(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
有害ガスを含む空気を上流側から下流側に向かって通過させて前記有害ガスを除去するろ過部を備え、前記ろ過部の前記下流側における前記有害ガスの濃度が前記有害ガスについての任意に設定される濃度である破過濃度に達するまでの破過時間を予測可能な空気浄化装置であって、
前記空気浄化装置は、前記ろ過部の前記上流側における前記空気に含まれる前記有害ガスの濃度と、前記ろ過部を通過する前記空気の流量と、前記上流側における前記空気の温度と、前記上流側における前記空気の相対湿度とのデータを演算処理部に入力可能であり、
前記演算処理部では、前記空気浄化装置に使用される前記ろ過部のための前記上流側における前記空気に含まれる前記有害ガスの濃度と、前記流量と、前記温度と、前記相対湿度とを変数とする前記破過時間の予測式がプログラムされていて、前記データに基づいて前記予測式から前記破過時間を予測可能であって、
前記有害ガスが任意に選択された有毒ガスである基準ガスであり、前記上流側における前記基準ガスの濃度がCO(ppm)、前記流量がQ(L/min)、前記破過濃度がS(ppm)であり、前記下流側における前記基準ガスの濃度がS(ppm)になるまでの時間が前記破過時間であるときに、前記予測式が下記式によって表されることを特徴とする前記空気浄化装置。
破過時間=基準破過時間×濃度変化比×流量変化比×温度変化比×湿度変化比×破過濃度変化比
基準破過時間:濃度CO、流量Q、温度T、相対湿度RHを一定にしたときに、ろ過部の下流側の濃度が濃度COに対する破過濃度として任意に設定される100%未満の値であるA%に達するまでの時間。
濃度変化比:流量、温度、湿度が一定の下で、少なくとも2水準の濃度COに対して基準破過時間を得ることにより算出される濃度変化に対する補正係数
流量変化比:濃度、温度、湿度が一定の下で、少なくとも2水準の流量Qに対して基準破過時間を得ることにより算出される流量変化に対する補正係数
温度変化比:濃度、流量、相対湿度が一定の下で、少なくとも2水準の温度Tに対して基準破過時間を得ることにより算出される温度変化に対する補正係数
湿度変化比:濃度、流量、温度が一定の下で、相対湿度RHの水準を50%以上の1水準を含む少なくとも2水準に対して基準破過時間を得ることにより算出される湿度変化に対する補正係数
破過濃度変化比:濃度、温度、湿度が一定の下で、少なくとも3水準の流量Qに対して求めた破過濃度A%に対応するA%破過時間と、流量Qのうちの1水準において破過濃度A%とは異なる破過濃度B%に対応するB%破過時間とを得ることにより算出される破過濃度変化に対する補正係数
前記演算処理部では、前記空気浄化装置の使用に先立って、前記上流側における前記空気に含まれる前記有害ガスの濃度と、前記流量と、前記温度と、前記相対湿度と、前記破過濃度とによって構成された基準条件、および前記基準条件の下で測定された前記破過時間に基づいて前記予測式が組み立てられている請求項1記載の空気浄化装置。
前記空気浄化装置が前記有害ガスの濃度の検出器、前記流量の検出器、前記温度の検出器、および前記相対湿度の検出器のうちの少なくとも一つを備えている請求項1−3のいずれかに記載の空気浄化装置。
前記空気浄化装置の使用中において、前記ろ過部の前記上流側における前記空気に含まれる前記有害ガスの濃度、前記流量、前記温度、および前記相対湿度のうちで値が一定であるものについては前記検出器を使用することのない請求項4記載の空気浄化装置。
前記演算処理部には、前記ろ過部の前記上流側における前記空気に含まれる前記有害ガスの濃度、前記流量、前記温度、および前記相対湿度のうちの少なくとも一つについての前記データが無線で入力される請求項1−6のいずれかに記載の空気浄化装置。
前記演算処理部では、前記ろ過部についての単位時間当たりの破過進行度を求めることができるとともに、前記破過進行度を積算して前記ろ過部の破過時間を予測可能である請求項1−10のいずれかに記載の空気浄化装置。
有害ガスを含む空気が空気浄化装置のろ過部を上流側から下流側に向かって通過するときの前記ろ過部の前記下流側における前記有害ガスの濃度が前記有害ガスについての任意に設定される濃度である破過濃度に達するまでの破過時間を予測する方法であって、
前記空気浄化装置では、前記ろ過部の前記上流側における前記空気に含まれる前記有害ガスの濃度と、前記ろ過部を通過する前記空気の流量と、前記上流側における前記空気の温度と、前記上流側における前記空気の相対湿度とのデータを演算処理部に入力し、
前記演算処理部では、前記上流側における前記空気に含まれる前記有害ガスの前記濃度と、前記流量と、前記温度と、前記相対湿度とを変数にして、前記演算処理部にプログラムされている前記破過時間の予測式と前記データとを使用して前記破過時間を予測し、
前記有害ガスが任意に選択された有毒ガスである基準ガスであり、前記上流側における前記基準ガスの濃度がCO(ppm)、前記流量がQ(L/min)、前記破過濃度がS(ppm)であり、前記下流側における前記基準ガスの濃度がS(ppm)になるまでの時間が前記破過時間であるときに、前記予測式が下記式によって表されることを特徴とする前記方法。。
破過時間=基準破過時間×濃度変化比×流量変化比×温度変化比×湿度変化比×破過濃度変化比
基準破過時間:濃度CO、流量Q、温度T、相対湿度RHを一定にしたときに、ろ過部の下流側の濃度が濃度COに対する破過濃度として任意に設定される100%未満の値であるA%に達するまでの時間。
濃度変化比:流量、温度、湿度が一定の下で、少なくとも2水準の濃度COに対して基準破過時間を得ることにより算出される濃度変化に対する補正係数
流量変化比:濃度、温度、湿度が一定の下で、少なくとも2水準の流量Qに対して基準破過時間を得ることにより算出される流量変化に対する補正係数
温度変化比:濃度、流量、相対湿度が一定の下で、少なくとも2水準以上の温度Tに対して基準破過時間を得ることにより算出される温度変化に対する補正係数
湿度変化比:濃度、流量、温度が一定の下で、相対湿度RHの水準を50%以上の1水準を含む少なくとも2水準に対して基準破過時間を得ることにより算出される湿度変化に対する補正係数
破過濃度変化比:濃度、温度、湿度が一定の下で、少なくとも3水準の流量Qに対して求めた破過濃度A%に対応するA%破過時間と、流量Qのうちの1水準において破過濃度A%とは異なる破過濃度B%に対応するB%破過時間とを得ることにより算出される破過濃度変化に対する補正係数
前記演算処理部では、前記空気浄化装置の使用に先立って、前記上流側における前記空気に含まれる前記有害ガスの濃度と、前記流量と、前記温度と、前記相対湿度と、前記破過濃度とによって構成された基準条件、および前記基準条件の下で測定された前記破過時間に基づいて前記破過時間予測式が組み立てられている請求項17記載の方法。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の装置は、吸収缶の下流側で硫化水素ガスの濃度を半導体ニオイセンサ素子で検出してその濃度が高いときに警報を出すというものであるから、この装置では作業環境によって変化する吸収缶の寿命を予測することができない。
【0008】
特許文献2に記載の装置は、外気における不用ガスの分子濃度が高いというときに、フィルターの破過時間が短くなることを第1ガスセンサーによって予測できるというものではない。また、フィルターの下流側、例えばガスマスクの内側に設けられる第2ガスセンサーは、精度の高いものを使用すると大型なものになりがちで、ガスマスク着用者の視界の妨げや作業の邪魔になるという問題がある。この装置ではまた、フィルターが劣化する限界除去臭気ガス量と除去量との大小を比較判断するだけであるので、フィルターの劣化状況を段階的に判断することが困難である。
【0009】
特許文献3に記載の装置は、外気における有害ガス成分の濃度が一定であるときに有用なものであるが、有害ガスの濃度が時間の経過とともに変化する場合には、この装置を使用することができない。また、ガスフィルタの消耗に影響を及ぼす湿度については、3水準の湿度におけるガスフィルタの破過特性曲線が例示されている。しかし、湿度によってガスフィルタの破過特性が大きく変わる場合には、例示の破過特性曲線だけではフィルタ交換時期の判別が正確性に欠けるものになることがある。それゆえ、このような場合に対応するには、湿度の影響を明らかにする多数の破過特性曲線の収集、すなわち内容量の大きいデータマップの作成が必要となる。
【0010】
さらに、これら従来技術は、有害ガスを含む空気に温度変化があった場合に対応するための手段を持っていない。それゆえ、ろ材の破過特性が温度によって変わる場合には、これら従来技術によって得られる情報が、正確性に欠けたものになるということがある。
【0011】
この発明が課題とするところは、ろ過部の上流側の空気が含む有害ガスの濃度、ろ過部を通過するその空気の流量、その空気の温度およびその空気の湿度のそれぞれが変化してもろ過部における破過時間を予測することのできる空気浄化装置とその装置のための破過時間の予測方法との提供である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するためのこの発明には、空気浄化装置に係る発明と、その装置のための破過時間を予測する方法に係る発明とがある。
【0013】
