【実施例1】
【0020】
図1は、実施例1におけるリードフレームの全体構造図である。
図1(A)はリードフレームの平面図、また、
図1(B)はその側面図である。
【0021】
10はリードフレームである。リードフレーム10は、例えば、銀または銀合金の白色のメッキ層が表面に形成された銅合金からなり、複数の発光チップを実装するために設けられる。後述のように、リードフレーム10に複数の発光チップの実装及びトランスファモールドによる樹脂モールドが行われた後、これをダイシングすることにより、複数のLEDパッケージ(発光デバイス)が完成する。
【0022】
20はリード形成孔(抜き孔)である。リード形成孔20は、後述する発光チップ90(
図7、8参照)の実装位置ごとにリードフレーム10をプレス加工で打ち抜くことによって複数形成されて、インナーリードを形成する。また、リード形成孔20は発光チップの一対の電極間を絶縁するため、つまり後述するインナーリード13、14(
図2参照)間を絶縁するために設けられている。
【0023】
図1(A)に示されるように、リードフレーム10に形成された複数のリード形成孔20は、いずれも同様の大きさ及び形状を有している。これらのリード形成孔20のそれぞれは、本実施例における一個のLEDパッケージの外形の大きさと略同一に形成され、一個のLEDパッケージの一部を構成する。
【0024】
ただし、後述のように、一個のLEDパッケージに複数の発光チップを実装することもできる。この場合、例えば、領域150のように、四個のリード形成孔20のそれぞれに一個の発光チップが搭載され、一つのLEDパッケージが構成される。
【0025】
18はハーフエッジである。ハーフエッジ18は、後述のトランスファモールド時に金型のゲートから注入された樹脂をリード形成孔20に通過させるゲートの一部として機能する。また、ハーフエッジ18は、ゲートブレイクによってリード形成孔20に充填された樹脂が抜け落ちてしまうのを防止するために設けられている。
【0026】
なお、
図1(B)に示されるように、リードフレーム10はフラットな平板形状に形成されている。
【0027】
図2は、実施例1におけるリードフレームの要部拡大図である。
図2(A)はリードフレームの拡大平面図、
図2(B)はB−B断面図、
図2(C)はC−C断面図、
図2(D)はリードフレームの拡大底面図である。なお、
図2(B)において、本図の左側がリードフレームの上面側であり、右側がリードフレームの下面側である。
【0028】
図2(A)乃至
図2(D)に示されるように、各リード形成孔20における縁部の一部には、ハーフエッジ12が形成されている。具体的には、ハーフエッジ12は、同図のB−B断面において各リード形成孔20が下面に向けて凸となるような形状に形成されている。ハーフエッジ12は、リード形成孔20に充填された樹脂をリードフレーム10に確実に密着させるため、すなわち樹脂とリードフレームの接合性を向上させるために設けられている。
【0029】
本実施例では、ハーフエッジ12は、リード形成孔20を構成するリードフレーム10の端部の一部にのみ形成されている。ただし、これに限定されるものではなく、ハーフエッジ12を
図2に示される領域以外の部分に形成することや、ハーフエッジ12をリード形成孔20の全周に形成することも可能である。
【0030】
また、本実施例では、
図2(A)に示されるように、ハーフエッジ12はリードフレーム10の上面側に形成されているが、これに限定されるものではなく、ハーフエッジ12をリードフレーム10の下面側に形成して、同図(B)のB−B断面において各リード形成孔20が上面に向けて凸となるような形状にしてもよい。さらに、ハーフエッジ12に替えてリード形成孔20の縁部が同図のA−A断面またはB−B断面においてリード形成孔20側に向けて凸または凹となるような形状に形成して樹脂とリードフレームの接合性を向上させる構成を採用することもできる。
【0031】
13、14はインナーリードである。インナーリード13は、リード形成孔20によってその略中央部まで延在するような形状に形成され、発光チップを搭載するダイパッドとして用いられる。他方のインナーリード14は、各リード形成孔20によってインナーリード13を挟み込むような位置まで延在するような形状に形成されている。このインナーリード14には、発光チップの金ワイヤがボンディングされる。
【0032】
