(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の園芸用バリカンであるヘッジトリマの一実施形態を添付図面を参照して説明する。
図1〜
図3に示したように、ヘッジトリマ10は、ハウジング11内に設けた電動モータ21の作動により偏心して回転するクランクカム32と、基端部に形成された嵌合孔41a,42aにクランクカム32の偏心カム33,34が嵌合した上下一対のシャーブレード41,42を往復動可能に一体的に組み付けるとともに、ハウジング11の底部に着脱可能に固定するガイドプレート43,44を有するブレードアセンブリ40とを備えている。
【0012】
図8に示したように、このヘッジトリマ10においては、ガイドプレート44にはシャーブレード41,42の嵌合孔41a,42aと対向する位置に開口部44bを形成し、クランクカム32には開口部44bから嵌合孔41a,42aに対するクランクカム32の偏心カム33,34の位置を調整するための組付操作部33a,34aを設けた。
【0013】
図1〜
図3に示したように、ヘッジトリマ10のハウジング11は、外殻ハウジング12と、内殻ハウジング13とからなる。外殻ハウジング12は左右二つのパーツ12a、12bにより構成され、外殻ハウジング12内には電動モータ21とともに冷却ファン22とクランク機構30とを内蔵した内殻ハウジング13が組み付けられている。外殻ハウジング12は、後部に作業者が一方の手で把持するグリップ12cが一体的に形成され、前部に作業者が他方の手で把持するフロントグリップ14が取り付けられている。外殻ハウジング12の前部にはフロントグリップ14より前側にチップガード15が固定されており、チップガード15は切断した枝葉が作業者に向けて飛散するのを防止するものである。
【0014】
図3に示したように、内殻ハウジング13には電動モータ21とともに冷却ファン22とクランク機構30とが収容されている。電動モータ21は内殻ハウジング13内に直立して設けられている。電動モータ21の駆動軸21aには冷却ファン22が取り付けられている。冷却ファン22は電動モータ21の作動による回転により、電動モータ21の周囲に空気を通過させて電動モータ21を冷却するものである。
【0015】
図3及び
図4に示したように、クランク機構30は、電動モータ21の回転駆動を一対のシャーブレード41,42の前後方向(長手方向)の相対的な往復動に変換するものであり、内殻ハウジング13の底部に設けられている。クランク機構30は、電動モータ21の駆動軸21aの先端のピニオンギヤ21bに係合する減速ギヤ31と、減速ギヤ31の下側に連結されたクランクカム32とからなる。
【0016】
減速ギヤ31は回転中心に設けた回転軸31aに着脱可能かつ回転可能に支持されている。減速ギヤ31の外周には電動モータ21の駆動軸21aの先端のピニオンギヤ21bに係合する歯部が形成されている。
【0017】
図3及び
図4に示したように、クランクカム32は同じ大きさの2枚の円板よりなる偏心カム33,34の一部を上下に重ねて一体的に固定したものである。クランクカム32の偏心カム33,34は減速ギヤ31の回転軸31aを挟んで対向する位置、すなわち180°の位相差となるように配置されている。クランクカム32の上面には両偏心カム33,34の交点を通る線上に連結ピン35,35が上方に突出して設けられており、クランクカム32は連結ピン35,35を減速ギヤ31の下面に形成した連結孔31b,31bに着脱可能に挿通して連結されている。なお、クランクカム32の連結ピン35,35と減速ギヤ31の連結孔31b,31bとの間には、振動の伝達を抑制する柔軟弾性部材よりなる筒形のブッシュ36,36と、ブッシュ36,36の破損を防ぐ筒状の金属製のストッパ37,37とが介装されている。
【0018】
図4及び
