特許第5873821号(P5873821)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873821
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】鉄道車両用緩衝器
(51)【国際特許分類】
   B61G 11/12 20060101AFI20160216BHJP
   F16F 9/20 20060101ALI20160216BHJP
   F16F 9/26 20060101ALI20160216BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20160216BHJP
   F16F 9/30 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   B61G11/12
   F16F9/20
   F16F9/26
   F16F9/32 H
   F16F9/32 N
   F16F9/30
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-24640(P2013-24640)
(22)【出願日】2013年2月12日
(65)【公開番号】特開2014-151824(P2014-151824A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2015年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000230696
【氏名又は名称】日本貨物鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】深澤 香敏
(72)【発明者】
【氏名】早勢 剛
(72)【発明者】
【氏名】間 輝之
(72)【発明者】
【氏名】西見 裕介
【審査官】 黒田 暁子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−099139(JP,A)
【文献】 特開2000−127965(JP,A)
【文献】 実公昭50−29769(JP,Y1)
【文献】 特開昭55−63966(JP,A)
【文献】 米国特許第3186563(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61G 11/12
F16F 9/00 − 9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
緩衝器枠が、上下枠と、連結器側に位置し前記上下枠の前方を結合している前方結合枠と、後方を結合している後方枠と、前記上下枠の長手方向の中間を仕切っている仕切枠とからなり、前記前方結合枠と前記仕切枠との間に引張側ユニットが、前記後方枠と前記仕切枠との間に圧縮側ユニットがそれぞれ組み込まれ、そしてこれらのユニットが車体側の伴板守に所定量「δ」圧縮されて取り付けられている鉄道車両用緩衝器であって、
前記引張側ユニットは、引張側ゴムパッド組立体と引張側ピストン・シリンダ組立体とからなり、
前記引張側ゴムパッド組立体は、前記前方結合枠側に位置する前方伴板と、前記仕切枠との間に設けられ、前記前方伴板側の軸心には所定径で、所定深さのシリンダ収納室とロッド貫通孔とが形成され、
前記引張側ピストン・シリンダ組立体は、粘性流体が充填されている引張側シリンダと、該シリンダ内にそのピストンヘッドが位置するように設けられている複ロッド式ピストンとからなり、前記引張側シリンダは前記前方伴板と一体的に設けられて前記シリンダ収納室に位置し、前記引張側複ロッド式ピストンのピストンロッドの一方の端部は、前記前方伴板をフリーに貫通し、そして他方の端部は前記ロッド貫通孔を通って前記仕切枠に固定されるようになっており、
前記引張側シリンダ内は、前記複ロッド式ピストンのピストンヘッドにより前記伴板側に位置する圧力室と前記仕切枠側に位置する負圧室とに分けられ、これらの両室は、前記シリンダの内周面と前記複ロッド式ピストンのピストンヘッドの外周面との間に形成されている隙間により常時連通していると共に、前記ピストンヘッドには、前記圧力室から前記負圧室への流れを阻止し、逆方向の流れを許容する逆止弁が設けられている連通孔が設けられ、この連通孔によっても連通し、
前記圧縮側ユニットは、同様に、圧縮側ゴムパッド組立体と圧縮側ピストン・シリンダ組立体とからなり、
前記圧縮側ゴムパッド組立体は、前記後方枠側に位置する後方伴板と前記仕切枠との間に設けられ、前記後方伴板側の軸心には所定径で、所定深さのシリンダ収納室とロッド貫通孔とが形成され、
前記圧縮側ピストン・シリンダ組立体は、粘性流体が充填されている圧縮側シリンダと、該シリンダ内にそのピストンヘッドが位置するように設けられている複ロッド式ピストンとからなり、前記圧縮側シリンダは前記後方伴板と一体的に設けられて前記シリンダ収納室に位置し、前記圧縮側複ロッド式ピストンのピストンロッドの一方の端部は、前記後方伴板をフリーに貫通し、そして他方の端部は前記ロッド貫通孔を通って前記仕切枠に固定されるようになっており、前記圧縮側シリンダ内は、前記複ロッド式ピストンのピストンヘッドにより前記後方伴板側に位置する圧力室と前記仕切枠側に位置する負圧室とに分けられ、これらの両室は、前記シリンダの内周面と前記複ロッド式ピストンのピストンヘッドの外周面との間に形成されている隙間により常時連通していると共に、前記ピストンヘッドには、前記圧力室から前記負圧室への流れを阻止し、逆方向の流れを許容する逆止弁が設けられている連通孔が設けられ、この連通孔によっても連通していることを特徴とする鉄道車両用緩衝器。
