特許第5873746号(P5873746)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5873746-火災報知設備 図000002
  • 特許5873746-火災報知設備 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873746
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】火災報知設備
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20160216BHJP
【FI】
   G08B17/00 C
   G08B17/00 D
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-74648(P2012-74648)
(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公開番号】特開2013-206136(P2013-206136A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(72)【発明者】
【氏名】橋口 寛
(72)【発明者】
【氏名】八武崎 雄介
(72)【発明者】
【氏名】徳武 亮
(72)【発明者】
【氏名】小橋 洋之
【審査官】 永田 義仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−122496(JP,A)
【文献】 特開2003−223686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 17/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の感知器回線と、
上記複数の感知器回線に接続されて、各感知器回線単位の火災を検出するP型火災受信機と、
上記各感知器回線を介して、上記火災受信機と接続されて、スイッチング動作による火災信号を出力する複数の火災感知器と
を具備する火災報知設備において、
上記火災感知器は、上記火災受信機と信号伝送を行う通信手段と、
製造に関わる製造情報を記憶する記憶部とを有し、
上記火災受信機は、上記複数の感知器回線に接続された上記火災感知器と信号伝送を行う複数の送受信手段と
上記送受信手段を介して、上記各火災感知器に対して製造情報収集信号を送信し、また、上記製造情報収集信号に対応して、上記各火災感知器から送信される製造情報を受信して、上記各火災感知器の製造情報を収集する製造情報収集手段とを備え
上記製造情報収集手段は、上記各送受信手段に対して、同時に製造情報確認命令を送信し、上記製造情報確認命令を受信した各送受信手段は、接続された上記感知器回線一つずつ順番に上記製造情報収集信号を送信する
ことを特徴とする火災報知設備。
【請求項2】
複数の感知器回線と、
上記複数の感知器回線に接続されて、各感知器回線単位の火災を検出するP型火災受信機と、
上記各感知器回線を介して、上記火災受信機と接続されて、スイッチング動作による火災信号を出力する複数の火災感知器と
を具備する火災報知設備において、
上記火災感知器は、上記火災受信機と信号伝送を行う通信手段と、
製造に関わる製造情報を記憶する記憶部とを有し、
上記火災受信機は、上記複数の感知器回線に接続された上記火災感知器と信号伝送を行う送受信手段と、
上記送受信手段を介して、上記各火災感知器に対して製造情報収集信号を送信し、また、上記製造情報収集信号に対応して、上記各火災感知器から送信される製造情報を受信して、上記各火災感知器の製造情報を収集する製造情報収集手段とを備え、
上記火災受信機は、所定周期で各感知器回線単位の断線を確認し、
上記製造情報収集信号を上記送受信手段から送信させる操作手段を備え、上記操作手段が操作されると、上記所定周期で行われている断線監視を一時的に停止した後、上記製造情報収集信号を送信する
ことを特徴とする火災報知設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感知器回線単位で火災を監視するP型火災受信機と、各感知器回線に複数台接続された火災感知器を備えた火災報知設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製品を製造するときに、製品に実装された部品の製造に関わる情報であるロット番号や、製造年月日等の製造情報を製品にラベルを張り付けて記録しておくか、製品に実装された部品の製造情報と製品自体のロット番号や製造年月日情報等を結びつける外部データベースにより、製品に実装された部品の製造不良が判明した際に、どの製品に製造不良が発生した部品が実装されているかを追跡するトレーサビリティという技術がある。
