特許第5873785号(P5873785)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873785
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】ボルト・ナットの素地調整工具
(51)【国際特許分類】
   B24B 29/00 20060101AFI20160216BHJP
   B24B 27/033 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   B24B29/00 C
   B24B27/033 Z
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-234743(P2012-234743)
(22)【出願日】2012年10月24日
(65)【公開番号】特開2014-83639(P2014-83639A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2014年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】592185585
【氏名又は名称】株式会社ブリッジ・エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】坂本 光重
(72)【発明者】
【氏名】藤井 駿
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭52−071270(JP,U)
【文献】 実公昭48−000627(JP,Y1)
【文献】 実開昭53−036794(JP,U)
【文献】 実開昭63−113561(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 29/00
B24B 27/033
B24D 13/02
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端が開口したカップ状本体と、このカップ状本体の内周面に装着している螺旋ブラシと、カップ状本体の天壁部の中心部に上方に向かって突設している回転駆動用軸体とを備えてなるボルト・ナットの素地調整工具であって、上記螺旋ブラシは、断面U字状のチャンネル部材の溝にカップ状本体の半径方向に向けてボルト・ナットの周面を研削するための多数本のブラシ線材を一列状に集束させた状態にしてその基端部を挟着させてなるチャンネルブラシを、そのチャンネル部材の溝の外底面側がカップ状本体の内周面に接するように螺旋方向に一巻き状に湾曲させてなると共に、上記チャンネル部材の上端に外周面をカップ状本体の上端部内周面に着脱自在に装着したブラシ線材を設けていない円環状部分を連設していることを特徴とするボルト・ナットの素地調整工具。
【請求項2】
円環状部分の外周面の少なくとも2個所に螺軸を突設している一方、カップ状本体の周壁にこれらの螺軸を挿通させる上下方向に長い長孔を穿設してあり、この長孔に上記螺軸を挿通してナットを螺締することによりカップ状本体の内周面に螺旋ブラシを装着するように構成していることを特徴とする請求項1に記載のボルト・ナットの素地調整工具。
【請求項3】
カップ状本体の天壁部下面にボルト・ナットの頂面を研削するためのチャンネルブラシが一文字状または十文字状に装着していることを特徴とする請求項1に記載のボルト・ナットの素地調整工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁や鉄道の高架橋などの構造物の添接ボルトの頭部表面やナットの表面に発生している錆や劣化した塗膜を研削除去するための素地調整工具に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁などの鋼製構造物の構成部材間を締結している添接ボルトやナットには、防食のための塗装が施されているが、経年劣化によって塗膜の防食効果が低下すると共に錆が発生するために定期的な塗り替えが必要となる。この塗り替え作業を行う際の前処理として、上記ボルト頭やナットの表面の劣化した塗膜や錆を除去するための素地調整を行わなければならず、従来から、このような素地調整手段として、例えば、特許文献1に記載されているような工具が使用されている。
