酵処理汚泥を前記混合脱ガス工程に供給する酸発酵処理工程と、を備えた有機性排水の処理方法である。
【0022】
本処理方法Aを実施するための装置としては、例えば、混合脱ガス槽1、メタン発酵処理装置2、好気性生物処理装置3及び酸発酵処理装置4を備えており、被処理水(原水)を供給する被処理水供給管5が混合脱ガス槽1の入り口側に接続され、混合脱ガス槽1の出口側には混合水供給管6を介してメタン発酵処理装置2が接続され、メタン発酵処理槽2の出口側には発生ガス排出管7、メタン発酵処理水供給管8及びメタン発酵処理汚泥排出管9が接続され、当該発生ガス排出管7は発生ガス処理装置10に接続され、当該メタン発酵処理水供給管8は好気性生物処理装置3の入り口側に接続され、当該メタン発酵処理汚泥排出管9は脱水装置11に接続され、好気性生物処理装置3の出口側には好気性生物処理液排出管12が接続され、当該好気性生物処理液排出管12は固液分離装置13の入り口側に接続され、固液分離装置13の出口側には好気性生物処理水排出管14と好気性生物処理汚泥供給管15が接続され、好気性生物処理汚泥供給管15は途中で分岐して、一方は、好気性生物処理装置3の入り口側に接続され、他方は濃縮装置16に接続され、この濃縮汚泥供給管17は酸発酵処理装置4の入り口側に接続され、酸発酵処理装置4の出口側には酸発酵処理汚泥供給管18が接続され、この酸発酵処理汚泥供給管18は前記混合脱ガス槽1の入り口側に接続されてなる構成を備えた装置を挙げることができる。
但し、上記濃縮装置16は必要に応じて設置すればよく、常に必要である訳ではない。
【0023】
以下、各工程及びそれを実施するための設備について詳述する。
【0024】
(原水)
被処理水(原水)としては、低濃度有機性排水、具体的にはCODcr値が1000mg/L以下、特に300mg/L以上或いは600mg/L以下の有機性排水が本処理方法に適している。
ちなみに、下水は一般的にCODcr濃度400〜1000mg/Lの低濃度有機性排水である。
【0025】
また、本処理方法Aは、比較的低温の水温でも効果的に実施できる特徴を有しているものの、メタン発酵槽内の水温が18℃以上の場合、特に20〜25℃以上である場合に実施するのが特に好ましい。
同様の観点から、被処理水(原水)が18℃以上、特に20〜25℃以上であるのが特に好ましい。
【0026】
(混合脱ガス工程及び装置)
混合脱ガス工程では、被処理水供給管5を通じて混合脱ガス槽1に供給されてきた被処理水(原水)と、酸発酵処理工程から酸発酵処理汚泥供給管18を通じて混合脱ガス槽1に供給されてきた酸発酵処理汚泥とを、混合脱ガス槽1において混合すると共に、酸発酵処理汚泥中の発酵ガスを抜き、得られた脱ガス混合水を、混合水供給管6を通じてメタン発酵処理装置2に供給する。
【0027】
混合脱ガス槽1は、発酵ガスを分離するガス分離手段を備えているのが好ましい。発酵ガスとは、主にCO
2ガスであり、一部H
2ガスを含むガスである。発酵ガスがメタン発酵処理装置2に流入すると、汚泥の浮上が促進されるため、汚泥と嫌気性生物が十分に接触しないうちに汚泥が浮上することになり、メタン発酵処理装置2内でスカムの発生が促されることになる。そこで、メタン発酵処理工程の前工程で、予め酸発酵処理汚泥中の発酵ガスを分離除去することにより、メタン発酵処理装置2でのスカムの発生を抑制することができる。
【0028】
ここで、発酵ガスを分離するガス分離手段としては、例えば、被処理水(原水)と酸発酵処理汚泥とを混合する混合槽に該混合水を一時的に滞留させ、大気と接触させることにより、該混合水から発酵ガスを分離除去できるようにした構成のものを挙げることができる。さらに、混合水を迂流、自然流下、オーバーフロー等させて、含有する発酵ガスの分離を促進させるようにしてもよい。また、混合槽内部に撹拌機を設けるようにしてもよい。
【0029】
(メタン発酵処理工程及び装置)
メタン発酵処理工程では、混合脱ガス槽1から供給された脱ガス混合水を、メタン発酵処理装置2においてメタン発酵処理し、メタンガスを含む発生ガス、メタン発酵処理水及びメタン発酵処理汚泥を得、前記発生ガスを発生ガス排出管7を通じて発生ガス処理装置10に供給する一方、前記メタン発酵処理水を、メタン発酵処理水供給管8を通じて好気性生物処理装置3に供給し、前記メタン発酵処理汚泥をメタン発酵処理汚泥排出管9を通じて脱水装置11に供給する。
【0030】