発光チップはアノード電極(正極)及びカソード電極(負極) の一対の電極を備え、これらの電極の間に順バイアスの所定電圧を印加することにより光を放出するLED素子である。このため、例えば、インナーリード13が発光チップのカソード電極に接続される場合、インナーリード14と発光チップのアノード側の電極との間を金ワイヤ等でボンディングして、アノード側のリードフレームと発光チップのアノード電極との間を電気的に接続する。
【0033】
本実施例では、発光チップの一方の電極に二本のワイヤで接続されるため、二つのインナーリード14が設けられている。ただし、これに限定されるものではなく、ワイヤの本数は一本又は三本以上でも構わない。また、インナーリード13側のリードフレームがカソード側であるとして説明しているが、これに限定されるものではなく、発光チップの種類などに応じてはインナーリード13をアノード側としてもよい。この場合、インナーリード14が設けられている側のリードフレームはカソード側となる。さらに、例えば、実装する発光チップはフリップチップタイプのものでもよく、リード形成孔20を跨ぐように発光チップを配置してチップ下面に配置された各電極をインナーリード13及びインナーリード14にボンディングして実装する。
【0034】
図3は、本実施例における樹脂封止の状態を示す断面図である。
図3の左側は樹脂封止前の状態を示し、
図3の右側は樹脂封止後の状態を示している。同図に示されるように、トランスファモールドによりリードフレーム10が樹脂封止される。
【0035】
50は、リードフレーム10に充填する樹脂の形状を決定するための第1の金型としての上金型である。上金型50には、発光チップからの光を反射させるリフレクタを形成するための複数のキャビティ60(第1キャビティ)が、リードフレーム10に形成された複数のリード形成孔20と同じ間隔で形成されている。上金型50は、樹脂モールド時において、複数のリード形成孔20と複数のキャビティ60とが重なるようにリードフレーム10を上面側から押さえ付ける。
【0036】
同様に、51は第2の金型としての下金型である。下金型51には、LEDパッケージの下パッケージを形成するための複数のキャビティ61(第2キャビティ)が複数のリード形成孔20と同じ間隔で形成されている。下金型51は、樹脂モールド時において、複数のリード形成孔20と複数のキャビティ61とが重なるようにリードフレーム10を下面側から押さえ付ける。
本実施例のモールド金型(以下、単に「金型」ともいう)は、上金型50と下金型51とを主体に構成されている。樹脂モールド時には、上金型50と下金型51とでリードフレーム10をクランプし(挟み)、複数のキャビティ60、複数のキャビティ61、及び、複数のリード形成孔20のそれぞれを重ね合わせて樹脂71を充填して後述する第1成形部を形成する。
【0037】
70は熱硬化性樹脂等をタブレット(円柱)状に成形した樹脂タブレットである。樹脂モールド時には、
図3の右側に示されるように、予熱された下金型51のポット81内に樹脂タブレット70を投入して溶融させるとともにプランジャ80を上動させて溶融した樹脂71を圧送することにより、上金型50と下金型51との間が樹脂71で充填される。このプランジャ80は、図外のトランスファ機構によってポット81に沿って上下に摺動可能に構成されている。なお、樹脂タブレット70に替えて液状の熱硬化性樹脂をディスペンサ(図示せず)で供給することもできる。また、上金型50及び下金型51のパーティング面をリリースフィルム(図示せず)で覆ってから樹脂を供給して、リリースフィルムを介して上金型50及び下金型51でリードフレーム10をクランプすることもできる。
【0038】
プランジャ80によって樹脂71が圧送されることにより、溶融した樹脂71は、カル65、ランナ66、ゲート67及びハーフエッジ18を介して、リード形成孔20、キャビティ60(第1キャビティ)、及び、キャビティ61(第2キャビティ)へ供給される。具体的には、各リード形成孔20は、スルーゲート64を介して連通しているため、リード形成孔20に連通した各キャビティ60、61にも樹脂71を供給可能となっている。このため、樹脂71は、ゲート67に近いリード形成孔20及びキャビティ60、61から遠いリード形成孔20及びキャビティ60、61に向けて順次供給されていく。
【0039】
このようにして、樹脂タブレット70が溶融して樹脂71となり、上金型50と下金型51で形成された空間に注入される。この結果、
