(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
自走可能な車体(2)と、該車体(2)に搭載され制御装置(33)によって電子制御されるエンジン(10)と、吐出容量を可変に制御する容量制御機構(13A)を有し前記エンジン(10)により駆動されタンク内の油液を吸込んで圧油を吐出する油圧ポンプ(13)と、該油圧ポンプ(13)から吐出された圧油により駆動される走行用の油圧モータ(24)と、前記車体(2)に設けられ走行時に前記油圧モータ(24)を駆動操作する走行操作装置(27)と、前記車体(2)に設けられ前記油圧モータ(24)による走行速度を少なくとも低速と高速の2段に切換える走行速度切換部材(29)と、前記エンジン(10)の目標回転数を指示する回転数指示装置(28)とを備え、
前記制御装置(33)は、前記エンジン(10)の回転数を前記回転数指示装置(28)で指示された目標回転数に近付けるように前記エンジン(10)を電子制御し、前記油圧ポンプ(13)の吐出圧力と吐出流量とのP−Q特性が前記エンジン(10)の出力トルク(Tr)による馬力曲線に基づいた特性となるように前記容量制御機構(13A)により前記油圧ポンプ(13)の吐出容量を制御してなる建設機械において、
前記制御装置(33)は、
前記エンジン(10)が、エンジン構成部品のいずれかが不調状態となることにより、前記エンジン(10)に供給する燃料噴射量を制限してエンジン出力を低下させるための保護モード運転に設定されているか否かを判定する出力低下判定手段と、
該出力低下判定手段により前記エンジン(10)が保護モード運転に設定されていると判定したときには、前記走行速度切換部材(29)が高速側に切換えられている場合でも、前記走行操作装置(27)の操作による高速側走行速度よりも低い速度に予め設定された低速状態にするため、前記容量制御機構(13A)により前記油圧ポンプ(13)の吐出容量を小容量状態に保つ小容量保持手段とを備え、
かつ前記制御装置(33)は、
前記出力低下判定手段によりエンジン(10)が前記保護モード運転に設定されていると判定するまでの通常運転時は、通常運転時等馬力線の特性線(40)に基づいて前記油圧ポンプ(13)の吐出容量を制御し、
前記エンジン(10)が前記保護モード運転に設定されたときには、前記通常運転時等馬力線の特性線(40)よりも小さい出力低下時等馬力線の特性線(41)に基づいて、前記油圧ポンプ(13)の吐出容量を前記小容量保持手段による小容量に保つ制御を行う構成としたことを特徴とする建設機械。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態による建設機械として小型の油圧ショベルを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0017】
ここで、
図1ないし
図6は本発明の
前提となる参考例に係る小型の油圧ショベルを示している。
【0018】
図中、1は土砂の掘削作業等に用いられる小型の油圧ショベルである。この油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に搭載され、該下部走行体2と共に車体を構成する上部旋回体4と、該上部旋回体4の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置5とを含んで構成されている。
【0019】
ここで、作業装置5は、スイングポスト式の作業装置として構成され、例えばスイングポスト5A、ブーム5B、アーム5C、作業具としてのバケット5D、スイングシリンダ(図示せず)、ブームシリンダ5E、アームシリンダ5Fおよびバケットシリンダ5Gを備えている。また、上部旋回体4は、後述の旋回フレーム6、外装カバー7、キャブ8およびカウンタウエイト9を含んで構成されている。
【0020】
旋回フレーム6は上部旋回体4の一部を構成し、該旋回フレーム6は、旋回装置3を介して下部走行体2上に取付けられている。旋回フレーム6には、その後部側に後述のカウンタウエイト9、エンジン10が設けられ、左前側には後述のキャブ8が設けられている。さらに、旋回フレーム6には、キャブ8とカウンタウエイト9との間に位置して外装カバー7が設けられ、この外装カバー7は、旋回フレーム6、キャブ8およびカウンタウエイト9と共に、エンジン10を内部に収容する機械室を画成するものである。
【0021】
キャブ8は旋回フレーム6の左前側に搭載され、該キャブ8は、オペレータが搭乗する運転室を内部に画成している。キャブ8の内部には、オペレータが着座する運転席、各種の操作レバー(
図3中に後述の走行レバー27Aのみ図示)が配設されている。
【0022】
カウンタウエイト9は上部旋回体4の一部を構成するもので、該カウンタウエイト9は、後述するエンジン10の後側に位置して旋回フレーム6の後端部に取付けられ、作業装置5との重量バランスをとるものである。
図2に示すように、カウンタウエイト9の後面側は、円弧状をなして形成され、上部旋回体4の旋回半径を小さく収める構成となっている。
【0023】