ここで、メタン発酵処理とは、ORPが−400mV以下の範囲で行なう嫌気性生物学的処理であり、嫌気性微生物によって有機物をメタンガスと二酸化炭素まで分解し、発生したメタンガスをエネルギーとして有効利用できるようにする処理である。
【0031】
本処理方法Aのメタン発酵処理法としては、例えば上向流嫌気性汚泥床法(UASB)、固定床法、流動床法など公知の方法を適宜採用可能である。中でも、上向流嫌気性汚泥ろ床法(UASB)を採用するのが好ましい。
【0032】
上向流嫌気性汚泥ろ床法(UASB)は、嫌気性微生物の集塊作用を利用して活性の高い菌体をグラニュール(直径2〜3mmの粒状汚泥、糸状性の酢酸資化性メタン生成属細菌が中心となった緻密なフロック)として反応槽に大量に保持する方法で,反応槽の下部から排水(被処理水)を注入して嫌気状態で排水中の有機物を分解させる方法である。
上向流嫌気性汚泥ろ床法(UASB)は、嫌気性微生物の自己造粒機能を利用して沈降性の優れたグラニュール汚泥を槽内に高濃度で保持できるため、CODcr負荷を高めることができる。しかも、通常の嫌気性処理に比べて、比較的低濃度の排水にも適用できるうえ、高速の処理が可能で、且つ曝気を必要としないため、わずかな電力で運転でき、副産物として大量のメタンガスを生成することができる。その反面、低濃度排水の場合には、CODcr負荷を高くとるために、多量の排水を槽内に供給する必要があり、この排水の水流によってメタン発酵槽内の汚泥床が系外に流出してしまう場合がある。そこで、メタン発酵槽内の汚泥床を高濃度に維持するためには、メタン発酵槽への通水量を制限するのが好ましい。UASB槽内のグラニュール汚泥を維持させるためには、通水速度を0.5〜2.0m/hとするのが好ましく、特に0.75〜1.5m/hとするのがより一層好ましい。
したがって、UASB法をCODcr1000mg/L以下の低濃度排水に適用した場合、通水速度を下げる必要があるため、CODcr負荷は1〜2kg/m
3/dと低くなる。
【0033】
メタン発酵処理装置2の好ましい一例として、
図5に示すような、上向流嫌気性汚泥ろ床法(UASB)を実施することのできるメタン発酵槽30(「UASB装置30」とも称する)を挙げることができる。
メタン発酵槽30は、その内部に、汚泥床32、気固液分離部(GSS)33およびメタン発酵処理水を分離する越流堰34を備え、メタン発酵槽30の上部を覆う覆蓋35を備え、さらに、混合脱ガス槽1からの脱ガス混合水を供給する混合水供給管6がメタン発酵槽30の底部に接続され、汚泥を移送するメタン発酵処理汚泥排出管9がメタン発酵槽30の下部に接続され、越流堰34内に流入するメタン発酵処理水を好気性生物処理装置3に供給するメタン発酵処理水供給管8が越流堰34に接続され、発生ガスを発生ガス処理装置10に供給する発生ガス排出管7が気固液分離部(GSS)33に接続されてなる構成を備えている。
【0034】
メタン発酵槽30においては、混合脱ガス槽1からの脱ガス混合水がメタン発酵槽30の下部から流入し、汚泥床32すなわち下部に沈殿しているグラニュールの層に均一に拡散して、被処理水に含まれた有機物や、酸発酵により生成した溶解性有機物、酢酸・プロピオン酸等の有機酸は、メタン発酵槽30内の嫌気性菌によってメタンガスと二酸化炭素ガスに分解される。そして、これらの発生ガスとグラニュールは、処理水とともに浮上し、気固液分離部(GSS)33よって発生ガス、メタン発酵処理汚泥(グラニュール)、メタン発酵処理水などに分離される。そして、前記発生ガスは、発生ガス排出管7を通じて発生ガス処理装置10に供給され、エネルギー源として利用される。前記メタン発酵処理水は、メタン発酵処理水供給管8を通じて好気性生物処理装置3に供給され、前記メタン発酵処理汚泥はメタン発酵処理汚泥排出管9を通じて脱水装置11に供給されて減容化されて系外に排出される。
【0035】
本処理方法Aでは、前述したように、混合脱ガス槽1にて、予め酸発酵処理汚泥中の発酵ガスを分離除去しているため、メタン発酵槽30でのスカム(浮上汚物)の発生を抑制することができる。
【0036】
下水のような低濃度有機性排水をUASB処理する場合には、汚泥床(スラッジゾーン)を確保するために通水速度が制限されるため、CODcr容積負荷は1kg/m
3/dと低い有機物負荷となる。一方、食品産業排水のような高濃度有機性排水のUASB処理では、CODcr容積負荷は10〜20kg/m