【請求項2】
緩衝器枠が、上下枠と、連結器側に位置し前記上下枠の前方を結合している前方結合枠と、後方を結合している後方枠とからなり、前記前方結合枠と前記後方枠との間に緩衝器ユニットが組み込まれ、そして前記緩衝器ユニットが車体側の伴板守に所定量「δ」圧縮されて取り付けられている鉄道車両用緩衝器であって、
前記緩衝器ユニットは、ゴムパッド組立体と、ピストン・シリンダ組立体とからなり、
前記ゴムパッド組立体は、前記前方結合枠側に位置する前方伴板と、前記後方枠側に位置する後方伴板との間に設けられ、前記後方伴板側の軸心には所定径で、所定深さのシリンダ収納室とロッド貫通孔とが形成され、
前記ピストン・シリンダ組立体は、粘性流体が充填されているシリンダと、該シリンダ内にそのピストンヘッドが位置するように設けられている複ロッド式ピストンとからなり、前記シリンダは前記ゴムパッド組立体に形成されているシリンダ収納室に収納され、前記複ロッド式ピストンの一方のロッドは前記ロッド貫通孔を通って前記前方伴板に固定され、他方のロッドは前記後方伴板をフリーに貫通し、前記シリンダ内は、前記複ロッド式ピストンのピストンヘッドにより、前記後方伴板側に位置する圧力室と前記前方伴板側に位置する負圧室の2室に分けられ、これらの両室は、前記シリンダの内周面と前記複ロッド式ピストンのピストンヘッドの外周面との間に形成されている隙間により常時連通していると共に、前記ピストンヘッドには、前記圧力室から前記負圧室への流れを阻止し、逆方向の流れを許容する逆止弁が設けられている連通孔が設けられ、この連通孔によっても連通していることを特徴とする鉄道車両用緩衝器。
【請求項3】
緩衝器枠が、上下枠と、連結器側に位置し前記上下枠の前方を結合している前方結合枠と、後方を結合している後方枠とからなり、前記前方結合枠と前記後方枠との間に緩衝器ユニットが組み込まれ、そして前記緩衝器ユニットが車体側の伴板守に所定量「δ」圧縮されて取り付けられている鉄道車両用緩衝器であって、
前記緩衝器ユニットは、ゴムパッド組立体と、ピストン・シリンダ組立体とからなり、
前記ゴムパッド組立体は、前記前方結合枠側に位置する前方伴板と、前記後方枠側に位置する後方伴板との間に設けられ、前記前方伴板側の軸心には所定径で、所定深さのシリンダ収納室とロッド貫通孔とが形成され、
前記ピストン・シリンダ組立体は、粘性流体が充填されているシリンダと、該シリンダ内にそのピストンヘッドが位置するように設けられている複ロッド式ピストンとからなり、前記シリンダは前記ゴムパッド組立体に形成されているシリンダ収納室に収納され、前記複ロッド式ピストンの一方のロッドは前記ロッド貫通孔を通って前記後方伴板に固定され、他方のロッドは前記前方伴板をフリーに貫通し、前記シリンダ内は、前記複ロッド式ピストンのピストンヘッドにより、前記前方伴板側に位置する圧力室と前記後方伴板側に位置する負圧室の2室に分けられ、これらの両室は、前記シリンダの内周面と前記複ロッド式ピストンのピストンヘッドの外周面との間に形成されている隙間により常時連通していると共に、前記ピストンヘッドには、前記圧力室から前記負圧室への流れを阻止し、逆方向の流れを許容する逆止弁が設けられている連通孔が設けられ、この連通孔によっても連通していることを特徴とする鉄道車両用緩衝器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの項に記載の緩衝器において、シリンダが伴板と一体的に形成されていることを特徴とする鉄道車両用緩衝器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの項に記載の緩衝器において、前記逆止弁を有する連通孔がピストンロッドの軸心に対して対称的に複数個設けられていることを特徴とする鉄道車両用緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器枠が、上下枠と、連結器側に位置し前記上下枠の前方を結合している前方結合枠と、後方を結合している後方枠と、前記上下枠の長手方向の中間を仕切っている仕切枠とからなり、前記前方結合枠と前記仕切枠との間に引張側ユニットが、前記後方枠と前記仕切枠との間に圧縮側ユニットがそれぞれ組み込まれている鉄道車両用緩衝器に関するもので、限定するものではないが、貨車用の緩衝器として好適な鉄道車両用緩衝器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両は、一般に複数台の車両が連結器で連結されて運行されているが、連結時には車両間に衝撃が生じる。また、複数台の車両が編成されて走行するときは、編成された複数台の車両は1個の剛体ではなく、多少の遊びのある連結器で接続された一種の伸縮体と見なすことができ、車両間には発停時、加減速時等において、さらには走行時にも衝撃あるいは衝突が生じる。このような衝撃は車両に悪影響を与えるばかりでなく、乗り心地を悪くし、貨物列車においては「荷崩れ」を起こす。そこで、このような衝撃を吸収するために連結器には緩衝器が設けられている。
【0003】