【0003】
この素地調整工具は、長さ方向の一端が全面的に開口し、他端が天壁部によって閉止されているカップ状の本体の内周面に、このカップ状本体の長さ方向に長い一定長さを有する直状のチャンネル部材に、多数本の金属線材を集束させた状態でその基端部を挟着させてなるチャンネルブラシを複数本、周方向に等間隔毎に取付けてこれらのチャンネルブラシの上記金属線材からなるブラシ線材をチャンネル部材からカップ状本体の中心に向かって半径方向に突出させ、さらに、カップ状本体の上記天壁部の中心に回転駆動用軸体を突設してなる構造を有している。
【0004】
この素地調整工具によってボルト頭やナットの素地調整を行うには、電動ドリルやディスクグラインダ等の電動工具を使用してこの電動工具の回転軸をカップ状本体の天板中心部に突設している中心軸体に連結し、この状態にしてカップ状本体をボルト頭に被せてチャンネルブラシのブラシ線材の先端部をボルト頭やナットの周面に摺接させ、電動工具を駆動してカップ状本体を回転させることにより、ボルト頭やナットの表面の劣化塗膜や錆をブラシ線材によって落として塗装に適する状態に素地調整を施している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−218449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記素地調整工具によれば、カップ状本体の内周面に装着しているチャンネルブラシは、そのチャンネル部材をカップ状本体の長さ方向に向けた状態にしてカップ状本体の周方向に等間隔毎に配設されているため、ボルト頭やナット(以下、ボルト頭とする)の表面の素地調整を行うに際して、カップ状本体を該ボルト頭に被せると、各チャンネル部材からカップ状本体の半径方向に突設しているブラシ線材の先端部がボルト頭の周面における一定幅部分においてボルト頭の全長に亘って摺接した状態となり、この状態でカップ状本体を回転させると、ブラシ線材の先端部がボルト頭の角部を通過する毎にカップ状本体の回転方向と反対方向に大きな曲げ作用を繰り返し受けるが、その曲げ方向にはカップ状本体の周方向に隣接するチャンネルブラシ間の空間部が存在しているため、ブラシ線材の先端部がその空間部に向かって大きく屈折変形し、その曲げ応力によって疲労破壊が生じて短時間でボルト頭の劣化塗膜や錆等の研削除去機能が低下し、寿命が短くなるといった問題点がある。
【0007】
さらに、カップ状本体の内周面にその長さ方向をカップ状本体の長さ方向に向けた状態にして装着している直状のチャンネル部材からカップ状本体の中心に向かって突出しているブラシ線材は、チャンネル部材に挟着されている基端部においては互いに密接した状態で集束されているが、先端に向かうに従ってその集束状態が解かれて拡がった状態となるため、ボルト頭の周面に摺接するブラシ線材の先端密度が粗となり、カップ状本体の周方向に隣接するチャンネルブラシ間にブラシ線材が摺接していない空間部が存在することと相まってブラシ線材による研削能力が低下し、ボルト頭の表面を素地調整するには比較的長い時間を要して橋梁などの構造物に設けている多数の添接ボルトを能率よく素地調整することができなくなるといった問題点がある。
【0008】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、ボルト頭の表面やナット表面の劣化した塗膜やその表面に生じている錆を能率よく且つ確実に研削除去することができると共に長時間の使用に供することができるボルト・ナットの素地調整工具を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明のボルト・ナットの素地調整工具は、請求項1に記載したように、下端が開口したカップ状本体と、このカップ状本体の内周面に装着している螺旋ブラシと、カップ状本体の天壁部の中心部に上方に向かって突設している回転駆動用軸体とを備えてなるボルト・ナットの素地調整工具であって、上記螺旋ブラシは、断面U字状のチャンネル部材の溝にカップ状本体の半径方向に向けてボルト・ナットの周面を研削するための多数本のブラシ線材を一列状に集束させた状態にしてその基端部を挟着させてなるチャンネルブラシを、そのチャンネル部材の溝の外底面側がカップ状本体の内周面に接するように螺旋方向に一巻き状に湾曲させてなると共に、上記チャンネル部材の上端に外周面をカップ状本体の上端部内周面に着脱自在に装着したブラシ線材を設けていない円環状部分を連設していることを特徴とする。