図8に示したように、クランクカム32の偏心カム33,34の下面には、偏心カム33,34を回転軸31a回りに回転させて、偏心カム33,34の位置を調整するための凹部よりなる組付操作部33a,34aが形成されている。組付操作部33a,34aは、ブレードアセンブリ40を内殻ハウジング13に組付けるときに、偏心カム33,34を横方向に一直線上に並ぶようにして、偏心カム33,34をシャーブレード41,42の嵌合孔41a,42aに対して着脱可能に嵌合する着脱位置に位置調整するためのものである。
【0019】
図3〜
図6に示したように、内殻ハウジング13の下面にはブレードアセンブリ40が着脱可能に取り付けられている。ブレードアセンブリ40は互いに上下に重なり合う一対のシャーブレード41,42と、これら一対のシャーブレード41,42を前後方向に摺動可能に上下両側から挟んで保持するガイドプレート43,44と、シャーブレード41,42の基端部の間を所定間隔にて保持するスペーサ45とからなる。
【0020】
シャーブレード41,42には長手方向の両側部に複数の刃部が櫛状に形成されている。シャーブレード41,42の基端部には、半径が同じ2つの半円形が直線により繋がった(陸上競技のトラック形をした)横方向に長い嵌合孔41a,42aが形成されている。これら嵌合孔41a,42aは互いに同じ大きさとなっており、各嵌合孔41a,42aは各偏心カム33,34が前後方向に隙間なく嵌合する大きさとなっている。各嵌合孔41a,42aには、クランクカム32の各偏心カム33,34が長手方向に沿ってスライド移動可能に嵌合している。一対のシャーブレード41,42は上下のガイドプレート43,44に挟まれた状態にてボルト46により固定されている。上下のシャーブレード41,42には長手方向に沿ってボルト46が挿通された部分の前後方向の移動を許容する長孔41b,42bが形成されており、一対のシャーブレード41,42は前後方向に摺動自在にガイドプレート43,44に保持されている。
【0021】
着脱位置にある偏心カム33,34が各嵌合孔41a,42aに嵌合しているとき、嵌合孔41a,42aは上下に整列している。このとき、上側のシャーブレード41を下方に移動させても下側の偏心カム34に当たることのない位置となっている。このように、着脱位置にある偏心カム33,34が嵌合する位置で嵌合孔41a,42aを上下に整列させたときに、一対のシャーブレード41,42は嵌合孔41a,42aに偏心カム33,34を着脱可能に嵌合させることができる取付位置となる。
【0022】
図6及び
図7(a)に示したように、一対のシャーブレード41,42と上下のガイドプレート43,44には、一対のシャーブレード41,42が上記の取付位置にあるときに、上下に整列する位置決め孔41c,42c,43a,44aが形成されている。これら位置決め孔41c,42c,43a,44aは、ブレードアセンブリ40を内殻ハウジング13の底部に取り付ける際に、一対のシャーブレード41,42の前後方向の位置を着脱位置にした偏心カム33,34が嵌合孔41a,42aに嵌合する位置に位置決めをするためのものである。なお、ブレードアセンブリ40を取り付ける際に、ドライバのような棒状工具Tを位置決め孔41c,42c,43a,44aに挿通すれば、一対のシャーブレード41,42の前後方向の位置決めを容易にすることができる。
【0023】
図7(a)に示したように、一対のシャーブレード41,42と上側のガイドプレート43の位置決め孔41c,42c,43aは同じ大きさの円形孔であり、下側のガイドプレートの位置決め孔44aは、他の位置決め孔41c,42c,43aの径より前後方向に長い長孔である。
図7(b),(c)に示したように、下側のガイドプレート44の前後方向に長い位置決め孔44aは、全ての位置決め孔41c,42c,43a,44aを挿通した棒状工具Tの前後方向への傾動を可能にし、棒状工具Tの傾動により一対のシャーブレード41,42の前後方向の位置を微調整させるものである。
【0024】
