(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の振動要素および前記第2の振動要素のうちの少なくとも一方の特性寸法が、前記振動の特性周波数の周波数を所与の値に設定するように事前に決定されている、請求項1に記載の共振器構造。
前記第1の振動要素および前記第2の振動要素のうちの少なくとも一方の要素が、異なる向きの接続要素によって支持梁に取り付けられた梁様分岐を有することを特徴とする、請求項1に記載の共振器構造。
前記係留点が、前記第1の振動要素および前記第2の振動要素の振動の特性周波数を設定する所与の寸法が所与の平均律音程の周波数比率になるように選択される、請求項1に記載の共振器構造。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には微小機械共振器の設計に関し、より詳細には、微小電気機械システム(MEMS)共振器の設計に関する。本発明の目的は、特に小規模用途で、厳しい条件下で高い信頼性で使用するために適した構造を有する微小電気機械システム技術(MEMS)の改良された共振器構造を提供することである。
【背景技術】
【0002】
共振器は、様々なタイミング用途及び周波数基準用途での鍵となる構成要素である。共振器は作動して、共振器又はそのような機能を提供する同様の構成要素の材料、形状、及び/又は特性寸法によって決まる固有特性共振周波数近くで振動する。
【0003】
基準及びタイミング機能に使用する場合、動作周波数を正確に制御可能/設定可能なことが必須である。典型的な用途では、周波数制御の不正確性は1〜100ppm(百万分の一)の範囲まで許され得る。そのようなppmレベルの精度は、厳しい制限を製造許容差に設定する。さらに、追加の機械的微調整及び/又は電気的微調整が、最終的な調整で必要なことが多い。
【0004】
微小機械共振器は、主要な構成要素としてMEMSに基づく機器に広く使用されている。そのような機器の例として、マイクロジャイロスコープ、マイクロ振動計、マイクロマシン、及びマイクロ波システムを挙げることができる。共振器は静電アクチュエーションにより駆動されて、特性固有共振周波数近くで振動する。
【0005】
さらに、微小機械共振器を使用して、周波数基準装置内の水晶共振器に基づく技術の実施形態を補完することができ、それにより、特定の用途で水晶に基づく発振器技術に完全に取って代わることができるようになるには、周波数精度を改良しなければならない。
【0006】
微小機械共振器は、光学リソグラフィとエッチング技術とを、この尺度分類で必要とされるように組み合わせて、従来の水晶に基づく共振器技術よりも優れた利点を提供することにより製造される。しかし、製造プロセスは、製造中の装置の寸法で数パーセントまでのばらつきを生じさせ得る。
【0007】
従来技術による解決策と本発明の実施形態との関係をよりよく理解するために、以下のように
図1A及び
図1Bを次に参照する:
図1Aは、従来技術による共振器の基本構造を示し、
図1Bは、従来技術による共振器の集中機械モデルを示す。
【0008】
したがって、
図1Aは、従来技術による共振器それ自体の基本構造を示す。単純な共振器は、バネ要素(梁)と、矩形質量要素(質量)とを備える。バネ要素は、例えば、
図1に示されるように、機械的な片持ち梁バネ(梁)であることができる。
【0009】
図1Aの単純な共振器では、特性共振周波数ω
0は、
【数1】
・・・(1)
であり、式中、バネ定数kは
【数2】
・・・(2)
である。
【0010】
図1Bは、従来技術による基本的な共振器の集中モデルを示す。ここでは、Yはバネ材料のヤング係数であり、wはバネ要素の幅であり、hはバネ要素の高さであり、Lはバネ要素の特性長さである。バネ要素の幅wは通常、極めて小さく、三乗測依存性により、共振周波数ω
0はバネ要素の幅wのばらつきの影響を受けやすい。
【0011】
バネ要素の幅の変化に関連する共振周波数ω
0の一次変化は、
【数3】
であり、式中、∂ω
0は、バネ要素の幅の無限小変化∂wに起因する周波数の無限小変化である。微小機械共振器の最も大きな問題の1つは、共振周波数のばらつきであり、このばらつきは、共振器構造の機械的寸法の不十分な制御又は不良な精密性により生じる。
【0012】
例えば、式3に基づいて評価すると、バネ要素の幅が4%変動する場合、共振周波数も変動するが、その変動は6%又は60,000ppmと同じ程度であることが分かる。
【0013】
それに関連して、特許文献1には、周波数のばらつきに関する問題に対する製造精度の影響を制御する従来技術による方法が記載されている。
