特許第5873745号(P5873745)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873745
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】水底設置型フラップゲート式防波堤
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/06 20060101AFI20160216BHJP
   E02B 7/40 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   E02B3/06
   E02B7/40
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-69186(P2012-69186)
(22)【出願日】2012年3月26日
(65)【公開番号】特開2013-199792(P2013-199792A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2015年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089462
【弁理士】
【氏名又は名称】溝上 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100116344
【弁理士】
【氏名又は名称】岩原 義則
(74)【代理人】
【識別番号】100129827
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 進
(72)【発明者】
【氏名】森井 俊明
(72)【発明者】
【氏名】仲保 京一
(72)【発明者】
【氏名】吉識 竜太
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−016123(JP,U)
【文献】 特開2003−253912(JP,A)
【文献】 特開2010−133095(JP,A)
【文献】 特開2006−257829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/06
E02B 7/40
E02B 7/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端側の回転軸を支点として先端側が浮上及び倒伏自在に設けられた扉体が、格納時は扉体の自重により水底に倒伏し、浮上操作はカウンタウエイトの保持を解除することで行う水底設置型フラップゲート式防波堤であって、
前記扉体を浮上・倒伏させる装置と前記カウンタウエイトを保持する装置を備え、
前記扉体の浮上・倒伏装置は、
一端を定滑車を介して前記扉体の先端部に取り付けた第1のロープの他端側と、一端側に昇降が自在なカウンタウエイトを取付けた第2のロープの他端側を接続するドラムと、
このドラムを回転させカウンタウエイトを巻き上げるための油圧モータ及び油圧回路を備え、
前記定滑車は、前記扉体が倒伏した格納時に前記カウンタウエイトが上限位置となり、扉体の水平面に対する傾斜角が所定の角度になった時に前記カウンタウエイトが最下点となるように設置した構成であり、
前記カウンタウエイトの保持装置は、
前記カウンタウエイトの上限位置でカウンタウエイトを保持するフックと、
このフックによる前記カウンタウエイトの保持と開放を行うべくロッドを出退移動させるシリンダ装置及び油圧回路を備えた構成であ
前記扉体の格納中は、前記油圧モータにより上限位置に巻き上げたカウンタウエイトを、前記シリンダ装置のロッドを突出させて前記フックで保持することで、前記扉体にカウンタウエイトの重量を作用させずに扉体の自重で倒伏状態を維持する一方、前記扉体の浮上時には前記格納状態から前記シリンダ装置の保持油圧を開放することで、前記カウンタウエイトの重量が前記フックに作用し、前記カウンタウエイトの保持を解除して前記扉体を水面まで浮上させ、浮上状態で波が作用して前記扉体が起立又は倒伏した場合は、前記カウンタウエイトが持ち上げられてブレーキとして作用するようにしたことを特徴とする水底設置型フラップゲート式防波堤。
