特許第5873773号(P5873773)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873773
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】測定周波数可変超音波映像装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/12 20060101AFI20160216BHJP
   G01N 29/06 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   G01N29/12
   G01N29/06
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-160709(P2012-160709)
(22)【出願日】2012年7月19日
(65)【公開番号】特開2014-18470(P2014-18470A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2014年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233044
【氏名又は名称】株式会社日立パワーソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(72)【発明者】
【氏名】梅田 雅通
(72)【発明者】
【氏名】北見 薫
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】高田 雅文
【審査官】 田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−156853(JP,A)
【文献】 特開平05−034322(JP,A)
【文献】 特開2003−107058(JP,A)
【文献】 特開平08−320311(JP,A)
【文献】 特開2012−068209(JP,A)
【文献】 特開2005−058321(JP,A)
【文献】 特表2009−504232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00−29/52
G01B 17/00−17/08
A61B 8/00−8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に超音波を送信し、前記被検体から反射、散乱、屈折された超音波を受信して受信信号を出力する圧電素子を備えた超音波プローブと、
前記超音波プローブをX方向に1ライン分走査した後にY方向の走査位置に走査するスキャナと、
前記受信信号の周波数を、前記Y方向の走査位置に応じた所定周波数に制御すると共に当該所定周波数が段階的に変わるように制御する周波数制御部と、
前記所定周波数のバースト波を出力するバースト波発信器と、
インパルス波を生成するインパルス波発信器と、
前記圧電素子に、前記バースト波と前記インパルス波のうちいずれを出力するかを切り替えるスイッチと、
前記受信信号を信号処理する信号処理部と、
前記信号処理部の出力信号に基づいて、前記Y方向の走査位置に応じて前記所定周波数が段階的に変えられた超音波画像を生成する画像生成部と、
を備えることを特徴とする測定周波数可変超音波映像装置。
【請求項2】
前記周波数制御部は、前記圧電素子が送信する超音波の周波数を変えることによって、前記受信信号の周波数を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の測定周波数可変超音波映像装置。
【請求項3】
前記周波数制御部は、前記超音波の前記所定周波数を前記Y方向の走査位置に応じて制御し、
前記画像生成部は、生成した前記超音波画像上に、前記Y方向の走査位置に応じた前記所定周波数を表示する、
ことを特徴とする請求項2に記載の測定周波数可変超音波映像装置。
【請求項4】
前記被検体の超音波画像を評価して、前記超音波の周波数を最適化する最適周波数調整処理部を更に備えている、
ことを特徴とする請求項1に記載の測定周波数可変超音波映像装置。
【請求項5】
前記最適周波数調整処理部は、前記被検体の超音波画像のコントラストを算出するコン
トラスト算出部を備え、当該コントラストを最大化するように前記超音波の周波数を最適
化する、
ことを特徴とする請求項4に記載の測定周波数可変超音波映像装置。
【請求項6】
前記最適周波数調整処理部は、前記被検体の超音波画像の高周波成分を算出する高周波成分算出部を備え、当該高周波成分を最大化するように前記超音波の周波数を最適化する、
ことを特徴とする請求項4に記載の測定周波数可変超音波映像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の内部を、超音波測定により可視化する超音波映像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波によって半導体や集積回路などの欠陥(剥離やボイド)の有無を調べるには、単一焦点型の超音波センサを機械的に二次元で走査する方法が用いられていた。この検査方法は、単一焦点型の超音波センサにより、検査対象物である前記構造物内の検査対象部位を焦点とする超音波の送受信を行い、検査対象部位から反射されたエコー波(超音波)をゲート処理することによって、そのエコー波の強度情報や時間情報を求めるものである。求められた前記エコー波の情報を二次元空間にマッピングすることにより、検査画像情報を生成することができ、この検査画像情報を基に、欠陥の有無を調べることができる。
