(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873769
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】作業機械のタンク固定装置
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20160216BHJP
【FI】
E02F9/00 Q
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-148729(P2012-148729)
(22)【出願日】2012年7月2日
(65)【公開番号】特開2014-9559(P2014-9559A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2014年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】手原 怜
【審査官】
石井 哲
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−061224(JP,A)
【文献】
特開2009−269593(JP,A)
【文献】
特開2010−261373(JP,A)
【文献】
特開2000−064351(JP,A)
【文献】
特開2011−256602(JP,A)
【文献】
特開2006−214138(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/152223(WO,A1)
【文献】
特開2011−012661(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0017537(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
B60K 11/00−15/00
F01N 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、この車体に取り付けられる作業装置と、上記車体上に搭載されるタンクとを備えた作業機械に設けられ、上記タンクの一角に形成した傾斜状凹部と、この傾斜状凹部に装着され、所定部材に固定される帯状部材とを有し、上記帯状部材を介して上記タンクを固定する作業機械のタンク固定装置において、
上記帯状部材は帯状鋼板から成り、この帯状鋼板は、上記タンクの上面部の上に配置される上部と、この上部に連設され上記タンクの上記傾斜状凹部に配置される傾斜部と、この傾斜部に連設され上記タンクの側面に対向するように配置される側部とを有するものであり、
上記車体に設けられ、上記帯状鋼板の上記上部を固定する上部固定部材と、上記車体に設けられ、上記帯状鋼板の上記側部を固定する側部固定部材とを備え、
上記タンクの上記傾斜状凹部は、平坦部と、この平坦部の両端部で立ち上がり形成され、互いに対向する一対の側壁とから成り、
上記タンクの上記傾斜状凹部と上記帯状鋼板の上記傾斜部との間に介挿入され、上記傾斜状凹部の上記平坦部に当接する平板部と、この平板部に連設され、上記タンクの上記傾斜状凹部の上記側壁のそれぞれに当接する一対の折り曲げ部とを有する板部材と、
上記帯状鋼板に取り付けられ、上記板部材の上記平板部を上記タンクの上記傾斜状凹部の上記平坦部に向かって押圧する押圧具とを備えたことを特徴とする作業機械のタンク固定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械のタンク固定装置において、
上記板部材は、隙間を介して並設可能な第1分割板部材と第2分割板部材とから成り、
上記第1分割板部材は、上記タンクの上記傾斜状凹部の上記平坦部に当接し上記平板部に含まれる第1平板部と、この第1平板部に連設され、上記タンクの上記傾斜状凹部の上記一対の側壁のうちの一方に当接し、上記一対の折り曲げ部のうちの一方を形成する第1折り曲げ部とを有し、
上記第2分割板部材は、上記タンクの上記傾斜状凹部の上記平坦部に当接し上記平板部に含まれる第2平板部と、この第2平板部に連設され、上記タンクの上記傾斜状凹部の上記一対の側壁のうちの他方に当接し、上記一対の折り曲げ部のうちの他方を形成する第2折り曲げ部とを有することを特徴とする作業機械のタンク固定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械のタンク固定装置において、
上記帯状鋼板の上記上部を上記タンクの上記上面部に当接させ、上記帯状鋼板の上記側部を上記タンクの上記側面部に当接させるように上記帯状鋼板を配置し、
上記タンクの上記傾斜状凹部の上記平坦部と上記板部材の上記平板部との間に介挿されるラバーを備えたことを特徴とする作業機械のタンク固定装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業機械のタンク固定装置において、