鉄道車両用の緩衝器は、文献を例示するまでも従来周知であるので詳しくは説明しないが、コンテナ貨車などに現在使用されている緩衝器は、いわゆるシングル型緩衝器からなり、緩衝器枠と、1個のゴム緩衝器と、このゴム緩衝器を前後から押さえる前方伴板、後方伴板とから構成されている。ゴム緩衝器は、所定の初期荷重状態で圧縮されて、前方後方伴板によって押さえられ、緩衝器枠の内側に入れられている。つまり前方伴板と後方伴板は、それぞれ緩衝器枠の前壁と後壁とによって押さえられている。緩衝器は、前方後方伴板が車体側の伴板守に係止されるようにして、車体に組み込まれている。連結器は、このような緩衝器枠の連結部に接続されている。従って、互いに連結されているコンテナ貨車の車両間が広がったり狭まったりすると、前方後方伴板の一方が伴板守に他方が緩衝器枠の壁面に押し付けられる。所定の大きさを越える衝撃、つまり初期荷重を越える荷重が作用すると、他方の伴板が伴板守から離間してゴム緩衝器が圧縮される。これによって衝撃が吸収されることになる。
【0004】
このようなシングル型緩衝器によっても衝撃を吸収することはできるが、衝撃の大きさが初期荷重より小さい場合にはゴム緩衝器は圧縮されないので吸収されない。つまりシングル型緩衝器は、吸収できない衝撃の範囲である不緩衝帯が存在する。従ってコンテナ貨車において荷崩れ等の問題が発生してしまう。このようなシングル型緩衝器に対して、いわゆるダブル形緩衝器も周知であり、客車に適用されている。ダブル形緩衝器からなる緩衝器は、緩衝器枠、前後のゴム緩衝器等からなっている。緩衝器枠は、前後方向に平行な一対の上下枠と、この上下枠の前端部を結合している前方の結合枠と、後方の結合枠と、上下枠の中間部を仕切っている仕切枠とから構成されている。この緩衝器枠の前方結合枠と仕切枠との間には前方伴板が、仕切枠の後方部には後方伴板がそれぞれ設けられている。そして、前方伴板と仕切枠との間には、前方ゴム緩衝器が、仕切枠と後方伴板との間には後方ゴム緩衝器が組み込まれ、そして車体に固定されている一対の伴板守により例えば560mm圧縮して、約100kNの初期荷重状態で取り付けられている。このように構成されている緩衝器枠の連結部に連結器が接続されている。また、緩衝器枠は、車体に取り付けられている下枠受け部材により支持されている。
【0005】
したがって、引っ張り時すなわち車両間が広がったときには前方ゴム緩衝器が、また車両間が狭まった圧縮時には後方ゴム緩衝器がそれぞれ圧縮され、他方のゴム緩衝器は初期圧縮されている分だけ伸張する。このとき、前後の伴板は車体の伴板守に固定された状態にあるため、仕切枠つまり緩衝器枠が前後に移動する。これにより車両間に発生した衝撃は緩和される。ダブル形緩衝器において、仕切枠に作用する荷重は、前方ゴム緩衝器と後方ゴム緩衝器とによって釣り合い状態になっており、衝撃の大きさが小さくても衝撃の大きさに応じて前後に移動する。つまり不緩衝帯がなく、軽微な衝撃であっても滑らかに吸収することができる。しかしながら、前後のゴム緩衝器は初期荷重が100kNのように比較的大きな荷重で組み込まれていて、衝撃の吸収時には一方が伸張するので、全体として吸収できる衝撃のエネルギ、つまり容量はそれほど大きくはないという問題もある。
【0006】
大きな衝撃のエネルギであっても十分に吸収できるように、ゴム緩衝器と粘性流体緩衝器との組み合わせからなる鉄道車両用のダブル型緩衝器が、例えば特許文献1により提案されている。また、粘性流体緩衝器も特許文献2により提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−127965号公報
【特許文献2】特表平 10−512942号公報
【0008】
特許文献1に示されているダブル型緩衝器は、図5の模式図に示されているように、ゴム緩衝器100と粘性流体緩衝器120との組み合わせからなっている。ゴム緩衝器100は、緩衝器枠101の軸方向の略中心部に設けられている仕切枠102と前方伴板103との間に設けられている第1のゴムパッド組立体105と、仕切枠102と後方伴板104との間に設けられている第2ゴムパッド組立体106とからなっている。この緩衝器枠101の仕切枠102に、粘性流体緩衝器120を構成しているシリンダ121が固定されている。
【0009】
粘性流体緩衝器120は、粘性流体が入れられている上記のシリンダ121と、複ロッド式ピストン122とからなり、そのピストンヘッド123がシリンダ121内に位置し、ピストンロッド124、124はシリンダ121から前後方向にそれぞれ突き出ている。突き出たピストンロッド124、124の先端部と、前後の伴板103、104との間には、中立位置で所定の間隔Dがあり、この中立位置を保つように複ロッド式ピストン122はスプリング125、125により付勢されている。シリンダ121は、ピストンヘッド123により前後室に見かけ上仕切られているが、シリンダ121の内周面とピストンヘッド123の外周面との間には所定の間隔があり、この間隔が粘性流体の絞り通路あるいは抵抗流路となっている。
【0010】
したがって、緩衝器枠101が連結器から、例えば矢印A方向の引張衝撃を受けると、緩衝器枠101に設けられているシリンダ121は、図5において左方へ移動する。このとき、前記間隔Dを移動する間はピストンロッド124の先端部は前方伴板103に達しないので、第1のゴムパッド組立体105のみが圧縮される。これにより、第1のゴムパッド組立体105により緩衝される。さらに大きな衝撃が加ると、第1のゴムパッド組立体105はさらに圧縮され、ピストンロッド124が前方伴板103に当接する。以降はシリンダ121が左方へ移動してシリンダ121内の粘性流体は抵抗流路を通って左室から右室へ流れる。このときの抵抗により、粘性流体緩衝器120の緩衝作用が加わる。圧縮方向の衝撃に対しても同様に作用する。引張および圧縮方向の負荷がなくなると、緩衝器枠101したがってシリンダ121は中立位置へ復帰する。複ロッド式ピストン122もスプリング125、125により中立位置へ戻る。