【0003】
特許文献1の目的には、「被検物体内の欠陥を容易かつ正確に検出する。」と記載され、構成には、「被検物体Mにパルスを発信しエコーを受信するトランスデューサ1には、パルスを発生しエコーを増幅するための送受信器2が接続され、その後方にはエコーの中から任意の間のエコーを取り出すためのゲート回路3が接続されている。また、ゲート回路3には正のコンパレータ4、負のコンパレータ5、正のピークホルダ6、負のピークホルダ7が接続され、これらの出力は制御装置9に入力する。正のコンパレータ4と負のコンパレータ5では、予め設定した基準値を初めて越えるエコーの中の早い方のタイミングが遅延回路8に入力し、略1周期分の時間の後にゲート回路3を閉じる。」と記載されている。
【0004】
また近年では、アレイ型の超音波センサを用いた超音波検査手法も用いられている。アレイ型の超音波センサは、複数の圧電振動素子を一列に配列したものである。所定の走査位置に応じた圧電振動素子に、素子駆動の時間遅延を与えて超音波を送信および受信することで、検査対象部位に送信された超音波を集束させて焦点を結ぶことができる。各圧電振動素子の配列の法線方向にレンズを配置するか、または、圧電振動素子の配列を曲面上に配置することにより、単一焦点型超音波センサと同様に、超音波を一点に集束させて送受信することができる。
【0005】
特許文献2の課題には、「被検体中の異なる深さ位置に発生する欠陥を1回の検査で高精度に検出可能な超音波検査方法を提供する。」と記載され、解決手段には、「音響レンズ2上に複数の振動素子3aからなるアレイ振動子3が設けられた超音波プローブ1を被検体10と対向に配置する。音響レンズの焦点FAとアレイ振動子を電子集束することによって作られる焦点FBとを異なる深さ位置に設定して被検体中の各検査面に個別に合致させ、各検査面について同時に欠陥検査を実行する。欠陥が存在すると判定された場合、前記2つの焦点を合致させ、欠陥が存在すると判定された検査面に合致させて再度の欠陥検査を行う。」と記載されている。
【0006】
アレイ型超音波センサでは、複数の圧電振動素子を電子的に走査できるので、単一焦点型超音波センサによる機械走査よりも迅速に、超音波検査を行うことができる。
【0007】
特許文献3の課題には、「発振器構成を簡略し、送信波をパルス信号からバースト波信号へ滑らかに変化させ、測定時に必要に応じて干渉が生じない範囲でバースト波信号を利用できる超音波映像装置とその測定方法を提供する。」と記載され、解決手段には、「超音波探触子14を送信波信号で駆動して超音波16を発生させかつこの超音波を被検体18に照射し、被検体から戻ってくる反射波を超音波探触子で検出して受信波信号に変換し、受信波信号に基づいて像表示処理を行い被検体の所定の検査箇所の像を表示装置に表示する超音波映像装置である。送信波信号を出力する手段としてバースト波信号を出力するバースト波発振器12のみを備え、このバースト波発振器が出力するバースト波信号の最少波数は1以下である。バースト波発振器から出力される信号の波数は制御部15で制御される。」と記載されている。
【0008】
特許文献3の段落0017には、発明の目的として、「送信波を発生する発振器の回路部分の構成を簡略し、送信波をパルス信号からバースト波信号へ滑らかに変化させることができ、測定時に必要に応じて干渉が生じない範囲でバースト波信号を利用できるようにして、周波数帯域を狭くし、減衰の影響を低減し、高分解能の測定および映像作成を行うことのできる超音波映像装置を提供することにある。」と記載されている。しかし、特許文献3には、測定対象に合わせた最適な周波数の選定については、何ら記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−232092号公報
【特許文献2】特開平11−304769号公報
【特許文献3】特開2003−107059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
被検体内部の可視化に最適な超音波の周波数は、被検体を構成する材質よって異なる。そのため、単一焦点型の超音波センサとアレイ型の超音波センサとのいずれを用いる場合に於いても、材質に応じた最適な超音波の周波数を設定しなければならない。
しかし、従来では、超音波センサ(超音波プローブ)ごとに測定可能な超音波の周波数が固定されていた。そのため、超音波の周波数を変更するには、幾つもの超音波センサ(超音波プローブ)を交換しなければならなかった。更に、従来の超音波センサ(超音波プローブ)では、超音波の周波数を連続的に変更して測定し、これら超音波画像の品質を比較することができなかった。
【0011】
本発明は、被検体の内部構造を超音波によって可視化する場合に、最適な周波数を選択できる超音波映像装置に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記した課題を解決するため、本発明の請求項1に記載の発明では、被検体に超音波を送信し、前記被検体から反射、散乱、屈折された超音波を受信して受信信号を出力する圧電素子を備えた超音波プローブと、前記超音波プローブをX方向に1ライン分走査した後にY方向の走査位置に走査するスキャナと、前記受信信号の周波数を、前記Y方向の走査位置に応じた所定周波数に制御すると共に当該所定周波数が段階的に変わるように制御する周波数制御部と、前記所定周波数のバースト波を出力するバースト波発信器と、インパルス波を生成するインパルス波発信器と、前記圧電素子に、前記バースト波と前記インパルス波のうちいずれを出力するかを切り替えるスイッチと、前記受信信号を信号処理する信号処理部と、前記信号処理部の出力信号に基づいて、前記Y方向の走査位置に応じて前記所定周波数が段階的に変えられた超音波画像を生成する画像生成部と、を備えることを特徴とする測定周波数可変超音波映像装置とした。