10は旋回フレーム6の後側に横置き状態で配置されたエンジンで、該エンジン10は、前述の如く小型の油圧ショベル1に原動機として搭載されるため、例えば小型のディーゼルエンジンを用いて構成されている。
図2に示すように、エンジン10の左側には、排気ガス通路の一部をなす排気管11が設けられ、該排気管11には後述の排気ガス浄化装置16が接続して設けられている。
【0024】
ここで、エンジン10は、電子制御式エンジンにより構成され、燃料の供給量が電子ガバナ12(
図3参照)により可変に制御される。即ち、この電子ガバナ12は、後述のエンジン制御装置35から出力される制御信号に基づいてエンジン10に供給される燃料の噴射量を可変に制御する。これにより、エンジン10の回転数は、前記制御信号による目標回転数に対応した回転数となるように制御される。
【0025】
油圧ポンプ13はエンジン10の左側に設けられ、該油圧ポンプ13は、作動油タンク(図示せず)と共に油圧源を構成するものである。油圧ポンプ13は、例えば可変容量型の斜板式、斜軸式またはラジアルピストン式油圧ポンプによって構成される。油圧ポンプ13は、容量制御機構としてのポンプ容量可変部13Aを備え、該ポンプ容量可変部13Aは、油圧シリンダを含んだ傾転アクチュエータにより構成されている。ポンプ容量可変部13Aは、後述するポンプ傾転切換弁31からの制御信号(容量制御用のパイロット圧)に従って、油圧ポンプ13の吐出容量を大容量と小容量の2段に切換えて制御するものである。
【0026】
図2に示すように、油圧ポンプ13は、エンジン10の左側に動力伝達装置14を介して取付けられ、この動力伝達装置14によりエンジン10の回転出力が伝えられる。油圧ポンプ13は、エンジン10によって駆動されると、前記作動油タンク内の油液を吸込んで、圧油を後述の方向制御弁25に向けて吐出するものである。
【0027】
熱交換器15はエンジン10の右側に位置して旋回フレーム6上に設けられ、この熱交換器15は、例えばラジエータ、オイルクーラ、インタクーラを含んで構成されている。即ち、熱交換器15は、エンジン10の冷却を行うと共に、前記作動油タンクに戻される圧油(作動油)の冷却も行うものである。
【0028】
16はエンジン10の排気ガスに含まれる有害物質を除去して浄化する排気ガス浄化装置である。
図2に示すように、この排気ガス浄化装置16は、エンジン10の近傍で、かつ動力伝達装置14の上側となる位置に配設されている。排気ガス浄化装置16は、その上流側にエンジン10の排気管11が接続されている。排気ガス浄化装置16は、排気管11と共に排気ガス通路を構成し、上流側から下流側に排気ガスが流通する間に、この排気ガスに含まれる有害物質を除去するものである。
【0029】
即ち、ディーゼルエンジンからなるエンジン10は、高効率で耐久性にも優れている。しかし、エンジン10の排気ガス中には、粒子状物質(PM:Particulate Matter)、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)等の有害物質が含まれている。このため、排気管11に取付けられる排気ガス浄化装置16は、一酸化炭素(CO)を酸化して除去する後述の酸化触媒18と、粒子状物質(PM)を捕集して除去する後述の粒子状物質除去フィルタ19とを含んで構成されている。
【0030】
図3に示すように、排気ガス浄化装置16は、複数の筒体を前,後で着脱可能に連結して構成された筒状のケーシング17を有している。該ケーシング17内には、酸化触媒18(通常、Diesel Oxidation Catalyst、略してDOCと呼ばれる)と、粒子状物質除去フィルタ19(通常、Diesel Particulate Filter、略してDPFと呼ばれる)とが取外し可能に収容されている。
【0031】
前記酸化触媒18は、ケーシング17の内径寸法と同等の外径寸法をもったセラミックス製のセル状筒体からなり、その軸方向には多数の貫通孔(図示せず)が形成され、その内面に貴金属がコーティングされている。酸化触媒18は、所定の温度下で各貫通孔内に排気ガスを流通させることにより、この排気ガスに含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)を酸化して除去し、窒素酸化物(NO)を二酸化窒素(NO2)として除去するものである。
【0032】
粒子状物質除去フィルタ19は、ケーシング17内で酸化触媒18の下流側に配置されている。粒子状物質除去フィルタ19は、エンジン10から排出される排気ガス中の粒子状物質(PM)を捕集すると共に、捕集した粒子状物質を燃焼して除去することにより排気ガスの浄化を行うものである。このため、粒子状物質除去フィルタ19は、例えばセラミックス材料からなる多孔質な部材に軸方向に多数の小孔(図示せず)を設けたセル状筒体により構成されている。これにより、粒子状物質除去フィルタ19は、多数の小孔を介して粒子状物質を捕集し、捕集した粒子状物質は、前述の如く燃焼して除去される。この結果、粒子状物質除去フィルタ19は再生される。
【0033】
排気ガスの排出口20は排気ガス浄化装置16の下流側に設けられている。この排出口20は、粒子状物質除去フィルタ19よりも下流側に位置してケーシング17の出口側に接続されている。排出口20は、例えば浄化処理された後の排気ガスを大気中に放出する煙突を含んで構成される。
