(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
先端から流体移送用チューブの端部内に圧入させてそのチューブの端部の内周部を拡径させる先窄まりの外周拡径面が先端に形成された外周部と、流体移送用流路を構成する内周部とを有するインナーリングと、
外周側に雄ネジが形成された筒状螺合部を有する管継手本体又は流体機器と、
前記筒状螺合部の雄ネジに螺合する雌ネジが形成されたユニオンナットとを備え、
前記インナーリングは、前記チューブの端部の内周部を拡径させた状態で前記筒状螺合部内に挿入され、かつ、前記外周拡径面は、前記筒状螺合部の雄ネジに螺合されるユニオンナットに前記チューブを挟んだ状態で押し付けられる管接続装置であって、
前記ユニオンナットにおける前記外周拡径面との間で前記チューブを押付ける押圧部は、前記筒状螺合部の軸心に関して前記外周拡径面と互いに同じ方向に傾く傾斜内周面に形成され、
前記傾斜内周面の最小径は、前記外周拡径面と前記チューブとの圧入嵌合部分の最小径と同等又はそれよりも大に設定され、かつ、前記傾斜内周面の最小径は、前記圧入嵌合部分の最大径と同等又はそれより小に設定されている管接続装置。
前記外周拡径面は、前記拡径させるチューブの端部の内周部のうち最大に拡径される部分を最大に拡径するのみの状態として、その時に現れるチューブの端部の内周部の自然な先窄まりの内周拡径面よりも大径で、かつ、凸曲面となる状態に形成されている請求項1に記載の管接続装置。
【背景技術】
【0002】
インナーリングを用いた管接続装置は、外周に雄ねじが形成された状態で管継手本体又は流体機器から突設される筒状螺合部と、径外側に隆起した環状大径部を有するシール用のインナーリングと、雄ねじに螺合する雌ねじが形成されたユニオンナットとを有して構成されており、例えば特許文献1において開示されたものが知られている。
この特許文献1に示されるものでは、外周に雄ねじが形成された状態で管継手本体に設けられた筒状螺合部と、内周部が流体流通路とされ径外側に環状大径部が隆起した管固定用のインナーリングと、前記雄ねじに螺合する雌ねじが形成されたユニオンナットとを備えている。
【0003】
前述の管接続装置において、管継手本体にチューブを接続するには、まずインナーリングをチューブの開放口からチューブの端部内に圧入して環状大径部によりチューブの端部を拡径変形させる。次に、この拡径変形させたインナーリング付きのチューブを筒状螺合部内に挿入する。
次いで、前記ユニオンナットの雌ねじを筒状螺合部の雄ねじに螺合する。そして、ユニオンナットを締め込んで螺進させ、この螺進によりユニオンナットで、インナーリング付きのチューブを軸心方向に押し付けることにより、チューブの接続を行うものである。
【0004】
前述のような管接続装置においては、ユニオンナットを締付けて、その尖った箇所であるシール用押圧部(特許文献1の押圧エッジ3Cを参照)でチューブの拡径部を凹むほどに軸心方向に強く押付けることでシールさせよう、という考えに基づいた手段であった。即ち、シール性能やチューブの抜けに対する安全性確保の為には、工具を用いての強い締付作業が必要であり、そのため、作業者の負担が大きく、峡所での作業が困難、作業ばらつきが生じるなどのやり難さがあり、場合によっては締付け不足によって性能に影響が出るおそれがあった。
【0005】
また、強い締付けによる強い応力が各部に加わり変形が大きくなるので、長期間の使用や高温での使用における緩みが生じることを防止するため、増し締めが行われることもある。そして、部品交換やメンテナンスなどに伴って取り外しや再施工を行う場合には、前回よりもさらに締め込む必要がある。従って、従来の管接続装置では、締込み位置や使用回数に制限を設けることが多いとか、頻繁に取り外しを行うような場所では、すぐに部品交換する必要があるなど、繰り返しの使用に関しては改善の余地が残されているものであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、インナーリングを用いるタイプのものにおいて、今一度構造を見直すことにより、良好なシール性能を維持しながらも、従来より多くの繰り返し使用が可能となるように改善される管接続装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、先端から流体移送用チューブ4の端部4C内に圧入させてそのチューブ4の端部4Cの内周部を拡径させる先窄まりの外周拡径面3aが先端に形成された外周部3Gと、流体移送用流路を構成する内周部3wとを有するインナーリング3と、