【請求項2】
前記油圧モータの油圧回路には、扉体の前記傾斜角が所定の角度を超えて浮上するとき、及び扉体の前記傾斜角が所定の角度未満に倒伏する際に前記ドラムの回動を減速するための絞り弁が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の水底設置型フラップゲート式防波堤。
【請求項3】
前記油圧モータの油圧回路には、扉体の前記傾斜角が所定の角度を超えて浮上するとき、及び扉体の前記傾斜角が所定の角度未満に倒伏する際に、油圧回路内の圧力が所定圧力に達したときに圧油の一部を戻し側に逃がすリリーフ弁が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の水底設置型フラップゲート式防波堤。
【請求項4】
前記シリンダ装置の油圧回路に、常時は閉止し、異常な高水位を検出した際に前記フックによるカウンタウエイトの保持を開放すべくシリンダ装置の圧油を逃がすON‐OFF弁を備えたバイパス回路を更に設けたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の水底設置型フラップゲート式防波堤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば津波対策として港口や河口の水底に設置する、特に小型のフラップゲート式防波堤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば港口や河口の水底に設置するフラップゲート式防波堤に必要な機能としては、以下の機能が挙げられる。
(1) 津波発生などの緊急時に水路を閉鎖できること。
(2) 平常時は水底で倒伏状態を維持すること。
(3) 扉体強度の観点から、津波の波力による起立完了時の衝撃を緩和すること。
【0003】
このような機能を備えたフラップゲート式防波堤では、扉体への空気の給排により扉体に発生する浮力を変化させて扉体の浮上・倒伏を行っているので、コンプレッサや排気弁等の給排気装置が必要になる(例えば特許文献1)。
【0004】
複数の扉体を使用する大規模なフラップゲート式防波堤では、給排気装置を共用できるので、それなりにコストメリットがあるが、小型のフラップゲート式防波堤では、設備構成が複雑になるので、給排気装置を使用した浮上・倒伏が最善とはならないことがある。
【0005】
また、扉体の浮上時に給気する場合は、浮上完了までに時間を要するので、緊急の対応が困難である。給気能力を大きくすれば、ある程度の緊急対応が可能になるが、給排気装置が大掛かりなものになってコスト高になる。また、緊急時の動力源確保が困難な場合も予測される。
【0006】
そのため、給排気装置を使用して扉体の浮上・倒伏を行う場合は、平常時に扉体への給気を完了しておき、係留装置によって扉体を水底に保持している(例えば特許文献2)。この場合、倒伏状態にある扉体の浮上力・係留力や動揺量を監視することにより、設備の健全性をいつでも確認することができる。
【0007】
一方、大型のフラップゲート式防波堤の場合、浮上停止時の衝撃は、テンションロッドに、起立時、扉体に作用する水圧を受け止める抵抗板を装備し、流体抵抗により扉体の起立速度を減速することで緩和している。
【0008】
しかしながら、小型のフラップゲート式防波堤の場合は、扉体から直接側部戸当りに水圧荷重を伝達することによりテンションロッドを省略し、よりシンプルな構造とすることが望ましい。この場合、抵抗板に代わる衝撃緩和方式が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−227125号公報
【特許文献2】特開2010−133095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする問題点は、給排気装置を使用して扉体の浮上・倒伏を行う大規模な海底設置型フラップゲート式防波堤と同等の、無動力での浮上、倒伏状態での設備の健全性の監視、起立完了時の衝撃緩和機能を扉体への給排気を行うことなく実現するものはなかったという点である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、港口や河口等の比較的小規模な場所に設置する水底設置型フラップゲート式防波堤において、必要な機能をより簡易な構成で行うようにすることを目的としてなされたものである。