空気浄化装置に係るこの発明が対象とするのは、有害ガスを含む空気を上流側から下流側に向かって通過させて前記有害ガスを除去するろ過部を備え、前記ろ過部の前記下流側における前記有害ガスの濃度が前記有害ガスについての任意に設定される濃度である破過濃度に達するまでの破過時間を予測可能な空気浄化装置である。
【0014】
また、空気浄化装置に係るこの発明が特徴とするところは、以下のとおりである。すなわち、前記空気浄化装置は、前記ろ過部の前記上流側における前記空気に含まれる前記有害ガスの濃度と、前記ろ過部を通過する前記空気の流量と、前記上流側における前記空気の温度と、前記上流側における前記空気の相対湿度とのデータを演算処理部に入力可能である。前記演算処理部では、前記空気浄化装置に使用される前記ろ過部のための前記上流側における前記空気に含まれる前記有害ガスの濃度と、前記流量と、前記温度と、前記相対湿度とを変数とする前記破過時間の予測式がプログラムされていて、前記データに基づいて前記予測式から前記破過時間を予測可能である。
【0015】
空気浄化装置に係るこの発明の実施態様の一つにおいて、前記演算処理部では、前記空気浄化装置の使用に先立って、前記上流側における前記空気に含まれる前記有害ガスの濃度と、前記流量と、前記温度と、前記相対湿度と、前記破過濃度とによって構成された基準条件、および前記基準条件の下で測定された前記破過時間に基づいて前記予測式が組み立てられている。
【0016】
空気浄化装置に係るこの発明の実施態様の一つにおいて、前記演算処理部では、前記ろ過部のための前記基準条件における前記破過時間を前記温度と前記相対湿度とに基づいて補正する。
【0017】
空気浄化装置に係るこの発明の実施態様の一つにおいて、前記空気浄化装置が前記有害ガスの濃度の検出器、前記流量の検出器、前記温度の検出器、および前記相対湿度の検出器のうちの少なくとも一つを備えている。
【0018】
空気浄化装置に係るこの発明の実施態様の一つにおいて、前記空気浄化装置の使用中において、前記ろ過部の前記上流側における前記空気に含まれる前記有害ガスの濃度、前記流量、前記温度、および前記相対湿度のうちで値が一定であるものについては前記検出器を使用することがない。
【0019】
空気浄化装置に係るこの発明の実施態様の一つにおいて、前記演算処理部がコードレス化した状態で使用される。
【0020】
空気浄化装置に係るこの発明の実施態様の一つにおいて、前記演算処理部には、前記ろ過部の前記上流側における前記空気に含まれる前記有害ガスの濃度、前記流量、前記温度、および前記相対湿度のうちの少なくとも一つについての前記データが無線で入力される。
【0021】
空気浄化装置に係るこの発明の実施態様の一つにおいて、前記有害ガスが任意に選択された有毒ガスである基準ガスであり、前記上流側における前記基準ガスの濃度がC
O(ppm)、前記流量がQ(L/min)、前記破過濃度がS(ppm)であり、前記下流側における前記基準ガスの濃度がS(ppm)になるまでの時間が前記破過時間であるときに、前記予測式が下記式によって表される。
破過時間=基準破過時間×濃度変化比×流量変化比×温度変化比×湿度変化比×破過濃度変化比
基準破過時間:濃度C
O、流量Q、温度T、相対湿度RHを一定にしたときに、ろ過部の下流側の濃度が濃度C
Oに対する破過濃度として任意に設定される100%未満の値であるA%に達するまでの時間。
濃度変化比:流量、温度、湿度が一定の下で、少なくとも2水準の濃度C
Oに対して基準破過時間を得ることにより算出される濃度変化に対する補正係数
流量変化比:濃度、温度、湿度が一定の下で、少なくとも2水準の流量Qに対して基準破過時間を得ることにより算出される流量変化に対する補正係数
温度変化比:濃度、流量、相対湿度が一定の下で、少なくとも2水準の温度Tに対して基準破過時間を得ることにより算出される温度変化に対する補正係数
湿度変化比:濃度、流量、温度が一定の下で、相対湿度RHの水準を50%以上の1水準を含む少なくとも2水準に対して基準破過時間を得ることにより算出される湿度変化に対する補正係数
破過濃度変化比:濃度、温度、湿度が一定の下で、少なくとも3水準の流量Qに対して求めた破過濃度A%に対応するA%破過時間と、流量Qのうちの1水準において破過濃度A%とは異なる破過濃度B%に対応するB%破過時間とを得ることにより算出される破過濃度変化に対する補正係数
【0022】
空気浄化装置に係るこの発明の実施態様の一つにおいて、前記実施態様の一つにおける前記式が下記式(1),(2)で表わされる。
(1)相対湿度RH≧50%の場合:
破過時間=1/基準破過時間×(C
Oa×10
b)×(c×1/Q+d)×(i×EXP
j×Q×Ln(S/C
O×100)+1)×(e×RH+f)×(g×T+h)
(2)相対湿度RH<50%の場合:
破過時間=1/基準破過時間×(C
Oa×10
b)×(c×1/Q+d)×(i×EXP
j×Q×Ln(S/C
O×100)+1)×(g×T+h)
上記の式(1),(2)において、
基準破過時間:濃度C
O、流量Q、温度T、相対湿度RHを一定にしたときに、下流側の濃度が濃度C
Oに対して任意に設定される100%未満の値であるA%に達するまでの時間。
T:温度(℃)
RH:相対湿度(%)
a,b:流量Q、温度T、相対湿度RHを一定にして、少なくとも2水準の濃度C
Oと、それぞれの濃度C
Oにおいてろ過部の下流側の有害ガスの濃度が濃度C
OのA%に達するまでの破過時間とによって求められる定数。
c,d:濃度C
O、温度T、相対湿度RHを一定にして、少なくとも2水準の流量Qと、それぞれの流量Qにおいてろ過部の下流側の有害ガスの濃度が濃度C
OのA%に達するまでの破過時間とによって求められる定数。
e,f:濃度C
O、流量Q、温度Tを一定にして、相対湿度RHの水準を50%以上の1水準を含む少なくとも2水準と、それぞれの相対湿度RHにおいてろ過部の下流側の有害ガスの濃度が濃度C
OのA%に達するまでの破過時間とによって求められる定数。
g,h:濃度C
O、流量Q、相対湿度RHを一定にして、少なくとも2水準の温度と、それぞれの温度Tにおいてろ過部の下流側の有害ガスの濃度が濃度C
OのA%に達するまでの破過時間とによって求められる定数。
i,j:濃度C
O、温度T、相対湿度RHを一定にして、流量Qを少なくとも3水準で変化させたときの流量QとA%破過時間と、前記A%破過時間を得たときの流量Qの3水準のうちの1水準を利用したB%破過時間とによって求められる定数。
【0023】
空気浄化装置に係るこの発明の実施態様の一つにおいて、前記演算処理部は、前記有害ガスの前記基準ガスに対する相対破過比を使用して前記破過時間の予測が可能にプログラムされている。
【0024】
空気浄化装置に係るこの発明の実施態様の一つにおいて、前記相対破過比を使用する前記破過時間の予測には、前記有害ガスが液体状態であるときの水に対する溶解率に基づく補正が施されている。
【0025】
空気浄化装置に係るこの発明の実施態様の一つにおいて、前記演算処理部では、前記ろ過部についての単位時間当たりの破過進行度を求めることができるとともに、前記破過進行度を積算して前記ろ過部の破過時間を予測可能である。
【0026】
空気浄化装置に係るこの発明の実施態様の一つにおいて、前記単位時間として、1/6000〜5/600minの範囲にある時間を使用する。
【0027】
空気浄化装置に係るこの発明の実施態様の一つにおいて、前記演算処理部では、前記ろ過部についての残存使用割合及び残存破過時間のうちの少なくとも一方を算出可能である。
【0028】
空気浄化装置に係るこの発明の実施態様の一つにおいて、前記空気浄化装置が防毒マスクおよび局所排気装置のいずれかである。
【0029】
空気浄化装置に係るこの発明の実施態様の一つにおいて、前記防毒マスクでは、前記流量の検出器が前記ろ過部の上流側および下流側のいずれかにセットされている。
【0030】
空気浄化装置に係るこの発明の実施態様の一つにおいて、前記局所排気装置では、前記流量の検出器が前記ろ過部の上流側および下流側のいずれかにセットされている。
【0031】
空気浄化装置のための破過時間を予測する方法に係るこの発明が対象とするのは、有害ガスを含む空気が空気浄化装置のろ過部を上流側から下流側に向かって通過するときの前記ろ過部の前記下流側における前記有害ガスの濃度が前記有害ガスについての任意に設定される濃度である破過濃度に達するまでの破過時間を予測する方法である。
【0032】
また、破過時間を予測する方法に係るこの発明が特徴とするところは、以下のとおりである。すなわち、前記空気浄化装置では、前記ろ過部の前記上流側における前記空気に含まれる前記有害ガスの濃度と、前記ろ過部を通過する前記空気の流量と、前記上流側における前記空気の温度と、前記上流側における前記空気の相対湿度とのデータを演算処理部に入力し、前記演算処理部では、前記上流側における前記空気に含まれる前記有害ガスの前記濃度と、前記流量と、前記温度と、前記相対湿度とを変数にして、前記演算処理部にプログラムされている前記破過時間の予測式と前記データとを使用して前記破過時間を予測する。
【0033】
破過時間を予測する方法に係るこの発明の実施態様の一つにおいて、前記演算処理部では、前記空気浄化装置の使用に先立って、前記上流側における前記空気に含まれる前記有害ガスの濃度と、前記流量と、前記温度と、前記相対湿度と、前記破過濃度とによって構成された基準条件、および前記基準条件の下で測定された前記破過時間に基づいて前記破過時間予測式が組み立てられている。
【0034】
破過時間を予測する方法に係るこの発明の実施態様の一つにおいて、前記演算処理部では、前記ろ過部のための前記基準条件における前記破過時間を前記温度と前記相対湿度とに基づいて補正する。