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被検体の内部構造を超音波によって可視化する場合に、最適な周波数を選択できる超音波映像装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施形態に於ける超音波映像装置を示す概略の構成図である。
図2】第1の実施形態に於ける超音波映像装置の走査方法を示す図である。
図3】第1の実施形態に於ける送信周波数の変更方法を示す図である。
図4】第1の実施形態に於ける超音波映像装置の動作例を示す図である。
図5】第1の実施形態に於ける周波数可変画像の生成処理を示す図である。
図6】第1の実施形態に於ける周波数可変画像の例を示す図である。
図7】第2の実施形態に於ける超音波映像装置を示す概略の構成図である。
図8】第2の実施形態に於ける周波数可変画像の生成処理を示す図である。
図9】第3の実施形態に於ける超音波映像装置を示す概略の構成図である。
図10】第3の実施形態に於ける最適周波数調整処理を示す図である。
図11】第3の実施形態に於ける画像化処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以降、本発明を実施するための形態を、各図を参照して詳細に説明する。
【0016】
(第1の実施形態の構成)
【0017】
図1は、第1の実施形態に於ける超音波映像装置を示す概略の構成図である。
第1の実施形態の超音波映像装置10(測定周波数可変超音波映像装置)は、送信する超音波の周波数を制御することにより、エコー波である受信波の周波数を制御するものである。第1の実施形態では、送受信装置60にバースト波発信器61とスイッチ63とを備え、このバースト信号を圧電素子30に出力することにより、圧電素子30が送信する超音波の周波数fxを変化させることができる。
【0018】
超音波映像装置10は、超音波の送受信を行う超音波プローブ20と、当該超音波映像装置10を統括制御して超音波映像を表示する映像表示装置50と、超音波プローブ20との間で電気信号を入出力する送受信装置60と、超音波プローブ20を機械的に走査するX軸スキャナ71およびY軸スキャナ72と、X軸スキャナ71およびY軸スキャナ72を制御するメカ制御装置70とを備えている。超音波プローブ20は、X軸スキャナ71およびY軸スキャナ72に支えられて、水槽100に満たされた水110に浸漬され、圧電素子30が被検体120に対向するように配置される。
【0019】
超音波プローブ20は、当該超音波プローブ20の走査位置を検知するエンコーダ21と、電気信号と超音波信号とを相互に変換する圧電素子30とを備えている。圧電素子30は、単一焦点型の超音波センサである。
映像表示装置50は、超音波プローブ20の走査位置を制御する走査制御部51と、超音波の周波数を制御する周波数制御部52と、超音波の送受信タイミングを制御するタイミング制御部53と、超音波画像を生成する画像生成部54とを備えている。
送受信装置60は、バースト波の電気信号を生成するバースト波発信器61と、インパルス波の電気信号を生成するインパルス波発信器62と、スイッチ63と、超音波プローブ20が受信した受信信号を増幅するアンプ64と、当該受信信号をアナログ信号からデジタル信号に変換するA/D変換器65と、当該受信信号を信号処理する信号処理部66とを備えている。
【0020】
走査制御部51は、メカ制御装置70(スキャナ)と入出力可能に接続されている。走査制御部51は、メカ制御装置70とX軸スキャナ71とY軸スキャナ72(スキャナ)によって超音波プローブ20の走査位置を制御すると共に、メカ制御装置70から超音波プローブ20の現在の走査位置情報を受信する。
メカ制御装置70の出力側は、X軸スキャナ71およびY軸スキャナ72に接続されている。メカ制御装置70には、超音波プローブ20のエンコーダ21の出力側が接続されている。メカ制御装置70は、エンコーダ21の出力信号によって、超音波プローブ20の走査位置を検知し、X軸スキャナ71およびY軸スキャナ72によって、超音波プローブ20が指示された走査位置になるように制御する。メカ制御装置70は、走査制御部51から超音波プローブ20の制御指示を受けると共に、超音波プローブ20の走査位置情報を応答する。
【0021】
タイミング制御部53は、走査制御部51から取得した超音波プローブ20の走査位置情報に基づいて、送受信装置60に超音波の送受信タイミング信号(情報)を出力し、周波数制御部52に超音波の周波数情報を出力する。
【0022】
周波数制御部52は、タイミング制御部53が出力した超音波の周波数情報に基づいて、バースト波発信器61に所定の周波数のバースト波を所定パルス数だけ出力するように指示する。
バースト波発信器61は、周波数制御部52が出力した信号に基づいて、圧電素子30に所定の周波数のバースト波を所定パルス数だけ出力するものである。
