特許第5873778号(P5873778)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立建機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5873778-作業機械 図000002
  • 特許5873778-作業機械 図000003
  • 特許5873778-作業機械 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873778
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20160216BHJP
【FI】
   E02F9/00 N
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-185478(P2012-185478)
(22)【出願日】2012年8月24日
(65)【公開番号】特開2014-43689(P2014-43689A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2014年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣木 聖
(72)【発明者】
【氏名】儘田 知憲
(72)【発明者】
【氏名】松下 慎
【審査官】 石井 哲
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−020361(JP,A)
【文献】 特開2006−037466(JP,A)
【文献】 特開2012−144947(JP,A)
【文献】 特開2007−100351(JP,A)
【文献】 特開2007−069673(JP,A)
【文献】 特開2009−113658(JP,A)
【文献】 特開2002−309621(JP,A)
【文献】 特開2009−007764(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0200193(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0146860(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
B62D 25/10−25/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、この本体に取り付けられる作業装置と、上記本体に形成された開口部を遮蔽可能なカバー部材と、このカバー部材が回動可能に取り付けられるヒンジとを備え、
上記ヒンジは、上記本体内に配置される支持部材に締結具を介して取り付けられる第1板材と、上記カバー部材に取り付けられる第2板材と、上記第1板材と上記第2板材を相対的回動可能に連結する回動支持部とを含み、上記カバー部材によって上記開口部が遮蔽された状態にあって、上記第1板材と上記第2板材とを略対向して配置した作業機械において、
上記カバー部材によって上記開口部が遮蔽された状態にあって、上記第2板材に対して上記第1板材を傾斜状に配置して保持するヒンジ受け板から成る傾斜保持部を上記支持部材に設けられた切り欠きに形成したことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
上記カバー部材は、上記本体に設けられるエンジン室の上方部分に形成された開口部を遮蔽可能で、上下方向に回動可能なエンジンカバーから成り、
上記エンジンカバーの裏面に上記ヒンジの上記第2板材が溶接により取り付けられ、
上記エンジンカバーを回動不能に施錠する施錠装置を備えたことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項に記載の作業機械において、
上記本体の後方位置に重量バランスを確保するカウンタウェイトを備え、
上記本体の前後方向に沿う上記エンジンカバーの前後方向の上記カウンタウェイト側に位置する上記エンジンカバーの端部に、上記ヒンジを配置したことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体に形成された開口部を遮蔽するカバー部材を本体内に設けられる支持部材に回動可能に連結するヒンジを備えた油圧ショベル等の作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の作業機械、例えば従来の油圧ショベルは一般に、本体を形成する走行体及び旋回体と、旋回体に上下方向の回動可能に取り付けられる作業装置と、旋回体に設けられ、エンジン及び油圧ポンプが収納されるエンジン室とを備えている。エンジン室の上方部分には開口部が形成され、この開口部を遮蔽可能なカバー部材、すなわちエンジンカバーが設けられている。また、エンジンカバーが回動可能に取り付けられるヒンジを備えている。
【0003】
ヒンジは、例えば旋回体内に配置される支持部材にボルト及びナットを含む締結具を介して締結される第1板材と、エンジンカバーの裏面に例えば溶接される第2板材と、第1板材に対して第2板材を相対的回動可能に連結する回動支持部とを含んでいる。
【0004】
上述したヒンジ取り付け構造を有する油圧ショベルでは、エンジンカバーを開くことにより、エンジン室の上方部分に形成された開口部からのエンジン室内の機器の保守点検作業が可能になる。またエンジンカバーを閉じることにより、エンジン室内が保護される。エンジンカバーを閉じた状態でエンジンカバーが回動不能となるように施錠することも従来行われている。
【0005】
上述のようにエンジンカバーが閉じられた状態では、ヒンジの第1板材と第2板材とが互いに略水平状態で対向、または当接する形態に、ヒンジが保持されようになっている。この種の従来技術として例えば特許文献1に示すものがある。
【0006】