3/dと高い有機物負荷となる。すなわち、低濃度有機性排水は、高濃度有機性排水に比べ、有機物負荷が1/10〜1/20と低く、嫌気性菌の密度が低くなり、汚泥床のグラニュール汚泥の粒径は0.1〜0.5mmと小さなものになる。
このように低濃度有機性排水をUASB処理する場合には、グラニュ−ル汚泥の沈降速度と流入SSの沈降速度の差が、高濃度有機性排水に適用されている従来のUASBグラニュ−ル汚泥に比べて小さいため、流入するSS濃度、排水の性状によっては、メタン発酵槽30内でのスカムの発生量が多くなり、メタン発酵槽30内の汚泥の維持が困難になる可能性がある。
こうした理由から、メタン発酵処理の被処理水、すなわち脱ガス混合水のSS濃度は2000mg/L以下であるのが好ましく、中でも1000mg/L以下であるのが特に好ましい。そして、脱ガス混合水のSS濃度を2000mg/L以下、中でも1000mg/L以下とすることが好ましい。
【0037】
前述のようにUASB法を低濃度排水に適用すると、汚泥床のグラニュール汚泥の粒径は0.1〜0.5mmと小さくなり、沈降速度も小さくなるため、流入SS濃度の影響を受けやすくなる。そのため、以下の2つの改善方法のいずれかを採用するのが好ましい。但し、必ずしも採用しなくてもよい。
(1)沈降性のよい粒径0.1mm〜1.0mm、好ましくは0.2mm〜0.7mmの砂やゼオライト、活性炭等の担体を、汚泥床容量に対して1〜10%、好ましくは5〜7%の割合で汚泥床に添加する。
(2)有機性排水に由来する被処理水に、Fe塩を好ましくは1〜20mg/L(asFe)、中でも好ましくは5〜10mg/L(asFe)の割合で添加する。
【0038】
前記(1)の方法では、担体に嫌気性菌を付着させることで、汚泥床における嫌気性菌の割合を高めることが可能となる。
前記(2)の方法では、Fe塩以外にCa塩なども適用することができる。
【0039】
メタン発酵槽30内の水温は、18℃以上であるのが好ましく、特に20℃以上、中でも特に20〜30℃であるのが好ましい。
また、メタン生成の段階で中心的役割を果たすメタン生成菌は、中性付近のpHを好むため、好ましくはpH6〜8に調整するのが好ましい。
【0040】
また、メタン生成細菌には、活性温度によっていくつかの種類に分類されるが、本処理方法Aでは、活性温度が20〜30℃のメタン生成菌を用いるのが好ましい。
【0041】
図6は、メタン発酵処理装置の変形例としてのメタン発酵槽40を示した図である。
メタン発酵槽40は、
図5に示したメタン発酵槽30と対比すると、メタン発酵槽40内部に気固液分離部(GSS)33を設けず、気体を透過しない材料からなる屋根材41でメタン発酵槽30の上部を密閉被覆し、屋根材41とメタン発酵槽30との接続部分にガス排気口42を設け、このガス排気口42に発生ガス排出管7を連結して反応ガスを排出可能とした構成を備えた装置である。
但し、ガス排気口42を設ける位置は任意に設計可能である。例えば屋根材41のいずれかに設けてもよいし、メタン発酵槽30の上部に設けてもよい。
【0042】
被処理水(原水)が下水である場合、上述のように一般的にCODcr濃度400〜1000mg/Lの低濃度有機性排水であるため、メタン発酵処理槽(UASB槽)でのCODcr容積負荷が1kg/m
3/dと低く、食品製造排水のような高濃度有機性排水のメタン発酵処理に比べ、発生ガスの量は少ない。そのため、
図5に示した装置のような気固液分離部(GSS)33を設けなくても、発生ガス回収し排出することができる。
【0043】
図7は、メタン発酵処理装置のさらなる変形例としてのメタン発酵槽50を示した図である。
メタン発酵槽50は、
図6に示したメタン発酵槽40と対比すると、メタン発酵槽50内部の超流堰34と同じ高さであって、超流堰34の内側部分に、スカムを集めるスカム捕集枠51を設けた構成を備えた装置である。
【0044】
スカム捕集枠51は、
図8に示すように、メタン発酵槽50の対向する内壁に渡って固定するようにしてもよいし、また、スカム捕集枠51に昇降手段52を設け、必要に応じてスカム捕集枠51を超流堰34と同じ高さに配置したり、液面の上方に配置したりするように構成することもできる。
【0045】
(好気性生物処理工程及び装置)