図3の右側に示されるように、上金型50と下金型51の間の空間は、樹脂71により充填された状態となる。
【0040】
本実施例の樹脂71としては、例えば、後述の理由により、光を透過させる性質(透光性)を有するエポキシ樹脂が用いられる。ただし、これに限定されるものではなく、シリコーン樹脂のような透光性を有する熱硬化性樹脂や、その他の熱硬化性樹脂を用いることもできる。
【0041】
また、樹脂71には、後述する透光性樹脂75とは異なり、フィラーが含有されている。このフィラーとしては、例えば、光の反射及び放熱のために窒化アルミ(AlN)を主成分としたものが用いられる。窒化アルミを主成分としたフィラーを含有している場合、透光性を有する樹脂に白色のフィラーが含まれる樹脂71の色は全体として白色となり、発光チップからの光が効果的に反射されるとともに、熱伝導性が高いため、発光チップによって発せられた熱を効率的に外部に伝導して放熱することが可能となる。フィラーは窒化アルミに限定されるものではなく、樹脂71に他のフィラーを含有させてもよい。また、樹脂71の色は白色に限定されるものではなく、他の色を有するものでもよい。
【0042】
なお、
図3における160として図示した破線は、後述するように、発光チップを実装した後に透光性樹脂(シリコーン樹脂)で封止して形成される本実施例のLEDパッケージ(発光デバイス)の封止形状を示すものである。
【0043】
図4は、本実施例で用いられる上金型50の構造図である。
図4(A)は上金型50の断面図であり、
図4(B)は上金型50を下から見た平面図である。
【0044】
上金型50には、キャビティ60、スルーゲート64、カル65、ランナ66、及び、ゲート67がそれぞれの形状及び大きさを備えた凹形状に形成されている。上金型50において、平面視環状に形成されたキャビティ60に囲まれた領域はリードフレーム10をクランプするクランプ面となっている。このクランプ面により、
図3に示されるように、リードフレーム10における発光チップの各実装位置は実装面(表面)側でそれぞれクランプされる。
【0045】
図5は、実施例1における樹脂封止の状態を示す拡大図である。
図5(A)は樹脂封止前の状態を示し、
図5(B)は樹脂封止後の状態を示している。また、
図5に示される範囲は、本実施例における最終製品であるLEDパッケージの一個分の構成部分に相当する。
【0046】
下金型51において、キャビティ61に囲まれた領域はリードフレーム10をクランプするクランプ面となっている。このクランプ面により、リードフレーム10における発光チップの各実装位置はその裏面側でそれぞれクランプされる(
図3参照)。このため、リードフレーム10は上金型50及び下金型51の各クランプ面によって上下からクランプされることとなり、発光チップの実装位置におけるフラッシュが防止され、発光チップの実装不良の防止が可能となる。
【0047】
このような上金型50及び下金型51を用いて樹脂モールドするときには、樹脂タブレット70をポット81に供給するとともに、リードフレーム10を載置部に載置して、上金型50及び下金型51を型閉じしてリードフレーム10をクランプする。
【0048】
この場合、
図5(A)に示されるように、上金型50と下金型51の間には、キャビティ60、61、及び、スルーゲート64が形成されている。また、リードフレーム10にはリード形成孔20が形成されている。このため、上記のようにトランスファ機構を動作させて樹脂71を圧送することにより、互いに連通された状態となっているスルーゲート64、キャビティ60、61、及び、リード形成孔20に樹脂が充填されていく。
【0049】
この状態において、
図3に示されるように、隣接するリード形成孔20間を直接連通するスルーゲート64を介して樹脂71が流れ込むため、キャビティ60、61、及び、リード形成孔20が樹脂モールドされる。これにより、樹脂71がリード形成孔20、スルーゲート64、キャビティ60、61に充填される。
【0050】
図5(B)は、樹脂71がキャビティ60、61、及び、リード形成孔20に充填された状態を示している。スルーゲート64、キャビティ60、61、及び、リード形成孔20は互いに繋がって連通した状態となっているため、スルーゲート64から流れ込む樹脂71により、これら全ての空間は一度に充填されて第1成形部が形成される。続いて、充填された樹脂71を硬化させるために所定時間だけ待機して、上金型50、下金型51の型閉状態を開放する。次いで、樹脂モールドされたLEDパッケージ用基板が搬出された後に金型のパーティング面等がクリーニングされて、1回の樹脂モールドが終了する。これにより、第1成形部を有するLEDパッケージ用基板(以下、単に「基板」ともいう)が形成される。