【0012】
本発明の水底設置型フラップゲート式防波堤は、
基端側の回転軸を支点として先端側が浮上及び倒伏自在に設けられた扉体が、格納時は扉体の自重により水底に倒伏し、浮上操作はカウンタウエイトの保持を解除することで行う水底設置型フラップゲート式防波堤であって、
前記扉体を浮上・倒伏させる装置と前記カウンタウエイトを保持する装置を備え、
前記扉体の浮上・倒伏装置は、
一端を定滑車を介して前記扉体の先端部に取り付けた第1のロープの他端側と、一端側に昇降が自在なカウンタウエイトを取付けた第2のロープの他端側を接続するドラムと、
このドラムを回転させカウンタウエイトを巻き上げるための油圧モータ及び油圧回路を備え、
前記定滑車は、前記扉体が倒伏した格納時に前記カウンタウエイトが上限位置となり、扉体の水平面に対する傾斜角が所定の角度になった時に前記カウンタウエイトが最下点となるように設置した構成であり、
前記カウンタウエイトの保持装置は、
前記カウンタウエイトの上限位置でカウンタウエイトを保持するフックと、
このフックによる前記カウンタウエイトの保持と開放を行うべくロッドを出退移動させるシリンダ装置及び油圧回路を備えた構成であり、
前記扉体の格納中は、前記油圧モータにより上限位置に巻き上げたカウンタウエイトを、前記シリンダ装置のロッドを突出させて前記フックで保持することで、前記扉体にカウンタウエイトの重量を作用させずに扉体の自重で倒伏状態を維持する一方、前記扉体の浮上時には前記格納状態から前記シリンダ装置の保持油圧を開放することで、前記カウンタウエイトの重量が前記フックに作用し、前記カウンタウエイトの保持を解除して前記扉体を水面まで浮上させ、浮上状態で波が作用して前記扉体が起立又は倒伏した場合は、前記カウンタウエイトが持ち上げられてブレーキとして作用するようにした
ことを最も主要な特徴としている。
【0013】
上記構成の本発明では、格納時は、上限位置にあるカウンタウエイトをフックによって保持し、扉体にカウンタウエイトの重量が作用しないようにしておくことで、扉体は自重で倒伏した状態を維持する。また、カウンタウエイトに作用する力(カウンタウエイトの自重−扉体の自重)を監視することにより、格納状態で設備の健全性を監視できる。
【0014】
一方、緊急の際に浮上させる時は、シリンダ装置の保持油圧を開放してフックによるカウンタウエイトの保持を解除することで、カウンタウエイトの重量により無動力で扉体は水面まで浮上する。この状態で押し波や引き波が来襲しても、カウンタウエイトがブレーキとして作用するので、起立時や倒伏時の衝撃を緩和できる。
【0015】
その際、油圧モータの油圧回路に、扉体の傾斜角が所定の角度を超えて浮上するとき、及び扉体の傾斜角が所定の角度未満に倒伏する際にドラムの回動を減速する絞り弁を設けておけば、油圧モータもブレーキとして作用するので、前記の衝撃を更に緩和できる。
【0016】
上記の衝撃緩和作用は、浮上状態の扉体を格納する場合も同様である。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、港口や河口等の比較的小規模な場所に設置する水底設置型フラップゲート式防波堤において、無動力での浮上、倒伏状態での設備の健全性の監視、起立完了時の衝撃緩和機能を、扉体への給排気を行うことなく簡易な構成で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の水底設置型フラップゲート式防波堤の設備配置を示した図で、(a)は側面から見た図、(b)は(a)図を左側面から見た図、(c)は(a)図を上から見た図である。
図2】本発明の水底設置型フラップゲート式防波堤の機器の構成を説明する図である。
図3】格納状態におけるカウンタウエイトとフックとの関係を説明する図である。
図4】本発明の水底設置型フラップゲート式防波堤の格納状態を説明する図で、(a)は側面から見た図、(b)は油圧モータとシリンダ装置の油圧回路を示した図である。