好気性生物処理工程では、メタン発酵処理水供給管8を通じて供給されたメタン発酵処理水を、好気性生物処理装置3において、好気性生物を用いて前記メタン発酵処理水を生物学的酸化分解処理し、得られた好気性生物処理水と好気性生物処理汚泥の混合処理液を、好気性生物処理液排出管12を通じて固液分離装置13に供給し、固液分離装置13において、好気性生物処理水と好気性生物処理汚泥に分離し、前者の好気性生物処理水は好気性生物処理水排出管14を通じて系外に排出し、後者の好気性生物処理汚泥は、好気性生物処理汚泥供給管15を通じて、その一部を好気性生物処理装置3の入り口側に返送し、他方(これを「余剰汚泥」と称する)を濃縮装置16若しくは酸発酵処理装置4に供給する。
【0046】
好気性生物処理は、溶存酸素が十分ある環境下で、好気性微生物によって、有機性物質、アンモニア性窒素等を酸化分解する方法である。
本処理方法Aが採用し得る好気性処理方法としては、例えば曝気によって生物フロックを浮遊させた状態で有機物質を生物学的酸化分解する方法(活性汚泥法に代表される)や、担体に微生物を付着増殖させて生物膜を形成させ、これを排水に接触させて生物学的酸化分解する方式(生物膜法に代表される)など、公知のいずれの方法も採用可能である。
中でも、本処理方法Aでは、下水などの低濃度有機性排水を好適に処理できる観点から活性汚泥法が好ましい。活性汚泥法は、活性汚泥と呼ばれるさまざまな好気性微生物や有機性物質や無機性物質などからなるゼラチン状のフロックを用いた処理方法である。
【0047】
好適な好気性生物処理装置3としては、微生物による有機物の酸化分解によって消費される酸素を大量に供給するための曝気装置を付属した処理槽と、汚泥と処理水とを分離する汚泥沈殿槽とを備えたものを挙げることができる。
例えば、被処理水中の浮遊物質など除去する最初沈殿池と、活性汚泥と混合すると共に曝気し、微生物の代謝によって有機物を分解する曝気槽と、汚泥と処理水とを分離するための汚泥沈殿槽とを備えた好気性生物処理装置3を例示することができる。但し、公知の好気性生物処理装置であれば採用可能である。
【0048】
次に、固液分離装置13としては、例えば沈殿池、遠心分離機、膜分離等の固液分離装置を挙げることができる。下水のような大水量で低SS濃度の固形物を無薬注にて固液分離するためには、設備面、維持管理面からみてスケ−ルアップ容易であること、ランニングコストが低く、維持管理が容易であることなどから、沈殿池が適している。固液分離装置13は、従来の活性汚泥処理で用いられている最初沈殿池であってもよい。
【0049】
また、通常の好気性生物処理装置3では、好気性生物が好気性生物処理汚泥と共に流出(wash out)してしまうため、本処理方法Aでは、固液分離装置13において、好気性生物処理水と好気性生物処理汚泥に分離し、
図2に示すように、好気性生物処理汚泥の一部を好気性生物処理装置3の入り口側に返送するのが好ましい。
【0050】
(余剰汚泥濃縮工程)
固液分離装置13で分離された好気性生物処理汚泥の一部(余剰汚泥)は、必要に応じて濃縮装置16に供給され、濃縮装置16において濃縮して濃縮余剰汚泥とし、濃縮汚泥供給管17を通じて酸発酵処理装置4に供給する。
【0051】
なお、当該余剰汚泥濃縮工程は必ずしも必要な工程ではない。例えば膜分離活性汚泥法(Membrane Bioreactor:MBRと略す)のように沈殿池のかわりに精密ろ過膜(MF膜)や限外ろ過膜(UF膜)を使う場合には、曝気槽のMLSS濃度が5000〜10000mg/Lに高濃度になるため、余剰汚泥濃縮工程は必ずしも必要とならない。通常は沈殿池を用いる場合が多いため、余剰汚泥を濃縮した上で酸発酵処理工程に供給するのが好ましい。
【0052】
(酸発酵処理工程及び装置)
酸発酵処理装置4では、好気性生物処理汚泥(余剰汚泥)若しくは濃縮余剰汚泥を酸発酵処理して酸発酵処理汚泥を得、該酸発酵処理汚泥を、酸発酵処理汚泥供給管18を通じて混合脱ガス槽1に供給する。
【0053】
酸発酵処理では、好気性生物処理汚泥若しくは濃縮余剰汚泥中の有機物の一部を、酢酸、プロピオン酸等の有機酸に低分子化することができる。
【0054】
酸発酵処理において、酸生成に関与する微生物は通性嫌気菌であり、ORPが−200〜50mVの範囲で生育させるのが好ましい。
【0055】
酸発酵処理装置4は、汚泥を撹拌することができる手段を備えているのが好ましい。撹拌手段としては、撹拌機を設置してもよく、空気等のガスを曝気してもよい。
【0056】
酸発酵処理装置4は、酸発酵槽内を加温する手段を備えているものが好ましい。この際、加熱用の熱源として、メタン発酵槽30から回収されたメタンガスg1をボイラーで蒸気に変換して利用することもできる。