【0034】
排気温センサ21は排気ガスの温度を検出するもので、該排気温センサ21は、排気ガス浄化装置16のケーシング17に取付けられ、例えば排気管11側から排出される排気ガスの温度を検出する。排気温センサ21で検出した温度は、検出信号として後述のエンジン制御装置35に出力されるものである。
【0035】
ガス圧センサ22,23は排気ガス浄化装置16のケーシング17に設けられている。
図3に示すように、これらのガス圧センサ22,23は、粒子状物質除去フィルタ19の上流側(入口側)と下流側(出口側)とに互いに離間して配置され、それぞれの検出信号を後述のエンジン制御装置35に出力する。
【0036】
エンジン制御装置35は、ガス圧センサ22で検出した上流側の圧力P1 とガス圧センサ23で検出した下流側の圧力P2 とから、両者の圧力差ΔPを下記の数1式に従って演算する。また、エンジン制御装置35は、圧力差ΔPの演算結果から粒子状物質除去フィルタ19に付着した粒子状物質、未燃焼残留物の堆積量、即ち捕集量を推定するものである。この場合、前記圧力差ΔPは、前記捕集量が少ないときには小さな圧力値となり、前記捕集量が増加するに従って高い圧力値となる。
【0038】
左,右の走行モータ24は油圧ポンプ13から吐出された圧油により駆動される。左,右の走行モータ24は、油圧ショベル1の下部走行体2に設けられた油圧モータにより構成されている。各走行モータ24は、それぞれモータ容量制御機構としてのモータ容量可変部24Aを備え、該モータ容量可変部24Aは、油圧シリンダからなる傾転アクチュエータにより構成されている。モータ容量可変部24Aは、後述する走行速度切換弁30からの信号(傾転制御用のパイロット圧)に従って、走行モータ24の回転速度を少なくとも低速と高速の2段に切換えて制御するものである。
【0039】
なお、油圧ショベル1には、油圧モータ24の他に複数の油圧アクチュエータ(いずれも図示せず)が設けられている。油圧ショベル1に搭載される油圧アクチュエータは、例えば作業装置5のスイングシリンダ(図示せず)、ブームシリンダ5E、アームシリンダ5Fまたはバケットシリンダ5G(
図1参照)を含んで構成される。さらに、これらの油圧アクチュエータには、旋回用の油圧モータ、排土板用の昇降シリンダ(いずれも図示せず)が含まれる。
【0040】
方向制御弁25は走行モータ24用の制御弁である。この方向制御弁25は、油圧ポンプ13と各走行モータ24との間にそれぞれ設けられ、各走行モータ24に供給する圧油の流量と方向を可変に制御する。即ち、各方向制御弁25は、後述の走行用操作弁27からパイロット圧が供給されることにより、中立位置から左,右の切換位置(いずれも図示せず)に切換えられる。なお、方向制御弁25は、左,右の走行モータ24毎に1個ずつ、合計2個設けられるが、
図3中ではまとめて1個として図示している。
【0041】
パイロットポンプ26は前記作動油タンクと共に補助油圧源を構成する補助油圧ポンプである。このパイロットポンプ26は、メインの油圧ポンプ13と共にエンジン10によって回転駆動される。パイロットポンプ26は、前記作動油タンク内から吸込んだ作動油を後述の走行用操作弁27に向けて吐出するものである。
【0042】
27は走行操作装置としての走行用操作弁を示し、該走行用操作弁27は、減圧弁型のパイロット操作弁により構成されている。走行用操作弁27は、上部旋回体4のキャブ8(
図1参照)内に設けられ、オペレータにより傾転操作される走行レバー27Aを有している。走行用操作弁27は、左,右の走行モータ24を個別に遠隔操作するため方向制御弁25に対応して2個配置されている。即ち、各走行用操作弁27は、オペレータが走行レバー27Aを傾転操作したときに、その操作量に対応したパイロット圧を各方向制御弁25の油圧パイロット部(図示せず)に供給する。
【0043】
これにより、方向制御弁25は、前記中立位置から切換位置のいずれかに切換えられる。方向制御弁25が一方の切換位置に切換えられると、走行モータ24は、油圧ポンプ13からの圧油が一方向に供給され、該当する方向(例えば、前進方向)に回転駆動される。一方、方向制御弁25が他方の切換位置に切換えられたときには、走行モータ24は、油圧ポンプ13からの圧油が他方向に供給されて逆方向(例えば、後進方向)に回転駆動されるものである。
【0044】
回転数指示装置28はエンジン10の目標回転数を指示するもので、この回転数指示装置28は、上部旋回体4のキャブ8(
図1参照)内に設けられている。回転数指示装置28は、オペレータによって操作される操作ダイヤル、アップダウンスイッチまたはエンジンレバー(いずれも図示せず)等のいずれかにより構成されている。回転数指示装置28は、オペレータの操作に従った目標回転数の指示信号を後述の車体制御装置34に出力するものである。
【0045】
走行速度選択スイッチ29は油圧ショベル1の走行速度を選択するものである。この走行速度選択スイッチ29は、車両(油圧ショベル1)の走行速度を低速と高速の2段に切換えるものであり、本願発明の構成要件である走行速度切換部材の具体例である。走行速度選択スイッチ29は、上部旋回体4のキャブ8(