外周側に雄ネジ7が形成された筒状螺合部1Aを有する管継手本体1又は流体機器1と、
前記筒状螺合部1Aの雄ネジ7に螺合する雌ネジ13が形成されたユニオンナット2とを備え、
前記インナーリング3は、前記チューブ4の端部4Cの内周部を拡径させた状態で前記筒状螺合部1A内に挿入され、かつ、前記外周拡径面3aは、前記筒状螺合部1Aの雄ネジ7に螺合されるユニオンナット2に前記チューブ4を挟んだ状態で押し付けられる管接続装置において、
前記ユニオンナット2における前記外周拡径面3aとの間で前記チューブ4を押付ける押圧部12bは、前記筒状螺合部1Aの軸心Yに関して前記外周拡径面3aと互いに同じ方向に傾く傾斜内周面に形成され
、
前記傾斜内周面12bの最小径rは、前記外周拡径面3aと前記チューブ4との圧入嵌合部分Mの最小径nと同等又はそれよりも大(r≧n)に設定され、かつ、前記傾斜内周面12bの最小径rは、前記圧入嵌合部分Mの最大径Daと同等又はそれより小(r≦Da)に設定されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の管接続装置において、
前記外周拡径面3aは、前記拡径させるチューブ4の端部4Cの内周部のうち最大に拡径される部分を最大に拡径するのみの状態として、その時に現れるチューブの端部4Cの内周部の自然な先窄まりの内周拡径面4uよりも大径で、かつ、凸曲面となる状態に形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の管接続装置において、
前記傾斜内周面12bの前記軸心Yに対する角度θは、前記外周拡径面3aの前記軸心Yに対する角度αよりも大に設定されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の管接続装置において、
前記インナーリング3の基端側に形成されるシール要素部yと、前記管継手本体1又は流体機器1に設けられるシール構成部kとの圧接による奥シール部S2,S3が形成可能に構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、ユニオンナットの回し込みによる締付(螺進)により、その押圧部は、チューブの端部における外周拡径面に外嵌されている部分を軸心方向に押付けるようになるが、押圧部は、外周拡径面と互いに同じ方向に傾く傾斜内周面であって、広い面でチューブを押す構成となる。これは、尖った角部でもって局部的に押付ける従来構成のものに比べて、チューブを押す圧力(面圧)を明確に減少させることができ、従って、クリープ現象を小さくすることができる。
【0013】
インナーリングに強制外嵌されているチューブを管継手本体に内嵌させる構造の管接続装置においては、もともと良好なシール性を備えているので、ユニオンナットの押圧部を尖らせてチューブに食込ませるようにして押付ける従来構成と、傾斜内周面の広い面でもってチューブを全体的に押付ける本願構成とには、明確なシール性の差が付かないことが分ってきた。故に、応力集中を避けて面圧を下げる工夫を凝らした本願請求項1の構成によれば、チューブの変形やクリープを軽減させることが可能になるので、繰り返し使用の回数を明確に増すことも可能になる。
【0014】
その結果、インナーリングを用いるタイプのものにおいて、今一度構造を見直すことにより、良好なシール性能を維持しながらも、従来より多くの繰り返し使用が可能となり、長寿命化が図れるように改善される管接続装置を提供することができる。
【0015】
請求項1の発明によれば、傾斜内周面の最小径は、外周拡径面とチューブとの圧入嵌合部分の最小径と同等又はそれよりも大に設定されているので、外周拡径面とチューブ端部とが密着していない部分をユニオンナットで押す無駄が省けるようになり、余計な押圧力を加えることがなく、効率良くユニオンナットの締付けによる螺進が行えるようになる。従って、従来よりもユニオンナットを軽く締付けることがき、作業性の向上が可能となる。
【0016】
