(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
集電接点用接触部(52)および固定接点用接触部(53)が、円柱の側面の形状をなしており、母線(L)が回転の接線方向に対して傾斜していて、集電接点用接触部(52)の母線(L)と固定接点用接触部(53)の母線(L)が平行であることを特徴とする請求項1記載のタップ選択器。
可動接点(5)が、回転の接線方向に分割した複数の分割可動接点(5a,5b)からなり、各分割可動接点(5a,5b)は、回転の半径方向中央部において、接線方向向きの可動接点回転軸(54)で連結してあり、相互に回動自在となっていることを特徴とする請求項1または2記載のタップ選択器。
【背景技術】
【0002】
従来、タップ選択器として、たとえば特許文献1に示すものが公知となっている。このタップ選択器は、文献中の
図6に示すように、中心となる絶縁回転軸を基準にしてその外周の離れた位置を集電接点で取り囲み、集電接点の外周の離れた位置に、円周方向に間隔をおいて複数の固定接点を配置してある。また、集電接点の剛性を担保する補強部を設けてある。補強部は、集電接点から絶縁回転軸を中心とする放射状方向に延長し、固定接点とは非接触の絶縁状態を保ちながら、隣り合う固定接点の間を通過している。補強部および固定接点は、ブロック状のスペーサを介して絶縁取付板にボルト止めしてある。
【0003】
そして、絶縁回転軸にはローラコンタクト装置を外向きに突出して固定してある。ローラコンタクト装置は文献中の
図1に示すように上下対称構造であって、集電接点の内周側を回転領域とするボディを絶縁回転軸に固定してある。ボディの上下にはローラ軸の基部を収容し、ローラ軸の先部を固定接点の上まで放射状に延長し、ローラ軸の先部にベアリングを介して筒状のローラを回転可能に支持してある。また、各ローラ軸の中間部には加圧具を固定してある。そして、板バネの基部をボディにボルト止めし、板バネの先部を加圧具に係止してある。これにより、板バネの押圧力を、ローラ軸と一体化された加圧具からローラに伝え、各接点に対する接触圧をローラに与えている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のタップ選択器の具体的な構成について、各図面に基づいて説明する。なお、以下における内周、外周、半径方向、接線方向、円周方向とは、特に断らない限り、絶縁回転軸1の回転中心を基準としたものである。このタップ選択器は、
図2に示すように、奇数側選択器T1と偶数側選択器T2とが隣り合わせに設置され、U相、V相、W相の三相の導電部を重ねた構造であり、
図1はそのうちの一相の導電部を抜き出して示したものである。そして、奇数側選択器T1および偶数側選択器T2のそれぞれについて、次のように同様の構成としてある。すなわち、中心には上下に延びる回動自在な絶縁回転軸1が位置しており、その外周を集電接点2で取り囲み、集電接点2の外周には円周方向に間隔をおいて複数のタップ切換支援接点24を放射状に突出して設けてある。また、集電接点2およびタップ切換支援接点24から外周側に離れた位置に、円周方向に間隔をおいて複数の固定接点3を配置してある。
【0015】
集電接点2とタップ切換支援接点24は、
図1〜
図3に示すように、P字状の平板からなる一体物の部品である。これは、帯状の平板からP字状に切り出したものである。そして、P字状のうちリング状の部分、すなわち絶縁回転軸1の外周を囲む部分のうち、内周部を集電接点2とし、その外周部に円周方向に間隔をおいて配置する複数の矩形状部分をタップ切換支援接点24としてある。また、集電接点2およびタップ切換支援接点24を構成するP字状の平板のうち、リング状部分以外の部分(リング状部分から直線的に延びる部分)を、取付部8としてある。
【0016】
そして、リング状部分の中心孔21には、軸受保持具25および軸受22を挿入してある。
図3(a)に示すように、軸受保持具25は円管からなるものであり、外径は中心孔21の内径と等しく、内径は軸受22の外径と等しい。その下端部には外周側に突出する外周側鍔部25aおよび内周側に突出する内周側鍔部25bを形成してある。軸受保持具25の素材としては、銅や真鍮など、柔らかくて圧縮成型しやすいものが望ましい。また、軸受22は、ボールベアリングからなるものである。組み立てに際しては、まず軸受保持具25を中心孔21の下側から挿入すると、外周側鍔部25aが中心孔21の周縁部に係合する。そして軸受22を上側から軸受保持具25に挿入し、軸受22の下端を軸受保持具25の内周側鍔部25bに係合させる。この状態において、