図5】浮上開始時におけるカウンタウエイトとフックとの関係を説明する図である。
図6】本発明の水底設置型フラップゲート式防波堤の浮上開始時を示した図4と同様の図である。
図7】浮上状態にある本発明の水底設置型フラップゲート式防波堤に押し波が来襲した時を説明する図4と同様の図である。
図8】浮上状態にある本発明の水底設置型フラップゲート式防波堤に引き波が来襲した時を説明する図4と同様の図である。
図9】本発明の水底設置型フラップゲート式防波堤の倒伏中を説明する図4と同様の図である。
図10】本発明の水底設置型フラップゲート式防波堤の倒伏完了時を説明する図4と同様の図である。
図11】本発明の水底設置型フラップゲート式防波堤の機器の構成の他の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、比較的小規模な場所に設置する水底設置型フラップゲート式防波堤において、必要な機能をより簡易な構成で行うようにするという目的を、以下の構成の扉体の浮上・倒伏装置とカウンタウエイトの保持装置を備えることで実現した。
【0020】
(扉体の浮上・倒伏装置)
扉体の先端側に繋いだロープを巻き取るドラムを回転させて昇降自在なカウンタウエイトを巻き上げる際、扉体の傾斜角が所定角度になった時にカウンタウエイトが最下点となるように設置した定滑車を介するようにした。
【0021】
(カウンタウエイトの保持装置)
カウンタウエイトの上限位置での保持を、シリンダ装置によって作動するフックによって行うようにした。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を用いて詳細に説明する。
図1,2は本発明の水底設置型フラップゲート式防波堤を示した図で、図1は設備配置を、図2は機器の構成を説明する図である。
【0023】
図1,2において、1は本発明の水底設置型のフラップゲート式防波堤であり、例えば河口の左右岸に設置した側壁2の間に設置した扉体3と、この扉体3の浮上・倒伏装置4と、前記扉体3を浮上させるためのカウンタウエイト5の保持装置7を備えた構成である。
【0024】
前記扉体3は、基端側の回転軸3aを、河口の前記側壁2の間の底部に設けた基台9に、軸受10によって回転自在に枢支することで、前記回転軸3aを支点として先端側3bが浮上及び倒伏する。
【0025】
また、前記浮上・倒伏装置4は、例えば扉体3の先端側3bに一端を繋いだ第1のロープ4aの他端側を、定滑車4bを介してドラム4cに接続する一方、一端側に昇降が自在なカウンタウエイト5を取り付けた第2のロープ4dの他端側を前記ドラム4cに接続した構成である。
【0026】
そして、前記ドラム4cを油圧モータ4eで回転することで、前記カウンタウエイト5を巻き上げる。その際、前記定滑車4bは、扉体3の水平面に対する傾斜角θが所定の角度(例えば、起立角度が80°の場合の傾斜角は35〜45°)になった時にカウンタウエイト5が最下点となる位置に設置されている。なお、4fはドラム4cと油圧モータ4eの間に設置された減速機である。
【0027】
ところで、前記油圧モータ4eを回転させる油圧回路6は、油圧モータ4eを正逆両方向に回転させることができるものであれば、その構成は特に限定されないが、実施例では例えば図2に示す構成のものを採用している。
【0028】
6aは油タンク6b内の作動油6cを油圧モータ4eに圧送する油圧ポンプで、この油圧ポンプ6aと油圧モータ4eの間の配管には、油圧モータ4eの回転方向を変更するための4ポート2位置切換弁6dの他、以下の制御弁を設けている。
【0029】
6eは絞り弁、6fはリリーフ弁、6gは油圧モータ4eから4ポート2位置切換弁6d方向の流れを許容しない逆止弁である。これらの弁6e,6f,6gは、油圧モータ4eと4ポート2位置切換弁6dの間の、カウンタウエイト5を巻き上げる方向にドラム4cを回転させるときの油圧モータ4eより下流側に並列に配置している。なお、図2中の6hはフィルタ、6iはリリーフ弁、6jは2ポート2位置切換弁、6kは逆止弁を示す。
【0030】
また、前記カウンタウエイト5の保持装置7は、上限位置でカウンタウエイト5を保持するフック7aと、このフック7aによる前記カウンタウエイト5の保持と開放を行うべくロッド7baを出退移動させるシリンダ装置7bを備えた構成である。