インパルス波発信器62は、タイミング制御部53が出力したタイミング信号に基づいて、圧電素子30にインパルス波を出力するものである。
スイッチ63は、タイミング制御部53の出力信号に基づいて、バースト波とインパルス波のいずれを圧電素子30に出力するかを切り替えるものである。
【0023】
圧電素子30は、圧電膜の両面にそれぞれ電極が取り付けられているものであり、ZnO、セラミックス、フッ素系共重合体などで構成される。圧電素子30は、両電極間に電圧が印加されることにより、当該圧電膜から超音波を送信する。更に圧電素子30は、当該圧電膜が受信したエコー波(受信波)を、前記両電極間に発生する電圧である受信信号に変換する。アンプ64は、当該受信信号を増幅して出力信号Voutとして出力するものである。A/D変換器65は、増幅された当該受信信号を、アナログ信号からデジタル信号に変換するものである。
【0024】
信号処理部66は、受信信号を信号処理するものである。信号処理部66は、タイミング制御部53が出力するゲートパルスVgateによって、受信信号の所定期間のみを切り出す。信号処理部66は、所定期間の受信信号の振幅情報、または、所定期間の受信信号の時間情報を、画像生成部54に出力する。
画像生成部54は、信号処理部66の出力信号に基づいて、所定周波数に於ける超音波画像を生成するものである。
【0025】
(超音波映像装置の動作)
図1を参照しつつ、超音波映像装置10の一連の動作について説明する。
走査制御部51は、超音波プローブ20を+X方向にスキャンして1ライン分の画素を取得する。走査制御部51は、超音波プローブ20がX方向の端に位置していることを検知したならば、超音波プローブ20を+Y方向に所定ピッチだけ移動させたのち、−X方向にスキャンして、1ライン分の画像を取得する。これを繰り返して、走査制御部51は、所定範囲の走査を行う。
【0026】
映像表示装置50のタイミング制御部53は、走査制御部51から超音波プローブ20のX方向とY方向の走査位置情報を受け取り、Y方向の走査位置情報に基づいて周波数制御部52に周波数を指示し、X方向の走査位置情報に基づいて送受信装置60に超音波の送信を指示すると共に、受信信号を信号処理するためのゲートパルスVgateを出力する。
【0027】
送受信装置60は、バースト波発信器61が出力したバースト信号とインパルス波発信器62が出力したインパルス信号のいずれかをスイッチ63により切り替えて、超音波プローブ20に信号を出力する。更に送受信装置60は、超音波プローブ20が受信したエコー波(受信波)の受信信号を、アンプ64で増幅したのち、A/D変換器65によってデジタル信号に変換する。信号処理部66は、タイミング制御部53から入力されたゲートパルスVgateに基づいて、受信信号(デジタル信号)を信号処理し、映像表示装置50に出力する。
映像表示装置50は、走査制御部51が取得した走査位置の情報を画素位置とし、送受信装置60が信号処理した受信信号の情報を画素の輝度情報として、被検体120の内部構造を画像化して表示する。被検体120の内部を示す超音波画像は、受信信号の振幅情報によるものでも、受信信号が所定振幅以上になる時間の情報によるものでもよい。
【0028】
図2は、第1の実施形態に於ける超音波映像装置の走査方法を示す図である。
ここでは、超音波映像装置10の一部として、X軸スキャナ71と、Y軸スキャナ72と、超音波プローブ20のみが示されている。
X軸スキャナ71は、Y軸スキャナ72を±X方向に移動させるものである。Y軸スキャナ72は、超音波プローブ20を±Y方向に移動させるものである。
超音波プローブ20は、円筒形であり、先端部に圧電素子30(図1)を備え、更にエンコーダ21(図1)を備えている。超音波プローブ20は、水槽100に満たされた水110に浸漬され、被検体120の上部Z方向に所定の距離を於いて対向するように配置されている。
【0029】
(第1の実施形態の動作)
【0030】
図3(a),(b)は、第1の実施形態に於ける送信周波数の変更方法を示す図である。
【0031】
図3(a)は、周波数f1[Hz]のバースト信号の例である。
送受信装置60は、周波数f1[Hz]でパルス数が3のバースト信号(電気信号)を出力する。圧電素子30は、当該電気信号によって、周波数f1[Hz]でパルス数が3の超音波信号を出力する。これにより、送受信装置60は、超音波の周波数を制御し、よって超音波を電気信号に変換した受信信号の周波数を制御することができる。
【0032】
図3(b)は、周波数f2[Hz]のバースト信号の例である。
送受信装置60は、周波数f2[Hz]でパルス数が6のバースト信号(電気信号)を出力する。圧電素子30は、当該電気信号によって、周波数f2[Hz]でパルス数が6の超音波信号を出力する。これにより、送受信装置60は、超音波の周波数を制御し、よって超音波を電気信号に変換した受信信号の周波数を制御することができる。
【0033】
図4(a)〜(c)は、第1の実施形態に於ける超音波映像装置の動作例を示す図である。
【0034】
図4(a)は、超音波映像装置10の超音波プローブ20と被検体120とを示す図である。
被検体120は、表面120sと測定境界面120fとを備えている。超音波は、超音波プローブ20から発信されると、表面120sと測定境界面120fとで反射してエコー波を生成し、再び超音波プローブ20の圧電素子30で受信される。
【0035】
図4(b)は、圧電素子30の出力電圧に於ける超音波とエコー波との関係を示す図である。図の横軸は、共通する時刻を示している。図の縦軸は、圧電素子30のセンサ信号をアンプ64で増幅した出力信号Voutの電圧を示している。