酸発酵処理工程で被処理物を加温することは、例えばメタン発酵処理装置2において被処理水を直接加温する場合に比べ、加温に必要なエネルギーを減らすことができる。そればかりか、酸発酵槽においては、濃縮汚泥中に含まれる固形物(SS分)の一部は、加水分解、有機酸発酵を経て、溶解性の有機物(酢酸、プロピオン酸等)に変換されるため、こうした物質の存在によりメタン菌の活性を維持し、低水温の有機性排水であってもメタン発酵処理を良好に行なうことができる。
【0057】
酸発酵処理装置4内の温度は、好ましくは20〜35℃、下水水温と発生ガスの熱エネルギ−から判断すると、より好ましくは20〜25℃の範囲である。
このように、酸発酵処理装置4に流入した好気性生物処理汚泥若しくは濃縮余剰汚泥は、外部熱源により20℃以上に加温して酸発酵処理するのが好ましい。こうして、酸発酵処理装置4では、有機性排水中に含まれる、そのままの状態では微生物が分解できない固形物(SS分)が、酸生成菌による有機酸発酵を経て、溶解性の有機物(プロピオン酸、酢酸等)に変換される。
【0058】
酸発酵処理での酸発酵処理槽の最適なHRT(Hydraulic Retention Time:水理学的滞留時間)は、溶解性有機物濃度(Soluble CODcr:S−CODcrと略す)および酢酸・プロピオン酸・乳酸等の有機酸の生成量により決定するのが好ましい。
すなわち、固形性有機物が可溶化した割合をCODcrの可溶化比(S−CODcr/CODcr)と定義し、溶解性有機酸CODcr中に含有する有機酸の割合を(asCODcr)/S−CODcr比として定義した場合において、CODcrの可溶化比及び有機酸(asCODcr)/S−CODcr比が一定値を示したときのHRTを最適HRTとするのが好ましい。
【0059】
例えば、最初沈殿池汚泥の場合、酸発酵槽の温度20℃、HRT2日〜3日で、S−CODcr/CODcr比は0.15〜0.20(−)、有機酸(asCODcr)/S−CODcr比は0.3〜0.4となり、酸発酵槽の温度25℃、HRT1日〜2日では、S−CODcr/CODcr比は0.15〜0.20(−)、VFA(asCODcr)/S−CODcrは0.55〜0.65となる。
一方、UASBの濃縮汚泥の場合、酸発酵槽の温度20℃、HRT2日〜3日で、S−CODcr/CODcr比は0.10〜0.20(−)、VFA(asCODcr)/S−CODcr比は0.13〜0.20となり、酸発酵槽の温度25℃、HRT1日〜2日で、S−CODcr/CODcr比は0.10〜0.20(−)、VFA(asCODcr)/S−CODcr比は0.35〜0.45となる。
このように、最初沈殿池汚泥、UASB槽の濃縮汚泥共に酸発酵槽の温度が高くなると酸生成菌の活性が上がるため、HRTは短縮され、水温20℃で最適HRTは2〜3日、水温25℃で最適HRTは1〜2日、水温30℃で最適HRTは0.5〜1.5日となる。UASB槽の濃縮汚泥は排水中の有機物がUASB槽で嫌気性菌により一部分解された後のものなので、最初沈殿池汚泥とUASB槽では、濃縮汚泥のS−CODcr/CODcr比、有機酸(asCODcr)/S−CODcr比は、共にUASB槽の濃縮汚泥の方が小さい値になる。
【0060】
酸発酵処理装置4の濃縮汚泥の撹拌は、連続的あるいは間欠撹拌にて行なうことが好ましい。酸発酵処理装置4内のMLSS濃度が20000〜40000mg/Lと高濃度であるため、汚泥を均一に撹拌するための動力がかかる。しかし、撹拌が強いと生成した有機酸が揮発あるいは酸化され減少する。したがって、酸発酵槽の撹拌は間欠に行なうのが好ましい。例えば1〜2時間の撹拌停止後、5〜15分撹拌を行うような間欠撹拌を行なうことが好ましい。
【0061】
<本処理方法B>
図3は、本実施形態の一例に係る有機性排水の処理方法B(「本処理方法B」と称する)の装置並びに工程を示した図である。
【0062】
本処理方法Bを実施するための装置は、
図2に示した本処理方法Aを実施するための装置において、メタン発酵処理汚泥排出管9を分岐し、分岐した一方を脱水装置11に接続し、他方の分岐管20が酸発酵処理装置4の入り口側に接続されている点以外、
図2に示した本処理方法Aを実施するための装置と同様である。
【0063】