図1参照)内に設けられ、オペレータが手動操作することにより、車両の走行速度を低速と高速の2段に切換える。走行速度選択スイッチ29は、このときの選択信号(即ち、低速または高速の選択信号)を後述の車体制御装置34に向けて出力する。
【0046】
走行速度切換弁30は走行モータ24の回転速度を可変に制御するものである。この走行速度切換弁30は、後述する車体制御装置34から出力される制御信号に従って、モータ容量を切換えるための信号(傾転制御用のパイロット圧)を各走行モータ24のモータ容量可変部24Aに出力する。各モータ容量可変部24Aは、走行速度切換弁30から出力されたパイロット圧に従って各走行モータ24の回転速度を低速と高速の2段に切換えるものである。
【0047】
即ち、走行速度切換弁30は、車体制御装置34からの制御信号に従ってON,OFF制御される。走行速度切換弁30がONして開弁されたときには、パイロットポンプ26からのパイロット圧がモータ容量可変部24Aに供給される。これにより、モータ容量可変部24Aは、走行モータ24の傾転角を小さくして回転速度を高速側に切換える。走行速度切換弁30がOFFして閉弁されたときには、前記モータ容量可変部24Aに対するパイロット圧の供給が停止される。これにより、モータ容量可変部24Aは、走行モータ24の傾転角を大きくして回転速度を低速側に切換える制御を行うものである。
【0048】
31は油圧ポンプ13の吐出容量を可変に制御する容量制御機構としてのポンプ傾転切換弁である。このポンプ傾転切換弁31は、後述の車体制御装置34から出力される制御信号に従ってポンプ容量を切換えるための信号(傾転制御用のパイロット圧)を油圧ポンプ13のポンプ容量可変部13Aに出力し、油圧ポンプ13の吐出容量を増減させる。
【0049】
即ち、ポンプ傾転切換弁31は、車体制御装置34からの制御信号に従ってON,OFF制御される。ポンプ傾転切換弁31がONして開弁されたときには、パイロットポンプ26からのパイロット圧がポンプ容量可変部13Aに供給される。これにより、ポンプ容量可変部13Aは、油圧ポンプ13の傾転角を小さくして吐出容量(油圧ポンプ13から吐出される圧油の流量)を減少させる。ポンプ傾転切換弁31がOFFして閉弁されている間は、ポンプ容量可変部13Aに対する前記パイロット圧の供給が停止される。これにより、ポンプ容量可変部13Aは、油圧ポンプ13の傾転角を大きくして吐出容量を増大させるものである。
【0050】
回転センサ32はエンジン10の回転数を検出するもので、該回転センサ32は、エンジン回転数Nの検出信号をエンジン制御装置35に出力する。エンジン制御装置35は、エンジン回転数Nの検出信号に基づいてエンジン10の実回転数を監視し、例えば回転数指示装置28で指示した目標回転数に実回転数を近付けるようにエンジン回転数Nを制御するものである。
【0051】
次に、
本発明の参考例に用いられる制御装置33について説明する。
【0052】
即ち、33は油圧ショベル1の制御装置で、該制御装置33は、車体制御装置34とエンジン制御装置35とを含んで構成されている。車体制御装置34は、回転数指示装置28および走行速度選択スイッチ29から出力される信号に従って走行モータ24の回転速度を可変に制御する制御信号を走行速度切換弁30に出力する。一方、車体制御装置34は、油圧ポンプ13の吐出容量を可変に制御する制御信号をポンプ傾転切換弁31に出力する。
【0053】
車体制御装置34は、ROM,RAM,不揮発性メモリからなる記憶部(図示せず)を有し、この記憶部内には、後述の
図6に示すエンジンの出力低下時における走行速度制御処理、即ちエンジンストールを防止するための制御(以下、エンスト防止制御という)を行う処理プログラムが格納されている。さらに、車体制御装置34は、回転数指示装置28から出力される信号に従ってエンジン制御装置35にエンジン10の目標回転数を指示する指令信号を出力する機能も有している。
【0054】
エンジン制御装置35は、車体制御装置34から出力される前記指令信号と、回転センサ32から出力されるエンジン回転数Nの検出信号とに基づいて予め決められた所定の演算処理を行い、エンジン10の電子ガバナ12に目標燃料噴射量を指示する制御信号を出力する。エンジン10の電子ガバナ12は、その制御信号に従ってエンジン10の燃焼室(図示せず)内に噴射供給すべき燃料の噴射量を増加または減少したり、燃料の噴射を停止したりする。この結果、エンジン10の回転数は、車体制御装置34からの前記指令信号が指示する目標回転数に対応した回転数となるように制御される。
【0055】
エンジン制御装置35は、その入力側が排気温センサ21、ガス圧センサ22,23、回転センサ32および車体制御装置34等に接続され、その出力側はエンジン10の電子ガバナ12および車体制御装置34等に接続されている。また、エンジン制御装置35は、ROM,RAM,不揮発性メモリからなる記憶部(図示せず)を有し、この記憶部内には、エンジン回転数Nを制御するための処理プログラムが格納されている。
【0056】
ここで、エンジン10の出力トルクTr は、通常運転時のエンジン回転数Nに対して