【0035】
破過時間を予測する方法に係るこの発明の実施態様の一つにおいて、前記有害ガスが任意に選択された有毒ガスである基準ガスであり、前記上流側における前記基準ガスの濃度がC
O(ppm)、前記流量がQ(L/min)、前記破過濃度がS(ppm)であり、前記下流側における前記基準ガスの濃度がS(ppm)になるまでの時間が前記破過時間であるときに、前記予測式が下記式によって表される。
破過時間=基準破過時間×濃度変化比×流量変化比×温度変化比×湿度変化比×破過濃度変化比
基準破過時間:濃度C
O、流量Q、温度T、相対湿度RHを一定にしたときに、ろ過部の下流側の濃度が濃度C
Oに対する破過濃度として任意に設定される100%未満の値であるA%に達するまでの時間。
濃度変化比:流量、温度、湿度が一定の下で、少なくとも2水準の濃度C
Oに対して基準破過時間を得ることにより算出される濃度変化に対する補正係数
流量変化比:濃度、温度、湿度が一定の下で、少なくとも2水準の流量Qに対して基準破過時間を得ることにより算出される流量変化に対する補正係数
温度変化比:濃度、流量、相対湿度が一定の下で、少なくとも2水準の温度Tに対して基準破過時間を得ることにより算出される温度変化に対する補正係数
湿度変化比:濃度、流量、温度が一定の下で、相対湿度RHの水準を50%以上の1水準を含む少なくとも2水準に対して基準破過時間を得ることにより算出される湿度変化に対する補正係数
破過濃度変化比:濃度、温度、湿度が一定の下で、少なくとも3水準の流量Qに対して求めた破過濃度A%に対応するA%破過時間と、流量Qのうちの1水準において破過濃度A%とは異なる破過濃度B%に対応するB%破過時間とを得ることにより算出される破過濃度変化に対する補正係数
【0036】
破過時間を予測する方法に係るこの発明の実施態様の一つにおいて、前記実施態様の一つにおける前記式が下記式(1),(2)で表わされる。
(1)相対湿度RH≧50%の場合:
破過時間=1/基準破過時間×(C
Oa×10
b)×(c×1/Q+d)×(i×EXP
j×Q×Ln(S/C
O×100)+1)×(e×RH+f)×(g×T+h)
(2)相対湿度RH<50%の場合:
破過時間=1/基準破過時間×(C
Oa×10
b)×(c×1/Q+d)×(i×EXP
j×Q×Ln(S/C
O×100)+1)×(g×T+h)
上記の式(1),(2)において、
基準破過時間:濃度C
O、流量Q、温度T、相対湿度RHを一定にしたときに、下流側の濃度が濃度C
Oに対して任意に設定される100%未満の値であるA%に達するまでの時間。
T:温度(℃)
RH:相対湿度(%)
a,b:流量Q、温度T、相対湿度RHを一定にして、少なくとも2水準の濃度C
Oと、それぞれの濃度C
Oにおいてろ過部の下流側の有害ガスの濃度が濃度C
OのA%に達するまでの破過時間とによって求められる定数。
c,d:濃度C
O、温度T、相対湿度RHを一定にして、少なくとも2水準の流量Qと、それぞれの流量Qにおいてろ過部の下流側の有害ガスの濃度が濃度C
OのA%に達するまでの破過時間とによって求められる定数。
e,f:濃度C
O、流量Q、温度Tを一定にして、相対湿度RHの水準を50%以上の1水準を含む少なくとも2水準と、それぞれの相対湿度RHにおいてろ過部の下流側の有害ガスの濃度が濃度C
OのA%に達するまでの破過時間とによって求められる定数。
g,h:濃度C
O、流量Q、相対湿度RHを一定にして、少なくとも2水準の温度と、それぞれの温度Tにおいてろ過部の下流側の有害ガスの濃度が濃度C
OのA%に達するまでの破過時間とによって求められる定数。
i,j:濃度C
O、温度T、相対湿度RHを一定にして、流量Qを少なくとも3水準で変化させたときの流量QとA%破過時間と、前記A%破過時間を得たときの流量Qの3水準のうちの1水準を利用したB%破過時間とによって求められる定数。
【0037】
破過時間を予測する方法に係るこの発明の実施態様の一つにおいて、前記演算処理部は、前記有害ガスの前記基準ガスに対する相対破過比を使用しても前記破過時間の予測が可能にプログラムされている。
【0038】
破過時間を予測する方法に係るこの発明の実施態様の一つにおいて、前記相対破過比を使用する前記破過時間の予測には、前記有害ガスが液体状態であるときときの水に対する溶解率に基づく補正が施されている。
【0039】
この発明において、「破過時間」における「破過」とは、ろ過部に有害ガスを含む空気を通過させたときに、ろ過部を通過後の空気に含まれる有害ガスの濃度が任意の値に設定される濃度以上の濃度になることを意味している。その任意の値に設定された濃度を「破過濃度」という。また、「破過時間」とは、ろ過部が「破過」にいたるまでの時間を意味している。
【0040】
この発明において「閾値」というときには、ヒトがあるガス濃度の有害ガスを一定時間吸い続けると健康障害を起こすときのガス濃度を意味している。
【発明の効果】
【0041】
この発明に係る空気浄化装置は、ろ過部の上流側で濃度を測定するから、ろ過部の下流側のスペースが小さくても、濃度測定用のセンサに大型で精度の高いものを使用することができる。
【0042】
この空気浄化装置では、ろ過部の上流側の空気に含まれる有害ガスの濃度、その空気の温度、その空気の湿度、およびろ過部を通過するその空気の流量を関連付ける破過時間算出式に基づいて破過時間を算出し、予測するから、空気浄化装置の使用中にろ過部上流側における有害ガスの濃度、空気の温度や湿度、ろ過部を通過する空気の流量のいずれかが変化しても、破過時間を正確に予測することができる。このことは、ろ過部が吸収缶であれば、その吸収缶の寿命を正確に予測できることを意味している。
【0043】
また、空気浄化装置が例えばガスマスクである場合には、破過濃度には閾値を用い、各測定部の測定間隔を短くすることで、ろ過部の上流側の空気に含まれる有害ガスの濃度、その空気の温度およびその空気の湿度が短い時間間隔で変化したり、ろ過部を通過する空気の流量が着用者の呼吸に伴い時々刻々と変化したりしても破過時間を精度よく予測することができるばかりでなく、ガスマスク着用者の呼吸に追随してその呼吸に伴う流量の時々刻々の変化に対応する破過進行度を計算して破過時間を予測することができる。また、そのことによって、ろ材の持つろ過能力を効率よく使い切ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
添付の図面を参照して、この発明に係る空気浄化装置の詳細を説明すると、以下のとおりである。
【0046】
図1は、空気浄化装置の一例として示す防毒マスク1の斜視図である。マスク1は、マスク着用者(図示せず)の鼻孔と口許とを覆うことのできる面体2と、面体2の前方に取り外し可能な状態で固定されているろ過部3と、面体2から後方へ延びていて着用者の頭部に掛け回すことのできる締め紐4とを有している。面体2は、双頭矢印Zの左方向であるマスク1の前方に向かって延びる筒状部6を有し、筒状部6の前端部には、ろ過部3が位置している。面体2の周縁部7は、マスク1が着用状態にあるときに顔面に密着する。ろ過部3は、その前面部分に通気性のグリッド部8を有し、グリッド部8には多数の通気孔9が形成されている。ろ過部3として使用されるものの一例には、筒状部6に対して着脱可能に形成された吸収缶がある。なお、筒状部6は、ろ過部3を面体2に接続するために便宜的に形成されているものであって、マスク1において必須というわけではない。
【0047】
マスク1はまた、マスク1の外側にあってろ過部3の近傍に位置しており、着用者周辺における空気40に含まれたシクロヘキサンやトルエン等の有害ガスの濃度を測定するための濃度測定部21と、マスク1の外側から筒状部6の内側へ進入している流量測定部22とを有する他に、空気40の温度を測定する温度測定部23と、空気40の湿度を測定する湿度測定部24とを有する。各測定部21,22,23,24では、センサ21a,22a(
図2参照),23a,24aのそれぞれが通信用配線21b,22b,23b,24bを介して演算処理部25に電気的に接続されている。演算処理部25は、配線26bを介して警報器26aに電気的に接続され、配線27bを介してディスプレイ27aに電気的に接続されている。また、各測定部21〜24から演算処理部25への測定結果の送信や演算処理部25から警報器26aおよび/またはディスプレイ27aへの演算結果等の送信は無線で行うことも可能である。
【0048】
図1には、マスク1の横方向と、上下方向、前後方向とが双頭矢印X,Y,Zで示されている。
【0049】
図2は、
図1のII−II線に沿った部分断面拡大図であるが、ろ過部3が仮想線で示されている。また、参考として筒状部6から取り外された状態にあるろ過部3が側面図で示されている。
図2における面体2は、吸気孔11と排気孔12とを有し、吸気孔11には逆止弁11aが取り付けられ、排気孔12には逆止弁12aが取り付けられている。逆止弁11aは、着用者の吸気によって仮想線の状態の逆止弁11aとなって吸気孔11を開放し、逆止弁12aは、着用者の呼気によって仮想線の状態の逆止弁12aとなって排気孔12を開放する。
【0050】
吸気孔11の前方には筒状部6があり、その筒状部6は、面体2につながる小径部6aと、ろ過部3が螺合する大径部6bとを有する。小径部6aには、流量測定部22が取付け穴6cを介して進入していて、流量測定用のセンサ22aが吸気孔11の前方に位置している。大径部6bの周壁内面には、ろ過部3を取付けるためのねじ山6dが形成されている。大径部6bはまた、ろ過部3の後端部3bが気密状態で圧接することを可能にする環状パッキング6eを有する。
