特許第5873812号(P5873812)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873812
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】移動型X線装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20160216BHJP
【FI】
   A61B6/00 310
   A61B6/00 300D
   A61B6/00 300X
   A61B6/00 360Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-553656(P2012-553656)
(86)(22)【出願日】2012年1月10日
(86)【国際出願番号】JP2012050265
(87)【国際公開番号】WO2012098949
(87)【国際公開日】20120726
【審査請求日】2014年12月3日
(31)【優先権主張番号】特願2011-7815(P2011-7815)
(32)【優先日】2011年1月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153498
【氏名又は名称】株式会社日立メディコ
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】特許業務法人 山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日比野 淳
(72)【発明者】
【氏名】北 寿一
(72)【発明者】
【氏名】西来路 哲士
【審査官】 九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−073353(JP,A)
【文献】 特開2007−236784(JP,A)
【文献】 特開2008−110164(JP,A)
【文献】 特開2011−067436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体にX線を照射するX線源と、
前記被検体の透過X線を検出するX線入射面を有するX線平面検出器と、
前記X線源と前記X線平面検出器と対向配置して連結支持する支持部と、
前記X線平面検出器を、前記X線入射面を含む面内において回転させる回転角度を入力する角度入力部と、
前記入力された回転角度に従って、前記X線平面検出器を回転移動する検出器回転部と、
前記検出された透過X線に基づいて前記被検体の画像を生成する画像生成部と、
前記画像を表示する表示部と、
前記X線平面検出器の回転移動量に応じて、前記表示された画像を回転処理する画像回転部と、
を備えることを特徴とする移動型X線装置。
【請求項2】
前記表示された前記回転処理前の前記画像の外枠を、前記回転処理後の前記画像に重畳表示する外枠表示部を更に備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の移動型X線装置。
【請求項3】
前記表示された画像に、回転角度を示すガイド画像を重畳表示するガイド表示部を更に備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の移動型X線装置。
【請求項4】
前記画像生成部は、前記画像として、前記被検体を透視撮影して得られた動画像に基づく静止画像を生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の移動型X線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動型X線装置に係り、特に、FPDに代表される矩形状のX線入射面を持つX線検出器の位置合わせ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、X線画像診断装置は、X線検出器にイメージテンシファイア(image intensifier:以下「I.I.」と略記する)を用いたタイプから、フラットパネルディテクタ(flat panel detector:以下「FPD」と略記する)を用いたタイプへと移行が進んでいる。その理由は、FPDがI.I.に比べて見た目の圧迫感の軽減ができることと、ダイナミックレンジが広く歪が無いことにより良好な画質取得が可能であることと、である。
【0003】