上記作業機械が、上記作業装置が取り付けられ上記車体を形成する旋回体と、この旋回体上に配置される工具箱とを備えた油圧ショベルから成り、
上記工具箱の内部に上記タンクを収容し、
上記上部固定部材が上記工具箱の側壁を含み、上記側部固定部材が上記工具箱の底部を含むことを特徴とする作業機械のタンク固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の作業機械に設けられ、車体上に搭載されたタンクを帯状部材を介して固定する作業機械のタンク固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術として、特許文献1に建設機械のタンク固定構造が開示されている。この従来技術は、旋回フレーム上に設置されるタンクの上部の一角に傾斜状凹部を形成し、この傾斜状凹部にゴム板を介してバンド、すなわち帯状部材を装着し、帯状部材の両端部を旋回フレームに設けた固定支持部に支持させる構成にしてある。すなわち、この従来技術は、タンクに帯状部材を襷掛けに装着して、タンクを固定する構成にしてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−64351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術は、作業に伴う外力や振動をタンク部分に受けることが比較的少ない建設機械に対しては有効と考えられるが、作業に伴って大きな外力や大きな振動がタンク部分に伝えられやすい建設機械、例えばミニショベルよりも大型の油圧ショベル等の作業機械に適用する場合には問題がある。
【0005】
すなわち、上述した従来技術は、帯状部材をタンクに襷掛けすることによってタンクを固定することから、タンク部分に大きな外力や大きな振動が伝えられたときに、帯状部材がタンクから離脱して、あるいは帯状部材の両端部が固定される固定支持部が破損して、タンクが横転してしまう懸念がある。
【0006】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、タンク部分に大きな外力や大きな振動が伝えられても、タンクを車体上に安定して固定することができる作業機械のタンク固定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明は、車体と、この車体に取り付けられる作業装置と、上記車体上に搭載されるタンクとを備えた作業機械に設けられ、上記タンクの一角に形成した傾斜状凹部と、この傾斜状凹部に装着され、所定部材に固定される帯状部材とを有し、上記帯状部材を介して上記タンクを固定する作業機械のタンク固定装置において、上記帯状部材は帯状鋼板から成り、この帯状鋼板は、上記タンクの上面部の上に配置される上部と、この上部に連設され上記タンクの上記傾斜状凹部に配置される傾斜部と、この傾斜部に連設され上記タンクの側面に対向するように配置される側部とを有するものであり、上記車体に設けられ、上記帯状鋼板の上記上部を固定する上部固定部材と、上記車体に設けられ、上記帯状鋼板の上記側部を固定する側部固定部材とを備え
、上記タンクの上記傾斜状凹部は、平坦部と、この平坦部の両端部で立ち上がり形成され、互いに対向する一対の側壁とから成り、上記タンクの上記傾斜状凹部と上記帯状鋼板の上記傾斜部との間に介挿入され、上記傾斜状凹部の上記平坦部に当接する平板部と、この平板部に連設され、上記タンクの上記傾斜状凹部の上記側壁のそれぞれに当接する一対の折り曲げ部とを有する板部材と、上記帯状鋼板に取り付けられ、上記板部材の上記平板部を上記タンクの上記傾斜状凹部の上記平坦部に向かって押圧する押圧具とを備えたことを特徴としている。
【0008】
このように構成した本発明は、車体上に搭載したタンクの上面部の上に位置する帯状鋼板の上部を上部固定部材で固定し、タンクの側面に対向するように位置する帯状鋼板の側部を側部固定部材で固定することにより、帯状部材の上部及び傾斜部と、車体とによってタンクの上下方向の動きを規制でき、また、上部固定部材と側部固定部材と、帯状部材の側部及び傾斜部とによって帯状部材の長手方向に沿うタンクの前後方向の動きを規制できる。また、タンクの傾斜状凹部と剛性を有する帯状部材の傾斜部との係合関係を介して、帯状部材の長手方向と直交する幅方向に沿うタンクの左右方向の動きを規制できる。すなわち本発明は、帯状鋼板と、上部固定部材と、側部固定部材と、車体を介して、車体上に搭載されたタンクの上下方向、前後方向、及び左右方向の全方向の動きを規制できる。
また本発明は、押圧具によって板部材の平板部をタンクの傾斜状凹部の平坦部方向に押圧することにより、タンクに対する上下方向、及び帯状部材の長手方向に沿う前後方向の固定力を高めることができる。また、タンクの傾斜状凹部の一対の側壁のそれぞれに当接する板部材の一対の折り曲げ部のそれぞれが、剛性を有する帯状部材の側縁部に当接することにより、帯状部材の長手方向と直交する幅方向に沿うタンクの左右方向の動きを確実に規制することができる。
