【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を用いて詳細に説明する。
図1,2は本発明の水底設置型フラップゲート式防波堤を示した図で、
図1は設備配置を、
図2は機器の構成を説明する図である。
【0023】
図1,2において、1は本発明の水底設置型のフラップゲート式防波堤であり、例えば河口の左右岸に設置した側壁2の間に設置した扉体3と、この扉体3の浮上・倒伏装置4と、前記扉体3を浮上させるためのカウンタウエイト5の保持装置7を備えた構成である。
【0024】
前記扉体3は、基端側の回転軸3aを、河口の前記側壁2の間の底部に設けた基台9に、軸受10によって回転自在に枢支することで、前記回転軸3aを支点として先端側3bが浮上及び倒伏する。
【0025】
また、前記浮上・倒伏装置4は、例えば扉体3の先端側3bに一端を繋いだ第1のロープ4aの他端側を、定滑車4bを介してドラム4cに接続する一方、一端側に昇降が自在なカウンタウエイト5を取り付けた第2のロープ4dの他端側を前記ドラム4cに接続した構成である。
【0026】
そして、前記ドラム4cを油圧モータ4eで回転することで、前記カウンタウエイト5を巻き上げる。その際、前記定滑車4bは、扉体3の水平面に対する傾斜角θが所定の角度(例えば、起立角度が80°の場合の傾斜角は35〜45°)になった時にカウンタウエイト5が最下点となる位置に設置されている。なお、4fはドラム4cと油圧モータ4eの間に設置された減速機である。
【0027】
ところで、前記油圧モータ4eを回転させる油圧回路6は、油圧モータ4eを正逆両方向に回転させることができるものであれば、その構成は特に限定されないが、実施例では例えば
図2に示す構成のものを採用している。
【0028】
6aは油タンク6b内の作動油6cを油圧モータ4eに圧送する油圧ポンプで、この油圧ポンプ6aと油圧モータ4eの間の配管には、油圧モータ4eの回転方向を変更するための4ポート2位置切換弁6dの他、以下の制御弁を設けている。
【0029】
6eは絞り弁、6fはリリーフ弁、6gは油圧モータ4eから4ポート2位置切換弁6d方向の流れを許容しない逆止弁である。これらの弁6e,6f,6gは、油圧モータ4eと4ポート2位置切換弁6dの間の、カウンタウエイト5を巻き上げる方向にドラム4cを回転させるときの油圧モータ4eより下流側に並列に配置している。なお、
図2中の6hはフィルタ、6iはリリーフ弁、6jは2ポート2位置切換弁、6kは逆止弁を示す。
【0030】
また、前記カウンタウエイト5の保持装置7は、上限位置でカウンタウエイト5を保持するフック7aと、このフック7aによる前記カウンタウエイト5の保持と開放を行うべくロッド7baを出退移動させるシリンダ装置7bを備えた構成である。
【0031】
前記フック7aは、例えば、ピン7cにより高さ方向の上部を支持されて上下揺動が自在なようになされ、高さ方向の中央部分でシリンダ装置7bのロッド7baにピン7dを介して取り付けられたものである。そして、シリンダ装置7bのロッド7baの出退により、フック7aがピン7cを支点として上下揺動し、高さ方向の中央部分に形成した水平部7aaでカウンタウエイト5を支持したり、支持を解除したりするようになっている。
【0032】
このシリンダ装置7bのロッド7baを出退させる油圧回路8には、シリンダ装置7bのロッド7baを出退移動させるために、前記油圧ポンプ6aとシリンダ装置7bの間に少なくとも4ポート2位置切換弁8aを設けておけばよい。
【0033】
図2に示した例では、4ポート2位置切換弁8aとシリンダ装置7bを繋ぐ配管の、ロッド7baを突出させるべく圧油を供給する側に、格納状態の扉体3の浮上時にカウンタウエイト5の保持を解除する際に、ロッド7baを突出させるべく供給した作動油を油タンク6bに戻すためのON‐OFF弁8bを設けている。なお、
図2中の8cは逆止弁である。
【0034】
上記構成の本発明の水底設置型フラップゲート式防波堤1は、以下のように作動する。
【0035】
(格納状態)
図3に示すようにシリンダ装置7bのロッド7baを突出させてフック7aの水平部7aaで上限位置に巻き上げたカウンタウエイト5を保持すれば、扉体3にカウンタウエイト5の重量が作用しないので、
図4(a)に示すように、扉体3は自重で倒伏した状態を維持することになる。
【0036】
この状態では、
図4(b)に示すように、油圧回路6における4ポート2位置切換弁6dのソレノイド(SOL)1,2、及び油圧回路8における4ポート2位置切換弁8aのソレノイド(SOL)3,4、ON‐OFF弁8bのソレノイド(SOL)5は全てOFFとしておく。つまり、格納状態では、ON‐OFF弁8bのSOL5がOFFとなっているので、仮に電源を喪失した場合でも、勝手に扉体3が起立して例えば河口を塞ぐことはない。
【0037】
(格納中)
カウンタウエイト5に作用する力(カウンタウエイト5の自重−扉体3の自重)を監視することにより、倒伏状態における設備の健全性を監視する。
【0038】
(緊急の際の浮上時)
前記格納状態から、
図6(b)に示すように、油圧回路8におけるON‐OFF弁8bのSOL5をONにしてシリンダ装置7bの保持油圧を開放すれば、油圧回路6内の油は白抜き矢印で示す方向に循環する。従って、カウンタウエイト5の重量がフック7aに作用して、