【0051】
ろ過部3は、その内部にフィルタとして機能するろ材3aが充填されている。ろ材3aには、空気40に含まれる少なくとも一種類の特定した有害ガスを吸着するのに適した材料が使用されている。マスク1において、ろ過部3の破過時間というときには、ろ材3aについての破過時間を意味している。ろ過部3の周壁3cにおける後方部分には、筒状部6に螺合するねじ山3dが形成されている。
【0052】
マスク1が着用されて着用者の吸気動作があると、マスク1の外側の空気40がろ過部3を通って吸気孔11に入り、逆止弁11aが開いて着用者の吸気が可能になる。また、着用者の呼気動作によって逆止弁11aが閉じる一方、逆止弁12aが開いて呼気の排出が可能になる。演算処理部25と、測定部21〜24と、警報器26aと、ディスプレイ27aとが電気的にオン状態にあると、ろ過部3へ進入する空気40は、濃度測定部21のセンサ21aによって空気40に含まれる有害ガスの濃度が検出され、検出データが演算処理部25へ送られる。その空気40はまた、温度測定部23のセンサ23aによって温度が検出され、湿度測定部24のセンサ24aによって湿度が検出され、それぞれの検出データが演算処理部25へ送信される。筒状部6の内側、すなわちろ過部3の下流側では、ろ過部3で有害ガスが吸着されることによって浄化された空気40aの流量が吸気孔11の前方に位置する流量測定部22のセンサ22aによって検出され、検出データが演算処理部25に送信される。浄化された空気40aは吸気孔11を通って面体2の内部へ入り吸気として使用される。
【0053】
ろ過部3には、空気40に含まれる特定の有害ガスについての閾値または管理値として採用された最大許容濃度を破過濃度と定め、空気40aに含まれる有害ガスの濃度を閾値または管理値以下に保つことのできる能力の持続時間を破過時間として示したものがあることは一般によく知られている。マスク1の着用者は、ろ過部3の破過時間の残量を的確に把握できるようにマスク1を管理して、タイミングよくろ過部3を交換することにより、破過時間を超えたろ過部3の使用によって有害ガスに曝露されるということを回避し、健康障害の発生を防がなくてはならない。
【0054】
なお、マスク1では、マスク1が使用されている場所での空気40について、有害ガスの濃度C
O、空気40のマスク1への流量Q、空気40の温度T、空気40の湿度RHのいずれかが一定の値である場合には、その一定の値であるものに対しての測定を省いてまたは測定部を省いてろ過部3の破過時間を測定することができる。例えば、流量Q、温度T、相対湿度RHが一定であるときには、測定部21〜24のうちで濃度測定部21のみを有するマスク1で破過時間を予測することができる。また、流量Qのみが変化する環境では、流量測定部22のみを有するマスク1で破過時間を予測することもできる。
【0055】
図1,2に例示のマスク1は、破過時間についてのそのような管理を容易にするものであって、各測定部21,22,23,24や演算処理部25は、以下のように形成されている。
【0056】
1.濃度測定部21
(1)濃度測定部21におけるセンサ21aは、マスク1の外側の空気40と接触する状態、より好ましくはそのような状態であって、かつ呼気の影響を受けることのない状態にセットされる。
(2)センサ21aに特別の規定はなく、定電位電解式センサ、PIDセンサ、接触燃焼式センサ、オルガスタ式センサ等、種々の方式のセンサを使用することができる。PIDセンサを使用したMini RAE3000(RAE社製)は、濃度測定部21として使用することができる具体例の一つである。
【0057】
2.流量測定部22
(1)流量測定部22におけるセンサ22aには、流量計が使用される。その流量計に特別の規定はなく、しぼり流量計(ベンチュリ計)、差圧式流量計(オリフィス流量計)、熱線式流量計、超音波流量計、羽根車式流量計等、種々の方式の流量計を使用することができる。また、流量計に代えて流速計と流路の面積とから流量を求めることも可能である。流速計には、熱線流速計、電磁流速計、プロペラ式流速計、超音波型流速計等、種々の方式の流速計を使用することができる。
(2)センサ22aは、
図2に例示の位置にセットされることが好ましい。ただし、その位置は、ろ過部3においての通気量を実質的に測定できる適宜の位置に代えることが可能である。
(3)マスク1が吸気を供給するために電動ファンを使用するものである場合には、センサ22aの使用に代えて、電動ファンの電流値や消費電力、ファンモーターの回転数などから流量を求めることもできる。
(4)また、吸気用逆止弁11aや排気用逆止弁12aの開度を近接センサ等で検出し、その検出結果に基づいて流量を算出することによって、センサ22aの使用に代えることもできる。
(5)さらにはまた、ダイアフラム等の圧力応答部材を面体2に取り付けて、応答部材の動きを近接センサ等で検出し、その検出結果に基づいて流量を算出することによって、センサ22aの使用に代えることもできる。
(6)面体内の圧力変化を圧力計によって測定し、その測定結果を基づいて流量を算出することによって、センサ22aの使用に代えることもできる。
【0058】
3.温度測定部23
(1)温度測定部23におけるセンサ23aは、マスク1の外側の空気40に接触する状態にあって、ろ過部3の付近ではあるが、ろ過部3に向かう空気40の流れの影響および排気孔12からの排気の流れの影響を受けない位置にセットされることが好ましい。ただし、センサ23aが気流の影響を受けない性質のものである場合には、ろ過部3の付近にセットすることもできる。
(2)センサ23aに特別の規定はなく、例えば半導体式温度センサ、バンドギャップ式温度センサ、熱電対、抵抗温度計(側温抵抗体、サーミスタ)等、種々の方式の温度計を使用することができる。
【0059】
4.湿度測定部24
(1)湿度測定部24におけるセンサ24aは、空気40に接触する状態にあって、センサ23aと同じように空気40の流れや排気の流れの影響を受けない位置にセットされることが好ましい。ただし、センサ24aが気流の影響を受けない性質のものである場合には、ろ過部3の付近にセットすることもできる。
(2)センサ24aに特別の規定はなく、例えば、電気式湿度計(静電容量式相対湿度センサ、高分子電気抵抗式湿度計、セラミックス式電気抵抗湿度計等)、伸縮式湿度計(毛髪湿度計)、乾湿計等、種々の方式の湿度計を使用することができる。
(3)SENSIRION社製SHT75は、センサ23aとセンサ24aとを兼ねた温湿度測定器として使用することができるものの一例である。
【0060】
5.演算処理部25
(1)演算処理部25は、図示例の如く各測定部21〜24から有線で測定結果またはそれに代わる信号が送られて来る場合には、マスク1の着用者の腰部や胸部に取付けられていることが好ましい。図示例とは異なり、各測定部21〜24から無線で測定結果や信号が送られて来る場合には、演算処理部25をコードレス化した状態でマスク着用者が携帯して使用することができるばかりでなく、マスク着用者から離間している集中管理室等の室内に置いて、着用者以外の者が各測定部からの測定結果や演算処理結果を知ることもできる。
(2)演算処理部25は、それに対して直接的に、または演算処理部25とは別体の外部機器から間接的にデータを入力可能なもので、例えば各測定部21〜24から受信した測定結果や信号を入力して、空気40に含まれる特定の有害ガスについてのろ過部3における破過濃度の設定、破過時間予測式等の算出式のプログラミング、プログラムされた破過時間予測式に基づく予測破過時間の計算、単位時間当たりのろ過部3の消耗度合の計算、その消耗度合の積算から導かれるろ過部3の破過時間に至るまでの残存使用可能時間の計算等を実行する機能を有する。演算処理部25はまた、ろ過部3の破過時間に至るまでの残存使用可能時間が僅少になること等によって、マスク着用者やその着用者に対する管理者に注意を促す必要が生じたときに、警報器26aを作動させることや、演算処理部25における各種の演算の結果や測定部21〜24の測定結果等をディスプレイ27aに表示することが可能である。また、演算処理部25は、特定の有害ガス以外の有害ガスの名称や特定の有害ガスに対応した相対破過比を入力すると、特定の有害ガスについての破過時間予測式等の算出式にその入力した内容を取り込むことができる。この発明でいう相対破過比とは、破過時間予測式がプログラミングしてある特定の有害ガスを基準ガスとし、基準ガス以外の任意の有害ガスを含む空気で測定した破過時間をその任意の有害ガスと同濃度の基準ガスを含む空気で測定した破過時間で除した値のことをいう。その基準ガスには、シクロヘキサンやトルエン等の一般的によく知られている有害ガスを選ぶことができる。相対破過比は、下記の式1で表すことができる。
(相対破過比)=(有害ガスの破過時間)/(基準ガスの破過時間)・・・式1
(3)演算処理部25には、マイクロコンピュータやパーソナルコンピュータ、シーケンサ等を使用することができる。
【0061】
図3は、