時刻0に於ける3つのパルスは、超音波プローブ20に超音波を発信させるためのバースト波である。
時刻tsに於ける3つのパルスは、超音波プローブ20が受信したエコー波に対応した受信信号である。このエコー波は、前記した表面120sで反射されたものである。
時刻tfに於ける3つのパルスは、超音波プローブ20が受信したエコー波に対応した受信信号である。このエコー波は、前記した測定境界面120fで反射されたものである。
【0036】
図4(c)は、エコー波を抽出するためのゲートパルスVgateを示す図である。図の横軸は、共通する時刻を示している。図の縦軸は、ゲートパルスVgateの電圧を示している。
ゲートパルスVgateは、時刻t1〜t2に於いてオンし、時刻t1以前と、時刻t2以降に於いてオフしている。図4(b)に示す圧電素子30の出力信号Voutのうち、ゲートパルスVgateがオンになっているときの信号を取り出し、当該信号の振幅を取り出すことによって、測定境界面120fの状態を可視化することができる。
【0037】
(超音波画像による検査方法)
図1を適宜参照して、第2の実施形態の映像表示装置の動作を説明する。
被検体120の超音波検査を行うにあたり、オペレータは、被検体120を水槽100の底部に設置する。
オペレータは、被検体120の目的とする測定境界面120fを明確化するため、インパルス信号による超音波画像を取得する。
オペレータは、インパルス信号による被検体120の超音波画像を参照して測定境界面120fのエコー間隔を確認し、バースト信号の波数nと周波数fx、および、ゲートパルスVgateをオンにするタイミングとを設定する。バースト信号の波数nが多すぎるとZ方向の解像度が低下する虞があり、波数nが小さすぎると超音波の周波数成分が所望の周波数成分以外のものを含んでしまう虞がある。バースト信号の周波数fxが高いほど、超音波の焦点を小さくして画像の解像度を向上させることができるが、水110および被検体120の内部に於ける減衰により、画像の信号対雑音比が悪化してしまう虞がある。
オペレータは更に、超音波プローブ20に出力する信号を、インパルス信号からバースト信号に切り替え、図5に示す周波数可変画像130の生成処理を行い、当該周波数可変画像130に基づいて最適な周波数foを決定する。
オペレータは、決定した最適な周波数foのバースト信号による超音波画像を取得し、被検体120の測定境界面120fの最適な超音波画像とし、この被検体120の内部の欠陥などを評価する。
【0038】
図5は、第1の実施形態に於ける周波数可変画像の生成処理を示す図である。
周波数可変画像130の生成処理を開始すると、ステップS10〜S22に於いて、映像表示装置50は、全ての周波数f1〜f6について処理を繰り返す。
ステップS11に於いて、映像表示装置50の走査制御部51は、所定のY方向の走査範囲(ライン)について繰り返す。この所定のY方向の走査範囲とは、各周波数ごとのY方向のライン数である。
ステップS12に於いて、映像表示装置50の走査制御部51は、Y方向の奇数ラインであるか否かを判断する。走査制御部51は、当該判断条件が成立したならば(Yes)、ステップS13の処理を行い、判断条件が成立しなかったならば(No)、ステップS14の処理を行う。
【0039】
ステップS13に於いて、映像表示装置50の走査制御部51は、+X方向に超音波プローブ20を走査し、ステップS15の処理を行う。
ステップS14に於いて、映像表示装置50の走査制御部51は、−X方向に超音波プローブ20を走査する。
ステップS15に於いて、映像表示装置50の走査制御部51は、X方向位置を判断する。走査制御部51は、X方向位置が所定位置に達する前ならば、ステップS15の判断を繰り返し、X方向位置が所定の画素位置ならば、ステップS16の処理を行い、X方向位置がX方向の終端ならば、ステップS19の処理を行う。
【0040】
ステップS16に於いて、映像表示装置50のタイミング制御部53は、当該周波数の超音波を送受信するよう制御する。すなわち、タイミング制御部53は、周波数制御部52とバースト波発信器61を介して、当該周波数のバースト信号を出力し、スイッチ63をバースト波発信器61の出力側に切り替えて、当該バースト信号を圧電素子30に出力するように制御する。これにより、圧電素子30は、当該周波数の超音波を送信し、当該周波数のエコー波(反射波)を受信し、受信信号に変換する。受信信号は、アンプ64によって増幅され、A/D変換器65によってデジタル信号に変換されて、信号処理部66に入力される。
ステップS17に於いて、送受信装置60の信号処理部66は、受信信号を信号処理する。信号処理部66は、ゲートパルスVgateに基づいて受信信号を取り出し、その受信信号の振幅情報、または、その受信信号が所定値の振動を開始したときの時間情報を画像生成部54に出力する。
ステップS18に於いて、映像表示装置50の画像生成部54は、当該位置の画素を算出し、ステップS12の処理に戻る。
【0041】
ステップS19に於いて、映像表示装置50の走査制御部51は、+Y方向に所定ピッチだけ超音波プローブ20を移動する。
ステップS20に於いて、映像表示装置50の走査制御部51は、所定のY方向の走査範囲(ライン)について繰り返したか否かを判断する。走査制御部51は、当該判断条件が成立しなかったならば、ステップS11の処理に戻る。