請求項2の発明によれば、詳しくは実施形態の項にて述べるが、インナーリングの外周拡径面の広い範囲にわたりチューブの内周部と接触することになり、インナーリングの外周拡径面とチューブの内周部との間に外周拡径面の全面に及ぶほどの幅広い圧接部を形成することができる。
つまり、インナーリングの外周拡径面とチューブの端部とがユニオンナットの締付以前において既に密着しているので、ユニオンナットによる押圧力を従来より小さくしても、十分なシール性能及びチューブの抜止め性能とが得られるので、押付けによるチューブ端部の変形を最小限にすることができ、請求項1の発明による前記効果を強化可能となる。
【0017】
請求項3の発明によれば、傾斜内周面の軸心に対する角度が、外周拡径面の軸心に対する角度よりも大に設定されているので、インナーリングの先窄まりの外周拡径面に外嵌されているチューブにおける傾斜内周面(押圧部)で押される部分は、軸心方向で管継手本体側と反対側に寄るほどチューブの厚み方向に関する圧縮量が増すようになる。
このチューブの圧縮量が小径側ほど大になることによって楔作用が生じ、チューブの抜け止め効果をより強化することが可能になる。
【0018】
請求項4の発明によれば、インナーリングの基端側に形成されるシール要素部と、管継手本体に設けられるシール構成部との圧接による奥シール部を形成可能であるから、奥シール部によってシール性能は十分に備わったものとなる。その結果、押圧部でチューブを押付ける部分の構成においては、チューブの抜け止めにより焦点を当てた設計が可能になるとか、よりシール性が増すといった効果も得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の管接続装置における実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、
図1,5に示す組付状態の管接続装置Aにおいては、管継手本体1の軸心Yと、ユニオンナット2の軸心Qと、インナーリング3の軸心Pと、チューブ4の軸心Xとの四者は、一直線に並ぶ互いに同一のもの(軸心Y=軸心Q=軸心P=軸心X)として描いてある。
また、本明細書では、管継手本体1、ユニオンナット2、インナーリング3、及びチューブ4の各部品において「先端側」や「先端」とは、
図1,5などにおいて、チューブ4が管継手本体1から軸心Y方向で離れる側(又は方向)を指し、「基端側」や「基端」とは、チューブ4が管継手本体1に軸心Y方向で近付く側(又は方向)を指すと定義する。
【0021】
〔実施形態1〕
管接続装置Aは、
図1に示すように、チューブどうしを接続する管継手よりなり、管継手本体1と、ユニオンナット2と、インナーリング3とを有し、インナーリング本体3Aをチューブ4の端部4C内に圧入させた状態でチューブ4を連通接続するものである。管継手本体1、ユニオンナット2、インナーリング3、チューブ4はいずれも耐熱、耐薬品性に優れるフッ素樹脂(例:PTFE,PFA,ETFE,CTFE,ECTFEなど)等の樹脂製である。なお、管継手本体1、インナーリング3、チューブ4が前記のフッ素樹脂で構成されるとき、ユニオンナット2においては、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの樹脂で形成してもよい。また、管継手本体1、ユニオンナット2、インナーリング3、チューブ4のすべてをポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの樹脂で形成することもできる。
【0022】
管継手本体1は、
図1,
図4に示すように、筒状の胴部1Cと、その軸心Y方向の先端側に設けた筒状螺合部1Aと、筒状螺合部1Aの基端側の径内側に形成された小径筒部1aと、内部流路6wを構成する内周面6とを有する筒状構造のものである。図示は省略するが、例えば、胴部1Cの基端側にも筒状螺合部1A及び小径筒部1aを有して、軸心方向において対称となる形状の部品に形成されている。
筒状螺合部1Aには、その先端部外周から基端側に向けて雄ねじ7が形成され、その先端部内周に先拡がりの内周面8が形成され、この内周面8の基端側に径一定で直線状の内周面9が形成されている。
小径筒部1aの径外側には、径一定で直線状の外周面10が形成されている。小径筒部1aの径内側における先端部には、小径筒部1aの先端に近付くに連れて径が次第に大きくなる先拡がり状の傾斜内周面5が形成されている。