図4に示す特性線36のようなトルク特性を有している。この通常運転時においては、エンジン回転数Nが回転数N1のときにエンジン10の出力トルクTr が最大トルク点36Aとなり、定格出力点36Bではエンジン回転数Nが回転数N2(N2>N1)となる。
【0057】
そこで、通常運転時には、油圧ショベル1(車両)の走行速度を高速段とした場合に、定格出力点36Bよりも出力トルクTr が小さい出力点37Aの位置でエンジン10が運転される。一方、車両の走行速度を低速段とする場合には、前記出力点37Aよりも出力トルクTr が小さい出力点37Bの位置でエンジン10が運転される。
【0058】
電子制御式のエンジン10は、燃料性状および/または使用環境に影響されて、場合によっては、エンジン構成部品(例えば、前述した排気温センサ21、ガス圧センサ22,23、回転センサ32、燃料噴射弁、水温センサを含む)の一部が損傷し、不調状態となることがある。そこで、電子制御式のエンジン10には、このような場合にエンジン本体を保護するための保護モード機能が付加されている。
【0059】
即ち、エンジン10の保護モード運転時には、電子ガバナ12によりエンジン10の燃焼室に向けて供給できる燃料の噴射量が制限される。ここで、
図4に示す特性線38は、エンジン10の保護モード運転による出力低下時のトルクカーブを示している。このように、エンジン10の保護モード運転時には、エンジン10の出力トルクTr が低下し、エンジン回転数Nも低下してしまう。
【0060】
図4に示す特性線38のように、保護モード運転によるエンジン出力の低下状態では、車両の走行速度を高速段に設定すると、前述した通常運転時の出力点37Aと出力トルクTr がほぼ等しい出力点38Aの位置でエンジン10が運転される。一方、車両の走行速度を低速段とした場合には、出力トルクTr が通常運転時の出力点37Bとほぼ等しい出力点38Bの位置でエンジン10が運転される。
【0061】
この場合、車両の走行速度を低速段とし、出力トルクTr が出力点38Bの位置でエンジン10を運転するときには、エンジンストールを起こすことはない。しかし、車両の走行速度を高速段に設定した場合は、出力トルクTr が出力点38Aの位置でエンジン10が運転される。このため、車両の発進時の動き出しで瞬間的に過剰なトルクが作用すると、出力トルクTr が出力点38Aの位置から出力点38Cに移動し、エンジンストールを起こす可能性が高くなる。
【0062】
図5は油圧ショベル1の掘削作業時における油圧ポンプ13のP−Q(圧力−流量)特性を示している。即ち、掘削作業時において油圧ポンプ13は、
図5に示す特性線39の範囲内で、吐出圧力(P)と吐出流量(Q)とが制御されるように駆動される。特性線40は、通常運転時におけるエンジン10の馬力曲線を示し、特性線41は、エンジンの出力低下状態における馬力曲線を示している。
【0063】
車両の走行速度を高速段に設定した場合に、油圧ポンプ13の吐出圧力Pと吐出流量Qの関係は、例えば
図5中の特性線39のうち、点42Aの位置として表すことができる。一方、走行速度を低速段に設定した場合には、油圧ポンプ13の吐出圧力Pと流量Qの関係は、例えば点42Bの位置として表すことができる。
【0064】
参考例による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
【0065】
油圧ショベル1のオペレータは、上部旋回体4のキャブ8に搭乗し、エンジン10を始動して油圧ポンプ13とパイロットポンプ26を駆動する。これにより、油圧ポンプ13から圧油が吐出され、この圧油は方向制御弁25を介して左,右の走行モータ24に供給される。一方、これ以外の方向制御弁(図示せず)からは他の油圧アクチュエータ(例えば、旋回用の油圧モータ、ブームシリンダ5E、アームシリンダ5F、バケットシリンダ5Gまたは他の油圧シリンダ)に対して圧油が供給される。
【0066】
キャブ8に搭乗したオペレータが走行レバー27Aを操作したときには、油圧ポンプ13からの圧油が方向制御弁25を介して左,右の走行モータ24に供給され、各走行モータ24が回転駆動される。これにより、油圧ショベル1の下部走行体2を走行駆動し、車両を前進または後退させることができる。さらに、キャブ8内のオペレータが作業用の操作レバーを操作することにより、作業装置5を俯仰動させて土砂の掘削作業を行うことができる。
【0067】
エンジン10の運転時には、その排気管11から有害物質である粒子状物質が排出される。このときに排気ガス浄化装置16は、例えば酸化触媒18によって排気ガス中の炭化水素(HC)、窒素酸化物(NO)、一酸化炭素(CO)を酸化して除去することができる。一方、粒子状物質除去フィルタ19は、排気ガス中に含まれる粒子状物質を捕集し、捕集した粒子状物質を燃焼して除去(再生)する。これにより、浄化した排気ガスを下流側の排出口20から外部に排出することができる。
【0068】