ステップS21に於いて、映像表示装置50は、全ての周波数f1〜f6について繰り返したか否かを判断する。映像表示装置50は、当該判断条件が成立しなかったならば、ステップS10の処理に戻る。
ステップS22に於いて、映像表示装置50は、超音波の各周波数と、各周波数でスキャンした画像ラインとを対比可能に周波数可変画像130に表示する。
【0042】
図6は、第1の実施形態に於ける周波数可変画像の例を示す図である。図の右方向は、+X方向を示している。図の下方法は、+Y方向を示している。
超音波映像装置10は、圧電素子30に出力する信号を、周波数f1のバースト波に設定する。更に超音波映像装置10は、超音波プローブ20を右上部に移動させたのち、+X方向である図の右方向に走査する。超音波映像装置10は、超音波プローブ20の位置が+X方向の終端であることを検出したならば、超音波プローブ20をY方向に所定ピッチだけ移動させたのち、−X方向である図の左方向に走査する。超音波映像装置10は、これを所定回数だけ繰り返して、所定のYラインの画素を取得することにより、周波数f1の画像部分を取得する。
超音波映像装置10は、圧電素子30に出力する信号を、周波数f2のバースト波に設定し、所定のYラインの画素を取得することにより、周波数f2の画像部分を取得する。以下、超音波映像装置10は、これを周波数f3〜f6について繰り返す。
周波数可変画像130は、上から順に、周波数f1で検査した領域と、周波数f2で検査した領域と、周波数f3で検査した領域と、周波数f4で検査した領域と、周波数f5で検査した領域と、周波数f6で検査した領域とを備えている。各周波数で検査した領域の右側には、検査した周波数が記号で表示されている。
図6によれば、これらの領域のうち、周波数f3で検査した領域が最も良好な画像が得られていることがわかる。図6の場合には、周波数f3を設定して、当該被検体120を再び画像化することにより、最も良好な画像を短時間に生成することができる。
【0043】
(第1の実施形態の効果)
以上説明した第1の実施形態では、次の(A)〜(C)のような効果がある。
【0044】
(A) 超音波映像装置10は、単一の超音波プローブ20を用いた1回の測定により、超音波の周波数を可変させた画像を取得することができる。
【0045】
(B) 超音波映像装置10は、段階的に周波数を変えて1枚の画像として可視化できる。これにより、オペレータは、検査に最適な周波数foを視覚的に判断することができる。
【0046】
(C) オペレータは、最適な周波数foを容易に判断できる。よって、超音波映像装置10は、この最適な周波数foを用いた分解能の高い画像を短時間に生成することができる。
【0047】
(第2の実施形態の構成)
【0048】
図7は、第2の実施形態に於ける超音波映像装置を示す概略の構成図である。
第2の実施形態の超音波映像装置10Aは、受信信号にバンドパスフィルタ67を掛けて、所定の周波数成分を取り出すものである。
第2の実施形態の超音波映像装置10Aは、第1の実施形態の超音波映像装置10(図1)とは異なる映像表示装置50Aと、送受信装置60Aとを備えており、それ以外は同様に構成されている。
第2の実施形態の映像表示装置50Aは、第1の実施形態の映像表示装置50(図1)とは異なる周波数制御部52Aを備えている。周波数制御部52Aには走査制御部51の出力側が接続されている。周波数制御部52Aの出力側には、後記する送受信装置60Aのバンドパスフィルタ67が接続されている。
【0049】
周波数制御部52Aは、受信信号の周波数を、超音波プローブ20の走査位置に応じた所定周波数に制御するものである。
第2の実施形態の送受信装置60Aは、第1の実施形態の送受信装置60とは異なり、バースト波発信器61とスイッチ63とを備えておらず、代わりにバンドパスフィルタ67を備えている。バンドパスフィルタ67には、A/D変換器65の出力側が接続されている。バンドパスフィルタ67の出力側には、信号処理部66が接続されている。バンドパスフィルタ67には更に、周波数制御部52Aの出力側が接続されている。バンドパスフィルタ67は、受信信号の通過帯域を、超音波プローブ20の走査位置に応じた所定帯域に制御し、よって受信信号の周波数を所定周波数に制御するものである。
【0050】
(第2の実施形態の動作)
図7を適宜参照して、第2の実施形態の映像表示装置の動作を説明する。
被検体120の超音波検査を行うにあたり、オペレータは、第1の実施形態と同様に、被検体120を水槽100の底部に設置する。
オペレータは、第1の実施形態と同様に、被検体120の目的とする測定境界面120fを明確化するため、インパルス信号による超音波画像を取得する。このとき、バンドパスフィルタ67は、全ての周波数を通過させるように設定する。
オペレータは、インパルス信号による被検体120の超音波画像を参照して測定境界面120fのエコー間隔を確認し、ゲートパルスVgateをオンにするタイミングを設定し、更に受信信号の通過帯域の周波数f1〜f6を設定する。
オペレータは更に、図8に示す周波数可変画像130の生成処理を行い、当該周波数可変画像130に基づいて最適な周波数foを決定する。
オペレータは、決定した最適な周波数foによる超音波画像を取得し、被検体120の測定境界面120fの最適な超音波画像とし、この被検体120の内部の欠陥などを評価する。
【0051】
図8は、第2の実施形態に於ける周波数可変画像の生成処理を示す図である。
周波数可変画像130の生成処理を開始したのち、ステップS10〜S15の処理は、図5に示すステップS10〜S15の処理と同様である。