【0011】
また本発明は、上記発明において、上記板部材は、隙間を介して並設可能な第1分割板部材と第2分割板部材とから成り、上記第1分割板部材は、上記タンクの上記傾斜状凹部の上記平坦部に当接し上記平板部に含まれる第1平板部と、この第1平板部に連設され、上記タンクの上記傾斜状凹部の上記一対の側壁のうちの一方に当接し、上記一対の折り曲げ部のうちの一方を形成する第1折り曲げ部とを有し、上記第2分割板部材は、上記タンクの上記傾斜状凹部の上記平坦部に当接し上記平板部に含まれる第2平板部と、この第2平板部に連設され、上記タンクの上記傾斜状凹部の上記一対の側壁のうちの他方に当接し、上記一対の折り曲げ部のうちの他方を形成する第2折り曲げ部とを有することを特徴としている。
【0012】
このように構成した本発明は、タンクの傾斜状凹部の製作誤差や、第1分割板部材、第2分割板部材の製作誤差を、第1分割板部材と第2分割板部材の間に形成される隙間によって吸収させることが可能となる。
【0013】
また本発明は、上記発明において、上記帯状鋼板の上記上部を上記タンクの上記上面部に当接させ、上記帯状鋼板の上記側部を上記タンクの上記側面部に当接させるように上記帯状鋼板を配置し、上記タンクの上記傾斜状凹部の上記平坦部と上記板部材の上記平板部との間に介挿されるラバーを備えたことを特徴としている。
【0014】
このように構成した本発明は、帯状部材の上部をタンクの上面部に当接させることにより、タンクの上下方向の固定力を高めることができ、帯状部材の側部をタンクの側面に当接させることにより、帯状部材の長手方向に沿うタンクの前後方向の固定力を高めることができる。また、タンクの傾斜状凹部の平坦部と板部材の平板部との接触がラバーによって防止される。したがって、板部材が押圧具によって押圧された際のタンクの傾斜状凹部を、ラバーによって保護することができる。
【0015】
また本発明は、上記発明において、上記作業機械が、上記作業装置が取り付けられ上記車体を形成する旋回体と、この旋回体上に配置される工具箱とを備えた油圧ショベルから成り、上記工具箱の内部に上記タンクを収容し、上記上部固定部材が上記工具箱の側壁を含み、上記側部固定部材が上記工具箱の底部を含むことを特徴としている。
【0016】
このように構成した本発明は、工具箱の内部空間をタンクの収容空間として有効に活用させることができる。また、工具箱の側壁が帯状鋼板の上部を固定する上部固定部材に含まれ、工具箱の底部が帯状鋼板の側部を固定する側部固定部材に含まれるので、工具箱の他に特別な固定のための部材を要さなくて済む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、タンク部分に大きな外力や大きな振動が伝えられても、タンクを車体上に安定して固定することができる。これにより、従来では適用が困難であったミニショベルよりも大型の油圧ショベル等の作業機械にも適用させることができる。上述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係るタンク固定装置の第1実施形態が設けられる作業機械の一例として挙げた油圧ショベルを示す側面図である。
【
図2】本発明に係るタンク固定装置の第1実施形態の構成を示す斜視図である。
【
図4】
図2に示す状態から帯状鋼板及び押圧具を除いた状態を示す斜視図である。
【
図5】本発明に係るタンク固定装置の第2実施形態の要部構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る作業機械のタンク固定装置の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0020】
本発明に係るタンク固定装置の第1実施形態が設けられる作業機械は、例えば油圧ショベルである。この油圧ショベルは
図1に示すように、走行体1と、この走行体1上に配置される旋回体2と、この旋回体2に上下方向の回動可能に取り付けられ、土砂の掘削作業等を行う作業装置3とを備えている。上述した走行体1と旋回体2は、この油圧ショベルの車体を構成している。また、上述した作業装置3は、旋回体2に取り付けられるブーム3aと、このブーム3aの先端に取り付けられるアーム3bと、このアーム3bの先端に取り付けられるバケット3cとを含んでいる。また、旋回体2の前側位置には、工具箱4を配置してある。第1実施形態に係るタンク固定装置は、例えば後述するように、工具箱4の内部に収容されたタンクを固定するものである。
【0021】