図8に示したように、下側のガイドプレート44は基端部がクランク機構30を収容した内殻ハウジング13の底面を覆っている。下側のガイドプレート44には、シャーブレード41,42の嵌合孔41a,42aと対向する位置に開口部44bが形成されている。開口部44bはガイドプレート44からクランクカム32の偏心カム33,34の組付操作部33a,34aが現れるようにしたものである。ブレードアセンブリ40をハウジング11の底部に組み付ける際には、下側のガイドプレート44を内殻ハウジング13の底部に取り付けた状態で、開口部44bから偏心カム33,34の組付操作部33a,34aを摘み、偏心カム33,34が横方向に並ぶ着脱位置となるように操作できる。下側のガイドプレート44の下面には、開口部44bを塞ぐカバープレート47が着脱可能に取り付けられている。
【0025】
上記のように構成したヘッジトリマ10の作動について説明する。ヘッジトリマ10において、電動モータ21を作動させると、クランク機構30を介して一対のシャーブレード41,42が前後方向に互いに逆方向に往復動する。詳述すると、電動モータ21の回転駆動により、駆動軸21aの先端のピニオンギヤ21bに係合した減速ギヤ31が回転し、減速ギヤ31に連結したクランクカム32の各偏心カム33,34は互いに180°の位相差をもって回転軸31aに対して偏心的に回転する。偏心的に回転するクランクカム32の各偏心カム33,34はシャーブレード41,42の基端部の嵌合孔41a,42a内を長手方向に沿ってスライド移動しながら一対のシャーブレード41,42を前後方向に互いに逆向きに往復動させる。グリップ12cとフロントグリップ14とを把持して、互いに逆向きに往復動するシャーブレード41,42を生け垣等の刈り取り面に当てることで、生け垣等の枝葉はシャーブレード41,42の刃部により刈り取られる。
【0026】
次に、上記のように構成したヘッジトリマ10のブレードアセンブリ40の取り付けについて説明する。ヘッジトリマ10の内殻ハウジング13の底部においては、減速ギヤ31に連結したクランクカム32を偏心カム33,34が横方向に並ぶ着脱位置にする。次に、内殻ハウジング13に取り付ける前のブレードアセンブリ40では、ドライバーのような棒状工具Tを位置決め孔41c,42c,43a,44aに挿通して、位置決め孔41c,42c,43a,44aを上下に整列させ、一対のシャーブレード41,42の嵌合孔41a,42aを横方向に並んだ着脱位置にある偏心カム33,34に嵌合させることが可能な取付位置にする。
【0027】
ブレードアセンブリ40を取り付けるときには、上側のシャーブレード41の嵌合孔41aにクランクカム32の下側の偏心カム34を挿通させてから上側の偏心カム33を嵌合させ、下側のシャーブレード42の嵌合孔42aに下側の偏心カム34を嵌合させ、下側のガイドプレート44を内殻ハウジング13の底面にねじにより取り付ける。このとき、クランクカム32の偏心カム33,34が精度良く横方向に並んでなく、下側の偏心カム34が上側のシャーブレード41の嵌合孔41aの周縁部に当たって、下側の偏心カム34が上側の嵌合孔41aを通過できないことがある。このようなときには、下側のガイドプレート44をハウジング11の下面にねじにより仮止めして取り付けた状態で、下側のガイドプレート44の開口部44bから偏心カム33,34の組付操作部33a,34aを摘み、偏心カム33,34を回転軸31aを中心として僅かに回転させ、偏心カム33,34が横方向に精度良く並ぶように操作する。これにより、下側のガイドプレート44をハウジング11の下面にねじで仮止めして取り付けた状態で、上側のシャーブレード41の嵌合孔41aにクランクカム32の下側の偏心カム34を挿通させてから上側の偏心カム33を嵌合させ、これと同時に下側のシャーブレード42の嵌合孔42aにクランクカム32の下側の偏心カム34を嵌合させることができる。
【0028】