図3(b)に示すように、軸受保持具25の上端は軸受22よりも上側に突出しており、この突出部分をプレス加工にて圧縮成型することで、
図3(c)に示すように、集電接点2と、軸受保持具25および軸受22が一体となる。
【0017】
さらに、この集電接点2には、内管23を介して、一対の回転台座4を取り付けてある。
図4(a)に示すように、内管23は円管からなるものであり、外径は軸受22の内径と等しい。内管23の素材としては、銅や真鍮など、柔らかくて圧縮成型しやすいものが望ましい。また、回転台座4は、略矩形平板状のものであって、上下方向に貫通する挿入孔41と、一辺から水平方向に延びる一対の腕部42とを有しており、挿入孔41の内径は内管23の外径と等しい。組み立てに際しては、まず軸受22に内管23を隙間なく嵌合し、内管23の上下端に、回転台座4を取り付ける(回転台座4の挿入孔41に内管23の上下端を挿入する)。この際、一対の回転台座4は、上下に対称な向きで、集電接点2を挟んで相互に対向し、腕部42が外周側向きとなる。この状態において、
図4(b)に示すように、内管23の上下端は回転台座4よりも上下側に突出しており、この突出部分をプレス加工にて圧縮成型することで、
図4(c)に示すように、軸受22、内管23および回転台座4が一体となり、回転台座4は集電接点2に対して回動自在となる。その後、内管23の内周側を旋削加工して、内径を絶縁回転軸1の外径に等しくする。
【0018】
そして、
図5に示すように、上下の回転台座4には、それぞれ付勢部材51を介して可動接点5を取り付けてある。上下の可動接点5は対称なものであり、以下は上側の可動接点5に基づいて説明する。可動接点5は、半径方向に長いブロック状の胴部55を有しており、胴部55の半径方向中央の上面には、接線方向の二箇所に穴を設け、取付ピン56を挿入してある。また、付勢部材51は、板バネからなるものであり、内周側端を、両舌付き座金57を介して回転台座4の上面にボルト止めしてあり、外周側端には、接線方向の二箇所に孔を設けてあって、この孔に可動接点5の取付ピン56を下側から挿入してある。このように構成することで、可動接点5は付勢部材51によって下向きに付勢される。下側の可動接点5は付勢部材51によって上向きに付勢されるので、上下の一対の可動接点5は、相互に近づく向きに付勢されることになる。なお、可動接点5の内周側端は、回転台座4の一対の腕部42の間に納まり、回転台座4の外周側に可動接点5が位置する。そして、可動接点5の胴部55の下面の内周側には、集電接点2と接触する集電接点用接触部52を設けてあり、胴部55の下面の外周側には、固定接点3と接触する固定接点用接触部53を設けてある。下側の可動接点5についても同様であり、上下の可動接点5が集電接点2および固定接点3を挟むものとなっている。
【0019】
このように、集電接点2と回転台座4が一体となっており、これに可動接点5と付勢部材51が組み込まれていて一つのユニットを構成している。そして、
図1に示すように、このユニットの内管23に絶縁回転軸1を挿入する。絶縁回転軸1は、矩形平板状で水平向きの絶縁取付板
(絶縁支持体)6を貫通しており、絶縁取付板6に、固定接点3を取り付けてある。各固定接点3は、集電接点2と同じ肉厚の平板であり、隣り合うタップ切換支援接点24の間の空間部から外周側に離れた位置に配置してある。タップ切換支援接点24が円周方向に間隔をおいて配置されたものなので、固定接点3も円周方向に間隔をおいて配置される。この際、固定接点3とタップ切換支援接点24の接線方向の間隔は、可動接点5の接線方向幅よりも狭くなっている。この固定接点3は、外周部分を、スペーサ7を介して絶縁取付板6にボルト止めしてあり、内周部分が内周側に突出していて、その内周部分が上下の可動接点5に挟まれる。そして、集電接点2を固定接点3と同様に絶縁取付板6の上に配置し、集電接点2と固定接点3とが面一となるように、回転台座4を側面から絶縁回転軸1にビス止めして固定してある。なお、集電接点2と一体に形成された取付部8は、固定接点3と同様に、スペーサ7を介して絶縁取付板6にボルト止めしてある。また、絶縁取付板6は、負荷時タップ切換器全体のフレームシャフト9に連結してある。