また、この小径筒部1aの外周面10と筒状螺合部1Aの内周面9との間には筒状の環状溝mが形成されている。
【0023】
ユニオンナット2は、
図1,
図3に示すように、樹脂製ナットよりなり、その内周部に、筒状螺合部1Aの雄ねじ7に螺合する雌ねじ13と、この雌ねじ13よりも先端側に位置して径内側に張り出す環状の鍔部12とを有する。
鍔部12の内径部分は、チューブ4が挿通できるようにチューブ4の外径より若干大きい径の内周面12aに設定されている。鍔部12の基端側は、インナーリング本体3Aを圧入したチューブ4の端部4Cの先端側外周面を、ユニオンナット2の軸心Q方向に押す押圧部12bとして構成されている。なお、鍔部12の外周には、軸心Q方向視でほぼ六角形を呈してスパナ(レンチ)掛けできるようにするために、カット状の平面部2aが6箇所形成されている。
【0024】
押圧部12bは、軸心Q方向で雌ねじ13側に(基端側に)近付くほど径が大となるように基拡がりする傾斜内周面に形成されている。詳しく言うと、インナーリング3の外周拡径面3aとの間でチューブ4を挟み込んで押付けるユニオンナット2の押圧部12bは、軸心Qに関して外周拡径面3aと互いに同じ方向に傾く傾斜内周面に形成されている。
しかして、雌ねじ13を筒状螺合部1Aの雄ねじ7に螺合させてユニオンナット2が螺進されることにより、押圧部12bがチューブ4の端部4Cの先端側外周面を軸心Q方向に押し付けていくことになる。なお、鍔部12の内周面12aは内径を一定にしているが、雌ねじ13から遠ざかるほど内径が漸次拡大するテーパ内周面に形成してもよい。
【0025】
インナーリング3は、
図1,
図2に示すように、チューブ4の開放口からチューブ4の端部4C内に圧入されるインナーリング本体3Aと、このインナーリング本体3Aの基端側にチューブ4の開放口から突出する嵌合筒部3Bとを有して軸心Pを持つ筒状体に構成されている。インナーリング本体3Aと嵌合筒部3Bの各内周部3wは径一定に形成され、流体流通路を構成している。
インナーリング本体3Aの外周部3Gにおける先端側には拡径部分3fが形成され、この拡径部分3fの先端側に先窄まりの外周拡径面3aが形成されている。拡径部分3fの基端側には、基端側に進むほど径が小さくなる基窄まりの外周部3cが形成されており、この基窄まりの外周部3cと先窄まりの外周拡径面3aとの間には、径の最も大きい部分である最大径部分3bが形成されている。そして、基窄まりの外周部3cの基端側には、外径が一定の胴外周部(胴外周面)3dが形成されている。
【0026】
本願の図面においては、インナーリング3の最大径部分3bが、軸心P方向に一定の長さを備えた構造として記載されているが、最大径部分3bが直ちに先窄まりの外周拡径面3a及び基窄まりの外周部3cに変化する境界に対応する構造であっても技術的に差し支えは無い。
【0027】
拡径部分3fの先窄まりの外周拡径面3aは、全体が径方向で外側に凸となる凸曲面に形成され、この先窄まりの外周拡径面3aの基端側に最大径部分3bが形成され、先窄まりの外周拡径面3aと最大径部分3bとがチューブ4の端部4C内に圧入されることで、チューブ4の端部4Cが拡径変形されるものである。
また、先窄まりの外周拡径面3aの先端部には、インナーリング本体3Aの軸心Pの基端側に進むほど径が小さくなる基窄まりカット状の変形防止部16が形成されている。この変形防止部16によって、先窄まりの外周拡径面3aがチューブ4の端部4C内に圧入された後、拡径部分3fの先端部が径内方向(流体流通路側)に縮径変形して突出することを、実質的に抑制又は防止することが可能とされている。また、変形防止部16により、流体の流れの勢いや速さで外周拡径面3aの先端側がさらに径内方向(流体流通路側)に変形して突出するのも防止又は抑制可能である。
【0028】
嵌合筒部3Bには、管継手本体1の環状溝mに圧入される突出円筒部14と、この突出円筒部14の径内側に位置して傾斜外周面11を備える環状小突起部15とが形成されている。環状小突起部15の基端部には、インナーリング本体3Aの軸心Pの先端側に進むほど径が小さくなる先窄まりカット状の変形防止部17が形成されている。この変形防止部17によって、環状小突起部15の基端側部分が径内方向(流体流通路側)に変形して突出することが防止可能とされている。