【0031】
前記フック7aは、例えば、ピン7cにより高さ方向の上部を支持されて上下揺動が自在なようになされ、高さ方向の中央部分でシリンダ装置7bのロッド7baにピン7dを介して取り付けられたものである。そして、シリンダ装置7bのロッド7baの出退により、フック7aがピン7cを支点として上下揺動し、高さ方向の中央部分に形成した水平部7aaでカウンタウエイト5を支持したり、支持を解除したりするようになっている。
【0032】
このシリンダ装置7bのロッド7baを出退させる油圧回路8には、シリンダ装置7bのロッド7baを出退移動させるために、前記油圧ポンプ6aとシリンダ装置7bの間に少なくとも4ポート2位置切換弁8aを設けておけばよい。
【0033】
図2に示した例では、4ポート2位置切換弁8aとシリンダ装置7bを繋ぐ配管の、ロッド7baを突出させるべく圧油を供給する側に、格納状態の扉体3の浮上時にカウンタウエイト5の保持を解除する際に、ロッド7baを突出させるべく供給した作動油を油タンク6bに戻すためのON‐OFF弁8bを設けている。なお、図2中の8cは逆止弁である。
【0034】
上記構成の本発明の水底設置型フラップゲート式防波堤1は、以下のように作動する。
【0035】
(格納状態)
図3に示すようにシリンダ装置7bのロッド7baを突出させてフック7aの水平部7aaで上限位置に巻き上げたカウンタウエイト5を保持すれば、扉体3にカウンタウエイト5の重量が作用しないので、図4(a)に示すように、扉体3は自重で倒伏した状態を維持することになる。
【0036】
この状態では、図4(b)に示すように、油圧回路6における4ポート2位置切換弁6dのソレノイド(SOL)1,2、及び油圧回路8における4ポート2位置切換弁8aのソレノイド(SOL)3,4、ON‐OFF弁8bのソレノイド(SOL)5は全てOFFとしておく。つまり、格納状態では、ON‐OFF弁8bのSOL5がOFFとなっているので、仮に電源を喪失した場合でも、勝手に扉体3が起立して例えば河口を塞ぐことはない。
【0037】
(格納中)
カウンタウエイト5に作用する力(カウンタウエイト5の自重−扉体3の自重)を監視することにより、倒伏状態における設備の健全性を監視する。
【0038】
(緊急の際の浮上時)
前記格納状態から、図6(b)に示すように、油圧回路8におけるON‐OFF弁8bのSOL5をONにしてシリンダ装置7bの保持油圧を開放すれば、油圧回路6内の油は白抜き矢印で示す方向に循環する。従って、カウンタウエイト5の重量がフック7aに作用して、図5に示すようにカウンタウエイト5の保持が解除され、カウンタウエイト5の重量により無動力で扉体3は水面まで浮上する(図6(a)参照)。なお、扉体3が浮上した後は、油圧回路8におけるON‐OFF弁8bのSOL5をOFFとしておく。
【0039】
(浮上状態における押し波の来襲時)
扉体3が浮上状態のときに押し波が来襲した場合は、押し波によって扉体3が起立する。この扉体3の起立時、カウンタウエイト5が持ち上げられ(図7(a)参照)、ブレーキとして作用するので、起立時の衝撃を緩和できる。加えて、ドラム4cがカウンタウエイト5を巻き上げる方向に回転して、油圧回路6内の油6cが図7(b)の白抜き矢印方向に循環する際、絞り弁6eを通過するので、油圧モータ4eがブレーキとして作用し、起立時の衝撃を緩和できる。
【0040】
(浮上状態における引き波の来襲時)
一方、扉体3が浮上状態のときに引き波が来襲した場合は、引き波によって扉体3が倒伏する。この扉体3の倒伏時、カウンタウエイト5が持ち上げられ(図8(a)参照)、ブレーキとして作用するので、倒伏時の衝撃を緩和できる。加えて、ドラム4cがカウンタウエイト5を巻き上げる方向に回転して、油圧回路6内の油が図8(b)の白抜き矢印方向に循環する際、絞り弁6eを通過するので、油圧モータ4eがブレーキとして作用し、倒伏時の衝撃を緩和できる。
【0041】
(扉体の格納動作中)