【0003】
従来、火災報知設備に用いられるトレーサビリティは、火災感知器に製造年月日情報等を記録したICチップを貼り付け、ICリーダーを火災感知器に近づけて、火災感知器の製造年月日を読み取ることで行っていた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−177695号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の火災報知設備に用いられるトレーサビリティでは、作業者が火災感知器の設置されている場所まで行って火災感知器の製造年月日情報を読み取る必要があり、大規模の建物になると、数千個の単位で火災感知器が設置されているため、全ての火災感知器の製造年月日情報を取得するのに時間と労力が掛かるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、複数の感知器回線と、複数の感知器回線に接続されて、各感知器回線単位の火災を検出するP型火災受信機と、各感知器回線を介して、火災受信機と接続されて、スイッチング動作による火災信号を出力する複数の火災感知器とを具備する火災報知設備において、火災感知器は、火災受信機と信号伝送を行う通信手段と、製造に関わる製造情報を記憶する記憶部とを有し、火災受信機は、複数の感知器回線に接続された火災感知器と信号伝送を行う複数の送受信手段と、送受信手段を介して、各火災感知器に対して製造情報収集信号を送信し、また、製造情報収集信号に対応して、各火災感知器から送信される製造情報を受信して、各火災感知器の製造情報を収集する製造情報収集手段とを備え、製造情報収集手段は、各送受信手段に対して、同時に製造情報確認命令を送信し、製造情報確認命令を受信した各送受信手段は、接続された感知器回線一つずつ順番に製造情報収集信号を送信することを特徴とする。
【0008】
また、この発明は、複数の感知器回線と、複数の感知器回線に接続されて、各感知器回線単位の火災を検出するP型火災受信機と、各感知器回線を介して、火災受信機と接続されて、スイッチング動作による火災信号を出力する複数の火災感知器とを具備する火災報知設備において、火災感知器は、火災受信機と信号伝送を行う通信手段と、製造に関わる製造情報を記憶する記憶部とを有し、火災受信機は、複数の感知器回線に接続された火災感知器と信号伝送を行う送受信手段と、送受信手段を介して、各火災感知器に対して製造情報収集信号を送信し、また、製造情報収集信号に対応して、各火災感知器から送信される製造情報を受信して、各火災感知器の製造情報を収集する製造情報収集手段とを備え、火災受信機は、所定周期で各感知器回線単位の断線を確認し、製造情報収集信号を送受信手段から送信させる操作手段を備え、操作手段が操作されると、所定周期で行われている断線監視を一時的に停止した後、製造情報収集信号を送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本願発明は、火災感知器の記憶部に製造情報を記憶する。そして、火災受信機は送受信手段によって火災感知器と信号伝送を行う際、火災受信機に接続された感知器回線単位で火災感知器の製造情報を収集するので、作業者が火災感知器の設置場所まで行くことなく、効率よく製造情報を収集することができる。
【0010】
また、本願発明は、火災受信機に複数の送受信手段を備え、各送受信手段は、各送受信手段に接続された感知器回線一つずつに対し、それぞれ製造情報収集信号を送信するので、接続される感知器回線が増えても、製造情報を収集する時間を短くすることができるので、効率よく製造情報を収集することができる。
【0011】
また、本願発明は、送信手段から製造情報収集信号を送信させる操作手段を備え、操作手段が操作されると、所定周期で行われている断線監視と感知器の出力値異常監視を一時的に停止するので、停止された断線監視の時間を製造情報の収集時間に割り当てることができ、より迅速に製造情報を収集することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態を示した火災報知設備の構成図。
図2】本発明の実施形態を示した火災感知器の構成図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の火災報知設備100を、図1、2を用いて説明する。