【0051】
本実施例において、第1成形部は、リード形成孔20を閉塞するリード間閉塞部、リフレクタ、及び、下パッケージを備えて一体的に形成されている。リードフレーム10の上面側においてキャビティ60で硬化した樹脂71はリフレクタを構成する。リフレクタは、リードフレーム10における発光チップの実装面に形成され、発光チップからの光を上方に反射させる機能を有する。また、このリフレクタは、LEDパッケージの強度を向上させるという効果も有する。
【0052】
リードフレーム10の下面側においてキャビティ61で硬化した樹脂71は、LEDパッケージの下パッケージを構成する。下パッケージは、リードフレーム10における発光チップの実装面とは反対側の面に形成されている。この下パッケージを形成することにより、LEDパッケージの強度を向上させることができる。また、この下パッケージ及びリフレクタでリードフレーム10を挟み込んだ形状となるため、これらと一体的に形成されたリード間閉塞部がリードフレーム10に確実に接合された状態となる。
【0053】
なお、リフレクタを形成するためのキャビティ60、及び、下パッケージを形成するためのキャビティ61は、いずれも、リードフレーム10上に環状に構成されている。そのことを明確にするため、
図5(A)、(B)に示される破線により、キャビティ60(リフレクタ)及びキャビティ61(下パッケージ)が環状であることを示している。
【0054】
発光チップの一対の電極間を絶縁するために設けられたリード形成孔20(換言すればインナーリード13、14間)に樹脂71が充填されてリード形成孔20が絶縁状態で閉塞され、リード間閉塞部が形成されることにより、これらの電極間を確実に絶縁することができる。
【0055】
図6は、本実施例のリードフレームに樹脂を充填して形成されたLEDパッケージ用基板の要部拡大図である。
図6(A)はLEDパッケージ用基板の拡大平面図、
図6(B)はB−B断面図、
図6(C)はC−C断面図、
図6(D)はLEDパッケージ用基板の拡大底面図である。
【0056】
図6(A)に示されるように、樹脂71で構成されるリフレクタは、リードフレーム10の上面において、内側がすり鉢形状となる円環状に形成されている。本実施例のリフレクタは、その内周及び外周ともに円環状であるが、これに限定されるものではない。リフレクタの内周又は外周のいずれかを矩形状にしてもよい。また、リフレクタの内周及び外周の両方を矩形状にすることもできる。
【0057】
図6(B)は、
図6(A)中のB−B線での切断面を示す断面図であり、
図5(B)と同一の向きを示している。また
図6(C)は、
図6(A)中のC−C線での切断面を示す断面図であり、
図6(B)の断面に対して直交方向である。
【0058】
図6(D)に示されるように、樹脂71で構成される下パッケージは、リードフレーム10の下面において、矩形状に形成されている。本実施例の下パッケージは、その内周及び外周ともに矩形状であるが、これに限定されるものではない。下パッケージの内周又は外周のいずれかを円環状にしてもよい。また、下パッケージの内周及び外周の両方を円環状にすることもできる。また、下パッケージは中央部が抜けた環状以外の形状でもよく、例えば中央部にも樹脂71が充填して平面視矩形または円形の形状を採用することもできる。
【0059】
このように、リフレクタ及び下パッケージは多様な形状を採用することができる。つまり、リフレクタ及び下パッケージを形成する上金型50及び下金型51のキャビティ60、61も同様に多様な形状を採用することができる。
【0060】
図7は、本実施例におけるLEDパッケージ用基板の全体構造図である。
図7(A)はLEDパッケージ用基板の平面図、また、
図7(B)はその側面図である。
【0061】
図7に示されるLEDパッケージ用基板は、複数の発光チップを実装する前のLEDパッケージ用基板である。このLEDパッケージ用基板には、複数のリード形成孔20に樹脂71が充填されてリード間閉塞部が形成されるとともに、リードフレーム10の上面及び下面に樹脂71で複数のリフレクタ及び下パッケージが形成されている。このように、LEDパッケージ用基板は、複数の発光チップ(LED)を複数のリフレクタの内側に設けられた実装位置に実装可能な構造を備える。