移動型X線装置は、I.I.タイプがいまだ主流であるが、FPDタイプが市場投入されつつある。FPDタイプへの移行が今後も進むことが予想され、移動型X線装置におけるFPDタイプ故の技術的課題に対する取組みが必須となってくる。
【0004】
移動型X線装置において、X線装置とX線検出器とを対向支持するCアームを被検体の関心部位に対して挿入する(被検体及び被検体の載る寝台に干渉しないようにCアームを関心部位に対して位置決めする)場合、関心部位や術式が多種多様であることから、術者の立ち位置、周辺機器の配置等のバリエーションは様々である。その様々なバリエーションの各々に応じた移動型X線装置の位置取りやCアームの挿入方向が要求される。すなわち、Cアームは術者や周辺機器の邪魔にならない位置・方向から挿入しなければならないという制約が生じる場合が多い。挿入方向に起因する課題として、表示装置に表示される画像すなわち関心部位の向きが一定とならないことがある。
【0005】
術者には表示装置に表示される画像をみて診断するので、誤診回避や関心部位の認識を容易にするためは、表示装置に表示されたX線画像内において、関心部位が常に同じ方向(例えば被検体の体軸方向を表示の縦方向と一致させ、かつ頭側を表示の上とする向き)に表示させる必要があったり、あるいは所望の方向で表示させる必要があったりする。
【0006】
しかし、Cアームの挿入方向はその都度異なり、Cアームに支持されたX線検出器(X線入射面)の関心部位や体軸方向を基準とする向きもその都度異なるため、関心部位が常に同じ方向となるように表示させるためには、関心部位の傾きに対する補正が必要となる。
【0007】
これに対する提案として、例えば、特許文献1では、I.I.タイプのX線診断装置において、TVカメラやTV偏向コイルといった映像系の機械的回転補正技術が開示されている。また、特許文献2には、FPDを回転させて適正な有効視野を確保しつつ、被検体画像を表示する表示器自体を回転させて、被検体の方向を所望の向きに一致させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9-298687号公報
【特許文献2】特許第4508326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
FPDタイプのX線画像診断装置には、映像変換系の機械的回転可能な部分が無いことから、特許文献1に開示された技術を移動型X線装置に適用することはできない。また映像変換系に代わり画像処理により同様の効果を生じさせようとすると、I.I.のような円形画像ではどの方向に回転しても円の中心で回転すれば表示装置の表示領域は一定で変わらないが、矩形画像の単純回転は表示領域からのはみ出しが生じる。このために矩形状のFPDのX線入射面の一部を円形表示する方法もあるが、FPDのX線入射面の全体を有効活用できないという問題が生じる。一方、画像全体が表示領域からはみ出さないように相似形で縮小することもできるが、関心部位が小さく表示されることになり術者に見づらい画像となるという問題がある。
【0010】
また、一般に、被検体の周囲には点滴チューブや各種モニターなどの周辺装置が配置されている。特許文献2では、試し撮りをしてから位置決めの再調整をするときに、FPD回転に伴って表示器を回転させるので、操作者は、FPD及び表示器の双方が周辺装置と干渉していないかを確認する必要があるという問題があった。
【0011】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、X線平面検出器の回転中にX線平面検出器を注視しながら回転位置の位置決めが行える移動型X線装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本発明に係る移動型X線装置は、被検体にX線を照射するX線源と、前記被検体の透過X線を検出するX線入射面を有するX線平面検出器と、前記X線源と前記X線平面検出器と対向配置して連結支持する支持部と、前記X線平面検出器を、前記X線入射面を含む面内において回転させる回転角度を入力する角度入力部と、前記入力された回転角度に従って、前記X線平面検出器を回転移動する検出器回転部と、前記検出された透過X線に基づいて前記被検体の画像を生成する画像生成部と、前記画像を表示する表示部と、前記X線平面検出器の回転移動量に応じて、前記表示された画像を回転処理する画像回転部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、回転角度を入力後、X線平面検出器が回転するが、このとき、X線平面検出器の回転移動量と同じ角度で表示された画像のみが回転し、表示器自体は回転しない。よって、X線平面検出器の回転中はX線平面検出器を注視しながら周辺装置に干渉しないかを確認しつつ、回転位置の位置決めが行える移動型X線装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態にかかる移動型X線装置1の概略構成を示すブロック図