ステップS16Aに於いて、映像表示装置50のタイミング制御部53は、インパルス波の超音波を送受信するよう制御する。すなわち、タイミング制御部53は、インパルス波発信器62を介して、インパルス信号を圧電素子30に出力するように制御する。これにより、圧電素子30は、広帯域の周波数を有する超音波を送信し、当該超音波のエコー波を受信し、受信信号に変換する。受信信号は、アンプ64によって増幅され、A/D変換器65によってデジタル信号に変換されて、バンドパスフィルタ67に入力される。
【0052】
ステップS17Aに於いて、送受信装置60のバンドパスフィルタ67は、周波数制御部52Aの出力信号に基づいて、受信信号に、当該周波数を通過帯域とするバンドパスフィルタ処理を掛ける。信号処理部66は、ゲートパルスVgateに基づいて、バンドパスフィルタ67が処理した受信信号を信号処理する。これにより、映像表示装置50は、受信信号の周波数を制御することができる。
ステップS18〜S22の処理は、第1の実施形態のステップS18〜S22の処理(図5)と同様である。
【0053】
(第2の実施形態の効果)
以上説明した第2の実施形態では、次の(D)のような効果がある。
【0054】
(D) バンドパスフィルタ67によって、受信信号の通過帯域を制御しているので、バースト波発信器61などの新たなハードウェアを設けることなく、周波数可変画像130を得ることができる。
【0055】
(第3の実施形態の構成)
【0056】
図9は、第3の実施形態に於ける超音波映像装置を示す概略の構成図である。
第3の実施形態の超音波映像装置10Bは、自動で最適な超音波の周波数foを判断し、当該周波数foによる超音波画像を取得するものである。
第3の実施形態の超音波映像装置10Bは、第1の実施形態の超音波映像装置10(図1)とは異なる映像表示装置50Bを備えており、それ以外は同様に構成されている。
第3の実施形態の映像表示装置50Bは、第1の実施形態の映像表示装置50(図1)に加えて更に、超音波画像のコントラスト値を算出するコントラスト算出部56と、最適周波数調整処理部55とを備えており、それ以外は同様に構成されている。
最適周波数調整処理部55は、走査制御部51などを制御して、被検体120の超音波画像を評価し、超音波の最適な周波数foを自動で検出し、当該検出した周波数foの超音波画像を取得するものである。
コントラスト算出部56は、取得した超音波画像のコントラスト値を算出するものである。コントラスト値とは、最大の白色輝度値を黒色輝度値で除算して得られた値のことをいう。最適周波数調整処理部55は、各超音波画像のコントラスト値が最も高い画像を最適な画像と判断し、その場合に於ける超音波の周波数foを自動で検出している。
【0057】
(第3の実施形態の動作)
【0058】
図7を適宜参照して、第3の実施形態の映像表示装置の動作を説明する。
被検体120の超音波検査を行うにあたり、オペレータは、被検体120を水槽100の底部に設置する。
オペレータは、被検体120の目的とする測定境界面120fを明確化するため、第1の実施形態と同様に、インパルス信号による超音波画像を取得する。
オペレータは、第1の実施形態と同様に、インパルス信号による被検体120の超音波画像を参照して測定境界面120fのエコー間隔を確認し、ゲートパルスVgateをオンにするタイミングを設定し、更にバースト信号の波数nと周波数f1〜f6を設定する。バースト信号の波数nが多すぎるとZ方向の解像度が低下する虞があり、波数nが小さすぎると超音波の周波数成分が所望の周波数成分以外のものを含んでしまう虞がある。バースト信号の周波数f1〜f6が高いほど、超音波の焦点を小さくして画像の解像度を向上させることができるが、被検体120の内部に於ける減衰により、画像の信号対雑音比が悪化してしまう虞がある。
オペレータは更に、超音波プローブ20に出力する信号を、インパルス信号からバースト信号に切り替え、図10に示す最適周波数調整処理を行い、被検体120の測定境界面120fの最適な超音波画像を取得して、この被検体120の内部の欠陥などを評価する。
【0059】
図10は、第3の実施形態に於ける最適周波数調整処理を示す図である。
最適周波数調整処理を開始すると、ステップS30〜S33に於いて、超音波映像装置10Bの最適周波数調整処理部55は、全ての周波数について繰り返す。ここで、全ての周波数とは、当該処理に於いて調整範囲とする周波数の全てのことをいう。
ステップS31に於いて、超音波映像装置10Bは、当該周波数による一部領域の画像化処理(図11)を行う。これにより、超音波映像装置10Bは、当該周波数による超音波画像を生成することができる。この一部領域とは、例えば、画像中央部の幅1/4かつ高さ1/4の領域である。超音波映像装置10Bは、一部領域のみを画像化して最適な周波数foを検出するので、短時間で最適な周波数foを判断することができる。
ステップS32に於いて、超音波映像装置10Bのコントラスト算出部56は、当該周波数による超音波画像のコントラスト値を算出する。
ステップS33に於いて、超音波映像装置10Bの最適周波数調整処理部55は、全ての周波数について繰り返したか否かを判断する。最適周波数調整処理部55は、当該判断条件が成立しなかったならば、ステップS30の処理に戻る。
ステップS34に於いて、超音波映像装置10Bの最適周波数調整処理部55は、最もコントラスト値が高い画像が得られた周波数を特定する。最適周波数調整処理部55は、コントラスト算出部56によって各超音波画像のコントラスト値を評価し、コントラスト値を最大化するように超音波の周波数を最適化している。