起立状態の扉体3を格納する場合は、油圧回路6における4ポート2位置切換弁6dのSOL2と、油圧回路8における4ポート2位置切換弁8aのSOL3と、ON‐OFF弁8bのSOL5を共にONにした状態で(4ポート2位置切換弁6dのSOL1と4ポート2位置切換弁8aのSOL4は共にOFF)、油圧ポンプ6aを作動する(図9参照)。これにより、カウンタウエイト5が油圧モータ4eで巻き上げられるので、扉体3は自重で倒伏する。
【0042】
(倒伏完了)
カウンタウエイト5の巻き上げ完了(上限位置)をリミットスイッチ7eによって検出すると、図10に示すように油圧回路8における4ポート2位置切換弁8aのSOL3をOFF、SOL4をONにしてシリンダ装置7bのロッド7baを突出させてフック7aの水平部7aaでカウンタウエイト5を保持する。
【0043】
その後、油圧回路6における4ポート2位置切換弁6dのSOL1,2、及び油圧回路8における4ポート2位置切換弁8aのSOL3,4、ON‐OFF弁8bのSOL5は全てOFFとする(図4(b))。
【0044】
(電源を確保できない場合)
万一、起立時に電源を確保できない場合は、油圧回路8に設置した常時閉の弁8dを手動で開放すれば、フック7aによるカウンタウエイト5の保持が開放されるので、扉体3を起立させることができる。反対に、倒伏時に電源を確保できない場合は、前記弁8dを手動で開放してフック7aの保持を開放し、カウンタウエイト5を手動チェーンブロックで持ち上げれば、扉体3を倒伏することができる。
【0045】
(扉体の急激な動作時)
また、扉体3の急激な動作によって油圧回路6に一定以上の負荷が作用した場合は、設備や油圧装置を保護するためにリリーフ弁6が作動する。
【0046】
本発明は、前記の例に限るものではなく、各請求項に記載の技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0047】
例えば、異常高水位を検出した場合に扉体3が自動で起立するよう、図11に示すように、油圧回路8に、異常高水位を検出するフロート8eによって作動するON‐OFF弁8fを設けたバイパス回路8gを設置しても良い。また、地震計が地震を検出した場合に扉体3が自動で起立するようにしても良い。
【0048】
また、上記の例では、扉体3とカウンタウエイト5を第1のロープ4aと第2のロープ4dを使用して繋いだものを示したが、一本のロープで繋いでも良い。
【0049】
また、十分なトルクを確保できる油圧モータ4eの場合は、減速機4fを設けなくても良く、使用するロープはワイヤロープに限らず、使用荷重によっては繊維ロープを使用しても良い。
【0050】
また、上記の例では、左右の側壁2に、浮上・倒伏機構4、カウンタウエイト5、保持機構7等を配置したものを示したが、設備規模(両側壁間)によっては、どちらか一方の側壁2のみに設置しても良い。
【0051】
また、カウンタウエイト5の上限位置をリミットスイッチ7eにより検知したものを示したが、ドラム4cの回転を検知することでカウンタウエイト5の上限位置を検知するものでも良い。また、カウンタウエイト5が上限に到達した際の圧力上昇により検知するものでも良い。
【0052】
また、前記シリンダ装置7bは、作動油6cのシリンダ内部リークや弁類からのリークによる保持ストロークの変動をリミットセンサ等で監視し、保持姿勢を維持するように制御することが望ましい。
【0053】
また、倒伏状態における設備の健全性を監視するための、カウンタウエイト5に作用する力(カウンタウエイト5の自重−扉体3の自重)の監視は、シリンダ装置7bの保持油圧力を監視すればよい。また、シリンダ装置7bの軸上(ピン7d〜シリンダ基端部を枢支するピン7fの間)にロードセル等を配置してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 フラップゲート式防波堤
3 扉体
3a 回転軸
3b 先端側
4 浮上・倒伏装置
4a 第1のロープ
4b 定滑車
4c ドラム
4d 第2のロープ
4e 油圧モータ
5 カウンタウエイト
6 油圧回路
6e 絞り弁
6f リリーフ弁
7 保持装置
7a フック
7b シリンダ装置
7ba ロッド
8 油圧回路
8b,8f ON‐OFF弁
8g バイパス回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11