(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873878
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】切削工具および接線方向切削挿入部用の挿入部ホルダー
(51)【国際特許分類】
B23B 27/16 20060101AFI20160216BHJP
B23B 27/14 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
B23B27/16 Z
B23B27/16 A
B23B27/14 C
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-539395(P2013-539395)
(86)(22)【出願日】2011年10月4日
(65)【公表番号】特表2013-542862(P2013-542862A)
(43)【公表日】2013年11月28日
(86)【国際出願番号】IL2011000773
(87)【国際公開番号】WO2012066529
(87)【国際公開日】20120524
【審査請求日】2014年8月14日
(31)【優先権主張番号】209396
(32)【優先日】2010年11月17日
(33)【優先権主張国】IL
(73)【特許権者】
【識別番号】306037920
【氏名又は名称】イスカーリミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グリゴリ ネイマン
(72)【発明者】
【氏名】ユーリ ダビドビ
【審査官】
齊藤 彬
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−243832(JP,A)
【文献】
特表2005−518949(JP,A)
【文献】
特表2008−543598(JP,A)
【文献】
特開平06−126511(JP,A)
【文献】
特開2006−255883(JP,A)
【文献】
特開2008−188763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/16
B23B 27/14
B23C 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接線方向切削挿入部を保持するための挿入部ホルダー(22)であって、
ホルダー前面(30)と、
挿入部ポケット(26)であって、
後面(38)と、
底面(36)と、
挿入部締め具用穴(58)および第1のベース当接隆起部(52)、第2のベース当接隆起部(54)、および第3のベース当接隆起部(56)を含む、3つの相隔たるベース当接隆起部を備えるベース面(40)と、を備える挿入部ポケットと
を具備し、
前記第1のベース当接隆起部(52)および前記第2のベース当接隆起部(54)は、前記ホルダー前面(30)と前記挿入部締め具用穴(58)との間に配置され、
前記第3のベース当接隆起部(56)は、前記挿入部締め具用穴(58)と前記挿入部ポケット(26)の前記後面(38)との間に配置され、
前記第2のベース当接隆起部(54)は、前記第3のベース当接隆起部(56)よりも前記底面(36)から遠く、
前記第3のベース当接隆起部(56)は、前記第1のベース当接隆起部(52)よりも前記底面(36)から遠く、
前記第1のベース当接隆起部(52)、前記第2のベース当接隆起部(54)、および前記第3のベース当接隆起部(56)は、第1のベース当接面(60)、第2のベース当接面(62)、および第3のベース当接面(64)をそれぞれ備え、
前記第1のベース当接面(60)、前記第2のベース当接面(62)、および前記第3のベース当接面(64)は、平坦であり、また同一平面にある、
ことを特徴とする挿入部ホルダー(22)。
【請求項2】
前記第1のベース当接隆起部(52)および前記第2のベース当接隆起部(54)は、前記底面(36)に垂直な直線(L)にそって位置合わせされ、
前記第3のベース当接隆起部(56)は、前記底面(36)から前記挿入部締め具用穴(58)と同じ距離にあることを特徴とする請求項1に記載の挿入部ホルダー(22)。
【請求項3】
前記挿入部締め具用穴(58)は中心(C)を有し、
前記ベース当接面(60、62、64)は、前記挿入部締め具用穴(58)の前記中心(C)が前記3つのベース当接面(60、62、64)の中心を接続する仮想三角形(T1)内に収まるように前記ベース面(40)上に互いに対して配置されることを特徴とする請求項1に記載の挿入部ホルダー(22)。
【請求項4】
前記ベース面(40)、前記後面(38)、および前記底面(36)は、互いに対して相互に垂直であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の挿入部ホルダー(22)。
【請求項5】
前記底面(36)は、シムネジ穴(42)を備え、
前記シムネジ穴(42)および前記挿入部締め具用穴(58)は、互いに垂直であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の挿入部ホルダー(22)。
【請求項6】
請求項1に記載の前記挿入部ホルダー(22)と、
前記挿入部ポケット(26)に締め具(28)で解放可能に保持されている接線方向切削挿入部(24)と、を備えることを特徴とする切削工具(20)。
【請求項7】
前記接線方向切削挿入部(24)は、
2つの対向する端面(66)と、
間に延在する周囲側面(68)であって、
2つの同一の対向する主側面(70)と、