[火災報知設備]
100は複数の感知器回線L1と、P型火災受信機1と、火災感知器2を具備する火災報知設備100である。
1はP型火災受信機1で、複数の感知器回線L1が接続されて、各回線単位の火災検出及び所定周期での断線検出をする。このP型火災受信機1には、一対の信号線からなる複数の感知器回線L1を介して、スイッチング動作による火災信号を出力する複数の火災感知器2が接続されている。また、P型火災受信機1は、感知器回線L1毎に信号伝送を行う送受信手段としての送受信回路3が複数備えられている。各感知器回線L1は、各送受信回路3の受信機通信部8に個別に接続され、建物内の各防護領域へ向けて敷設されている。なお、感知器回線L1と火災感知器2の接続数は、P型火災受信機1の内部に設けられた電源トランス及び内蔵電源の容量によってあらかじめ決められるが、例えば感知器回線L1は一つの送受信回路3に対して20回線が接続され、各感知器回線L1には、最大で60個の火災感知器2が接続されるものとなっている。
【0014】
[火災感知器]
火災感知器2は、火災を検出する検出部10と、各種情報を記憶する感知器記憶部12と、感知器回線L1が接続される感知器通信部11と、感知器全体を制御する感知器制御部13とを有している。
【0015】
検出部10は、例えば感知器周辺の温度を検出するサーミスタや、投光部と受光部を用いて煙による散乱光を検出する煙検出部からなる。
【0016】
感知器通信部11は、P型火災受信機1と信号伝送を行う通信手段の一例で、感知器回線L1を介してP型火災受信機1の送受信回路3(受信機通信部8)と接続される。さらに感知器通信部11は、図示しない内部接点を有し、内部接点が感知器制御部13によってオンオフ動作されることで感知器回線L1間の電圧を変化させ、火災受信機1と伝送通信するものである。
【0017】
感知器記憶部12は、火災感知器2の種別情報、工場出荷時に記憶された製造情報や、設置時にアドレス設定器によって設定されるアドレス情報等が記憶されている。ここでいう製造情報とは、主に火災感知器2の感度に関わる情報や、火災感知器が製造された製造年月日や、製造ラインの情報に関連づけられたIDコードなどが記憶されている。
【0018】
ここで、火災感知器2のアドレス設定方法について詳しく説明する。各火災感知器2は、感知器回線L1毎に所定の番号までのアドレスが付与されるものであり、また、感知器回線L1毎の各火災感知器2は、所定の番号までのアドレスが個別に付与されている。なお、上記各感知器回線L1の末端に接続された火災感知器2には、同一のアドレスが付与されている。
【0019】
図1には、各感知器回線L1に接続された感知器群を一つのグループとした第一グループG1〜第六グループG6が記載されている。
【0020】
第一グループG1、及び第四グループG4は感知器回線L1に火災感知器2が最大数、例えば60台が接続される例を示している。従って、各火災感知器2に設定されるアドレス情報は、P型火災受信機1に近い火災感知器2を1番とし、そこから末端の火災感知器2へ向けて通し番号が設定され、末端の火災感知器2には、最大アドレスである60番が設定される。
【0021】
第二グループG2、及び第五グループG5は、感知器回線L1に火災感知器2が二台だけ接続される例を示している。この場合、火災感知器2に設定されるアドレス情報は、P型火災受信機1に近い火災感知器2に最小のアドレス情報の1番が設定される。そして、2台目には感知器回線L1に接続可能な火災感知器2の台数の最大アドレスである60番が設定される。
【0022】
第三グループG3、及び第六グループG6は、感知器回線L1に火災感知器2が一台だけ接続される例を示している。この場合、火災感知器2に設定されるアドレス情報は、感知器回線L1に接続可能な火災感知器2の台数の最大アドレスである60番が設定される。
【0023】
なお、図1に記載された送受信回路3は、説明のため簡略して記載しているが、例えば、一つの判別部9に対して、受信機通信部8を複数設け、各受信機通信部8に感知器回線L1個別に接続可能としてもよい。
【0024】
感知器制御部13は、感知器全体を制御するもので、例えば感知器通信部11の内部接点を制御し、状態応答信号や感知器記憶部12に記憶された製造情報等の各種信号(情報)を感知器通信部11から送受信回路3に送信する。より詳しく述べると、検出部10が火災を検出すると、内部接点を所定時間オンさせる所謂スイッチング動作により、感知器回線L1間を略短絡して感知器回線L1間の電圧を低下させて火災信号を出力する。