【0062】
なお、
図7に示されるLEDパッケージ用基板には、スルーゲート64で硬化した樹脂71が残存している。スルーゲート64に充填されて硬化した樹脂71は、次の工程である透光性樹脂の樹脂モールドの前にゲートブレイクして排除しておいてもよく、または、これを残したまま透光性樹脂の樹脂モールドをすることもできる。この場合、ゲートブレイクして後述の樹脂モールドを行うときには、その金型のスルーゲートはスルーゲート64と同じ位置に形成することができる。一方、ゲートブレイクしないで次の樹脂モールドを行うときにはその金型のスルーゲートは、スルーゲート64で硬化した樹脂71ごと樹脂モールド可能となるようにスルーゲート64よりも大きくする必要がある。
【0063】
図8は、本実施例におけるLEDパッケージの断面形状を説明するための説明図である。
図8(A)は透光性樹脂の充填前の状態を示し、
図8(B)は透光性樹脂の充填後の状態を示している。
【0064】
図8(A)に示されるように、透光性樹脂の充填前において、リード間閉塞部、リフレクタ、及び、下パッケージの第1成形部が樹脂71で形成されたLEDパッケージ用基板には、発光チップ90(LED:Light−Emitting Diode)がインナーリード13上に実装される。
【0065】
発光チップ90は、アノード電極とカソード電極との一対の電極間に順バイアスを印加することにより、特定の色の光を放出する半導体チップである。発光色は、発光チップに用いられる材料により異なる。例えば、赤色光を放出するAlGaAs、緑色光を放出するGaP、青色光を放出するGaNなどが用いられる。
【0066】
発光チップ90の裏面(ダイパッド実装面)にはカソード電極が設けられている。このため、インナーリード13に実装された発光チップ90の表面に設けられているアノード電極をインナーリード14に電気的に接続させる。具体的には、発光チップ90のアノード電極とリードフレーム10のインナーリード14との間を金等のワイヤ92で接続する。
【0067】
その後、発光チップ90が実装されたLEDパッケージ用基板を下金型53の載置部に載置するとともに、液状の透光性樹脂75をディスペンサ(図示せず)によってポット81に供給する。上金型52及び下金型53を型閉じして、
図8(B)に示されるように基板をクランプする。なお、同図には図示されていないが、上金型52及び下金型53のパーティング面をリリースフィルム(図示せず)で覆って、リリースフィルムを介して上金型52及び下金型53でLEDパッケージ用基板をクランプすることもできる。続いて、プランジャ80を上動させて透光性樹脂75を圧送し、透光性樹脂75をキャビティ68の内部に供給して充填する。続いて、キャビティ68に充填された透光性樹脂75を硬化させることにより、レンズ部を有する第2成形部が形成されて、その内部に発光チップ90が封止される。
【0068】
このとき、透光性樹脂75はLEDパッケージ用基板の上面側にのみ充填できればよい。このため、下金型53には、透光性樹脂75を充填するためのキャビティは形成されず、前工程である樹脂71で形成された下パッケージを収容するためのキャビティが形成されている。このキャビティと下パッケージ形成用のキャビティ61とは実質的にほぼ同一の形状を有していればよいが、下キャビティ収容用のキャビティを下パッケージ形成用のキャビティ61よりも若干大きくして、収容し易くすることもできる。
【0069】
透光性樹脂75としては、透光性及び熱硬化性を有するシリコーン樹脂が用いられる。また、この透光性樹脂75は、樹脂71とは異なり、発光チップの光を透過させるために窒化アルミのようなフィラーを含有させずに用いられる。なお、シリコーン樹脂は、例えばエポキシ樹脂よりも紫外線や熱によって透光性が低下し難い性質を有するため、発光チップ90を封止するには好適である。透光性樹脂75は透明色のものに限定されるものではなく、透光性を有する樹脂であれば、赤色等の着色がなされた樹脂を用いることもできる。
【0070】
図8に示されるように、キャビティ68は、LEDパッケージのレンズ部を形成するためのレンズキャビティ68aと、リフレクタの全面を覆う上パッケージの矩形部分を形成するための上パッケージキャビティ68bとを有する。本実施例のキャビティ68は、樹脂71で形成されたリフレクタを全て覆うように形成されているため、透光性樹脂75がキャビティ68に充填されたときには、リードフレーム10の上面側において、リフレクタ及び発光チップ90を含めてLEDパッケージ用基板の上面側が透光性樹脂75で封止される。