本処理方法Bは、上記本処理方法Aにおいて、メタン発酵処理装置2で生じたメタン発酵処理汚泥の一部又は全部を、分岐管20を通じて酸発酵処理装置4に供給し、酸発酵処理装置4において、前記メタン発酵処理汚泥の一部又は全部と好気性生物処理汚泥(余剰汚泥)若しくは濃縮余剰汚泥とを混合し、この混合物を酸発酵処理するようにしている点以外は、上記本処理方法Aと同様である。
【0064】
冬期の日本のように下水の温度が下がる場合、低温の下水を被処理水として本処理方法Aを実施すると、槽内の嫌気性菌の活性が下がり、槽内に懸濁物質(SS)が溜まって、メタン発酵が進行しないようになり、発酵槽内の汚泥界面が上昇して最終的には溢れる可能性がある。この際、被処理水としての下水を加温するには、通水量が多いために多量のエネルギーが必要となるため、現実的ではない。
そこで、本処理方法Bのように、メタン発酵処理汚泥の一部又は全部を、メタン発酵槽から抜き出して酸発酵処理工程に供給するようにすれば、発酵槽内の汚泥界面の上昇を抑えることができるばかりか、酸発酵処理工程で該メタン発酵処理汚泥をメタン発酵し易い酸に変換し、再びメタン発酵処理工程に戻すことができるので、水温が低くて嫌気性菌の活性が下がっていてもメタン発酵処理を促進させることができる。
よって、本処理方法Bは、被処理水(原水)の水温、好ましくはメタン発酵槽内の水温が13℃以上18℃未満の場合に実施するのが特に好ましい。
【0065】
<本処理方法C>
図4は、本実施形態の一例に係る有機性排水の処理方法C(「本処理方法C」と称する)の装置並びに工程を示した図である。
【0066】
本処理方法Cを実施するための装置は、
図2に示した本処理方法Aを実施するための装置において、混合脱ガス槽1の上流側に固液分離装置21を設け、被処理水(原水)を供給する被処理水供給管5を当該固液分離装置21の入り口側に接続し、当該固液分離装置21の出口側に接続された分離水供給管22を混合脱ガス槽1の入り口側に接続する一方、当該固液分離装置21の出口側に接続された分離汚泥供給管23を酸発酵処理装置4の入り口側に接続している点以外は、
図2に示した本処理方法Aを実施するための装置と同様である。
【0067】
本処理方法Cは、被処理水(原水)を固液分離装置21で固液分離し、得られた分離水を混合脱ガス槽1に供給し、混合脱ガス槽1では、当該分離水と酸発酵処理汚泥とを混合すると共に酸発酵処理汚泥中の発酵ガスを抜く処理を行い、得られた混合水を、混合水供給管6を通じてメタン発酵処理装置2に供給する一方、固液分離装置21で得られた分離汚泥は、分離汚泥供給管23を通じて酸発酵処理装置4に供給し、当該分離汚泥と好気性生物処理汚泥の一部(余剰汚泥)とともに酸発酵処理して酸発酵処理汚泥を得、該酸発酵処理汚泥を混合脱ガス槽1に供給する点以外は、上記本処理方法Aと同様である。
【0068】
被処理水の水温が13℃未満の場合、前述した場合よりも嫌気性菌の活性がさらに下がることになる。そこで、被処理水を先ずは固液分離して、分離汚泥或いは該分離汚泥を濃縮した濃縮分離汚泥を酸発酵処理工程に供給してメタン発酵し易い酸に変換した上でメタン発酵処理工程に供給することにより、水温がさらに低くて嫌気性菌の活性がさらに下がっていてもメタン発酵処理を促進させることができる。
【0069】
低濃度有機性排水のメタン発酵処理では、メタン発酵処理槽で発生したメタンガスの40〜60%はメタン発酵処理水に溶存し、系外に排出される。したがって、低濃度有機性排水のメタン発酵処理で得られるメタンガスからの熱エネルギー量には制約がある。また、下水のSS濃度は通常200mg/Lの低濃度であり、この状態(SS200mg/L)で、メタン発酵で発生したガスをボイラ−にて蒸気に変換し加温エネルギ−として利用しても水温を上げることは難しい。
その点、SSを固液分離して濃縮汚泥濃度(20000〜40000mg/L)として、約100〜200倍に濃縮した濃縮汚泥量は少容量となるため、発生ガス中のメタンガスを利用して酸発酵槽内の温度を5℃前後上昇させることは可能となる。
【0070】
<語句の説明>
本明細書において「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【実施例】
【0071】
以下、実施例に基づいて本発明を説明する。ただし、本発明がここで説明する実施例に限定されるものではない。
【0072】
比較例1及び実施例1〜4では、次の低濃度有機性廃水を原水として、季節(1月〜2月、3月〜5月、6月〜10月、11月〜12月)ごとに処理方法を適宜変えながら処理を行い、得られた脱水ケーキ量を比較した。
【0073】