また、感知器通信部11が、送受信回路3の受信機通信部8から送信された後述する状態確認信号を受信すると、感知器記憶部12に記憶された自己のアドレス情報に対応して、所定のタイミングで状態応答信号を送信する。より詳しく述べると受信機制御部4は、火災感知器2の接続数に拘わらず、各送受信回路3を介して、感知器回線L1毎に、最大アドレス(60番)までの火災感知器2に対して状態確認信号を所定周期で送信する。このとき状態確認信号は、確認したい火災感知器2のアドレスが十五個ずつ関連づけられて、伝送パルス信号として信号伝送される。
【0025】
この状態確認信号は、詳細には説明しないが、受信機フレームと、受信機フレームに続く感知器フレームとを有し、受信機フレームは、火災受信機1が火災感知器2に対して状態確認指令する信号を送信するためのフレームであり、また、感知器フレームは、十五個の火災感知器2が状態応答信号を送信するために、各火災感知器2のアドレスに関連付けられた十五個のスロットを有するフレームである。
【0026】
状態確認信号は、最大アドレス60個分だけ、4回に分けて信号伝送される。具体的には、アドレス1〜15番までに対応する状態確認信号、アドレス16〜30番までに対応する状態確認信号、アドレス31〜45番までに対応する状態確認信号、アドレス46〜60番までに対応する状態確認信号がそれぞれ信号伝送される。
【0027】
感知器通信部11が、自己のアドレスに関連付けられた状態確認信号を受信すると、感知器制御部13は、状態確認信号に対応して、自己のアドレスに関連づけられた所定の応答タイミング(所定のスロット)で伝送パルス信号としての状態応答信号を送受信回路3に信号伝送する。
【0028】
また、感知器通信部11が送受信回路3から送信された後述する製造情報収集信号を受信すると、感知器記憶部12に記憶された自己の製造情報を示す伝送パルス信号を、感知器通信部11から受信機通信部8に送信する。より詳しく述べると、受信機制御部4は、送受信回路3を介して、状態確認信号と同様の受信機フレームとを有する製造情報収集信号を用いて、受信機フレーム内に確認したい火災感知器2のアドレスを関連づけて伝送パルス信号として感知器通信部11へ信号伝送する。感知器通信部11が自己のアドレスに関連付けられた製造情報収集信号を受信すると、製造情報信号を送信する。このとき感知器通信部11は、状態確認信号と同様の十五個の所定のスロットに合わせて内部接点のオンオフ動作を繰り返すことで、製造情報等を製造情報信号とし、送受信回路3に信号伝送する。
【0029】
製造情報信号は、例えばスロット1〜8の組み合わせで製造年月日を、スロット9〜11の組み合わせで火災感知器2の種別を、スロット12〜15の組み合わせでIDコードを表現する。
【0030】
[火災受信機]
P型火災受信機1は、複数の感知器回線L1を介して各火災感知器2と接続される送受信回路3と、受信機全体の動作を制御する受信機制御部4と、火災警報や火災が発生した地区の状態情報等を表示する表示部5と、各種操作を行う操作部6と、送受信回路3に接続された感知器回線L1の接続情報を記憶する受信機記憶部7とからなる。
【0031】
受信機制御部4は、各火災感知器の製造情報信号を収集する製造情報収集手段の一例で、火災受信機2全体の制御を行うものであり、送受信回路3から火災信号を受信すると、後述する表示部5等を点灯制御したり、図示しない防排煙装置等を起動したりするものである。また、受信機制御部4は、操作部6の操作又は所定の周期で、断線監視を確認する状態確認命令を送受信回路3に出力する。また受信機制御部4は、操作部6が操作されることで、各感知器の製造情報を収集する製造情報収集命令を送受信回路3に送信する。
【0032】
表示部5はP型火災受信機1の盤面に設けられたLED等の光源からなり、各防護領域に敷設された感知器回線L1に対応して設けられる。そして表示部5は、感知器回線L1に接続された火災感知器2が火災を検出して内部接点を閉じる(スイッチング動作を行う)と、受信機制御部4によって対応するLED等が点灯制御されるものである。
【0033】
操作部6は、P型火災受信機1の盤面に設けられ、火災検出による火災警報の停止や、断線監視、製造情報の収集等の保守点検を行う各種操作スイッチからなる。操作部6は、各種スイッチを点検作業者が操作することで、受信機制御部4に各種信号を出力させる。
【0034】