図5に示すようにカウンタウエイト5の保持が解除され、カウンタウエイト5の重量により無動力で扉体3は水面まで浮上する(
図6(a)参照)。なお、扉体3が浮上した後は、油圧回路8におけるON‐OFF弁8bのSOL5をOFFとしておく。
【0039】
(浮上状態における押し波の来襲時)
扉体3が浮上状態のときに押し波が来襲した場合は、押し波によって扉体3が起立する。この扉体3の起立時、カウンタウエイト5が持ち上げられ(
図7(a)参照)、ブレーキとして作用するので、起立時の衝撃を緩和できる。加えて、ドラム4cがカウンタウエイト5を巻き上げる方向に回転して、油圧回路6内の油6cが
図7(b)の白抜き矢印方向に循環する際、絞り弁6eを通過するので、油圧モータ4eがブレーキとして作用し、起立時の衝撃を緩和できる。
【0040】
(浮上状態における引き波の来襲時)
一方、扉体3が浮上状態のときに引き波が来襲した場合は、引き波によって扉体3が倒伏する。この扉体3の倒伏時、カウンタウエイト5が持ち上げられ(
図8(a)参照)、ブレーキとして作用するので、倒伏時の衝撃を緩和できる。加えて、ドラム4cがカウンタウエイト5を巻き上げる方向に回転して、油圧回路6内の油が
図8(b)の白抜き矢印方向に循環する際、絞り弁6eを通過するので、油圧モータ4eがブレーキとして作用し、倒伏時の衝撃を緩和できる。
【0041】
(扉体の格納動作中)
起立状態の扉体3を格納する場合は、油圧回路6における4ポート2位置切換弁6dのSOL2と、油圧回路8における4ポート2位置切換弁8aのSOL3と、ON‐OFF弁8bのSOL5を共にONにした状態で(4ポート2位置切換弁6dのSOL1と4ポート2位置切換弁8aのSOL4は共にOFF)、油圧ポンプ6aを作動する(
図9参照)。これにより、カウンタウエイト5が油圧モータ4eで巻き上げられるので、扉体3は自重で倒伏する。
【0042】
(倒伏完了)
カウンタウエイト5の巻き上げ完了(上限位置)をリミットスイッチ7eによって検出すると、
図10に示すように油圧回路8における4ポート2位置切換弁8aのSOL3をOFF、SOL4をONにしてシリンダ装置7bのロッド7baを突出させてフック7aの水平部7aaでカウンタウエイト5を保持する。
【0043】
その後、油圧回路6における4ポート2位置切換弁6dのSOL1,2、及び油圧回路8における4ポート2位置切換弁8aのSOL3,4、ON‐OFF弁8bのSOL5は全てOFFとする(
図4(b))。
【0044】
(電源を確保できない場合)
万一、起立時に電源を確保できない場合は、油圧回路8に設置した常時閉の弁8dを手動で開放すれば、フック7aによるカウンタウエイト5の保持が開放されるので、扉体3を起立させることができる。反対に、倒伏時に電源を確保できない場合は、前記弁8dを手動で開放してフック7aの保持を開放し、カウンタウエイト5を手動チェーンブロックで持ち上げれば、扉体3を倒伏することができる。
【0045】
(扉体の急激な動作時)
また、扉体3の急激な動作によって油圧回路6に一定以上の負荷が作用した場合は、設備や油圧装置を保護するためにリリーフ弁6が作動する。
【0046】
本発明は、前記の例に限るものではなく、各請求項に記載の技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0047】
例えば、異常高水位を検出した場合に扉体3が自動で起立するよう、
図11に示すように、油圧回路8に、異常高水位を検出するフロート8eによって作動するON‐OFF弁8fを設けたバイパス回路8gを設置しても良い。また、地震計が地震を検出した場合に扉体3が自動で起立するようにしても良い。
【0048】
また、上記の例では、扉体3とカウンタウエイト5を第1のロープ4aと第2のロープ4dを使用して繋いだものを示したが、一本のロープで繋いでも良い。
【0049】
また、十分なトルクを確保できる油圧モータ4eの場合は、減速機4fを設けなくても良く、使用するロープはワイヤロープに限らず、使用荷重によっては繊維ロープを使用しても良い。
【0050】
また、上記の例では、左右の側壁2に、浮上・倒伏機構4、カウンタウエイト5、保持機構7等を配置したものを示したが、設備規模(両側壁間)によっては、どちらか一方の側壁2のみに設置しても良い。
【0051】
また、カウンタウエイト5の上限位置をリミットスイッチ7eにより検知したものを示したが、ドラム4cの回転を検知することでカウンタウエイト5の上限位置を検知するものでも良い。また、カウンタウエイト5が上限に到達した際の圧力上昇により検知するものでも良い。
【0052】
また、前記シリンダ装置7bは、作動油6cのシリンダ内部リークや弁類からのリークによる保持ストロークの変動をリミットセンサ等で監視し、保持姿勢を維持するように制御することが望ましい。
【0053】
また、倒伏状態における設備の健全性を監視するための、カウンタウエイト5に作用する力(カウンタウエイト5の自重−扉体3の自重)の監視は、シリンダ装置7bの保持油圧力を監視すればよい。また、シリンダ装置7bの軸上(ピン7d〜シリンダ基端部を枢支するピン7fの間)にロードセル等を配置してもよい。