図8(B)は、キャビティ68の内部に透光性樹脂75を充填したときの状態を示したものである。
【0071】
本実施例のLEDパッケージ用基板では、リード形成孔20に樹脂71が充填されてリード間閉塞部が形成されているため、透光性樹脂75のトランスファモールド時、透光性樹脂75は上金型52とLEDパッケージ用基板の上面との間の空間を流れ、透光性樹脂75が下金型53の載置部に触れることはない。したがって、下金型53の載置部を透光性樹脂75により汚染させることなく透光性樹脂75を充填して樹脂モールドすることができる。
【0072】
続いて、キャビティ68に充填された透光性樹脂75を硬化させるために所定時間だけ待機して、上金型52、下金型53の型閉状態を開放する。次いで、第2成形部が形成された基板が搬出され、上金型52、下金型53の表面がクリーニングされて1回の樹脂モールドが終了する。
【0073】
このように、本実施例のLEDパッケージ用基板の製造方法によれば、インナーリード13、14間がリード間閉塞部で閉塞されているため、下金型53における基板の載置部やLEDパッケージ用基板において外部端子として用いられる非封止部分を透光性樹脂75により汚染させずに透光性樹脂75を充填することができるため、金型のクリーニングや基板のバリ取りなどの工程を簡略化することができる。
【0074】
図9は、本実施例におけるLEDパッケージの拡大図である。
図9(A)はLEDパッケージの平面図、
図9(B)はB−B断面図、
図9(C)はC−C断面図である。
【0075】
図9(A)に示されるように、上方向から見ると、LEDパッケージは透光性樹脂75で構成された第2成形部により覆われている。
【0076】
図9(B)は、
図9(A)中のB−B線での切断面を示す断面図であり、
図8(B)と同一の向きを示している。また
図9(C)は、
図9(A)中のC−C線での切断面を示す断面図であり、
図9(B)の断面に対して直交方向である。
図9(C)に示されるように、リードフレーム10を切断して分割した後、リードフレーム10の両端部を下側に折り曲げることにより、LEDパッケージの端子部が形成される。この端子部の詳細については後述する。
【0077】
図10は、本実施例における分割前のLEDパッケージの全体構造図である。
図10(A)は分割前のLEDパッケージの平面図であり、
図10(B)はその側面図である。
【0078】
図10に示されるように、リードフレーム10には複数の上パッケージ(透光性樹脂75)及び下パッケージ(樹脂71)で構成されるLEDパッケージが形成されている。この状態で、
図10中に例示されるように、左右方向に延在する破線及び上下方向に延在する破線に沿ってリードフレーム10における各LEDパッケージ間を切断してダイシングし、複数のLEDパッケージを一個ずつの個片にする。
【0079】
図11は、本実施例におけるLEDパッケージを示した拡大断面図である。
図11(A)は、LEDパッケージ(発光デバイス)の動作説明図であり、
図11(B)は、リード形状の変形例を示す図である。
【0080】
図11(A)に示されるように、発光チップ90に順バイアスを印加すると、発光チップ90は発光する(図中の上向きの矢印)。発光チップ90から放出された光は、主に、透光性樹脂75(レンズ部)を通って外部へ直接放出される。しかし、発光チップ90から放出された光の一部は、フィラーを含有する樹脂71(リフレクタ)に向けて放出され、樹脂71(リフレクタ)において反射して外部へ放出される。このように、リフレクタを設けることにより、発光チップ90の発光効率を向上させることができる。また、本実施例のように、白色のフィラーを含む樹脂71でリフレクタを形成したことにより、発光チップ90の発光効率をさらに向上させることができる。
【0081】
また、
図11(A)に示されるように、リードフレーム10をダイシングした後、LEDパッケージの端子部は下側に折り曲げるJベンドによって形成される。端子部の先端側は、下パッケージ(樹脂71)の下に位置するように曲げられる。この端子部の先端がLEDパッケージと外部基板との間を電気的接続するための電極となる。本実施例では、LEDパッケージの端子部がはんだ95を介して、プリント基板180の上に実装される。ただし、これに限定されるものではなく、本実施例のLEDパッケージをプリント基板以外の面上に実装することもできる。