受信機記憶部7は、各受信機通信部8に対して、感知器回線L1の接続の有無を示す接続情報や、製造情報収集信号によって収集された火災感知器2の製造情報が記憶されている。この受信機記憶部7は、図示しないデータベース設定ツールによって接続情報を書き換えたり、製造情報をCFカード等の外部記憶手段に移したりすることができる。また、火災受信機1の電源投入時に接続されている火災感知器2のアドレス情報を取得することで、感知器回線L1の接続情報を書き換え可能なものとなっている。
【0035】
送受信回路3は、感知器回線L1を介して火災感知器2の感知器通信部11と接続される受信機通信部8と、受信機通信部8が受信した火災感知器2からの各種信号を判別する判別部9を備えている。
【0036】
送受信回路3は、各種状態を判別する判別部9一つに対し、三個の受信機通信部8が設けられ、各受信機通信部11には一対の感知器回線L1が接続され、各感知器回線L1には一乃至複数台の感知器群G1〜G6が設けられている。
【0037】
受信機通信部8は、火災感知器2のスイッチング動作による火災信号を検出し、感知器通信部11にパルス信号からなる各種信号を送受信するものである。
【0038】
判別部9は、判別手段としての一例で、火災判別処理と信号判別処理により受信機通信部8が受信した各種信号を判別したり、受信機通信部8から感知器通信部11へ各種信号を送信させたりするものである。
【0039】
より詳しく述べると、火災判別処理とは、受信機通信部8が監視する感知器回線L1間の電圧変化によって火災を判別する動作のことであり、火災感知器2のスイッチング動作により感知器回線L1間の電圧が所定時間低下すると、判別部9が火災判別処理を行うことで火災と判断し、受信機制御部4に火災信号を出力する。
【0040】
また、信号判別処理は、一例として、感知器回線L1に接続された火災感知器2との伝送パルス信号の送受信によって感知器回線L1の断線を判別する動作がある。より詳しく述べると、受信機制御部4から所定周期で出力される状態確認命令、または点検作業者が操作部6を操作することによって受信機制御部4から出力される状態確認命令のいずれか一方を判別部9が受けると、判別部9は、受信機通信部8から各感知器回線L1に対して状態確認信号を送信させる。このとき受信機通信部8は、各感知器回線L1に対して、火災感知器の接続数に拘わらず、状態を確認したい火災感知器2のアドレス情報が十五個単位で付与された状態確認信号を、伝送パルス信号として、最大アドレスの分だけ、四回に分けて送信する。そして、感知器通信部11からアドレス情報が付与された状態応答信号を受信機通信部8が受信すると、判別部9は信号判別処理によって、最大アドレスが設定された火災感知器2からの状態応答信号の有無を判別する。具体的には、各火災感知器2は、自己のアドレスに関連づけられた所定の応答タイミング(所定のスロット)で状態応答信号を送信することから、判別部9は最大アドレスに関連づけられた所定の応答タイミング(所定のスロット)で状態応答信号を受信したか否かを判別する。この信号判別処理によって、各感知器回線の末端に接続され、最大アドレスが設定された火災感知器2からの状態応答信号が受信できない場合に、判別部9は当該感知器回線が断線であると判別し、受信機制御部4に関連付けられた断線情報を出力する。
【0041】
また、信号判別処理は、一例として、感知器回線L1に接続された火災感知器2との伝送パルス信号の送受信によって、火災感知器2から受信した製造情報を判別する動作がある。より詳しく述べると、点検作業者が操作部6を操作することによって、受信機制御部4から出力される製造情報収集命令を判別部9が受けると、判別部9は受信機通信部から各感知器回線L1に対して、アドレス情報と関連付けられた製造情報収集信号を送信させる。製造情報収集信号が送信された後、対応するアドレスの火災感知器2のオンオフ動作の繰り返しによって感知器回線L1間の電圧が変化すると、判別部9が信号判別処理を行うことで製造情報を判別し、受信機制御部4を介して受信機記憶部7にアドレス情報と関連づけられた製造情報を記憶する。
【0042】
[設置手順]
続いて、本実施形態における火災報知設備100の設置時に関する説明をする。
P型火災受信機1は、設置される物件の規模に応じて、あらかじめ対応する回線数を設定して出荷される。その後、施工者によって火災感知器2や図示しない被制御装置と共に設置される。このとき、火災感知器2の感知器記憶部12には、工場出荷時に記憶された製造情報の他に、アドレス設定器によって個別のアドレス情報が設定される。このアドレス情報は、P型火災受信機1に近い方を基準とし、通常1から順に連番が設定され、火災受信機2の電源トランス又は内部電源の容量に応じて例えば最大60台が接続される。ただし、感知器回線L1が敷設される防護領域の広さによっては、60台接続する必要が無い場合もあるが、その場合においても接続される末端の感知器には、最大アドレスである60番目のアドレスが設定される。