図2】本実施形態にかかる移動型X線装置1が備える画像処理部の構成を示すブロック図
図3】本実施形態に係る移動型X線装置1の装置配置例を示す説明図
図4】本実施形態に係る移動型X線装置1の装置配置の処理の流れを示すフローチャート
図5】LIH画像の回転処理を示す説明図であって、(a)はLIH画像の初期表示状態を示し、(b)はLIH画像の回転処理時の状態を示し、(c)は本撮影時のX線画像の状態を示す。
図6】LIH画像の初期表示時の外枠を重畳表示した状態を示す説明図
図7】初期表示時のLIH画像に回転角度を示すガイド画像を重畳表示した状態を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、全図を通して同一の構成要素には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0016】
まず、図1に基づいて、本発明にかかる移動型X線装置の概略構成について説明する。図1は、本実施形態にかかる移動型X線装置1の概略構成を示すブロック図である。
【0017】
図1に示すように、移動型X線装置1は、大きくは、X線源50及びX線平面検出器60を備えた移動型X線支持装置2と、画像処理部80及び表示部91、92とを備えた移動型画像処理装置3と、を備える。移動型X線支持装置2と移動型画像処理装置3とは別体に構成され、有線又は無線により電気的に接続される。本実施形態では、移動型X線支持装置2と、これとは別体に構成された移動型画像処理装置3と、を含む移動型X線装置1を例に説明するが、移動型X線支持装置2に画像表示装置を一体に備えた移動型X線装置であってもよい。
【0018】
移動型X線支持装置2は、車輪を備えた走行部10と、その走行部10上に設置され、移動型X線装置1のX線照射やX線平面検出器60の画像信号の出力処理を制御する制御部21及び操作者による入力操作を受け付ける操作部30を備えた本体部20と、本体部20に対して回転可能に支持され、X線管を含むX線源50とX線平面検出器60とを対向配置して連結支持するCアーム40と、を備える。
【0019】
走行部10は、本体部20、Cアーム40、X線源50及びX線検出部60を搭載して走行する。
【0020】
X線平面検出器60は、本実施形態では矩形状のX線入射面を有するFPDにより構成するが、本発明の作用効果を奏するものであれば、FPDに限定されない。また、X線入射面の形状は、矩形状のほか正方形状でもよい。
【0021】
X線平面検出器60は、Cアーム40に対して回転可能に支持する回転機構部61を介して、Cアーム40と連結される。回転機構部61には、回転機構部61による回転面内における回転角度を検出する角度センサ62が備えられる。
【0022】
本体部20の操作部30には、図示しないX線曝射スイッチと、X線平面検出器60の回転角度を入力する装置、例えばダイヤル式の角度入力ボタン31と、を備える。
【0023】
本体部20は、角度入力ボタン31から入力された回転角度を示す入力信号を受信し、回転機構部61に対してその入力信号と一致する回転角度で回転移動させるための指示信号を出力する回転制御部63を更に備える。角度入力ボタン31は、例えば、ダイヤル式のスイッチやタッチパネル上で術者の指で回転角度をトレースして入力する装置など、術者が、X線平面検出器の回転角度を直接的に入力する装置である。ここでいう「直接的」とは、例えば後述するラストイメージホールド(last image hold:以下「LIH」と略記する)画像の回転移動を介してX線平面検出器60の回転角度を入力するように、X線平面検出器60とは異なる構成要素の回転角度を介してX線平面検出器の回転角度を入力するという「間接的」な入力装置を除外する意味である。
【0024】
移動型画像処理装置3は、X線平面検出器60が検出した被検体の透過X線の強度に応じた電気信号に基づいて、静止画像や動画像からなる被検体のX線画像を生成したり、画像の回転処理をしたりする画像処理部80と、画像処理部80で生成された被検体のX線画像を表示する二つの表示部91、92と、を備える。
【0025】