【0012】
請求項に係る発明は、上記円環状部分の外周面の少なくとも2個所に螺軸を突設している一方、カップ状本体の周壁にこれらの螺軸を挿通させる上下方向に長い長孔を穿設してあり、この長孔に上記螺軸を挿通してナットを螺締することによりカップ状本体の内周面に螺旋ブラシを装着するように構成していることを特徴とする。
【0013】
また、請求項に係る発明は、カップ状本体の天壁部下面にボルト・ナットの頂面を研削するためのチャンネルブラシが一文字状または十文字状に装着していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、天壁部の中心に回転駆動用軸体を突設してなるカップ状本体の内周面に、金属線材からなる多数本のブラシ線材を一列状に集束してなる1本のブラシを、そのブラシ線材をカップ状本体の半径方向に向けた状態にしてカップ状本体の内周面に沿うように螺旋状に湾曲させてなる螺旋ブラシを装着しているので、このカップ状本体を橋梁やなどの構造物の添接ボルトの頭部に被せた場合、螺旋方向に一列状に並んだブラシ線材をボルト頭の周面に対して上端から下端に亘って螺旋状に連続して摺接させることができ、この状態にしてカップ状本体を回転させると、ブラシ線材の先端部がボルト頭の角部を通過する毎にカップ状本体の回転方向と反対方向に大きな曲げ作用を繰り返し受けるが、ブラシ線材がその回転方向に螺旋状に連なっているので、ブラシ線材同士が互いに支持しあってブラシ線材に生じる曲げ応力を緩和することができ、ブラシ線材の耐久性が増大して長時間の使用に供することができる。
【0015】
さらに、カップ状本体の内周面に螺旋状に一列に並んだブラシ線材がボルト頭の周面を囲むようにしてその先端部をボルト頭の上端から下端に亘って螺旋方向に連続して摺接するので、ボルト頭に対する研削能力が増大してボルト頭の表面の劣化した塗膜やその表面に生じている錆を短時間で能率よく且つ確実に研削除去することができる。
【0016】
その上、螺旋ブラシは、多数本のブラシ線材を一列状に集束してなる1本のブラシを、そのブラシ線材をカップ状本体の半径方向に向けた状態にしてカップ状本体の内周面に沿うように螺旋状に湾曲させているので、一列状に集束しているブラシ線材がカップ状本体の内周面から中心に向かうに従って互いに寄せ合って先端部がさらに密に集束した状態となり、ブラシ線材の先端部をボルト頭の周面に集中的に強く摺接させることができて、ボルト頭を一層能率よく且つ確実に研削することができると共にブラシ線材の耐久性もさらに向上させることができる。
【0017】
また、螺旋ブラシは、ボルト頭の周面全面にブラシ線材の先端部を摺接させているのではなく、ボルト頭の周面を上端から下端に向かって一定のピッチでもって螺旋状に囲繞しているので、ボルト頭の周面に対するブラシ線材の接触面積が減少してボルト頭から受ける抵抗力が小さくなり、電動工具によってカップ状本体を無理なく円滑に回転させながら研削作業を行うことができる。
【0018】
また、本発明によれば、上記螺旋ブラシは、断面U字状のチャンネル部材の溝に多数本のブラシ線材を一列状に集束させた状態にしてその基端部を挟着させてなるチャンネルブラシを、そのブラシ線材をカップ状本体の半径方向に向け、且つ、チャンネル部材の溝の外底面側がカップ状本体の内周面に接するように螺旋状に湾曲させてなるものであるから、カップ状本体をボルト頭に被せた場合、螺旋方向に一列状に並んだブラシ線材をボルト頭の周面に対して上端から下端に亘って螺旋状に連続して正確に摺接させることができる精度のよい螺旋ブラシを簡単且つ安価に製作することができ、ボルト頭の研削時においては、上述したようにブラシ線材同士が互いに支持しあってブラシ線材に生じる曲げ応力を緩和することができ、ブラシ線材の耐久性が増大して長時間の使用に供することができると共に、ブラシ線材の先端部をボルト頭の周面に集中的に強く摺接させることができて、ボルト頭を短時間で能率よく且つ確実に研削することができる素地調整工具を提供し得る。
【0019】