【0020】
次に、可動接点5の形状について、さらに詳述する。
図6(a)に示すように、可動接点5は、半径方向に長いブロック状の胴部55を有し、胴部55の内周側には集電接点用接触部52を設けてあり、外周側には固定接点用接触部53を設けてある。この集電接点用接触部52および固定接点用接触部53は、胴部55と一体に形成されるものであって、
図6(b)に示すように、円柱Cの側面の形状をなすものである。より詳しくは、円柱Cの側面から切り出した矩形片P形状のものであって、矩形片Pの辺が円柱Cの母線L(円柱の側面上に位置し、かつ円柱の底面に直交する線)に対して傾斜している。胴部55の内周側端および外周側端に、このような矩形片P形状を形成し、それぞれ集電接点用接触部52および固定接点用接触部53としてある。この際、矩形片Pの長辺が接線方向を向くようになっており、両接触部52,53の母線Lは、回転の接線方向に対して傾斜する。そして、両接触部52,53は同じ形状であって、両接触部52,53の母線Lは平行である。また、両接触部52,53の両接線方向端部は、面取りされて傾斜している。なお、
図6(b)における円柱Cから矩形片Pを切り出した状態を示したものは、両接触部52,53の形状の説明のためのものであり、実際に円柱Cから切り出して製作するわけではなく、胴部55に加工を施して、当該矩形片Pと同じ形状のものを胴部55と一体に形成する。
【0021】
そして、
図6(a)に示すように、可動接点5の胴部55の、集電接点用接触部52と固定接点用接触部53の間には、中間接触部58を設けてある。中間接触部58も、集電接点用接触部52および固定接点用接触部53と同様に、胴部55と一体に形成されたものであり、略平板状で、胴部55からの突出高さは集電接点用接触部52および固定接点用接触部53と同じである。そして、中間接触部58の両接線方向端部も、面取りされて傾斜している。
【0022】
また、可動接点5は、
図6(a)に示すように一部材からなるものであってもよいが、接線方向に分割されていてもよい。すなわち、
図7(a)に示すように、可動接点5の胴部55を、接線方向に二等分に分割し、分割した各片を分割可動接点5a,5bとする。この際、集電接点用接触部52、固定接点用接触部53および中間接触部58も併せて二等分される。また、取付ピン56は、各分割可動接点5a,5bに一本ずつ取り付けられる。分割可動接点5a,5bの対向する面には、半径方向中央に穴を設けてあり、この穴に接線方向向きの可動接点回転軸54を挿入してあって、分割可動接点5a,5bが相互に回動自在となっている。そして、各分割可動接点5a,5bの両接線方向端部が、面取りされて傾斜している。
図7(b)は、分割可動接点5a,5bを組み立てて構成した可動接点5を示し、その全体の外形は、一部材からなる場合の可動接点5と略同じである。よって、このように可動接点5を分割した場合も、一部材からなる場合と同様にして、回転台座4に取り付けられる。なお、
図1、
図2および
図5も、分割された可動接点5を備えた場合を示している。
【0023】
このように構成したタップ選択器は、次のように動作する。まず、定常状態においては、
図8(a)に示すように、可動接点5が、集電接点2と、ある一つの固定接点3とに接触した状態となっている。この際、
図9(a)に示すように、上下の可動接点5が、内周側で集電接点2を挟み込み、外周側で固定接点3を挟み込む状態となっている。集電接点2に接する集電接点用接触部52と、固定接点3に接する固定接点用接触部53は同じ形状であり、また集電接点2と固定接点3は同じ肉厚であるから、上下の可動接点5は互いに平行な状態となる。そして、定常状態から、タップの切り換えのために絶縁回転軸1を回転させると、回転台座4および可動接点5が一緒に回転する。この際、集電接点2はリング状であるから、集電接点用接触部52は、集電接点2と接触した状態のままである。一方、固定接点3は、円周方向に間隔をおいて配置されているものであるから、可動接点5が回転していけば、やがて固定接点用接触部53は固定接点3から離れる。ここで、