【0043】
防護領域に火災感知器2が設置された後、P型火災受信機1に電源を接続して起動すると、判別部9は受信機通信部8からアドレス情報に関連付けられた状態確認信号を送信する。各感知器回線L1に接続された火災感知器2から、当該感知器のアドレス関連付けられた状態応答信号が送信されると、判別部9は信号判別処理によって最大アドレスの状態応答信号の受信の有無を判別する。信号判別処理によって最大アドレスの状態応答信号を受信したと判別されると、判別部9は火災感知器2が正常に設置されたと判断し、制御部4に各グループG1〜G6の接続情報を送信する。判別部9から接続情報を受信した受信機制御部4は、各グループG1〜G6の接続情報を受信機記憶部7に記憶する。以降、状態情報有りの各グループG1〜G6に対してのみにしか情報収集を行わないので、断線監視処理や製造情報の取得処理が簡便となる。
その後火災報知設備100は、火災監視状態へと移行する。
【0044】
[火災検出]
続いて、本実施形態における火災報知設備100の火災検出動作に関する説明をする。
火災報知設備100が火災監視状態の際、防護領域で火災が発生すると、火災感知器2の検出部10が火災を検出し、感知器制御部13が感知器通信部11をスイッチング動作させて感知器回線L1間を略短絡させる。受信機通信部9が、感知器回線L1間の電圧低下を検出すると、判別部9はその電圧値を検出して火災判別処理によって火災かどうかを判別する。所定時間、検出された電圧値が所定の電圧値より低い場合、判別部9は火災が発生したと判別し、受信機制御部4に火災信号を出力する。火災信号を受信した受信機制御部4は、対応する表示部5のLEDを点滅表示すると共に、図示しない被制御装置等に起動信号を送信する。
【0045】
[断線監視]
続いて、本実施形態における火災報知設備100の断線監視に関する説明をする。
火災報知設備100が設置されたのち、受信機制御部4は、各送受信回路3に所定周期で断線監視としての状態確認命令を送信し、状態確認命令を受信した各送受信回路3は、各判別部9によって各受信機通信部8から状態確認信号を伝送パルス信号として送信する。各感知器通信部11が状態確認信号を受信すると、各火災感知器2の各感知器制御部13は、自己の感知器記憶部12に記憶されたアドレス情報に対応して、自己の状態応答信号を乗せた伝送パルス信号を各送受信回路3送信する。このとき、各感知器回線L1に断線が発生していなければ、各受信機通信部11は最大アドレスの状態応答信号を受信し、各受信機通信部11が最大アドレスの状態応答信号を受信すると、各判別部9は断線判別処理によって各感知器回線L1が正常であると判別し、引き続き火災監視状態となる。
【0046】
これに対し、例えば第1グループG1の感知器回線L1で断線が起きた場合、断線が発生した感知器回線L1に接続された末端の火災感知器2から最大アドレスの状態応答信号が送られなくなる。第1グル―プG1が接続された受信機通信部11が最大アドレスの状態応答信号を受信しないと、判別部9は断線判別処理によって第1グループG1で断線が発生したと判別し、受信機制御部4に感知器回線の番号に関連づけられた断線信号を送信する。判別部9から感知器回線の番号に関連づけられた断線信号を受信した受信機制御部4は、表示部5に断線が発生したことを表示するため、表示部5の感知器回線の番号に関連づけられたLEDを点滅制御する。
【0047】
[製造情報取得]
続いて、本実施形態における火災報知設備100における製造情報の取得動作に関する説明をする。
防護領域に設置された火災感知器2に使用された部品に不具合が発見された場合、点検作業者が火災受信機1の操作部6を操作することで各感知器の製造情報を取得する。
点検作業者が火災受信機1の操作部6を操作すると、受信機制御部4から各判別部9に製造情報収集命令を出力する。製造情報収集命令を受信した各判別部9は、各受信機通信部8から各火災感知器2へ向けて製造情報収集信号を送信する。
【0048】