【0014】
しかし、摂動状況下では、共振器にかけられる力が、共振器及び/又は共振器の部分を加速させることを通して機能に影響することを理解しなければならない。それにより、共振器が堅牢な設計を有する場合であっても、共振器構造は変形し、振動運動が干渉され得る。強い摂動力の影響はさらに、一端部でのみ支持される長いバネ様構造の広振幅運動を生じさせ、それにより、特定の状況下で構造の他の部分に当たるおそれがあり、さらには、機械的破損を受け、又は構造の動作制御に使用される電気信号に干渉するおそれがある。そのような場合に対処するために、例えば、容量共振器では、保護距離を有する電極間隙を設計する必要があり、これは、十分に高い容量を比較的小さな構造で得なければならない場合に問題を生じさせ得る。他方、より高い容量に向けての目標では、より大きな質量をバネ要素に追加する必要があり得、その結果、例えば、質量の慣性を通して望ましくないように共振周波数に影響し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開第2009/092846 A1号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、干渉の影響を受けにくいが、高容量と組み合わせられた小型サイズに役立ち、信頼性の高い周波数基準として機能することが可能な、微小電気機械システム(MEMS)共振器のそのような改良された設計構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1の態様によれば、本発明による共振器構造は、所与の機械的振幅と組み合わせて振動の特性周波数を有し、それにより、上記機械的振幅の設定は、共振器構造基板の所与のポイントに配置された係留点での係留を通して、第1の
振動要素
(以下、第1の要素とも言う)と、第2の
振動要素
(以下、第2の要素とも言う)とを共振器構造内に有することにより達成され、第1の要素及び第2の要素は、上記第1の要素及び上記第2の要素のうちの少なくとも一方が、上記係留点に関して同期して振動するように構成されるように振動的に適合され、それにより、上記係留点の位置が実質的に、上記第1の要素及び上記第2の要素の寸法により画定される
、結合
した投影部内にあるように選択される。
【0019】
本発明の実施形態によれば、本発明の第1の態様による共振器構造は、少なくとも1つの支持梁を備えるそのような1種類の上記1つの第1の要素を備える。それにより、支持梁には、上記第1の要素と同様の複数の他のバネ要素を取り付けることができ、他のバネ要素は必ずしも同じ特性寸法を有する必要はない。
【0020】
本発明の実施形態によれば、本発明の第1の態様による共振器構造では、上記第1の要素は複数の樹状突起を備える。それにより、各樹状突起は、樹状突起の個々の共振周波数を設定し、且つ/又は上記第1の要素の特性周波数を設定する、断面積、長さ、幅、厚さ、及び/又は質量であり得る個々の特性寸法を有することができる。本発明の実施形態では、樹状突起は、センサ構造及び/又は励起枠構造のいずれかの実施形態での容量用途で電極エリアを提供するために利用することもできる。それにより、支持点の適切な選択により、より小さな振幅の機械的振動の利用が可能になり、その結果、小さな電極間隙により、より高い容量が提供されるため、より小型のサイズも提供する。
【0021】
本発明の実施形態によれば、本発明の第1の態様による共振器構造では、樹状突起は複数の梁様分岐を備える。
【0022】
本発明の実施形態によれば、本発明の第1の態様による共振器構造では、上記第1及び上記第2の要素のうちの少なくとも一方の特性寸法は、上記機械的特性振動の周波数を所与の値に設定するように事前に決定される。
【0023】
本発明の実施形態によれば、本発明の第1の態様による共振器構造では、第1の要素において、複数の樹状突起内の樹状突起のうちの少なくとも1つでは、少なくとも1つの特性寸法は、上記機械的特性振動の周波数を所与の値に設定するように事前に決定される。
【0024】
本発明の実施形態によれば、本発明の第1の態様による共振器構造は、同じ機械的特性振動周波数を有する複数の樹状突起を備える。
【0025】
本発明の実施形態によれば、本発明の第1の態様による共振器構造は、所与の規則下で互いに異なるように調整された機械的特性振動周波数を有するそのような複数の樹状突起を備える。
【0026】
本発明の実施形態によれば、本発明の第1の態様による共振器構造では、樹状突起の特性周波数は、樹状突起の機械的特性寸法及び/又は質量により事前に決定される。