【0011】
特許文献2に記載されているエラストマーゴム緩衝器は、シリンダとピストンとからなっている。シリンダ室を2室に分けているピストンヘッドには断面積が変更される通路が設けられている。したがって、通路の断面積を変えることにより一方の室から他方の室へ流れるエラストマーゴムの流速を調整し、緩衝の程度を変更できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に記載の緩衝器によると、小さな衝撃はゴム緩衝器100で緩衝し、それよりも大きな衝撃が作用するときは粘性流体緩衝器120による緩衝が加わるという優れた効果が得られる。しかしながら、作用および構造の面から見ると、改良すべき点も認められる。例えば、粘性流体の通路がシリンダの内周面とピストンヘッドの外周面との間の隙間だけで、緩衝作用時も中立位置へ復帰するときも同じ断面積の流路であるので、衝撃が消滅し中立位置へ復帰するときの速度が遅いという問題がある。特に、中立位置の近傍に達すると、スプリング125、125の戻し力が低下するので、速度は遅くなる。すなわち、中立位置近傍では感度が悪いという問題もある。また、衝撃が消滅すると、緩衝器枠101したがってシリンダ121は、第1、2のゴムパッド組立体105、106の復元力で中立位置へ戻り、このときシリンダ121内のピストン122も戻るが、そのピストンヘッド123が実質的な中心位置へ戻るという保証はない。確実に戻すためにスプリング125、125、…が設けられているので、構造的に多少複雑になっている。さらには、シリンダ121は緩衝器枠101と共に移動するようになっているので、粘性流体緩衝器が作用する時期を決定するための、上記した間隔Dを設定する必要もある。また、粘性流体緩衝器120はピストンロッド124、124の先端部が伴板103、104に当接してから作用するので、当接するときのショックがあり、必ずしもスムーズな緩衝が得られるとは限らない。
【0013】
上記のような問題は、シリンダとピストンの関連構成に起因しているが、特許文献2に記載のピストンに形成されている通路の断面積を単に変える構造では解決できない。
したがって、本発明は、小さな衝撃から大きな衝撃まで効果的にスムーズに緩衝し、構造的には単純でコンパクトであるにも拘わらず、衝撃が消滅すると中立位置へ速やかに復帰する、鉄道車両用緩衝器を提供することを目的とし、限定するものではないがコンテナ貨車に好適な鉄道車両用緩衝器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記目的を達成するために、引張側ユニットと圧縮側ユニットを、ゴムパッド組立体と、該組立体の内部に同心的に設けたピストン・シリンダ組立体とから構成し、これらのユニットを緩衝器枠に組み込む。そして、これらのユニットをδ例えば10mm圧縮した状態で車両側の伴板守に取り付ける。シリンダ内は、複ロッド式ピストンのピストンヘッドにより緩衝時に圧力が立つ圧力室と反対側の負圧室とに分け、これらの両室を、シリンダの内周面と複ロッド式ピストンのピストンヘッドの外周面との間に形成されている隙間により常時連通させると共に、ピストンヘッドには、圧力室から負圧室への流れを阻止し、逆方向の流れを許容する逆止弁を設けた連通孔を形成し、この連通孔によっても連通させる。
【0015】
すなわち、請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、緩衝器枠が、上下枠と、連結器側に位置し前記上下枠の前方を結合している前方結合枠と、後方を結合している後方枠と、前記上下枠の長手方向の中間を仕切っている仕切枠とからなり、前記前方結合枠と前記仕切枠との間に引張側ユニットが、前記後方枠と前記仕切枠との間に圧縮側ユニットがそれぞれ組み込まれ、そしてこれらのユニットが車体側の伴板守に所定量「δ」圧縮されて取り付けられている鉄道車両用緩衝器であって、前記引張側ユニットは、引張側ゴムパッド組立体と引張側ピストン・シリンダ組立体とからなり、前記引張側ゴムパッド組立体は、前記前方結合枠側に位置する前方伴板と、前記仕切枠との間に設けられ、前記前方伴板側の軸心には所定径で、所定深さのシリンダ収納室とロッド貫通孔とが形成され、前記引張側ピストン・シリンダ組立体は、粘性流体が充填されている引張側シリンダと、該シリンダ内にそのピストンヘッドが位置するように設けられている複ロッド式ピストンとからなり、前記引張側シリンダは前記前方伴板と一体的に設けられて前記シリンダ収納室に位置し、前記引張側複ロッド式ピストンのピストンロッドの一方の端部は、前記前方伴板をフリーに貫通し、そして他方の端部は前記ロッド貫通孔を通って前記仕切枠に固定されるようになっており、前記引張側シリンダ内は、前記複ロッド式ピストンのピストンヘッドにより前記伴板側に位置する圧力室と前記仕切枠側に位置する負圧室とに分けられ、これらの両室は、前記シリンダの内周面と前記複ロッド式ピストンのピストンヘッドの外周面との間に形成されている隙間により常時連通していると共に、前記ピストンヘッドには、前記圧力室から前記負圧室への流れを阻止し、逆方向の流れを許容する