【0082】
このとき、フィラーとして窒化アルミを含有しているため、樹脂71は良好な放熱性を有する。このため、LEDパッケージ内部の熱は、リフレクタ(樹脂71)、リード間閉塞部(樹脂71)、下パッケージ(樹脂71)、端子部、及び、はんだ95を介して、外部のプリント基板180へ効率的に放熱される。
図11(A)に示される端子構造を備えることにより、発光チップ90による温度上昇を効果的に抑制することができる。また、端子部をJベンドにより形成しているため、LEDパッケージの実装面積を小さくすることができる。
【0083】
図11(B)は、LEDパッケージにおいて、端子部の形状(リード形状)の変形例を示している。
図11(B)に示される端子形状は、ガルウィングと呼ばれる。この場合、リードフレーム10のアウターリード部分を段状に外側へ延出させ、はんだ95を介してLEDパッケージをプリント基板180に実装する。このような構成によれば、発光チップ90の故障等の際における修理又は交換が容易になる。
【0084】
以上、本実施例のLEDパッケージの製造方法によれば、リードフレームに設けられた複数のリード間閉塞部、リフレクタ、及び、下パッケージの第1成形部をトランスファモールドにより一体的に形成するとともに、レンズ部を有する第2成形部もトランスファモールドによって形成しているため、上金型及び下金型を交換することで第1の成形部及び第2の成形部を形成することができる。したがって、熱硬化性樹脂で構成されたリフレクタ及びレンズ部を有する高品位のLEDパッケージを効率的に製造することが可能となる。
【実施例6】
【0111】
次に、
図18乃至
図21を参照して、本発明の実施例6について説明する。本実施例のLEDパッケージは、複数の発光チップを備えたマップタイプのLEDパッケージであり、1つのLEDパッケージに含まれる発光チップが複数である点で上記の第1〜5実施例と異なる。
【0112】
図18は、本実施例における樹脂封止の状態を示す断面図である。本図は樹脂封止直前の状態を示している。
【0113】
図18の破線で囲む領域150は、
図1に示される領域150に相当する断面領域である。本実施例のLEDパッケージでは、四個の発光チップが実装される。ただし、1つのLEDパッケージに含まれる発光チップの数はこれに限定されるものではなく、二個以上の任意の個数の発光チップを含ませることもできる。また、LEDパッケージ用基板に実装した全ての発光チップ90を一括して樹脂モールドして、すべての発光チップ90を1つのLEDパッケージに含ませることもできる。
【0114】
54は本実施例でリフレクタを形成するために用いられる上金型である。上金型54は、実施例1の上金型52のキャビティ60に替えてキャビティ60aが形成されている。キャビティ60aは、
図18、19に示されるように、二個の隣接したキャビティ60間を矩形状に連通した空間となるような形状に形成されている。また、キャビティ60aは、領域150の内部に配置される複数の発光チップの間を分離するものであり、キャビティ60aに充填された樹脂71は、複数の発光チップのリフレクタを構成する。このように、本実施例の上金型54は、キャビティ60aが形成されている点で、実施例1の上金型52とは異なる。
【0115】
55は本実施例で用いられる下金型である。下金型55は、キャビティ61に替えてキャビティ61aが形成されている。キャビティ61aは、
図18、19に示されるキャビティ60aと同様の平面形状を有する。キャビティ61aに充填された樹脂71は、複数の発光チップの実装位置を裏面側から一体的に支持可能な下パッケージを構成する。このように、本実施例の下金型55は、キャビティ61aが形成されている点で、実施例1の下金型53とは異なる。
【0116】
本実施例では、これらの上金型54、下金型55を用いて上記したLEDパッケージ用基板の製造法によりLEDパッケージ用基板を製造する。この際には、樹脂71はゲート67を介して、リード形成孔20、キャビティ60a、及び、キャビティ61aへ供給される。各リード形成孔20及びキャビティ60a、61aは、スルーゲート64を介して連通しているため、樹脂71は、ゲート67に近い方から順次供給されて全てのリード形成孔20及びキャビティ60a、61aに充填される。
【0117】