さらに、本発明によれば、上記チャンネル部材にブラシ線材を設けていない円環状部分と、この円環状部分から下方に向かって螺旋方向に一巻き状に湾曲させてなるブラシ線材を設けた螺旋状部分とを形成してあり、円環状部分の外周面をカップ状本体の上端部内周面に着脱自在に装着していると共に、螺旋状部分から突設しているブラシ線材によってボルト・ナットの周面を全高に亘って研削するように構成しているので、チャンネル部材の円環状部分をカップ状本体の上端部における内周面に固定することによってブラシ線材を設けている螺旋状部分を、カップ状本体内において研削すべきボルト頭を囲繞し得る位置に簡単に配設することができると共に、この螺旋状部分はカップ状本体の内面に沿って螺旋方向に一巻き状に湾曲した形状を有しているので、螺旋ブラシの長さが短いにもかかわらずこの螺旋状部分から突設しているブラシ線材によってボルト頭の周面を短時間で確実且つ円滑に研削することができる。また、ブラシ線材を設けている円環状部分で囲まれた空間部にボルト頭の頂面を研削するブラシ線材を配設することができる。
【0020】
請求項に係る発明によれば、螺旋ブラシを形成している上記チャンネル部材における円環状部分の外周面の少なくとも2個所に螺軸を突設している一方、カップ状本体の周壁にこれらの螺軸を挿通させる上下方向に長い長孔を穿設してあり、この長孔に上記螺軸を挿通してナットを螺締することによりカップ状本体の内周面に螺旋ブラシを装着するように構成しているので、カップ状本体の内周面に対する螺旋ブラシの装着位置を研削すべきボルト頭に応じて上下方向に調整することができ、精度のよい研削を行うことができる。
【0021】
また、請求項に係る発明によれば、カップ状本体の天壁部下面にボルト・ナットの頂面を研削するためのチャンネルブラシが一文字状または十文字状に装着しているので、上記螺旋ブラシによるボルト頭の周囲の研削と同時にこのチャンネルブラシにより該ボルト頭の頂面の研削を行うことができ、ボルト頭の表面全体の研削作業が能率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】ボルト頭に被せた状態の素地調整工具の縦断正面図。
図2】素地調整工具の分解斜視図。
図3】電動工具に取り付けた状態の正面図。
図4】その素地調整工具部分の拡大斜視図。
図5】ボルト頭の周面を研削する螺旋ブラシの平面図。
図6】ボルト頭の表面を研削している状態の一部切欠斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、橋梁などに設けられている添接ボルトの頭部Bの表面を研削する素地調整工具は、図1図2に示すように、下端が開口したカップ状本体1と、このカップ状本体1の内周面に装着している螺旋ブラシ2と、カップ状本体1の天壁部1aの中心部に上方に向かって突設している回転駆動用軸体3と、上記天壁部1aの下面に装着している直状のチャンネルブラシ4とから構成されている。
【0024】
カップ状本体1は、内径がボルト頭Bよりも大径で且つ長さがボルト頭Bの高さよりも長い円筒形状の周壁部1bとこの周壁部1bの上端に上記天壁部1aを一体に設けてなる形状を有し、周壁部1bにおける直径方向に対向する両側部に上下方向に長い螺旋ブラシ取付用長孔5、5を穿設していると共に、上記天壁部1aの両側部にチャンネルブラシ取付用孔6、6を穿設している。
【0025】
上記螺旋ブラシ2は、一定長さを有する金属線材からなる多数本のブラシ線材2a、2a・・・2aを一列状に集束してなる1本のブラシを、そのブラシ線材2aをカップ状本体1の半径方向に向けた状態にしてカップ状本体1の内周面に沿うように螺旋状に湾曲させてなる構造を有する。
【0026】
具体的には、螺旋ブラシ2は、一面に全長に亘って溝2bを設けてなる断面U字状のチャンネル部材2Bの上記溝2bに多数本のブラシ線材2aの基端部を集束させた状態にして全長に亘って一列状に挟着、支持させてなるチャンネルブラシ2Aを、溝2bを内向きにして該溝2bから突出しているブラシ線材2aの長さ方向をカップ状本体1の半径方向に向けた状態、即ち、カップ状本体1の中心に向けた状態となるようにカップ状本体1の内径に等しい径でもって螺旋状に湾曲させてなり、螺旋状に湾曲したチャンネルブラシ2Aの外向きとなった背面、即ち、チャンネル部材2Bにおける溝2bの外底面を形成している外面をカップ状本体1の内周面に接した状態にして装着している。
【0027】