図8に示すように、円周方向において、固定接点3が存在しない位置には、代わりにタップ切換支援接点24が存在する。そして、固定接点3とタップ切換支援接点24の接線方向の間隔は、可動接点5の接線方向幅よりも狭くなっているので、
図8(b)および
図9(b)に示すように、固定接点用接触部53が固定接点3から離れる前に、中間接触部58がタップ切換支援接点24に接触する。これにより、上下の可動接点5が、内周側で集電接点2を挟み込み、中央でタップ切換支援接点24を挟み込み、外周側で固定接点3を挟み込む状態となっている。集電接点2に接する集電接点用接触部52と、タップ切換支援接点24に接する中間接触部58と、固定接点3に接する固定接点用接触部53は同じ突出高さであり、また集電接点2、タップ切換支援接点24および固定接点3は同じ肉厚であるから、上下の可動接点5は、定常状態と変わらず互いに平行な状態が維持され、上下位置も不変である。そしてさらに絶縁回転軸1を回転させると、
図8(c)に示すように、可動接点5が隣接する固定接点3同士の間に位置して、固定接点用接触部53が固定接点3から離れる。これにより、
図9(c)に示すように、上下の可動接点5が、内周側で集電接点2を挟み込み、中央でタップ切換支援接点24を挟み込む状態となっている。集電接点2に接する集電接点用接触部52と、タップ切換支援接点24に接する中間接触部58は同じ突出高さであり、また集電接点2とタップ切換支援接点24は同じ肉厚であるから、上下の可動接点5は、定常状態と変わらず互いに平行な状態が維持され、上下位置も不変である。さらに絶縁回転軸1を回転させると、可動接点5が別の固定接点3に接触するが、その際には、
図9(b)の状態を経て、
図9(a)の状態となる。このように、タップの切り換えに際して、上下の可動接点5は常に互いに平行な状態が維持され、その上下位置も不変であって、さらに、固定接点用接触部53や中間接触部58の接線方向端部は面取りされて傾斜しているので、固定接点3やタップ切換支援接点24にスムーズに接触し、衝撃的な負荷が生じることはなく、絶縁回転軸1の回転の駆動力が小さくて済み、高速化にも対応できる。
【0024】
そして、絶縁回転軸1に対して、内管23および軸受22を介して集電接点2を取り付ける構造となっているので、絶縁回転軸1に対する集電接点2の取付位置および取付角度について、高い精度を出すことができ、また、予め絶縁取付板6に固定された固定接点3に対して、面一となるようにして集電接点2を絶縁回転軸1に固定することで、固定接点3に対する集電接点2の取付位置の精度も向上する。さらに、集電接点2と、回転台座4および可動接点5とは一つのユニットになっているから、可動接点5に対する集電接点2の相対位置は予め定まっており、誤差が生じることはない。このように各部の寸法精度が向上することで、信頼性が高まる。そして、集電接点2を絶縁回転軸1に取り付ける構造なので、集電接点2をボルト止めするための部位(従来品のように、放射状に延びる部位)を設ける必要がなく、集電接点2が単純な形状となり、製造コストが抑えられる。
【0025】
また、集電接点用接触部52および固定接点用接触部53が、円柱の側面の形状をなしていることにより、集電接点2と固定接点3の位置が絶縁回転軸1方向にずれていて、集電接点2および固定接点3の接触面に対して可動接点5の胴部55が半径方向に傾斜する場合であっても、集電接点2と集電接点用接触部52および固定接点3と固定接点用接触部53の接触状態は、胴部55の傾斜角度によらず一定であり、良好な接触状態を維持できる。また、母線Lが回転の接線方向に対して傾斜しているので、
図8に示すように、集電接点2および固定接点3における、集電接点用接触部52および固定接点用接触部53との摺動面Tが広く、集電接点2および固定接点3に傷が付きにくい。そして、集電接点用接触部52の母線Lと固定接点用接触部53の母線Lが平行なので、集電接点2と固定接点3(両者は互いに平行である)に対して同じ向きで接触することになり、集電接点2側と固定接点3側の両方で、良好な接触状態となる。
【0026】