このように、ブレードアセンブリ40においては、クランクカム32の偏心カム33,34が横方向に精度良く並んでないときに、下側のガイドプレート44をハウジング11から取り外すことなく、ガイドプレート44の開口部44bから偏心カム33,34を横方向に精度良く並ぶようにして、偏心カム33,34をシャーブレード41,42の嵌合孔41a,42aに嵌合させることができ、ブレードアセンブリ40の組み付け作業が容易となった。
【0029】
また、棒状工具Tを位置決め孔41c,42c,43a,44aに挿通してこれらを上下に整列させ、偏心カム33,34を横方向に精度良く並ぶようにさせても、シャーブレード41,42の嵌合孔41a,42aがその寸法公差によって偏心カム33,34に嵌合する位置から前後方向に僅かにずれ、嵌合孔41a,42aに偏心カム33,34を嵌合させることができないことがある。このようなときには、
図7(b),(c)に示したように、位置決め孔41c,42c,43a,44aに挿通した棒状工具Tを前後方向に傾動させることで、シャーブレード41,42の少なくとも一方の前後方向の位置を微調整し、嵌合孔41a,42aに偏心カム33,34を嵌合させることができる。
【0030】
また、
図9及び
図10に示したように、ブレードアセンブリ40はシャーブレード41,42の刃部とともに下側のガイドプレート44を覆うカバー48を備えるとさらによい。カバー48には上記の位置決め孔41c,42c,43a,44aと上下に整列する位置決め孔48aを形成し、位置決め孔48aは下側のガイドプレート44と同様に前後方向に長い長孔とした。このように、ブレードアセンブリ40はカバー48を装着した状態で、棒状工具Tによりシャーブレード41,42の少なくとも一方の前後方向の位置を微調整することができ、安全にブレードアセンブリ40の取り付け作業をすることができる。
【0031】
上述の実施形態では、組付操作部33a,34aは偏心カム33,34の下面に形成した凹部による例を示したが、偏心カム33,34の下面に突部等のように手指により摘んで偏心カム33,34の位置を調整できる組付操作部を形成してもよい。これに応じて、カバープレート47には突部等を回避する逃がし部を形成するとよい。なお、組付操作部33a,34aは、偏心カム33,34を貫通する孔であっても、底部を有する穴であってもよい。
【0032】
上述の実施形態では、下側のガイドプレート44の位置決め孔44aを他の位置決め孔41c,42c,43aより前後方向に長くしたが、下側のガイドプレート44の長孔よりなる位置決め孔44aとともに上側のガイドプレート43の位置決め孔43aを他の位置決め孔41c,42cより前後方向に長い長孔としてもよい。また、下側のガイドプレート44の位置決め孔44aを他の位置決め孔41c,42cと前後方向に同じ長さとし、上側のガイドプレート43の位置決め孔43aを他の位置決め孔41c,42c,44aより前後方向に長くしてもよい。さらに、前後方向の長さを長くした位置決め孔は長孔に限られるものでなく、全体の径を大きくすることによって前後方向の長さを長くしてもよい。
【0033】
上述した実施形態は生け垣の枝葉を切断するヘッジトリマについて説明したが、本発明の園芸用バリカンは、クランク機構を介して一対のシャーブレードが左右方向に往復動する芝刈バリカンにも適用される。
【0034】
また、上述の実施形態では、クランク機構の2つの偏心カムを上下一対のシャーブレードの各嵌合孔に嵌合させることによりシャーブレードの両方を相対的に前後方向に往復動させる例を示した。本発明は、ブレードアセンブリをハウジングに取り付ける際に、2つの偏心カムを上下一対のシャーブレードの各嵌合孔に一度に嵌合させるときの難しさを解消することができるものである。しかし、本発明はこれに限られるものでなく、一方のシャーブレードが固定されており、他方のシャーブレードの嵌合孔にクランク機構の1つの偏心カムが嵌合することによって片方のシャーブレードだけが前後方向に相対的に往復動する片刃駆動のヘッジトリマにも適用される。