逆止弁が設けられている連通孔が設けられ、この連通孔によっても連通し、前記圧縮側ユニットは、同様に、圧縮側ゴムパッド組立体と圧縮側ピストン・シリンダ組立体とからなり、前記圧縮側ゴムパッド組立体は、前記後方枠側に位置する後方伴板と前記仕切枠との間に設けられ、前記後方伴板側の軸心には所定径で、所定深さのシリンダ収納室とロッド貫通孔とが形成され、前記圧縮側ピストン・シリンダ組立体は、粘性流体が充填されている圧縮側シリンダと、該シリンダ内にそのピストンヘッドが位置するように設けられている複ロッド式ピストンとからなり、前記圧縮側シリンダは前記後方伴板と一体的に設けられて前記シリンダ収納室に位置し、前記圧縮側複ロッド式ピストンのピストンロッドの一方の端部は、前記後方伴板をフリーに貫通し、そして他方の端部は前記ロッド貫通孔を通って前記仕切枠に固定されるようになっており、前記圧縮側シリンダ内は、前記複ロッド式ピストンのピストンヘッドにより前記後方伴板側に位置する圧力室と前記仕切枠側に位置する負圧室とに分けられ、これらの両室は、前記シリンダの内周面と前記複ロッド式ピストンのピストンヘッドの外周面との間に形成されている隙間により常時連通していると共に、前記ピストンヘッドには、前記圧力室から前記負圧室への流れを阻止し、逆方向の流れを許容する逆止弁が設けられている連通孔が設けられ、この連通孔によっても連通するように構成される。
【0016】
請求項2に記載の発明は、緩衝器枠が、上下枠と、連結器側に位置し前記上下枠の前方を結合している前方結合枠と、後方を結合している後方枠とからなり、前記前方結合枠と前記後方枠との間に緩衝器ユニットが組み込まれ、そして前記緩衝器ユニットが車体側の伴板守に所定量「δ」圧縮されて取り付けられている鉄道車両用緩衝器であって、前記緩衝器ユニットは、ゴムパッド組立体と、ピストン・シリンダ組立体とからなり、前記ゴムパッド組立体は、前記前方結合枠側に位置する前方伴板と、前記後方枠側に位置する後方伴板との間に設けられ、前記後方伴板側の軸心には所定径で、所定深さのシリンダ収納室とロッド貫通孔とが形成され、前記ピストン・シリンダ組立体は、粘性流体が充填されているシリンダと、該シリンダ内にそのピストンヘッドが位置するように設けられている複ロッド式ピストンとからなり、前記シリンダは前記ゴムパッド組立体に形成されているシリンダ収納室に収納され、前記複ロッド式ピストンの一方のロッドは前記ロッド貫通孔を通って前記前方伴板に固定され、他方のロッドは前記後方伴板をフリーに貫通し、前記シリンダ内は、前記複ロッド式ピストンのピストンヘッドにより、前記後方伴板側に位置する圧力室と前記前方伴板側に位置する負圧室の2室に分けられ、これらの両室は、前記シリンダの内周面と前記複ロッド式ピストンのピストンヘッドの外周面との間に形成されている隙間により常時連通していると共に、前記ピストンヘッドには、前記圧力室から前記負圧室への流れを阻止し、逆方向の流れを許容する逆止弁が設けられている連通孔が設けられ、この連通孔によっても連通するように構成される。
【0017】
請求項3に記載の発明は、緩衝器枠が、上下枠と、連結器側に位置し前記上下枠の前方を結合している前方結合枠と、後方を結合している後方枠とからなり、前記前方結合枠と前記後方枠との間に緩衝器ユニットが組み込まれ、そして前記緩衝器ユニットが車体側の伴板守に所定量「δ」圧縮されて取り付けられている鉄道車両用緩衝器であって、前記緩衝器ユニットは、ゴムパッド組立体と、ピストン・シリンダ組立体とからなり、前記ゴムパッド組立体は、前記前方結合枠側に位置する前方伴板と、前記後方枠側に位置する後方伴板との間に設けられ、前記前方伴板側の軸心には所定径で、所定深さのシリンダ収納室とロッド貫通孔とが形成され、前記ピストン・シリンダ組立体は、粘性流体が充填されているシリンダと、該シリンダ内にそのピストンヘッドが位置するように設けられている複ロッド式ピストンとからなり、前記シリンダは前記ゴムパッド組立体に形成されているシリンダ収納室に収納され、前記複ロッド式ピストンの一方のロッドは前記ロッド貫通孔を通って前記後方伴板に固定され、他方のロッドは前記前方伴板をフリーに貫通し、前記シリンダ内は、前記複ロッド式ピストンのピストンヘッドにより、前記前方伴板側に位置する圧力室と前記後方伴板側に位置する負圧室の2室に分けられ、これらの両室は、前記シリンダの内周面と前記複ロッド式ピストンのピストンヘッドの外周面との間に形成されている隙間により常時連通していると共に、前記ピストンヘッドには、前記圧力室から前記負圧室への流れを阻止し、逆方向の流れを許容する逆止弁が設けられている連通孔が設けられ、この連通孔によっても連通するように構成される。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかの項に記載の緩衝器において、シリンダが伴板と一体的に形成され、そして請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかの項に記載の緩衝器において、前記逆止弁を有する連通孔がピストンロッドの軸心に対して対称的に複数個設けられている。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によると、ゴムパッド組立体とピストン・シリンダ組立体とからなる引張側ユニットと圧縮側ユニットは緩衝器枠に組み込まれ、そしてこれらのユニットがδだけ圧縮された状態で車両側の伴板守に取り付けられているので、小さな衝撃で緩衝枠の移動量がδ以内のときは、ピストン・シリンダ組立体による緩衝も得られるが、主としてゴムパッド組立体により緩衝される。