2つの同一の対向する副側面(72)と、を備える周囲側面(68)とを備え、
前記接線方向切削挿入部(24)を上から見たときに、それぞれの主側面(70)は凹んでおり、中心に位置する陥凹部(74)は前記端面(66)の間に延在し、
前記第1のベース当接面(60)および前記第2のベース当接面(62)は、前記陥凹部(74)の一方の側部上の作業主側面(70)に当接し、
前記第3のベース当接面(64)は、前記陥凹部(74)の他方の側部上の前記作業主側面(70)に当接することを特徴とする請求項6に記載の切削工具(20)。
【請求項8】
前記切削挿入部の主側面(70)は、研削されていないことを特徴とする請求項7に記載の切削工具(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願の主題は、接線方向切削挿入部(tangential cutting insert)が挿入部ホルダーの挿入部ポケット(insert pocket)内に解放可能に保持されるタイプの挿入部ホルダー(insert holder)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
接線方向切削挿入部および挿入部ホルダーが開示されている(例えば、特許文献1参照)。挿入部ホルダーの挿入部ポケット内に設置されると、切削挿入部の主側面は2つの理論的に平行な接触線上にある4つの点で挿入部ホルダーのベース面に当接する。
【0003】
しかし、切削挿入部の製造時、特に切削挿入部の焼結時に、挿入部の幾何学的形状は歪むことがあり、この結果、接触線が歪み、例えば、非直線的なものになる可能性がある。これにより延いては、挿入部ポケット内に配置されたときに切削挿入部が安定した位置に設置されないことがある。このような切削挿入部の場合、主側面を研削することによってこの問題を解決することが常に可能であるとは限らない。例えば、特に主側面が切れ刃の間に延在する場合には、主側面を研削することは望ましくないことがあり、切れ刃を研削することは望ましくない。
【0004】
本発明の目的は、前述の不都合点を著しく低減するか、または解消する切削工具用の挿入部ホルダーを実現することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,073,987号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願の主題によれば、接線方向切削挿入部を保持するための挿入部ホルダーが実現され、挿入部ホルダーは
ホルダー前面と、
挿入部ポケットであって、
後面と、
底面と、
締め具用穴および第1のベース当接隆起部、第2のベース当接隆起部、および第3のベース当接隆起部を含む、3つの相隔てて並ぶベース当接隆起部(base abutment protuberances)を備えるベース面とを備える挿入部ポケットとを具備し、
第1のベース当接隆起部および第2のベース当接隆起部は、ホルダー前面と締め具用穴との間に配置され、
第3のベース当接隆起部は、締め具用穴と挿入部ポケットの後面との間に配置され、
第2のベース当接隆起部は、第3のベース当接隆起部よりも底面から遠く、
第3のベース当接隆起部は、第1のベース当接隆起部よりも底面から遠く、
第1のベース当接隆起部、第2のベース当接隆起部、および第3のベース当接隆起部は、第1のベース当接面、第2のベース当接面、および第3のベース当接面をそれぞれ備える。
【0007】
さらに、本出願の主題によれば、切削工具も実現され、これは
挿入部ホルダーと、
挿入部ポケット内の締め具で解放可能に保持されている接線方向切削挿入部と、を備える。
【0008】
接線方向切削挿入部は、
2つの対向する端面と、
間に延在する周囲側面であって、
2つの同一の対向する主側面と、
2つの同一の対向する副側面と、を備える周囲側面とを備え、
切削挿入部を上から見たときに、それぞれの主側面は凹んでおり、中心に位置する陥凹部は端面の間に延在し、
第1のベース当接面および第2のベース当接面は、陥凹部の一方の側部上の作業主側面(operative major side surface)に当接し、
第3のベース当接面は、陥凹部の他方の側部上の作業主側面に当接する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本出願の主題をよりよく理解できるように、また主題が実際にどのようになされうるかを示すために、添付図面を参照するものとする。
【
図2】
図1に示されている切削工具の分解斜視図である。
【
図3】
図1に示されている挿入部ホルダーの斜視図である。
【
図4】
図3に示されている挿入部ホルダーの上面図である。
【
図5】
図3に示されている挿入部ホルダーの側面図である。
【
図6】
図3に示されている挿入部ホルダーの正面図である。
【
図7】
図1に示されている切削挿入部の斜視図である。
【
図8】
図7に示されている切削挿入部の上面図である。
【0010】
簡単のため、また説明を分かりやすくするため、図に示されている要素は、必ずしも正確にまたは縮尺通りに描かれてはいないことは理解されるであろう。例えば、それらの要素のうちのいくつかの寸法は、分かりやすくするため他の要素に比べて誇張されている場合があるか、またはいくつかの物理的構成要素が1つの機能ブロックもしくは要素内に詰め込まれていることがある。さらに、適切に考慮された場合、複数の図にわたって参照番号を繰り返し、対応する、または類似の要素を示すことがある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明では、本出願のさまざまな態様が説明される。説明を目的として、本出願を完全に理解できるように、特定の構成および詳細が述べられている。しかし、当業者にとっては、本出願が本明細書に提示されている具体的詳細がなくても実施されうることは明白であろう。さらに、よく知られている特徴は、本出願をわかりにくくしないために省かれるか、または簡素化されうる。