このとき本願発明の火災報知設備100は、各送受信回路3に接続される複数の感知器回線L1について、各感知器回線L1単位でタイミングをずらして順番に製造情報を収集する。より詳しく述べると、ひとつの送受信回路3内に複数の感知器回線L1が接続されている場合、各感知器回線L1を一つのグループとする。そして、グループ単位でまとめて各火災感知器2の製造情報を収集するが、このとき、各グループのタイミングが重ならないように順番に受信する。具体的には、最初に第一グループG1の火災感知器2のうち、火災受信機1に最も近い位置にある火災感知器2に対して、この火災感知器2のアドレス情報と関連付けられた製造情報収集信号を送信する。この製造情報収集信号を受信した火災感知器1に最も近い位置にある火災感知器は、感知器通信部11の内部接点のオンオフ動作を繰り返すことで、製造情報信号を受信機通信部8に送信する。判別部9が信号判別処理によって火災受信機1に最も近い火災感知器2からの製造情報信号が受信できたと判別すると、受信機制御部4は火災受信機1から二番目に近い位置にある火災感知器2に対して、アドレス情報と関連付けられた製造情報信号を感知器通信部8に送信する。このような動作を繰り返すことによって、第一グループG1に接続された火災感知器2から製造情報を取得すると、受信機制御部4は第二グループG2も同様に製造情報を順番に取得する。各送受信回路3(受信機通信部8)に接続された感知器回線L1のすべてのグループに対して行うことによってすべての火災感知器2から確実かつ効率よく製造情報を収集できる。
【0049】
各送受信回路3によって収集された製造情報は、受信機記憶部7に記憶される。そして、点検作業者が操作部6を操作し、表示部5に表示したり、図示しないデータベースツールや外部記憶手段に移して製造情報を確認することにより、感知器回線L1に接続された火災感知器2が、製造不良の発生した部品が実装されたものかどうかを確認する。
また、火災報知設備100に送受信回路3が複数設けられる場合、各送受信回路3に設けられる各判別部9は、それぞれ独立して制御可能なものとなっている。そのため、受信機制御部4は、各判別部9に対して同時に製造情報収集命令を送信する。
【0050】
そして、製造情報収集命令を受信した各判別部9は、各受信機通信部9に接続された複数の感知器回線L1を一つのグループとし、このグループ単位で順番に製造情報を収集する。このとき、異なる送受信回路3の初めのグループ、例えば第1グループG1と第4グループG4の製造情報を同時に取得できるので、より効率良く製造情報を収集できる。
なお、製造情報は部品に不具合が発見された場合など、必要に応じて収集されるため、常時収集する必要は無いが、収集する際は、製造情報の他に、火災感知器2に実装された部品の製造に関わる情報であるロット番号や、製造ライン等の各種情報が含まれているため、時間が掛かる場合がある。
【0051】
このとき、火災受信機1の操作部6が操作されると、受信機制御部4によって所定周期で送信されていた断線監視を一時的に停止した後、製造情報収集信号を送信する様にしても良い。これにより、断線監視を行っていた時間も連続して製造情報収集信号の送受信が行える、言い換えると、断線監視を行っていた時間に製造情報信号の送受信が割り当てられるので、より早く製造情報を収集できる。
【0052】
このように、本願発明の火災報知設備は、感知器回線L1に接続される火災感知器2の製造情報を、感知器回線L1単位でまとめて収集できるので、効率よく製造情報を収集できる。
【0053】
なお、本願発明の実施形態においては、製造情報収集手段としての受信機制御部13と、信号判別処理を行う判別部9を分けて記載したが、受信機制御部13が信号判別処理を行う機能を備えたものとしてもよい。
【0054】
また、受信機制御部4は、各感知器回線L1に接続されたすべての火災感知器2の製造情報を、火災受信機1から近い順に取得するようにしたが、たとえば個別のアドレスを指定して製造情報を取得してもよい。
【0055】
また、製造情報収集信号は、状態確認信号と同様の受信フレームを有するものとしたが、たとえば火災感知器2に用いられるマイコンのクロック周波数が高い物を用いることで、一つのスロットに製造情報信号を含め、状態応答信号と同様に十五個単位で製造情報を取得できるようにしてもよい。
【0056】
また、火災感知器2のアドレス設定方法として、例えばP型火災受信機1に近い火災感知器2を1番とし、そこから末端の火災感知器2へ向けて通し番号が設定され、末端の火災感知器2には、最大アドレスである60番が設定されるものとしたが、P型火災受信機1からの順番と感知器のアドレスは必ずしも1対1である必要は無く、感知器回線L1の末端に設定された最大アドレスと異なるアドレスで、感知器回線L1内で重複しなければ良い。
【符号の説明】
【0057】
100 火災報知設備、1 P型火災受信機、2 火災感知器、3 送受信回路、4受信機制御部、5 表示部、6 操作部、7 受信機器億部、8 受信機通信部、9 判別部、10 検出部、11 感知器通信部、12 感知器記憶部、13 感知器制御部。
図1
図2