ところで、排気ガスの浄化処理を行う電子制御式のエンジン10は、燃料性状および/または使用環境に影響されて、場合によっては、エンジン10の構成部品の一部が損傷し、不調状態となることがある。そこで、電子制御式のエンジン10には、このような場合にエンジン本体を保護するための保護モード機能が付加されている。エンジン10の保護モード運転時には、電子ガバナ12による燃料噴射量を制限してエンジン出力を低下させることにより、エンジン10の不意な作動停止を防ぐようにしている。しかし、保護モード運転によりエンジン出力が低下している場合でも、オペレータがこれに気付かずに、走行速度選択スイッチ29を高速側に切換えてしまうと、エンジン10の負荷が増大して過負荷状態となり、エンジンストールを起こす虞れがある。
【0069】
そこで、
本発明の参考例は、車体制御装置34とエンジン制御装置35とからなる制御装置33において、
図6に示すプログラムに沿ったエンジン10のエンジンストール防止制御、即ちエンジン10の出力低下時における走行速度制御処理を行う構成としている。
【0070】
図6に示すプログラムのうちステップ6は、
参考例の構成要件である出力低下判定手段であり、この出力低下判定手段は、エンジン10に供給する燃料噴射量が制限されてエンジン出力が低下状態にあるか否かを判定する。一方、ステップ6の判定処理で「YES」と判定した場合のステップ2〜4にわたる処理は、
参考例の構成要件である低速制御手段である。この低速制御手段は、走行速度選択スイッチ29が高速側に切換えられている場合でも、走行用操作弁27の操作時における走行速度を高速よりも低く抑制された低速状態に制御する処理を行うものである。
【0071】
低速制御手段により走行速度を高速よりも低く抑制された低速状態に制御する処理とは、走行速度選択スイッチ29を低速側に切換えた場合の低速回転に限らず、これ以外の低速回転を予め設定しておいてもよい。なお、以下の
参考例における説明では、走行速度選択スイッチ29を低速側に切換えた場合の低速回転を代表例として挙げて説明するものである。
【0072】
即ち、エンジン10の稼働によって
図6の処理動作がスタートすると、ステップ1では走行速度選択スイッチ29が高速側に切換えられているか否かを判定する。ステップ1で「NO」と判定する間は、走行速度選択スイッチ29が低速側に切換えられているので、走行モータ24で発生する負荷圧を、例えばエンジンストールが発生し易い圧力値よりも低い圧力に抑えることができる。
【0073】
走行速度選択スイッチ29が低速側に切換えられている間は、
図4に示す通常運転時の特性線36のように、走行低速時の出力点37Bの位置でエンジン10が運転され、このときの出力トルクTr は、走行高速時の出力点37Aよりも小さい値となっている。また、エンジン10の構成部品に不具合が発生した場合、電子ガバナ12による燃料の噴射量が制限された保護モード運転が行われる。しかし、このような保護モード運転時(即ち、
図4中に示す特性線38のように、エンジン10の出力トルクTr が低下した状態)でも、走行速度選択スイッチ29が低速側に切換えられている間は、出力トルクTr が出力点38Bの位置でエンジン10が運転されるため、エンジンストールを起こすことはない。
【0074】
そこで、次のステップ2では、走行速度切換弁30をOFFして閉弁状態とし、モータ容量可変部24Aに対するパイロット圧の供給を停止する。これにより、モータ容量可変部24Aは、走行モータ24の傾転角を大きくして回転速度を低速側に切換える制御を行う。
【0075】
ステップ3では、走行レバー27Aが操作されているか否かを判定し、「YES」と判定する間は、次のステップ4で低速走行制御を行い、走行モータ24を低速段で駆動することにより、車両を低速状態で走行駆動する。また、ステップ3で「NO」と判定する間は、オペレータが走行レバー27Aを操作することなく、中立位置に戻しているので、車両の走行動作を停止させる制御を行い、次のステップ5でリターンする。
【0076】
一方、ステップ1で「YES」と判定したときには、走行速度選択スイッチ29が高速側に切換えられているので、次のステップ6では、エンジン10が前記保護モード運転によりエンジン出力が低下された状態にあるか否かを判定する。ステップ6で「NO」と判定するときは、エンジン10が通常モードで運転されているので、
図4中に示す特性線36のように、走行高速時の出力点37Aの位置でエンジン10の運転を続けることができる。
【0077】
そこで、次のステップ7では、走行速度切換弁30をONして開弁状態とし、パイロットポンプ26からのパイロット圧をモータ容量可変部24Aに供給する。これにより、モータ容量可変部24Aは、走行モータ24の傾転角を小さくして回転速度を高速側に切換える制御を行う。
【0078】
ステップ8では、走行レバー27Aが操作されているか否かを判定し、「YES」と判定する間は、次のステップ9で高速走行制御を行い、走行モータ24を高速段で駆動することにより、車両を高速状態で走行駆動する。また、ステップ8で「NO」と判定する間は、オペレータが走行レバー27Aを操作することなく、中立位置に戻しているので、車両の走行動作を停止させる制御を行い、次のステップ5でリターンする。
【0079】
しかし、ステップ6で「YES」と判定したときには、エンジン10が保護モード運転により、