環状小突起部15における基窄まり状の傾斜外周面11と突出円筒部14の内周面14aとの間は、基拡がりする環状の窪みに形成されていて、この窪みに管継手本体1の小径筒部1aの先端部が嵌入され、この嵌入によって環状小突起部15の傾斜外周面11と小径筒部1aの傾斜内周面5とが当接する構成とされている。
【0029】
チューブ4は、
図1に示すように、その基端部である端部4Cがインナーリング本体3Aに圧入外嵌されている。それにより、先窄まりの外周拡径面3aに圧接される先窄まりの圧接部4aと、最大径部分3bに圧接される最大拡径圧接部4bと、基窄まりの外周部3cに圧接される先拡がりの圧接部4cと、胴外周部3dに圧接される胴圧接部4dとが端部4Cに形成されている。
チューブ4がインナーリング3に圧入されている状態においては、チューブ4の内周面4Aで構成される内部流路4wの径と、インナーリング3の流体流通路を構成する内周部3wの径と、管継手本体1の内部流路6wを構成する内周面6の径とは、それぞれ互いに同径であって面一状に設定されているが、その限りでなくても良い。
【0030】
チューブ4は、その端部4C内にインナーリング本体3Aを圧入した後、管継手本体1内に挿入して装備される。そして、
図1に示すように、ユニオンナット2の雌ねじ13を管継手本体1の筒状螺合部1Aの雄ねじ7に螺合させて締付方向に回すことにより、ユニオンナット2が軸心Y(
図3の軸心Q)に沿って基端側方向に螺進し、ユニオンナット2の押圧部12bがチューブ4の端部4Cの先端側外周面(先窄まりの圧接部4aの外周面)を軸心Y(
図3の軸心Q)方向に押し付ける。
この押し付けによって、インナーリング3の突出円筒部14が管継手本体1の環状溝mに圧入され、また、インナーリング3の傾斜外周面11が管継手本体1の傾斜内周面5に当接して圧接される。
【0031】
前述のように、インナーリング3付きのチューブ4が管接続装置Aに挿入されて接続されると、次の第1シール部S1〜第3シール部S3が構成される。
すなわち、第1シール部S1は、チューブ4の先窄まりの圧接部4aとインナーリング本体3Aの先窄まりの外周拡径面3aとの圧接、チューブ4の最大拡径圧接部4bとインナーリング本体3Aの最大径部分3bとの圧接、チューブ4の先拡がりの圧接部4cとインナーリング本体3Aの基窄まりの外周部3cとの圧接、さらにチューブ4の胴圧接部4dとインナーリング本体3Aの胴外周部3dとの圧接によって構成されるシール部である。
【0032】
第2シール部S2は、インナーリング3の嵌合筒部3Bの外周面と管継手本体1の筒状螺合部1Aにおける基端側の内周面9との圧接、さらに、嵌合筒部3Bの内周面、具体的には突出円筒部14(シール要素部yの一例)の内周面14aと管継手本体1の小径筒部1a(シール構成部kの一例)の外周面10との圧接によって構成されるシール部である。
第3シール部S3は、インナーリング3の環状小突起部15(シール要素部yの一例)における傾斜外周面11と、管継手本体1の小径筒部1aにおける傾斜内周面5とが軸心Y方向で互いに押されての圧接によって構成されるシール部である。
【0033】
これら第1シール部S1〜第3シール部S3が構成されることにより、チューブ4内・インナーリング3内・管継手本体1内を流れる流体は、チューブ4とインナーリング3との接合面又はインナーリング3と管継手本体1との接合面に浸入することに起因して、管継手本体1の筒状螺合部1Aとチューブ4の端部4Cとの間から漏れることがなく、万全にシールされる。
第1シール部S1と第2シール部S2と、又は、第1シール部S1と第3シール部S3とが機能しておれば、管継手本体1の筒状螺合部1Aとチューブ4の端部4Cとの間から流体が漏れることがなく、良好なシール状態が確保される。そして、第1〜第3シール部S1〜S3が全て機能しておれば、より万全なシール状態を確保することができる。
【0034】
ところで、第1シール部S1のうち、チューブ4の先窄まりの圧接部4aとインナーリング本体3Aの先窄まりの外周拡径面3aとの圧接箇所、即ち、先端圧接箇所については、次のように構成されている。
すなわち、