そして大きな衝撃で移動量がδを超えるときはピストン・シリンダ組立体による緩衝が本格的に付加される。すなわち、本発明によると、小さな衝撃から大きな衝撃まで幅広くスムーズに緩衝されるという効果が得られる。また、ピストン・シリンダ組立体は、ゴムパッド組立体の内部に設けられ、複ロッド式ヒストンには戻しバネなどを必要としないので、構造的に簡潔でコンパクトになっている。さらには、ピストンヘッドには、圧力室から負圧室への粘性流体の流れを阻止し、逆方向の流れを許容する逆止弁が設けられている連通孔が設けられ、この連通孔によっても連通しているので、緩衝作用が得られると共に、衝撃が消滅すると、速やかに中立位置へ戻り、次の衝撃に対応するという効果も得られる。
【0020】
また、シリンダが伴板と一体的に形成されている発明によると、構造的に簡潔になり、組立、シール等の問題も小さくなる。本実施の形態によると、ピストンヘッドの、シリンダ内周面に接する部分は軸方向に長く広くなって、偏荷重は受け難くなっているが、逆止弁を有する連通孔がピストンロッドの軸心に対して対称的に複数個設けられている発明によると、荷重はピストンヘッドには均一に作用する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る鉄道車両用緩衝器を示す図で、その(ア)はその平面図、その(イ)はその正面図、その(ウ)は引張側ユニットの詳細を一部断面にして示す拡大正面図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係る鉄道車両用緩衝器を模式的に示す図で、その(ア)は組み立てられた状態を、その(イ)は車体側に取り付けられた状態をそれぞれ示す正面図である。
図3】本発明の第1の実施の形態に係る鉄道車両用緩衝器の作用状態を示す図で、その(ア)は引張衝撃が作用したときの、その(イ)は圧縮方向の衝撃が作用したときの正面図、その(ウ)は緩衝特性を示すグラフである。
図4】本発明の第2の実施の形態に係る鉄道車両用緩衝器を示す図で、その(ア)は正面図、その(イ)は緩衝特性を示すグラフである。
図5】従来の緩衝器を模式化して示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を説明する。第1の実施の形態に係る鉄道車両用緩衝器はダブル型で、概略的には図1の(ア)、(イ)に示されているように、図の左側の連結器側に位置する引張側ユニットPと、右側に位置する圧縮側ユニットP’とから構成されている。引張側ユニットPは、板ゴムと金属板とが交互に重ねられた引張側ゴムパッド組立体Gと、粘性流体例えばシリコンゴムが充填されている引張側ピストン・シリンダ組立体Sとからなっている。圧縮側ユニットP’も、同様に圧縮側ゴムパッド組立体G’と、圧縮側ピストン・シリンダ組立体S’とからなっている。これらのユニットP、P’は、後述する緩衝器枠内に収められている。
【0023】
以後の説明からも明らかなように、引張側ユニットPと圧縮側ユニットP’は、対称的に構成され、実質的に同じ構造をしているので、以降引張側ユニットPについて説明し、圧縮側のそれについては図面において同じ参照数字にダッシュ「’」を付けて、原則として重複説明はしない。例えば、引張側ユニットPの引張側シリンダには明細書中では「引張側シリンダ20」、または単に「シリンダ20」と記載し、圧縮側シリンダについては明細書では「圧縮側シリンダ20’」または「シリンダ20’」と記載する。
【0024】
緩衝器枠2は、前後方向すなわち車体の軸方向に平行な一対の上下枠4、5と、これらの上下枠4、5の前端部を結合している前方結合枠6と、後方枠7と、上下枠4、5の軸方向の略中間部を仕切っている仕切枠8とから一体的に構成されている。このように構成されている緩衝器枠2の前方結合枠6と仕切枠8との間に引張側ユニットPが、後方枠7と仕切枠8との間に圧縮側ユニットP’がそれぞれ組み込まれるようになっている。
【0025】
一方、車体枠には、図1の(ア)において二点鎖線で示されているように、一対の伴板守16、16が所定の間隔をおいて固定されている。そして、引張側および圧縮側のユニットP、P’は、組み込まれた自然長から所定量δ、例えば約10mmそれぞれ圧縮された荷重状態で前記一対の伴板守16、16により車体枠に取り付けられている。このようにして伴板守16、16により圧縮状態で取り付けられている状態が図1の(ア)および(イ)に示されているが、間隔10mmは図面には現れていない。なお、図2の(イ)の模式図には間隔δが示されている。
【0026】
本実施の形態においては、上下枠4、5の先端部には、従来周知の態様で縦ピン17により連結器18が水平方向に揺動自在に取り付けられている。なお、他の実施の形態として、上下枠4、5と連結器18とを直接接続する代わりに所定の継ぎ手部材を介して接続してもよい。そうすると連結器18は、上下枠4、5に対して水平方向だけでなく垂直方向にも揺動自在に接続されることになる。
【0027】
引張側ユニットPのゴムパッド組立体Gのゴムパッドには、図1の(ウ)に拡大して示されているように、その一端から所定深さ、所定径に空洞化され、その奥にはロッド貫通孔が形成されている。空洞化することによりシリンダ収納室が形成されている。このように形成されているゴムパッドは、シリンダ収納室側の前方が前方伴板11に、そして後方が仕切枠8にそれぞれ取り付けられ、ユニット化されている。