【0027】
本発明の実施形態によれば、本発明の第1の態様による共振器構造では、上記第1及び上記第2の要素のうちの少なくとも特定の要素は、異なる向きの接続要素を用いて支持梁に取り付けられた梁様分岐を備える。
【0028】
本発明の実施形態によれば、本発明の第1の態様による共振器構造は、Eの形状を有する複数の共振器を備え、上記共振器のうちの少なくとも1つは、文字形状の共振器構造として実施される。
【0029】
本発明の実施形態によれば、本発明の第1の態様による共振器構造では、上記文字形状の要素のうちの少なくとも1つは、文字A、B、C、E、F、H、I、K、L、M、N、S、T、U、V、W、X、Y、Zを含む群から選択される形状を有する。
【0030】
本発明の実施形態によれば、本発明の第1の態様による共振器構造では、係留点は、所与の機械的寸法の所与の特性周波数で所与の機械的調和振動を励起させるように選択される。
【0031】
本発明の実施形態によれば、本発明の第1の態様による共振器構造では、係留点は、所与の機械的寸法の所与の特性周波数で所与の機械的調和振動を抑制するように選択される。
【0032】
本発明の実施形態によれば、本発明の第1の態様による共振器構造は、梁様分岐の間で、励起枠構造を実施するように互いに入り込む梁を備える。
【0033】
本発明の実施形態によれば、本発明の第1の態様による共振器構造は、フラクタル様構造を備える。
【0034】
本発明の実施形態によれば、本発明の第1の態様による共振器構造は、折り畳
まれた音叉構造を備える。
【0035】
本発明の実施形態によれば、本発明の第1の態様による共振器構造は、T字形構造を備える。
【0036】
本発明の実施形態によれば、本発明の第1の態様による共振器構造では、上記第1及び上記第2の要素のうちの少なくとも一方は、湾曲形状を有するように構成される。
【0037】
本発明の実施形態によれば、本発明の第1の態様による共振器構造では、上記係留点は、上記第1及び上記第2の要素の振動の特性周波数を設定する所与の寸法が所与の平均律音程の周波数比率になるように選択される。
【0038】
本発明の実施形態によれば、本発明の第1の態様による共振器構造では、上記第1の要素、第2の要素、樹状突起、及び支持梁のうちの少なくとも1つは特に、製造での寸法のばらつきに対する共振器の共振周波数変更の受けやすさ、すなわち、d(Δω
0/ω
0)/dδがゼロであるか、又はゼロに近づくような寸法を有する。
【0039】
本発明の実施形態によれば、微小機械共振器のバネ構造において、特性寸法と樹状突起の対応する寸法との比率は、最大で10であり、有利には7以下であり、さらにより有利には5以下である。
【0040】
本発明の実施形態によれば、バネ構造は、音叉構造の一部に係留することにより適合される。本発明の実施形態によれば、上記音叉構造は折り畳
まれた音叉構造である。それにより、係留点は、音叉のシャフトに適合され、そのシャフトは、音叉構造の叉の間に配置される。本発明の実施形態によれば、それにより、折り畳
まれた音叉構造は、E字幾何学的形状を有するように構成される。本発明の別の実施形態によれば、それにより、折り畳
まれた音叉構造はT字幾何学的形状を有するように構成される。本発明の実施形態によれば、それにより、折り畳
まれた音叉構造はE字並びにT字の幾何学的形状を有するように構成される。本発明の実施形態によれば、係留点は、折り畳
まれた音叉構造のシャフトを、所与の特性周波数を有する特性寸法に分割し、結果として、音程の周波数比率になるように選択される。
【0041】
本発明の実施形態によれば、シャフトの一部は、励起枠構造を実施し、且つ/又はシャフトの別の部分に関して所与の振動位相を維持する個々の樹状突起を有する。位相の維持は、例えば、静電信号を用いて達成することができる。
【0042】
本発明の実施形態によれば、樹状突起の共振周波数は、以下のように樹状突起の幅、密度、長さ、及びユング係数を用いて表すことができる。
【数4】
【0043】
本発明の実施形態によれば、微小機械共振器構造は、励起枠構造を実施するアクチュエータ手段を有する。変形実施形態によれば、上記手段は静電的である。本発明の実施形態によれば、電極間隙は、振動の振幅の最大で3倍、有利には2倍の大きさであるように選択される。
【0044】
本発明の実施形態によれば、共振器構造は、励起枠構造内に、振幅を電気的に減衰させ、且つ/又は共振器構造及びその部分の機械的な力により誘発される運動を完全に結合する部分として静電ダンパーを有する。
【0045】
図面リスト
従来技術の考察中、
図1A〜
図1C及び