(原水)
実施例及び比較例で処理した原水、すなわち低濃度有機性廃水の性状を表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
(実施例1)
本実施例では、
図2に示した有機性排水の処理方法Aにおいて、酸発酵処理後の発酵ガスのガス抜きをせずに処理を行い、脱水ケーキ量(乾燥重量)を毎日測定し、一日当たりの脱水ケーキ量を求めた。
処理期間は次の期間である。
・中水温期間:3月〜5月及び11月〜12月(UABB槽内水温13℃以上18℃未満)
・高水温期間:6月〜10月(UABB槽内水温18℃以上25℃未満)
【0076】
なお、原水の温度とUABB槽内水温はほぼ同じ温度であったので、UABB槽内水温のみを記載する。この点は、後述する実施例、比較例でも同様である。
【0077】
具体的には、低濃度有機性排水(原水)と、後述する酸発酵処理装置で処理して得た酸発酵処理汚泥とを、通水速度0.5m/hで、
図5に示すようなUASB槽(容量900L)内に供給し、該槽内のCODcr負荷を1.0kg/m
3/dとし、メタン発酵処理を行った。なお、種汚泥は、下水の中温消化汚泥を種汚泥としてUASB法で約一年間馴到した汚泥を用いた。
【0078】
次に、好気性生物処理装置にて、活性汚泥を用いて前記メタン発酵処理水を生物学的酸化分解処理した。この際、好気性生物処理装置3としては、最初沈殿池、曝気槽及び汚泥沈殿槽を備えた好気性生物処理装置3を使用した。
そして、得られた好気性生物処理水と好気性生物処理汚泥の混合処理液を、固液分離装置に供給して、好気性生物処理水と好気性生物処理汚泥に分離し、後者の好気性生物処理汚泥の一部を好気性生物処理装置の入り口側に返送する一方、残りの好気性生物処理汚泥(余剰汚泥)を濃縮装置において濃縮して濃縮余剰汚泥として得た。
【0079】
次に、前記のようにして得た濃縮余剰汚泥を、酸発酵処理装置において、濃縮余剰汚泥を25℃に加熱すると共に撹拌して、ORPが−200〜50mVの範囲で酸発酵処理して酸発酵処理汚泥を得、該酸発酵処理汚泥を前記の混合脱ガス槽に供給した。
この際、酸発酵処理装置としては、酸発酵処理槽(容量10L)と、汚泥を撹拌する手段と、加熱手段を備えたものを使用し、酸発酵処理槽のHRT2日とし、酸発酵槽の撹拌は、1時間の撹拌停止後、5分間撹拌を行うような間欠撹拌を行なった。
【0080】
(実施例2)
本実施例は、
図2に示した有機性排水の処理方法Aにおいて、酸発酵処理後の発酵ガスのガス抜きを行い、脱水ケーキ量(乾燥重量)を毎日測定し、一日当たりの脱水ケーキ量を求めた。
処理期間は次の期間である。
・中水温期間:3月〜5月及び11月〜12月(UABB槽内水温13℃以上18℃未満)
・高水温期間:6月〜10月(UABB槽内水温18℃以上25℃未満)
【0081】
具体的には、CODcr値315〜520mg/Lである低濃度有機性排水(原水)を被処理水とし、先ず混合脱ガス槽において、当該被処理水と、後述する酸発酵処理装置で処理して得た酸発酵処理汚泥とを混合すると共に、酸発酵処理汚泥中の発酵ガスを抜き、脱ガス混合水(SS濃度500〜15000mg/L)を得た。そして、この脱ガス混合水を、通水速度0.5m/hで、
図5に示すようなUASB装置のUASB槽(容量200L)内に供給し、後の工程は、実施例2と同様に処理した。
【0082】
(実施例3)
本実施例は
図3に示した有機性排水の処理方法Bにおいて、酸発酵処理後の発酵ガスのガス抜きを行った実施例である。
処理期間は次の期間である。
・低水温期間:1月〜2月(UABB槽内水温13℃未満)
・中水温期間:3月〜5月及び11月〜12月(UABB槽内水温13℃以上18℃未満)
【0083】
本実施例では、上記実施例2において、メタン発酵処理汚泥の一部(5〜30質量%)を酸発酵処理装置に供給し、酸発酵処理装置において、前記メタン発酵処理汚泥の一部と前記濃縮余剰汚泥とを混合し、この混合物を酸発酵処理するようにしている点以外は、上記実施例1と同様に処理を行った。
なお、メタン発酵処理汚泥の一部と濃縮余剰汚泥との混合割合は質量比率で1:10〜1:3であった。
【0084】
(実施例4)
本実施例は、
図4に示した有機性排水の処理方法Cにおいて、酸発酵処理後の発酵ガスのガス抜きを行い、脱水ケーキ量(乾燥重量)を毎日測定し、一日当たりの脱水ケーキ量を求めた。
処理期間は次の期間である。
・低水温期間:1月〜2月(UABB槽内水温13℃未満)