図1の防毒マスク1におけるろ過部3の破過時間等を測定することのできる装置100の概略図である。装置100には、防毒マスク1が取り付けられている人頭模型101を置くチャンバ102を有し、チャンバ102の上流側102aには空気混合室105が設けられている。空気混合室105には、乾燥空気供給ライン103と、加湿空気供給ライン104と、有害ガス供給ライン106とがつながっている。チャンバ102の下流側102bには、呼吸模擬装置107が設けられ、人頭模型101と呼吸模擬装置107とが通気パイプ108を介してつながっている。通気パイプ108の上流側端部は、人頭模型101を貫通して人頭模型101の口にまで達している。チャンバ102の外側には、演算処理部25と警報器26aとディスプレイ27aとが設けられている。演算処理部25は、チャンバ102の内側においてろ過部3の近傍にセットされている濃度測定用のセンサ21a、温度測定用のセンサ23a、湿度測定用のセンサ24aのそれぞれ、および防毒マスク1の内側にセットされている流量測定用のセンサ22aと電気的につながっている。
【0062】
乾燥空気供給ライン103では、コンプレッサ(図示せず)から空気混合室105に向かって乾燥空気が供給される。
【0063】
加湿空気供給ライン104では、コンプレッサ(図示せず)から送られた乾燥空気が貯水タンク104a,104bを通り、加湿空気となって空気混合室105に供給される。
【0064】
有害ガス供給ライン106では、コンプレッサ(図示せず)から送られた乾燥空気がタンク106aに入る。タンク106aには、例えば液体のシクロヘキサンが入れてあり、乾燥空気はそのシクロヘキサンの液中に放出され、それによってタンク106a内の液体のシクロヘキサンが気化し、有害ガスであるシクロヘキサンガスを含む空気となり、その空気が空気混合室105に向かう。
【0065】
空気混合室105は、その室温が破過時間等を測定するときの温度と同じ温度に設定されている。その空気混合室105では、乾燥空気、加湿空気、有害ガスを含む空気が混合されて破過時間を測定するために必要な濃度の有害ガスを含み、温度と湿度とが一定の値に調整された空気40となり、チャンバ102へ向かう。
【0066】
チャンバ102の下流側102bにセットされている呼吸模擬装置107は、空気流量が調整された状態で吸気動作と呼気動作とを反復したり、その吸気動作と呼気動作との1分間当たりの反復数を変化させたりすることができる他に、ろ過部3に対して単位時間当たりについて一定の流量の空気40を継続して通過させるように吸気動作を続けることができる。
【0067】
この発明では、装置100を使用して防毒マスク1におけるろ過部3の破過時間等を観察するために、有害ガスとしてシクロヘキサンを使用し、人頭模型101にセットされた防毒マスク1のろ過部3として興研(株)製の有機ガス用吸収缶KGC−1S(ろ材の直径78mm、厚さ11.5mm)を取り付け、そのろ過部3の下流側にはろ過部3を通過後の空気40aに含まれる有害ガスの濃度を検出するための第2濃度検出センサ21c(
図2参照)をセンサ22aの近くにセットした。チャンバ102では、所要濃度の有害ガス(シクロヘキサン)を含む空気40がろ過部3を通過する前後において、その有害ガスの濃度を検出することによって、本件発明の発明者は、空気40における有害ガスの濃度Coとろ過部3を通過する空気40の流量Qと空気40の温度Tと空気40の相対湿度RHとがろ過部3の破過時間BTに及ぼす影響、およびろ過部3の破過時間BTの予測に関して以下の知見を得た。なお、第2濃度検出センサ21cは、演算処理部25に電気的に接続されているものであるが、
図2ではその接続されている状態が仮想線によって示されている。空気40について検討した項目と、検討した項目のそれぞれについて採用した濃度Co(ppm)、流量Q(L/min、L:liter)、破過基準(%)、温度(℃)、相対湿度(%RH)の条件は表1のとおりであった。
【0069】
知見1.基準条件(任意の値に設定した濃度Co、流量Q、温度Tおよび相対湿度RHの4条件と、これら4条件の下において、ろ過部3の下流側に漏れ出る有害ガスの濃度の前記濃度Coに対する比率(例えばA%)(以下、%破過濃度またはA%破過濃度という)を定め、その基準条件に対して濃度Coをいくつかの水準で変化させ、その水準ごとに%破過濃度(例えばA%破過濃度)が例えば1%破過濃度になるまでの時間を測定して、その時間を濃度に依存の1%破過時間(略称:1%破過時間(濃度)または1%BT
C、または濃度変化比)とすると、1%BT
Cは濃度Coの水準が上昇すると短くなる傾向にあった。表2は、濃度Coの各水準において測定された1%BT
Cを示している。
図4は、表2における濃度Coと1%BT
Cとが対数関係にあることを示している。濃度変化についてのこの関係、すなわち濃度変化比は数式化することが可能で、対数近似、反比例近似、累乗近似等で表すことができ、一例として対数近似から導かれる1%BT
Cは式2で表すことができた。
1%BT
C=Co
a×10
b ・・・・・・・・・・式2
a,b:少なくとも2水準の濃度Coを使用して実験的に求められる定数
【0071】
知見2.基準条件に対して流量Qをいくつかの水準で変化させ、その水準ごとに%破過濃度が例えば1%破過濃度になるまでの時間を測定して、その時間を流量に依存の1%破過時間(略称:1%破過時間(流量)または1%BT
Q、または破過時間の流量変化比)とすると、1%BT
Qは流量Qが上昇すると短くなる傾向にあった。表3は、流量Qの各水準において測定された1%BT
Qを示している。
図5は、表3における流量Qと1%BT
Qとが反比例の関係にあることを示している。流量変化についてのこの関係、すなわち流量変化比は数式化することが可能で、対数近似、反比例近似、累乗近似等で表すことができ、一例として反比例近似から導かれる1%BT
Qは式3で表すことができた。
1%BT
Q=c×1/Q+d・・・・・・・・・・・式3
c,d:少なくとも2水準の流量Qを使用して実験的に求められる定数
【0073】
知見3.表4は、濃度Coが300ppm、流量Qが30L/minの下で温度Tと相対湿度%RHとが変化したときに観察された1%破過時間を示している。
図6は、表4において濃度Co、流量Q、相対湿度RHが一定であって、温度Tが上昇すると、破過時間が短くなる傾向にあることを示している。温度変化についてのその傾向は、
図6が示すように直線的であって、数式化することが可能であり、例えば温度20℃での破過時間を基準にして破過時間の比率(以下、温度影響係数、または温度変化比)を求めると、式4によって表すことができた。
温度影響係数=g×T+h・・・・・・・・・・・・式4
g,h:少なくとも2水準の温度を使用して実験的に求められる定数
式4は、ろ過部3について、破過時間を計算するときに必要となる温度補正式と呼ぶことができるものである。
【0075】
知見4.表4で明らかなように、濃度Co、流量Q、温度Tが一定であるときに、相対湿度RHが50%以上であると、相対湿度RHが上昇するにつれて、破過時間は短くなる傾向にあった。湿度変化についてのその傾向は、
図7が示すように直線的であって、数式化することが可能であり、例えば相対湿度RHが50%の破過時間を基準にして破過時間の比率(以下、RH≧50%の場合の湿度影響係数または湿度変化比という)を求めると、式5によって表すことができた。
RH≧50%の場合の湿度影響係数=e×RH+f・・・・・・式5
e,f:少なくとも2水準(但し、相対湿度RHが50%以上の1水準を含む)の相対湿度RHを使用して実験的に求められる定数
式5は、ろ過部3について、破過時間を計算するときに必要となる湿度補正式と呼ぶことのできるものである。
【0076】
また、表4と
図7とにおいて明らかなように、相対湿度RHが50%未満である場合には、相対湿度RHが変化しても破過時間には殆ど変化がなく、その破過時間は、相対湿度RHが50%である場合の破過時間とほぼ同じであった。その傾向(以下では、RH<50%の場合の湿度影響係数または湿度変化比)は式6によって表すことができた。
RH<50%の場合の湿度影響係数=1・・・・・・・・・・・式6
【0077】
知見5.温度Tと相対湿度RHとが一定であって、濃度Coと流量Qとが変化するときに、破過濃度1%に至るまでの破過時間の予測値である濃度と流量とに依存する1%破過時間(略称:1%破過時間(濃度、流量))と式2の1%BT
Cと式3の1%BT
Qとは式7の関係にあった。
1%破過時間(濃度、流量)=(1%BT
C/基準BT)×(1%BT
Q/基準BT)×基準BT=1%BT
C×1%BT
Q×1/基準BT・・・式7
基準BT:知見1の基準条件における破過時間をいう。例えば、式2,3に対して共通の濃度Co、流量Q、温度T、相対湿度RHを代入して得られる1%破過時間(濃度)(1%BT
C)を意味する。このときの1%BT
Cの値は、1%破過時間(流量)(1%BT
Q)の値に等しい。基準条件の具体例をいえば、Co=300ppm,Q=30L/min,T=20℃,RH=50%,1%破過濃度がある。基準BTの具体例には、この基準条件から得られる1%BT
C(=1%BT
Q)がある。
【0078】
知見6.知見1の基準条件に対して濃度Co、流量Q、温度T、相対湿度RHが変化するときに、ろ過部3の下流側が破過濃度1%に至るまでの破過時間の予測値(1%破過時間)は、式8−1と式8−2の関係にあった。
1%破過時間=基準破過時間×濃度変化比×流量変化比×温度変化比×湿度変化比・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・式8−1
1%破過時間=1/基準BT×1%BT
C×1%BT
Q×温度変化比
数×湿度変化比・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・式8−2
【0079】
知見7.