螺旋ブラシ2を構成している上記チャンネルブラシ2Aは、カップ状本体1の内周面に螺旋方向に一巻きできる長さ、即ち、カップ状本体1の周長に略等しい長さを有していると共にチャンネル部材の2Bの幅(厚み)は研削すべきボルト頭Bの高さの1/2以下に形成されてあり、このチャンネルブラシ2Aをカップ状本体1の内周面における長さ方向の中央部からカップ状本体1の下端部に向かって該チャンネルブラシ2Aの幅よりも大きいピッチでもって螺旋方向に一巻き状に湾曲させて、この湾曲チャンネルブラシ2Aからなる螺旋ブラシ2の上半部によってボルト頭Bの周面における上半部を研削し、下半部によってボルト頭Bの周面における下半部からこのボルト頭Bを座着させている座金Wの外周面を研削するように構成している。
【0028】
カップ状本体1の内周面にこの螺旋ブラシ2を装着するには、カップ状本体1の内周面に接するように一巻き螺旋状に湾曲した上記チャンネル部材2Bの外面にカップ状本体1の周壁部1bの両側部に設けている上記長孔5、5に挿通する螺軸7、7を突設しておき、長孔5、5から外部に突出したこの螺軸7、7にナット8、8を螺合させることによって装着してもよいが、図においては、上記チャンネル部材2Bの上端にさらにこのチャンネル部材2Bと同一形状の適宜長さのチャンネル部材2B' を延長方向に連設してこのチャンネル部材2B' をカップ状本体1の内周面にその外面が接するように円環状に湾曲させることによってブラシ線材2aを設けていない円環状部分に形成し、この円環状部分から下方に向かって上記ブラシ線材2aを設けている螺旋状に湾曲したチャンネル部材2Bからなる螺旋状部分を設けていると共に、円環状部分における直径方向に対向する両側部に上記カップ状本体1の周壁部1bの両側部に設けている長孔5、5に挿通する螺軸7、7を突設し、円環状部分をカップ状本体1の上端部内周面に内接させると共に螺旋状部分をカップ状本体1の中央部から下端に亘ってその内周面に内接させた状態にして長孔5、5から外部に突出したこの螺軸7、7の先端部にナット8、8を螺合させることによって着脱自在に装着している。なお、螺軸7は外周面に螺子を刻設している短軸からなるものである。
【0029】
上記螺旋状に湾曲したチャンネル部材2B及び円環状に湾曲したチャンネル部材2B' は、鋼製であって弾性的に縮径可能に形成されてあり、カップ状本体1の内周面に装着時には僅かに縮径させて螺軸7、7をカップ状本体1の内側から上記長孔5、5に挿通させたのち、弾性的に復元させてカップ状本体1の内周面に密接させればよい。
【0030】
なお、螺旋状に湾曲したチャンネル部材2Bの一面(内面)に設けている溝2bに基端部を挟着されてカップ状本体1の内周面から中心に向かって半径方向に突設している上記ブラシ線材2aの長さは、その先端部が研削すべきボルト頭Bの周面に摺接することができる一定長さに形成されている。また、チャンネル部材2Bは上端から下端に向かって右回り方向に螺旋状に湾曲させているが、左回り方向に螺旋状に湾曲させておいてもよい。
【0031】
さらに、カップ状本体1の上記天壁部1aの下面に装着されている上記チャンネルブラシ4は、下面に全長に亘って亘って溝4bを設けている一定長さを有する断面U字状の直状チャンネル部材4Bの上記溝4bに多数本のブラシ線材2a’の基端部(上端部)を集束させた状態にして全長に亘って一列状に挟着、支持させてなり、直状チャンネル部材4Bから下方に突出するブラシ線材2a’の先端部(下端部)をボルト頭Bの頂面に摺接させて該頂面を研削するように構成している。
【0032】
このチャンネルブラシ4における上記チャンネル部材4Bの上面両側部に螺軸7'、7'を突設してあり、これらの螺軸7'、7'をカップ状本体1の天壁部1aの両側部に設けている上記孔6、6に挿通して天壁部1a上に突出した該螺軸7'、7'の上端部にナット8'、8'を螺合させることによってチャンネルブラシ4をカップ状本体1の天壁部1aの下面に着脱自在に装着するように構成している。
【0033】
なお、チャンネルブラシ4はその直状のチャンネル部材4Bをカップ状本体1の上記天壁部1aの下面に直径方向に向けて一文字状に装着しているが、十文字状に装着しておいてもよい。
【0034】