表示部91、92は、横長の矩形状の画像表示領域を備えており、移動型画像処理装置3に固定されている。
【0026】
次に、図2に基づいて、画像処理部80の構成について説明する。図2は、本実施形態にかかる移動型X線装置1が備える画像処理部の構成を示すブロック図である。
【0027】
画像処理部80は、X線平面検出器60が検出した透過X線に基づく画像信号を基にX線画像を生成する画像生成部81を備える。画像処理部80は、被検体の透過X線に基づいて静止画像や動画像からなる被検体の画像を生成する画像生成部81と、画像生成部81が生成した画像を記録する画像記憶部82と、X線平面検出器60の回転移動量(回転角度に相当する)に応じて、表示部91、92に表示された画像を回転処理する画像回転部83と、回転処理前の画像の外枠の画素位置の座標を記憶し、回転処理後の画像に重畳表示する外枠表示部84と、表示された画像に、回転角度を示すガイド画像を重畳表示するガイド表示部85と、を備える。以下の説明では、画像生成部81は、被検体を透視撮影して得られた動画像の最終画像(last image hold画像、以下「LIH画像」と略記する)を用いて静止画像を生成し、このLIH画像を表示部91又は92に表示し、X線平面検出器60の回転移動量と同等の角度でLIH画像を回転する場合を例に説明するが、X線平面検出器60の回転に連動して回転するのは、LIH画像に限らず、透視で得られた動画像であってもよいし、撮影で得られた静止画像であってもよい。
【0028】
回転制御部63は、LIH画像が表示部91または92に表示されていることを検出すると、表示中のLIH画像を角度センサ62が検出したX線平面検出器60の実際の回転角度分、回転処理する指示信号を画像回転部83に出力する。また、回転制御部63は、LIH画像が表示部91または92に表示されていない(表示されていることを検出しない)場合には、角度センサ62がX線平面検出器60の実際の回転角度を検出しても、画像回転部83に対して上記指示信号は出力しない。
【0029】
以下の説明では、関心部位の体軸方向に対しX線平面検出器60のX線入射面が横長になるように位置させ、表示部91の横長の矩形状の画像表示領域に、矩形状のX線画像を横長に表示させる場合を例に挙げて説明する。この場合、X線画像に撮影された関心部位の体軸方向は画像表示領域の縦方向に沿い、関心部位の頭側が画像表示領域の上となるX線画像(以下「正像」という)を撮影できるように、X線平面検出器60を位置決めする。
【0030】
次に、図3乃至図7を用いて、本実施形態に係る移動型X線装置1を装置配置について説明する。図3は、本実施形態に係る移動型X線装置1の装置配置例を示す説明図である。図4は、本実施形態に係る移動型X線装置1の装置配置の処理の流れを示すフローチャートである。図5は、LIH画像の回転処理を示す説明図であって、(a)はLIH画像の初期表示状態を示し、(b)はLIH画像の回転処理時の状態を示し、(c)は本撮影時のX線画像の状態を示す。図6は、LIH画像の初期表示時の外枠を重畳表示した状態を示す説明図である。図7は、初期表示時のLIH画像に回転角度を示すガイド画像を重畳表示した状態を示す説明図である。以下、図4の各ステップに沿って説明する。
【0031】
(ステップS1)
まず、移動型X線装置1を装置保管室から手術室に移動し、手技に適した位置へ配置する。本実施形態に係る移動型X線装置1は、移動型X線支持装置2および移動型画像処理装置3が別体に構成されているため、それぞれを適切な場所に配置する(S1)。図3では、寝台101に載置した被検体100の関心部位を右足とし、移動型X線支持装置2を被検体100の足部近傍に、移動型画像処理装置3を被検体100の左側近傍に位置させる。そして、寝台101を取り囲んで術者200が位置する。一般には、移動型X線支持装置2は、X線源50が被検体100の下側、X線平面検出器60が被検体100の上側に位置するように配置する。
【0032】
(ステップS2)
術者は、角度入力ボタン31を操作し、X線平面検出器60のX線入射面を含む面内の回転移動の回転角度を入力する(S2)。回転制御部63は、角度入力ボタン31に入力された回転角度に応じた回転移動を指示する指示信号を回転機構部61に出力する。この指示信号に応じて回転機構部61が回転し、回転機構部61がX線平面検出器60を回転させる。回転中は、術者はX線平面検出器60が周辺装置と干渉しないか注視する。角度センサ62は、X線平面検出器60の回転角度を検出し、検出信号を回転制御部63に送信する。しかし本ステップでは、回転制御部63が表示部91にLIH画像が表示されていないことを検出して、この検出信号を用いた処理は特に行わない。