(1)任意の値の破過濃度と濃度Coについて
a.濃度Co=300ppm、流量Q=30L/minであるときのろ過部3の下流側における有害ガス(シクロヘキサン)の濃度は、観察時間の経過とともに増加した。増加する様子は、
図8のとおりであって、
図8における1%破過時間は100.3分であった。
b.流量Qを30L/minに固定し、ろ過部3の上流側における濃度Coに対して、ろ過部3の破過とみなす下流側の有害ガスの濃度を任意の値(%)に設定して、例えば0.5,1,3,5,10%に設定して、その任意の値(%)における破過時間(%破過時間)を測定した。上流側における濃度Coは、その水準を100〜1800ppmの間で変化させ、それぞれの水準において、%破過時間のうちの1%破過時間に対する%破過時間の比率(%破過濃度影響比(濃度)または濃度変化比)を求め、その結果を表5に示した。
c.表5によって、%破過時間は、それを%破過濃度影響比(濃度)の形で見ると、上流側における濃度Coの影響を受けていないことがわかった。
(2)任意の値の破過濃度と流量Qについて
a.上流側における濃度Coを一定にして、ろ過部3に対する流量Qを変化させ、ろ過部3の破過とみなす下流側の有害ガスの濃度を濃度Coに対する任意の値(%)に設定して、例えば0.5,1,3,5,10%に設定して、その任意の値(%)における破過時間(%破過時間)を測定した。一例として、濃度Coを100ppmに固定して、流量Qはその水準を30〜120L/minの間で変化させ、それぞれの水準において、%破過時間(%BT)のうちの1%破過時間(1%BT)に対する%破過時間の比率(%破過濃度影響比(流量))を求め、その結果を表6に示した。
b.表6は、濃度Coが100ppmであるときの流量Qの水準と%破過時間との関係を示している。%破過時間は、それを%破過濃度影響比(流量)の形で見ると、流量Qの水準が変化したときに、%破過濃度影響比(流量)も変化することがわかった。
c.表6において、それぞれの%破過濃度における%破過濃度影響比(流量)と%破過濃度における%の対数との関係は
図9が示すように直線関係にあり、その直線の傾きは流量Qに対して
図10に示されるように変化していた。
d.表6と
図10とからは、流量Qと、%破過濃度と、1%破過時間に対する%破過時間の比率(%破過濃度影響比(流量)または任意の破過濃度Sppmにおける破過時間比率)とが、式9で示される関係にあることがわかった。
(1%BT)に対する(Sppm破過時間)の比率=i×EXP
j×Q×Ln(S/Co×100)+1)・・・・・・・・・・・・・・・・・式9
i,j:濃度Co、温度T、相対湿度RHを一定にして少なくとも3水準で流量Qを変化させ、各水準の流量Qで(1%BT)に対する(%破過時間)の比率を求めることによって得られる定数(ただし、破過濃度は1%に限定されるわけではないから、一般的にいえば、AとBとが異なる値であるときに、各水準の流量QでA%破過時間に対するB%破過時間の比率を求めることによって得られる定数ということができる)
S:ろ過部3の任意の破過濃度(単位ppm)
S/Co×100:%破過濃度
式9は、破過基準補正式と呼ぶことのできるもので、この式のうちのi×EXP
j×Qは、このような指数近似の他に、線形近似、累乗近似などでも表すことができる。
【0082】
知見8.知見7は、ろ過部3についての破過濃度を上流濃度Coの1%としたときの予測の破過時間である1%破過時間が決まると、ろ過部3における破過濃度を任意の値に設定しても、その任意の値に対する予測の破過時間を下記の式10で求めることができることを意味している。
破過時間=基準破過時間×濃度変化比×流量変化比×温度変化比×湿度変化比×破過濃度変化比・・・・・・式10
式10において、
基準破過時間:濃度C
O、流量Q、温度T、相対湿度RHを一定にしたときに、ろ過部の下流側の濃度が濃度C
Oに対する破過濃度として任意に設定される100%未満の値であるA%に達するまでの時間
濃度変化比:流量、温度、湿度が一定の下で、少なくとも2水準の濃度C
Oに対して基準破過時間を得ることにより算出される濃度変化に対する補正係数
流量変化比:濃度、温度、湿度が一定の下で、少なくとも2水準の流量Qに対して基準破過時間を得ることにより算出される流量変化に対する補正係数
温度変化比:濃度、流量、相対湿度が一定の下で、少なくとも2水準の温度Tに対して基準破過時間を得ることにより算出される温度変化に対する補正係数
湿度変化比:濃度、流量、温度が一定の下で、相対湿度RHの水準を50%以上の1水準を含む少なくとも2水準に対して基準破過時間を得ることにより算出される湿度変化に対する補正係数
破過濃度変化比:濃度、温度、湿度が一定の下で、少なくとも3水準の流量Qに対して求めた破過濃度A%に対応するA%破過時間と、流量Qのうちの1水準において破過濃度A%とは異なる破過濃度B%に対応するB%破過時間とを得ることにより算出される破過濃度変化に対する補正係数
【0083】
知見9.式2〜9と、ppmを単位とする破過濃度においての破過時間の予測値とは、ろ過部3の上流側における有害ガスの濃度をCoppmとし、ろ過部3の破過濃度をSppmとしたときに、下記の式11−1または式11−2で示される関係にあった。
RH≧50%の場合に下流側濃度がSppmになるまでの予測破過時間(略称:SppmBT):
SppmBT=1/基準BT×(Co
a×10
b)×(c×1/Q+d)×(i×EXP
j×Q×Ln(S/Co×100)+1)×(e×RH+f)×(g×T+h)・・・・・・・・・・・式11−1
RH<50%の場合に下流側濃度がSppmになるまでの予測破過時間(略称:SppmBT):
SppmBT=1/基準BT×(Co
a×10
b)×(c×1/Q+d)×(i×EXP
j×Q×Ln(S/Co×100)+1)×(g×T+h)・・・・・式11−2
【0084】
知見10.知見1〜9は、シクロヘキサン以外の有機の有害ガスについても当てはまる。シクロヘキサン以外の有害ガスについては、シクロヘキサンと同様に、それぞれの有害ガスで知見1〜9を適用して破過予測式を算出してもよいが、シクロヘキサンに対する相対破過比が既知の有害ガスの場合においては、シクロヘキサンについての破過時間にその相対破過比を乗じた値を代入することで、破過時間を算出することもできる。また、シクロヘキサンの場合と同様にして、シクロヘキサン以外の特定の有害ガスについて破過時間予測式を算出したときには、その特定の有害ガスについての破過時間に対する相対破過比が明らかなガスは、特定の有害ガスの破過時間に対して相対破過比を乗じた値を破過予測式に代入することで、そのガスについての破過時間を算出することができる。
【0085】
図1の演算処理部25では、式11−1,11−2がプログラムされるとともに、RH≧50%の場合には式11−1を選択し、RH<50%の場合には式11−2を選択するようにプログラムされる。演算処理部25は、このようにプログラムされることに代えて、式11−1のみがプログラムされていてもよい。ただし、そのときの演算処理部25は、RH≧50%の場合に式11−1をそのまま選択し、RH<50%の場合に式11−1においてRH=50%を選択するようにプログラムされる。
【0086】
図1のマスク1について、式2,3,4,5,6,7,8−2,9,11−1,11−2が演算処理部25にプログラムされている状態のもとで、マスク1のろ過部3には興研(株)製の吸収缶KGC−1S(ろ材の直径78mm、厚さ11.5mm)を使用し、有害ガスにはシクロヘキサンを使用し、有害ガスの濃度Co、空気40の流量Q、空気40の温度T、空気40の相対湿度RHを変化させて、ろ過部3の破過時間を観察した結果は、下記(1)〜(9)のとおりであった。
【0087】
(1)ろ過部3に対して、温度T=20℃、相対湿度RH=50%の空気40を流量Q=30L/minの割合で通過させた。空気40における有害ガスの濃度Coを100ppm,300ppm,600ppm,1000ppm,1200ppm,1800ppmの6水準で変化させ、ろ過部3の下流側に漏れ出る有害ガスが濃度Coの1%になるまでの時間である1%破過時間(濃度)(1%BT
C)を演算処理部25に入力して、演算処理部25にプログラムされている式2について、
1%BT
C=Co
−0.7863×10
3.9554 ・・・・・・・・式12
を得た。
【0088】
(2)ろ過部3に対して、温度T=20℃、相対湿度RH=50%、有害ガスの濃度Co=300ppmの空気40を30L/min,40L/min,60L/min,80L/min,100L/min,120L/minの6水準の流量Qで通過させて、各水準における1%BT
Qを演算処理部25に入力して、演算処理部25にプログラムされている式3について、
1%BT
Q=3696×1/Q−21.404・・・・・・・式13
を得た。
【0089】
(3)式12,13において、T=20℃,RH=50%,Co=300ppm,Q=30L/minとしたときの1%BT
C,1%BT
Qを演算処理部25において求めると、98.8分であった。この条件下の1%BT
C(1%BT
Qに等しい)を基準BTとすると、T=20℃,RH=50%であって、濃度Coと流量Qとが変化したときの破過時間は、既出の下記の式7によって予測することができた。
1%破過時間(濃度、流量)=1%BT
C×1%BT
Q×1/基準BT・・・・・・・・式7
【0090】
(4)演算処理部25にプログラムされている式7に対して、T=20℃,RH=50%,Co=600ppm,Q=40L/minの条件を入力して得られた計算上の予測破過時間は、41.8分であった。一方、