図1に示すように、インナーリング本体3Aの先窄まりの外周拡径面3aは、その全体を、インナーリング本体3Aの拡径部分3fにおける最大径部分3bの径方向寸法に(最大径部分3bのみの状態で)チューブ4の端部4Cを拡径変形させた時に、そこに現れる(表れる)チューブ4の端部4Cの内周部の自然な先窄まりの内周拡径面4u〔この符号4uは
図6(a)に示す。〕よりも大径で、かつ、凸曲面に形成して、この先窄まりの外周拡径面3aをチューブ4の端部4Cの内周部に圧接するように構成している。
【0035】
この自然な先窄まりの内周拡径面4uと、この先窄まりの内周拡径面4uよりも大径で、かつ、凸曲面に形成した先窄まりの外周拡径面3aについて、さらに
図6(a),(b)を参照して説明する。
図6(a)に示している裁頭円錐部30a付きの円柱30は、その外径Dを、インナーリング本体3Aの最大径部分3bと同径に形成しているものである。この円柱30を、拡径変形されていない内径dで軸心Xを持つチューブ4の端部4Cに裁頭円錐部30aから圧入して、チューブ4の端部4Cを拡径変形する。これによって、チューブ4の拡径部4Kと、拡径変形されていないチューブ4の径部分4Mとの間に自然な先窄まりの内周拡径面4uが形成される。
一般的に、この自然な先窄まりの内周拡径面4uの形状や寸法は、チューブ4の材料、厚み(肉厚)t4、拡径量〔(D−d)/2〕などの相違によって異なってくるものであり、これらチューブ4の材料、厚みt4、拡径量のいずれかが相違すれば、その都度その特性(形状や寸法)が変化する。
【0036】
一方、この自然な先窄まりの内周拡径面4uに対して、インナーリング本体3Aの先窄まりの外周拡径面3aは、
図6(b)に示すように、拡径部分3fを軸心P(軸心X)に沿う面で切った断面で見た場合の外郭線が、径外側に向けて凸となる曲面、つまり凸曲面に形成されている。この凸曲面の表面は、円球の表面である球面や、楕円球の表面である楕円球面などになる。また、凸曲面の外径寸法、つまり先窄まりの外周拡径面3aの径寸法は、前記自然な先窄まりの内周拡径面4uに比べて軸心P方向の全てに亘って大径に形成されている。なお、
図6(b)におけるt3は、最大径部分3bにおけるインナーリング3の厚みを示す。
【0037】
前記先端圧接箇所の存在により、インナーリング3の先窄まりの外周拡径面3aの広い範囲にわたりチューブ4の端部4Cの内周部と接触することになり、先窄まりの外周拡径面3aとチューブ4の内周部との間に先窄まりの外周拡径面3aの全面に及ぶほどの幅広い圧接部を形成することができる。
これにより、インナーリング3がチューブ4に対して多少傾いて圧入されることがあっても、チューブ4の端部4Cとインナーリング3の先窄まりの外周拡径面3aとの間に形成された圧接部が途切れることがなく周方向のほぼ全体が確実に圧接され、この間に先窄まりの外周拡径面3aの先端側から流体が浸み込むことを有効に防止可能になる、という効果も得られる。
【0038】
実施形態1においては、インナーリング本体3Aの先窄まりの外周拡径面3aを球面状の凸曲面として比較的大きく凸となるようにしてあり、チューブ4の自然な拡径変形部4Hの形状は樹脂が備える弾性により、一般に
図6(b)に示されるような形状(チューブ内側から見て、凸曲面状に拡径する形状)になるため、先窄まりの外周拡径面3aと先窄まりの圧接部4aとの圧接力が、インナーリング3の最大径部分3bに接するチューブ4の端部4Cの部位からチューブ内周に沿って前記凸曲面の軸心P方向に進み、拡径量〔(D−d)/2〕の中間値に近付くほど大きくなる設定となる。インナーリング本体3Aの先窄まりの外周拡径面3aを構成する前記凸曲面は球面に限定されるものではなく、懸垂曲面などのなめらかな凸曲面であればよい。
従って、自然な拡径変形部4Hが凹曲面状に拡径したり直線状に拡径する場合であっても、先窄まりの外周拡径面3aの軸心P方向の寸法を増大させることなく、先窄まりの外周拡径面3aと先窄まりの圧接部4aとを圧接状態にすることができる。
【0039】
次に、第1シール部S1におけるユニオンナット2による押圧構造について説明する。前述したように、先窄まりの外周拡径面3aとの間でチューブ4を挟み込んで押付けるユニオンナット2の押圧部12bは、筒状螺合部1Aの軸心Yに関して先窄まりの外周拡径面3aと互いに同じ方向に傾く傾斜内周面に形成されている。
さらに詳述すると、傾斜内周面12bの軸心Y(