なお、上述のとおり、このタップ選択器において、集電接点2は固定接点3に対して面一となるように取り付けるものであり、その取付精度は高いが、完全にずれがなくなることはないので、このずれの影響について説明する。ここでは、
図10に示すように、固定接点3の高さ位置が、集電接点2の高さ位置に対してGだけ下側にずれた場合を想定する。まず、
図11(a)に示すように、可動接点5上に複数の想定点を定める。各想定点は、L
o:接線方向一方側端における固定接点3との接触点、L
i:接線方向一方側端における集電接点2との接触点、L
s:L
o,L
iを通る垂直面上における付勢部材51と胴部55の接触点(胴部55の半径方向中央上端部)、R
o:接線方向他方側端における固定接点3との接触点、R
i:接線方向他方側端における集電接点2との接触点、R
s:R
o,R
iを通る垂直面上における付勢部材51と胴部55の接触点(胴部55の半径方向中央上端部)、となっている。また、可動接点5の内周側端からR
oまでの距離をS、R
oから可動接点5の外周側端までの距離をWとする。そして、
図11(b)、(c)に、接線方向一方側の想定点L
o,L
i,L
sおよび接線方向他方側の想定点R
o,R
i,R
sをそれぞれ直線で結び、それを接線方向から見た場合の線図を示す(L
o,L
i,L
sは破線、R
o,R
i,R
sは一点鎖線で結ぶ)。
図11(b)は、集電接点2の高さ位置と固定接点3の高さ位置にずれがない場合であり、L
o,R
o,L
i,R
iは同じ高さとなり、またL
s、R
sも同じ高さとなる。そして
図11(c)は、
図10に示すように、固定接点3が集電接点2に対してGだけ下側にずれた場合であり、この場合、L
i,R
iに対してL
o,R
oがGだけ下がる。それに伴ってL
s、R
sも僅かながら下がるが、L
o,L
i,L
sおよびR
o,R
i,R
sをそれぞれ結んで形成された三角形の形状は変化しないから、L
sよりもR
sがより大きく下がり、L
sとR
sの間のずれはg=W×G/Sとなる。すなわち、可動接点5は接線方向に僅かに傾き、それに伴って板バネからなる付勢部材51が僅かにねじれることになる。しかしながら、このタップ選択器においては、寸法精度が高いのでそもそもGの値は小さく、またSはWよりも長いので、L
sとR
sの間のずれgの値は極めて小さくなり、付勢部材51のねじれも極めて小さく、また、上下の付勢部材51の付勢力の総和は変化しない。よって、集電接点2と固定接点3の高さ位置がずれたとしても、タップ選択器の性能に対する影響はないといえる。
【0027】
そして、特に可動接点5を接線方向に分割した場合には、次のような効果を奏する。集電接点2と集電接点用接触部52および固定接点3と固定接点用接触部53における相互の接触面は、完全に平行にはなり得ないので、実際には一点、またはよくて集電接点2側と固定接点3側のどちらかが二点で接触することになる。しかしながら、可動接点5を分割し、各分割可動接点5a,5bを接線方向軸周りに相互に回動自在とすれば、各分割可動接点5a,5bが、集電接点2および固定接点3とそれぞれ一点または二点で接触することになり、分割数の分だけ接触点数が倍増する。これにより、通過電流に余裕が生まれる。近年、配電線に接続される、再生可能エネルギを利用した分散型電源が増加しており、通過電流に余裕を持たせることで、それらの電源の出力変動により発生する短時間過電流にも対応できる。なお、このように可動接点5を分割した場合であっても、上述の集電接点用接触部52および固定接点用接触部53の形状に基づく効果も同様に奏する。
【0028】
本発明は、上記の実施形態に限定されない。たとえば、可動接点は、回動自在なローラが集電接点および固定接点に接触する構造であってもよい。ただし、上記実施形態の構成の方がより安価で好ましい。また、可動接点と付勢部材の固定方法については、一例を示したものであり、付勢部材が可動接点を付勢できる構造であれば、どのような固定方法であってもよい。さらに、集電接点、固定接点、回転台座および可動接点の各部の形状・構造や、相互の接続についても、上述の要件を満たすものであれば、どのようなものであってもよい。また、可動接点を、接線方向に三つ以上に分割してもよい。この場合も、各分割可動接点を接線方向軸周りに相互に回動自在とすることで、さらに集電接点および固定接点との接触点数を増加させることができる。