図1のマスクのろ過部3に対してT=20℃,RH=50%,Co=600ppm,Q=40L/minの条件で空気40を通過させてろ過部3の下流側における有害ガスの濃度が上流側における濃度Coの1%、すなわち6ppmになるまでの時間である1%破過時間を測定すると38.9分であって、計算上の1%破過時間(濃度、流量)である予測破過時間によく一致していた。
【0091】
(5)マスク1において、RH=50%,Co=300ppm,Q=30L/minの条件下でT=15℃,20℃,25℃,30℃,35℃の5水準で1%BTを測定し、測定結果を演算処理部25に入力することによって、演算処理部25にプログラムされている式4について下記の式14を得ることができた。
温度影響係数=−0.0209×T+1.4199 ・・・・式14
【0092】
(6)マスク1において、T=20℃,Co=300ppm,Q=30L/minの条件下で、RH=10%,20%,30%,40%,50%,60%,70%,80%の8水準で1%BTを測定し、測定結果を演算処理部25に入力することによって、RH≧50%の場合には演算処理部25にプログラムされている式5について下記の式15を得ることができた。また、R<50%の場合には既出の式6に同じであった。
RH≧50%の場合の湿度影響係数=−0.0124×RH+1.6223 ・・・・・・・・ 式15
RH<50%の場合の湿度影響係数=1 ・・・・・・・・・・式6
【0093】
(7)演算処理部25に対して、T=35℃,RH=70%,Co=300ppm,Q=30L/minの条件を入力し、演算処理部25にプログラムされている式8−2、式14,15に基づいて計算した1%予測破過時間は50.8分であった。一方、マスク1のろ過部3に対して、T=35℃,RH=70%,Co=300ppm,Q=30L/minの条件で空気40を通過させたときに実測された破過濃度1%に対する破過時間は49.9分であって、計算上の予測破過時間によく一致していた。
【0094】
(8)マスク1において、T=20℃,RH=50%,Co=300ppm,Q=30L/minの空気40がろ過部3を通過したときに、ろ過部3の下流側に漏れ出る有害ガスの濃度がろ過部3の上流側の濃度であるCo=300ppmに対して、0.5%になるまでの時間(0.5%破過時間という。以下、同じ。)、1%になるまでの時間(1%破過時間)、3%になるまでの時間(3%破過時間)、5%になるまでの時間(5%破過時間)、10%になるまでの時間(10%破過時間)を測定し、測定した結果を演算処理部25に入力すると、演算処理部25にプログラムされている式11−1,11−2について、下記の式16,17を得ることができた。
【0095】
RH≧50%の場合は、式11−1について
SppmBT=1/基準BT×(Co
-0.7863×10
3.9554)×(3696×1/Q−21.404)×(0.1264×EXP
0.0193×Q×Ln(S/Co×100)+1)×(−0.0124×RH+1.6223)×(−0.0209×T+1.4199) ・・・・・・・・・・・式16
なお、下流側の濃度が例えば5ppmであるときにはS=5を代入する。
【0096】
RH<50%の場合は、式11−2について、
SppmBT=1/基準BT×(Co
-0.7863×10
3.9554)×(3696×1/Q−21.404)×(0.1264×EXP
0.0193×Q×Ln(S/Co×100)+1)×(−0.0209×T+1.4199)・・式17
なお、下流側の濃度が例えば5ppmであるときにはS=5を代入する。
【0097】
(9)式16において、S=5としたときの予測破過時間(5ppmBT)を種々の条件において算出する一方、各条件におけるマスク1の破過時間を実測した。各条件における予測破過時間(SppmBT)と実測破過時間とは、表7に示されているようにほぼ一致していて、式16による予測破過時間の精度の優れていることを確認することができた。
【0098】
この例からわかるように、ろ過部3として、吸収缶KGS−1Sまたはそれと同等の仕様のろ過部3を使用するマスク1では、演算処理部25に式16,17をプログラムしておくことによって、マスク1を使用し始める環境での温度T、相対湿度RH,濃度Co、流量Q、を入力すれば、その環境での破過時間を予測することができる。マスク1について、式16,17を演算処理部25に入力しておくということの一例には、ろ過部3が製造されたときに持つ基準条件の入力がある。このようなろ過部3は、それの使用を開始するときに、使用環境における空気40の温度Tと相対湿度RHとを検出して、式4と式5とに基づいてろ過部3の基準条件によって定まるろ過能力を使用環境に対応するように補正することができるものである。
【0099】
また、吸収缶KGS−1Sとは異なる仕様のろ過部3を使用するマスク1では、演算処理部25にプログラムされている式11−1,11−2にそのろ過部3を使用して得られるデータを入力することによって、これらの式11−1,11−2における定数を算出すると、そのろ過部3についてもマスク1を使用する環境に応じた破過時間を予測することができるようになる。
【0101】
表7の結果は、ろ過部3に吸収缶KGC−1Sを使用したマスク1についての破過時間の測定を開始してからマスク1が破過するまでの間において、外気である空気40についての温度T、相対湿度RH,濃度Co、流量Q、が一定であるとみなすことができる条件下においての検討結果である。ここで、流量Qが一定であるということは、空気40の流れが定常流であるか、または定常流ではなくても定常流とみなし得る流れであることを意味している。
【0102】
マスク1は、このような条件下で使用される他に、温度T、相対湿度RH,濃度Co、流量Q、のうちの少なくとも一つが時間の経過とともに変化するという条件下で使用されることが多い。マスク1における流量Qが着用者の呼吸の反復に伴って時々刻々変化しているという例は、その条件の典型的な例である。
【0103】
図11は、着用者が呼吸をするときの吸気と呼気とにおけるろ過部3の空気流量が時間の経過とともに変化するという脈動流の一例を示す図である。
図11において、空気40を吸い込む吸気動作は、一回の空気流量、すなわち吸気量が1.5Lで、1分間に20回反復されると想定されており、一回の呼吸動作には3秒を要し、一回の呼吸動作で変化する空気流量は正弦波を画くと想定されている。このような呼吸動作において、
図2の流量測定部22は、吸気動作における空気流量を検出対象とする。呼気動作における空気流量は、ろ過部3を通過するものではないから、流量測定部22ではその流量をゼロとして扱う。
図11における鎖線DLは、その流量測定部22の検出対象となる空気の流量の変化を示している。ろ過部3の流量Qがその鎖線DLのように変化するという条件下においてマスク1の破過時間を予測するには、単位時間t毎に流量Qを測定して、時間が経過することに伴うマスク1についての単位時間当たりの破過進行度を知ることが好ましい。単位時間tは、任意の時間に設定することができるが、着用者の呼吸に伴う流量Qの時々刻々の変化に対応する破過進行度を計算するには、1/6000min(0.01秒)〜5/600min(0.5秒)であることが好ましい。
図11における折線Gは、単位時間tを1/600min(0.1秒)とし、その0.1秒の間では流量が一定の定常流であると仮定した場合の流量の変化を示している。濃度Co、流量Q、温度T、相対湿度RHは、流量Qと同じ単位時間tで測定してもよいが、流量Qのように時々刻々変化することがなければ、流量Qに対して適用する単位時間よりも長い単位時間、例えば10min(600秒)またはそれ以上に長い単位時間で測定してもよい。破過進行度は、演算処理部25にプログラムされている式16,17におけるSppmBTを用いて下記の式18の如くに定義される。
破過進行度=単位時間t/SppmBT・・・・・・・・・・式18
【0104】
式18は、マスク1が破過濃度Sppmに到達するまでに要する破過時間、すなわちSppmBTに対する単位時間当たりの破過進行度を算出する式である。例えば単位時間tを1/600min(0.1秒)とし、Sppmを5ppmにしたときに、式18は、
破過進行度=1/600/5ppmBT
となる。
【0105】
演算処理部25に対して式18をプログラムし、Co=300ppm、脈動流量30L/min(
図11に例示された1.5L×20回/minの正弦波脈動流)、T=20℃,RH=50%,破過基準濃度5ppm,単位時間t=1/600min(0.1秒)を演算処理部25に入力し、破過進行度を積算した値が1に達するまでの時間を演算し、演算結果として予測破過時間91.9分を得た。また、マスク1について、破過濃度を5ppmとしたときの破過時間を実測した結果は94.6分であって、予測破過時間にほぼ一致していた。
【0106】
破過進行度がプログラムされている演算処理部25では、マスク1の使用開始後における任意の時点でのろ過部3の使用割合や残存使用割合(残存寿命)等を下記の式19〜21によって算出することができる。
ろ過部3の使用割合(%)=破過進行度×10・・・・・・・式19
ろ過部3の残存使用割合(%)=100−使用割合(%)・・式20
ろ過部3についての残存時間=(ろ過部3の使用時間/破過進行度)−(ろ過部3の使用時間)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・式21
【0107】
式19〜21による算出結果は、演算処理部25におけるディスプレイ27aに表示することができる。また算出結果に基づいて警報器26aを作動させることもできる。
【0108】