【0012】
最初に、切削工具20を示している、
図1から
図2を参照する。切削工具20は、挿入部ポケット26を有する挿入部ホルダー22を備え、接線方向切削挿入部24が挿入部ポケット26内に取り外し可能に保持される。切削工具20は前方から後方への方向を画定する縦軸Aを有し、切削挿入部24は切削工具20の前方端に配置されている。切削挿入部24は、締め具28で挿入部ポケット26内に固定される。挿入部ホルダー22は第1の材料から、切削挿入部24は第2のより硬い材料から製造されうる。挿入部ホルダー22は、ホルダー前面30、ホルダー側面32、ホルダー上面34、および挿入部ポケット26を有する。
【0013】
挿入部ポケット26を示している、
図3から
図6を参照する。挿入部ポケット26は、底面36、後面38、ベース面40を有する。ベース面40、後面38、および底面36は、互いに対して相互に垂直になっているものとしてよい。底面36は、実質的に平面であるものとしてよい。底面36は、シム46を底面36に固定するためにシムネジ44を受け入れる、中心軸Bを有するシムネジ穴42を有することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0014】
後面38は、実質的に平面であってよく、そこから前方に突き出る後部当接隆起部48を有する。
図6に示されているように、後部当接隆起部48は、ホルダー側面32に隣接し、底面36とホルダー上面34との間のほぼ中間に配置されうる。後部当接隆起部48は、後部当接面50を有することができる。後部当接面50は、平坦であってもよい。後部当接隆起部48は、矩形であってもよい。
【0015】
ベース面40は、実質的に平面であってもよく、3つの相隔てて並ぶベース当接隆起部である、第1のベース当接隆起部52、第2のベース当接隆起部54、および第3のベース当接隆起部56を備える。ベース面40は、中心Cおよび中心軸Dを有する挿入部締め具用穴58も備え、挿入部締め具用穴58および底面36のシムネジ穴42は
図3に示されているように互いに一般的に垂直である。つまり、シムネジ穴42の中心軸Bおよび挿入部締め具用穴58の中心軸Dは、一般的に互いに垂直である。第1および第2のベース当接隆起部52、54は、ホルダー前面30と挿入部締め具用穴58との間に配置され、第3のベース当接隆起部56は、挿入部締め具用穴58と挿入部ポケット26の後面38との間に配置される。第1および第2のベース当接隆起部52、54は、底面36に対して垂直な直線Lにそって位置合わせされ、第2のベース当接隆起部54は第3のベース当接隆起部56よりも底面36から遠い。第3のベース当接隆起部56は、第1のベース当接隆起部52よりも底面36から遠くに配置され、底面36からの距離は挿入部締め具用穴58と実質的に同じであってよい。
【0016】
それぞれのベース当接隆起部52、54、56は、各ベース当接面60、62、64を備え、それぞれのベース当接面60、62、64は、平坦であってもよく、3つのベース当接面60、62、64は、同一平面であってもよい。それぞれのベース当接面60、62、64は、矩形とし、安定した当接領域を形成することができる。ベース当接面60、62、64は、挿入部締め具用穴58の中心Cが3つのベース当接面60、62、64の中心を接続する仮想三角形T1内に収まるようにベース面40上に互いに相対的に配置されうる。3つのベース当接面60、62、64は、平坦で、同一平面であるのが好ましいが、いくつかの実施形態では、3つのベース当接面は、それぞれ、以下で説明されるように当接が生じる挿入陥凹部74の対応する部分の輪郭に適合する少し凸状になっている表面を有することができる。
【0017】
図7に示されているように、切削挿入部24は、2つの対向する端面66およびこれら2つの端面66の間に延在する周囲側面68を有する。周囲側面68は、2つの同一の対向する主側面70と2つの同一の対向する副側面72を備える。
図8に示されているように、切削挿入部24のそれぞれの主側面70は凹んでおり、中心に位置する陥凹部74は端面66の間に延在する。主側面70および端面66は、主切れ刃76で交わる。
【0018】
切削挿入部24が挿入部ポケット26内に設置されると、切削挿入部24の作業主側面70、作業副側面72、および作業端面66は挿入部ポケット26と係合し、第1および第2のベース当接面60、62は陥凹部74の一方の側部上の各第1および第2の当接領域で作業主側面70に当接し、第3のベース当接面64は陥凹部74の他方の側部上の第3の当接領域で作業主側面70に当接し、後部当接面50は第4の当接領域で作業副側面72に当接する。切削挿入部24の作業端面66は、シム46と係合する。
【0019】
これら3つのベース当接隆起部52、54、56は、切削挿入部24の作業主側面70が平面でなくても切削挿入部24用の安定した座部を形成する。
【0020】
本出願は、ある程度具体的に説明されているけれども、以下の請求項で述べているように本発明の精神または範囲から逸脱することなく、さまざまな変更および修正を加えることが可能であることは理解されるであろう。