なお、旋回体に形成され、カバー部材で遮蔽可能な開口部は、上述のようにエンジン室の上方部分に形成される開口部には限られない。例えば、エンジン室の側部に形成される開口部も存在する。このような開口部が存在する場合には、上述と同様のヒンジ取り付け構造で開口部を遮蔽可能なカバー部材を取り付けることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−100351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来技術にあっては、エンジンカバー等のカバー部材が閉じられた状態では、ヒンジの第1板材と第2板材とが互いに対向、または当接する形態にヒンジが保持されることから、ヒンジの第1板材を締結している締結具がボルトの場合、例えばボルト頭部がヒンジの第2板材と干渉する虞がある。このような干渉を生じると、作業装置によって繰り返し行われる作業に伴って、締結具による締結が緩むことが起こり得る。また、締結具あるいはヒンジに損傷を生じる懸念がある。
【0009】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、カバー部材が閉じられた状態にあって、ヒンジの第1板材を締結する締結具と、ヒンジの第2板材との干渉を防ぐことができる作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、本発明は、本体と、この本体に取り付けられる作業装置と、上記本体に形成された開口部を遮蔽可能なカバー部材と、このカバー部材が回動可能に取り付けられるヒンジとを備え、上記ヒンジは、上記本体内に配置される支持部材に締結具を介して取り付けられる第1板材と、上記カバー部材に取り付けられる第2板材と、上記第1板材と上記第2板材を相対的回動可能に連結する回動支持部とを含み、上記カバー部材によって上記開口部が遮蔽された状態にあって、上記第1板材と上記第2板材とを略対向して配置した作業機械において、上記カバー部材によって上記開口部が遮蔽された状態にあって、上記第2板材に対して上記第1板材を傾斜状に配置して保持するヒンジ受け板から成る傾斜保持部を上記支持部材に設けられた切り欠きに形成した構成にしてある。
【0011】
このように構成した本発明は、本体に形成した開口部がカバー部材によって遮蔽された状態では、ヒンジ受け板から成る傾斜保持部によってヒンジの第2板材が締結具に接触しないように保持される。すなわち本発明は、カバー部材が閉じられた状態にあって、ヒンジの第1板材を締結する締結具と、ヒンジの第2板材との干渉を防ぐことができ
【0012】
た本発明は、上記発明において、上記カバー部材は、上記本体に設けられるエンジン室の上方部分に形成された開口部を遮蔽可能で、上下方向に回動可能なエンジンカバーから成り、上記エンジンカバーの裏面に上記ヒンジの上記第2板材溶接により取り付けられ、上記エンジンカバーを回動不能に施錠する施錠装置を備えたことを特徴としている。
【0013】
また本発明は、上記発明において、上記本体の後方位置に重量バランスを確保するカウンタウェイトを備え、上記本体の前後方向に沿う上記エンジンカバーの前後方向の上記カウンタウェイト側に位置する上記エンジンカバーの端部に、上記ヒンジを配置したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、カバー部材が閉じられた状態にあって、ヒンジの第1板材を締結する締結具と、ヒンジの第2板材との干渉をヒンジ受け板から成る傾斜保持部によって防止できる。これにより、従来懸念されていた作業装置の作業等に伴うヒンジを締結する締結具による締結の緩みを防ぎ、堅牢な締結構造を実現させることができる。また、締結具あるいはヒンジの第2板材の損傷を防ぐことができる。したがって本発明は、信頼性の高いヒンジ取り付け構造を有する作業機械を実現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る作業機械の実施形態を構成する油圧ショベルの側面図である。
図2実施形態に備えられるヒンジ取り付け構造の一例を示す分解斜視図である。
図3図2のA断面拡大図であ
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る作業機械の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0017】
図1は本発明に係る作業機械の実施形態を構成する油圧ショベルの側面図、図2実施形態に備えられるヒンジ取り付け構造の一例を示す分解斜視図、図3図2のA断面拡大図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る作業機械は、例えば油圧ショベルであり、この油圧ショベルは、走行体1と、この走行体1上に配置される旋回体2とを備えている。これらの走行体1と旋回体2とによって本体が構成されている。旋回体2には上下方向の回動可能な作業装置3を取り付けてある。作業装置3は、旋回体2に取り付けられるブーム4と、このブーム4の先端に取り付けられるアーム5と、このアーム5の先端に取り付けられるバケット6とを含んでいる。旋回体2の前側位置には運転室7が配置され、後側位置には重量バランスを確保するカウンタウェイト8を配置してある。運転室7とカウンタウェイト8との間には、エンジン及び油圧ポンプ等が収容されるエンジン室9を配置してある。エンジン室9の上方部分には開口部が形成されており、その開口部を遮蔽可能なカバー部材、すなわちエンジンカバー10を設けてある。
【0019】