【0028】
引張側ピストン・シリンダ組立体Sは、仕切枠8の方に開口したシリンダ20と、そのピストンヘッド26がシリンダ20内に位置するようにして設けられている復ロッド式ピストン25とからなっている。シリンダ20は、前方伴板11と一体的に形成され、そしてシリンダ室に収まっている。あるいは、前方伴板11には仕切枠8の方が開口したシリンダ20が取り付けられている。復ロッド式ピストン25の前方ロッド27は前方伴板11を貫通しフリーになっているが、後方ロッド28はゴムパット組立体Gのロッド貫通孔を貫通して仕切枠8に固定されている。従って、緩衝器枠2が前後方向へ移動すると、複ロッド式ピストン25の前方ロッド27は前方伴板11から突出したり戻ったりすることになる。
【0029】
引張側シリンダ20内にはピストンヘッド26が位置し、このヘッド26によりシリンダ20は前方伴板11側に位置する前方室すなわち緩衝時に圧力が立つ圧力室21と、仕切枠8側に位置する後方室すなわち負圧室22とに分けられている。圧力室21と負圧室22は、シリンダ20の内周面とピストンヘッド26の外周面との間の所定の隙間により連通している。また、ピストンヘッド26には、特別に圧力室21と負圧室22とに開口した複数個の連通孔29、29…がロッド27(28)の軸心の周りに対称的に形成されている。これらの連通孔29には、圧力室21から負圧室22への流れを阻止し、逆方向への流れを許容する、例えば鋼球からなる逆止弁30が設けられている。このように構成されているシリンダ20にはシリコンゴムが充填され、そして蓋体23で封鎖されている。なお、図1の(ウ)中の、他の符号24は、シール部材を示している。
【0030】
次に、上記第1の実施の形態の作用について説明する。シリンダ20、20’内に粘性圧縮性流体、例えばシリコンゴムを充填して蓋体23、23’で密閉する。引張側ユニットPと、圧縮側ユニットP’とを、図1の(ア)、(イ)に示されているように緩衝器枠2に組み込む。あるいは、組み立てる。組み込んだ状態が図2の(ア)の模式図に示されている。この状態は、緩衝器枠2には連結器から引張衝撃も圧縮衝撃も作用していない中立状態である。そうして、各ユニットP、P’を所定量δ例えば10mm圧縮して車体側の伴板守16、16に取り付ける。圧縮して取り付けた状態が図2の(イ)に示されている。
【0031】
今、緩衝器枠2に、図1の(ア)、(イ)において矢印A方向に引張衝撃あるいは荷重が作用すると、たわみ量がδ以内であれば、圧縮側ゴムパッド組立体G’は、仕切枠8と後方伴板12に接したままで、引張側ゴムパット組立体Gにより緩衝される。緩衝器枠2が小間隔のδ内ではあるが、矢印A方向に移動するので、引張側複ロッド式ピストン25も一体的に移動するが、移動量は小さくシリコンゴムは圧縮性があるので、また移動速度は遅いので、圧力室21に大きな圧力が立つことはなく、緩衝にはさほど寄与しない。すなわち、たわみ量がδ以内の時は、主として引張側ゴムパット組立体Gにより緩衝される。
【0032】
衝撃が大きいときは、あるいは大きくなると、引張側ゴムパット組立体Gは、さらに圧縮され、複ロッド式ピストン25も左方すなわち前方へ駆動される。その結果、引張側シリンダ20の圧力室21には圧力がたち、圧力室21のシリコンゴムは、シリンダ20の内周面とピストンヘッド26の外周面との間の隙間を通って、仕切枠8側に位置する負圧室22へと流れる。このときの流れ抵抗によって緩衝が付加される。このときは、ピストンヘッド26に設けられている逆止弁30、30、…は、閉じている。なお、図3の(ア)、(イ)において、閉じている逆止弁30、30’は、「x」印で示されている。
【0033】
上記のような引張衝撃が作用するときは、圧縮側ピストン・シリンダ組立体P’においては、後方伴板12が伴板守16から離れて、後方伴板12も圧縮側複ロッド式ピストン25’も共に移動するので、緩衝には関係しない。このように引張側ゴムパット組立体Gとピストン・シリンダ組立体Pとにより緩衝された状態が図3の(ア)に示されている。
【0034】
引張衝撃が消滅すると、引張側ゴムパッド組立体Gの復元力により、緩衝器枠2は初期位置へ戻る。緩衝器枠2の仕切枠8に取り付けられている複ロッド式ピストン25も戻る。引張側複ロッド式ピストン25の動きは、逆止弁30を開く方向であるので、シリコンゴムが復帰動作を邪魔することはない。すなわち、中立位置近傍に復帰して圧力が低下しても中立位置へ確実に戻る。第1の実施の形態による、たわみと荷重との関係を図3の(ウ)において線Xで示す。ピストン・シリンダ組立体Sがなく、ゴムパッド組立体のみによって得られる特性を線Yで示す。本実施の形態によると、衝撃が小さいときは、複ロッド式ピストン25による流体緩衝も作用しているが、主として引張側ゴムパット組立体Gにより緩衝され、大きくなると流体緩衝が付加される。したがって、スムーズな緩衝作用が得られる。
【0035】
緩衝器枠2に圧縮方向の衝撃が作用するときは、今度は圧縮側ゴムパッド組立体G’と、圧縮側ピストン・シリンダ組立体P’とが同様に緩衝作用を奏することは明らかであるので、図3の(イ)に、圧縮側ゴムパット組立体G’と圧縮側のピストン・シリンダ組立体P’とにより圧縮方向の衝撃が緩衝された状態を示すにとどめ、説明を省略する。
【0036】