ステップS35に於いて、超音波映像装置10Bの最適周波数調整処理部55は、特定した周波数による全領域の画像化処理(図11)を行い、図10の処理を終了する。
【0060】
図11は、第3の実施形態に於ける画像化処理を示す図である。
第3の実施形態の画像化処理は、ステップS31とステップS35とに於いて、超音波映像装置10Bの最適周波数調整処理部55によって呼び出される処理である。ステップS31に於いて、最適周波数調整処理部55は、全画像の一部領域を画像化対象として指定し、当該画像化処理を行う。ステップS35に於いて、最適周波数調整処理部55は、全画像を画像化対象として指定し、当該画像化処理を行う。
画像化処理を開始すると、ステップS11B〜ステップS20Bに於いて、超音波映像装置10Bは、指定されたY方向の走査範囲(ライン)について処理を繰り返す。ここで指定されたY方向とは、上位処理(ステップS31,S35)によって指定された範囲のことをいう。
ステップS12〜S19の処理は、第1の実施形態に於けるステップS12〜S19の処理と同様である。
ステップS20Bに於いて、超音波映像装置10Bは、指定されたY方向の走査範囲(ライン)について処理を繰り返したか否かを判断する。超音波映像装置10Bは、当該判断条件が成立しなかったならば、ステップS11Bの処理に戻る。
ステップS23に於いて、超音波映像装置10Bの画像生成部54は、算出した全ての画素に基づき、超音波画像を生成し、図11の処理を終了する。ここで全ての画素とは、当該画像化処理の上位処理によって指定された全ての画素のことをいう。
【0061】
(第3の実施形態の効果)
以上説明した第3の実施形態では、次の(E),(F)のような効果がある。
【0062】
(E) 超音波映像装置10Bは、超音波画像のコントラスト値によって、最適な検査画像であるか否かを自動で判断している。これにより、オペレータの処理と判断の手間を省くことができる。
【0063】
(F) オペレータの熟練度に依らない客観的な定量指標によって、最適な超音波の周波数を機械的に判断することができる。
【0064】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更実施が可能であり、例えば、次の(a)〜(g)のようなものがある。
【0065】
(a) 上記実施形態は、本発明を、単一焦点型の超音波センサ(超音波プローブ20)を備えた超音波映像装置10,10A,10Bに適用した例である。しかし、これに限られず、本発明は、アレイ型の超音波センサ(超音波プローブ20)を備えた超音波映像装置に適用してもよい。
【0066】
(b) 上記実施形態は、超音波プローブ20によって、超音波を送信し、被検体120で反射したエコー波(超音波)を受信して受信信号に変換している。しかし、これに限られず、送信用の超音波プローブと受信用の超音波プローブとを設け、その中央部に被検体を配置してもよい。これにより、被検体によって反射、散乱、屈折された超音波を受信して受信信号に変換して、超音波画像を生成することができる。
【0067】
(c) 第3の実施形態は、コントラスト値によって最適な画像を判断している。しかし、これに限られず、超音波映像装置10は、画像の高周波成分を評価する高周波成分評価部を備え、当該高周波成分を最大化するように超音波の周波数を最適化してもよい。
【0068】
(d) 上記実施形態の超音波映像装置10が対象とする被検体120は、例えば半導体や集積回路などである。しかし、これに限られず、本発明は、非破壊試験を行う一般的な超音波映像装置や、医療用の超音波診断装置などに適用してもよい。
【0069】
(e) 上記実施形態に於ける周波数可変画像130は、段階的に周波数を変化させて取得した超音波画像である。しかし、これに限られず、超音波映像装置は、連続的に周波数を変化させて取得した超音波画像を周波数可変画像としてもよい。
【0070】
(f) 上記実施形態に於ける周波数可変画像130は、右側に周波数を記号で表示している。しかし、これに限られず、周波数可変画像は、周波数を数値で表示してもよい。
【0071】
(g) 上記実施形態に於ける周波数の可変方法に限られず、パルス数を固定して、パルスごとに周波数を変更してゆく方法や、パルス数と周波数との組み合わせを登録し、その組合せを順次選択して変更していく方法でもよい。これにより、被検体の材質や構造に合った最適な周波数の変更方法や、パルスと周波数との組合せを選択することができる。
【符号の説明】
【0072】
10,10A,10B 超音波映像装置 (測定周波数可変超音波映像装置)
20 超音波プローブ
21 エンコーダ
30 圧電素子
50,50A,50B 映像表示装置
51 走査制御部
52,52A 周波数制御部
53 タイミング制御部
54 画像生成部
55 最適周波数調整処理部 (周波数最適化部)
56 コントラスト算出部 (周波数最適化部)
60,60A 送受信装置
61 バースト波発信器
62 インパルス波発信器
63 スイッチ
64 アンプ
65 A/D変換器
66 信号処理部
67 バンドパスフィルタ (周波数制御部)
70 メカ制御装置 (スキャナ)
71 X軸スキャナ (スキャナ)
72 Y軸スキャナ (スキャナ)
100 水槽
110 水
120 被検体
120s 表面
120f 測定境界面
130 周波数可変画像
図1
図2
図3
図4
図5
図7
図8
図9
図10
図11
図6