図2,3に示すように、エンジンカバー10はヒンジ16に取り付けられ、上方向に、または上方向から水平状態となるまでの下方向に、回動可能になっている。このエンジンカバー10は基本的な形状が平板形状となっている。これにより運転室7内のオペレータの後方視界を確保できる。ヒンジ16は、本体の前後方向に沿うエンジンカバー10の前後方向のカウンタウェイト8側に位置するエンジンカバー10の端部に設けてある。エンジンカバー10には、ヒンジ16を設けた側と反対側、すなわち前側位置に、エンジンカバー10の開閉に際して活用される取っ手11を設けてある。また、エンジンカバー10にはキー穴12を形成してある。このキー穴12、及びキー穴12に挿入される図示しないキーによって、エンジンカバー10を回動不能に施錠する施錠装置が構成されている。エンジンカバー10上の取っ手11の反対側に位置する端部には、ヒンジ16が取り付けられるヒンジ取り付け部13を突出させて形成してある。
【0020】
図2,3に示すように、ヒンジ16は、例えば本体、すなわちエンジン室9内に配置されている支持部材14に締結具を介して取り付けられる第1板材16aと、エンジンカバー10のヒンジ取り付け部13の裏面に溶接される第2板材16bと、第1板材16aと第2板材16bとを相対的回動可能に連結する回動支持部16cとを含んでいる。第1板材16aにはボルト穴16dを形成してある。上述した締結具は、ワッシャ17に挿入されるボルト18と、このボルト18に螺合するナット19とから成っている。
【0021】
図2,3に示すように、支持部材14には2つの切り欠き14aを形成してあり、これらの切り欠き14aのそれぞれに、例えば45°傾斜させて配置されるヒンジ受け板15を溶接してある。ヒンジ受け板15にはボルト穴15aを形成してある。
【0022】
実施形態に係る油圧ショベルは、エンジンカバー10によってエンジン室9の上方部分に形成された図示しない開口部が遮蔽された状態にあって、ヒンジ16の第2板材16bを、ボルト18及びナット19を含み第1板材16aを締結する締結具と接触させないように、エンジンカバー10のヒンジ取り付け部13の裏面に溶接された第2板材16bに対して第1板材16aを傾斜状に配置して、ヒンジ16を保持する傾斜保持部を備えている。
【0023】
上述した傾斜保持部は、例えばヒンジ16の第1板材16aを第2板材16bに対して傾斜状に保持する上述したヒンジ受け板15から成っている。
【0024】
ワッシャ17に挿入されたボルト18は、ヒンジ16の第1板材16aのボルト穴16d、及びヒンジ受け板15のボルト穴15aに挿入された状態でナット19が螺合する。ボルト18とナット19とによって、ヒンジ16の第1板材16aと、支持部材14に溶接されたヒンジ受け板15とが堅固に締結される。
【0025】
エンジン室9内の保守点検作業に際しては、図2に示すエンジンカバー10のキー穴12にキーが挿入されて施錠が解かれ、取っ手11を把持してエンジンカバー10を上方に引き上げることが行われる。これにより、エンジン室9の上方部分に形成された図示しない開口部が開かれ、この開口部を介して所望の保守点検作業を行うことができる。保守点検作業の終了後には、エンジンカバー10を略水平状態となるまで下方に回動させ、このエンジンカバー10によって開口部が閉じられる。この状態でエンジンカバー10のキー穴12に再びキーが挿入され、施錠される。これにより、エンジン室9内の各種機器が保護される。
【0026】
このように構成した実施形態によれば、旋回体2のエンジン室9の上方部分に形成した図示しない開口部がエンジンカバー10によって遮蔽された状態では、図3に示すように、傾斜状のヒンジ受け板15によって、ヒンジ16の第2板材16bが第1板材16aを締結するボルト18及びナット19を含む締結具に接触しないように保持される。すなわち、旋回体2内に配置される支持部材14に溶接されたヒンジ受け板15とヒンジ16の第1板材16aとを締結するボルト18の頭部と、エンジンカバー10のヒンジ取り付け部13の裏面に溶接されたヒンジ16の第2板材16bとの干渉を防ぐことができる。
【0027】
これにより、作業装置3の作業等に伴うヒンジ16の第1板材16aとヒンジ受け板15との締結の緩みを防ぎ、堅牢な締結構造を実現させることができる。また、締結具を構成するボルト18及びナット19、あるいはヒンジ16の第2板材16bの損傷を防ぐことができる。したがって、信頼性の高いヒンジ取り付け構造を有する油圧ショベルを実現させることができる。
【0028】
また、カウンタウェイト8側に位置するエンジンカバー10の端部にヒンジ16を配置してあるので、エンジンカバー10を上方向に開いた際に、エンジン室9内の機器の保守点検作業を行う作業者がカウンタウェイト側に入り込まないように規制することができる。
【0029】
また、上記実施形態は、ヒンジ16の第1板材16aをエンジン室9内に配置した支持部材14に溶接したヒンジ受け板15にボルト18とナット19によって締結し、ヒンジ16の第2板材16bをエンジンカバー10のヒンジ取り付け部13の裏面に溶接した構成にしてあることから、締結部を構成するボルト18及びナット19を外部に露出させることなく旋回体2内に位置させることができる。これにより、悪意ある者がボルトを緩めてエンジンカバー10を取り外すことでエンジンにアクセスすることを防止できるとともに、エンジンカバー10も含めて旋回体2の優れた美観を確保することができ
【0030】
お、上記実施形態は、旋回体2に形成された開口部を遮蔽するカバー部材として、エンジン室9の上方部分に形成された図示しない開口部を遮蔽するエンジンカバー10を備えているが、本発明は、カバー部材としてエンジンカバー10を備えることには限定されない。例えばカバー部材として、エンジン室9の側部に形成された開口部を遮蔽するドアを設け、旋回体2内に配置される支持部材にドアを回動可能に連結するヒンジ取り付け構造を備え、このヒンジ取り付け構造を上述した各実施形態のヒンジ取り付け構造としてもよ
【符号の説明】
【0031】
1 走行体(本体)
2 旋回体(本体)
3 作業装置
9 エンジン室
10 エンジンカバー(カバー部材)
12 キー穴
13 ヒンジ取り付け部
14 支持部材
14a 切り欠き
15 ヒンジ受け板[傾斜保持部]
15a ボルト穴
16 ヒンジ
16a 第1板材
16b 第2板材
16c 回動支持部
16d ボルト穴
17 ワッシャ
18 ボルト(締結具)
19 ナット(締結具)
図1
図2
図3