【0033】
(ステップS3)
次に、X線平面検出器60が適切な位置にあるかを確かめるために、一度X線透視を行って(試し撮りを行って)現在位置を確認する(S3)。X線透視を行っている間は、画像生成部81はX線平面検出器60から画像信号を受信し、X線画像(透視像)を生成する。そのX線画像は、表示部91に、リアルタイムで表示される。X線透視を停止すると、画像生成部81は、透視像、特に最後のフレームの画像に基づいて、静止画像からなるLIH画像を生成し、表示部91に表示するとともに、画像記憶部82に記憶する。
【0034】
(ステップS4)
術者は、LIH画像を確認し、所望のX線画像が得られる位置にX線平面検出器60があるか否かを判断する(S4)。ステップS2でのX線平面検出器60の位置決めの精度がよく、LIH画像に関心部位が正像として撮像されている場合にはステップS7へ進む。LIH画像に関心部位が正像として撮像されていない場合、例えば、関心部位の体軸方向が、横長のX線画像の縦軸に対して傾いている場合や、関心部位の頭側が画像表示領域の下方向に向いている場合には、ステップS5へ進む。例えば、図5の(a)のLIH画像93は、画像表示領域の縦軸に対して角度−θ傾いており、正像として撮像されていない。図5の(a)の外枠fr1は、表示部91の横長の画面に、横長な状態で収まっている。
【0035】
(ステップS5)
術者は、角度入力ボタン31を再度操作してX線平面検出器60の回転角度を入力する(S5)。
【0036】
(ステップS6)
回転制御部63は、角度入力ボタン31に入力された回転角度に応じた回転移動を指示する指示信号を回転機構部61に出力する。この指示信号に応じて回転機構部61がX線平面検出器60を回転させる。回転中は、術者はX線平面検出器60が周辺装置と干渉しないか注視する。
【0037】
X線平面検出器60が回転すると、角度センサ62がX線平面検出器60の回転角度を検出し、この回転角度を示す信号を回転制御部63に送信する。回転制御部63は、表示部91にLIH画像が表示されていると判断して、この検出信号が示す回転角度と同じ角度で表示中のLIH画像を回転処理する指示信号を画像回転部83に送信する。画像回転部83は、画像記憶部82からLIH画像93を読出し、受信した回転角度を示す信号に基づいて、X線平面検出器60の回転角度と同じ回転角度でLIH画像93をリアルタイムに回転し、更新表示する(S6)。この回転操作を、図5の(b)を用いて説明する。図5の(b)は、図5の(a)のLIH画像93を、関心部位の体軸方向が表示部91の縦方向(図5の矢印A)に沿い、かつ、関心部位の頭方向が表示部91の上方向(矢印Aが向いている方向)になるように回転したものである。図5の(b)は、図5の(a)のLIH画像93を角度θで回転したので、LIH画像93の外枠fr2は、表示部91の横長の矩形状の画面に対して傾いて表示されている。術者は、ステップS4へ戻り回転移動したLIH画像93を再確認し、関心部位が所望の位置になっているかを判断する。更に回転が必要であれば、角度入力ボタン31の再操作(S5)とLIH画像の再確認(S6)とを繰り返す。
【0038】
なお、本実施形態では、角度センサ62が検出した回転角度を示す信号に基づいて、画像回転部83がLIH画像を回転処理することにより、実際のX線平面検出器60の初期位置を基準とする回転角度をより精度よく反映させてLIH画像を回転させることとしたが、角度センサ62を備えない構成も本発明の実施形態としてありうる。例えば、回転機構部61を、例えばステッピングモータ及びその制御ドライバのように、回転角度を検出可能な駆動装置を用いて構成し、角度入力ボタン31から回転制御部63が得た回転角度を示す信号を回転機構部61に出力する。そして回転機構部61がX線平面検出器60を回転させる。更に、回転機構部61は、実際の回転角度を示す信号を画像回転部83に出力し、画像回転部83がLIH画像を回転処理してもよい。この場合、LIH画像は、X線平面検出器60の回転角度量と同等の角度で回転する。
【0039】
(ステップS7)
X線透視(本撮影)を行うと、関心部位の所望する位置と向き(本発明では、横長の矩形状のX線画像において、関心部位の体軸方向が縦方向に沿い、かつ関心部位の頭方向が上方向)に撮像されたX線画像が表示される(S7)。図5の(c)の例では、矩形状の横長のX線画像において、関心部位の体軸方向が表示部91の矩形状の横長画面の縦方向に沿い、関心部位の頭方向がX線画像の上方向に配置された透視画像94が表示される。