なお、本実施例の金型では上記実施例とは異なり、1つのLEDパッケージに含まれる隣接したリード形成孔20間はキャビティ60a、61aで連通されているため、その間はスルーゲート64ではなくキャビティ60a、61aを介して樹脂71が供給される。これにより、
図19に要部が示されるようなLEDパッケージ用基板が形成される。
【0118】
図19は、本実施例におけるLEDパッケージ用基板の拡大図である。
図19(A)は領域150の内部におけるLEDパッケージ用基板の平面図であり、
図19(B)は
図19(A)中のB−B線での切断面を示す断面図である。
【0119】
リードフレーム10に設けられた四個のリード形成孔20には、樹脂71が充填されている。
【0120】
また、上金型54に形成されたキャビティ60aにも樹脂71が充填されている。キャビティ60aに充填された樹脂71は、四個の発光チップ90の実装位置がすり鉢形状となって発光チップ90からの光をそれぞれ反射させるリフレクタを構成する。上記実施例と同様に、本実施例のリフレクタはその内周面円形状に形成されているが、これに限定されるものではなく、例えば矩形状に形成してもよい。
【0121】
下金型55に形成されたキャビティ61aにも樹脂71が充填されている。キャビティ61aに充填された樹脂71は、下パッケージを構成する。領域150の内部には各実装位置に発光チップ90が実装される。本図は、一個の発光チップ90のみが実装された状態を示しているが、実際には、全ての実装位置に発光チップ90が実装される。
【0122】
図20は、本実施例において、透光性樹脂を封止させるときの状態を示す断面図である。
図20は、各リード形成孔20及びキャビティ60a、61aを樹脂71で封止したLEDパッケージ用基板に発光チップ90を実装して第2成形部形成用の金型でクランプした状態を示している。
【0123】
本図において、56は透光性樹脂75で発光チップ90を封止する際に用いられる上金型である。本実施例における上金型56には四個のレンズ部を有するキャビティ68が形成されている。キャビティ68は、LEDパッケージのレンズ部を構成する四個のレンズキャビティ68aと、リフレクタの全面を覆う上パッケージの矩形部分を形成するための上パッケージキャビティ68bとを有する。上金型56に形成された各キャビティ68は、ゲート67及びスルーゲート64を介して連通状態で繋がっている。このため、後述のとおり、LEDパッケージ用基板の上面は透光性樹脂75で覆われる。
【0124】
57は透光性樹脂75で発光チップ90を封止する際に用いられる下金型である。LEDパッケージ用基板の下面には透光性樹脂75は封止されないため、下金型57には上記実施例と同様に下金型55とほぼ同一形状のものが用いられる。本実施例では、この上金型56、下金型57を用いて上記実施例と同様のLEDパッケージの製造法によりLEDパッケージを製造する。
【0125】
この際には、上金型56と下金型57でLEDパッケージ用基板をクランプし、キャビティ68に透光性樹脂75を充填して硬化させることによって複数の発光チップ90を一括して樹脂モールドするとともに複数のレンズ部を有する第2成形部を形成する。なお、破線で示された領域150は、四個の発光チップ90を含んだ一個のLEDパッケージの構成部分を示している。
【0126】
図21は、本実施例におけるLEDパッケージの拡大図である。本図は、LEDパッケージ用基板をダイシングして個別に分離したときの状態を示している。
図21(A)はLEDパッケージの平面図であり、
図21(B)は
図21(A)のB−B線での切断面を示す断面図である。
【0127】
図21に示されるように、本実施例のLEDパッケージは、その上面が全て透光性樹脂75で覆われている。透光性樹脂75は、球状に上方へ突出してLEDパッケージにおける半球面状のレンズ部を構成する樹脂レンズ部75aを含む。
【0128】
本実施例は、複数の発光チップを備えたLEDパッケージを用いる際に適して実施される。本実施例によれば、上記した実施例と同様の目的を達成可能であり、複数の発光チップを備えたLEDパッケージを簡便にかつ高信頼で製造することが可能になる。
【0129】
なお、本実施例のLEDパッケージは、四個の発光チップを備えたLEDパッケージであり、この状態でプリント基板などに実装される。ただし、本実施例のLEDパッケージの最終形態はこれに限定されるものではない。本実施例の方法を実施した後、四個の発光チップを含むLEDパッケージを分割して、一個の発光チップのみを含むLEDパッケージとしてプリント基板などに実装することも可能である。