図4中の特性線38の如くエンジン出力が低下された状態にある。このため、走行速度選択スイッチ29が高速側に切換えられている場合でも、車両の走行速度を低速状態に保つ制御を行う。即ち、この場合にはステップ2に移って、走行速度切換弁30をOFFして閉弁状態とし、モータ容量可変部24Aに対するパイロット圧の供給を停止する。これにより、モータ容量可変部24Aは、走行モータ24の傾転角を大きくして回転速度を低速側に切換える制御を行い、その後はステップ3以降の制御を続ける。
【0080】
かくして、
本発明の参考例によれば、走行速度選択スイッチ29が高速側に切換えられている場合でも、エンジン出力の低下時には車両の走行速度を低速状態に保つことができ、走行モータ24の負荷圧としてエンジン10が油圧ポンプ13から受ける負荷を小さく抑えることできる。
【0081】
従って、
参考例によれば、油圧ショベル1のエンジン出力が低下し燃料噴射量が制限された状態となっても、車両の走行速度を低速状態に保持することにより、エンジンストールの発生を抑えることができる。これにより、油圧ショベル1を修理工場または整備場所まで低速で自走させつつ、移動することができ、その後の修理作業を円滑に行うことができる。
【0082】
次に、
図7ないし
図9は本発明
の実施の形態を示している。
本実施の形態では、前述した
参考例と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。しかし、
本実施の形態の特徴は、燃料噴射量が制限されてエンジン出力が低下したときに、ポンプ容量可変部13A(
図3参照)により油圧ポンプ13の吐出容量を小容量状態に切換える構成としたことにある。
【0083】
ここで、
図7に示す処理動作がスタートすると、ステップ11〜ステップ16にわたる処理を、前記
参考例による
図6に示すステップ1〜ステップ6と同様に行う。ステップ16で「NO」と判定したときは、エンジン10が通常モードで運転されているので、
図8中に示す特性線36のように、走行高速時の出力点37Aの位置でエンジン10の運転を続けることができる。
【0084】
そこで、次のステップ17では、ポンプ傾転切換弁31をOFFして閉弁状態とし、ポンプ容量可変部13Aに対するパイロット圧の供給を停止する。これにより、ポンプ容量可変部13Aは、油圧ポンプ13の傾転角を大きくした状態に保ち、油圧ポンプ13の吐出容量を大容量状態に設定する。なお、この場合の油圧ポンプ13は、
参考例による
図6に示す制御処理と同様の吐出容量状態と考えてもよい。そして、次なるステップ18〜20にわたる処理は、前記
参考例による
図6に示すステップ7〜ステップ9と同様に行う。
【0085】
一方、ステップ16で「YES」と判定したときには、エンジン10が保護モード運転により、
図8中の特性線38に示す如くエンジン出力が低下された状態にある。このため、走行速度選択スイッチ29が高速側に切換えられている場合でも、油圧ポンプ13の吐出容量を小容量に切換えることにより、結果として車両の走行速度を低速状態に保つ制御を行う。
【0086】
即ち、次のステップ21では、ポンプ傾転切換弁31をONして開弁状態とし、パイロットポンプ26からのパイロット圧をポンプ容量可変部13Aに供給する。これにより、ポンプ容量可変部13Aは、油圧ポンプ13の傾転角を小さくして吐出容量を小容量側に切換える制御を行う。このため、例えば掘削作業時における油圧ポンプ13の特性は、
図9中に示す通常モード時の特性線39から出力低下(保護モード)時の特性線52まで下がってしまう。
【0087】
次のステップ22では、前記ステップ11の判定処理により走行速度選択スイッチ29が高速側に切換えられているので、走行速度切換弁30をONして開弁状態とし、パイロットポンプ26からのパイロット圧をモータ容量可変部24Aに供給する。これにより、モータ容量可変部24Aは、走行モータ24の傾転角を小さくして回転速度を高速側に切換える制御を行う。
【0088】
しかし、この場合には、油圧ポンプ13の吐出容量が小容量側に切換えられているため、エンジン10が保護モード運転により、
図8中の特性線38の如くエンジン出力が低下された状態でも、エンジン10の出力トルクTr は、走行高速時の出力点37Aから出力点51Aに移った状態でエンジン10が運転される。このため、エンジン10は、油圧ポンプ13からの負荷が過負荷状態になることはなく、エンジンストールを起こすこともない。
【0089】
即ち、次のステップ23では走行レバー27Aが操作されているか否かを判定し、「YES」と判定する間は、次のステップ24で高速走行制御を行い、走行モータ24を高速段で駆動する。しかし、油圧ポンプ13の吐出容量が小容量となっているので、見掛け上の高速走行制御が行われるだけであり、車両は実際には低速状態で走行する。また、ステップ23で「NO」と判定する間は、オペレータが走行レバー27Aを操作することなく、中立位置に戻しているので、車両の走行動作を停止させる制御を行い、次のステップ15でリターンする。
【0090】
一方、エンジン10が保護モードによりエンジン出力の低下状態で運転される間は、走行速度選択スイッチ29が低速側に切換えられている限り、ステップ11で「NO」と判定される。このため、次のステップ12で走行速度