【0085】
本実施例は、上記実施例2において、混合脱ガス槽の上流側に固液分離装置を配置し、被処理水(原水)を当該固液分離装置で固液分離し、得られた分離水を混合脱ガス槽に供給し、混合脱ガス槽において、当該分離水と酸発酵処理汚泥とを混合すると共に酸発酵処理汚泥中の発酵ガスを抜く処理を行う一方、前記固液分離装置で得られた分離汚泥を酸発酵処理装置に供給し、当該分離汚泥と濃縮余剰汚泥とをともに酸発酵処理した以外は、上記実施例2と同様に処理を行った。
なお、分離汚泥と濃縮余剰汚泥との混合割合は質量比率で0.5:1〜2:1であった。
【0086】
(比較例1)
比較例1は、
図1に示した有機性排水の処理方法において、酸発酵処理工程のない場合の例であり、脱水ケーキ量(乾燥重量)を毎日測定し、一日当たりの脱水ケーキ量を求めた。
処理期間は次の期間である。
・中水温期間:3月〜5月及び11月〜12月(UABB槽内水温13℃以上18℃未満)
・高水温期間:6月〜10月(UABB槽内水温18℃以上25℃未満)
【0087】
具体的には、低濃度有機性排水(原水)を、通水速度0.5m/hで、
図5に示すようなUASB装置のUASB槽(容量200L)内に供給し、該槽内のCODcr負荷を1kg/m
3/dとしてメタン発酵処理を行い、メタンガスを含む発生ガス、メタン発酵処理水及びメタン発酵処理汚泥を得た。
【0088】
次に、前記のようにして得たメタン発酵処理汚泥を、好気性生物処理装置にて、好気性生物を用いて前記メタン発酵処理水を生物学的酸化分解処理した。この際、好気性生物処理装置3としては、最初沈殿池、曝気槽及び汚泥沈殿槽を備えた好気性生物処理装置3を使用した。
そして、得られた好気性生物処理水と好気性生物処理汚泥の混合処理液を、固液分離装置に供給して、好気性生物処理水と好気性生物処理汚泥に分離し、後者の好気性生物処理汚泥の一部を好気性生物処理装置の入り口側に返送する一方、残りの好気性生物処理汚泥(余剰汚泥)を濃縮装置において濃縮して濃縮余剰汚泥として得た。
【0089】
<評価方法>
前記実施例・比較例と同様の低濃度有機性排水(原水)を、
図9に示した処理方法(メタン発酵処理を含まない通常の下水の活性汚泥処理)で、一年を通じて処理し、この処理方法で得られた脱水ケーキ量(乾燥重量)を測定した。
そして、この方法で得られた一日当たりの平均脱水ケーキ量(乾燥重量)を100として、前記実施例及び比較例の値と比較して評価を行った(表3)。
なお、
図9に示した実験装置の使用を表2に示す。
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【0092】
比較例1では、メタン発酵槽の水温13℃以上18℃未満においては、嫌気性菌の活性が低下したため槽内に汚泥が蓄積した。頻繁に汚泥処理を行う必要があった。このため、汚泥発生量の測定は80であった。メタン発酵槽の水温18℃以上25℃未満(中水温期間)では嫌気性菌の活性が上がったため、汚泥発生量は60となった。
【0093】
他方、実施例1では、脱ガス槽を設けなかったため、いずれの温度条件においてもメタン発酵槽内でスカムが発生し、UASB槽内の汚泥床濃度が安定せず、汚泥発生量は中水温期間で78、高水温期間で58であった。
実施例2は、脱ガス槽を設けることで、中水温期間における汚泥発生量が72となり、高水温期間における汚泥発生量が55となった。しかし、水温18℃未満の中水温期間では、嫌気性菌の活性が低下したためメタン発酵槽内に汚泥が蓄積した。そのため、頻繁に汚泥処理を行う必要があった。このように水温18℃以上の高水温期間においては、脱ガス槽を設けることで、UASB槽内の汚泥床の汚泥濃度が安定したため処理が安定した。しかしながら、高水温期間に比べて中水温期間の汚泥発生量は多くなる傾向にあった。
【0094】
実施例3では、UASB槽内の汚泥の一部を酸発酵処理することで、中水温期間における汚泥発生量は58となった。実施例2の中水温期間における汚泥発生量72に比べて低くなった。他方、水温13℃未満の低水温期間になると、嫌気性菌の活性度がさらに低下したため、メタン発酵槽内の汚泥が蓄積した。このため頻繁に汚泥処理を行う必要があった。低水温期間における汚泥発生量は80となり、中水温期間に比べると増加した。
実施例4では、処理方法C(
図4)を適用した。その結果、低水温期間における汚泥発生量は65となり、実施例3の低水温期間に比べて汚泥発生量は低下した。