このように構成したボルト・ナットの素地調整工具を使用してボルト頭Bの表面に発生している錆や劣化した塗膜を研削、除去するには、まず、図3図4に示すように、この素地調整工具におけるカップ状本体1の天壁部1aの上面中央部に突設している回転駆動用軸体3に、例えば、ディスクグラインダからなる電動工具Cの回転軸を直列状に連結することにより、電動工具Cに素地調整工具を取付ける。なお、電動工具Cがディスクグラインダである場合には、このディスクグライダの回転軸に連結する上記回転駆動用軸体3としてナット体を使用しているが、回転駆動用軸体3をチャックによって挟着して回転駆動するように構成した電動工具を使用する場合には、必ずしもナット体に限らず、角棒形状の回転駆動用軸体を突設しておけばよい。
【0035】
このように、素地調整工具を電動工具Cに連結したのち、素地調整工具のカップ状本体1を研削すべきボルト頭Bに被せると、カップ状本体1の天壁部1aの下面に装着しているチャンネルブラシ4のブラシ線材2aの下端がボルト頭Bの頂面に当接すると共に、カップ状本体1の内周面に装着している螺旋ブラシ2は、ボルト頭Bの周面を上端から下端に亘って一巻き螺旋状に取り囲んで、その螺旋状に湾曲したブラシ線材列をボルト頭Bの周面の上端から座金Wの周面に亘って螺旋状に摺接させた状態となる。
【0036】
この状態にして電動工具Cを駆動してカップ状本体1を回転させると、螺旋ブラシ2がボルト頭Bの回りを回転してボルト頭Bの周面に摺接する該螺旋ブラシ2のブラシ線材2aの先端部でボルト頭Bの周面に生じている錆や劣化した塗膜を研削、除去する。
【0037】
この際、ブラシ線材2aの先端部がボルト頭Bの角部を通過する毎にカップ状本体1の回転方向と反対方向に大きな曲げ作用を繰り返し受けるが、螺旋ブラシ2のブラシ線材列はカップ状本体1の回転方向に一巻き螺旋状に連続しているので、ブラシ線材同士が互いに支持しあってボルト頭Bの角部を通過する毎に受ける曲げ応力が緩和され、耐久性が向上すると共に、螺旋ブラシ2を構成しているチャンネル部材2Bは、ブラシ線材2aの基端部を挟着している溝2bをカップ状本体1の中心に向けた状態にしてカップ状本体1の内周面に沿って周方向に円弧状に湾曲させているので、このチャンネル部材2Bの溝2bに集束された状態で一列状に挟着されているブラシ線材列における周方向に隣接するブラシ線材2a、2aは、図5に示すように、カップ状本体1の内周面から中心に向かうに従って互いに寄せ合うように接近して基端部よりも先端部がさらに周方向に密に集束した状態となり、曲げ強度が増大すると共にその先端部をボルト頭Bの周面に集中的に強く摺接させることができて、ボルト頭の表面に生じている錆や劣化した塗膜を短時間で綺麗に研削、除去することができる。
【0038】
さらに、この螺旋ブラシ2によるボルト頭B及びナットWの周面の研削と同時に、カップ状本体1の天壁部天壁部1aの下面に装着している上記チャンネルブラシ4によって、図6に示すように、ボルト頭Bの頂面を研削することができる。
【0039】
なお、以上の実施例において、螺旋ブラシ2を形成するチャンネルブラシ2Aの長さをカップ状本体1の周長よりも短くしてその上端から下端に向かって上記ピッチよりも大きいピッチでもって螺旋状に一巻き以下に湾曲させてなる螺旋ブラシを形成しても、ボルト頭Bの周面全面を研削することができるが、そうすると、ボルト頭Bの研削時にブラシ線材2aに生じる曲げ応力が増大して耐久性が低下し、短時間の使用によって螺旋ブラシ2の交換が必要となる一方、チャンネルブラシ2Aの長さをカップ状本体1の周長よりも長くして例えば、カップ状本体1の内周面に一回り半以上に亘って装着すると、コスト高になって不経済であるばかりでなく、ボルト頭Bの周面に摺接するブラシ線材2aの接触面積が増大して電動工具による円滑な回転駆動が損なわれるので、チャンネルブラシ2Aの長さを上記のようにカップ状本体1の周長に略等しい長さに形成しておくことが好ましい。
【0040】
また、上記実施例においては、ボルト頭Bの表面の研削について述べたが、ボルト頭Bに限らず、橋梁等の構造物に設けているナット(図示せず)の表面も上記素地調整工具によって研削することができるのは勿論である。
【符号の説明】
【0041】
1 カップ状本体
2 螺旋ブラシ
2A チャンネルブラシ
2B チャンネル部材
2a ブラシ線材
3 回転駆動用軸体
4 チャンネルブラシ
5 長孔
7 螺軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6