切換弁30をOFFして閉弁状態とし、モータ容量可変部24Aに対するパイロット圧の供給を停止する。これにより、モータ容量可変部24Aは、走行モータ24の傾転角を大きくして回転速度を低速側に切換える制御を行い、ステップ14では低速走行制御を行う。
【0091】
この場合、油圧ポンプ13の吐出容量が小容量側に切換えられているため、
図8中の特性線38の如くエンジン出力が低下された状態で、エンジン10の出力トルクTr は、走行低速時の出力点37Bから出力点51Bに移った状態でエンジン10が運転される。このため、エンジン10は、油圧ポンプ13からの負荷が過負荷状態になることはなく、エンジンストールを起こすこともない。
【0092】
図9に示すように、油圧ポンプ13の吐出圧力Pと吐出流量Qの関係は、車両の走行速度を高速段に設定した場合に、通常運転時における点42Aの位置から保護モード運転時には点53Aの位置に変わる。一方、走行速度を低速段に設定した場合には、油圧ポンプ13の吐出圧力Pと吐出流量Qの関係は、通常運転時における点42Bの位置から保護モード運転時には点53Bの位置に変わる。
【0093】
かくして、このように構成される
本実施の形態でも、エンジン10の燃料噴射量が制限されてエンジン出力が低下したときに、ポンプ容量可変部13Aによって油圧ポンプ13の吐出容量を小容量に切換えることにより、エンジンストールの発生を防止でき、
前記参考例と同様な効果を得ることができる。
【0094】
特に
、実施の形態では、エンジン出力の低下時には油圧ポンプ13の吐出容量を小容量に切換えることにより、車両の走行速度を低速状態に保つことができる。このため、走行速度選択スイッチ29により高速側が選択され、走行モータ24が高速段に切換えられている場合でも、車両の走行速度を低速状態に抑えることができる。
【0095】
なお、前記
参考例では、
図6に示すステップ6の判定処理が本発明の構成要件である出力低下判定手段の具体例を示している。また、ステップ6で「YES」と判定した場合のステップ2〜4にわたる処理が、低速制御手段の具体例を示している。一方、前
記実施の形態では、
図7に示すステップ16の判定処理が本発明の構成要件である出力低下判定手段の具体例を示している。また、ステップ21の処理が、小容量保持手段の具体例を示している。
【0096】
前記
参考例では、油圧ポンプ13を可変容量型の油圧ポンプによって構成する場合を例に挙げて説明した。しかし、
前記参考例にあっては、油圧ポンプ13の吐出容量を変える必要はないので、例えば固定容量型の斜板式、斜軸式またはラジアルピストン式の油圧ポンプを用いてもよい。
【0097】
前記
参考例では、走行速度切換部材の具体例として、走行速度選択スイッチ29により車両(油圧ショベル1)の走行速度を低速と高速の2段に切換える場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば車両の走行速度を低速と高速との間で、3段階または4段階以上で切換える構成とした建設機械であってもよい。また、走行速度切換部材としては、走行速度選択スイッチ29に代表される切換スイッチ以外に、速度切換レバー、回転式のダイヤル等の他の操作部材を用いてもよい。いずれの場合でも、エンジンの出力低下時に車両の走行速度を低速状態に設定する構成であればよい。この点
は実施の形態についても同様である。
【0098】
前記
参考例では、
図6中のステップ6で「YES」と判定した場合のステップ2〜4にわたる処理(低速制御手段)において、車両の走行速度を低速状態に保つ処理を行う場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこのように走行速度選択スイッチ29が低速側に切換えられているときと同じ低速回転に限るものではない。即ち、走行速度選択スイッチ29により設定される高速よりも低く設定された所望の低速回転で制御する構成としてもよい。この点
は実施の形態についても同様である。
【0099】
前述し
た実施の形態では、スイングポスト式の作業装置5を備えた油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明に係る建設機械はこれに限るものではなく、例えばブームを下ブームと上ブームとにより構成したオフセットブーム式の作業装置を備えた油圧ショベルに適用してもよい。さらに、ブーム、アームおよびバケット(作業具)からなる通常のモノブーム式と呼ばれる一般的な型式の作業装置を備えた油圧ショベルに適用してもよい。
【0100】
さらに、前述し
た実施の形態では、建設機械として小型の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明に係る建設機械はこれに限るものではなく、例えば中型以上の油圧ショベルであってもよい。さらに、ホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベル、ホイールローダ、フォークリフト、油圧クレーン、ダンプトラックを含む建設機械にも広く適用することができるものである。