【0040】
本実施形態によれば、移動型X線支持装置2の位置決めを行った後に、角度入力ボタン31を介してX線平面検出器60を目視しながら回転操作を行うことで、被検体100の周囲に配置された医療機器と干渉しないように注視しながら、X線平面検出器60の位置決めを行うことができる。更に、LIH画像を確認し、X線平面検出器60の位置決めが適切に行われたかを検証することができる。万一、位置決めが十分になされていないときは、角度入力ボタン31を再操作することで、X線平面検出器60の位置の微調整を行うとともに、LIH画像を回転させることで、回転移動に所望の画像が得られるかを確認することができる。
【0041】
その他の実施形態として、画像処理部80内の外枠表示部84が、LIH画像の初期表示時(図5の(a)に相当)の外枠fr1の座標を記憶しておき、図6に示すように、初期表示時(図5の(a)に相当)の外枠fr1と同位置の外枠95を回転移動後のLIH画像(図5の(b)に相当)に重畳表示してもよい。これにより、再度のX線透視を行わなくても、回転補正した後の関心部位表示範囲を簡易的に把握することができ、関心部位の再位置決めの要否判断をする一助とすることができる。
【0042】
更に、画像処理部80内のガイド表示部85が、図7に示すようにLIH画像93の初期表示(図5の(a)に相当)や、回転処理後の画像(図5の(b)に相当)に回転角度の目安となるガイド画像96を重畳表示してもよい。これにより、LIH画像の確認時に、あとどのくらい回転させればよいか把握しやすくなる。
【0043】
また、本実施形態では、操作部30近傍に角度入力ボタン31を配置したが、Cアーム40に備えてもよいし、角度入力ボタン31を本体部20とは別体のリモートコントローラとして構成してもよい。これにより、被検体100の脇に術者が位置してX線平面検出器60の回転操作を行うことができ、被検体100の不安感を解消し、他の医療機器との干渉を避けながらX線平面検出器60の位置決めを行いやすくすることができる。
【0044】
さらに、上記実施形態では、一度、X線平面検出器60の位置決めを行ってから(図4のステップS2)、LIH画像を確認したが(図4のステップS3)、X線平面検出器60の位置決めを省略して、LIH画像を確認(図4のステップS3)してから角度入力ボタン31を操作してもよい。これにより、X線平面検出器60のはじめの位置決め作業がなくなり、作業手順を簡略化することができる。一方、X線平面検出器60の位置決め精度が十分あると術者が判断した場合には、LIH画像の確認(図4のステップS3)を省略し、本撮影を行ってもよい。これにより、無効被爆を抑制し、作業手順も簡略化することができる。
【0045】
上記実施形態に適用した本発明に移動型X線装置1は、被検体にX線を照射するX線源(例えば50)と、前記被検体の透過X線を検出する矩形状のX線入射面を有するX線平面検出器(例えば60)と、前記X線源(例えば50)と前記X線平面検出器(例えばX線平面検出器60)と対向配置して連結支持する支持部(例えばCアーム40)と、前記X線平面検出器(例えば60)を、前記X線入射面を含む面内において回転させる回転角度を入力する角度入力部(例えば角度入力ボタン31)と、前記入力された回転角度に従って、前記X線平面検出器を回転移動する検出器回転部(例えば回転機構部61及び回転制御部63)と、前記検出された透過X線に基づいて前記被検体の画像を生成する画像生成部(例えば81)と、前記画像を表示する表示部(例えば91,92)と、前記X線平面検出器の回転移動量に応じて前記表示された画像を回転処理する画像回転部(例えば83)と、を備える。これにより、予め回転角度を入力してからX線平面検出器60を回転させ、X線平面検出器60の回転移動量に応じて表示された画像のみが回転するので、X線平面検出器60の回転中は、X線平面検出器60を注視して、周辺装置との干渉を避けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
医用だけでなく、工業用のX線を用いた非破壊検査装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0047】
1 移動型X線装置
2 移動型X線支持装置
3 移動型画像処理装置
20 本体部
30 操作部
40 Cアーム
50 X線源
60 X線平面検出器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7