図2を参照したが、次に、本発明の実施形態の例示について、以下の説明のうちの部分としての
図3〜
図9を参照することにより説明する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1A】従来技術による共振器それ自体の基本構造を示す。
【
図1B】従来技術による共振器それ自体の基本構造の集中機械的モデルを示す。
【
図1C】従来技術による音叉共振器を示す。
【
図2】従来技術による音叉共振器を示す。
【
図3】いくつかの共振器実施形態の音叉構造を示す。
【
図4】いくつかの共振器実施形態の音叉構造を示す。
【
図5】いくつかの共振器実施形態の音叉構造を示す。
【
図6】本発明の実施形態による共振器構造を示す。
【
図7】本発明の実施形態による共振器構造を示す。
【
図8】本発明の実施形態による共振器構造を示す。
【
図9】本発明の実施形態による共振器構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
示される実施形態では、いくつかの発振器の振動方向は概略的に説明されるが、示される例示の実施形態に示される方向のみに、基板又は土台に関して発生する振動の方向を限定しない。
【0048】
共振器は、タイミング用途又は周波数基準用途で鍵となる構成要素である。タイミング用途で1つの一般に使用される共振器構造は、
図1C及び
図2に示される音叉の共振器構造である。ここでは、音叉の2つの叉が逆位相で振動し、それにより、共通点での正味運動はゼロになる。これは、係留点での損失が最小に抑えられるため、有利である。
【0049】
図3では、共振器それ自体の音叉型の基本構造が説明される。構造の一端部は係留点で固定されるため、加速により、かなり高いトルクが生まれ、このトルクが共振器を作動させる。かなり高い加速の結果として、共振器の叉は基板又はケースに接触さえし得る。
【0050】
図4では、音叉の叉端部の近傍に複数の電極を有するシリコン微小機械音叉共振器が示される。共振器は、共振器電極の近くに配置された対電極を用いて静電的に励起/作動させることができる。
【0051】
図5では、
図4に示された音叉共振器の機能が説明される。共振器アンカー及び電極アンカーは構造の遠位端部に配置されるため、装置は、加速又は外力により生まれる基板の寸法の歪みの影響を受けやすい。共振器電極と対電極との電極間隙は、例えば、基板の変形により影響を受け得る。
【0052】
図6では、新規のタイプの音叉共振器が説明される。係留点(本明細書では、アンカーという用語は各電極の係留点を指す)を折り畳
まれた音叉の叉1、2内部に配置することにより、係留点Aを共振器の重心近くにすることができる。この構成は、外力からの加速により生じる運動の振幅を大幅に抑制することができる。
【0053】
図7には、共振器及びアンカーの両方を音叉の叉内部に有する改良された共振器構造が示される。アンカーが共振器の重心の近くに配置され、さらに、互いに近いアンカーを有するため、装置は、加速又は外力により生じる基板の寸法の歪みの影響を受けにくい。
【0054】
図8には、
図7の改良された共振器構造内に接点エリアを構成する1つの可能な技法が示される。ここでは、2つの追加のアンカーが共振器構造外部に配置され、電気接点はこれらの電極に接合される。外側のアンカーは、可撓性梁構造を用いて共振器及び電極に電気的に接続される。電気接点の可撓性により、共振器基板又はケースが変形を受ける場合、又は外側のアンカーが変位する場合であっても、共振器及び電極は変位しない。
【0055】
図9には、アンカーが右側、音叉の叉の外側、アクチュエータ電極の中心に移動した本発明のそのような実施形態が示される。
【0056】
係留点を適切に選択することにより、共振器の機械的振動の振幅を低減することができ、それにより、機械的運動は、例えば、電極間隙での寸法が小さいほど高速になり、したがって、大きな寸法の使用に関してより高い容量を達成する。
【0057】
実施形態によれば、係留点の適切な選択及び共振器の振動部分の長さ又は他の何らかの特性寸法の調整により、振動の特定の周波数成分を共振器の特定の部分にリンクすることができる。それにより、共振器の部分間で位相シフトを生成することができる。
【0058】
その結果、特に、別の電極枠構造が、共振器の特性部分の寸法によって決まる周波数で逆位相の振動を生成/取り込むために利用される場合、少なくとも理論的に、共振器で発生する特定の調和振動数成分をなくすか、又は抑制することが可能であり、それにより、振動は、上記周波数で、共振器固有の振動位相とは逆位相で動作する。