図2−4に示すように、工具箱4の内部に固定対象となるタンクを配置してある。このタンクは、例えば尿素水を収容する樹脂製タンク10である。この樹脂製タンク10は、基本形状が、幅方向の寸法あるいは奥行き方向の寸法に比べて高さ寸法が比較的低い直方体形状となっている。この樹脂製タンク10の上面部10aに、尿素水が供給される吸水口10dを設けてある。また、この樹脂製タンク10の一角に傾斜状凹部10bを形成してある。
【0022】
図4に示すように、傾斜状凹部10bは、平坦部10b1と、この平坦部10b1の両端部で立ち上がり形成され、互いに対向する一対の側壁、すなわち第1側壁10b2及び第2側壁10b3とから成っている。
【0023】
本実施形態は、樹脂製タンク10の傾斜状凹部10bに装着されて、この樹脂製タンク10を所定部材に固定する帯状部材を備えている。
図2,3に示すように、帯状部材は帯状鋼板13から成っている。この帯状鋼板13は、樹脂製タンク10の上面部10の上に位置する上部13aと、この上部13aに連設され、樹脂製タンク10の傾斜状凹部10bに配置される傾斜部13bと、この傾斜部13bに連設され、樹脂製タンク10の側面10cに対向するように配置される側部13cとを有している。
【0024】
例えば帯状鋼板13の上部13aは、樹脂製タンク10の上面部10aに当接させてあり、帯状鋼板13の側部13cは樹脂製タンク10の側面10cに当接させてある。
【0025】
また本実施形態は、
図3,4に示すように、樹脂製タンク10の傾斜状凹部10bと帯状鋼板13の傾斜部13bとの間に介挿される板部材14を備えている。この板部材14は、樹脂製タンク10の傾斜状凹部10bの平坦部10b1に当接する平板部14aと、この平板部14aに連設され、樹脂製タンク10の傾斜状凹部10bの第1側壁10b2、第2側壁10b3にそれぞれ当接する一対の折り曲げ部、すなわち第1折り曲げ部14b及び第2折り曲げ部14cとを有している。
【0026】
また本実施形態は、
図3に示すように、帯状鋼板13の傾斜部13bに取付けられ、板部材14の平板部14aを樹脂製タンク10の傾斜状凹部10bの平坦部10b1に向かって押圧する押圧具12を備えている。この押圧具12は、帯状鋼板13の傾斜部13bに溶接した第1ナット12a、及びこの第1ナット12aに当接するように締め付けられる第2ナット12bと、これらの第1ナット12aと第2ナット12bに螺合し、先端部で板部材14の平板部14aを押圧するボルト12cとから成っている。
【0027】
また本実施形態は、
図3に示すように、樹脂製タンク10の傾斜状凹部10bの平坦部10b1と板部材14の平板部14aとの間に介挿されるラバー15を備えている。
【0028】
さらに本実施形態は、車体に設けられ、帯状鋼板13の上部13aを固定する上部固定部材と、車体に設けられ、帯状鋼板13の側部13cを固定する側部固定部材とを備えている。
【0029】
例えば
図2に示すように、帯状鋼板13の上部13aの端部に形成した上部折り曲げ端部13dが、ボルト16によって工具箱4の側壁4aに固定されている。上述した上部固定部材は、ボルト16と、工具箱4の側壁4aとによって構成されている。また例えば、帯状鋼板13の側部13cの端部に形成した下部折り曲げ端部13eが、ボルト17によって工具箱4の底部4bに固定されている。上述した側部固定部材は、ボルト17と、工具箱4の底部4bとによって構成されている。
【0030】
このように構成した本実施形態にあっては、車体を構成する旋回体2上に搭載した工具箱4内に収容した樹脂製タンク10の上面部10aの上に位置する帯状鋼板13の上部13aを、上述したボルト16と工具箱4の側壁4aとを含む上部固定部材で固定してある。また、樹脂製タンク10の側面10cに対向するように位置する帯状鋼板13の側部13cを、上述したボルト17と工具箱4の底部4bとを含む下部固定部材で固定してある。
【0031】
したがって、帯状鋼板13の上部13a及び傾斜部13bと、旋回体2に搭載した工具箱4の底部4bとによって、樹脂製タンク10の上下方向の動きを規制できる。
【0032】
また、上部固定部材と、側部固定部材と、帯状鋼板13の側部13c及び傾斜部13bとによって、帯状鋼板13の長手方向に沿う樹脂製タンク10の前後方向の動きを規制できる。
【0033】
また、樹脂製タンク10の傾斜状凹部10bの第1側壁10b2,第2側壁10b3にそれぞれ当接するように配置した板部材14の第1折り曲げ部10b、第2折り曲げ部14cと、剛性を有する帯状鋼板13の傾斜部13bの側縁部との係合関係を介して、帯状鋼板13の長手方向と直交する幅方向に沿う樹脂製タンク10の左右方向の動きを規制できる。
【0034】
すなわち本実施形態は、帯状鋼板13と、上部固定部材と、側部固定部材と、車体を形成する旋回体2に搭載した工具箱4の側壁4a及び底部4bを介して、工具箱4に収容した樹脂製タンク10の上下方向、前後方向、及び左右方向の全方向の動きを規制できる。
【0035】