図3の軸心Q)に対する角度である押圧角θは、先窄まりの外周拡径面3aの軸心Y(
図2の軸心P)に対する角度である受圧角αよりも大(θ>α)に設定されている。そして、傾斜内周面12bの最小径rは、先窄まりの外周拡径面3aとチューブ4との圧入嵌合部分Mの最小径nと同等又はそれよりも大(r≧n)に設定されている。より良好なシール性を得るには、傾斜内周面12bの最小径rと、圧入嵌合部分Mの最小径nとが互いに同径であるのが望ましい。
【0040】
図7において、チューブ4の端部4Cと先窄まりの外周拡径面3aとの圧接箇所、即ちそれら両者4C,3aが互いに密着する部分を圧入嵌合部分Mと定義し、その圧入嵌合部分Mの最大径
Daとなる箇所をポイントa、最小径となる箇所をポイントb、そして先窄まりの外周拡径面3aの最小径箇所(変形防止部16との境界点)をポイントcとそれぞれ称呼する。受圧角αは、ポイントaとポイントcとを結ぶ直線L3と軸心Y(
図2の軸心P)とが為す角度、即ち、外周拡径面3aの平均角度である。図示しないが、ポイントaとポイントbと結ぶ直線と軸心Y(
図2の軸心P)とが為す角度よりも押圧角θは大である。
また、鍔部12の内周面12aの軸心Y(
図3の軸心Q)に関する径、即ち傾斜内周面12bの最小径rは、ポイントbの軸心Y(
図3の軸心Q)に関する径、即ち圧入嵌合部分Mの最小径nと同等又はそれよりも大(r≧n)に設定され
、かつ、傾斜内周面12bの最小径rは、ポイントaの軸心Y(図3の軸心Q)に関する径、即ち圧入嵌合部分Mの際大径Daと同等又はそれより小(r≦Da)に設定されている。
【0041】
先端圧接箇所においては、ユニオンナット2の回し込みによる締付(螺進)により、その傾斜内周面12bは、先窄まりの外周拡径面3aに圧接外嵌されている部分である先窄まりの圧接部4aを軸心Y方向に押付けるようになる。これは、広い面でもってチューブ4を押す構成であるから、尖った角部(特許文献1の
図1,2の「押圧エッジ3C」を参照)で押付けていた従来構造に比べて、チューブ4を押す部分の圧力(面圧)を明確に減少させることができ、従って、クリープ現象を小さくすることができる。
要は、シール性能やチューブ抜けに対する安全性を損なうことがなく、しかも強い締付けを必要としないため、作業性が大幅に向上し、また変形を最小に(又は極力)抑えることができることにより製品寿命を延ばすことが可能になる。
【0042】
実施形態1の管接続装置Aによれば、前述した先端圧接箇所の構成により、インナーリング3の先窄まりの外周拡径面3aとチューブ4の端部4Cとがユニオンナット2の締付以前において既に密着しているので、ユニオンナット2による押圧力を従来より小さくしても、第1シール部S1において、十分なシール性能及びチューブの抜止め性能とが得られるので、押付けによるチューブ4の端部4Cの変形を小さく(最小限に)することができる。
【0043】
実施形態1の管接続装置Aによれば、押圧角θは受圧角αよりも大に設定されているので、先窄まりの圧接部4aにおける傾斜内周面12bで押される部分には、軸心Y(軸心X)方向で管継手本体1側と反対側に寄るほど圧縮量が増すことで楔作用が生じ、チューブ4の抜け止め効果をより強化することが可能になる。
即ち、チューブ4に、これを管継手本体1から引き抜く方向の引張り力が作用すると、一緒に引張られるインナーリング3と傾斜内周面12bとの間でチューブ4がより強く挟み込まれるようになる。従って、チューブ4には、引張り方向においても楔作用が生じるようになる。
そして、傾斜内周面12bの最小径rは、先窄まりの外周拡径面3aとチューブ4とが密着している部分である圧入嵌合部分Mの最小径nと同等又はそれよりも大に設定されているので、先窄まりの外周拡径面3aとチューブ4の端部4Cとが密着していない部分を押す無駄、即ち、余計な押圧力を加えることがなく、効率良くユニオンナット2による締付けが行えるようになる。換言すれば、従来よりもユニオンナット2を軽く締付けることが可能になる。
【0044】
この場合、θ>α、かつ、r≧nとなる構成を採れば、ユニオンナット2の螺進によって傾斜内周面12bがチューブ4の端部4Cを押す部分において最も強く押すのは、圧入嵌合部分Mにおける傾斜内周面12bの最小径箇所に近い箇所、或いはその最小径箇所になるので、楔作用によるチューブ4の抜け止め効果の強化と、ユニオンナット2の締付力が軽くて済む効果とが相乗されて強化される利点がある。