図4に、シングル型の第2の実施の形態が示されている。本実施の形態によっても、緩衝器ユニットQはゴムパッド組立体G2とピストン・シリンダ組立体P2とからなっている。連結器に接続される緩衝器枠50は、前方結合枠51と後方枠52とから構成されている。ゴムパット組立体G2のゴムパッドには、その一端から所定深さ、所定径に空洞化され、その奥にはロッド貫通孔が形成されている。空洞化することによりシリンダ収納室が形成されている。このように構成されているゴムパッドは、シリンダ収納室側が後方伴板54に、反対側が前方伴板53にそれぞれ取り付けられている。
【0037】
ピストン・シリンダ組立体P2は、前方伴板53の方に開口したシリンダ60と、そのピストンヘッド66がシリンダ60内に位置するようにして設けられている復ロッド式ピストン65とからなっている。シリンダ60は、後方伴板54と一体的に形成され、そしてシリンダ収納室内に収まっている。あるいは、後方伴板54には前方伴板53の方に開口したシリンダ60が取り付けられている。復ロッド式ピストン65の前方ロッド67は、ゴムパットのロッド貫通孔を貫通し、さらに前方伴板53を摺動可能に貫通して前方結合枠51に固着されている。つまり復ロッド式ピストン65は緩衝器枠50と一体的に設けられている。一方復ロッド式ピストン65の後方ロッド68は後方伴板54を貫通しフリーになっている。
【0038】
シリンダ60内は、ピストンヘッド66により、後方伴板54側に位置する圧力室61と、前方伴板53側に位置する負圧室62とに分けられている。両室61、62は、シリンダ60の内周面とピストンヘッド66の外周面との間の所定の隙間により連通している。また、ピストンヘッド66には、特別に圧力室61と負圧室62とに開口した複数個の連通孔69が形成されている。これらの連通孔69には、圧力室61から負圧室62への流れを阻止し、逆方向への流れを許容する、鋼球からなる逆止弁70が設けられている。このように構成されているシリンダ60には、第1の実施の形態と同様にシリコンゴムが充填され、そして蓋体63で封鎖されている。
【0039】
第2の実施の形態も、第1の実施の形態と略同様に作用するので、以下簡単にその作用を説明する。緩衝器ユニットQを、緩衝器枠50に組み込む。あるいは、組み立てる。そうして、緩衝器ユニットQを所定量圧縮した状態で車体側の伴板守16’、16’に取り付ける。今、緩衝器枠50に図4の(ア)において矢印A方向に引張衝撃が作用すると、後方伴板54が後方枠52によって押さえられた状態で、前方伴板53が伴板守16’によって係止されて押し込まれるので、前方伴板53が図において右方に移動する。これによってゴムパット組立体G2は圧縮される。しかしながらピストン・シリンダ組立体P2においてシリンダ60内のピストンヘッド66の位置は変化しない。つまりA方向に引張衝撃が作用する場合には、衝撃がゴムパット組立体G2のみによって緩衝される。引張衝撃が消滅すると、ゴムパッド組立体G2の復元力により、緩衝器枠50は初期位置へ戻る。
【0040】
緩衝器枠50に圧縮方向の衝撃が作用するときは、後方伴板54が伴板守16’に係止しているが、前方伴板52が前方結合枠51によって押し込まれて後方伴板54と後方枠52とが離間する。つまり復ロッド式ピストン65の後方ロッド68は後方伴板54から突き出る。そうするとゴムパット組立体G2が圧縮されてゴムパット組立体G2によって緩衝されると共に、ピストン・シリンダ組立体P2においてシリンダ60内のピストンヘッド66の位置も変化する。その結果シリンダ60の圧力室61に圧力が立つ。シリコンゴムは、シリンダ60の内周面とピストンヘッド66の外周面との間の隙間を通って、前方伴板53側に位置する負圧室62へと流れる。このときの流れ抵抗による緩衝が加わる。すなわちピストン・シリンダ組立体P2によっても緩衝される。なお、このときピストンヘッド66に設けられている逆止弁70、70、…は閉じている。
【0041】
緩衝器枠50に作用している圧縮方向の衝撃が消滅すると、ゴムパッド組立体G2の復元力により、緩衝器枠50は初期位置へ戻る。後方伴板54に取り付けられているシリンダ60も戻る。複ロッド式ピストン65は動かないが、シリンダ60の移動は逆止弁70、70,…を開く方向であるので、シリコンゴムが復帰動作を邪魔することはない。すなわち、中立位置近傍に復帰して圧力が低下しても中立位置へ確実に戻る。
【0042】
上記第2の実施の形態においては、引張衝撃はゴムパット組立体G2のみによって吸収され、圧縮衝撃はゴムパット組立体G2とピストン・シリンダ組立体P2とによって吸収される。従って、たわみと荷重との関係は図4の(イ)の曲線X、X’のようになる。参考として圧縮衝撃を受けたときに、ゴムパット組立体G2のたわみと荷重との関係を曲線Yで示す。第2の実施の形態においては圧縮衝撃において大きな緩衝作用を奏するので、衝突等の事故に対しても対応することができる。
【符号の説明】
【0043】
P、P’ 引張側および圧縮側ユニット
G、G’ 引張側および圧縮側ゴムパッド組立体
S、S’ 引張側および圧縮側ピストン・シリンダ組立体
2 緩衝器枠 8 仕切枠
11 前方伴板 12 後方伴板
20 シリンダ 21 圧力室
22 負圧室 25 復ロッド式ピストン
29 連通孔 30 逆止弁
Q 緩衝器ユニット
G2 ゴムパッド組立体
P2 ピストン・シリンダ組立体
50 緩衝器枠 53 前方伴板
54 後方伴板 60 シリンダ
61 圧力室 62 負圧室
65 復ロッド式ピストン 66 ピストンヘッド
67 前方ロッド 68 後方ロッド
69 連通孔 70 逆止弁
図1
図2
図3
図4
図5