したがって、本実施形態によれば、樹脂製タンク10部分に大きな外力や大きな振動が伝えられても、樹脂製タンク10を旋回体上に安定して固定することができる。これにより、例えばミニショベルよりも大型の油圧ショベルであっても適用させることができる。
【0036】
また本実施形態は、第1ナット12a、第2ナット12b、及びボルト12cを含む押圧具12によって、板部材14の平板部14aを樹脂製タンク10の傾斜状凹部10bの平坦部10b1方向に押圧することにより、樹脂製タンク10に対する上下方向、及び帯状鋼板13の長手方向に沿う前後方向の固定力を高めることができる。
【0037】
また本実施形態は、帯状鋼板13の上部13aを樹脂製タンク10の上面部10aに当接させることにより、樹脂製タンク10の上下方向の固定力を高めることができる。また、帯状鋼板13の側部13cを樹脂製タンク10の側面10cに当接させることにより、帯状鋼板13の長手方向に沿う樹脂製タンク10の前後方向の固定力を高めることができる。また、樹脂製タンク10の傾斜状凹部10bの平坦部10b1と板部材14の平板部14aとの接触がラバー15によって防止される。したがって、板部材14が押圧具12によって押圧された際の樹脂製タンク10の傾斜状凹部10bを、ラバー15によって保護することができる。
【0038】
さらに本実施形態は、工具箱4の内部空間を樹脂製タンク10の収容空間として有効に活用させることができる。また、工具箱4の側壁4aが帯状鋼板13の上部を固定する上部固定部材に含まれ、工具箱4の底部4bが帯状鋼板13の側部固定部材に含まれるので、工具箱4の他に帯状鋼板13を固定のための部材を要しなくて済む。
【0039】
図5は本発明に係るタンク固定装置の第2実施形態の要部構成を示す斜視図である。
【0040】
この第2実施形態は、板部材19が第1実施形態に備えられる板部材14と異なっている。同
図5に示すように、板部材19は、隙間22を介して並設可能な第1分割板部材20と第2分割板部材21とから成っている。
【0041】
第1分割板部材20は、樹脂製タンク10の傾斜状凹部10bの平板部10b1に当接する第1平板部20aと、この第1平板部20aに連設され、樹脂製タンク10の傾斜状凹部10bの第1側壁10b2に当接する第1折り曲げ部20bとを有している。
【0042】
同様に、第2分割部21は、樹脂製タンク10の傾斜状凹部10bの平坦部10b1に当接する第2平板部21aと、この第2平板部21aに連設され、樹脂製タンク10の傾斜状凹部10bの第2側壁10b3に当接する第2折り曲げ部21bとを有している。
【0043】
その他の構成は、例えば第1実施形態と同等であり、この第2実施形態も、旋回体2上に搭載された工具箱4の内部に樹脂製タンク10を収容させるようにしてある。このように構成した第2実施形態は、上述した第1実施形態と同等の作用効果が得られる他、樹脂製タンク10の傾斜状凹部10bの製作誤差や、第1分割板部材20、第2分割板部材21の製作誤差を、第1分割板部材20と第2分割板部材21の間に形成される隙間22によって吸収させることが可能となる。
【0044】
なお、上記第1,第2実施形態は、樹脂製タンク10を工具箱4内に収容させ、この工具箱4内において固定するようにしたが、本発明は、このように構成することには限られない。工具箱4とは異なる場所において、例えば旋回体2のフレーム上に、あるいはフレーム上に設けられる部材上に樹脂製タンク10を載置し、帯状鋼板13の上部13aを固定する上部固定部材が旋回体2のフレーム、あるいはフレーム上に設けられる部材の上に溶接等を介して立設保持される部材を含み、帯状鋼板13の側部13cを固定する側部固定部材が、旋回体2のフレーム、あるいはフレーム上に設けられる部材であってもよい。
【0045】
また、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形態様が含まれる。例えば前述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備えるものには限定されない。
【符号の説明】
【0046】
1 走行体(車体)
2 旋回体(車体)
3 作業装置
4 工具箱
4a 側壁(上部固定部材)
4b 底部(側部固定部材)
10 樹脂製タンク
10a 上面部
10b 傾斜状凹部
10b1 平坦部
10b2 第1側壁
10b3 第2側壁
10c 側面
10d 給水口
12 押圧具
12a 第1ナット
12b 第2ナット
12c ボルト
13 帯状鋼板(帯状部材)
13a 上部
13b 傾斜部
13c 側部
13d 上部折り曲げ端部
13e 下部折り曲げ端部
14 板部材
14a 平板部
14b 第1折り曲げ部
14c 第2折り曲げ部
15 ラバー
16 ボルト
17 ボルト
19 板部材
20 第1分割板部材
20a 第1平板部
20b 第1折り曲げ部
21 第2分割板部材
21a 第2平板部
21b 第2折り曲げ部
22 隙間