加えて、インナーリング3の基端側に形成されるシール要素部yと、管継手本体1に設けられるシール構成部kとの圧接による奥シール部、即ち、第2シール部S2や第3シール部S3を形成可能に構成されているので、それら第2シール部S2や第3シール部S3と第1シール部S1との協働により、確実にシールすることができる。
なお、ユニオンナット2の傾斜内周面12bは、前述の通りテーパ面として構成するほか、インナーリング3の先窄まりの外周拡径面3aを覆うチューブ4の端部4Cにおける先窄まりの圧接部4aの外周面に沿って面接触する円弧面として構成してもよい。
【0045】
〔実施形態2〕
実施形態2の管接続装置Aは、
図5に示すように、嵌合筒部3B部分の構成のみが実施形態1の管接続装置Aと相違しているのみである。
すなわち、インナーリング3の嵌合筒部3Bにおいては、外周面3eと、内周部3wと、基端側に寄るほど径が大きくなる基拡がりの内周面20とが形成されている。他方、管継手本体1においては、筒状螺合部1Aの基端側の径内側に、先端側ほど径小になるように傾斜した外周面18を有する先窄まりの小径筒部1aが形成されている。この先窄まりの小径筒部1aの外周面18と筒状螺合部1Aの内周面9との間には、嵌合筒部3Bの基端部が嵌入する先拡がりの環状溝19が形成されている。
そして、前記小径筒部1aの先端部には、小径筒部1aの先端側が径内方向(内部流路6w側)に変形して突出し、これによって流体が侵入して滞留するのを防止するため、先拡がりカット状の変形防止部21が形成されている。
【0046】
この実施形態2による管接続装置Aの場合は、ユニオンナット2を管継手本体1の筒状螺合部1Aに螺進させることにより、ユニオンナット2の押圧部12bがチューブ4の端部4Cの先端側外周面(先窄まりの圧接部4aの外周面)を軸心Y方向に押し付ける。
しかして、インナーリング3の嵌合筒部3Bの基端部が管継手本体1の環状溝19に押し込まれて、管継手本体1の先窄まり形状の外周面18(シール構成部kの一例)とインナーリング3の基拡がりの内周面20(シール要素部yの一例)とが軸心Y方向で衝突することで圧接され、第2シール部(奥シール部の一例)S2が構成される。
この第2シール部S2を完全に機能させるために、つまり嵌合筒部3Bの基端部が前記環状溝19の底面(外周面18)に当接して、基拡がりの内周面20が筒状螺合部1Aの外周面18に非圧接の状態にならないように、嵌合筒部3Bの基端部の端面はカット状の当接回避部25に形成されるのが好ましい。
【0047】
ところで、チューブ4に管継手本体1から引き抜かれる方向の引張り力が作用する場合、実施形態2における第2シール部S2においては、基拡がりの内周面20外周面18とが遠ざかることになってシール機能が低下又は解除されるおそれがある。これに対して、突出円筒部14と環状溝mとの圧入嵌合により成る実施形態1の第2シール部S2では、チューブ4の引き抜かれ移動に連れて突出円筒部14が多少引き抜かれ移動したとしても、環状溝mと突出円筒部14との圧入嵌合状態が維持され、従ってシール機能が確保される点で有利である。
【0048】
実施形態2の管接続装置Aにおけるインナーリング3を用いたチューブ4と管継手本体1との接続は、第2シール部S2(奥シール部)以外の構成について、
図3,4に示す実施形態1の管接続装置Aの構成のものと同様であるため、
図5においても
図1に示す符号を付けることによって、その説明を省略する。
【0049】
〔別実施例〕
管接続装置Aとしてのシール対象である流体移送用のチューブ4とは、他の管継手本体やポンプ、バルブ等の流体機器から突設されるチューブ状部分(筒状螺合部1A)も含むものとする。本発明の管接続装置Aにおいては、管継手本体1に代えて流体機器1を構成要素としたものでも良い。即ち、筒状螺合部1Aがケースに一体的に形成されたポンプやバルブであり、それらポンプやバルブなどを総称して流体機器1と定義する。
【0050】
図1,3,5に示す押圧部12bは斜度一定の(直線状の)傾斜面であるが、先窄まりの外周拡径面3aと同様に湾曲した凹曲面や、その反対方向に僅かに湾曲する凸曲面でも良い。曲面の場合には、その軸心Qに関する平均角度が押圧角θである。