このように単位時間毎に濃度Co、流量Q等の環境条件を入力して破過進行度を算出することのできるマスク1は、マスク1の着用中における環境条件が時間の経過とともに変化しても、その変化に対応した破過時間を算出することができるので、破過進行度が1を超えた状態でろ過部を使用するという状態、例えば破過濃度が有害ガスの閾値に設定されている場合においては、有害ガスがろ過部の下流側に閾値より高い状態で流出しているにもかかわらずろ過部を交換せずにマスク1の着用が続けられるという危険な状態の発生を防ぐことができる。さらに、破過進行度が例えば0.9に達した時点で警報器が作動するように演算処理部25が設定されていれば、マスク着用者は、十分な余裕をもって、有害ガスが存在する場所から有害ガスが存在しない場所へ移動することができる。すなわち、マスク着用者が移動している途中に吸収缶が破過状態となってしまうことにより、マスク着用者が閾値よりも高い濃度の有害ガスに曝露される、という状況の発生を防ぐことも可能である。
【0109】
マスク1におけるろ過部3の上流側にある空気40は、複数種類の有害ガス、例えばシクロヘキサンとトルエンとの混合ガスを含む場合がある。このような空気40に対して使用するマスク1では、演算処理部25においてシクロヘキサンだけを含む空気40についての破過時間予測の式11−1,11−2を作成する。次に、トルエンだけを含む外気についての破過時間予測の式11−1,11−2を作成する。次に、それぞれの有害ガスについて、破過時間予測の式11−1,11−2ら算出される破過進行度の式に単位時間毎の濃度を入力する。シクロヘキサンとトルエンとの破過進行度の積算結果の合計が1になった時点がマスク1における混合ガスについての破過時間である。
【0110】
下記の式22は、式16における基準BTに代えて相対破過比(RBT)を使用して破過時間を予測するものである。シクロヘキサンガスの相対破過比を1としたときの、その他の有害ガスの相対破過比は表8に例示されている。ちなみに、これらの相対破過比は当業者間において周知のものである。
BT(SppmBT)=0.00997/RBT×((3273×RBT+452)/Q−((3273×RBT+452)/30−100.3×RBT))×((Co
−0.7863×10
3.9554)×(1+log(300)/log(Co)×(RBT−1)))×T)))
−0.6135)×Ln(S/Co×100)+1)×(−0.0207×(T−20)×1/RBT
1/2+1)×(−0.0124×(RH−50)×1/RBT
1/2+1)・・・式22
上記の式22において、
RBT:相対破過比
1/基準RBT=0.00997/相対破過比
流量依存部分:((3273×RBT+452)/Q−((3273×RBT+452)/30−100.3×RBT))
濃度依存部分:((Co
−0.7863×10
3.9554)×(1+log(300)/log(Co)×(RBT−1)))
任意の破過基準における破過時間比率:((0.2222×(0.00997×((3273×RBT+452)/Q−((3273×RBT+452)/30−100.3×RBT)))
−0.6135)×Ln(S/Co×100)+1)
温度依存部分:(−0.0207×(T−20)×1/RBT
1/2+1)
湿度依存部分:(−0.0124×(RH−50)×1/RBT
1/2+1)
【0111】
表8には、吸収缶KGC−1Sを取り付けた
図1のマスク1を使用して各種有害ガス(試験ガス)の1%破過時間を式22によって予測したときの値と実測したときの値とが、定常流の場合と脈動流の場合とについて示されている。なお、脈動流は、流量Qが30L/minとあるときには、1.5L×20回/minの正弦波の脈動流、流量Qが20L/minとあるときには、1.0L×20回/minの正弦波の脈動流である。脈動流での予測では、式18における単位時間tとして1/600min(0.1秒)が使用されている。
【0112】
下記の式23は、水に対する有機溶剤の溶解率(Hy%)を考慮に入れて破過時間を算出するように式22が補正されたものである。ここでいう有機溶剤は、その蒸気が有害ガスとみなされているものである。
溶解率:水に対する溶解度×100(%)
BT=0.00997/RBT×((3273×RBT+452)/Q−((3273×RBT+452)/30−100.3×RBT))×((Co
−0.7863×10
3.9554)×(1+log(300)/log(Co)×(RBT−1)))×3×RBT)))
−0.6135)×Ln(S/Co×100)+1)×(−0.0207×(T−20)×1/RBT
1/2+1)×(−0.0124×(RH−50)×(100−Hy)/100×1/RBT
1/2+1)・・・・式23
【0113】
表8において、溶解率Hyが20%以上であるMEKやセロソルブ等では、相対湿度RHが80%であるときに、%破過時間の予測値と実測値との差が大きくなる傾向にあった。式23では、式22における湿度依存部分、すなわち(−0.0124×(RH−50)×1/RBT
1/2+1)を(−0.0124×(RH−50)×(100−Hy)/100×1/RBT
1/2+1)と補正することによって、予測値(「溶解率を考慮した予測値」)を実測値に近づけることができた(表8参照)。なお、式23において、溶解率Hyは最大の値を50(%)とした。溶解率が50%以上では破過時間に対する影響に変化がないので、溶解率が100%以上であっても50%として計算した。
【0115】
下記の式24は、
図1のマスク1において、予測式16を有する吸収缶KGC−1Sに代えて使用したろ材の厚さの異なる興研(株)製の吸収缶KGC−1L(ろ材の直径78mm、厚さ22.5mm)について、KGC−1Sと同様な手順によって求めた破過時間予測式である。すなわち、吸収缶KGC−1Lに対しても、表1における温度T、相対湿度RH、濃度Co、流量Qについての試験条件を適用して、濃度Co等が変化するときの破過時間に対する影響を観察した。基準条件には、温度T=20℃、相対湿度RH=50%、濃度Co=300ppm、流量Q=300L/min、1%破過時間(濃度)を採用した。この基準条件に対して、温度T=20℃、相対湿度RH=50%、濃度Co=600ppm、流量Q=80L/minであるときの式24による1%予測破過時間は58.2分であり、1%破過時間の実測値は61.9分であった。同じ試験条件における5ppm予測破過時間は56.7分であり、5ppm破過時間の実測値は60.1分であった。また、濃度Coが1800ppmであり、流量Qが80L/minであるときの1%予測破過時間は22.8分であり、1%破過時間の実測値は23.2分であった。同じ条件における5ppm予測破過時間は18.7分であり、5ppm破過時間の実測値は18.2分であった。このように、吸収缶KGC−1Lの場合にも、破過時間の予測値と実測値とは、よく一致していた。
BT=0.00306×(Co
−0.8541×10
4.6328)×(10300×(1/Q)−24.233)×((0.0724×EXP
(0.0082×Q))×Ln(S/Co×100)+1)・・・ 式24
なお、式24において、
1/基準BT=0.00306
濃度依存部分:(Co
−0.8541×10
4.6328)
流量依存部分:(10300×(1/Q)−24.233)
任意の破過基準におけるは破過時間比率:((0.0724×EXP
(0.0082×Q))×Ln(S/Co×100)+1)
温度Tは20℃、相対湿度RHは50%に固定してある。
【0116】
図12は、実施態様の一例である局所排気装置50の側部断面図である。局所排気装置50もまた、空気浄化装置と呼ぶことのできるものであって、装置50の上流側には作業用ブース55が形成されている。ブース55からは下流側に向かって第1ダクト51が延びている。第1ダクト51の下流側端部は、ろ材3aを有するろ過部3につながっている。ろ過部3からは下流側に向かって第2ダクト52が延びている。第2ダクト52の下流側端部は排気室56につながっている。排気室56には排気用ファン57があって、ブース55の内部の空気60を上流側から下流側へ移動させるとともに、排気室56の外へ清浄空気61として排出することができる。第1ダクト51の内側には、濃度測定部21,流量測定部22,温度測定部23,湿度測定部24それぞれのセンサ21a,22a,23a,24aがセットされている。測定部21,22,23,24のそれぞれは演算処理部25と電気的につながっている。その演算処理部25は、警報器26aやディスプレイ27a等の表示手段を有している。
図12において、測定部21,22,23,24のそれぞれと演算処理部25とは、無線でつなぐことが可能である。演算処理部25と警報器26aやディスプレイ27aも無線でつなぐことが可能である。
【0117】
装置50では、有害ガスがブース55において発生する。この有害ガスを含む空気60は、
図1における空気40に相当するもので、ろ過部3において浄化されて清浄空気61となって排出される。
【0118】
装置50ではまた、ろ過部3の上流側と下流側とにおいての空気60の流量が実質的に同じであるので、流量測定用のセンサ22aがろ過部3の上流側にセットされている。ただし、流量センサ22aは、
図2の例と同じように、ろ過部3の下流側にセットすることもできる。
【0119】
図13は、実施態様の一例である防毒マスク1を示す図である。このマスク1は、送気管70を介して面体2に向かって吸気用空気を供給する送気ユニット71を有し、面体2と送気ユニット71との間には、流量計72と吸着剤ユニット73とが設けられていて、人頭模型75に取り付けられている。図示されてはいないが、防毒マスク1は、
図1と同様な濃度測定部、温度測定部、湿度測定部、演算処理部を有する。送気ユニット71からの吸気用空気の供給量は常に一定であるので、流量計72は、図示例の如く吸着剤73の上流側に設けられていてもよいが、下流側に設けられていてもよい。